説明

配線基板収容装置および照明器具

【課題】配線基板を確実に支持し収容できると共にコスト的にも有利な配線基板収容装置および照明器具を提供する。
【解決手段】電子部品11が配設された配線基板12と;配線基板を収容するケース部材13と;配線基板とケース部材の両側面側13a3に位置し点状に離間して充填される電気絶縁材15と;を具備する配線基板収容装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した配線基板を支持し収容する放電灯点灯装置等の配線基板収容装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば放電灯点灯装置においては、点灯回路を構成する電子部品に発熱を伴う部品が存在し、これら部品の温度上昇を低減させることにより、点灯装置の信頼性を向上させることが行われている。例えば、特許文献1には、各種電子部品を基板に配線して配線ブロックを構成し、配線ブロックをケース内に収納保持するようにした収納構造において、ケース内の放熱を必要とする電子部品に対応する部分に、電子部品の熱を放熱させるように樹脂が局部的に充填されている配線ブロックの収納構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−326306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるものは、ケース内の放熱を必要とする電子部品に対応する部分に、電子部品の熱を放熱させるように樹脂が局部的に充填されている。このため、本願の図8(a)(b)に示されるように、放熱を必要とする電子部品1が基板2の一辺側に片寄って配置された場合、基板の組立時には樹脂3がケース4内の一側面側に片寄って部分的に塗布され、基板1が樹脂3の塗布部分を起点に斜めに収納され、基板をケース内に水平に支持し収納することができない。また、これを解決するために、樹脂をケース内の全体にわたって充填すれば基板を水平に支持することができるが、樹脂の使用量が大幅に増加しコスト的な問題が生じる。
【0005】
また、一般的に、この種の配線基板収容装置においては、ケースが金属で構成され、配線基板とケースとの電気絶縁を図るためにケース内面に絶縁シートが設けられ、この絶縁シートとケースとの間に隙間が形成されることから放熱の妨げになり、より効果的に放熱することが可能な配線基板収容装置を如何にして実現するかが課題になっている。
【0006】
本発明は、上記の問題、課題に鑑みてなされたもので、配線基板を確実に支持し収容できると共にコスト的にも有利な配線基板収容装置および照明器具を提供しようとするものである。さらに、電子部品の放熱を効果的に行うことが可能な配線基板収容装置および照明器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配線基板収容装置の発明は、電子部品が配設された配線基板と;配線基板を収容するケース部材と;配線基板とケース部材の両側面側に位置し点状に離間して充填される電気絶縁材と;を具備していることを特徴とする。本発明によれば、配線基板とケース部材の両側面側に位置し点状に離間して充填される電気絶縁材により、配線基板を確実に支持し収容できると共にコスト的にも有利な配線基板収容装置を構成することができる。
【0008】
本発明において、配線基板収容装置は、蛍光灯、高圧放電灯などの点灯装置に用いられることが好適であるが、発光ダイオード等の電源装置、さらには、これら照明装置に限らず電子部品を配設した配線基板を用いる各種電子機器等に適用することができる。
【0009】
配線基板は、各種の電子回路を構成するための電子部品を配設するための部材で、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂やガラスエポキシ材、紙フェノール材等の非金属性の部材で構成され、その表面に配線パターンを形成し、この配線パターン上に電子部品を実装して配設されることが好ましいが、基板の構成および実装するための手段は特定のものに限定されない。基板の材質もアルミニウム、銅、ステンレス等の熱伝導性の良好な金属で構成し、その表面にシリコン樹脂等の電気絶縁層を介して配線パターンを形成し、この配線パターン上に電子部品を実装して配設してもよい。さらにセラミックスで構成されたものであってもよい。また、配線基板の形状は、放電灯点灯装置等を構成する場合には矩形状の長尺状をなす形状に構成することが好ましいが、これらの形状に限定されることなく、板状の円形、または四角形や六角形などの多角形状、さらには楕円形状等をなすものであってもよく、目的とする機能を得るための全ての形状が許容される。
