説明

配色診断方法、配色診断装置、配色診断プログラム

【課題】ウェブコンテンツの配色がガイドラインに適った配色か否かを迅速かつ的確に診断する。
【解決手段】ウェブページをインターネット経由で受信する(S01)。ウェブページのHTMLファイルおよびCCCファイルから色コードと要素属性とを抽出した(S02)後にHTMLの行数と要素属性毎に色コードを整理する(S03)。ウェブページの全ファイルから外観画像を作成し(S04)、画像内を任意のピクセル間隔で走査して、色の切り替った部分の配色セットを色コードに変換する(S05)。S03.S05処理データを統合整理し(S06)、要素属性の情報を追加して診断すべき配色セットを定める(S07)。診断すべき配色セットにおける配色のコントラスト値を計算し(S08)、診断結果を生成する(S09)。配色情報と診断結果を表示する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HTMLなどのマークアップ言語で記述されたコンテンツの配色の見易さを診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが社会において広く普及し、様々な環境で閲覧されうることから、老人や障害者など様々な特徴を持った利用者がいることを想定したウェブコンテンツの作成・提供が求められている。その中で、ウェブサイトのアクセシビリティを担保するためのチェック項目を記述した「ウェブアクセシビリティガイドライン」が重要視されている。
【0003】
2008年には、「World Wide Web Consortium(以下、W3C)」が、非特許文献1の「Web Content Accessibility Guidelines 2.0(以下、WCAG2.0)」を策定した。これを受けて2009年には、日本規格協会のJIS X 8341−3:2009 「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア、及びサービス」(以下、新JIS)も改訂される予定となっている。この新JISは、WCAG2.0の日本語訳であり、その内容は同じであるとされている。
【0004】
このガイドラインのチェック項目の中に、ウェブサイトの配色に関する項目が存在する。これらは電子機器のディスプレイや電子ファイルのカラー化が進んだことでウェブサイトに多くの色が使用されている現状に鑑み、白黒での印刷や、遺伝または疾患により色の見え方が異なる特性を持つ利用者を考慮するというカラーユニバーサルデザインの考え方から規定されている(非特許文献2参照)。
【0005】
このチェック項目の内容としては、背景色と文字色の2色に対して色や明るさのコントラスト(違いの程度)を計算し、その計算値が基準以上になればその文字は読みやすい、基準に満たなければ文字が読みにくい、とするものである。ここではガイドラインに計算されている数式を用いれば、誰でもチェックすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”W3C Web Content Accessibility Guidelines 2.0”,「online」,W3C Recommendation 11 December 2008,「平成21年4月20日 検索」,インターネット<URL:http://www.w3.org/TR/WCAG20/>
【非特許文献2】岡部正隆,伊藤啓 “色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション(3)” 細胞工学 Vol.21 No.9 2002 pp.1080−1104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2のような背景色と文字色の2色の比較だけでは、ウェブサイト全体の配色のバランスを確認することが難しく、またチェックに時間がかかり易いという問題がある。
【0008】
そこで、ウェブサイトの外見を画像化し、そこから色を抽出する方法も考えられるが、ただ画像内の色を抽出するだけではウェブサイト内のどの要素(背景、文字など)に使用されている色なのかを自動では判断できない。また、ウェブブラウザの機能として文字などが滑らかに見えるようにアンチエイリアス処理されていることもあるため、画像から色を抽出した際に、HTMLファイルやCSSファイルでは定義されていない色がノイズとして抽出されることもある。
【0009】
