説明

配線基板

【課題】周波数が2.5GHz以上の高速信号を低損失で伝送することが可能であり、さらに接地電位または電源電位安定のための高い電流供給能力を有するとともに剛性が高く反りの小さな薄型の配線基板を提供すること。
【解決手段】厚みが60〜110μmの第1の絶縁層1と、第1の絶縁層1の上下に積層された厚みが25〜40μmの複数の第2の絶縁層3とを含み、周波数が1GHz以下の低速信号が伝送される帯状の低速信号配線8s1は第2の絶縁層3同士の層間に配設されているとともに、第1の厚みT1および第1の幅W1を有し、周波数が2.5GHz以上の高速信号が伝送される帯状の高速信号配線8s2は、第1の絶縁層1と第2の絶縁層3との層間に配設されているとともに、第1の厚みT1より厚い第2の厚みT2および第1の幅W1より広い第2の幅W2を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための配線基板としてビルドアップ配線基板が知られている。図3にそのような従来の配線基板20を断面模式図で示す。図3に示すように、従来の配線基板20は、コア用の導体層12が被着されたコア用の絶縁層11の上下面にビルドアップ用の絶縁層13とビルドアップ用の導体層14とを交互に複数層積層してなる。
【0003】
コア用の絶縁層11は、例えばガラスクロス入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に使用されている。絶縁層11の厚みは、一般的には400〜800μm程度である。絶縁層11の上面から下面にかけては、複数のスルーホール11aが形成されている。スルーホール11aの直径は、一般的には100〜300μm程度である。
【0004】
コア用の導体層12は、銅箔や銅めっき層を含む導電材料からなり、絶縁層11の上下面およびスルーホール11a内面に被着されている。導体層12の厚みは、絶縁層11の上下面では20〜25μm程度であり、スルーホール11a内では10〜20μm程度である。絶縁層11の上下面に被着された導体層12は、サブトラクティブ法によりパターン形成されている。また導体層12が被着されたスルーホール11a内の内部は、孔埋め樹脂15により充填されている。孔埋め樹脂15は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
【0005】
ビルドアップ用の絶縁層13は、無機絶縁フィラー入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に使用されている。無機絶縁フィラーとしては酸化ケイ素粉末が好適に使用されている。絶縁層13の厚みは、一般的には25〜35μm程度である。各絶縁層13の上面から下面にかけては、複数のビアホール13aが形成されている。ビアホール13aの直径は、50〜65μm程度である。
【0006】
ビルドアップ用の導体層14は、銅箔や銅めっき層を含む導電材料からなり、各絶縁層13の表面およびビアホール13a内に被着されている。導体層14の厚みは絶縁層13の表面では10〜15μm程度であり、ビアホール13a内を完全に充填している。絶縁層13の表面に被着された導体層14は、セミアディティブ法によりパターン形成されている。
【0007】
さらに、最表層の絶縁層13および導体層14の上には、導体層14の一部を露出させるようにしてソルダーレジスト層16が被着されている。ソルダーレジスト層16は、無機絶縁フィラー入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、アクリル変性エポキシ樹脂等の感光性を有する熱硬化性樹脂が好適に使用されている。無機絶縁フィラーとしては酸化ケイ素粉末が好適に使用されている。ソルダーレジスト層16の厚みは、10〜30μm程度である。
【0008】
配線基板20の上面中央部には、多数の半導体素子接続パッド17が形成されている。これらの半導体素子接続パッド17は、最上層の導体層14を上面側のソルダーレジスト層16から円形に露出させることにより形成されている。半導体素子接続パッド17は、格子状に配列されており、その直径は、50〜100μm程である。また半導体素子接続パッド17の配列ピッチは、100〜200μm程度である。これらの半導体素子接続パッド17には、半導体素子Sの電極Tがフリップチップ接続される。
【0009】
