説明

配線材保持具及び配線材保持具を備えた変換コネクタ

【課題】 簡素な構成で前記ウィスカによる回路短絡等の不都合を確実に防ぐ。
【解決手段】 複数本の導体12が幅方向に並べられたフラット配線材10A,10Bの端末部分を保持する配線材保持具30に、前記導体12同士の短絡を防止する機能を付与する。すなわち、前記配線材保持具30に前記フラット配線材10A,10Bが挿入される配線材挿入溝32A,32Bを設けるとともに、これら挿入溝32A,32Bの内側面に短絡防止突出部36を突設し、この短絡防止突出部36が露出状態の導体21同士の間に介在する位置で前記絶縁層に接触することにより当該導体12同士を隔離するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット配線材の端末部分を保持して対応する端子に接続する配線材保持具及び当該配線材保持具を備えたコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に使用される配線材として、複数本の偏平な導体がその幅方向と平行な方向に並べられてこれらの導体を被覆する絶縁層により一体化されたフラット配線材が普及しているが、このようなフラット配線材は十分な可撓性を有するために配線形態の自由度が高いという長所を有する反面、そのままの状態では通常の電線や基板回路に接続しにくいという不都合がある。
【0003】
そこで、このようなフラット配線材の各導体をこれに対応する端子に接続するための手段として、特許文献1には、前記フラット配線材の端末部分であって端末処理された部分(すなわち一方の絶縁層が除去されることにより各導体の一方の面が露出状態とされた部分)を保持する配線材保持具(同文献では「配線材側コネクタC2」)と、前記フラット配線材の各導体に対応する端子を保持する端子保持具(同文献では「基板側コネクタC1」)とを備え、これら配線材保持具と端子保持具とを結合することにより前記各導体が前記各端子に接触して電気的に接続されるように構成されたコネクタが開示されている。
【特許文献1】特開2002−42924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記フラット配線材の端末部分においては、各導体の金属めっき皮膜表面に所謂ウィスカ(微小なヒゲ状の結晶生成物)が発生することがある。特に、当該導体が相手方の端子と接触する際に当該端子と擦れ合うと、前記ウィスカが発生する確率が高くなる。このように特定の導体に発生したウィスカがその隣の導体に接触すると、これらの導体間で短絡が生じ、回路異常が発生するおそれがある。
【0005】
特に近年は、フラット配線材の小幅化を目的として導体間のピッチの削減が検討されているが、当該ピッチが小さくなるほど前記ウィスカによる不都合が発生しやすくなるため、当該ウィスカが前記導体ピッチの削減の妨げともなっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡素な構成で前記ウィスカによる回路短絡等の不都合を確実に防ぐことができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、複数本の偏平な導体がその幅方向と平行な方向に並べられてこれらの導体を被覆する絶縁層により一体化されたフラット配線材の端末部分であって前記各導体の一方の面が露出する状態とされた部分を保持し、かつ、そのフラット配線材の各導体が接続されるべき端子を保持する端子保持具と結合されることにより前記各導体を前記各端子に電気的に接続する配線材保持具であって、前記フラット配線材の端末部分が挿入される配線材挿入溝をもつ保持具本体と、前記配線材挿入溝に挿入されるフラット配線材の端末部分を係止する配線材係止部とを備え、かつ、前記配線材挿入溝の内側面に、露出する状態とされた前記導体同士の間に介在する位置で前記絶縁層に接触することにより当該導体同士を隔離する形状の短絡防止突出部が形成されているものである。
【0008】
また本発明は、前記配線材保持具と、この配線材保持具により保持されるフラット配線材の各導体が接続されるべき端子を保持する端子保持具とを備え、これら配線材保持具と端子保持具とが互いに結合されることにより前記各導体と前記各端子とが電気的に接続されるように構成されているコネクタである。
【0009】
以上の構成において、配線材保持具の配線材挿入溝にフラット配線材の端末部分を挿入して配線材係止部により係止することにより、当該配線材保持具にフラット配線材の端末部分を保持させることができるとともに、当該配線材挿入溝の内側面から突出する短絡防止突出部が前記フラット配線材の絶縁層に対して露出状態の導体同士の間の位置で接触することにより、当該導体同士を隔離することになる。従って、この導体とその相手方端子とが擦れ合う等してウィスカが発生しても、当該ウィスカに起因して隣接する導体同士が短絡するといった不都合を未然に防止することができる。
