説明

配線装置及び配線ダクトシステム

【課題】配線ダクトの開口部側から接続できるとともに、その機械的接続を簡単に行えるようにして、設置作業の効率化を図ることが可能な配線装置及びこの配線装置を用いた配線ダクトシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、配線ダクト10の長手方向に沿って形成された開口部12側から接続可能な配線ダクト結合部3と、この配線ダクト結合部3に設けられ、長手方向と直交する方向に突没可能であるとともに、配線ダクト10に接続される場合、配線ダクト10の開口部12に案内されて没入し、その後、突出復帰する機械的接続手段4とを備える配線装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線装置及びこの配線装置を用いた配線ダクトシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明器具やコンセント等の電気機器を任意の箇所に配設可能とするために、当該電気機器を任意の位置に取付可能であるとともに、電気機器がいずれの取付位置でも給電可能とする配線ダクトが用いられている。配線ダクトは、ダクト本体の内側に長手方向に沿って給電用の対をなす導電部が設けられており、これら導電部と電気機器側の対の端子とが接続して電気機器がいずれの取付位置でも給電可能としているものである。このような配線ダクトは、天井面や壁面等に複数本が任意に設置され、これら配線ダクトの端部間に配線装置としてジョインタを差込み、配線ダクト相互を機械的及び電気的に接続しているものである(例えば、非特許文献1)。
【非特許文献1】松下電工 電設資材カタログ2006-2008 895頁「100Vダクトシステム・アース付ダクトシステム」[平成20年7月18日検索]、インターネット
【0003】
(http://biz.national.jp/Ebox/densetsu2006/index.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような配線ダクトは、天井面や壁面等の設置面に複数本の配線ダクトを任意に設置したい場合には、設置面に配線ダクトを取付ける前に、複数本の配線ダクトの端部開口部側から連結用のジョインタを機械的及び電気的に接続し、一体の配線ダクトユニットを形成しなくてはならない。すなわち、一方の配線ダクトに接続された連結用のジョインタに対して他方の配線ダクトの長手方向における端部開口部を挿入及び係合させることで、複数本の配線ダクトの連結が行えるものである。ゆえに、設置面に配設したい所望の配線ダクトユニットを予め準備しておく必要があるため、所望の配線ダクトユニットが比較的長いものとなると、その設置作業には大人数を必要とし、施工が煩雑となるものであった。
【0005】
また、設置面に複数本の配線ダクトを任意に設置する他の方法として、1本の配線ダクトを設置面に取付けた後に連結用のジョインタを接続し、その後、他の配線ダクトをジョインタに接続することも考えられる。しかしながら、このような方法であっても、連結用のジョインタの接続及び当該ジョインタへの配線ダクトの接続は、配線ダクトの長手方向における端部開口部側から挿入する方法であるため、配線ダクトを支えながら作業を行わなければならず、特に、設置面が天井面である場合には、設置作業が非常に煩雑となるものである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、配線ダクトの開口部側から接続できるとともに、その機械的接続を簡単に行えるようにして、設置作業の効率化を図ることが可能な配線装置及びこの配線装置を用いた配線ダクトシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配線装置は、配線ダクトの長手方向に沿って形成された開口部側から接続可能な配線ダクト結合部と;この配線ダクト結合部に設けられ、長手方向と直交する方向に突没可能であるとともに、配線ダクトに接続される場合、配線ダクトの開口部に案内されて没入し、その後、突出復帰する機械的接続手段と;
を具備することを特徴とする。
【0008】
配線装置には、例えば、I形、T形、+形等のいわゆるジョインタがあるが、本発明は、いずれにも適用可能である。長手方向と直交する方向に突没可能とは、直線的に突没する場合や回動して突没する場合等を含み、要は、突没する過程は問題ではなく、結果的に長手方向と直交する方向に突没動作できればよい。
【0009】
請求項2に記載の配線装置は、請求項1に記載の配線装置において、前記機械的接続手段は、長手方向と直交する方向に突没する少なくとも一対の係合子を有し、これら係合子は、当該直交する方向の軸線を相互に偏倚させて配設されていることを特徴とする。一対の係合子とは、必ずしも同一形状とは限らず、形状等が異なっていても対となって機械的接続機能を果たすことができればよい。
【0010】
請求項3に記載の配線ダクトシステムは、長手方向に沿って形成された開口部を有する長尺状の配線ダクトと;この配線ダクトの前記開口部側から接続される請求項1又は請求項2に記載の配線装置と;を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、配線装置を配線ダクトの開口部側から接続できるとともに、格別な操作によらず、配線ダクト結合部を配線ダクトの開口部から挿入することに連動して機械的接続が行えるので、機械的接続が簡単で、設置作業の効率化を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、機械的手段の係合子は、そのストロークを大きくとることができるので、機械的接続の接続強度を高めることができる