他方、配線基板20の下面には、多数の外部接続パッド18が形成されている。これらの外部接続パッド18は、最下層の導体層14を下面側のソルダーレジスト層16から円形に露出させることにより形成されている。外部接続パッド18は格子状に配列されており、その直径は300〜1000μm程度である。また外部接続パッド18の配列ピッチは、600〜2000μm程度である。これらの外部接続パッド18は、図示しない電気回路基板の配線導体に半田等の接続部材を介して電気的に接続される。なお、これらの半導体素子接続パッド17と外部接続パッド18とは、互いに対応するもの同士が、導体層12および導体層14を介して電気的に接続されている。
【0010】
ところで、半導体素子接続パッド17には、半導体素子Sの信号用の電極Tに接続される信号用の半導体素子接続パッド17sと、半導体素子Sの接地用または電源用の電極Tに接続される接地用または電源用の半導体素子接続パッド17vとがある。また、外部接続パッド18には、信号用の半導体素子接続パッド17sに電気的に接続された信号用の外部接続パッド18sと、接地用または電源用の半導体素子接続パッド17vに電気的に接続された接地用の外部接続パッド18vとがある。
【0011】
そして導体層14の一部は、配線基板20の中央部から外周部にかけて絶縁層13の層間を延在する複数の細い帯状の信号配線19sを形成している。これらの信号用配線19sは、その一端側が信号用の半導体素子接続パッド17sに電気的に接続されているとともに他端側が信号用の外部接続パッド18sに電気的に接続されている。信号配線19sの幅は、一般的には20〜30μm程度である。
【0012】
さらに、導体層12および導体層14の一部は、絶縁層13を挟んで信号配線19sに対向する複数のベタ状の接地用または電源用配線19vを形成している。これらの接地用または電源用配線19vは、接地用または電源用の半導体素子接続パッド17vおよび外部接続パッド18vに電気的に接続されている。
【0013】
しかしながら、この従来の配線基板20によると、信号配線19sは厚みが25〜35μm程度の薄いビルドアップ用の絶縁層13の層間に形成されていることから、信号配線19sに所定の特性インピーダンスを付与するためには、信号配線19sの幅を20〜30μmの細いものとする必要がある。信号配線19sの幅が細いと、その分信号配線19sのレジスタンスおよびインダクタンスが大きくなる。そして、このように幅が20〜30μmの細い信号配線19sに例えば2.5GHz以上の高速信号を伝送させると、信号配線19sの持つレジスタンスおよびインダクタンスに起因して信号が大きく損失し、その高速信号を効率よく伝送させることができないという問題がでてくる。
【0014】
また、従来の配線基板20では、コア用の絶縁層11の厚みが400〜800μmと厚いことから、その分だけ配線基板20の厚みを薄くすることが困難である。さらに、絶縁層11の厚みが400〜800μmと厚いことに起因して、絶縁層11を貫通するスルーホール11a内の導体層12のインダクタンスが高くなる。スルーホール11a内の導体層12のインダクタンスが高いと、スルーホール11aを通過する信号の損失が大きくなるとともに、スルーホール11aを介した接地電位または電源電位の供給能力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−258335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その解決しようとする課題は、周波数が2.5GHz以上の高速信号を、低損失で伝送することが可能で、接地電位または電源電位安定のための電流供給能力が高い、薄型の反りの少ない配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の配線基板は、ガラスクロス入りの樹脂材料から成り、上下に積層された複数の絶縁層と、前記絶縁層の層間に配設されており、周波数が1GHz以下の低速信号が伝送される帯状の低速信号配線および周波数が2.5GHz以上の高速信号が伝送される帯状の高速信号配線を含む複数の信号配線と、該信号配線を挟んだ二つの前記絶縁層における前記信号配線と反対側の面に前記信号配線を挟んで上下に対向するように配置された複数のベタ状の接地用または電源用配線とを具備して成る配線基板であって、前記絶縁層は、厚みが60〜110μmの第1の絶縁層と、該第1の絶縁層の上下に積層された厚みが25〜40μmの複数の第2の絶縁層とを含み、前記低速信号配線は、前記第2の絶縁層同士の層間に配設されているとともに、第1の厚みおよび第1の幅を有し、前記高速信号配線は、前記第1の絶縁層と第2の絶縁層との層間に配設されているとともに、前記第1の厚みより厚い第2の厚みおよび前記第1の幅より広い第2の幅