【0010】
特に、前記端子が前記フラット配線材の導体に接続される部分が前記フラット配線材の端末部分が差し込まれることにより当該端末部分を挟持する形状をもつ挟持部とされているものでは、この挟持部と前記導体との擦れ合いによって前記ウィスカが比較的発生し易くなるため、本発明に係る短絡防止突出部がより効果的となる。
【0011】
この短絡防止突出部は、前記フラット配線材の表裏両側のうち少なくとも導体が露出している側に設けられていればよいが、当該短絡防止突出部が前記フラット配線材の表裏両側について設けられている構成とすれば、配線材挿入溝に挿入されるフラット配線材の向きに関わらず前記の短絡防止効果を得ることが可能になる。
【0012】
前記コネクタの端子保持具に保持される端子は、例えば回路基板やその他の回路ユニットに据付けられるものでもよいが、前記フラット配線材の各導体に接続される第1接続部と、この端子保持具に結合される相手方コネクタに保持される端子と嵌合される第2接続部とを両端に有する変換端子とすることにより、当該コネクタを、相手方コネクタと結合されることにより前記フラット配線材の各導体を前記変換端子を介して前記相手方コネクタの端子に接続する変換コネクタとして構成することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、配線材保持具の構造を利用した簡素な構成でフラット配線材の導体におけるウィスカの発生による回路短絡等の不都合を確実に防ぐことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すフレキシブルケーブルは、配線部WPと、その両側端末にそれぞれ設けられた変換コネクタTCとを備えている。
【0016】
前記配線部WPは、複数枚の薄肉のフラット配線材がその厚み方向に間隔をおいて積層されたもので、これらのフラット配線材の中間部分は保護用の配線材カバーWCに挿通されている。この配線材カバーWCは、可撓性を有するようにキャタピラ状あるいは蛇腹状に形成されている。
【0017】
図例では、前記配線部WPが8枚のフラット配線材を含んでおり、これらのフラット配線材が4枚ずつの2つのグループに分けられ、各グループについて前記変換コネクタTCが設けられている。以下、図1手前側のグループについてその構造を開示する。
【0018】
このグループには、図2にも示されるように、小電流用の2枚のフラット配線材10Aと、その両外側に積層される大電流用の2枚のフラット配線材10Bとが含まれている。
【0019】
各フラット配線材10A,10Bは、図6(a)(b)に示すように、複数本の導体12と、これら導体12を表裏両側から被覆する絶縁層13,14とを含んでいる。各導体12は偏平な断面形状を有し、その幅方向に平面状に配列された状態で、絶縁層13,14同士の間に挟み込まれ、かつ、各導体12同士の間に前記絶縁層14が介在している。ここで、小電流用のフラット配線材10Aは幅狭の6本の導体12を含み、大電流用のフラット配線材10Bは幅広の2本の導体12を含んでいる。
【0020】
図2及び図4(a)(b)に示すように、各フラット配線材10A,10Bの端末においては、その表側の絶縁層13が局所的に除去されて導体12が露出しており、その反対側(裏側)に厚みの大きな補強板16が積層されて接着されている。
【0021】
さらに、各補強板16及びこの補強板16に重なる配線材本体の幅方向両端部(図1では上下端部)には、その厚み方向に貫通する切欠18が形成されている。これらの切欠18は、後述の配線材保持具30により係止される被係止部を構成している。
【0022】
前記変換コネクタTCは、前記の4枚のフラット配線材10A,10Bの端末に共通して接続され、当該フラット配線材10A,10Bからなる配線部WPを外部回路に接続する媒体としての役割を果たす。この変換コネクタTCの具体的構造を図2〜図11に示す。
【0023】
この変換コネクタTCは、図2に示すように、複数本の小電流用の変換端子40と、複数本の大電流用の変換端子50と、これらの変換端子40,50を一括保持するハウジングとを備えている。このハウジングは、前記各変換端子40,50を保持する端子保持具20と、前記各フラット配線材10A,10Bの端末をまとめて保持する配線材保持具30とで構成されている。
【0024】
