説明

配線材用カッター

【課題】配線材を切断した後の切断面をやすり部から逸脱させることなく該切断面に生じたバリやエッジを安全かつ確実に短時間で研磨、除去し面仕上げする。
【解決手段】ケーブル21の切断面24を研磨するやすり部7と、ケーブル21の切断面24が研磨中にやすり部7から逸脱するのを防止する逸脱防止部9とを備えた研磨溝5をカッター1に設け、逸脱防止部9は、やすり部7に隣接して設けられた段部によって形成し、この段部にケーブル21が当接することによって前記逸脱を防止するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続などの作業において、ケーブル、電力線、信号線等の配線材を切断した後、切断面に生じたバリや角部のエッジを磨いて面仕上げするためのやすり部を備えた配線材用カッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電設工事等においてケーブル等の配線材を接続するときには、カッターで配線材を切断し、切断端部の絶縁被膜を剥がした後、露出した金属芯線を電気器具等に接続しているが、その際、配線材の切断面をやすりで磨いて面仕上げすることが行なわれている。例えば、ケーブルをコンセント内の端子に差し込むときには、切断によってケーブルの金属芯線の切断面に生じたバリや角部のエッジが誤って周辺の別のケーブルに接触して傷付けることがあるため、切断後にはやすりで切断面を磨いてこの傷付きを防止している。また、複数のケーブルを結線するジョイントボックスにおいて、内部の略円筒状のリングスリーブに切断及び絶縁被膜を剥離した後の複数のケーブルの金属芯線を挿入しこれをかしめて複数のケーブルの端部相互を結線するときには、結線部に絶縁テープを巻き付けることにより、リングスリーブの端部から外側に僅かに突出するケーブルの金属芯線が周辺の他のケーブルと接触して短絡するのを防止しているが、絶縁テープがリングスリーブにかしめられているケーブルの切断面のバリやエッジによって突き破られるのを防止するため、切断後にはケーブルの切断面を研磨して丸く仕上げている。
【0003】
ところが、ケーブルの切断面のバリやエッジの仕上げを行なうには、カッターとやすりとの2つの工具を使用することから、カッターで切断する度に、カッターをやすりに持ち替えなければならず面倒であった。また、2つの工具を用意する必要があり、作業中いずれかの工具が見当たらずに探さなければならないこともあった。
【0004】
このようなことから、カッターにやすり部を設け、切断とバリ仕上げとを兼用する工具が提案され、例えば、特開平8−155154号公報、特開平10−57638号公報にそれに関する技術が記載されている。
図9は前記特開平10−57638号公報に掲載のカッターを示し、図9において、カッター31は刀身32と柄33とを備え、この柄33の側面にやすり部34が設けられている。このカッター31を使用すれば、刃で建材を切断した後、やすり部34で切断面のバリを取り除き、面仕上げを施すことができる。したがって、カッター及びやすりを準備する手間が不要となり、作業中にカッターとやすりとを持ち替える必要もなくなり、また、これらのいずれかを見失って探す必要もなくなる。なお、前記特開平8−155154号公報には、カッター刀にやすり部が設けられ、このやすり部でプラスチック板の切断面を仕上げるカッターが記載されている。
【特許文献1】特開平8−155154号公報
【特許文献2】特開平10−57638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のやすり部を備えたカッターは、専ら建材やプラスチック板等を研磨するものであり、前述のケーブル等の配線材を切断した後に切断面に生じたバリやエッジを仕上げるには以下の点で不具合を生ずる。即ち、切断し、バリ取り仕上げやエッジ仕上げする対象が配線材である場合は、一方の手で配線材を持ち、他方の手でやすり部を備えたカッターを持って作業するのであるが、従来のカッターは合成樹脂板や建材等を研磨するためのものであるから、必然的にやすり部はカッターの刀身または柄における平らな狭い面にやすり目が僅かに表出する状態で設けられており、研磨における配線材の移動を規制するようにもなっていない。このため、やすり部に配線材を押し付け、往復移動させて研磨する際に、配線材の切断面が逸れてやすり部から外れてしまうことがあった。特に、特開平8−155154号公報に記載のカッターのように、やすり目が格子状の溝で形成され、その溝が斜めに刻設されているものは、配線材は斜めに移動し易く、やすり部からより外れ易い状態にある。
【0006】