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、各請求項に記載の配線装置の効果を奏する配線ダクトシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の配線装置及び配線ダクトシステムの第1の実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。図1は、配線装置を示す断面図、図2は、配線装置の要部を示す平面図、図3は、配線ダクトを示す断面図、図4、図5は、配線装置と配線ダクトの接続状態を示す断面図、図6は、配線ダクトシステムを示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、配線装置1は、いわゆるI形のジョインタであって、合成樹脂製で略長方形状をなし(図6参照)、断面コ字状のカバー本体2と、このカバー本体2の背面側に配設された配線ダクト結合部3とを備えている。配線ダクト結合部3は、カバー本体2の背面側に長手方向に沿って配設されており、その両端側には、機械的接続手段4及び電気的接続手段が設けられている。さらに、カバー本体2の一方の角部には、後述する配線ダクト10の極性表示用の突条16に嵌合する嵌合溝2aが形成されている。
【0016】
機械的接続手段4は、配線ダクト結合部3の両側から突出する一対の係合子4aを有しており、この係合子4aは、図示上、下面が下方に向かって中心方向に傾斜する傾斜面4bを有している。図2に示すように、配線ダクト結合部3には、係合子4aが収納される収納凹部3aが形成されている。この収納凹部3aには、係合子4aの基部がバネ部材4cによって外方へ弾性力が付与されてバネ部材4cとともに収納されている。したがって、係合子4aは、配線ダクト結合部3の長手方向と直交する方向に突没可能となっている。また、これら一対の係合子4aは、長手方向と直交する方向の軸線Aを相互にずらせて、すなわち、偏倚させて配設されている。よって、係合子4aのストロークを大きくとることができるようになっている。相互の軸線Aを一致させてしまうと、一対の係合子4aで最大限配線ダクト結合部3の幅以上のストロークはとれないからである。
【0017】
電気的接続手段は、図示は省略するが、導電性及び弾性を有する金属材料により形成され、配線ダクト結合部3の両側に形成された溝孔を通じて突没可能となっている。なお、この電気的接続手段も前記機械的接続手段4と同様な構成としてもよい。
【0018】
図3に示すように、配線ダクト10は、照明器具やコンセント等の電気機器を任意の箇所に配設可能とするために、当該電気機器を任意の位置に取付可能であるとともに、電気機器がいずれの取付位置でも給電可能としたものである。配線ダクト10は、断面コ字状の長尺状のダクト本体11を有し、例えば、亜鉛めっき鋼板等の金属製のダクト基材の外面全体を合成樹脂製の絶縁体により覆って一体的に形成されている。ダクト本体11には、開口部12が長手方向に沿って形成されているとともに、この開口部12の両側には対になった支持鍔部13が形成されている。さらに、開口部12と反対側の壁面には、設置面に対してねじ等で取付けるための図示しない取付孔が形成されている。
【0019】
ダクト本体11の内側の両側位置には、対の絶縁性の導体保持部14が長手方向に沿って設けられており、これら導体保持部14には、電源ラインとして対となる導電部15が長手方向に沿って取付けられている。導電部15は、一方が電圧側導電部15aであり、他方が接地側導電部15bである。また、開口部12の一方の支持鍔部13、すなわち、接地側導電部15b側である支持鍔部13の外面には極性表示用の突条16が一体に形成されている。なお、開口部12と反対側の内壁面には、アースラインとなる導電部15cが設けられている。
【0020】
次に、配線装置1と配線ダクト10の接続について説明する。図4に示すように配線装置1の配線ダクト結合部3を配線ダクト10の開口部12から挿入し、カバー本体2で配線ダクト10の外面を覆うようにする。すると、一対の係合子4aの傾斜面4bが開口部12の縁部、つまり支持鍔部13の先端部に当接し、案内されて係合子4aは、バネ部材4cの弾性力に抗して没入していく。さらに、カバー本体2を押込んでいくと、係合子4aの開口部12の縁部への当接が解け、図5に示すように、係合子4aが外方へ突出復帰し、支持鍔部13に係合し、機械的接続が完了する。このように、配線装置1と配線ダクト10の機械的接続は、格別な操作によらず、配線ダクト結合部3を配線ダクト10の開口部12から挿入することに連動して自動的に行われる。一方、配線ダクト10の極性表示用の突条16に嵌合溝2aが嵌合する。この嵌合は、配線装置1の接続方向の間違えを防止するよう接続方向を規定するものである。また、機械的接続が完了後、操作部を操作して電気的接続手段により電気的接続を行うことができる。なお、配線ダクト10から配線装置1を取外すために図示しない機械的接続手段4のリリース機構が設けられている。
【0021】
このように配線装置1によって配線ダクト10相互を接続して、図6に示すように、配線ダクトシステム20を構成する。なお、5は、電気的接続手段の操作部である。
【0022】