【0010】
ケース部材は、配線基板を収容するもので、底面および両側面を有する箱体をなしていることが好ましい。ケース部材は配線基板および電子部品を覆うように、例えば、配線基板を支持するケース体と、このケース体を覆う蓋ケースにより構成することが好ましいが、ここでは覆うことは条件でなく、配線基板を支持するケース体のみで構成したのもであってもよい。
【0011】
またケース部材の材質は、電子部品の放熱性を高めるために熱伝導性の良好な金属、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属で構成することが好ましいが、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂で構成したものであってもよい。さらには、高熱伝導樹脂等の合成樹脂で構成してもよい。外観形状は、配線基板と同様に、放電灯点灯装置等を構成する場合には矩形状の長尺状をなす形状に構成することが好ましいが、これらの形状に限定されることなく目的とする機能を得るための全ての形状が許容される。
【0012】
電気絶縁材は、配線基板とケース部材の両側面側に位置し、点状に離間して充填されることにより、配線基板をケース部材に対し略水平な状態にして確実に支持し収容するための部材で、例えば、ケース部材の両側面側に千鳥状に点状に離間して充填されることが好ましいが、ケース部材の両側面側にそれぞれ対向するように点状に離間して充填するようにしてもよく、要は、配線基板が電気絶縁材を起点として斜めに傾くことなく、配線基板とケース部材の両側面側に位置し、点状に離間して充填されるものであればよい。配線基板に配設された発熱を伴う電子部品は、予めケース部材の両側面側に千鳥状若しくはそれぞれが対向するように配設し、電気絶縁材はこの電子部品に対向した位置に充填されることが放熱性を考慮した場合には好ましいが、ここでは、専ら配線基板をケース部材に確実に支持することを目的としており、電気絶縁材は発熱を伴う電子部品に対向させずに充填したものであってもよい。
【0013】
電気絶縁材の材質は、例えば、ポリウレタン樹脂やシリコン樹脂などの電気絶縁性を有し、かつ熱伝導性を有する合成樹脂発泡材が放熱性を考慮した場合には好適であるが、ここでは、配線基板をケース部材に確実に支持し収容するための発泡性を有しない、シリコン樹脂やエポキシ樹脂等からなる接着剤で構成されたものであってもよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の配線基板収容装置において、前記ケース部材は、金属で構成すると共に、ケース部材の下面と配線基板との間に設けられる絶縁シートを有し、絶縁シートはケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、開口部の開口面積を電子部品の開口部対向面積と略同等以上となし、開口部を介して前記電気絶縁材が隙間に充填されることを特徴とする。本発明によれば、電子部品の放熱を効果的に行うことが可能な配線基板収容装置を構成することができる。
【0015】
本発明において、絶縁シートは、金属で構成されたケース部材と配線基板との電気絶縁をなすための部材で、ケース部材の下面と配線基板との間に設けられる。絶縁シートの材質は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の柔軟性を有する合成樹脂で構成されることが好ましいが、紙材や不織布等でシート状に構成されたものであってもよい。絶縁シートは、ケース部材との間に隙間を有して設けられるが、その隙間は、絶縁シート自体の撓み等をもって形成されるものであっても、樹脂からなる電気絶縁材が硬化する前に形成される隙間等であってもよい。
【0016】
