説明

配電機器の消弧方法及び配電機器

【課題】ブレードタイプの可動接触子を有する配電機器の消弧方法及び配電機器において、アーク柱に対する冷却効果を高めることができ、SFよりも遮断性能の低い消弧性ガスを使用しても十分な遮断性能を得ることができると共に地絡や短絡が防止できる配電機器の消弧方法及び配電機器を提供する。
【解決手段】
開閉器に設けられたパッファ装置30ノズル部NSは接触刃16a等の厚み方向と平行であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向に向けて開口する第1ノズル口N1と、対向縁部20aに隣接する第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のA方向と第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向に向けて開口する第2ノズル口N2と、対向縁部20aに隣接する第2縁部が臨む空間を過ぎる第3のA方向と該第3のA方向に対向する第3のB方向に向けて開口する第3ノズル口N3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電機器の消弧方法及び配電機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電などの電力用回路に使用される開閉器としては、SFガス(六フッ化硫黄ガス)などの高絶縁、高消弧能力を有する絶縁媒体(消弧性ガス)を使用した開閉器が広く使用されている。これらの開閉器で短絡電流のような大電流を遮断する場合には、パッファシリンダ内の絶縁媒体を圧縮し、圧縮された絶縁媒体を発生するアークに吹き付けてアークを冷却し、消弧するパッファ方式が用いられる(特許文献1)。
【0003】
例えば特許文献1では、棒状の固定接触子(棒状電極)に対して接離する可動接触子の周りに、該可動接触子を包囲する絶縁ノズルを有した可動シリンダを設け、前記可動接触子が開離時に発生したアークに対して可動シリンダ内の圧縮した絶縁媒体(消弧性ガス)を絶縁ノズルを介して吹き付けるようにしている。
【0004】
又、チューリップ状のメス型に形成された固定接触子に対して接離する可動接触子が棒状電極とされた開閉器において、上記と同様に絶縁ノズルや可動シリンダを有するようにし、開離時に発生したアークに対して可動シリンダ内の絶縁媒体(消弧性ガス)を絶縁ノズルを介して吹き付けるようにした構成も提案されている。
【0005】
上記のように可動接触子或いは固定接触子として棒状電極を有した開閉器においては、該棒状電極の延びる方向にしか開閉時の可動接触子の移動がないため、可動接触子・固定接触子間に生ずるアークに対して360度方向からアークを横断する方向に消弧性ガスを噴射して消弧する構成にすることができる利点がある。
【0006】
又、ブレードタイプの可動接触子を固定接触子に対して開閉作動する開閉器において、開閉器の本体ケース内に、前記可動接触子が固定接触子から離間する際に発生したアークに対して絶縁媒体を吹き付けするパッファ装置を備えた開閉器も提案されている(特許文献2、特許文献3)。このパッファ装置は、ジャバラ状に設けられたパッファの伸縮により、本体ケース内の絶縁媒体を吸入し、該吸入した絶縁媒体を発生アークに対して吹き付けするようにしている。(図15)ブレードタイプの可動接触子110が固定接触子120から離間する際に、発生したアーク柱Aに対してパッファ装置としてのパッファ130は、そのノズル140から一方向のみに吹き付けるようにしている。この吹き付けにより、吹き付けられている部分のアーク柱Aは、引き伸ばされると共に冷却効果でその温度が低下し、電流零点時におけるアーク空間のコンダクタンスの低下によりアーク電流が流れず消弧に至る。
【特許文献1】実開昭55−97937号公報
【特許文献2】実開昭56−70943号公報
【特許文献3】特開平11−86688号公報、図4、段落0041
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、絶縁媒体(消弧性ガス)の吹き付けによる冷却効果が低い場合、図15の二点鎖線で示されるようにアーク柱Aが吹き付けている方向へ引き伸ばされ、アーク柱Aが消弧されず漂う可能性がある。ここで、電流零点でアークが消弧されずに遮断できない場合、アークを引き伸ばしてしまうことにより、ケース地絡に至り易くなる。通常、開閉器を小型化するためには、耐電圧特性も考慮し大地間及び異相間との短絡を防止するため絶縁バリアケース150(図15)を使用して絶縁耐力を保持するようにしている。
【0008】
絶縁媒体(消弧性ガス)の吹き付け効果により遮断に至らない場合、図15のアーク柱Aは絶縁バリアケース150内で二点鎖線で示すアーク柱A1のように大きく湾曲したり屈折を繰り返す。そして、アーク柱A1は最終的に前記絶縁バリアケース150内の絶縁耐力の弱い部位(例えば開閉器の本体ケースと同電位の部位)に地絡したり、異相間とで短絡したりして開閉器の破壊に繋がる場合がある。図15において、B〜Dで示す部位は、開閉器の本体ケース160と同電位の部位を示している。又、Eで示す部位はアーク柱Aにより同相間で短絡する部位である。 又、特許文献3での固定接触子120の形状や吹き付け方法では、吹き付けむらが発生し、固定接触子120直近のアーク柱Aに対して絶縁媒体(消弧性ガス)が吹き付けられなくなる部分が発生する。すると、固定接触子120側のアーク柱Aの弧点Aaが移動し、絶縁耐力の弱い部位に短絡しやすくなる。
【0009】
具体的には、二点鎖線で示すアーク柱A2のように固定接触子120とCで示す部位もしくは固定接触子120とEで示す部位、または二点鎖線で示すアーク柱A3のように固定接触子120とBで示す部位に短絡する場合がある。
【0010】
このように、ブレードタイプの可動接触子を有する開閉器において、発生したアーク柱Aに対して一方向のみに吹き付けるようにした従来のパッファ装置では、十分に地絡や短絡防止ができない問題がある。
【0011】
ところで、絶縁媒体(消弧性ガス)としては、その絶縁消弧性の高さからSFガス(六フッ化硫黄ガス)が多く使用されている。ところが、近年、世界的に地球環境保護への意識が高まっており、1997年に開催された地球温暖化防止に関する地球温暖化防止京都会議(第3回気候変動枠組条約締約国会議、COP3)において、SFガスが地球温室化の要因になるとして規制対象に指定された。これは、SFガスのいわゆる地球温暖化係数(GWP;Global Warming Potentials)が高いことに着目されたものである。
【0012】
