説明

配電機材検査装置及び検査方法

【課題】 配電機材の良品、不良品及び余寿命の判別を容易に行うと共に廃棄物を減少させて配電機材の有効活用を行うことができる配電機材検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】 配電設備に用いられた使用済み配電機材1を検査する配電機材検査装置10であって、前記配電機材1を搬送する搬送手段20と、前記配電機材1を洗浄する洗浄手段30と、磁気センサ51を有すると共に当該磁気センサ51によって前記配電機材1の塗布又はメッキの膜厚を測定する膜厚測定手段50と、前記膜厚測定手段50の測定結果に基づいて前記配電機材1の余寿命を判別する判別手段70と、前記判別手段70の判別結果が少なくとも記録された記録媒体を前記配電機材1に貼付する情報貼付手段60とを具備する配電機材検査装置10により配電機材1の良品、不良品及び余寿命の判別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電設備から撤去された使用済み配電機材の良品、不良品及び余寿命を判別し、配電機材を再利用するための配電機材検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電設備などに用いられる碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチなどの配電機材は、配電設備の廃止、移設及び建て替えなどにより撤去されることがある。このように撤去された配電機材は、目視によりひび割れの有無や錆びの有無が確認され、良品、不良品の判別が行われることで廃棄又は再利用されていた。
【0003】
しかしながら、配電機材の目視による判別は、目視する人によって判断基準が異なることから、不良品を良品として判別してしまい再利用した際に配電機材が正常に動作しなかったり、良品を不良品として判別して配電機材を廃棄してしまうといった問題がある。
【0004】
また、碍子などの配電機材は、ひび割れにより電流がリークしてしまうため、微小なひび割れも見つけ出す必要がある。しかしながら、碍子などの配電機材は複雑な形状を有し、しかも汚れが付着しているため、ひび割れを目視により識別し難く良品又は不良品の判別が困難であるという問題がある。さらに、塗装やメッキが施された配電機材は、塗装又はメッキの膜厚を測定していなかったことから、塗装又はメッキの余寿命の判別ができないという問題がある。
【0005】
また、金属が一体成形された碍子などの配電機材は、金属部分の錆びの状況により不良品と判断している場合が多く、極初期段階の錆びでも不良品と判別されて廃棄処分されてしまうという問題がある。
【0006】
一方、メッキ部分と樹脂部分とを分離するメッキ樹脂成形品のリサイクル方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、製品を分離分解して、再利用するためのものであるため、製品そのものを再利用することができず、また、製品の余寿命を判別することもできないという問題がある。
【0008】
また、本発明に関連する従来技術としては特許文献2及び3が挙げられるが、特許文献2及び3の何れの場合も、製品そのものを再利用することができず、また、製品の余寿命を判別することもできないという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2000−190327号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2002−200477号公報(第5〜7頁、第1〜2図)
【特許文献3】特許第3215646号(第1〜4頁、第1〜4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑み、配電機材の良品、不良品及び余寿命の判別を容易に行うと共に廃棄物を減少させて配電機材の有効活用を行うことができる配電機材検査装置及び検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、配電設備に用いられた使用済み配電機材を検査する配電機材検査装置であって、前記配電機材を搬送する搬送手段と、前記配電機材を洗浄する洗浄手段と、磁気センサを有すると共に当該磁気センサによって前記配電機材の塗布又はメッキの膜厚を測定する膜厚測定手段と、前記膜厚測定手段の測定結果に基づいて前記配電機材の余寿命を判別する判別手段と、前記判別手段の判別結果が少なくとも記録された記録媒体を前記配電機材に貼付する情報貼付手段とを具備することを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0012】
かかる第1の態様では、配電機材の塗布又はメッキの膜厚を測定することで、配電機材の良品、不良品を容易に判別することができると共に、配電機材の余寿命を容易に判別することができる。また、使用済み配電機材の洗浄から余寿命の判別及び情報の貼付までを自動化することができる。さらに、配電機材に記録媒体を貼付することで再利用する配電機材の余寿命を確実に把握することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記配電機材のひび割れを測定するひび割れ測定手段をさらに具備することを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0014】