また、絶縁シートに発熱を伴う電子部品に対向して形成される開口部は、絶縁シートの底面または側面、若しくは底面および側面の両方に形成されるものであってもよい。開口部の形状は、発熱を伴う電子部品の開口部に対向する面の形状と同様の形状、すなわち、電子部品の開口部に対向する面の形状が円形であれば、この円形に対応した円形の開口部を形成することが好ましいが、必ずしも同様の形状にする必要はなく、例えば、電子部品が円形であれば、これを囲み内包するような大きさの正方形の開口を形成したものであってもよく、要は、開口部の開口面積を電子部品の開口部対向面積と略同等以上となし、開口部を介して電気絶縁材が隙間に充填されるようにすればよい。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の配線基板収容装置において、前記ケース部材は、金属で構成すると共に、ケース部材の下面と配線基板との間に設けられる断面が略コ字状をなす絶縁シートを有し、絶縁シートは側面がケース部材の側面と対向しケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、前記電気絶縁部材が絶縁シートの側面および配線基板の側面に達するように充填されると共に、開口部を介して隙間に充填されることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の照明器具の発明は、光源を点灯させる点灯装置を構成する請求項1ないし3いずれか一記載の配線基板収容装置と;配線基板収容装置を有する器具本体と;を具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、配線基板とケース部材の両側面側に位置し点状に離間して充填される電気絶縁材により、配線基板を確実に支持し収容できると共に、電気絶縁材の使用量を減らすことができコスト的にも有利な配線基板収容装置を提供することができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、絶縁シートはケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、開口部の開口面積を電子部品の開口部対向面積と略同等以上となし、開口部を介して前記電気絶縁材が隙間に充填されるようにしたので、電子部品の放熱を効果的に行うことが可能な配線基板収容装置を提供することができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、絶縁シートは側面がケース部材の側面と対向しケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、前記電気絶縁部材が絶縁シートの側面および配線基板の側面に達するように充填されると共に、開口部を介して隙間に充填されるようにしたので、絶縁シートをケース部材に確実に支持することができると共に、電子部品の放熱を効果的に行うことが可能な配線基板収容装置を構成することができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、コスト的にも有利で、かつ電子部品の放熱を効果的に行うことが可能な点灯装置を用いた照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態である配線基板収容装置を示し、(a)はケース部材に電気絶縁材を充填した状態を示す上面図、(b)は(a)に配線基板を収容しA−A線に沿って断面した図、(c)は(b)における要部、すなわち、電気絶縁材の充填状態を拡大して示す断面図。
【図2】同じく配線基板収容装置を示し、(a)は配線基板の上面図、(b)は蓋ケース、箱状に成形した上側絶縁シートと下側絶縁シートおよびケース体の断面図。
【図3】同じく配線基板収容装置を組み込んだ照明器具を概略的に示す断面図。
【図4】同じく配線基板収容装置の変形例を示し、(a)は第1の変形例を示す図1(a)相当図、(b)は第2の変形例を一部切り欠いて示す図1(b)相当図、(c)は第3の変形例を一部切り欠いて示す図1(b)相当図。
【図5】本発明の第2実施形態である配線基板収容装置を示し、(a)は図1(b)相当図、(b)は一部を切り欠いて示す(a)の下面図、(c)は(a)を天井面に設置した状態を示す断面図。
【図6】同じく第2実施形態である配線基板収容装置における放熱性能を確認するための実験に用いた4種類の配線基板収容装置を概略的に示す断面図。
【図7】同じく実験結果を示すグラフ。