こうした状況のもと、SFガスに替わる絶縁媒体(消弧性ガス)が検討されており、例えばCO2ガス(炭酸ガス)を絶縁媒体(消弧性ガス)として使用することが考えられている。このCO2ガスは、その地球温暖化係数を1(GWP=1)とした場合、SFガスの地球温暖化係数が23900であり、地球環境保護の点においてはSFガスよりも環境負荷が低いため好ましいものである。しかし、CO2ガスの絶縁消弧性、即ち遮断能力は、SFガスよりも劣る。また、ガス開閉器及びその消弧装置は、絶縁消弧性に優れたSFガスを絶縁媒体(消弧性ガス)として使用することを前提として構成されていた。このため、CO2ガスを絶縁媒体(消弧性ガス)として採用した場合、従来のガス開閉器では十分な遮断性能が得られなかった。
【0013】
本発明は、ブレードタイプの可動接触子を有する配電機器の消弧方法において、アーク柱に対する冷却効果を高めることができ、その結果、SFよりも遮断性能の低い絶縁媒体(消弧性ガス)を使用しても十分な遮断性能を得ることができて、地絡や短絡が防止できる配電機器の消弧方法を提供することにある。
【0014】
又、本発明の他の目的は、ブレードタイプの可動接触子を有する配電機器において、アーク柱に対する冷却効果を高めることができ、その結果、SFよりも遮断性能の低い消弧性ガスを使用しても十分な遮断性能を得ることができて、地絡や短絡が防止できるパッファ装置を備えた配電機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が閉路時に前記固定接触子に向かう対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する開閉器の消弧方法において、前記可動接触子の開路時に、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部が臨む空間を過ぎる第3のA方向と該第3のA方向に対向する第3のB方向の両方向とから、前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器の消弧方法を要旨とするものである。
【0016】
ここで、可動接触子の対向縁部とは、閉路動作する際、固定接触子に向かうとともに固定接触子に接触する面に対応する縁部をいう。又、可動接触子の第1縁部とは、対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する縁部をいう。又、可動接触子の第2縁部とは、対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する縁部をいう。
【0017】
又、第1のA方向、及び第1のB方向は、可動接触子の厚み方向と平行であって対向縁部が臨む空間を過ぎる方向を言い、互いに対向する関係にある。そして、第2のA方向、及び第2のB方向は、可動接触子の厚み方向と平行であって第1縁部が臨む空間を過ぎる方向を言い、互いに対向する関係にある。さらに、第3のA方向、及び第3のB方向は、可動接触子の厚み方向と平行であって第2縁部が臨む空間を過ぎる方向を言い、互いに対向する関係にある。
【0018】
請求項2の発明は、固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が閉路時に前記固定接触子に向かう対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する開閉器の消弧方法において、前記可動接触子の開路時に、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向と、前記可動接触子が延びる長手方向であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第4のA方向とから、前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器の消弧方法を要旨とするものである。
【0019】
ここで、可動接触子の対向縁部とは、閉路動作する際、固定接触子に向かうとともに固定接触子に接触する面に対応する縁部をいう。又、可動接触子の第1縁部とは、対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する縁部をいう。又、可動接触子の第2縁部とは、対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する縁部をいう。
【0020】
又、第1のA方向、及び第1のB方向は、可動接触子の厚み方向と平行であって対向縁部が臨む空間を過ぎる方向を言い、互いに対向する関係にある。そして、第2のA方向、及び第2のB方向は、可動接触子の厚み方向と平行であって第1縁部が臨む空間を過ぎる方向を言い、互いに対向する関係にある。さらに、第4のA方向とは対向縁部において、可動接触子の回転中心の近位端から遠位端へ向かう方向を言い、対向縁部が臨む空間を過ぎる方向を言う。
【0021】
請求項3の発明は、固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が開閉路時に前記固定接触子に対向する対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する配電機器において、前記パッファ装置は消弧性ガス噴流のためのノズル部を備え、 該ノズル部は、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向に向けて開口する第1ノズル口と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向に向けて開口する第2ノズル口と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部が臨む空間を過ぎる第3のA方向と該第3のA方向に対向する第3のB方向の両方向に向けて開口する第3ノズル口とを備え、前記第1ノズル口、第2ノズル口、第3ノズル口から消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器を要旨とするものである。
【0022】