かかる第2の態様では、目視により識別し難いひび割れを確実に測定することができ、配電機材の良品、不良品の判別を容易に且つ確実に行うことができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記ひび割れ測定手段が、前記配電機材にひび割れを検査する検査溶液を塗布する検査溶液塗布手段と、前記配電機材の余分な領域に塗布された前記検査溶液を除去する検査溶液除去手段と、前記検査溶液の残留を測定する色センサとで構成されていることを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0016】
かかる第3の態様では、検査溶液によって配電機材のひび割れを容易に測定することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記配電機材が碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチから選択される少なくとも一種であることを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0018】
かかる第4の態様では、碍子、腕金、バンド又はカットアウトスイッチからなる配電機材の良品、不良品及び余寿命の判別を容易に行うことができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記記録媒体には、前記配電機材の機種情報、膜厚情報、判定年情報、余寿命期間情報が蓄積されていることを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0020】
かかる第5の態様では、配電機材に貼付する記録媒体に所定の情報を記録させることで、配電機材の余寿命を容易に且つ確実に把握することができ、余寿命の過ぎた配電機材の使用を防止して安全性を高めることができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記洗浄手段が、温水又は蒸気により洗浄を行うものであることを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0022】
かかる第6の態様では、配電機材を温水又は蒸気によって洗浄することで、配電機材の汚れを除去することができると共に、水洗いでは除去できない塩分も除去することができる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記記録媒体が、非接触で各種情報を記録及び読み出し可能な非接触型ICチップであることを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0024】
かかる第7の態様では、配電機材に貼付する各種情報が記録された記録媒体を非接触型ICチップとすることで、配電機材を電柱などの容易に近づけない配電設備に再利用した際に、電柱等に登ることなく離れた場所から配電機材の余寿命等の各種情報を確認することができる。これにより、配電機材を目視するために電柱等に登る必要がなく、配電機材の確認を容易に且つ確実に行うことができる。
【0025】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記配電機材に再塗装を行う塗装手段をさらに具備することを特徴とする配電機材検査装置にある。
【0026】
かかる第8の態様では、配電機材を再塗装することによって、配電機材の廃棄を減少させることができると共に、配電機材の余寿命を延ばすことができる。
【0027】
本発明の第9の態様は、配電設備に使用された使用済み配電機材を検査する配電機材検査方法であって、前記配電機材を洗浄する工程と、洗浄した前記配電機材の塗布又はメッキの膜厚を磁気センサにより測定する工程と、前記磁気センサにより測定した膜厚によって前記配電機材の廃棄又は再利用及び余寿命を判別する工程と、判別した余寿命を記録媒体に記録すると共に当該記録媒体を前記配電機材に貼付する工程とを具備することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0028】
かかる第9の態様では、配電機材の塗布又はメッキの膜厚を測定することで、配電機材の良品、不良品を容易に判別することができると共に、配電機材の余寿命を容易に判別することができる。また、配電機材に記録媒体を貼付することで再利用する配電機材の余寿命を確実に把握することができる。
【0029】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記余寿命を判別する工程では、前記配電機材の種類毎に設けられた膜厚と余寿命との関係を示すテーブルに基づいて判別することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0030】
かかる第10の態様では、膜厚と余寿命との関係を示すテーブルに基づいて配電機材の余寿命を容易に判別することができる。
【0031】
本発明の第11の態様は、第9又は10の態様において、前記配電機材の洗浄を行う工程の後、前記配電機材のひび割れを測定する工程をさらに具備すると共に、前記余寿命を判別する工程では、測定したひび割れの有無及び膜厚により判別することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0032】
