説明

配線基板の製造方法

【課題】配線構造の形成が容易であり、製造工程が単純である配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】導電層上にマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンの開口部に、エアロゾルの衝突によって導電材料よりなる突起構造体を形成する工程と、前記突起構造体が形成された前記導電層上を絶縁層で覆い、該導電層、該突起構造体および該絶縁層を含む貼り付け構造体を形成する工程と、前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルの衝突により形成される導電材料を含む配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体チップなどの実装部品を実装するための配線基板は、様々な構造を有するものが提案されていた。また、実装部品(半導体チップ)の高集積化・微細化に伴い、これらを実装する配線基板の配線構造も微細化・多層化が要求されていた。
【0003】
このため、配線構造の微細化や多層化が容易であるビルドアップ基板が広く用いられるようになってきている。ビルドアップ基板とは、いわゆるビルドアップ法により製造される基板であり、例えばエポキシ系の樹脂材料よりなる絶縁層を積層して構成する方法である。また、上記の積層される絶縁層には、それぞれパターン配線やビアプラグなどの配線構造が形成される。
【0004】
また、絶縁層にパターン配線やビアプラグなどの配線構造を形成する方法としては、例えばメッキ法が用いられる場合がある。また、メッキ法には大別して電解メッキ法と無電解メッキ法があるが、例えば、絶縁材料上に電解メッキを行う場合には、電解メッキのシード層を形成する場合がある。例えば、上記のシード層を形成する方法として、無電解メッキ法が用いられることが一般的であった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−253189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、無電解メッキ行うためには、様々な前処理が必要となるため、配線基板の製造工程が煩雑となり、配線基板の製造コストが増大してしまう問題が生じていた。
【0007】
例えば、無電解メッキを行うためには、まず無電解メッキの成膜対象となる絶縁層の表面を粗化する。上記の粗化処理は、デスミア処理と呼ばれる場合がり、絶縁層を薬液で処理することにより、絶縁層の表面状態を荒らして無電解メッキを施しやすくする表面処理である。また、上記の粗化処理後は、粗化処理した表面上にパラジウム触媒を塗布し、表面の活性化を行う。
【0008】
上記の粗化処理と活性化処理の後、絶縁層を無電解めっき浴に浸すことにより、無電解メッキ膜を形成することができる。
【0009】
上記の無電解メッキの前処理は工程が複雑である上に、粗化のための薬液や触媒が必要となり、配線基板の製造コストが増大する問題を有していた。
【0010】
そこで、本発明は上記の問題を解決した、新規で有用な配線基板の製造方法を提供することを統括的課題としている。
【0011】
本発明の具体的な課題は、配線構造の形成が容易であり、製造工程が単純である配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点では、上記の課題を、導電層上にマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンの開口部に、エアロゾルの衝突によって導電材料よりなる突起構造体を形成する工程と、前記突起構造体が形成された前記基板上を絶縁層で覆い、該導電層、該突起構造体および該絶縁層を含む貼り付け構造体を形成する工程と、前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法により、解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配線構造の形成が容易であり、製造工程が単純である配線基板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアロゾルを用いた成膜を行う成膜装置の一例を示した図である。
【図2A】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その1)である。
【図2B】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その2)である。
【図2C】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その3)である。
【図2D】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その4)である。
【図2E】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その5)である。