を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配線基板によれば、周波数が1GHz以下の低速信号が伝送される帯状の低速信号配線を、厚みが25〜40μmの第2の絶縁層同士の層間に配設するとともに、周波数が2.5GHz以上の高速信号が伝送される帯状の高速信号配線を、厚みが60〜110μmの第1の絶縁層と厚みが25〜40μmの第2の絶縁層との層間に配設したことから、所定の特性インピーダンスを有する高速信号配線を低速信号配線よりも厚く、かつ広い幅で形成することができ、それにより高速信号配線のレジスタンスおよびインダクタンスを低いものとすることができる。さらに、厚みが60〜110μmの第1の絶縁層の上下に厚みが25〜40μmの複数の第2の絶縁層を積層することから、配線基板の厚みを薄くすることが可能であるとともに、各絶縁層を貫通する導体(例えばビアホール)のインダクタンスを低いものとすることができる。したがって、本発明の配線基板によれば、周波数が2.5GHz以上の高速信号を、低損失で伝送することが可能である。またコア用の絶縁層は、その厚みが60〜110μmと従来の400〜800μmより十分に薄いことから、この絶縁層を貫通する導体(例えばビアホール)のインダクタンスを低いものとすることができる。したがって、接地電位または電源電位安定のための電流供給能力が高い薄型の配線基板を提供することができる。また、絶縁層をガラスクロス入りの樹脂材料から形成することにより薄型であるにも拘らず剛性が高く、反りの少ない配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板の要部断面模式図である。
【図3】図3は、従来の配線基板を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の配線基板を添付の図を基に説明する。図1は本発明の実施形態の一例を示す配線基板10の概略断面図である。図1に示すように、本例の配線基板10は、コア用の導体層2が被着されたコア用の絶縁層1の上下面にビルドアップ用の絶縁層3とビルドアップ用の導体層4とを交互に複数層積層してなる。
【0021】
コア用の絶縁層1は、ガラスクロス入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に使用される。絶縁層1の厚みは、60〜110μm程度である。絶縁層1の上面から下面にかけては、複数のビアホール1aが形成されている。ビアホール1aの直径は、30〜100μm程度である。なお絶縁層1の比誘電率は、3〜4程度である。
【0022】
このような絶縁層1は、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化させたプリプレグの両面に厚みが2〜18μm程度の銅箔を被着させたものを熱硬化させた後、両面の銅箔をエッチング除去することにより得られる。このとき、銅箔の絶縁層1側の面に微細な凹凸を設けておくと、絶縁層1の露出面にも微細な凹凸を形成することができ、それにより絶縁層1の上下面にコア用の導体層2を極めて強固に被着させることができる。
【0023】
また、ビアホール1aは、レーザ加工により形成される。レーザ加工では、ビアホール1aにおけるレーザの入射側の開口径が出射側の開口径よりも大きくなる。ビアホール1aの開口径は、レーザの入射側で80〜100μm程度、出射側で30〜60μm程度である。したがって、ビアホール1aはテーパ形状となる。ビアホール1aがこのようにテーパ形状であると、ビアホール1aの内部をコア用の導体層2で良好に充填することが容易となる。なお、ビアホール1aを形成した後には、デスミア処理をすることが好ましい。
【0024】
コア用の導体層2は、主として銅めっき層を含む導電材料からなり、絶縁層1の上下面およびビアホール1a内に被着されている。導体層2の厚みは、絶縁層1の上下面では17〜20μm程度であり、ビアホール1a内ではビアホール1aを完全に充填する厚みである。絶縁層1の上下面に被着された導体層2は、セミアディティブ法によりパターン形成されている。
【0025】