かかる第11の態様では、目視により識別し難いひび割れを確実に測定することができ、配電機材の良品、不良品の判別を容易に且つ確実に行うことができる。
【0033】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記ひび割れを測定する工程は、前記配電機材に検査溶液を塗布する工程と、前記配電機材の余分な領域に塗布された前記検査溶液を除去する工程と、前記配電機材に残留した前記検査溶液を測定する工程とを具備することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0034】
かかる第12の態様では、検査溶液によって配電機材のひび割れを容易に測定することができる。
【0035】
本発明の第13の態様は、第9〜12の何れかの態様において、前記配電機材が碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチから選択される少なくとも一種であることを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0036】
かかる第13の態様では、碍子、腕金、バンド又はカットアウトスイッチからなる配電機材の良品、不良品及び余寿命の判別を容易に行うことができる。
【0037】
本発明の第14の態様は、第9〜13の何れかの態様において、前記記録媒体には、前記配電機材の機種情報、膜厚情報、判定年情報、余寿命期間情報を記録することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0038】
かかる第14の態様では、配電機材に貼付する記録媒体に所定の情報を記録させることで、配電機材の余寿命を容易に且つ確実に把握することができ、余寿命の過ぎた配電機材の使用を防止して安全性を高めることができる。
【0039】
本発明の第15の態様は、第9〜14の何れかの態様において、前記配電機材を洗浄する工程では、温水又は蒸気により行うことを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0040】
かかる第15の態様では、配電機材を温水又は蒸気によって洗浄することで、配電機材の汚れを除去することができると共に、水洗いでは除去できない塩分も除去することができる。
【0041】
本発明の第16の態様は、第9〜15の何れかの態様において、前記配電機材の廃棄又は再利用及び余寿命を判別する工程の後、前記配電機材に再塗装を行う工程をさらに具備することを特徴とする配電機材検査方法にある。
【0042】
かかる第16の態様では、配電機材を再塗装することによって、配電機材の廃棄を減少させることができると共に、配電機材の余寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、配電機材を洗浄すると共に、配電機材の廃棄又は再利用の判別を容易に行うことができ、且つ配電機材の余寿命を容易に判別することができ、廃棄物を減少させて配電機材を安全且つ有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0045】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る配電機材検査装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の配電機材検査装置10は、使用済み配電機材1が搬送されるベルトコンベア等の搬送手段20に沿って、洗浄手段30、ひび割れ測定手段40、膜厚測定手段50及び情報貼付手段60が並設されており、さらに、ひび割れ測定手段40、膜厚測定手段50及び情報貼付手段60に接続された判別手段70を具備する。
【0046】
配電機材1は、電柱等の配電設備に用いられていた使用済みのものであり、例えば、碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチ等である。このような配電機材1は、複雑な形状を有するものや、磁器材料、樹脂材料又は金属材料などで形成されたもの、塗装や亜鉛等のメッキが施されたものなどがある。
【0047】
搬送手段20は、配電機材1を洗浄手段30、ひび割れ測定手段40、膜厚測定手段50及び情報貼付手段60に相対向する領域に順次搬送するものである。搬送手段20としては、本実施形態では、環状のベルト21を駆動モータ22により回転させることで配電機材1を搬送するベルトコンベアを用いた。
【0048】
洗浄手段30は、使用済み配電機材1の外面に付着した汚れを洗浄するものである。洗浄手段30としては、例えば、温水や蒸気を噴射させて洗浄するものなどが挙げられる。なお、洗浄手段30が配電機材1を温水又は蒸気により洗浄することで、水洗いでは除去することができない配電機材1に付着した塩分も除去することができる。また、洗浄手段30には、図示しないが、配電機材1を洗浄することにより付着した温水や蒸気などの水分を除去するための乾燥手段が設けられている。乾燥手段としては、例えば、風圧により水分を吹き飛ばして除去するものが挙げられる。
【0049】
ひび割れ測定手段40は、使用済み配電機材1のひび割れを測定するものであり、配電機材1にひび割れを測定する検査溶液を塗布する検査溶液塗布手段41と、配電機材1の余分な領域に塗布された検査溶液を除去する検査溶液除去手段42と、配電機材1に残留した検査溶液を測定する色センサ43とで構成されている。
【0050】