このようなことで、研磨中に誤って配線材がやすり部から外れると、配線材の切断面のバリやエッジでカッターを保持している手の指を突いて傷付けてしまうことがあった。また、やすり部から外れた拍子に配線材を保持している手の指をカッターの刃に当てて負傷することもあった。特に、高所やスペースの小さい場所での研磨作業においてはその危険性が高かった。加えて、その危険性を考慮しながらの研磨作業となるため、慎重に作業せざるを得ず、面仕上げするには時間がかかっていた。
その一方、従来より、配線材の切断面のバリ及びエッジの仕上げを行なうための配線材専用のやすり部を備えたカッターは存在しなかった。
【0007】
そこで、本発明は、配線材を切断した後の切断面をやすり部から逸脱させることなく該切断面に生じたバリやエッジを安全かつ確実に短時間で研磨、除去し面仕上げできる配線材用カッターの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の配線材用カッターは、刀身と柄とを備え、手で前記柄を把持して配線材の絶縁被膜を剥離するものであって、配線材の切断面を研磨するやすり部と、前記配線材の切断面が研磨中に前記やすり部から逸脱するのを防止する逸脱防止部とを備えている。そして、前記逸脱防止部は、前記やすり部に隣接して設けられた段部によって形成され、前記段部に前記配線材が当接することによって前記逸脱が防止されるものである。
ここで、カッターは、切断された配線材の切断端部における絶縁被膜を剥離するために使用されるものであり、一般には、刀身が偏平板状で片側に刃先を有するものが使用される。このカッターは、更に、やすり部を備えているから、上記絶縁被膜の剥離に加え、切断面のバリやエッジの研磨、面仕上げを行なうことができる。
【0009】
前記やすり部は、配線材の切断面のバリやエッジを研磨し、滑らかに仕上げることができれば、いかなるものであってもよく、そのやすり目、材質、製造方法等は特に問わない。
前記やすり部は、カッターの刀身及び柄のいずれの箇所に設けてもよい。また、カッターの表側面、裏側面のいずれに設けてもよい。更に、1箇所に限らず、複数箇所に設けてもよい。
【0010】
前記逸脱防止部は、溝の形成や突条によって段部を形成してなり、この段部に配線材の切断端部の外面が当接することによって研磨中に配線材がやすり部から逸脱するのが防止される。この逸脱防止部は、やすり部に隣接してその周囲全体に設けられているのが望ましいが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0011】
請求項2の配線材用カッターは、特に、逸脱防止部が、やすり部の周囲に設けられたものである。
【0012】
請求項3の配線材用カッターは、特に、逸脱防止部が、外面に設けられた溝によって形成されたものである。溝の幅は、配線材の外径と略同一であるのが望ましいが、これに限られるものではない。
請求項4の配線材用カッターは、請求項3の溝が、配線材の外径と略同一幅に形成されている。ここで、前記配線材の外径とは、配線材が被覆絶縁電線である場合には、絶縁被膜を剥がして露出した金属芯線の外径を意味する。また、前記略同一幅とは、配線材が溝内に嵌入する幅、即ち丁度嵌まり合う幅の意である。
【0013】
請求項5の配線材用カッターは、やすり部が、刀身にその長手方向に沿って設けられている。
請求項6の配線材用カッターは、やすり部が、手で柄を把持した状態で直接視認される側の面に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明は、配線材の切断面が研磨中にやすり部から逸脱するのを防止する逸脱防止部を備えているから、配線材の切断面を擦ってバリやエッジを研磨、除去する際に、切断面がやすり部から逸脱するのを確実に防止できる。これにより、切断面がやすり部から逸れてその切断面のバリやエッジでカッターを保持している手の指を突いて傷付けたり、やすり部から外れた拍子に配線材を保持している手の指をカッターの刃先に当てて負傷してしまうなどの危険を確実に回避できる。そして、これにより、危険性から慎重な作業となって仕上げに時間がかかっていた従来の不具合を解消することができる。
【0015】
請求項2の発明は、逸脱防止部がやすり部の周囲に設けられているので、配線材の切断面が研磨中にやすり部から逸脱するのをより確実に防止できる。
【0016】
請求項3の発明は、逸脱防止部が、外面に設けられた溝によって形成されているから、特に、やすり部が他の部材と接触し、擦られるなどして摩耗するのが防止される。即ち、従来のやすり部を備えたカッターは、樹脂板や建材などのバリを仕上げるものであるため、やすり部がカッターの表面に形成されており、他の部材と接触し擦られたりしてやすり目が摩耗し易い状態にあったが、この請求項3の発明は、やすり部が溝の凹部内に形成され、他の部材との接触が回避されるため、前記摩耗による研磨能力の低下を防止できる。
