配電網用通信システム、通信経路設定装置及び方法
【課題】通信環境の実情に応じた通信経路を設定できるようにすること。
【解決手段】各計測装置520,530,630,650は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有する。中継装置20の模擬通信管理部210は、各計測装置の模擬通信を管理し、通信結果を収集して管理する。通信経路設定部10の統計処理部110は、模擬通信の結果を統計処理する。評価部120は、統計処理の結果と経路情報データベース320からの情報に基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する。通信経路作成部130で作成された通信経路は、通信経路通知部140から中継装置20を介して各計測装置に通知される。
【解決手段】各計測装置520,530,630,650は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有する。中継装置20の模擬通信管理部210は、各計測装置の模擬通信を管理し、通信結果を収集して管理する。通信経路設定部10の統計処理部110は、模擬通信の結果を統計処理する。評価部120は、統計処理の結果と経路情報データベース320からの情報に基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する。通信経路作成部130で作成された通信経路は、通信経路通知部140から中継装置20を介して各計測装置に通知される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網用通信システム、通信経路設定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、温暖化防止等の観点から、太陽光発電及び風力発電等の分散型電源を電力系統に接続することが求められている。しかし、分散型電源の出力は、一般的に、天候等により左右され、不安定である。
【0003】
そこで、通信機能を有する計測装置を電力系統の各所に設置することで、分散型電源及び蓄電装置を制御することが求められている。通信機能を有する計測装置として、例えば、検針装置(AMI:Advanced Meter Infrastructure)、センサ付き開閉器などが考えられる。それらの計測装置からデータを収集するために、無線通信またはPLC(Power Line Communication)を用いることができる。
【0004】
従来技術として、通信装置による中継数を最適化するシステムが知られている(特許文献1)。その従来技術では、通信端局からゲートウェイにTC(Tepology Control)メッセージを送信する際、通信端局からゲートウェイまでのホップ数(中継数)を考慮して、TTL(Time To Live)を設定する。TTLとは、パケットの有効時間である。
【0005】
例えば、通信端局からゲートウェイに到着するまでホップ数が7つ必要な場合、TTL=7となる。通信端局から発信されたTCメッセージは、1つ中継するごとにTTLを1つずつ減らしていきながら、ゲートウェイに到着する。TCメッセージがゲートウェイに到着した時にTTL=0となり、TCメッセージは破棄される。従って、ゲートウェイよりも先の通信端局には、TCメッセージが送信されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−199742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、無駄な通信端局を経由させずに最適なホップ数で情報を送信することができる。しかし、情報の送信経路の途中で、通信端局などに通信障害が発生した場合、情報が欠落する恐れがある。
【0008】
例えば、いわゆるバケツリレー方式で、隣接する通信端局間でパケットを送信する場合、或る通信端局で障害が発生すると、それまでの通信経路上の他の通信端局の情報は、障害の発生した通信端局から先に送信できず、失われる。従来技術では、通信経路の信頼性を確認する手段を持たないため、もしも、障害の発生しやすい通信端局がゲートウェイの近くに配置されていたりすると、多量の情報欠落が頻繁に生じる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の計測装置と通信するための通信経路を比較的高い信頼性で設定することのできる配電網用通信システム、通信経路設定装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う配電網用通信システムは、配電網の有する複数の計測装置と通信するための配電網用通信システムであって、各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、各計測装置が所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部と、模擬通信結果収集部から取得する模擬通信の結果に基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する通信経路設定部とを備え、通信経路設定部は、模擬通信の結果に基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、各計測装置に対し、通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる。
【0011】
各計測装置間で模擬通信が複数回行われるようになっており、通信経路設定部は、模擬通信の成否を統計処理し、統計処理の結果を評価し、統計処理の評価に基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0012】
通信経路設定部は、通信障害に関する情報を管理する通信障害情報管理部から通信障害の履歴を取得し、統計処理の結果と通信障害の履歴とに基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0013】
通信経路設定部は、模擬通信の成功回数が多くなるほど点数が小さくなるように模擬通信の成否を統計処理し、各計測装置が通信可能な計測装置のうち、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい計測装置を、通信相手となる計測装置として、各計測装置毎に少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0014】