【図2F】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その6)である。
【図2G】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その7)である。
【図2H】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その8)である。
【図2I】実施例1による配線基板の製造方法を示す図(その9)である。
【図3】実施例1の変形例を示す図である。
【図4A】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その1)である。
【図4B】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その2)である。
【図4C】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その3)である。
【図4D】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その4)である。
【図4E】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その5)である。
【図4F】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その6)である。
【図4G】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その7)である。
【図4H】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その8)である。
【図4I】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その9)である。
【図4J】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その10)である。
【図4K】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その11)である。
【図4L】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その12)である。
【図4M】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その13)である。
【図4N】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その14)である。
【図4O】実施例2による配線基板の製造方法を示す図(その15)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による配線基板の製造方法では、エアロゾルの衝突による成膜を用いて、配線基板の配線構造(パターン配線、ビアプラグなど)を形成することを特徴としている。
【0016】
エアロゾルとは、気体中に浮遊する微小な粒子(微粒子)のことをいう。例えば、微粒子を所定のガス中に分散させ、微粒子が分散されたガスを搬送して成膜対象(例えば基板や基板上の絶縁層など)に衝突させることにより、成膜対象に上記の微粒子の集合体よりなる膜を形成することができる。このような成膜方法をエアロゾルデポジション(ASD)と呼ぶ場合がある。エアロゾルデポジションでは、粒子が音速レベルに加速されて成膜対象に衝突する。このために、粒子自身が塑性変形するとともに、成膜対象に対してはアンカー(くさび)が打ち込まれるように粒子が変形する。
【0017】
このため、エアロゾルの衝突による成膜では、形成される膜と成膜対象との間の密着性が良好となる効果を奏する。また、成膜温度は室温程度でよいため、加熱に弱い材料や構造に対しても熱による衝撃を抑制して成膜を行うことが可能である。
【0018】
例えば、従来の無電解メッキによる成膜に換えて上記のエアロゾルの衝突による成膜を用いることにより、配線基板の製造の効率を良好として、製造コストを抑制することが可能となる。
【0019】
例えば、配線基板のパターン配線を形成する場合には、まず、基板上にエアロゾルの衝突によって導電層を形成し、前記導電層をエッチングによりパターニングして当該導電層を含む前記パターン配線を形成すればよい。
【0020】
また、エアロゾルの衝突による成膜の後に、上記の導電層をシード層として該導電層上に電解メッキにより上層導電層を形成し、前記上層導電層と前記導電層をエッチングによりパターニングしてパターン配線を形成してもよい(実施例1で後述)。
【0021】
上記の方法によれば、従来の無電解メッキによるシード層の形成工程を省略することが可能となるため、粗化処理や活性化処理などの無電解メッキの前処理工程が不要となる。このため、配線基板の配線構造の形成が容易となり、配線基板の製造工程が単純となって製造の効率が良好となる効果を奏する。