一方、ウェブサイトを構成する文書内容や文書構造を記述したHTMLファイルあるいは、そのデザインを記述したCSSファイルから色のコードおよび要素の属性(背景、文字など)を抽出するという方法も考えられる。しかし、ただ色のコードを抽出しただけでは2色の位置関係が分かりにくく、隣接した色であることを前提としたWCAG2.0の基準によるチェックができない。また、ウェブサイトによってはHTMLファイルやCSSファイル内に背景色、文字色が記述されていないケースも少なくない。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、配色がウェブアクセシビリティのガイドラインに適った配色か否かを迅速かつ的確に診断することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、ウェブサイトなどのウェブコンテンツを画像化した生成画像中、色が切り替った部分の配色セット群を抽出し、そのうちマークアップ言語で記述されたファイルの色コードで指定されている配色セットのみに対して、コントラスト診断を行い、診断結果を提示する。
【0012】
本発明の一態様は、ウェブ上から取得したコンテンツの配色を診断し、診断結果を表示させる配色診断方法であって、色コード抽出手段が、前記コンテンツのソースコードから色コードおよび要素属性を抽出する色コード抽出ステップと、画像処理手段が、前記コンテンツの外観を画像化し、作成した画像内を任意のピクセル間隔で走査して、色の切り替った部分の配色セットを色コードに変換する画像処理ステップと、色コード処理手段が、前記両ステップの処理データを統合整理し、診断すべき配色セットを定める色コード処理ステップと、コントラスト計算手段が、診断すべき配色セットの色コントラスト値を算出し、算出値を任意の診断基準に従って診断して、前記診断結果を求めるコントラスト計算ステップと、を有する。
【0013】
本発明の他の態様は、ウェブ上から取得したコンテンツの配色を診断し、診断結果を表示する配色診断装置であって、前記コンテンツのソースコードから色コードおよび要素属性を抽出する色コード抽出手段と、前記コンテンツの外観を画像化し、作成した画像内を任意のピクセル間隔で走査して、色の切り替った部分の配色セットを色コードに変換する画像処理手段と、前記両手段の処理データを統合整理し、診断すべき配色セットを定める色コード処理手段と、診断すべき配色セットの色コントラスト値を算出し、算出値を任意の診断基準に従って診断して、前記診断結果を求めるコントラスト計算手段と、を備える。
【0014】
なお、本発明は、前記配色診断装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムとしても構成することができる。このプログラムは、ネットワークを通じた態様で提供してもよく、記録媒体に格納した態様で提供してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウェブコンテンツの配色がウェブアクセシビリティのガイドラインに適っているか否かを迅速かつ的確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る診断装置の構成図。
【図2】同 処理フロー図。
【図3】(a)はHTMLファイルから抽出される色コードと要素属性の一例を示す図、(b)はCSSファイルから抽出される色コードと要素属性の一例を示す図。
【図4】配色セットを抽出する模式図。
【図5】診断結果の一例を示す図。
【図6】同 診断装置の他例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ウェブサイト全体の配色、特にウェブサイト中に存在する背景色と文字色の組合せについて、ウェブサイトの外見画像から抽出される配色セットと、HTMLファイルやCSSファイルから抽出される色コードとを組み合わせることでその位置関係を求め、ウェブアクセシビリティのガイドライン(例えばWCAG2.0のガイドラインなど)に基づいたコントラスト計算を行い、該ガイドラインの基準に適った配色であるかの診断結果を提示する。
【0018】
≪装置構成例≫
図1に示すように、本発明の実施形態に係る配色診断装置1は、Web上のコンテンツサーバ3とインターネット(ネットワーク2)経由で通信可能に接続されている。ここでは前記診断装置1は、前記コンテンツサーバ3の管理運営するウェブサイトを構成するウェブページ上の配色の見易さを診断している。
【0019】
前記診断装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、通常のコンピュータのハードウェアリソース、例えばCPU(Central Processor Unit),ハードディスクドライブ装置,メモリ(RAM),通信デバイス,ディスプレイ,マウス・キーボードなどの入出力装置を備え、インターネット通信手段を持ったアプリケーションの診断処理を実行する。ここでは前記診断装置1は、通信部11,色コード抽出部12,要素属性データベース13,画像処理部14,色コード処理部15,コントラスト計算部16,結果表示部17として機能する。このうち前記通信部11は、前記通信デバイスをもって実現され、前記要素属性データベース13は前記ハーディスクドライブ装置上に構築され、前記結果表示部17は前記ディスプレイをもって構成されている。