前記各変換端子40の一方の端部は前記フラット配線材10Aの各導体12に接続される第1接続部42とされ、他方の端部は図略の相手方コネクタ(すなわちこの変換コネクタTCと結合されるコネクタ)のコネクタ端子に嵌合される第2接続部44とされている。
【0025】
前記第1接続部42は、図3及び図4(a)に示すように、フラット配線材10Aの端末を表裏両側から挟み込む一対の挟持片42a,42aを有している。各挟持片42a,42aの端部には、内向きに突出する挟持部42bが形成され、これら挟持部42b同士の間に前記フラット配線材10Bの端末を挟みこんだ状態でその一方の挟持部42bが露出状態の導体12に接触して当該導体12と電気的に導通できるようになっている。
【0026】
これに対して前記第2接続部44は、図略の相手方コネクタに設けられた端子の雌型接触部に嵌入可能なタブ、すなわち雄型接触部となっている。
【0027】
同様に、前記各変換端子50の一方の端部は前記フラット配線材10Bの各導体12に接続される第1接続部52とされ、他方の端部は図略の相手方コネクタ(すなわちこの変換コネクタTCと結合されるコネクタ)のコネクタ端子に嵌合される第2接続部54とされている。
【0028】
前記第1接続部52は、図3及び図4(b)に示すように、フラット配線材10Bの端末を表裏両側から挟み込む一対の挟持壁52a,52aを有している。各挟持壁52aは、その先端部が内側に折り返されて内向きに山型のばね挟持片52b,52bが形成された構造を有しており、これらばね挟持片52b,52bの弾性的な撓み変形を伴いながら当該ばね挟持片52b,52b同士の間に前記フラット配線材10Bの端末を挟みこんだ状態でその一方の挟持部52bがその弾性復帰力に相当する圧力で露出状態の導体12に接触して当該導体12と電気的に導通できるようになっている。
【0029】
これに対して前記第2接続部54は、前記第1接続部44と同様、図略の相手方コネクタに設けられた端子の雌型接触部に嵌入可能なタブ、すなわち雄型接触部となっている。
【0030】
前記ハウジングの端子保持具20は、端子保持壁22と、この端子保持壁22の前後両側に形成される角筒状のフード24,26とを一体に有している。
【0031】
前記各端子保持壁22には、前記各変換端子40,50がその軸方向に貫通しており、この貫通状態で当該各変換端子40,50の中間部(第1接続部42,52と第2接続部44,54との間の部位)が当該端子保持壁22に保持されている。
【0032】
これら変換端子40,50の配列は、前記各フラット配線材10A,10Bにおける各導体の配列に対応する配列とされている。具体的には、図5に示すように水平方向に積層される4枚のフラット配線材10A,10B,10B,10Aに対応して縦4列に前記変換端子40,50が配列されており、左右両外側の2列では6個の変換端子40の第1接続部42が上下方向の一直線状に並ぶように配列され、その内側の2列では2個の変換端子50の第1接続部52が上下方向の一直線状に並ぶように配列されている。
【0033】
なお、図例では変換端子40の第1接続部42と第2接続部44とが左右にオフセットされており、前記第1接続部42が縦方向に整列された状態で各第2接続部44が左右2列に振り分けられるレイアウトとなっている(図2及び図5参照)。
【0034】
端子保持具20のフード24は、前記各変換端子40,50の第1接続部42,52を保護する役割を担うとともに、後述のように配線材保持具30が連結される連結部としての役割を担う。また、端子保持具20のフード26は、前記各変換端子40,50の第2接続部44,54を保護する役割を担うとともに、相手方コネクタのハウジングと嵌合する嵌合部としての役割を担う。
【0035】
配線材保持具30は、前記端子保持具20の正面形状(各変換端子40,50の端子軸方向から見た形状)に対応する正面形状をもつブロック状の本体を有し、この本体を前記端子軸方向と平行な方向に貫通する2本の配線材挿入溝32A及び2本の配線材挿入溝32Bが前記フラット配線材10A,10Bの配列に対応する配列で縦4列に形成されている。
【0036】
具体的に、前記配線材挿入溝32Aはフラット配線材10Aが挿通可能な形状を有するものであり、左右両外側の位置に形成されている。一方、配線材挿入溝32Bはフラット配線材10Bが挿通可能な形状を有するものであり、両配線材挿入溝32A同士の間の位置に形成されている。
【0037】
また、図3及び図4(a)に示すように、前記配線材挿入溝32Aの奥側部分(変換端子40側の部分)には、その変換端子40の第1接続部42が挿入可能な左右方向の端子挿入溝32aが形成され、同様に前記配線材挿入溝32Bの奥側部分(変換端子50側の部分)には、その変換端子50の第1接続部52が挿入可能な左右方向の端子挿入溝32bが形成されている。