【0022】
また、上記のエアロゾルの衝突による成膜によって、ビアプラグを形成してもよい。例えば、導電層上にマスクパターンを形成し、該マスクパターンの開口部に、エアロゾルを衝突されることによって、導電材料よりなる突起構造体(ビアプラグ)を形成することができる。また、形成されたビアプラグ(突起構造体)を絶縁層で覆い、基板に貼り付けることで配線基板を形成することができる(実施例2で後述)。
【0023】
また、無電解メッキを用いずにビアプラグを形成する方法としては、マスクパターンの開口部に、金属粉末と樹脂の混合体(導電性ペースト)を用いて突起構造体(B2it)を形成する方法が提案されていた。しかし、導電性ペーストは、抵抗値の大きい実質的な絶縁材料と導電材料とが混合されたものであるため、ビアプラグの電気的な抵抗値が大きくなってしまう問題があった。
【0024】
一方で、上記のエアロゾルの衝突による成膜によって、ビアプラグを形成する場合には、ビアプラグを実質的に金属材料のみ(例えばCu)で形成することが可能となる。このため、ビアプラグの形成が容易となることに加えて、ビアプラグの抵抗値を低くすることが可能となる。
【0025】
次に、上記のエアロゾルによる成膜を行うための成膜装置について説明する。図1は、エアロゾル絶縁層を形成するための成膜装置を模式的に示した図である。図1を参照するに、本図に示す成膜装置500は、処理容器(成膜室)501と、処理容器501内に設置された、成膜が行われる被処理基板Sを保持する保持台502とを有している。また、処理容器501内は、ポンプなどの排気手段512によって排気ライン511から真空排気され、減圧状態とすることが可能になっている。
【0026】
また、成膜の原料となる、例えばCuよりなる粉末(微粒子)Pが内部に保持される原料容器508は、振動機509に設置されている。振動機509は、原料容器508に振動(超音波)を加えるとともに加熱手段(図示せず)によって加熱することが可能となるように構成されている。
【0027】
原料容器508には、内部を減圧状態とするための排気ライン506と、内部に酸素などのキャリアガスを導入するためのガスライン507が接続されている。ガスライン507にはガスタンク513が接続され、バルブ510を開放することで、キャリアガスが原料容器508内に導入される。
【0028】
また、処理容器501内には、エアロゾルを噴射するためのノズル504が設置され、ノズル504には供給ライン505を介して原料容器508からエアロゾルが供給される構造になっている。
【0029】
上記の成膜装置500によって成膜を行う場合には、まず、原料容器508内の粉末Pに対して、振動機509によって振動(超音波)を加えて加熱することで粉末表面に付着した水分などを除去する。
【0030】
次に、原料容器508に、ガスライン507からキャリアガスを導入して粉末Pをエアロゾル化する。エアロゾル化された粉末Pは、供給ライン505を介してノズル504から処理容器501内の基板S上に噴射され、成膜が行われる。また、成膜にあたって処理容器501内は排気ライン511から真空排気が行われて減圧状態とされていることが好ましい。
【0031】
次に、上記のエアロゾルによる成膜を用いた配線基板の製造方法の具体的な例を図面に基づき、説明する。
【実施例1】
【0032】
まず、配線基板のパターン配線を形成する場合にエアロゾルによる成膜を適用した配線基板の製造方法について、図2A〜図2Iに基づき、説明する。なお、以下の図では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の実施例についても同様)。
【0033】
まず、図2Aに示す工程において、例えば樹脂材料よりなる基板101の両面に形成された金属層(例えばCu箔)をエッチングによりパターニングする。この結果、基板101の第1の主面(上側)にパターン配線102Aが、当該第1の主面の反対側の第2の主面(下側)にパターン配線102Bが形成される。
【0034】
次に、図2Bに示す工程において、パターン配線102Aを覆うように基板101上に絶縁層103Aを形成する。絶縁層103Aは、例えばエポキシ系の樹脂材料よりなる。絶縁層103Aは、例えば、樹脂フィルムの真空ラミネートや、液状樹脂の塗布により形成することができる。
【0035】
次に、図2Cに示す工程において、絶縁層103Aに例えばレーザにより、もしくはマスクパターンを用いたパターンエッチングによりビアホールを形成し、当該ビアホールを埋設するようにビアプラグ104Aを形成する。ビアプラグ104Aは、例えばメッキにより形成することができる。
【0036】
次に、図2D〜図2Eに示す工程において、絶縁層103A上と、絶縁層103Aに埋設されたビアプラグ104A上に、図1で示した成膜装置500を用いてエアロゾルの衝突により、導電層105aを形成した。
【0037】
上記の成膜にあたっては、先に図1で示した成膜装置500を用いて以下のようにして行った。以下図1を参照しながら説明する。