通信経路設定部は、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい計測装置同士の組合せほど、模擬通信結果収集部に近くなるように、通信経路を設定することもできる。
【0015】
通信経路設定部は、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい第1の計測装置同士の組合せからなる通信経路を主要通信経路として検出し、各計測装置のうち主要通信経路に属さない第2の計測装置であって、第1の計測装置のいずれかに通信可能な第2の計測装置を、通信可能な第1の計測装置のうちいずれかに接続させるように通信経路を設定し、各計測装置のうち主要通信経路に属さない第3の計測装置であって、第1の計測装置のいずれとも直接通信できない第3の計測装置を、第2の計測装置のうち通信可能ないずれかの第2の計測装置に接続させるように通信経路を設定してもよい。
【0016】
本発明の構成の少なくとも一部は、コンピュータプログラムとして実現できる。コンピュータプログラムは、例えば、インターネットのような通信媒体、ハードディスクまたはフラッシュメモリデバイスのような記録媒体を介して、配布することができる。また、本発明の構成の一部は、電子回路として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る配電網用通信システムの全体概要を示す説明図である。
【図2】図2は、計測装置間の模擬通信の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、模擬通信結果をまとめた表の例を示す。
【図4】図4は、計測装置間の通信経路を示す表の例を示す。
【図5】図5は、通信経路を示す表の他の例を示す。
【図6】図6は、計測装置間の通信経路の構成例を示す。
【図7】図7は、計測装置間で模擬通信させる処理のフローチャートである。
【図8】図8は、通信経路を設定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、通信経路を設定する処理の他の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2実施例に係り、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第3実施例に係り、計測装置間の通信経路の構成例を示す説明図である。
【図12】図12は、通信経路を変更する処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、配電系統(配電網)50、60に含まれる複数の計測装置(530、630、650)間の通信状態を事前に評価して、安定性の高い通信経路を設定する。
【0019】
これにより、本実施形態では、通信障害等によって計測データが欠損したり欠落したりする可能性を低減することができ、配電網用通信システムの信頼性を向上できる。
【実施例1】
【0020】
図1は、配電網用通信システム1の全体概要を示す。配電網用通信システム1は、高圧配電系統50及び低圧配電系統60にそれぞれ設置された各種計測装置530、630、650間での模擬通信の結果を、中継装置20で集計する。通信経路設定装置10は、中継装置20から取得した模擬通信結果と、電力情報管理装置30から取得する経路情報とに基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する。
【0021】
配電網の構成を先に説明する。配電網は、高圧配電系統50と、低圧配電系統60とを備える。本実施例では、高圧配電系統50として、配電変電所の変圧器510から延びる1フィーダの規模を想定する。高圧配電系統50は、例えば、変圧器510と、ノードとして示す複数の柱上変圧器520a〜520fと、複数の計測装置付き開閉器530a〜530fと、高圧配電線540a、540bとを備える。なお、特に区別しない場合は、符号に添えたアルファベットを省略する。例えば、柱上変圧器520a〜520fは、柱上変圧器520と、呼ぶ場合がある。
【0022】
低圧配電系統60は、高圧配電線からの電力を、低圧配電線610に接続されている複数の需要家620a〜630cに供給する。図1の例では、低圧配電系統60は、或る一つの柱上変圧器520eに接続されている。他の柱上変圧器520a〜520d及び520fについても、同様に低圧配電系統60が接続されており、複数の需要家に電力を供給している。
【0023】
低圧配電系統60に含まれる各需要家620a〜620cは、例えば、一般の個人住宅、工場、商業店舗、病院、ビルディング、集合住宅等である。需要家620a〜620cは、計測装置630a〜630cを備えている。計測装置630a〜630cは、例えば、需要家の電力消費量を定期的に計測し、計測データを中継装置20を介して電力情報管理装置30に送信する。計測装置630a〜630cは、例えば、自動検針装置、計量メータ等のように構成される。
【0024】
複数の需要家620a〜620cのうち、一部の需要家620a、620cは、分散型電源640a、640cを備えることができる。分散型電源としては、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、蓄電装置、電気自動車などを挙げることができる。分散型電源640a、640cには、計測装置650a、650cが設けられる。それら計測装置650a、650cは、例えば、分散型電源640a、640cの発電量または蓄電量等を計測し、その計測データを電力情報管理装置30に向けて送信する。
【0025】
情報通信に関する構成を説明する。中継装置20、電力情報管理装置30、通信経路設定装置10の順番で説明する。
【0026】
「模擬通信結果収集部」の一例である中継装置20は、各計測装置520、530、630、650からの計測データを受信し、それら計測データを電力情報管理装置30に送信する。
【0027】
計測装置の種類毎に、計測データが中継装置20に送信される。つまり、計測装置付き開閉器530の計測データは、計測装置付き開閉器530同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。需要家620の計測装置630も、計測装置630同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。分散型電源640の計測装置650の計測データも、計測装置650同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。