請求項4の発明は、溝が配線材の外径と略同一幅に形成されているから、特に、配線材の端部が丁度溝内に嵌まり合い、研磨する際に、切断面は溝の幅方向にぶれることなく一定方向に安定して導かれる。したがって、配線材の切断面がやすり部から逸脱するのをより確実に防止できる。
【0017】
請求項5の発明は、やすり部がカッターの刀身に設けられているから、金属製の刀身の素材を利用して直接やすり部を設けることができ、安価に形成することができる。
請求項6の発明は、やすり部がカッターの表側面に設けられているから、配線材の絶縁被膜を剥がした後、カッターを裏返すことなく直ちに研磨作業に着手できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の配線材用カッターを図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は配線材用カッターの正面図、図2はその断面図、図3はケーブルの切断面を研磨する状態を示す正面図、図4はケーブルの切断面の研磨前後の状態を示す斜視図である。
【0019】
図1及び図2において、カッター1は電設工事等で使用され、配線材としての被覆絶縁電線からなるケーブル21の絶縁被膜23を剥離するとともに、ケーブル21の切断面24を研磨できる工具であり、ビニル樹脂等からなる絶縁被膜23を剥離する刃先3を備えた刀身2と、手で把持可能な合成樹脂製或いはゴム製の柄4とで構成されている。前記刀身2は柄4から折り畳み不能に突出している。但し、カッター1は折り畳んで柄4の内部に収納されるものであってもよい。なお、カッター1は刃先3でケーブル21の絶縁被膜23を剥がすものであるが、ケーブル21の内部の金属芯線22の外径が小さい場合は、ケーブル21の切断に用いることも可能である。前記刀身2の外面の表側面即ち手で柄を把持した状態で直接視認される側の面において刃先3と反対側の端部には、刀身2の長手方向に沿って、切断後のケーブル21の切断面24に生じたバリやエッジを研磨するための研磨溝5が凹設されている。なお、この研磨溝5は請求項の溝に相当する。
【0020】
前記研磨溝5は、刀身2に凹設された直線状の溝で形成されており、全体的に約1mmの深さに形成されている。研磨溝5の断面は、図2に示すように、略コ字状に形成され、底壁面6はやすり部7を形成し、段部の両側壁面8はケーブル21の切断面24を研磨する際に切断面24がやすり部7から逸脱するのを防止する逸脱防止部9を形成している。この逸脱防止部9は研磨溝5の周縁全体に沿って形成されている。
【0021】
前記やすり部7は刀身2と同一素材の炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等で刀身2に一体に形成され、通常の金属やすりと同様に、熱間鍛造などによる成形後、焼きなまし、研磨、目立て、焼き入れの工程を経て製造することができる。但し、この製造工程に限られるものではない。やすり目は、絞目、梨地目などのざらつきのある細かい凹凸面に形成されてなり、或いは溝が片側に形成された単目や溝が交差した複目など各種形態に形成されてなる。また、目の粗さも、荒め、中目、細目などとすることができるが、要するところ、対象となるケーブル21に対応させて切断面24のバリやエッジを効率良く研磨できるものであればよい。
【0022】
前記側壁面8に形成された逸脱防止部9は、ケーブル21の切断面24を磨く際にケーブル21の端部の絶縁被膜23を剥がして露出した金属芯線22の外周面が当接し、この逸脱防止部9に沿って案内されて、前記切断面24がやすり部7から逸脱するのが防止されるようになっている。両側壁面8の間隔即ち研磨溝5の幅は、図2に示すように、研磨溝5内をケーブル21が移動可能であってそのケーブル21の外径、より正確にはケーブル21の金属芯線22の外径と略同一の大きさに形成されている。したがって、ケーブル21の金属芯線22の先端部が丁度研磨溝5内に嵌まり合い、研磨する際に、ケーブル21の金属芯線22の切断面24は研磨溝5の幅方向にぶれることなく一定方向に安定して導かれる。
【0023】