【0020】
具体的には、前記通信部11は、前記コンテンツサーバ3からインターネット経由で診断対象のウェブページを受信する。ここではウェブページを構成するファイルのうち、マークアップ言語で記述されたファイルのソースコードを前記色コード12に伝送する。また、前記ファイルのすべてを前記画像処理部14に伝送する。
【0021】
前記色コード抽出部12は、伝送された前記ソースコードに存在するすべての色コードおよび要素属性を抽出する。ここで抽出すべき要素属性は、前記要素属性データベース13に保持されている。抽出された色コード群は要素属性(背景色、文字色など)に応じて整理される。この整理後に色コードおよび要素属性が前記色コード処理部15に伝送される。
【0022】
前記画像処理部14は、伝送されたファイルに基づき診断対象ウェブページの外観画像を生成する。この生成画像内を任意のピクセル間隔で走査し、隣接する画素の色(RGB)が切り替った部分の配色セットを抽出する。ここで抽出された各配色セットは色コードに変換され、該変換後の配色セットが前記色コード処理部15に伝送される。
【0023】
前記色コード処理部15は、前記色コード抽出部12の抽出した色コード群と、前記画像処理部14が変換した配色セットの色コード群とを統合整理し、一方の色コードが他方の色コードに存在しない場合には削除される。この統合整理後の配色セットに前記要素属性を追加し、診断すべき配色セットの組合せを定め、前記コントラスト計算部16に伝送する。
【0024】
前記コントラスト計算部16は、伝送された配色セットの色コントラスト値を算出し、十分な色コントラストが保たれているか否かの診断を行う。ここではWCAG2.0のガイドラインに従って診断されるものとする。この診断結果は、前記結果表示部17に表示される。以下、前記診断装置1の処理ステップ(S01〜S10)を図2に基づき説明する。
【0025】
≪前記診断装置1の処理ステップ≫
S01:前記通信部11が、診断対象のコンテンツをインターネット上のウェブサーバから取得するための通信を実施する。すなわち、ウェブページのURL(Uniform Resource Locator)をブラウザ上から入力・送信すると、前記通信部11がネットワーク経由で前記コンテンツサーバ3にアクセスし、該ウェブページを受信する。
【0026】
ここではウェブページを構成するファイル類をすべて取得するものとする。代表例としては、マークアップ言語で記述されたHTMLファイルやCSSファイル、画像ファイルなどが挙げられる。また、前記通信部11は、取得した対象コンテンツのうち、HTMLファイルとCSSファイルのソースコードを色コード抽出部12に伝送し、HTMLファイルとCSSファイルを含めた全ての取得ファイルを画像処理部14に伝送する。
【0027】
S02:前記色コード抽出部12は、S01で伝送された対象コンテンツのHTMLファイル及びCSSファイルの中に記述されている色コードを、その要素属性と併せてすべて抽出する。ここで色コードとは、HTML及びCSSにおいて色を指定する際の記述形式を意味する。この色コードでは、記号「#」の後に、左から赤を表すR値,緑を表すG値,青を表すB値の順に16進数で表現されている。
【0028】
また、要素とはHTMLにおいて背景や表などウェブページを構成する単位であり、HTMLの<>のタグ内に記述される。属性とはそのタグ中に追加される情報である。要素および属性は、共に色がどのような対象に利用されているのか(例えば、背景色なのか文字色なのか)の判断に用いることができる。なお、CSSではプロパティと呼ばれている。本実施形態では、これらをまとめて要素属性とする。
【0029】
このように前記色コード抽出12が抽出する要素属性は、前記要素属性データベース13に保持され、HTMLファイルでは色コードと同じ行で色コードよりも前に記述されている属性または要素を、CSSファイルでは色コードの前に記述されているプロパティが抽出される。
【0030】
具体的には、前記要素属性データベース13には、背景として抽出する要素属性としてHTMLのbody要素内の「bgcolor」属性、table要素内の「bgcolor」属性、CSSの「background−color」プロパティなどが保持され、文字として抽出する要素属性として、HTMLのbody要素内の「text」属性、リンク文字の色を指定する「link」属性、CSSの「color」プロパティなどが保持されている。