【図8】従来の配線基板収容装置を示し、(a)は図1(a)相当図、(b)は(a)に配線基板を収容しA−A線に沿って断面した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る配線基板収容装置の実施形態について、図面に従い説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例の配線基板収容装置10は、蛍光ランプ用の点灯装置を構成するもので、図1に示すように、電子部品11が配設される配線基板12、配線基板を収容するケース部材13、ケース部材と配線基板との電気絶縁をなす絶縁シート14、配線基板と絶縁シート14との間に充填される電気絶縁材15で構成する。
【0026】
電子部品11は、本実施例では蛍光ランプを点灯するための点灯装置を構成する複数の電子部品、すなわち、インバータトランス11a、スイッチングトランジスタ11b、インダクタ11c、インバータをスイッチング制御するコントロール部11d、平滑コンデンサ11e、その他の抵抗等からなる。この各種電子部品の内、インバータトランス11a、インダクタ11cなどの巻線類、スイッチングトランジスタ11b、抵抗などは発熱を伴う部品となる(図2(a))。
【0027】
配線基板12は、上記の各電子部品が配設されるもので、本実施例では矩形状の薄い長尺な平板状のエポキシ樹脂からなる合成樹脂で構成され、その表面に銅箔からなる配線パターンが形成され、この配線パターン上に上述した複数の電子部品11が実装して配設され点灯装置が構成される。この場合、発熱を伴う電子部品、すなわち、インバータトランス11a、インダクタ11c、スイッチングトランジスタ11bなどが、配線基板12の長手方向両側縁部側に位置し、かつそれらが千鳥状をなすように点状に離間させて配置される(図2(a))。
【0028】
ケース部材13は図1(b)、図2(b)に示すように、熱伝導性の良好な金属、本実施例ではアルミニウムで構成されたケース体13aと、このケース体の開口部を覆う蓋ケース13bからなる。ケース体13aは、両端部が閉塞され上方に開口部13a1が形成され、下面13a2および両側面13a3を有する縦断面形状が略コ字形をなし矩形状の長尺状をなす箱体に構成する。蓋ケース13bも略同様に縦断面形状が略U字形をなし矩形の長尺状をなす箱体に構成され、配線基板12をケース体13a内に支持し収容した後に、ケース体の開口部13a1を覆うように外側から被せるようにして嵌め込まれる。
【0029】
絶縁シート14は、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる合成樹脂で、ケース部材13のケース体13aに設けられる下側絶縁シート14aと、蓋ケース13bに設けられる上側絶縁シート14bで構成される。下側絶縁シート14aは、ケース体13aと同様に両端部が閉塞され上方に開口部14a1を有し、下面14a2および両側面14a3を有する断面が略コ字状をなす箱状に成形される。すなわち、アルミニウムからなるケース部材13と配線基板12や電子部品11との電気絶縁をなすように、ケース体13aの内面、すなわち、下面13a2および両側面13a2に対向し合致して沿う形状の箱体に形成される。
【0030】
上側絶縁シート14bも蓋ケース13bと同様に両端部が閉塞され下方に開口部14b1を有し、上面14b2および両側面14b3を有する断面が略U字状をなす箱状に成形され、アルミニウムからなる蓋ケース13bと配線基板12や電子部品11との電気絶縁をなすように、蓋ケース13bの内面、すなわち、上面13b2および両側面13b2に対向し合致して沿う形状の箱体に形成される。
【0031】
電気絶縁材15は、本実施例ではポリウレタン樹脂からなる熱伝導性を有する合成樹脂発泡材からなり、図1(a)(b)に示すように、配線基板12とケース部材のケース体13a両側面13a3側、換言すれば、配線基板12とケース体13aとの間に介在する下側絶縁シート14aの両側面14a3側に位置し、かつ千鳥状に点状に離間して配置された発熱を伴う電子部品11a、11b、11c等に対向した位置に充填される。これにより、千鳥状に充填された個々の電気絶縁材15が、発熱を伴う電子部品11a等が実装された配線基板12裏面側と、下側絶縁シート14aの下面14a2から一方の側面14a3および配線基板12の側面12aを越えて配線基板の上面まで若干達するように密着して充填される(図1(c)中の電気絶縁材15a)。
【0032】