次に、電気接続のために、ケーブル21を切断し、切断面24を研磨して仕上げるには、まず、別途のペンチやニッパ等の工具を使用してケーブル21を切断する。次いで、上記のように構成されたカッター1の柄4を手で把持してケーブル21の絶縁被膜23を剥離し、内部の金属芯線22を露出させる。次に、図3に示すように、切断したケーブル21の切断面24を研磨溝5のやすり部7である底壁面6上に配置し、底壁面6上を刀身2の長手方向に往復移動させて切断面24を研磨する。このとき、ケーブル21は研磨溝5の底壁面6に垂直状態で往復移動させたり、底壁面6に対して各方向に傾斜した状態で往復移動させたりして切断面24全体を研磨する。この研磨においては、研磨溝5の底壁面6に垂直状態で移動することにより主に切断面24のバリが除去され、傾斜状態で移動させることにより主に切断面24のエッジが曲面状に仕上げられる。そして、このとき、研磨溝5の両側壁面8の間隔はケーブル21の金属芯線22の外径と略同一に形成されているので、前述したように、ケーブル21の切断面24は幅方向にぶれたりすることなく逸脱防止部9によって案内され、真直ぐに安定して研磨溝5内を移動する。これにより、切断直後は、図4(a)に示すように、ケーブル21の切断面24にはバリ25が発生し、切断面24の両端部にはエッジ26が発生していたものが、カッター1のやすり部7による研磨後は、図4(b)に示すように、切断面24は滑らかな仕上面に形成される。なお、研磨後は、ケーブル21の金属芯線22をコンセントの端子に挿入したり、ジョイントボックス内のリングスリーブ内に挿入しかしめて結線した後、そのリングスリーブから僅かに突出しているケーブル21の金属芯線22の先端部に絶縁テープを巻回するなどして電気器具等への接続を行なう。
【0024】
次に、上記カッター1の作用を説明する。
カッター1は、やすり部7で研磨するときにケーブル21の切断面24が当接する逸脱防止部9を備えているから、ケーブル21の切断面24を擦ってバリ25やエッジ26を研磨する間に、切断面24がやすり部7から逸脱するのが確実に防止される。これにより、研磨中に切断面24がやすり部7から外れた拍子に切断面24のバリ25やエッジ26でカッター1を保持している手の指を突いて負傷したり、ケーブル21を保持している手の指をカッター1の刃先3に当てて怪我したりするのを防止することができる。
また、やすり部7は刀身2の外面に凹設された研磨溝5内に形成されているので、やすり部7が他の部材と接触し、擦られるなどして摩耗するのが防止される。
更に、やすり部7は刀身2に設けられているから、金属製の刀身2をそのまま利用して直接やすり部7を設けることができ、安価に形成することができる。
そして、やすり部7がカッター1の表側面に設けられているから、ケーブル21の絶縁被膜23を剥がした後、カッター1を裏返すことなく直ちに研磨作業に着手できる。
【0025】
ところで、上記実施形態のカッター1の研磨溝5は、刀身2の外面に略コ字状に凹設され、やすり部7は、その底壁面6に形成されているが、前記やすり部7は側壁面8にも形成してもよい。この場合、側壁面8は逸脱防止部9とやすり部7とを兼ねる。
また、前記研磨溝5は、刀身2の外面に略コ字状に凹設されているが、これに限定されるものではなく、例えば図5に示すような各種形状に形成することができる。図5(a)は研磨溝5が略楕円弧状に凹設されたものを示し、図5(b)はV字状に凹設されたものを示す。図5(b)の場合、V字状の傾斜壁面10はやすり部7及び逸脱防止部9の双方を兼ねる。
更に、前記研磨溝5は、ケーブル21の金属芯線22の外径と略同一幅に形成されているが、これに限定されるものでもない。
【0026】
そして、上記実施形態では、請求項の逸脱防止部は、研磨溝5によって形成されているが、図6に示すように、刀身2の所定の範囲を凹設してその底壁面11にやすり部7を形成し、そのやすり部7の周縁に設けられた周壁面12によって逸脱防止部を形成してもよい。この場合、周壁面12は、ケーブル21の金属芯線22がこの周壁面12に当接し、これに沿って案内されることにより、切断面24がやすり部7から逸脱するのが防止される。なお、底壁面11がある程度広い場合は、上記実施形態とは逆に、一方の手でケーブル21を保持し、他方の手でカッター1のやすり部7をケーブル21の切断面24に当接させ、カッター1を前後に移動させて研磨することも可能ではある。
【0027】
また、上記実施形態では、逸脱防止部9は、研磨溝5によって形成されているが、図7に示すように、平面13上に突条14を設け、この突条14の段部の側壁面15によって形成することも可能である。図7において、平面13上にはケーブル21の金属芯線22の外径と略同一の間隔をおいて平行する2つの突条14が設けられており、この一対の突条14,14間にやすり部7が設けられている。但し、この場合は、突条14は平面13上に突出しているので、この突条14が刀身2に設けられている場合には、例えば、石膏ボード等の板材を切断する際に、この突条14が板材と干渉して切断の妨げとなる。また、平面13に突設することにより一般には製造コストは凹設するものと比較して大きくなる。これらを考慮すると、逸脱防止部9は研磨溝5のように凹設して形成するのが望ましい。なお、この場合も、前記実施形態と同様に、一対の突条14,14の間隔は、必ずしもケーブル21の金属芯線22の外径と略同一の間隔でなくてもよい。
【0028】