【0038】
まず、原料容器508内に平均粒径1.5μmのCuよりなる粉末Pを充填し、さらに原料容器508に対して、振動機509によって振動(超音波)を加えて約80℃に加熱することで真空脱気して、粉末表面に付着した水分などを除去した。
【0039】
次に、原料容器508に、ガスライン507からキャリアガスとして高純度酸素ガス(ガス圧2kg/cm2,ガス流量4L/min)を導入して粉末Pをエアロゾル化した。また、処理容器501内を排気ライン511から排気手段512によって排気し、圧力が10Pa以下とした。ここで、エアロゾル化された粉末Pを、供給ライン505を介してノズル504から減圧された処理容器501内の基板上に噴射し、導電層105aの成膜を行った。上記の成膜時の処理容器501内の圧力は、200Paのほぼ一定に保持された。
【0040】
次に、図2Fに示す工程において、先に形成した導電層105aをシード層(電解メッキ時の給電層)として、導電層105a上に電解メッキにより、Cuよりなる導電層(上層導電層)106aを形成する。ここで、導電層105aと導電層106aが積層されてなる導電層107aが形成される。
【0041】
次に、図2Gに示す工程において、導電層107a上に、フォトリソグラフィ法によりパターニングされたフォトレジストよりなるマスクパターン(図示せず)を形成し、当該マスクパターンをマスクにしたエッチングにより、導電層107a(導電層106a、導電層105a)をパターンエッチングする。この結果、パターン配線105Aとパターン配線106Aが積層されてなるパターン配線107Aが形成される。
【0042】
なお、上記の図2F〜図2Gに示した工程において、電解メッキによって形成した導電層106aに相当する部分をエアロゾルの衝突による成膜により形成してもよい。すなわち、導電層105aの厚さを厚くすることにより、上記の導電層107aに相当する厚さを形成してもよい。
【0043】
次に、図2Hに示す工程において、図2B〜図2Gに示した工程と同様の工程を繰り返し、パターン配線107Aを覆う絶縁層108A,パターン配線107Aに接続されるビアプラグ109A,さらにビアプラグ109Aに接続されるパターン配線112A(パターン配線110A,111A)を形成する。この場合、絶縁層108A,ビアプラグ109A,パターン配線112A(パターン配線110A,111A)は、図2B〜図2Gの工程における、絶縁層103A,ビアプラグ104A,パターン配線107A(パターン配線105A,106A)と同様にして形成することができる。
【0044】
さらに、絶縁層108A上に、エポキシ系の樹脂材料を主成分とするソルダーレジストよりなる絶縁層113Aを形成する。また、絶縁層113Aには開口部113aを形成し、開口部113aからは、パターン配線(電極パッド)112Aの一部が露出するようにする。このようにして、基板101の第1の主面側(上側)に多層配線構造を形成し、配線基板を製造することができる。
【0045】
また、図2Iに示すように、基板101の下側(第2の主面側)にも、基板101の上側と同様に多層配線構造を形成してもよい。この場合、絶縁層103B,108B,113B,ビアプラグ104B,109B,パターン配線107B(パターン配線105B,106B),パターン配線112B(パターン配線110B,111B)は、それぞれ、絶縁層103A,108A,113A,ビアプラグ104A,109A,パターン配線107A(パターン配線105A,106A),パターン配線112A(パターン配線110A,111A)と同様にして形成することが可能である。
【0046】
また、パターン配線(電極パッド)112Aに接続されるように、例えば半導体チップよりなる実装部品120を実装してもよい。また、実装部品120は、例えば半田バンプなどの接続部121によってパターン配線112Aにフリップチップ接続される。また、パターン配線(電極パッド)112Bには、マザーボードなどの接続対象に接続が容易となるように、半田バンプなどの接続部を形成してもよい。
【0047】
このようにして、基板101の両面に多層配線構造が形成されるとともに、実装部品が実装されてなる配線基板100を製造することができる。
【0048】
上記の製造方法によれば、パターン配線107A,107B,112A,112Bを形成する場合に、無電解メッキに換えて(または無電解メッキと電解メッキの組み合わせに換えて)、エアロゾルの衝突による成膜を用いていることが特徴である。このため、無電解メッキを行うための前処理である、粗化処理や表面の活性化処理が不要となり、配線基板の配線構造の形成が容易となり、配線基板の製造工程が単純となって製造の効率が良好となる効果を奏する。
【0049】
上記の効果について、パターン配線107Aに相当する構造を図2D〜図2Gに示した方法(本実施例)により形成した場合に要した時間と、パターン配線107Aに相当する構造を無電解メッキと電解メッキによる方法(従来例)により形成した場合に要した時間とを実測して比較した。上記の結果、本実施例による方法では、従来例の場合の約60%の時間でパターン配線107Aに相当する構造を形成することが可能であることが確認された。