【0038】
さらに、この配線材保持具30は、前記各配線材挿入溝32A,32Bの上下端にランス34を有している。これらのランス34は、前記各配線材挿入溝32A,32Bに挿通されるフラット配線材10A,10Bの被係止部すなわち前記切欠18を係止する配線材係止部に相当するものである。
【0039】
具体的に、各ランス34は、配線材保持具30の後端部(端子保持具20と反対側の端部)から前方に向かって延びる片持ち梁状をなし、その自由端部に内向きの係止突起34bを有している。そして、このランス34自体の弾性撓み変形により、前記係止突起34bが前記各フラット配線材10A,10Bの切欠18に嵌まり込む係止位置と、この係止位置から外側に待避する待避位置との間で変位可能となっている。
【0040】
さらに、この配線材保持具30は、前記端子保持具20と完全結合される完全結合位置(図3(b)、図7(b)、図9(c)、図10(b)、及び図11(b)に示される位置)と、この完全結合位置よりも手前側の位置であって当該配線材保持具30に保持されるフラット配線材10A,10Bと前記端子保持具20に保持される変換端子40,50とが離間する仮結合位置(図3(a)、図7(a)、図9(a)(b)、図10(a)、及び図11(a)に示される位置)との間で移動可能となるように前記端子保持具20に連結されている。
【0041】
具体的には、図8,図10,図11に示されるように、前記端子保持具20のフード26の左右側壁に前後方向に延びる貫通長孔27及び貫通孔28が形成される一方、配線材保持具30の左右両外側面に突起37,38が形成されている。そして、前記貫通長孔27に前記突起37が嵌まり込むことにより、この貫通長孔27内で突起37が変位可能なストローク分だけ端子保持具20に対して配線材保持具30が前記完全結合位置と仮結合位置との間で前後方向に移動可能となっており、その完全結合位置で前記突起38が前記貫通孔28に嵌まり込むことによって当該完全結合位置に配線材保持具30がロックされるようになっている。
【0042】
前記端子保持具30は、この端子保持具20と前記配線材保持具30とが完全結合されるのに伴ってそのランス34を前記係止位置に拘束する拘束部を有している。具体的には、前記フード24の上下側壁の端部に、前記各ランス34が進入可能な切欠24aが形成されるとともに、各切欠24aの奥側内側面がその奥側(図7(a)(b)では左側)に向かって内側に迫り出す向きの傾斜面24bとされている。一方、各ランス34の外側面も前記傾斜面24bに対応する傾斜面34aとされており、配線材保持具30が図7(a)及び図9(a)(b)に示す仮結合位置から図7(b)及び図9(c)に示す完全結合位置に移動するのに伴ってランス34の傾斜面34aが端子保持具20側の傾斜面24bに上下両外側から押え込まれ、当該ランス34が前記係止位置に拘束される(すなわち待避位置への変位が規制される)ようになっている。
【0043】
さらに、この配線材保持具30の特徴として、前記各配線材挿入溝32A,32Bのうち前記端子挿入溝32a,32bが形成されている領域の内側面には、当該端子挿入溝32a,32bの間の位置で軸方向に延びる複数本の短絡防止突条36が形成されている。これらの短絡防止突条36は、図例では先尖り状の断面形状を有し、その先端が前記フラット配線材10A,10Bの各導体12同士の間の位置で絶縁層13,14の表面に接触する形状を有している。
【0044】
次に、この変換コネクタTCの使用要領及び作用を説明する。
【0045】
まず、端子保持具20に対して配線材保持具30を仮結合位置に位置させた状態で、各配線材挿入溝32A,32Bにそれぞれフラット配線材10A,10Bの端末を後側(端子保持具20と反対の側)から挿入していく。
【0046】
このとき、フラット配線材10A,10Bの先端部がランス34の係止突起34bに突き当たるが、このランス34は上下両外側の待避位置に待避可能であるので、当該待避を伴いながら容易にフラット配線材10A,10Bの挿入を行うことができる。このような挿入が完全に行われると、弾性復帰したランス34が各フラット配線材10A,10Bの補強板16の切欠18に嵌まり込んで当該フラット配線材10A,10Bを仮係止する状態となる。
【0047】
また、各配線材挿入溝32A,32Bの内側面から突出している短絡防止突条36の突出端部が図6及び図7に示すようにフラット配線材10の各導体12同士の間の位置で絶縁層14の表面に接触することにより、互いに隣接する導体12同士が隔離された状態となる。
【0048】