検査溶液塗布手段41は、使用済み配電機材1、特に碍子などの磁器材料で形成された配電機材1のひび割れを検出するために、配電機材1に検査溶液を塗布するものである。ここで、使用される検査溶液は、ひび割れに浸透する浸透液であり、例えば、染色浸透深傷剤、蛍光浸透深傷剤などが挙げられる。なお、検査溶液塗布手段41は、検査溶液を霧状に噴射する塗布、刷毛による塗布、配電機材1を検査溶液に浸漬することによる塗布など何れの方法で配電機材1に検査溶液を塗布するようにしてもよい。
【0051】
検査溶液除去手段42は、配電機材1の余分な領域に塗布された検査溶液を除去するものであり、本実施形態では、配電機材1の表面に塗布された検査溶液を除去する。この検査溶液除去手段42によって配電機材1の表面の検査溶液のみが除去され、配電機材1にひび割れがある場合には、ひび割れの内面に塗布された塗布溶液が残留する。なお、検査溶液除去手段42としては、例えば、上述した洗浄手段30と同様に、温水又は蒸気によるものなどが挙げられる。
【0052】
色センサ43は、配電機材1のひび割れの内面に残留した検査溶液を検出する。すなわち、配電機材1にひび割れがある場合には、検査溶液塗布手段41によってひび割れ内にも検査溶液が塗布され、検査溶液除去手段42によって表面の検査溶液を除去することでひび割れ内に塗布された検査溶液が残留する。この残留した検査溶液は色付いているため、色センサ43によって検査溶液の色を検出することで、配電機材1のひび割れの有無を測定することができる。
【0053】
なお、例えば、検査溶液として現像が必要なものを用いた場合には、ひび割れ測定手段40に、検査溶液を現像する現像手段を設けるようにすればよい。このように現像手段を設ける場合には、現像手段は、検査溶液除去手段42により余分な領域の検査溶液を除去した後に検査溶液を現像するように配置すればよい。
【0054】
また、ひび割れ測定手段40が測定したひび割れの程度によって、配電機材1の良品、不良品及び余寿命の判別を行う場合には、ひび割れ測定手段40にひび割れの内面に残留した検査溶液又は現像液をブラッシング、エアーの吹きつけ、水スプレー、布等で除去する除去手段を設けるようにすればよい。逆に、例えば、ひび割れ測定手段40が測定したひび割れの有無により、配電機材1の良品、不良品を判別する場合には、ひび割れが測定された(検査溶液が残留した)時点で、配電機材1が不良品と判別され配電機材1の廃棄が決定されるため、上述した除去手段を設ける必要はない。
【0055】
膜厚測定手段50は、使用済み配電機材1の塗装又はメッキの膜厚を測定する磁気センサ51を有するものである。ここで、配電機材1は、腕金、バンド及びカットアウトスイッチ等の塗装や亜鉛等のメッキが施されてたものである。膜厚測定手段50は、磁気センサ51によって配電機材1の磁気を測定することにより、配電機材1の塗装又はメッキの膜厚を測定することができる。そして、膜厚測定手段50によって測定された塗装又はメッキの膜厚によって配電機材1の余寿命は判別されるようになっている。
【0056】
判別手段70は、ひび割れ測定手段40、膜厚測定手段50及び情報貼付手段60に接続されて、ひび割れ測定手段40が測定したひび割れの有無やひび割れの程度、膜厚測定手段50が測定した塗装又はメッキの膜厚などに基づいて、配電機材1の良品、不良品及び余寿命を判別する。詳しくは、判別手段70は、例えば、ひび割れ測定手段40の測定したひび割れの有無や、ひび割れの程度によって、配電機材1を廃棄又は再利用、余寿命を判別する。本実施形態では、判別手段70は、配電機材1にひび割れがある場合には、配電機材1を不良品と判別するようにした。また、判別手段70は、例えば、膜厚測定手段50が測定した塗装又はメッキの膜厚に基づいて、膜厚と余寿命の関係を示すテーブルを参照して配電機材1の余寿命を判別する。なお、配電機材1が再利用される地域が海に近いと言った地理的状況や、風や気温などの気象状況などに応じて、余寿命を判別するようにしてもよい。このような判別手段70としては、コンピュータなどが挙げられる。
【0057】
情報貼付手段60は、判別手段70が判別した判別結果を記録媒体に記録し、この記録媒体を配電機材1に貼付する。記録媒体としては、例えば、非接触で情報を記録及び読み出すことができる非接触型ICチップなどが挙げられる。このように記録媒体として、非接触型ICチップを用いることで、例えば、電柱上に設置した使用済み配電機材1の余寿命等の情報を、電柱に登ることなく地上から確認することができ、安全性を向上することができる。
【0058】
なお、記録媒体に記録する情報としては、例えば、配電機材1の機種情報、膜厚情報、判定年情報、余寿命情報などが挙げられる。また、情報貼付手段60は、判別手段70が配電機材1を不良品と判別した場合には、記録媒体を貼付しないようにしてもよい。すなわち、不良品となった配電機材1は廃棄されるため、廃棄する配電機材1に記録媒体を貼付せず、記録媒体の無駄な使用を防止するようにしてもよい。
【0059】
このように、本実施形態の配電機材検査装置10は、配電機材1のひび割れの有無、程度及び配電機材1の塗装又はメッキの膜厚を測定し、測定結果に基づいて配電機材1の良品、不良品及び余寿命を判別するため、配電機材1の目視による判別に比べて人為的な判定基準の差がなく、容易に配電機材1の良品、不良品及び余寿命の判別を容易に行うことができる。これにより、配電機材1の無駄な廃棄を減少させて効率よく再利用することができる。また、情報貼付手段60が配電機材1に余寿命情報が記録された記録媒体を貼付することにより、再利用した配電機材1の余寿命を容易に且つ確実に把握することができる。