請求項4の発明は、固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が開閉路時に前記固定接触子に対向する対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する配電機器において、前記パッファ装置は消弧性ガス噴流のためのノズル部を備え、 該ノズル部は、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向に向けて開口する第1ノズル口と、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向に向けて開口する第2ノズル口と、前記可動接触子が延びる長手方向であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第4のA方向に対して、前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させる第4ノズル口を備え、前記第1ノズル口、第2ノズル口、第4ノズル口から消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1及び請求項2の発明によれば、ブレードタイプの可動接触子を有する配電機器の消弧方法において、アーク柱に対する冷却効果を高めることができ、その結果、SFよりも遮断性能の低い消弧性ガスを使用しても十分な遮断性能を得ることができると共に、地絡や短絡が防止できる効果を奏する。
【0024】
又、請求項3及び請求項4の発明によれば、ブレードタイプの可動接触子を有する配電機器において、アーク柱に対する冷却効果を高めることができ、その結果、SFよりも遮断性能の低い消弧性ガスを使用しても十分な遮断性能を得ることができると共に、地絡や短絡が防止できるパッファ装置を備えた配電機器を提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明を配電機器としての開閉器に具体化した第1実施形態を図1〜9を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、開閉器の本体ケース10の互いに対向する一対の側壁10a及び側壁10bには電源側ブッシング11及び負荷側ブッシング12が三相(一相分のみ図示)毎に互いに略同軸に位置して対向するように貫通支持されている。図1及び図2に示すように、前記電源側ブッシング11の内端には棒状の固定電極13が突設されている。固定電極13は固定接触子に相当する。固定電極13において長手方向に沿う両側は平面をなす通電接触面13aとされている。
【0027】
図1及び図3に示すように、負荷側ブッシング12の内端部には導電棒14が突設されており、該導電棒14には電極位置調整機構15を介して可動電極16の基端部が回動可能に支持されている。可動接触子としての前記可動電極16は接触刃16a,16bと補強部材16c,16dで構成されている。一対の(2枚)L型平板状のブレードタイプ接触刃16a,16bは、両接触刃の外側からそれぞれ平板状の補強部材16c,16dが重ね合わされている。前記接触刃16a,16bの先端部には、図4に示すように閉路時に固定電極13と向かう縁部(以下、対向縁部20aという)を有する。さらに接触刃16a,16bの該対向縁部20aに対して角部(以下、第1角部20bという)を介して連結ピン26の軸心(可動電極16の回転中心)とは反対側に隣接する第1縁部20c(先端縁部)を有する。又、図4に示すように前記接触刃16a,16bの先端部には、前記対向縁部20aに対して第2角部20dを介して連結ピン26の軸心(可動電極16の回転中心)とは同じ側に隣接する第2縁部20eを有する。
【0028】
前記可動電極16の中間部には連結軸17を介して絶縁性の駆動リンク18が連結され、該駆動リンク18の上端部には絶縁性のレバー19が連結されている。そして、前記レバー19が外部操作可能に構成された開閉機構部(図示略)を介して本体ケース10内に架設された主軸19aにより回動されると、各相一斉に可動電極16が固定電極13に対し投入位置と開放位置との間で切り換えられる。
【0029】
又、図1に示すように本体ケース10内には、有底四角箱状に形成された絶縁バリア50が固定されている。絶縁バリア50内には電源側ブッシング11及び負荷側ブッシング12の内端部、駆動リンク18、可動電極16及びパッファ装置30が収納されている。該絶縁バリア50により、相間絶縁バリア及び対地間絶縁バリアが構成されている。
【0030】
次に、パッファ装置30について説明する。
可動電極16の下部にはパッファ装置30が設けられている。パッファ装置30の蛇腹本体31は、絶縁性ゴムからなり、図1及び図6に示すようにその基端は絶縁バリア50の負荷側ブッシング12側の上下方向に延びる側壁内面に対して固定されている。蛇腹本体31の基端部の底壁には開口部31aが形成されている。開口部31aは絶縁バリア50の側壁に設けられた開口部51を介して、本体ケース10内の空間と連通される。又、蛇腹本体31の基端部の底壁には開口部31aを開閉する逆止弁31bが取付け固定されている。逆止弁31bは本実施形態では弾性を有するとともに四角板状をなす弁板にて構成されており、その一端が開口部31aの周縁の一部に固定されている。逆止弁31bはパッファ装置30の内圧が低下したときには、図6の二点鎖線で示すように他端側が開弁して開口部31a、及び開口部51を介して本体ケース10内の消弧性ガスを流入させ、パッファ装置30の内圧が上昇したときは閉弁して、本体ケース10内の消弧性ガスの流入を停止させる。なお、本実施形態では、本体ケース10内には消弧性ガスとしてCO2ガスが採用されている。
【0031】
蛇腹本体31の先端部には絶縁性の合成樹脂からなる平板状の取付板32が連結されている。取付板32の上面には図7、図8に示すように互いに平行に一対の取付片33,34が突設されている。
【0032】
そして、補強部材16c,16dの外側面に対して前記各取付片33,34が一対の取付ボルト35,36により取着されている。該取付ボルト35,36は、取付片33,34、補強部材16c,16d、接触刃16a,16bに対してともに挿通されて、その先端部に図示しないナットが螺合されている。
【0033】
取付板32の上面には、前記蛇腹本体31に連通する一対のノズル39,40が絶縁性及び耐熱性の合成樹脂により一体形成されている。ノズル39及びノズル40とにより、ノズル部NSが構成されている。
【0034】
各ノズル39,40は図3、及び図5に示すように可動電極16の外側面に沿って上方に突出されているとともに、ノズル39,40の上端は図4に示すように対向縁部20aの高さよりも高く配置されている。ノズル39,40の上部において互いに対向する内側面には図4、図7、及び図8に示すように略コ字状をなすノズル口部Nがそれぞれ形成されている。また、ノズル39,40のノズル口部Nは、相対するよう即ち対称となるように形成されている。
【0035】