これにより、配線基板12がケース体13aに確実に支持されると共に、配線基板12の側面12aを越えて配線基板の上面まで若干達した電気絶縁材15aにより下側絶縁シート14aの上縁部および配線基板12の側面12aが押えられ、下側絶縁シート14aおよび配線基板12の長手方向における位置ずれが防止され、下側絶縁シート14aをケース体13aに確実に支持することができる。同時に電子部品11→配線基板12→電気絶縁材15→下側絶縁シート14a→ケース体13aの放熱経路が構成される(図1(b))。
【0033】
次に、上記に構成される配線基板収容装置10の組立手順につき説明する。なお、予め配線基板12の表面に各電子部品11を実装する。この際、発熱を伴う電子部品、すなわち、インバータトランス11a、インダクタ11c、スイッチングトランジスタ11bを配線基板12の長手方向両側縁部側に位置し、かつ千鳥状をなすように点状に離間させて実装する。
【0034】
次に、予め箱状に成形された下側絶縁シート14aを、ケース体13aの内面、すなわち、下面13a2および両側面13a3に対向させ合致させるように装着する。次に、下側絶縁シート14aの内面の予め指定された位置、すなわち、千鳥状をなすように点状に離間させて実装された発熱を伴う電子部品11a等が対向するケース体13a、すなわち下側絶縁シート14aの下面14a2および両側面14a3側に位置して、電気絶縁材15を、千鳥状をなすように点状に離間させて充填し塗布する(図1(a))。
【0035】
次に、上記に塗布された電気絶縁材15に対して、電子部品11を実装した配線基板12を電子部品が上方で、かつ発熱を伴う電子部品11a等が電気絶縁材15に対応するように、換言すれば、発熱を伴う電子部品11a等が実装された部分の配線基板12の裏面側と塗布された電気絶縁材15が接着されるように位置させて、ケース体13aの開口部13a1から挿入し、加熱することにより電気絶縁材15を硬化させ固めて収容する。
【0036】
この際、電気絶縁材15が千鳥状をなすように点状に離間させて充填し塗布されているので、従来の図8(b)に示すように、配線基板12は斜めに傾くことなく、略水平に、すなわち、ケース体13aの下面13a2に対して傾くことなく支持される。同時に配線基板12は、電気絶縁材15によって下側絶縁シート14aの下面14a2および両側面14a3、換言すれば、下側絶縁シート14aと形状が合致し密着しているケース体13aの下面13a2および両側面13a3に連結して固定されるので確実に支持される。
【0037】
また、この際、電気絶縁材15は、下側絶縁シート14aの底面14a2から一方の側面14a3および配線基板12の側面12aを越えて配線基板の上面まで若干達するように充填され、電気絶縁材15aにより下側絶縁シート14aの上縁部および配線基板12の側面12aが押えられる(図1(c))。
【0038】
次に、配線基板12および電子部品11を覆うようにしてケース体13aの開口部13a1に対して、上側絶縁シート14bを装着した蓋ケース13bの開口部13b1を被せて両者をネジ等の手段で固定し、蛍光灯用の点灯装置である配線基板収容装置10が構成される。
【0039】
この際、図1(c)に示すように、上側絶縁シート14bにおける側面14b3の下縁部が、下側絶縁シート14aの上縁部と蓋ケース13bの側面13b3との間隔に挟み込まれて保持される。この場合、下側絶縁シート14aの上縁部が、配線基板12の上面まで若干達するように充填された電気絶縁材15aにより押えられているので、下側絶縁シート14aの上縁部における配線基板12側への倒れ込み(図中点線および矢印で示す)を極力抑えることができ、上側絶縁シート14bも確実に蓋ケース13bに支持することができる。
【0040】
上記に構成された蛍光灯用の点灯装置である配線基板収容装置10は、照明器具に組み込まれて蛍光灯を光源とした照明器具が構成される。すなわち、図3に示すように、20は照明器具で、直管形の2本の蛍光灯21を器具本体22の反射体23に沿って設置し、反射体の裏側となる器具本体内に点灯装置である配線基板収容装置10が組み込まれ、天井面Xに直付けされるライン形の照明器具20が構成される。なお、配線基板収容装置10に収容された配線基板12の入力端子には電源部からの入力線が接続され、出力端子には出力線が接続され光源である蛍光灯21に点灯出力が供給される。
【0041】
上記のように構成された照明器具20を点灯すると、点灯装置を構成する電子部品、特に発熱を伴う電子部品であるインバータトランス11a、インダクタ11c、スイッチングトランジスタ11bの温度が上昇し熱が発生する。その熱は、電子部品11→配線基板12→電気絶縁材15→下側絶縁シート14a→ケース体13aの放熱経路を介して外部に効果的に放熱される。また、ケース部材13内に篭った熱も上側絶縁シート14bを介し蓋ケース13bから外部に放熱される。