【0031】
図3(a)は、HTMLファイルから色コードと要素属性を抽出した事例を示している。ここでは「#99CCFF」の前に「bgcolor」という背景色を表す属性が記述されているため、背景色として抽出される。また、「#000000」の前に「text」という文字色を表す属性が記述されているため、文字色として抽出される。
【0032】
図3(b)は、CSSファイルから色コードと要素属性を抽出した事例を示し、「#f0fff0」の前に背景色を表す「background」プロパティが記述されているため、背景色として抽出される。ここで要素属性データベース13にborder属性が保持されていないものとすると、「border」属性の色コード「#666666」は抽出されないことになる。
【0033】
S03:また、前記色コード抽出部12は、HTMLファイルとCSSファイルから抽出された色コードの整理を実施する。具体的には、まずCSSファイル内に記述されている各class名がHTMLのどの行に参照されているかを調べる。
【0034】
このときHTMLファイルはソースコードが記述されている行とウェブページの表示位置との間に関連があるが、CSSファイルはHTMLのコードに参照された際にその効果を発するため、CSSファイル内の行と表示位置との間に関連がない。そこで、HTMLのコードで何行目に参照されているかによって、HTMLファイルとCSSファイルの色コードを関連づける必要がある。
【0035】
図3(b)のCSSファイルの事例によれば、「.calender」で指定されているが、例えばHTMLファイルの15行目に「<div class=”calender”>」と指定されていれば、15行目の記述に影響してくることが判断できる。このようにHTMLファイルから抽出された色コードと、CSSファイルから抽出された色コードとをHTMLファイルの行数および要素属性から整理する。
【0036】
ここで、HTMLファイルおよびCSSファイルの両方で背景色、文字色が記述されていないケースを考慮し、HTMLの要素属性として、背景色白(#FFFFFF)、文字色黒(#000000)をデフォルト色に設定し、HTMLの行数0の部分に挿入する。
【0037】
【表1】

【0038】
表1は、上記のように整理された処理結果の一例を示している。ここでは前記処理結果をデータ(A)とする。このデータ(A)は、前記色コード処理部15に伝送される。
【0039】
S04:前記画像処理部14は、S01で伝送された取得ファイルに基づき診断対象ウェブページの外観を画像化する。ここでは一般のウェブブラウザのようにウェブページの外観を各コンテンツファイルより再現し、画像化する機能があればよい。
【0040】
S05:前記画像処理部14は、S04で作成した画像において、画像の縦方向の10ピクセル間隔ごとに、隣接している色の情報を取得する。方法としては、作成された画像の縦のサイズをHピクセルとおくと、縦の10n(n=1,2,3,…,H)ピクセルの位置において、横方向に2ピクセルずつ走査し、図4に示すように、異なる2色となる部分、即ち色が切り替わった部分の2色のセットを抽出していく。この2色のセットを配色セットと定義する。
【0041】
このとき走査を10ピクセルの間隔とするのは、ウェブページ上に文字が存在する時に「一」という文字だけが横一列に並んでいることは現実的に考えにくく、また、単なる罫線であれば、背景色と文字色のコントラスト基準を適用する必要はないためである。画像の縦のサイズが1200ピクセルであったとしても、走査の作業は120回で済むことになる。
【0042】
また、前記画像処理部14は、前記作成画像より抽出されたすべての配色セットを16進数の色コードに変換する。すなわち、R値,G値,B値をそれぞれ10進数から16進数に変換し、記号「#」の後にR値,G値,B値の順に左から並べるものとする。このように全ての配色セットを色コードに変換したデータ(B)を表2に示す。このデータ(B)は、前記色コード処理部15に伝送される。
【0043】
【表2】

【0044】
S06:前記色コード処理部15は、S03で伝送されたデータ(A)と、S05で伝送されたデータ(B)とを統合させ整理する。具体的には、データ(A)中の色コードのうち、データ(B)に存在しない色コードを削除する。これはHTMLファイルなどのソースコードに記述されているが、実際のウェブページには使用されていないか、あるいは表示されていない色を省略するためである。
【0045】