この場合のセミアディティブ法によるパターン形成は、例えば以下の方法が採用される。まず絶縁層1の上下面およびビアホール1a内面に厚みが0.1〜1μm程度の薄い無電解銅めっき層を被着させる。次にその無電解銅めっき層上にビアホール1aおよびその周辺を露出させるめっきレジスト層を形成する。次にめっきレジスト層から露出するビアホール1a内およびその周囲の絶縁層1の上下面に電解銅めっきを析出させてビアホール1aの内部を電解銅めっきにより完全に充填するとともにビアホール1aおよびその周辺上に例えば40μm程度の厚みの電解銅めっき層を形成する。次にその電解銅めっき層をビアホール1aの上下端から5〜40μm程度凹む程度までエッチングしてビアホール1aの上下方向の中央部を充填するように電解銅めっき層を残す。次に絶縁層1の上下面からめっきレジストを除去するとともに、絶縁層1の上下面およびビアホール1a内の露出面に厚みが0.1〜1μm程度の薄い無電解銅めっき層を被着させる。次にその無電解銅めっき層上にコア用の導体層2のパターンに対応する開口パターンを有するめっきレジスト層を形成する。次にめっきレジスト層の開口パターン内に露出する無電解銅めっき層上に電解銅めっきを析出させてビアホール1aを電解銅めっきで完全に充填するとともに絶縁層の上下面に厚みが17〜20μm程度の電解銅めっき層を形成する。最後にめっきレジスト層を除去するとともに、電解銅めっき層から露出する無電解銅めっき層をエッチング除去することによりパターン形成する。
【0026】
ビルドアップ用の絶縁層3は、コア用の絶縁層1と同様にガラスクロス入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に使用されている。絶縁層3の厚みは、25〜40μm程度である。絶縁層1の上面から下面にかけては、複数のビアホール3aが形成されている。ビアホール3aの直径は、30〜70μm程度である。なお絶縁層3の比誘電率は、3〜4程度である。
【0027】
このような絶縁層3は、コア用の導体層2が形成されたコア用の絶縁層1の上下面に、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化したプリプレグと厚みが2〜18μm程度の銅箔とを順次重ねて積層するとともにれらを上下から加圧加熱することにより熱硬化させた後、表面の銅箔をエッチング除去することにより得られる。このとき、銅箔の絶縁層3側の面に微細な凹凸を設けておくと、絶縁層3の露出面にも微細な凹凸を形成することができ、それにより絶縁層3の上下面にビルドアップ用の導体層4を極めて強固に被着させることができる。
【0028】
また、ビアホール3aは、レーザ加工により形成される。レーザ加工では、ビアホール3aにおけるレーザの入射側の開口径が出射側の開口径よりも大きくなる。ビアホール3aの開口径は、レーザの入射側で30〜70μm程度、出射側で30〜50μm程度である。したがって、ビアホール3aはテーパ形状となる。ビアホール3aがこのようにテーパ形状であると、ビアホール3aの内部をビルドアップ用の導体層4で良好に充填することが容易となる。なお、ビアホール3aを形成した後には、デスミア処理をすることが好ましい。
【0029】
ビルドアップ用の導体層4は、主として銅めっき層を含む導電材料からなり、絶縁層3の表面およびビアホール3a内に被着されている。導体層4の厚みは、絶縁層3の表面では15〜17μm程度であり、ビアホール3a内ではビアホール3aを完全に充填する厚みである。絶縁層3の上下面に被着された導体層4は、セミアディティブ法によりパターン形成されている。
【0030】
この場合のセミアディティブ法によるパターン形成は、例えば以下の方法が採用される。まず絶縁層3の表面およびビアホール3a内面に厚みが0.1〜1μm程度の薄い無電解銅めっき層を被着させる。次にその無電解銅めっき層上にビルドアップ用の導体層4のパターンに対応する開口パターンを有するめっきレジスト層を形成する。次にめっきレジスト層の開口パターン内に露出する無電解銅めっき層上に電解銅めっきを析出させてビアホール3aを電解銅めっきで完全に充填するとともに絶縁層の上下面に厚みが15〜17μm程度の電解銅めっき層を形成する。最後にめっきレジスト層を除去するとともに、電解銅めっき層から露出する無電解銅めっき層をエッチング除去することによりパターン形成する。
【0031】
さらに、最表層の絶縁層3および導体層4の上には、導体層4の一部を露出させるようにしてソルダーレジスト層5が被着されている。ソルダーレジスト層5は、無機絶縁フィラー入りの樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、アクリル変性エポキシ樹脂等の感光性を有する熱硬化性樹脂が好適に使用されている。無機絶縁フィラーとしては酸化ケイ素粉末が好適に使用されている。ソルダーレジスト層5の厚みは、10〜30μm程度である。
【0032】