図3及び図7に示すように、ノズル39のノズル口部Nは、第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、及び第3ノズル口N3を有する。
第1ノズル口N1は、ノズル39の内側面上部において、接触刃16aの対向縁部20aに沿うように1つの開口によりスリット状、すなわち、直線状に形成され、接触刃16aの厚み方向と平行であって該対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のA方向(図7の矢印A1方向)に向けて開口されている。すなわち、本実施形態の第1ノズル口N1は、接触刃16aの対向縁部20aに沿うようにして一列で一直線状に形成されているとともに該対向縁部20aの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するように形成されている。
【0036】
ノズル39の第2ノズル口N2は、ノズル39の内側面において、連結ピン26と反対側に位置する第1ノズル口N1の一端に対し、その一端が連結されるとともに取付板32側に向かって直線状に延出されている。そして、ノズル39の第2ノズル口N2は、接触刃16aの厚み方向と平行であって接触刃16aの第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のA方向(図7の矢印A2方向)に向けて開口されている。すなわち、本実施形態の第2ノズル口N2は、接触刃16aの第1縁部20cに沿うようにして一列で一直線状に形成されているとともに該第1縁部20cの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するようにされている。
【0037】
ノズル39の第2ノズル口N2の長さは、本実施形態では10mm程度としているが、この数値に限定されるものではなく、他の長さであってもよい。
又、ノズル39の第3ノズル口N3は、ノズル39の内側面において、連結ピン26側に位置する第1ノズル口N1の一端に対しその一端が連結されるとともに取付板32側に向かって1つの開口を有するように直線状に延出されている。そして、ノズル39の第3ノズル口N3は、接触刃16aの厚み方向と平行であって該接触刃16aの第2縁部20eが臨む空間を過ぎる第3のA方向(図7の矢印A3方向)に向けて開口されている。
【0038】
すなわち、本実施形態のノズル39の第3ノズル口N3は、接触刃16aの第2縁部20e(図4参照)に沿うようにして一列で一直線状に形成されているとともに接触刃16aの第2縁部20eの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するようにされている。ノズル39の第3ノズル口N3の長さは、本実施形態では10mm程度としているが、この数値に限定されるものではなく、他の長さであってもよい。
【0039】
又、図8に示すように、ノズル40のノズル口部Nは、ノズル39のノズル口部Nと同一の大きさの第1ノズル口、第2ノズル口、及び第3ノズル口を有する。ノズル40におけるこれらのノズル口は、ノズル39の第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、及び第3ノズル口N3とそれぞれ相対するように設けられているため、ノズル39のノズル口と相対するノズル口には、ノズル39に付したノズル口と同符号を付す。
【0040】
そして、ノズル40の第1ノズル口N1は、ノズル40の内側面上部において、接触刃16bの対向縁部20aに沿うように形成され、該接触刃16bの厚み方向と平行であって接触刃16bの対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のB方向(図8の矢印B1方向)に向けて開口されている。なお、第1のB方向(B1方向)は、第1のA方向(A1方向)と対向する方向である。すなわち、本実施形態の第1ノズル口N1は、接触刃16bの対向縁部20aに沿うようにして該対向縁部20aの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するようにされている。
【0041】
ノズル40の第2ノズル口N2は、ノズル40の内側面において、連結ピン26と反対側に位置する第1ノズル口N1の一端に対し、その一端が連結されるとともに取付板32側に向かって直線状に延出されている。そして、ノズル40の第2ノズル口N2は、接触刃16bの厚み方向と平行であって該接触刃16bの第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のB方向(図8の矢印B2方向)に向けて開口されている。ここで、第2のB方向(B2方向)は、第2のA方向(A2方向)と対向する方向である。すなわち、本実施形態の第2ノズル口N2は、接触刃16bの第1縁部20cに沿うようにして一列で一直線状に形成されているとともに該第1縁部20cの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するようにされている。ノズル40の第2ノズル口N2の長さは、本実施形態では10mm程度としているが、この数値に限定されるものではなく、他の長さであってもよい。
【0042】
又、ノズル40の第3ノズル口N3は、ノズル40の内側面において、連結ピン26側に位置する第1ノズル口N1の一端に対しその一端が連結されるとともに取付板32側に向かって1つの開口を有するように直線状に延出されている。そして、ノズル40の第3ノズル口N3は、接触刃16bの厚み方向と平行であって接触刃16bの第2縁部20eが臨む空間を過ぎる第3のB方向(図8の矢印B3方向)に向けて開口されている。ここで、第3のB方向(B3方向)は、第3のA方向(A3方向)と対向する方向である。すなわち、本実施形態のノズル40の第3ノズル口N3は、接触刃16bの第2縁部20eに沿うようにして一列で一直線状に形成されているとともに接触刃16bの第2縁部20eの直近における空間に対して消弧性ガスを噴出するようにされている。ノズル40の第3ノズル口N3の長さは、本実施形態では10mm程度としているが、この数値に限定されるものではなく、他の長さであってもよい。
【0043】
又、ノズル部NSの第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、及び第3ノズル口N3は、いずれも図5に示すようにノズル39,40の上部内側面に膨出部42が形成されることにより開口が狭くされ、消弧性ガスの噴出速度を速めるようにしている。
【0044】
さて、上記のように構成された開閉器の作用を説明する。