【0050】
また、上記の本実施例によるパターン配線107Aに相当する構造と、上記の従来例によるパターン配線107Aに相当する構造との抵抗を測定したところ、本実施例、従来例ともに、1.8μΩ・cmであることが確認された。
【0051】
また、上記の実施例では、エアロゾルによる成膜を用いて、いわゆるサブトラ法によりパターン配線を形成する方法を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、以下の図3に示すように、セミアディティブ法によってパターン配線を形成してもよい。
【0052】
図3は、セミアディティブ法によってパターン配線107Aを形成する方法を示した図である。セミアディティブ法によってパターン配線を形成する場合には、まず先に説明した図2A〜図2Eに示した工程を実施する。次に、図3に示すように、例えばフォトリソグラフィ法によりパターニングされたレジストよりなるマスクパターン(図示せず)をマスクにしてCuの電解メッキ(パターンメッキ)を行う。この結果、導電層105a上に、パターニングされたパターン配線106Aが形成される。上記の電解メッキの後に当該マスクパターンを剥離し、さらにマスクパターンの剥離によって露出した導電層(シード層)105aをエッチングにより除去することにより、図2Gに示した構造を形成することができる。以下は、図2H以下の工程と同様の工程を実施することで、配線基板を製造することができる。このように、パターン配線は様々な方法で形成することが可能である。
【実施例2】
【0053】
次に、配線基板のビアプラグを形成する場合にエアロゾルによる成膜を適用した配線基板の製造方法について、図4A〜図4Oに基づき、説明する。
【0054】
まず、図4A〜図4Bに示す工程において、例えばCuなどの導電材料よりなる導電層(銅箔)201a上に、複数の開口部202aを有する、樹脂材料よりなるマスクパターン202Aを形成する。マスクパターン202Aは、例えば樹脂材料よりなる層にレーザにより開口部202aを形成することで構成することができる。また、フォトレジスト層をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることでマスクパターン202Aを形成してもよい。
【0055】
次に、図4C〜図4Dに示す工程において、複数の開口部202aから露出した導電層201a上に、図1で示した成膜装置500を用いてエアロゾルの衝突により、突起構造体(ビアプラグ)203Aをそれぞれ形成した。例えば、突起構造体203Aは、先端部が尖った略円錐状(コーン状)に形成される。
【0056】
上記の成膜にあたっては、先に図1で示した成膜装置500を用いて以下のようにして行った。以下図1を参照しながら説明する。
【0057】
まず、原料容器508内に平均粒径1.5μmのCuよりなる粉末Pを充填し、さらに原料容器508に対して、振動機509によって振動(超音波)を加えて約80℃に加熱することで真空脱気して、粉末表面に付着した水分などを除去した。
【0058】
次に、原料容器508に、ガスライン507からキャリアガスとして高純度酸素ガス(ガス圧2kg/cm2,ガス流量4L/min)を導入して粉末Pをエアロゾル化した。また、処理容器501内を排気ライン511から排気手段512によって排気し、圧力が10Pa以下とした。ここで、エアロゾル化された粉末Pを、供給ライン505を介してノズル504から減圧された処理容器501内の導電層201a上に噴射し、突起構造体203Aの形成(成膜)を行った。上記の成膜時の処理容器501内の圧力は、200Paのほぼ一定に保持された。
【0059】
次に、図4Eに示す工程において、導電層201aからマスクパターン202Aを除去(剥離)する。
【0060】
次に、図4F〜図4Gに示す工程において、突起構造体203Aが形成された導電層201a上を樹脂材料よりなる絶縁層204Aで覆う。この場合、突起構造体203Aが絶縁層204Aを貫通して、突起構造体203Aの先端が絶縁層204Aから露出することが好ましい。
【0061】
上記のように、樹脂材料よりなる絶縁層204Aを導電層201aの突起構造体203Aが形成されている側に貼り付け、さらに必要に応じて押圧、加熱することで、導電層201a、突起構造体203A、および絶縁層204を含む貼り付け構造体200Aを形成することができる。
【0062】
上記の貼り付け構造体200Aを、後述する基板に貼り付けることで、配線基板を形成することができる。また、絶縁層204を構成する材料としては、例えば、ガラスクロス繊維にエポキシ系の樹脂材料を含浸させて構成されるプリプレグ材と呼ばれる材料を用いることができる。また、絶縁層204は、プリプレグ材に限定されず、エポキシ系またはポリイミド系の材料を用いて構成してもよい。
【0063】