次に、前記配線材保持具30にフラット配線材10A,10Bを仮係止したまま当該配線材保持具30を端子保持具20に対して前記仮結合位置から完全結合位置(すなわち突起38が貫通孔28に嵌まり込む位置)へ相対移動させる。
【0049】
この完全結合位置への移動に伴い、各配線材挿入溝32A,32Bの奥側に形成されている端子挿入溝32a,32b内に端子保持具20側の各変換端子40,50の第1接続部42,52が進入することにより、その第1接続部42の両挟持片42a同士の間にフラット配線材10Aの端末が挟持されるとともに第1接続部52の両ばね挟持片52同士の間にフラット配線材10Bの端末が挟持される状態となる。すなわち、フラット配線材10Aの各導体12と変換端子40の第1接続部42とが接触して両者が電気的に導通された状態になるとともに、フラット配線材10Bの各導体12と変換端子50の第1接続部52とが接触して両者が電気的に導通された状態になる。
【0050】
また、前記完全結合位置への移動に伴い、各ランス34の外側の傾斜面34aが端子保持具20側の傾斜面24bに外側から押え込まれて係止位置に拘束されることにより、当該ランス34による各フラット配線材10A,10Bの係止がより確実なものとなる。
【0051】
このようにして配線部WPの端末に変換コネクタTCを接続した後は、当該変換コネクタTCを図略の相手方コネクタに結合するだけで(すなわち各変換端子40,50の第2接続部44,54を相手方コネクタの端子に嵌合するだけで)当該変換コネクタTC及び相手方コネクタを介して前記各フラット配線材10A,10Bを一括して外部回路に接続することができる。
【0052】
ここで、前記各導体12の表面にはウィスカ(金属めっき皮膜表面に発生したヒゲ状の結晶生成物)が発生していることがあり、特に、図示のように各変換端子40,50の第1接続部42,52にフラット配線材10の端末部分が差し込まれる構造では、当該端末部分の導体12の露出面が前記第1接続部42,52と擦れ合うことによってウィスカが発生し易くなるが、その領域において各導体12同士の間には配線材保持具30の配線材挿入溝32A,32Bの内側面に突設された短絡防止突条36が介在していて導体12同士が相互隔離された状態となっているので、前記ウィスカに起因する導体12同士の短絡が未然に防止されることとなる。
【0053】
なお、本発明は以上示した実施の形態に限られず、例えば次のような形態をとることも可能である。
【0054】
・図例では、フラット配線材10A,10Bの導体12に接続される端子がさらに別の相手方コネクタの端子に嵌合される変換端子40,50である変換コネクタを示しているが、本発明はこれに限らず、前記特許文献1に記載されるようにフラット配線材と基板回路とを接続するコネクタ、すなわち、端子保持具が回路基板上に実装されているコネクタにも適用が可能である。
【0055】
・図例では、複数枚のフラット配線材10A,10Bがまとめて各端子40,50に接続されるものを示したが、本発明は単一枚のフラット配線材の端末を保持する端子保持具及びコネクタにも適用が可能である。
【0056】
・図例では、配線材挿入溝32A,32Bの両内側面に短絡防止突条36が形成されているが、フラット配線材10の表裏の向きが決まっている場合には一方の内側面すなわち導体露出面に対応する面にのみ前記短絡防止突条36を設けるようにしてもよい。
【0057】
・本発明において短絡防止突出部の具体的な形状及び配設箇所は問わず、少なくともフラット配線材の端末において導体の一方の面が露出している部分で当該導体間を隔離するものとなっていればよい。例えば、導体間ピッチに比較的余裕がある場合には、短絡防止突出部の先端を曲面や平面としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るフレキシブルケーブルの斜視図である。
【図2】前記フレキシブルケーブルに設けられる変換コネクタの分解斜視図である。
【図3】(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す断面平面図、(b)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す断面平面図である。
【図4】(a)は図3(b)のA部断面図、(b)は図3(b)のB部断面図である。
【図5】前記変換コネクタを配線材保持具側から見た正面図である。
【図6】(a)は図5のA′部拡大図、(b)は図5のB′部拡大図である。
【図7】(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す断面側面図、(b)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す断面側面図である。