加えて、上記実施形態の研磨溝5は、刀身2に設けられているが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、柄4に設けてもよい。この場合、柄4は合成樹脂或いはゴムで形成されているから、別体としてのやすり部材を埋め込むことが必要となる。但し、研磨溝5を刀身2に設けた場合は、刀身2の金属素材をそのまま利用してやすり部を形成でき、安価に製造できるという効果がある。その一方、研磨溝5を柄4に設けた場合は、刃先3から離間した位置にあるので、研磨作業を行なう際、誤ってケーブル21の切断面24が逸れてやすり部7から外れ、刃先3で指を怪我する危険をより確実に回避できる。
また、前記研磨溝5は、刀身2の表側面である手で柄を把持した状態で直接視認される側の面に設けられているが、反対側の刀身2の裏側面に設けるのを妨げるものでもない。
更に、前記研磨溝5は、刀身2の1箇所に設けられているが、刀身2或いは柄4の表側面の複数箇所に直列または並列に設け、或いは表側面と裏側面とに設けたり、刀身2と柄4とに設けるなどカッター1の複数箇所に設けてもよい。この場合、研磨溝5毎に溝幅を相違させてもよい。
そして、前記研磨溝5は、刀身2の長手方向に沿って直線状に形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、湾曲状に形成したり、円環状に形成してもよい。
【0029】
加えて、上記実施形態のやすり部7は、刀身2の素材とは別体のやすり部材、例えば、ダイヤモンドやすり、紙やすりを刀身2または柄4に埋め込むものであってもよい。また、やすり部7は、ケーブル21の逸脱防止効果をより高めるために磁性を帯びさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の配線材用カッターを示す正面図である。
【図2】図1のカッターの要部断面図である。
【図3】図1のカッターを使用してケーブルの切断面を研磨する状態を示す正面図である。
【図4】図3のケーブルの切断面を示す斜視図であり、(a)は切断直後の切断面、(b)は研磨後の切断面を示す。
【図5】図1の研磨溝の変形例を示し、(a)は略楕円弧状に形成されたもの、(b)はV字状に形成されたものを示す。
【図6】本発明の実施形態の別の逸脱防止部を示す要部断面図である。
【図7】本発明の実施形態の更に別の逸脱防止部を示す要部断面図である。
【図8】本発明の実施形態の他のカッターを示す正面図である。
【図9】従来のやすり付きカッターを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 カッター
2 刀身
5 研磨溝
7 やすり部
9 逸脱防止部
21 ケーブル
22 金属芯線
24 切断面
25 バリ
26 エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刀身と柄とを備え、手で前記柄を把持して配線材の絶縁被膜を剥離する配線材用カッターであって、
前記配線材の切断面を研磨するやすり部と、
前記配線材の切断面が研磨中に前記やすり部から逸脱するのを防止する逸脱防止部と
を備え、
前記逸脱防止部は、前記やすり部に隣接して設けられた段部によって形成され、前記段部に前記配線材が当接することによって前記逸脱が防止されることを特徴とする配線材用カッター。
【請求項2】
前記逸脱防止部は、やすり部の周囲に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の配線材用カッター。
【請求項3】
前記逸脱防止部は、外面に設けられた溝によって形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線材用カッター。
【請求項4】
前記溝は、配線材の外径と略同一幅に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の配線材用カッター。
【請求項5】
前記やすり部は、刀身にその長手方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の配線材用カッター。
【請求項6】
前記やすり部は、手で柄を把持した状態で直接視認される側の面に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の配線材用カッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−100930(P2009−100930A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275539(P2007−275539)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】