次に、配線ダクト10を設置面に配設する場合について説明する。設置面に配設したい所望の配線ダクトユニットを予め準備しておく場合には、配線ダクト10を複数本配線装置1によって接続するが、このとき、従来のように、配線ダクト10の端部開口部側から接続することなく、配線ダクト10を開口部12を上にして床等に並べ、配線ダクト10の開口部12側から配線装置1を接続することができ、しかも機械的接続が自動的に行えるので、作業が簡素化され、効率の向上を図ることができる。また、他の方法としては、例えば、天井面等の設置面に複数本の配線ダクト10をレイアウトし仮固定しておき、その状態で各配線ダクト10相互間を接続するように、開口部12側から配線装置1を接続することができるので、この場合も機械的接続が自動的に行え、作業の煩雑さが解消でき、効率の向上を図ることができる。したがって、配線装置1の接続操作により、少なくとも機械的接続が完了するので、この機械的接続が完了した後に、操作部5を操作して電気的接続を完了すればよい。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、配線装置1を配線ダクト10の開口部側から接続できるとともに、格別な操作によらず、配線ダクト結合部3を配線ダクト10の開口部12から挿入することに連動して機械的接続が行えるので、機械的接続が簡単で、設置作業の効率化を図ることができる。加えて、格別な操作によらず、機械的接続が行われるので、機械的接続のし忘れを回避することもできる。また、機械的手段4の係合子4aは、長手方向と直交する方向の軸線Aを相互に偏倚させて配設されているので、係合子4aのストロークを大きくとることができ、機械的接続の接続強度を高めることができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。図7は、配線装置を示す断面図、図8は、配線装置と配線ダクトの接続状態を示す断面図である。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付しその重複する説明は省略する。
【0025】
本実施形態では、カバー本体2と、配線ダクト結合部3とを別部品として構成したものである。カバー本体2は、断面コ字状であり、接続された配線装置1と配線ダクト10を覆う機能をなしている。配線ダクト結合部3には、主壁面3bが連接されており、この主壁面3bは、配線ダクト結合部3の位置関係で規定される長手方向の中心線を境にして、この中心線と直交する方向、すなわち、幅方向の長さ寸法が左右異なるように非対称に構成されている。したがって、主壁面3bが極性表示用の突条16の上に重なり合わさることなく、主壁面3bと極性表示用の突条16とは略面一となって、方向の誤りなく正規に接続された状態となる。
【0026】
このような構成によれば、第1の実施形態と同様な機械的接続を行うことができ、同様な作用効果を奏することができる。また、主壁面3bに電気的接続用の操作部が設けられている場合には、この操作部をカバー本体2によって覆い隠すことが可能になる。
【0027】
次に、本発明の第3の実施形態について図9を参照して説明する。図9は、配線ダクトシステムを示す平面図である。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付しその重複する説明は省略する。本実施形態では、L形に配線装置1を構成したものである。この配線装置1は、配線ダクト10を直角に曲げて配設する場合に適しているものである。本実施形態においても配線ダクト10の開口部12側から配線装置1を接続することができ、また、第1の実施形態と同様な機械的接続を行うことができ、機械的接続が簡単で、設置作業の効率化を図ることができる。
【0028】
なお、10図に示すように、配線装置1をT形(図10(a))、+形(図10(b))等、必要に応じ各種形状で構成でき、この場合も上述と同様な作用効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配線装置を示す断面図である。
【図2】同配線装置の要部を示す平面図である。
【図3】同配線ダクトを示す断面図である。
【図4】同配線装置と配線ダクトの接続状態を示す断面図である。
【図5】同じく配線装置と配線ダクトの接続状態を示す断面図である。
【図6】同配線ダクトシステムを示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る配線装置を示す断面図である。
【図8】同配線装置と配線ダクトの接続状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る配線ダクトシステムを示す平面図である。
【図10】配線装置の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1・・・配線装置、3・・・配線ダクト結合部、4・・・機械的接続手段、
4a・・・係合子、10・・・配線ダクト、12・・・開口部、
20・・・配線ダクトシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線ダクトの長手方向に沿って形成された開口部側から接続可能な配線ダクト結合部と;
この配線ダクト結合部に設けられ、長手方向と直交する方向に突没可能であるとともに、配線ダクトに接続される場合、配線ダクトの開口部に案内されて没入し、その後、突出復帰する機械的接続手段と;
を具備することを特徴とする配線装置。
【請求項2】
前記機械的接続手段は、長手方向と直交する方向に突没する少なくとも一対の係合子を有し、これら係合子は、当該直交する方向の軸線を相互に偏倚させて配設されていることを特徴とする請求項1に記載の配線装置。
【請求項3】
長手方向に沿って形成された開口部を有する長尺状の配線ダクトと;
この配線ダクトの前記開口部側から接続される請求項1又は請求項2に記載の配線装置と;
を具備することを特徴とする配線ダクトシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−27421(P2010−27421A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188219(P2008−188219)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】