【0042】
以上、本実施例によれば、電気絶縁材15が千鳥状をなすように点状に離間させて充填し塗布されているので、配線基板12は斜めに傾くことなく、自動的に略水平に保った状態で確実に支持し収容することができると共に、水平に保持するための工程が不要となり組立作業を簡易化させることができる。同時に、配線基板12は、電気絶縁材15によって下側絶縁シート14aの下面14a2および両側面14a3、換言すれば、下側絶縁シート14aと形状が合致し密着しているケース体13aの下面13a2および両側面13a3に連結して固定されるので確実に支持し収容することができる。
【0043】
同時に、電気絶縁材15は、配線基板12に千鳥状をなうように点状に離間させて実装された発熱を伴う電子部品11a等に対向した位置に千鳥状をなすように点状に離間させて充填し塗布されているので、発熱を伴う電子部品11a等から発生する熱を配線基板12の裏面から熱伝導性を有する電気絶縁材15介して外部に効果的に放熱される。特に、電気絶縁材15は絶縁シートの下面14a2および両側面14a3に連結して固定されるので確実に熱がケース体13aに伝達されてより効果的に放熱させることができ、上述のように配線基板12をケース部材13に確実に支持し収容できる効果を発揮しつつ、部品の信頼性を高めることが可能な配線基板収容装置および照明器具を提供することができる。
【0044】
また、発熱を伴う電子部品11a等は、配線基板12に千鳥状をなすように点状に離間させて実装されるので、各発熱部品間における熱的な干渉が少なくなり部品の温度上昇を抑制することもできる。また、電気絶縁材15は点状に離間させて充填し塗布されるので、使用量を低減させることができコスト的に有利な配線基板収容装置および照明器具を提供することができる。
【0045】
また、電気絶縁材15は、下側絶縁シート14aの下面14a2から一方の側面14a3および配線基板12の側面12aを越えて配線基板の上面まで若干達するように密着して充填されるので、電気絶縁材15aにより下側絶縁シート14aの上縁部および配線基板の側面12aが押えられ、下側絶縁シート14aおよび配線基板12の長手方向における位置ずれが防止され、下側絶縁シート14aをケース体13aに確実に支持することができる。また同時に、上側絶縁シート14bにおける側面14b3の下縁部が下側絶縁シート14aの上縁部と蓋ケース13bの側面13b2との間隔に挟み込まれて保持され、下側絶縁シート14aの上縁部が、配線基板12の上面まで若干達するように充填された電気絶縁材15aにより押えられているので、下側絶縁シート14aの上縁部における配線基板12側への倒れ込みを極力抑えることができ、上側絶縁シート14bも確実に蓋ケース13bに支持することができる。
【0046】
以上、本実施例において、電気絶縁材1を千鳥状をなすように点状に離間させて充填し塗布したが、図4(a)に示すように、ケース部材13の両側面13a3側にそれぞれが対向するように点状に離間して充填するようにしてもよい。この場合、発熱を伴う電子部品11a等もケース部材13の両側面13a3側にそれぞれが対向するように点状に離間して位置させ配線基板12に実装して配設する。これによれば、配線基板12を自動的に略水平に保った状態で確実に支持し収容することができ、組立作業を簡易化させることができ、さらに配線基板12をケース体13aの下面13a2および両側面13a3に連結して確実に支持し収容することができると共に、各電子部品を、デッドスペースを少なくして効果的に配置して実装することが可能となり、配線基板の小形化さらには配線基板収容装置の小形化を達成することができる。
【0047】
また、図4(b)に示すように、下側絶縁シート14aの下面14a2および両側面14a3に貫通する開口14a4を形成し、電気絶縁材15を、この開口14a4を介してケース体13aの下面13a2および両側面13a3に向けて充填するように構成してもよい。これによれば、電気絶縁材15とケース体13aが直接接触して連結されるので、より効果的に熱をケース部材13に伝達することができ、一層効果的な放熱を行うことができると共に、配線基板12をより強固にケース体13aに支持し収容することができる。この場合、開口14a4は絶縁シート14の下面14a2若しくは両側面14a3のいずれか一方に設けるようにしてもよい。