次に、図4H〜図4Iに示す工程において、例えば樹脂材料よりなる基板301の両面に形成された金属層(例えばCu箔)302a,302bをエッチングによりパターニングする。この結果、基板301の第1の主面(上側)にパターン配線302Aが、当該第1の主面の反対側の第2の主面(下側)にパターン配線302Bが形成される。
【0064】
次に、図4J〜図4Kに示す工程において、基板301のパターン配線302Aが形成された側(上側、第1の主面側)に、図4A〜図4Gの工程において形成した貼り付け構造体200Aを貼り付け、必要に応じて押圧・加熱する。ここで、絶縁層204Aと絶縁層301が接続され、突起構造体(ビアプラグ)203Aとパターン配線302Aが接続される。また、突起構造体203Aの先端部は、上記の押圧に応じて変形して先端部が扁平し、パターン配線302Aとの接触面積が増大する。上記の接触面積の増大に伴って、突起構造体(ビアプラグ)203Aとパターン配線302Aの電気的な接続の信頼性が良好となる。
【0065】
また、上記の図4J〜図4Kに示す工程において、基板301の貼り付け構造体200が貼り付けられた側の反対側(基板301のパターン配線302Bが形成された側)に、貼り付け構造体200Aと同様の構造を有する貼り付け構造体200Bを貼り付けてもよい。この場合、貼り付け構造体200Bは、貼り付け構造体200Aの、導電層201a,突起構造体203A,および絶縁層204Aにそれぞれ相当する、導電層201b,突起構造体203B,および絶縁層204Bを有している。この場合、絶縁層204Bと絶縁層301が接続され、突起構造体(ビアプラグ)203Bとパターン配線302Bが接続される。また、突起構造体203Bの先端部は、上記の押圧に応じて変形して先端部が扁平し、パターン配線302Bとの接触面積が増大する。上記の接触面積の増大に伴って、突起構造体(ビアプラグ)203Bとパターン配線302Bの電気的な接続の信頼性が良好となる。
【0066】
次に、図4Lに示す工程において、導電層201a上に、例えばフォトリソグラフィ法によりマスクパターン(図示せず)を形成し、当該マスクパターンをマスクにしたパターンエッチングを行って、導電層201aのパターニングを行い、パターン配線201Aを形成する。同様に、導電層201b上に、例えばフォトリソグラフィ法によりマスクパターン(図示せず)を形成し、当該マスクパターンをマスクにしたパターンエッチングを行って、導電層201bのパターニングを行い、パターン配線201Bを形成する。このようにして、基板の両面に多層配線構造が形成されてなる配線基板を製造することができる。また、以下に示すように、配線構造をさらに多層化してもよい。
【0067】
例えば、図4Mに示す工程において、パターン配線201A上に、貼り付け構造体200Aを貼り付けた場合と同様にして貼り付け構造体400Aを貼り付けてもよい。また、パターン配線201B上に、貼り付け構造体200Bを貼り付けた場合と同様にして、貼り付け構造体400Bを貼り付けてもよい。
【0068】
貼り付け構造体400Aは、貼り付け構造体200Aの、導電層201a,突起構造体203A,および絶縁層204Aにそれぞれ相当する、導電層401a,突起構造体403A,および絶縁層404Aを有している。また、貼り付け構造体400Bは、貼り付け構造体200Bの、導電層201b,突起構造体203B,および絶縁層204Bにそれぞれ相当する、導電層401b,突起構造体403B,および絶縁層404Bを有している。
【0069】
次に、図4Nに示す工程において、導電層401a上に、例えばフォトリソグラフィ法によりマスクパターン(図示せず)を形成し、当該マスクパターンをマスクにしたパターンエッチングを行って、導電層401aのパターニングを行い、パターン配線(電極パッド)401Aを形成する。同様に、導電層401b上に、例えばフォトリソグラフィ法によりマスクパターン(図示せず)を形成し、当該マスクパターンをマスクにしたパターンエッチングを行って、導電層401bのパターニングを行い、パターン配線(電極パッド)401Bを形成する。
【0070】
次に、図4Oに示す工程において、絶縁層404A上に、エポキシ系の樹脂材料を主成分とするソルダーレジストよりなる絶縁層405Aを形成する。また、絶縁層405Aには開口部を形成し、当該開口部からは、パターン配線(電極パッド)401Aの一部が露出するようにする。
【0071】
同様に、絶縁層404B上に、エポキシ系の樹脂材料を主成分とするソルダーレジストよりなる絶縁層405Bを形成する。また、絶縁層405Bには開口部を形成し、当該開口部からは、パターン配線(電極パッド)401Bの一部が露出するようにする。
【0072】
また、パターン配線(電極パッド)401Aに接続されるように、例えば半導体チップよりなる実装部品410を実装してもよい。また、実装部品410は、例えば半田バンプなどの接続部411によってパターン配線401Aにフリップチップ接続される。また、パターン配線(電極パッド)401Bには、マザーボードなどの接続対象に接続が容易となるように、半田バンプなどの接続部を形成してもよい。
【0073】