【図8】(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す側面図、(b)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す側面図である。
【図9】(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す図であってフラット配線材10Aの位置で切断した断面斜視図、(b)は同配線材保持具が同仮結合位置にある状態を示す図であってフラット配線材10Bの位置で切断した断面斜視図、(c)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す図であってフラット配線材10Aの位置で切断した断面斜視図である。
【図10】(a)(b)は前記変換コネクタを端子保持具側から見た斜視図であって、(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す斜視図、(b)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す斜視図である。
【図11】(a)(b)は前記変換コネクタを配線材保持具側から見た斜視図であって、(a)は前記変換コネクタの配線材保持具が端子保持具に対して仮結合位置にある状態を示す斜視図、(b)は同配線材保持具が完全結合位置にある状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
TC 変換コネクタ
10A,10B フラット配線材
12 導体
13,14 絶縁層
18 切欠
20 端子保持具
22 端子保持壁
30 配線材保持具
32A,32B 配線材挿入溝
34 ランス(配線材係止部)
36 短絡防止突条
40,50 変換端子
42,52 第1接続部
44,54 第2接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の偏平な導体がその幅方向と平行な方向に並べられてこれらの導体を被覆する絶縁層により一体化されたフラット配線材の端末部分であって前記各導体の一方の面が露出する状態とされた部分を保持し、かつ、そのフラット配線材の各導体が接続されるべき端子を保持する端子保持具と結合されることにより前記各導体を前記各端子に電気的に接続する配線材保持具であって、前記フラット配線材の端末部分が挿入される配線材挿入溝をもつ保持具本体と、前記配線材挿入溝に挿入されるフラット配線材の端末部分を係止する配線材係止部とを備え、かつ、前記配線材挿入溝の内側面に、露出する状態とされた前記導体同士の間に介在する位置で前記絶縁層に接触することにより当該導体同士を隔離する形状の短絡防止突出部が形成されていることを特徴とする配線材保持具。
【請求項2】
請求項1記載の配線材保持具において、前記短絡防止突出部が前記フラット配線材の表裏両側について設けられていることを特徴とする配線材保持具。
【請求項3】
請求項1または2記載の配線材保持具と、この配線材保持具により保持されるフラット配線材の各導体が接続されるべき端子を保持する端子保持具とを備え、これら配線材保持具と端子保持具とが互いに結合されることにより前記各導体と前記各端子とが電気的に接続されるように構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコネクタにおいて、前記端子が前記フラット配線材の導体に接続される部分は前記フラット配線材の端末部分が差し込まれることにより当該端末部分を挟持する形状をもつ挟持部とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項3または4記載のコネクタであって、前記端子保持具に保持される端子として、前記フラット配線材の各導体に接続される第1接続部と、この端子保持具に結合される相手方コネクタに保持される端子と嵌合される第2接続部とを両端に有する変換端子を備え、前記フラット配線材の各導体を前記変換端子を介して前記相手方コネクタの端子に接続するように構成されていることを特徴とする変換コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−164798(P2006−164798A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355787(P2004−355787)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】