このようなソルダーレジスト層は、例えば感光性を有する熱硬化性樹脂を含有する樹脂フィルムを最表層の絶縁層3および導体層4の上に貼着するとともに周知のフォトリソグラフィ技術を採用して所定のパターンに露光および現像した後、熱硬化させることにより形成される。
【0033】
配線基板10の上面中央部には、多数の半導体素子接続パッド6が形成されている。これらの半導体素子接続パッド6は、最上層の導体層4を上面側のソルダーレジスト層5から円形に露出させることにより形成されている。半導体素子接続パッド6は、格子状に配列されており、その直径は、50〜100μm程である。また半導体素子接続パッド6の配列ピッチは、100〜200μm程度である。これらの半導体素子接続パッド6には、半導体素子Sの電極Tがフリップチップ接続される。
【0034】
他方、配線基板10の下面には、多数の外部接続パッド7が形成されている。これらの外部接続パッド7は、最下層の導体層4を下面側のソルダーレジスト層5から円形に露出させることにより形成されている。外部接続パッド7は格子状に配列されており、その直径は300〜1000μm程度である。また外部接続パッド7の配列ピッチは、600〜2000μm程度である。これらの外部接続パッド7は、図示しない電気回路基板の配線導体に半田等の接続部材を介して電気的に接続される。なお、これらの半導体素子接続パッド6と外部接続パッド7とは、互いに対応するもの同士が導体層2および導体層4を介して電気的に接続されている。
【0035】
半導体素子接続パッド6には、半導体素子Sの信号用の電極Tに接続される信号用の半導体素子接続パッド6sと、半導体素子Sの接地用または電源用の電極Tに接続される接地用または電源用の半導体素子接続パッド6vとがある。また、外部接続パッド7には、信号用の半導体素子接続パッド6sに電気的に接続された信号用の外部接続パッド7sと、接地用または電源用の半導体素子接続パッド6vに電気的に接続された接地用の外部接続パッド7vとがある。
【0036】
そして導体層2および導体層4の一部は、配線基板10の中央部から外周部にかけて絶縁層3同士の層間や絶縁層1と絶縁層3との層間を延在する複数の細い帯状の信号配線8sを形成している。これらの信号用配線8sは、その一端側が信号用の半導体素子接続パッド6sに電気的に接続されているとともに他端側が信号用の外部接続パッド7sに電気的に接続されている。なお信号配線8sは、例えば周波数が1GHz以下の低速信号が伝送される低速信号配線8s1と、周波数が2.5GHz以上の高速信号が伝送される高速信号配線8s2とを有している。
【0037】
さらに、導体層2および導体層4の一部は、絶縁層1や絶縁層3を挟んで信号配線8sに対して上下に対向する複数のベタ状の接地用または電源用配線8vを形成している。これらの接地用または電源用配線8vは接地用または電源用の半導体素子接続パッド6vおよび外部接続パッド7vに電気的に接続されている。これらの接地用または電源用配線8vは、絶縁層1や絶縁層3を挟んで信号配線8sに対して上下に対向するように配設されていることにより、信号配線8sを電磁的にシールドするとともに、信号配線8sに対して所定の特性インピーダンスを付与している。
【0038】
ところで本発明においては、低速信号配線8s1は厚みが25〜40μmのビルドアップ用の絶縁層3同士の層間に、厚みが15〜17μmのビルドアップ用の導体層4により形成されている。また高速信号配線8s2は厚みが60〜110μmのコア用の絶縁層1と厚みが25〜40μmのビルドアップ用の絶縁層3との間に、厚みが17〜20μmのコア用の導体層2により形成されている。
【0039】
その結果、図2に信号配線8sの延在方向に垂直な要部断面模式図で示すように、低速信号配線8s1とその上下の接地用または電源用配線8vとは厚みが上下ともに25〜40μmの絶縁層3を挟んで対向している。このような配置をとることにより、例えば絶縁層3の比誘電率が3〜4であり、特性インピーダンスが50Ωの低速信号配線8s1を形成するであれば、幅W1は15〜30μm程度となる。この場合、低速信号配線8s1の厚みT1が15〜17μmと薄く、かつ幅W1が15〜30μm程度と細いものであったとしても、低速信号配線8s1を伝送される低速信号の周波数が1GHz以下とあまり高くないことから、低速信号配線8S1における信号の損失はそれ程大きくなることはない。したがって、低速信号配線8s1を周波数が1GHz以下の低速信号を十分に効率よく伝送させることができる。
【0040】