このようにして、基板301の両面に多層配線構造が形成されるとともに、実装部品が実装されてなる配線基板300を製造することができる。
【0074】
上記の製造方法によれば、突起構造体203A,203B,403A,403Bを形成する場合にメッキ法(電解メッキ法、無電解メッキ法)を用いておらず、エアロゾルの衝突による成膜を用いていることが特徴である。このため、無電解メッキを行うための前処理である、粗化処理や表面の活性化処理が不要となり、また、メッキ浴の工程も不要となる。
【0075】
さらに、本実施例の場合、多層配線構造が、導電層に突起構造体(ビアプラグ)と絶縁層が形成された構造(貼り付け構造体)の貼り付けによって形成されていることが特徴である。このため、例えば、従来のようなビアホールの形成工程が不要となる。また、上記の製造方法は、ビアホール形成工程に加えて、先に説明したようにメッキ工程(メッキの前処理工程)も省略することが可能であるため、配線基板の配線構造の形成が容易となり、配線基板の製造工程が単純となって製造の効率が良好となる効果を奏する。
【0076】
また、従来、メッキ法を用いずにビアプラグを形成する方法としては、樹脂材料と導電材料(金属材料)を混合した材料(導電性ペースト)を用いてビアプラグを形成する方法が提案されていた。例えば導電性ペーストや導電性のインクなどを用いた印刷法により、ビアプラグを構成することも可能である。しかし、樹脂材料と導電材料を混合した場合には、ビアプラグの抵抗値が大きくなってしまう問題があった。
【0077】
一方で本実施例による方法では、微量の不純物が混合する場合はあるものの、実質的に導電材料(金属材料)の粉末のみを堆積させてビアプラグを形成しており、実質的に導電材料(金属材料)のみによってビアプラグを形成することが可能となっていることが特徴である。このため、本実施例による方法では、ペーストなどの混合材料を用いた場合に比べて、ビアプラグの抵抗値を低くすることが可能となっている。
【0078】
上記の効果について、突起構造体(ビアプラグ)204Aに相当する構造を図4A〜図4Dに示した方法(本実施例)により形成した場合と、突起構造体204Aに相当する構造を導電性ペースト(Cuペースト)の印刷による方法(従来例)により形成した場合とにおいて、抵抗値を比較した。上記の測定の結果、本実施例の場合の測定値は、2.0μΩ・cmであり、従来例の場合の測定値は2.0μΩ・cmであった。この結果、本実施例の場合にビアプラグの抵抗値を低くすることが可能となっていることが確認された。
【0079】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【0080】
例えば、エアロゾルを用いて形成することが可能なパターン配線またはビアプラグは、Cuよりなるものに限定されるものではない。例えば、無電解メッキの場合には、貴金属などイオン化しにくい元素を用いる必要があるが、エアロゾルデポジションの場合には、このようなイオン化に係る材料の限定が実質的に存在しない。例えば、TI,Zr, Al,Ta,Mo,Wなど実質的に金属の種類を問わず、様々な金属(合金、または金属化合物など)を用いてパターン配線やビアプラグを形成することが可能である。
【0081】
また、実施例1と実施例2を組み合わせて実施してもよい。例えば、実施例2の導電層201a,201b,401a,401bを、エアロゾルを用いた成膜により形成してもよい。
(付記1)
基板上にパターン配線が形成されてなる配線基板の製造方法であって、
前記基板上に、エアロゾルの衝突によって導電層を形成するエアロゾル成膜工程と、
前記導電層をパターニングして当該導電層を含む前記パターン配線を形成するパターニング工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。(1、図2A〜)
(付記2)
前記導電層はCuを主成分として形成されることを特徴とする付記1記載の配線基板の製造方法。
(付記3)
前記エアロゾル成膜工程の後に前記導電層をシード層として該導電層上に電解メッキにより上層導電層を形成する工程をさらに有し、
前記パターニング工程では、前記上層導電層と前記導電層がエッチングによりパターニングされて前記パターン配線が形成されることを特徴とする付記1または2記載の配線基板の製造方法。(2)
(付記4)
前記上層導電層はCuを主成分として形成されることを特徴とする付記3記載の配線基板の製造方法。
(付記5)
前記導電層は、前記基板上の、ビアプラグが埋設された絶縁層上に形成されることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。(3)
(付記6)
基板上に、パターン配線が形成されてなる配線基板であって、
前記パターン配線は、エアロゾルの衝突によって形成される導電層を含むことを特徴とする配線基板。
(付記7)
導電層上にマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンの開口部に、エアロゾルの衝突によって導電材料よりなる突起構造体を形成する工程と、