また、データ(B)に存在する色コードのうち、データ(A)には存在しない色コードも削除するものとする。なお、データ(B)の配色セットにおいて、一方の色コードが削除された場合には、該配色セットを削除するものとする。
【0046】
S07:また、前記色コード処理部15は、データ(A)に基づきデータ(B)に要素属性の情報を追加する。ここでは要素属性を、データ(A)のHTMLにおける同じ行に存在する色コードに対して追加していく。
【0047】
【表3】

【0048】
表3は、データ(B)に表素属性を追加した処理結果を示している。ここではデータ(B)の配色セットは、「背景―背景」、「背景―文字/文字―背景」、「文字―文字」、「背景―なし/なし―背景」、「文字―なし/なし―文字」の組合せに分類されている(なお、表3中では、「文字―なし/なし―文字」の組合せが省略されている。)。
【0049】
このうち「背景―なし/なし―背景」の組合せについては、データ(A)内を探索し、該当行より前に位置するHTML文字色の色コード群中に、もう一方(なし)の色コードが存在するか否かを確認する。存在した場合には、もう一方(なし)の色は文字色であると定義する。逆に存在しない場合には背景色の色コードで再度確認する。存在した場合には背景色と定義する。いずれにも存在しない場合には「確認」項目を付与する。
【0050】
また、「文字―なし/なし―文字」の組合せについては、データ(A)内を探索し、該当行より前に位置するHTML背景色の色コード群中、もう一方(なし)の色コードが存在するか否かを確認する。存在した場合には、もう一方(なし)の色は背景色であると定義する。逆に存在しない場合には文字色の色コードで再確認する。存在した場合には文字色と定義する。いずれにも存在しない場合には「注意1」項目を付与する。
【0051】
このように整理された配色セットのうち、「背景―文字/文字―背景」の組合せに「通常」項目を付与し、「文字―文字」の組合せに「注意2」項目を付与し、「背景―背景」の組合せに「不要」項目を付与する。この後に表3のデータBが前記コントラスト計算部16に伝送される。
【0052】
S08:前記コントラスト計算部16では、S07で伝送された表3のデータ(B)に基づき色コントラストの計算を行う。ここでは伝送データ中、「通常」「注意1」「注意2」「確認」項目の配色セットに対して、2色の色コントラスト計算を行う。「不要」項目の配色セットに対しては、色コントラスト計算を行わない。具体的な計算方法は、WCAG2.0のガイドライン従うものとし、以下の算出方法を実行する。
【0053】
まず、16進数の色コードをRGB値に戻す。その後に明るさを表すL値を、各配色セットのそれぞれの色に対して、数式1を用いて算出する。この数式1はプログラムに定義されているものとする。
数式1:L=0.2126*((R/255)^2.2)+0.7152*((G/255)^2.2)+0.0722*((B/255)^2.2)
つぎに、L値の大きい色(明るい方の色)をL1、L値の小さい色(暗い方の色)をL2とし、色コントラスト値Cを数式2で算出する。この数式2もプログラムに定義されているものとする。
数式2:C=(L1+0.05)/(L2+0.05)
S09:また、前記コントラスト計算部16は、S08で算出した色コントラスト値Cを用いて、各配色セットに十分な色コントラスト値が保たれているか否かを診断する。ここではWCAG2.0のガイドラインに従って診断するものとする。
【0054】
WCAG2.0のガイドラインによれば、C値が5以上(2色のコントラスト比が5:1以上)の時にレベルAA、10以上(コントラスト比10:1以上)の時にレベルAAAでより良い結果とされている。ここでは色コントラスト値が5未満、5以上10未満、10以上の基準で配色セットを分類する。この分類結果を前記配色セットのデータに含めて前記結果表示部17に伝送する。
【0055】
S10:前記結果表示部17は、図5(a)(b)に示すように、S09の伝送データに基づき配色情報および診断結果の表示を行う。ここでは色と色コードの表示を背景と文字に分類し、その配色セットについて、S09で計算した色コントラスト値の評価をP.Q欄に表示する。
【0056】
P欄には、色コントラスト値が「5以上(コントラスト比5:1以上)」か否かの評価が示され、Q欄には、色コントラスト値が「10以上(コントラスト比10:1以上)」か否かの評価が示される。このうちP,Q欄の評価は「○×」表示で示され、共に「○」表示の場合には、コメント欄Rに「非常に見易い配色です」と文書表示される。
【0057】
P欄の評価「○」およびQ欄の評価「×」の場合には、コメント欄Rには「見易い配色です」と文書表示される。P.Q欄共に「×」の場合には、コメント欄Rには「見えにくい配色です」と文書表示される。
【0058】