【0048】
また、ケース部材13をアルミニウムからなる金属で構成したが、図4(c)に示すように、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の電気絶縁性を有する合成樹脂で構成してもよい。この場合には電気絶縁のための絶縁シートを省略し、電気絶縁材15をケース体13aの下面13a2および両側面13a3に直接充填し塗布するように構成する。これによれば、配線基板12を直接ケース体13aに支持し収容することができると共に、熱を電気絶縁材15から直接ケース部材13に伝達させることができる。なお、変形例を示す図4には、図1〜図3と同一部分に同一の符号を付し詳細な説明は省略した。
【実施例2】
【0049】
本実施例は、発熱を伴う電子部品の熱をより確実に放熱させると共に、配線基板を確実に支持し収容するようにしたものである。すなわち、図5(a)(b)に示すように、ケース部材13は、実施例1と同様にアルミニウムからなるケース体13aと蓋ケース13bで構成すると共に、ケース体13aの下面と配線基板12との間に設けられる絶縁シート14を有して構成する。
【0050】
絶縁シート14は、下側絶縁シート14aと上側絶縁シート14bからなり、特に下側絶縁シート14aとケース体13aの下面との間に隙間sを有して設けられると共に、配線基板12の裏面側に実装された発熱を伴う電子部品11aに対向した位置に開口部14a5を形成し、開口部の開口面積s1を、発熱を伴う電子部品11aの開口部対向面積s2と略同等以上となし(s1≧s2)、この開口部14a5を介して電気絶縁材15が隙間sに充填されるように構成する。なお、隙間sは、合成樹脂からなる絶縁シート14の撓みなどによって生じる約1mm程度の隙間である。また、電気絶縁材15は電子部品11aの周囲を囲むように充填されている。
【0051】
上記構成によれば、発熱を伴う電子部品11aの熱をより確実にケース部材13に伝達して、より効果的に放熱できることが次の実験により確かめることができた。すなわち、配線基板12の裏面に発熱を伴う電子部品11aを実装し、この電子部品の周囲を囲むようにして電気絶縁材15を下側絶縁シート14aとの間に充填した4種類(図6(A)〜(D))の構成の配線基板収容装置で比較した。
【0052】
先ず、下側絶縁シート14aをケース部材13の下面に完全に密着した構成(図6(A))、下側絶縁シート14aとケース部材13の下面との間に故意に約1mmの隙間sを形成した構成(図6(B))、下側絶縁シート14aとケース部材13の底面との間に1mmの隙間sを形成し、かつ配線基板12に実装された発熱を伴う電子部品11aに対向した位置に開口部14a5を形成し、開口部の開口面積s1を電子部品11aの開口部対向面積s2の略15%の大きさとし、この開口部14a5からケー支部材13に向けて電気絶縁材15を充填した構成(図6(C))、下側絶縁シート14aとケース部材13の底面との間に1mmの隙間sを形成し、かつ配線基板12に実装された発熱を伴う電子部品11aに対向した位置に開口部14a5を形成し、開口部の開口面積s1を電子部品11aの開口部対向面積s2の略同一の大きさとし、この開口部14a5からケー支部材13に向けて電気絶縁材15を充填した構成(図6(D))の各構成における発熱を伴う電子部品11aの温度上昇値(deg)を測定した。
【0053】
なお、発熱を伴う電子部品11aは、蛍光灯用の点灯装置におけるインバータの前段に配置され、作動時に常時電流が流れるサイリスタを配線基板12の裏面側に実装した。サイリスタは約6mm角であり、図6(C)の構成における開口部14a5は約2.33mm角に形成し、開口部の開口面積s1を電子部品11の開口部対向面積s2の略15%(s1≒15/100s2)に構成し、図6(D)の構成における開口部14a5は約6mm角に形成し、開口部の開口面積s1と電子部品11の開口部対向面積s2を略同等(s1≒s2)に構成した(図5(b))。
【0054】
上記実験の結果を図7のグラフに示す。このグラフは、図6のA、B、C、Dに示す各構成の配線基板収容装置における発熱を伴う電子部品11aの温度上昇値(deg)をプロットしたもので、グラフ中a点は図6(A)の構成における温度上昇値、b点は図6(B)の構成における温度上昇値、c点は図6(C)の構成における温度上昇値、d点は図6(D)の構成における温度上昇値をそれぞれ示している。