前記突起構造体が形成された前記導電層上を絶縁層で覆い、該導電層、該突起構造体および該絶縁層を含む貼り付け構造体を形成する工程と、
前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。(4、図4A〜)
(付記8)
前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程の後で、前記導電層をエッチングによりパターニングする工程を有することを特徴とする付記7記載の配線基板の製造方法。(5)
(付記9)
前記第3の工程では、前記基板上に形成されたパターン配線と前記突起構造体が接続されるように貼り付けが行われることを特徴とする付記7または8記載の配線基板の製造方法。(6)
(付記10)
前記突起構造体は、略円錐形に形成されることを特徴とする付記7乃至9のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
(付記11)
前記突起構造体は、Cuを主成分として構成されることを特徴とする付記7乃至10のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
(付記12)
前記絶縁層はプリプレグ材料よりなることを特徴とする付記7乃至11のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
(付記13)
前記導電層は、Cuを主成分として構成されることを特徴とする付記7乃至12のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
(付記14)
前記マスクパターンは樹脂材料よりなることを特徴とする付記7乃至13のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
(付記15)
前記導電層を、エアロゾルの衝突によって形成する工程をさらに有することを特徴とする付記7乃至14のいずれか1項記載の配線基板の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、配線構造の形成が容易であり、製造工程が単純である配線基板の製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
100,300 配線基板
101,301 基板
102A,102B,105A,105B,106A,106B,107A,107B,110A,110B,111A,111B,112A,112B,201A,201B,302A,302B,401A,401B パターン配線
103A,103B,108A,108B,113A,113B,204A,204B,404A,404B、405A,405B 絶縁層
104A,104B,109A,109B,203A,203B,403A,403B ビアプラグ
120,410 実装部品
121,411 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層上にマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンの開口部に、エアロゾルの衝突によって導電材料よりなる突起構造体を形成する工程と、
前記突起構造体が形成された前記導電層上を絶縁層で覆い、該導電層、該突起構造体および該絶縁層を含む貼り付け構造体を形成する工程と、
前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記貼り付け構造体を基板に貼り付ける工程の後で、前記導電層をエッチングによりパターニングする工程を有することを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程では、前記基板上に形成されたパターン配線と前記突起構造体が接続されるように貼り付けが行われることを特徴とする請求項1または2記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図4M】
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【図4N】
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【図4O】
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【公開番号】特開2012−49579(P2012−49579A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270229(P2011−270229)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2007−36478(P2007−36478)の分割
【原出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】