(電極投入時)
レバー19が外部操作可能に構成された開閉機構部(図示略)を介して本体ケース10内に架設された主軸19aにより開放回動されると、各相一斉に可動電極16が固定電極13に対し開放位置から投入位置へ切り換えられる。
【0045】
このとき、可動電極16が固定電極13に接触する際に、蛇腹本体31は伸張されて内容積が大きくなる。このため、逆止弁31bが開弁して開口部31aと絶縁バリア50の開口部51、及びノズル39,40のノズル口部Nを介して、本体ケース10内の消弧性ガスが蛇腹本体31内に吸い込まれる。この結果、図1に示すように可動電極16が投入位置に位置する閉路状態では、パッファ装置30の蛇腹本体31内には本体ケース10内の消弧性ガス(CO2)が吸入された充満状態となっている。
【0046】
(電極開放時)
この閉路状態で、レバー19が外部操作可能に構成された開閉機構部(図示略)を介して本体ケース10内に架設された主軸19aにより開放回動されると、各相一斉に可動電極16が固定電極13に対し投入位置から開放位置へ切り換えられる。
【0047】
このとき、可動電極16が固定電極13から離間する際に、パッファ装置30の蛇腹本体31が収縮した状態となってその内容積が小さくなる。このため、逆止弁31bが閉弁して、蛇腹本体31内の消弧性ガスがノズル部NS(ノズル39,40)のノズル口部N(N1,N2,N3)から可動電極16と固定電極13の間に発生したアーク柱Aに対して噴出される。
【0048】
詳説すると、ノズル39の第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、第3ノズル口N3からは、図7に示すように第1のA方向(A1方向)、第2のA方向(A2方向)、及び第3のA方向(A3方向)に向いた消弧性ガスがそれぞれ対向縁部20a、第1縁部20c、及び第2縁部20eが臨む空間に噴出される。又、ノズル40の第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、第3ノズル口N3からは、図8に示すように第1のB方向(B1方向)、第2のB方向(B2方向)、及び第3のB方向(B3方向)に向いた消弧性ガスがそれぞれ対向縁部20a、第1縁部20c、及び第2縁部20eが臨む空間に噴出される。
【0049】
このとき、図9(a)に示すように第1のA方向(A1方向)、及び該第1のA方向(A1方向)と対向する第1のB方向(B1方向)に噴出された消弧性ガスは、接触刃16a,16bの対向縁部20aと固定電極13間に位置するアーク柱Aに対して両側から直角に吹き付けられる。このようなスポット的な対向縁部20aが臨む空間への吹き付けにより、該アーク柱Aの内部にまで消弧性ガスが達して該アーク柱Aが効率的に冷却され、この冷却効果が持続されて電流零点で早期絶縁回復により消弧される。
【0050】
なお、図9(a)では、説明の便宜上、アーク柱Aは、接触刃16bの対向縁部20aに発弧点を有するように図示しているが、接触刃16aの対向縁部20aにアーク柱Aの発弧点を有する場合もある。
【0051】
又、第2のA方向(A2方向)、及び該第2のA方向(A2方向)と対向する第2のB方向(B2方向)に噴出された消弧性ガスは、接触刃16aの第1縁部20cが臨む空間に対して吹き付けられる。この第2のA方向(A2方向)と第2のB方向(B2方向)の消弧性ガスの風圧により、接触刃16a,16bの対向縁部20aに発弧点を有するアーク柱Aは該発弧点を対向縁部20aに停滞させ、第1縁部20cの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止する。
【0052】
又、第3のA方向(A3方向)、及び該第3のA方向(A3方向)と対向する第3のB方向(B3方向)に噴出された消弧性ガスは、接触刃16aの第2縁部20eが臨む空間に対して吹き付けられる。この第3のA方向(A3方向)と第3のB方向(B3方向)の消弧性ガスの風圧により、接触刃16a,16bの対向縁部20aに発弧点を有するアーク柱Aは該発弧点を対向縁部20aに停滞させ、第2縁部20eへの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止する。
【0053】
なお、本実施形態と異なり、図9(b)や図9(c)に示すようなノズル形態(アーク柱に対して直角以外)をとった場合は、冷却効果が低く好ましくないことを以下に述べる。
【0054】
図9(b)や図9(c)に示すようにノズル39,40の内側面上部において、第1ノズル口N1と同じ部位に対して、接触刃16a,16bの厚み方向と非平行であって、対向縁部20aが臨む空間を過ぎる方向α1,β1に向けてノズル口が開口されている。この場合、アーク柱Aに対し直角ではなく、直角以外の角度で消弧性ガスが吹き付けられる。
【0055】
このようにノズル39,40に対してアーク柱Aに対して直角以外の角度で吹き付けすると、冷却するアーク空間が吹き付け方向に逃げてしまい、アーク柱Aの表面のみの冷却に留まり、アーク柱Aの内部まで冷却されにくくなる。
【0056】
又、ノズル39,40に対してアーク柱Aに対して直角以外の角度で吹き付けすると、ガス吹き付け圧力により吹き付け方向にアーク柱Aが引き伸ばされ、アーク電圧が上昇するもののアーク柱Aが引き伸ばされたことにより開閉器の本体ケース10やレバー19等の機構との対地電位に近づき、地絡に至りやすくなる。
【0057】
さて、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の消弧方法では、可動電極16の開放時に、可動電極16(接触刃16a,16b)の厚み方向と平行であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のA方向(A1方向)と第1のA方向(A1方向)に対向する第1のB方向(B1方向)の両方向にパッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。又、開放時に可動電極16の厚み方向と平行であって対向縁部20aに対して第1角部20bを介して可動電極16の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のA方向(A2方向)と第2のA方向(A2方向)に対向する第2のB方向(B2方向)の両方向に、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。
【0058】