そして、S07で「通常」項目を付与された配色セットは、図5(a)に示すように、タイトル欄Sに「背景と文字」と表示される。一方、「注意2」項目を付与された配色セットは、図5(b)のタイトル欄Sに示すように、文字と文字の組合せであり、色コントラストは十分であるか、見えにくい配色となっていないかの確認が特に必要であることを文書で表示するものとする。
【0059】
同様に「注意1」項目を付与された配色セットは、タイトル欄Sに文字色に対する周囲の色が背景色であるか否かの確認が必要であることを文書で表示するものとする。また、「確認」項目を付与された配色セットも、色の組合せが背景色と文字色であるか否かをまず確認する必要があることを文書で表示するものとする。
【0060】
このようにウェブページ上の配色について、HTMLファイル、CSSファイルのソースコードと、ウェブページの外観を画像化した生成画像とから色コード,要素属性情報,表示位置を抽出し、かつ不要な色コードを整理削除していることから、背景色と文字色の見やすさを迅速かつ的確に診断することできる。
【0061】
特に、所定のピクセル間隔で走査したときに色が切り替った配色セット群の色コードを利用しているため(S04〜S07)、WCAG2.0のガイドラインに基づきウェブページ全体の配色バランスを考慮した診断結果が得られる。このときHTMLファイルのソースコードから抽出した要素属性を追記していることから(S07)、ウェブページ内で使用される要素を自動的に判断できる。
【0062】
また、HTMLファイルやCSSファイル内に背景色、文字色が記述されていないケースを考慮して、S03でHTMLの要素属性のデフォルト色が設定されていることから、かかるケースにも対応することもできる。さらに、「注意1」,「注意2」,「確認」項目の付与された配色セットには、コメント欄Sにコメントが記述されるため、ユーザの注意が喚起され、この点で誤操作などが抑制される。
【0063】
≪他の構成例等≫
図6は、本発明の配色診断装置を、ウェブ上のサーバ20で実現した構成例を示している。ここではユーザ端末21のブラウザ上で入力された診断対象ウェブページのURLを前記通信部11にて受信し、かかるウェブページを構成する全ファイルを前記コンテンツサーバ3から取得する。この取得ファイルに基づきS02〜S09の処理ステップが実行される。この各ステップの処理結果、即ち診断結果は前記ユーザ端末21に送信され、S10の表示結果が前記ユーザ端末21のブラウザ上に表示される。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えばS05において走査は縦を10ピクセル間隔で、横を2ピクセルずつで行っているが、間隔は必ずしもこの値でなくてもよく、任意の値を用いてよい。また、S06において色コントラストの計算方法および基準値はWCAG2.0で規定されているものを使用しているが、他の計算方法、基準値を用いてもよい。特に基準値は、より基準を厳しくするために値を変えることも可能である。
【0065】
さらに、S07で「文字―なし」あるいは「背景―なし」の配色セットに対して、他方のHTML要素属性(なし)は行数がより少ない方向に含まれる色コードとの照合を行っているが、本来、背景色と文字色はセットで記述されるべきものである。したがって、この処理を行わず、「警告」項目であるとして、結果表示部17において「両要素の色を指定して下さい」といった文章をコメント欄Sに表示することも可能である。
【0066】
S10の結果表示は、図5(a)(b)の表示例だけでなく、他の表示方法を用いてもよい。例えばS03で生成したウェブページの外観画像内の位置を示す印を表示することも可能である。また、前記要素属性データベース13に保持される情報は、前述の属性情報に限らず、他の要素,属性,プロパティを追加することも可能である。
【0067】
≪プログラム等≫
本発明は、前記診断装置1.20の各手段11〜17の一部もしくは全部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして構成することもできる。この場合には、S01〜S10の全ステップあるいはその一部のステップをコンピュータに実行させる。
【0068】
このプログラムは、Webサイトや電子メールなどネットワークを通じて提供することができる。また、前記プログラムは、CD−ROM,DVD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−R,DVD−RW,MO,HDD,Blu−ray Disk(登録商標)などの記録媒体10に記録して、保存・配布することも可能である。この記録媒体は、記録媒体駆動装置を利用して読み出され、そのプログラムコード自体が前記実施形態の処理を実現するので、該記録媒体も本発明を構成する。