【0055】
上記から明らかなように、a点とd点の温度上昇値(deg)は、略同様の値であり、図6(D)の構成でも、図6(A)の構成と略同等の放熱性能を有することが明らかになった。これは、下側絶縁シート14aに隙間が形成されていても、開口部14a5の開口面積s1を電子部品11aの開口部対向面積s2と略同等以上となし(s1≧s2)、この開口部14a5を介して電気絶縁材15が隙間sに充填されるように構成すれば、下側絶縁シート14aをケース部材13の底面に完全に密着した構成(図6(A))と同程度の良好な放熱性能を発揮することができることが確認された。
【0056】
したがって、本実施例における構成の配線基板収容装置10によれば、合成樹脂からなる絶縁シート14の撓み等によって生じる約1mm程度の隙間が絶縁シート14とケース部材13との間に形成されても良好な放熱性能を発揮することができる。さらに、樹脂からなる電気絶縁材14の硬化までに衝撃等で絶縁シート14とケース部材13との間に隙間が形成されても良好な放熱性能を発揮することができる。さらには、蛍光灯用の点灯装置において、図5(c)に示すように、例えば、ケース部材13の下面側が天井面X等に設置された場合には、配線基板12および電子部品11等の重さで下側絶縁シート14aがケース体13aの下面から離れる方向に重力がかかり隙間sが形成され易くなる。しかし、この場合でも良好な放熱性能を発揮することができる。これらから明らかなように、本実施例の配線基板収容装置10によれば、絶縁シート14とケース部材13との間に隙間sが生じた場合でも、確実に放熱路を確保することができ、良好な放熱性能を発揮することができる。
【0057】
なお、本実施例を示す、図5、図6には、実施例1の図1〜図4と同一部分に同一符号を付し詳細な説明は省略した。また、本実施例のおける他の構成、作用、作用効果、変形例等は実施例1と同様である。以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の各実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
10 配線基板収容装置
11 電子部品
12 配線基板
13 ケース部材
14 絶縁シート
14a4、14a5 開口部
15 電気絶縁材
s 隙間
20 照明器具
21 光源
22 器具本体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が配設された配線基板と;
配線基板を収容するケース部材と;
配線基板とケース部材の両側面側に位置し点状に離間して充填される電気絶縁材と;
を具備していることを特徴とする配線基板収容装置。
【請求項2】
前記ケース部材は、金属で構成すると共に、ケース部材の下面と配線基板との間に設けられる絶縁シートを有し、絶縁シートはケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、開口部の開口面積を電子部品の開口部対向面積と略同等以上となし、開口部を介して前記電気絶縁材が隙間に充填されることを特徴とする請求項1記載の配線基板収容装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、金属で構成すると共に、ケース部材の下面と配線基板との間に設けられる断面が略コ字状をなす絶縁シートを有し、絶縁シートは側面がケース部材の側面と対向しケース部材との間に隙間を有して設けられると共に、配線基板に実装された発熱を伴う電子部品に対向した位置に開口部を形成し、前記電気絶縁部材が絶縁シートの側面および配線基板の側面に達するように充填されると共に、開口部を介して隙間に充填されることを特徴とする請求項1記載の配線基板収容装置。
【請求項4】
光源を点灯させる点灯装置を構成する請求項1ないし3いずれか一記載の配線基板収容装置と;
配線基板収容装置を有する器具本体と;
を具備していることを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−225762(P2010−225762A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70143(P2009−70143)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】