この結果、第1のA方向(A1方向)、及び該第1のA方向(A1方向)と対向する第1のB方向(B1方向)に噴出された消弧性ガスは、接触刃16a,16bの対向縁部20aと固定電極13間に位置するアーク柱Aに対して両側から直角に吹き付けられる。このようなスポット的な対向縁部20aが臨む空間へアーク柱Aを切断するような吹き付けにより、該アーク柱Aの内部にまで消弧性ガスが達して該アーク柱Aが効率的に冷却され、この冷却効果が持続されて電流零点で早期絶縁回復により消弧される。
【0059】
又、本実施形態の消弧方法では第2のA方向(A2方向)、及び第2のA方向(A2方向)と対向する第2のB方向(B2方向)に噴出された消弧性ガスの風圧により、接触刃16a,16bの対向縁部20aに発弧点を有するアーク柱Aは該発弧点を対向縁部20aに停滞させる。この結果、第1縁部20cの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止できる効果を奏する。
【0060】
(2) 本実施形態の開閉器では、パッファ装置30は消弧性ガス噴流のためのノズル部NSを備えるようにした。そして、ノズル部NSは、可動電極16(接触刃16a,16b)の厚み方向と平行であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のA方向(A1方向)と該第1のA方向(A1方向)に対向する第1のB方向(B1方向)の両方向に向けて開口する第1ノズル口N1を備える。又、ノズル部NSは、可動電極16(接触刃16a,16b)の厚み方向と平行であって対向縁部20aに対して第1角部20bを介して可動電極16の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のA方向(A2方向)と第2のA方向(A2方向)に対向する第2のB方向(B2方向)の両方向に向けて開口する第2ノズル口N2を備える。そして、本実施形態では、第1ノズル口N1と第2ノズル口N2から消弧性ガス噴流を発生させるようにしている。
【0061】
この結果、上記(1)の消弧方法を容易に実現できる開閉器を提供することができ、前記消弧方法による効果を享受することができる。
(3) 本実施形態の消弧方法では、可動電極16は対向縁部20aに対して第2角部20dを介して可動電極16の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部20eを有するようにした。そして、可動電極16の開放(開路)時に、可動電極16の厚み方向と平行であって可動電極16の第2縁部20eが臨む空間を過ぎる第3のA方向(A3方向)と第3のA方向(A3方向)に対向する第3のB方向(B3方向)の両方向に、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。
【0062】
このため、本実施形態の消弧方法では、第3のA方向(A3方向)と第3のB方向(B3方向)の消弧性ガスの風圧により、接触刃16a,16bの対向縁部20aに発弧点を有するアーク柱Aは該発弧点を対向縁部20aに停滞させる。この結果、第2縁部20eへの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止することができる。
【0063】
(4) 又、本実施形態の開閉器は、可動電極16(接触刃16a,16b)は対向縁部20aに対して第2角部20dを介して可動電極16の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部20eを有するようにしている。そして、ノズル部NSは、可動電極16の開路時に、可動電極16の厚み方向と平行であって可動電極16の第2縁部20eが臨む空間を過ぎる第3のA方向(A3方向)と第3のA方向(A3方向)に対向する第3のB方向(B3方向)の両方向に、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させる第3ノズル口N3を備える。
【0064】
この結果、上記(3)の消弧方法を容易に実現できる開閉器を提供することができ、前記消弧方法による効果を享受することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図10〜図12を参照して説明する。なお、第2実施形態では、ノズル部NSの構成が第1実施形態と異なっており、他の構成は第1実施形態と同一構成であるため、第1実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付してその詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0065】
図10に示すように、ノズル39とノズル40の上部において、可動電極16の回転中心側の近位端部間が架橋部60にて互いに連結されるとともに、第1実施形態の第3ノズル口N3は省略されている。
【0066】
架橋部60は、ノズル39,40内の空間と連通する連通室61が形成されるとともに図12に示すように第2縁部20eに対して近接して配置されている。そして、図12に示すように架橋部60には対向縁部20aが臨む空間に対応するとともに連通室61に連通する第4ノズル口N4が形成されている。すなわち、第4ノズル口N4からは、可動電極16が延びる長手方向であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第4のA方向(図10の矢印A4方向)に対して、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させる。すなわち、対向縁部において、可動接触子の回転中心の近位端から遠位端へ向かう方向に消弧性ガス噴流を発生させる。
【0067】
第2実施形態では、ノズル部NSは、架橋部60を備えたノズル39及びノズル40により構成されている。又、ノズル口部Nは、第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、第4ノズル口N4とにより構成されている。
【0068】
そして、第2実施形態のノズル部NSの第1ノズル口N1,第2ノズル口N2は、図5に示すようにノズル39,40の上部内側面に膨出部42が形成されることにより開口が狭くされ、消弧性ガスの噴出速度を速めるようにしている。又、第4ノズル口N4は、図12に示すように架橋部60の連通室61の第2縁部20e側内面に、上部へ行くほど開口が狭くなるように膨出部43が形成されていることにより、狭くなっている部位において消弧性ガスの噴出速度を速めるようにしている。
【0069】
さて上記のように構成された開閉器の作用を説明する。
(電極投入時)