【符号の説明】
【0069】
1.20…配色診断装置
2…ネットワーク(インターネット)
3…コンテンツサーバ
11…通信部
12…色コード抽出部(色コード抽出手段)
13…要素属性データベース
14…画像処理部(画像処理手段)
15…色コード処理部(色コード処理手段)
16…コントラスト計算部(コントラスト計算手段)
17…結果表示部
21…ユーザ端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ上から取得したコンテンツの配色を診断し、診断結果を表示させる配色診断方法であって、
色コード抽出手段が、前記コンテンツのソースコードから色コードおよび要素属性を抽出する色コード抽出ステップと、
画像処理手段が、前記コンテンツの外観を画像化し、作成した画像内を任意のピクセル間隔で走査して、色の切り替った部分の配色セットを色コードに変換する画像処理ステップと、
色コード処理手段が、前記両ステップの処理データを統合整理し、診断すべき配色セットを定める色コード処理ステップと、
コントラスト計算手段が、診断すべき配色セットの色コントラスト値を算出し、算出値を任意の診断基準に従って診断して、前記診断結果を求めるコントラスト計算ステップと、
を有することを特徴とする配色診断方法。
【請求項2】
前記色コード抽出ステップにおいて、データベースに保持された要素属性に応じた色コードを抽出するときに、
前記コンテンツのソースコードに前記データベースに保持された要素属性の色コードが記述されていなければ、デフォルト色の色コードを適用するステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項1記載の配色診断方法。
【請求項3】
前記色コード処理ステップにおいて、前記画像処理ステップの処理データと前記色コード抽出ステップの処理データとを色コードの対応状況から統合整理し、
該統合整理後の配色セットに前記要素属性を追加して、診断すべき配色セットを定める
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の配色診断方法。
【請求項4】
前記色コード処理ステップにおいて、診断結果に表示する要素属性の配色に対するコメントを表示するためのデータを、診断すべき配色セットに追加された前記要素属性に応じて付与する
ことを特徴とする請求項3記載の配色診断方法。
【請求項5】
ウェブ上から取得したコンテンツの配色を診断し、診断結果を表示する配色診断装置であって、
前記コンテンツのソースコードから色コードおよび要素属性を抽出する色コード抽出手段と、
前記コンテンツの外観を画像化し、作成した画像内を任意のピクセル間隔で走査して、色の切り替った部分の配色セットを色コードに変換する画像処理手段と、
前記両手段の処理データを統合整理し、診断すべき配色セットを定める色コード処理手段と、
診断すべき配色セットの色コントラスト値を算出し、算出値を任意の診断基準に従って診断して、前記診断結果を求めるコントラスト計算手段と、
を備えることを特徴とする配色診断装置。
【請求項6】
前記色コード抽出手段が抽出すべき要素属性の情報を保持するデータベースをさらに備え、
前記色コード抽出手段は、前記コンテンツのソースコードに前記データベースに保持された要素属性の色コードが記述されていなければ、デフォルト色の色コードを適用する
ことを特徴とする請求項5記載の配色診断装置。
【請求項7】
前記色コード処理手段は、前記画像処理手段の処理データと前記色コード抽出手段の処理データとを色コードの対応状況から統合整理し、
該統合整理された配色セットに前記要素属性を追加して、診断すべき配色セットを定めることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の配色診断装置。
【請求項8】
前記色コード処理手段は、診断結果に表示する要素属性の配色に対するコメントを表示するためのデータを、診断すべき配色セットに追加された前記要素属性に応じて付与する
ことを特徴とする請求項7記載の配色診断装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の配色診断装置を構成する各手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−262398(P2010−262398A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111377(P2009−111377)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】