【0060】
ここで、本実施形態の配電機材検査装置10による配電機材検査方法を図2を参照して詳細に説明する。なお、図2は、配電機材検査方法を示すフローチャートである。
【0061】
図2に示すように、ステップS1で、洗浄手段30により配電機材1の洗浄を行う。この洗浄によって使用済み配電機材1に付着した汚れを除去する。次に、ステップS2で、配電機材1に検査溶液を塗布する。検査溶液の塗布は、配電機材1の全体の表面に亘って塗布する。このとき、配電機材1にひび割れがある場合、検査溶液はひび割れの内面にも塗布される。次に、ステップS3で、配電機材1の余分な領域の検査溶液を除去する。本実施形態では、配電機材1の表面に塗布された検査溶液を温水又は蒸気により除去した。このとき、配電機材1にひび割れがある場合、ひび割れの内面に塗布された検査溶液が除去されず残留する。次に、ステップS4で、配電機材1のひび割れを色センサ43により測定する。そして、ステップS5で、判別手段70が、色センサ43が配電機材1のひび割れを検出したと判別した場合には(ステップS5;Yes)、判別手段70が配電機材1を不良品と判別し、ステップS6で配電機材1を廃棄する。
【0062】
また、ステップS5で、判別手段70が、色センサ43が配電機材1のひび割れを検出していないと判別した場合には(ステップS5;No)、判別手段70が配電機材1を良品と判別し、ステップS7で、膜厚測定手段50が配電機材1の塗装又はメッキの膜厚を測定する。次に、ステップS8で、判別手段70が、膜厚測定手段50が測定した塗装又はメッキの膜厚が所定厚未満と判別した場合には(ステップS8;No)、判別手段70が配電機材1を不良品と判別し、ステップS6で配電機材1を廃棄する。
【0063】
また、ステップS8で、判別手段70が、膜厚測定手段50が測定した塗装又はメッキの膜厚が所定厚以上と判別した場合には(ステップS8;Yes)、判別手段70が配電機材1を良品と判別し、ステップS9で、判別手段70が膜厚による配電機材1の余寿命を判別する。そして、ステップS10で、情報貼付手段60が余寿命情報等を記録媒体に記録すると共に、この記録媒体を配電機材1に貼付し、ステップS11で配電機材1を再利用する。
【0064】
このように、洗浄した使用済み配電機材1のひび割れの測定、膜厚の測定を行って、配電機材の良、不良及び余寿命を容易に判別することができる。また、配電機材1に余寿命情報が記録された記録媒体を貼付することにより、再利用した配電機材1の余寿命を容易に且つ確実に把握することができる。
【0065】
なお、本実施形態の配電機材検査方法では、全ての配電機材1のひび割れ測定を行うようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、碍子など、ひび割れによって電流がリークして破損してしまう配電機材1のみ、ひび割れ測定を選択的に実施するようにしてもよい。また、塗装又はメッキが施されていない配電機材1の場合には、膜厚測定手段50による膜厚の測定を行わないようにしてもよい。すなわち、配電機材1の機種に応じて、検査する項目を設定し、設定された検査項目のみを検査して配電機材1の良品、不良品及び余寿命の判別を行うようにすればよい。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、ひび割れ測定手段40及び膜厚測定手段50の測定結果に基づいて判別手段70が配電機材1の良品、不良品及び余寿命をを判別するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、配電機材1が塗装されている場合には、膜厚測定手段50が測定した塗装の膜厚に応じて、配電機材1に再塗装を行う塗装手段を設けるようにしてもよい。このような塗装手段は、例えば、膜厚測定手段50が配電機材1の膜厚を測定した後、情報貼付手段60によって配電機材1に記録媒体を貼付する前に行うようにすればよい。なお、情報貼付手段60は、塗装手段が配電機材1に再塗装を行った場合には、その再塗装した後の膜厚を記録媒体に記録するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態1では、配電機材1のひび割れを測定するひび割れ測定手段40を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、ひび割れ測定手段40を設けずに膜厚測定手段50の測定結果のみから配電機材1の良品、不良品及び余寿命の判別を行うようにしてもよい。
【0068】
さらに、上述した実施形態1では、例えば、ひび割れ測定手段40が、色センサ43により検査溶液を検出するようにしたが、これに限定されず、例えば、配電機材を撮影し、画像処理により検査溶液を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、配電設備に用いられる配電機材を検査する配電機材検査装置及び配電機材検査方法の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態1に係る配電機材検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る配電機材検査方法の一連の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