他方、高速信号配線8s2とその上下の接地用または電源用配線8vとは、一方が厚み25〜40μmのビルドアップ用の絶縁層3を挟んで対向しおり、他方が厚み60〜110μmのコア用の絶縁層1を挟んで対向している。このような配置をとることにより、例えば絶縁層1および絶縁層3の比誘電率が3〜4であり、特性インピーダンスが50Ωの高速信号配線8s2を形成する場合であれば、幅W2は40〜50μm程度となる。この場合、高速信号配線8s2の厚みT2が17〜20μm程度と厚く、かつ幅W2が40〜50μmと広いものとなるので、高速信号配線8s2のレジスタンスおよびインダクタンスを低いものとすることができる。さらに、コア用の絶縁層1は、その厚みが60〜110μmであり、十分に薄いことから、この絶縁層1を貫通するビアホール1a内を充填する導体層2のインダクタンスを低いものとすることができる。したがって、本発明の配線基板10によれば、周波数が2.5GHz以上の高速信号を低損失で伝送することが可能である。また絶縁層1が十分に薄いことからビアホール1aのインダクタンスを低いものとすることができる。したがって接地電位または電源電位安定のための電流供給能力が高い薄型の配線基板を提供することができる。さらに、絶縁層1および絶縁層3をガラスクロス入りの樹脂材料から形成することにより薄型であるにも拘らず剛性が高く、反りの少ない配線基板10とすることができる。
【0041】
なおコア用の絶縁層1の厚みが60μm未満である場合、絶縁層1を挟んで対向する高速信号配線8s2と接地用または電源用配線8vとの間隔が狭いものとなるので、所定の特性インピーダンスを有する高速信号配線8s2の幅を十分に広くすることができなくなる。その結果、高速信号配線8s2のレジスタンスおよびインダクタンスが高くなって、高速信号配線8s2に周波数が2.5GHz以上の高速信号を低損失で伝送させることが困難となる。またコア用の絶縁層1の厚みが110μmを超える場合、絶縁層1を挟んで対向する高速信号配線8s2と接地用または電源用配線8vとの電磁的な結合が弱まるために、所定の特性インピーダンスを有する高速信号配線8s2の幅をそれ以上に拡げることが困難となる。さらにコア用の絶縁層1の厚みが110μmを超えると、配線基板10を薄型化することが困難である。したがって、コア用の絶縁層1の厚みは、60〜110μmの範囲であることが好ましい。
【0042】
またビルドアップ用の絶縁層3の厚みが25μm未満である場合、所定の特性インピーダンスを有する低レジスタンスおよび低インダクタンスの信号配線8sを十分な幅で形成することが困難となり、40μmを超えると、所定の特性インピーダンスを有する信号配線8sを得るために信号配線8sの幅が広いものとなって高密度配線を実現することが困難となるとともに、配線基板10を薄型化することが困難である。したがって、ビルドアップ用の絶縁層3の厚みは25〜40μmの範囲が好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1,3 絶縁層
2,4 導体層
8s1 低速信号配線
8s2 高速信号配線
8v 接地用または電源用配線
T1 低速信号配線8s1の厚み
T2 高速信号配線8s2の厚み
W1 低速信号配線8s1の幅
W2 高速信号配線8s2の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロス入りの樹脂材料から成り、上下に積層された複数の絶縁層と、前記絶縁層の層間に配設されており、周波数が1GHz以下の低速信号が伝送される帯状の低速信号配線および周波数が2.5GHz以上の高速信号が伝送される帯状の高速信号配線を含む複数の信号配線と、該信号配線を挟んだ二つの前記絶縁層における前記信号配線と反対側の面に前記信号配線を挟んで上下に対向するように配置された複数のベタ状の接地用または電源用配線とを具備して成る配線基板であって、前記絶縁層は、厚みが60〜110μmの第1の絶縁層と、該第1の絶縁層の上下に積層された厚みが25〜40μmの複数の第2の絶縁層とを含み、前記低速信号配線は、前記第2の絶縁層同士の層間に配設されているとともに、第1の厚みおよび第1の幅を有し、前記高速信号配線は、前記第1の絶縁層と第2の絶縁層との層間に配設されているとともに、前記第1の厚みより厚い第2の厚みおよび前記第1の幅より広い第2の幅を有していることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110293(P2013−110293A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254838(P2011−254838)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】