電極投入時は、第1実施形態と同様に蛇腹本体31は伸張されて内容積が大きくなる。このため、逆止弁31bが開弁して開口部31aと絶縁バリア50の開口部51、及びノズル39,40、架橋部60のノズル口部Nを介して、本体ケース10内の消弧性ガスが蛇腹本体31内に吸い込まれる。この結果、第1実施形態と同様に閉路状態では、パッファ装置30の蛇腹本体31内には本体ケース10内の消弧性ガス(CO2)が吸入された充満状態となっている。
【0070】
(電極開放時)
電極開放時では、可動電極16が固定電極13から離間する際に、パッファ装置30の蛇腹本体31が収縮した状態となってその内容積が小さくなる。このため、逆止弁31bが閉弁して蛇腹本体31内の消弧性ガスがノズル部NS(ノズル39,40,架橋部60)のノズル口部N(N1,N2,N4)から可動電極16と固定電極13の間に発生したアーク柱Aに対して噴出される。このときの第1ノズル口N1、及び第2ノズル口N2の作用は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
第4ノズル口N4からは消弧性ガスは、図12に示すように可動電極16が延びる長手方向であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第4のA方向(A4方向)に向かって噴出する。この結果、対向縁部20aに位置するアーク柱Aに対して直角に吹き付けられる。このように第1ノズル口N1からの第1のA方向(A1方向)、及び第1のB方向(B1方向)と第4のA方向(A4方向)の異なる3方向から直角に吹き付けられる。
【0072】
この結果、異なる3方向からのスポット的な対向縁部20aが臨む空間への吹き付けにより、アーク柱Aの内部にまで消弧性ガスが達して該アーク柱Aが効率的に冷却され、この冷却効果が持続されて電流零点で早期絶縁回復により消弧される。
【0073】
さて、第2実施形態の特徴的な効果を下記に挙げる。
(1)第2実施形態の消弧方法では、可動電極16の開放時に、可動電極16(接触刃16a,16b)の厚み方向と平行であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第1のA方向(A1方向)と第1のA方向(A1方向)に対向する第1のB方向(B1方向)の両方向にパッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。又、可動電極16が延びる長手方向であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第4のA方向(A4方向)に対して、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。
【0074】
この結果、第1のA方向(A1方向)、第1のB方向(B1方向)と第4のA方向(A4方向)に噴出された消弧性ガスは、接触刃16a,16bの対向縁部20aと固定電極13間に位置するアーク柱Aに対して3方向から直角に吹き付けられる。このような、異なる3方向からのスポット的な対向縁部20aが臨む空間へアーク柱Aを切断するような吹き付けにより、アーク柱Aの内部にまで消弧性ガスが達して該アーク柱Aが効率的に冷却され、この冷却効果が持続されて電流零点で早期絶縁回復により消弧できる。
【0075】
又、開放時に可動電極16の厚み方向と平行であって対向縁部20aに対して第1角部20bを介して可動電極16の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部20cが臨む空間を過ぎる第2のA方向(A2方向)と第2のA方向(A2方向)に対向する第2のB方向(B2方向)の両方向に、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させるようにした。この結果、第2実施形態の消弧方法では上記の第1のA方向(A1方向)、第1のB方向(B1方向)と第4のA方向(A4方向)から噴出された消弧性ガスとともに、第2のA方向(A2方向)、及び第2のA方向(A2方向)と対向する第2のB方向(B2方向)に噴出された消弧性ガスの風圧により、接触刃16a,16bの対向縁部20aに発弧点を有するアーク柱Aは該発弧点を対向縁部20aに停滞させる。この結果、第1縁部20cの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止できる効果を奏する。
【0076】
(2) 第2実施形態の開閉器では、ノズル部NSは、可動電極16の開路時に、可動電極16が延びる長手方向であって対向縁部20aが臨む空間を過ぎる第4のA方向(A4方向)に対して、パッファ装置30により消弧性ガス噴流を発生させる第4ノズル口N4を備える。
【0077】
この結果、第2実施形態の(1)の消弧方法を容易に実現できる開閉器を提供することができ、前記消弧方法による効果を享受することができる。
(3) 第2実施形態の開閉器では、ノズル39とノズル40の上部において、可動電極16の回転中心側の近位端部間に連結する架橋部60を形成した。
【0078】
この結果、第2縁部20eへの移行による該アーク柱Aの湾曲や屈折を抑制し、絶縁耐力の弱い箇所への地絡を未然に防止することができる。
なお、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
【0079】
○ 第1実施形態、第2実施形態では、消弧性ガスとしてCO2ガス(炭酸ガス)を使用したが、地球温暖化係数がSFガスよりも低いガス、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素及び水素ガスのうち、少なくとも一種類以上のガスを単体で又は混合して消弧性ガスとして使用するようにしてもよい。また、これらの代替ガスとSFガスとを混合したガスを消弧性ガスとして使用するようにしてもよい。このようにしても、SFガスの使用量を低減し、環境への負荷を低減させることができる。
【0080】
○ 第1実施形態、第2実施形態では、逆止弁31bを四角板状の弁板にて構成したが、例えば、丸形板状のように形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
○ 第1実施形態では、可動接触子としての可動電極16を接触刃16a,接触刃16bにより構成した。この構成に代えて、可動接触子を一枚のブレードタイプの可動電極により構成し、閉路時に該可動電極を離脱自在に挟むようにして接触する一対の固定電極により固定接触子を構成するようにしてもよい。
【0081】