10 配電機材検査装置
20 搬送手段
30 洗浄手段
40 ひび割れ測定手段
43 色センサ
50 膜厚測定手段
51 磁気センサ
60 情報貼付手段
70 判別手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電設備に用いられた使用済み配電機材を検査する配電機材検査装置であって、
前記配電機材を搬送する搬送手段と、前記配電機材を洗浄する洗浄手段と、磁気センサを有すると共に当該磁気センサによって前記配電機材の塗布又はメッキの膜厚を測定する膜厚測定手段と、前記膜厚測定手段の測定結果に基づいて前記配電機材の余寿命を判別する判別手段と、前記判別手段の判別結果が少なくとも記録された記録媒体を前記配電機材に貼付する情報貼付手段とを具備することを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記配電機材のひび割れを測定するひび割れ測定手段をさらに具備することを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ひび割れ測定手段が、前記配電機材にひび割れを検査する検査溶液を塗布する検査溶液塗布手段と、前記配電機材の余分な領域に塗布された前記検査溶液を除去する検査溶液除去手段と、前記検査溶液の残留を測定する色センサとで構成されていることを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記配電機材が碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチから選択される少なくとも一種であることを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記記録媒体には、前記配電機材の機種情報、膜厚情報、判定年情報、余寿命期間情報が蓄積されていることを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記洗浄手段が、温水又は蒸気により洗浄を行うものであることを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記記録媒体が、非接触で各種情報を記録及び読み出し可能な非接触型ICチップであることを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、前記配電機材に再塗装を行う塗装手段をさらに具備することを特徴とする配電機材検査装置。
【請求項9】
配電設備に使用された使用済み配電機材を検査する配電機材検査方法であって、
前記配電機材を洗浄する工程と、洗浄した前記配電機材の塗布又はメッキの膜厚を磁気センサにより測定する工程と、前記磁気センサにより測定した膜厚によって前記配電機材の廃棄又は再利用及び余寿命を判別する工程と、判別した余寿命を記録媒体に記録すると共に当該記録媒体を前記配電機材に貼付する工程とを具備することを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項10】
請求項9において、前記余寿命を判別する工程では、前記配電機材の種類毎に設けられた膜厚と余寿命との関係を示すテーブルに基づいて判別することを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記配電機材の洗浄を行う工程の後、前記配電機材のひび割れを測定する工程をさらに具備すると共に、前記余寿命を判別する工程では、測定したひび割れの有無及び膜厚により判別することを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項12】
請求項11において、前記ひび割れを測定する工程は、前記配電機材に検査溶液を塗布する工程と、前記配電機材の余分な領域に塗布された前記検査溶液を除去する工程と、前記配電機材に残留した前記検査溶液を測定する工程とを具備することを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項13】
請求項9〜12において、前記配電機材が碍子、腕金、バンド及びカットアウトスイッチから選択される少なくとも一種であることを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項14】
請求項9〜13の何れかにおいて、前記記録媒体には、前記配電機材の機種情報、膜厚情報、判定年情報、余寿命期間情報を記録することを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項15】
請求項9〜14の何れかにおいて、前記配電機材を洗浄する工程では、温水又は蒸気により行うことを特徴とする配電機材検査方法。
【請求項16】
請求項9〜15の何れかにおいて、前記配電機材の廃棄又は再利用及び余寿命を判別する工程の後、前記配電機材に再塗装を行う工程をさらに具備することを特徴とする配電機材検査方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−258617(P2006−258617A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76734(P2005−76734)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】