○ 第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、第3ノズル口N3、第4ノズル口N4の開口を図13に示すように、消弧性ガスの噴出方向に行くにしたがって細くしてもよい。このようにすると、膨出部42と同様に消弧性ガスの噴出速度を速めることができる。
【0082】
○ 図14に示すように、第1ノズル口N1、第2ノズル口N2、第3ノズル口N3、第4ノズル口N4を一つの開口により、スリット状に、すなわち一直線状に配置する代わりに、複数の開口100を点線状に配置するようにしてもよい。或いは、ノズル口を点線で示すように、2列以上の複数列となるように開口100を形成するようにしてもよい。このように構成すると、複数の開口から、多くの消弧性ガスを噴出することができる。
【0083】
○ 第1実施形態では開閉器に具体化したが、配電機器として遮断器に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の開閉器の断面図。
【図2】同じく開閉器の断面図。
【図3】同じく可動電極及びパッファ装置の斜視図。
【図4】同じく可動電極の断面図。
【図5】同じくパッファ装置の要部断面図
【図6】同じくパッファ装置の要部図。
【図7】同じくパッファ装置の要部斜視図。
【図8】同じくパッファ装置の要部斜視図。
【図9】(a)は同じくパッファ装置の作用を示す説明図図、(b)、(c)は他の異なるパッファ装置の説明図。
【図10】第2実施形態のパッファ装置の斜視図。
【図11】同じく第2実施形態のパッファ装置の斜視図。
【図12】同じく第2実施形態の同じく可動電極の断面図。
【図13】本発明の他の実施形態のパッファ装置のノズル口の断面図。
【図14】本発明の他の実施形態のパッファ装置のノズル口の配置図。
【図15】従来の開閉器のパッファ装置の説明図。
【符号の説明】
【0085】
A4…第4のA方向(A4方向)、N1…第1ノズル口、
N2…第2ノズル口、N3…第3ノズル口、
N4…第4ノズル口、NS…ノズル部、
20a…対向縁部、20b…第1角部、20c…第1縁部、
20d…第2角部、20e…第2縁部、30…パッファ装置、
100…開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が閉路時に前記固定接触子に向かう対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する開閉器の消弧方法において、
前記可動接触子の開路時に、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介
して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部が臨む空間を過ぎる第3のA方向と該第3のA方向に対向する第3のB方向の両方向とから、
前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器の消弧方法。
【請求項2】
固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が閉路時に前記固定接触子に向かう対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する開閉器の消弧方法において、
前記可動接触子の開路時に、前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向と、
前記可動接触子が延びる長手方向であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第4のA方向とから、
前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器の消弧方法。
【請求項3】
固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が開閉路時に前記固定接触子に対向する対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する配電機器において、
前記パッファ装置は消弧性ガス噴流のためのノズル部を備え、
該ノズル部は、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向に向けて開口する第1ノズル口と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向に向けて開口する第2ノズル口と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第2角部を介して前記可動接触子の回転中心と同じ側に隣接する第2縁部が臨む空間を過ぎる第3のA方向と該第3のA方向に対向する第3のB方向の両方向に向けて開口する第3ノズル口とを備え、
前記第1ノズル口、第2ノズル口、第3ノズル口から消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器。
【請求項4】
固定接触子に対して接離可能に回動する可動接触子を有し、該可動接触子が開閉路時に前記固定接触子に対向する対向縁部を有するブレードタイプであって、開路時に発生したアークをパッファ装置により消弧する配電機器において、
前記パッファ装置は消弧性ガス噴流のためのノズル部を備え、
該ノズル部は、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第1のA方向と該第1のA方向に対向する第1のB方向の両方向に向けて開口する第1ノズル口と、
前記可動接触子の厚み方向と平行であって前記対向縁部に対して第1角部を介して前記可動接触子の回転中心とは反対側に隣接する第1縁部が臨む空間を過ぎる第2のA方向と該第2のA方向に対向する第2のB方向の両方向に向けて開口する第2ノズル口と、
前記可動接触子が延びる長手方向であって前記対向縁部が臨む空間を過ぎる第4のA方向に対して、前記パッファ装置により消弧性ガス噴流を発生させる第4ノズル口を備え、
前記第1ノズル口、第2ノズル口、第4ノズル口から消弧性ガス噴流を発生させることを特徴とする配電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−71708(P2008−71708A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251524(P2006−251524)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】