【0028】
中継装置20は、各計測装置520、530、630、650からの計測データを、電力情報管理装置30に転送する。中継装置20は、電力情報管理装置30からの指示等を各計測装置520、530、630、650に通知することもできる。
【0029】
さらに、本実施例の中継装置20は、後述のように、計測装置間の模擬通信を管理して集計する。中継装置20の備える模擬通信管理部210は、計測装置間の模擬通信結果を取得して集計し、集計結果を通信経路設定装置10に送信する。また、中継装置20は、通信経路設定装置10からの指示等を、各計測装置に通知する。
【0030】
模擬通信管理部210は、各計測装置520、530、630、650で実施した模擬通信の結果を、定期的にまたは不定期に取得する。模擬通信実施の時間間隔は、計測装置での計測間隔に合わせることができる。模擬通信時期を計測時期に一致させるのではなく、例えば、1日1回、1週間1回等のように指定してもよい。
【0031】
なお、中継装置20は、フィーダ線毎に、または、配電変電所の変圧器バンク毎に、設置できる。または、中継装置20は、柱上変圧器520毎に設けてもよい。電力情報管理装置30及び通信経路設定装置10は、例えば、配電変電所毎に、または、変圧器バンク毎に、あるいは、フィーダ線毎に、設けることができる。
【0032】
電力情報管理装置30は、配電系統50、60から電力情報を収集して管理するためのコンピュータシステムである。電力情報管理装置30は、例えば、管理サーバ310と、経路情報データベース320とを備える。電力情報としては、例えば、電圧、電流、電力、周波数に関する情報を挙げることができる。経路情報データベース320は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリデバイス、RAM( Random Access Memory)等の記憶装置に設けられる。
【0033】
管理サーバ310は、各計測装置520、530、630、650からの電力情報を中継装置20を介して受信し、所定の情報処理を行う。管理サーバ310は、その情報処理の結果を、例えば、電力事業会社、電力コンサルタント会社、電気機器製造会社等に提供することができる。
【0034】
経路情報データベース320は、「通信障害情報管理部」の一例である。経路情報データベース320は、例えば、各計測装置520、530、630、650の構成に関する情報と、各計測装置520、530、630、650の通信履歴に関する情報とを記憶することができる。
【0035】
計測装置の構成に関する情報には、例えば、管理番号、機種名、メーカ名、設置場所、設置エリアなどが含まれる。通信履歴に関する情報には、例えば、故障履歴、通信障害の発生回数、過去の通信経路の構成(経路表)などが含まれる。
【0036】
通信経路設定装置10は、同種の計測装置間での通信経路を設定するためのコンピュータシステムである。通信経路設定装置10は、例えば、統計処理部110と、評価部120と、通信経路作成部130と、通信経路通知部140とを備える。
【0037】
統計処理部110は、後述のように、中継装置20の模擬通信管理部210から取得する情報に基づいて、各計測装置間の通信経路の安定性を点数化する。安定性とは、例えば、計測装置間の模擬通信が成功した回数等である。評価部120は、統計処理で算出された点数基づいて、各計測装置毎に、一つまたは複数の計測装置を通信相手の候補として選択する。
【0038】
より詳しくは、評価部120は、統計処理で算出された点数と、経路情報データベース320から取得する通信障害の履歴とに基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から、通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する。
【0039】
通信経路作成部130は、評価部120で決定された、通信元の計測装置と通信先の計測装置との組合せに従って、各計測装置の通信経路を作成する。通信経路通知部140は、作成された通信経路を、中継装置20を介して、各計測装置520、530、630、650に通知する。
【0040】
通信経路設定装置10は、模擬通信管理部210による模擬通信の集計に応じて、計測装置間の通信経路を設定することができる。または、通信経路設定装置10は、例えば、配電系統50、60内のセンサネットワーク(各計測装置520、530、630、650から構成されるネットワーク)に構成変化が生じた場合に、計測装置間の通信経路を設定することもできる。さらに、通信経路設定装置10は、模擬通信結果の集計時期とは別のタイミングで、定期的にまたは不定期に、通信経路を設定してもよい。
【0041】
図2を参照して、計測装置間での模擬通信の様子を説明する。なお、説明の便宜上、以下では、需要家の計測装置630を中心に説明するが、本実施例は、需要家の計測装置630以外の他の計測装置530、650についても適用できる。
【0042】
図2は、所定のエリアに属する計測装置630a〜630gの模擬通信例を示す。図2には、7台の計測装置630a〜630gと1台の中継装置20とが示されている。中継装置20のIDは、「TR10」である。計測装置630a〜630gのIDは、M1011、
M1012、 M1013、 M1014、
M1015、 M1016、 M1017である。
【0043】
所定のエリアとは、同一の柱上変圧器520と電気的に接続されている需要家620である。本実施例では、柱上変圧器520毎にエリアを区分する。なお、エリアの設定は、任意であり、例えば、市区町村単位に設けてもよいし、所定距離で区分してもよいし、所定面積で区分してもよい。
【0044】
図2に示すように、各計測装置630a〜630gは、無線通信機能を備えており、通信範囲内に有る他の計測装置と無線で模擬通信を行う。無線による模擬通信の様子を、図2では、各計測装置を結ぶ点線で示している。
【0045】
各計測装置630a〜630gで電力量を計測する間に、中継装置20及び各計測装置630a〜630gは、周囲に存在する他の装置に向けてパケット情報を送信し、模擬通信を行う。模擬通信の時期は事前に決定されており、かつ、各装置20、630a〜630gの内蔵タイマは同期されているものとする。本実施例では、突発的な環境変化等を考慮し、例えば、5回を1セットとして、合計2セットの模擬通信を行う。周囲の計測装置との間で複数回の模擬通信が行えればよく、5回で1セットの模擬通信を2セット行う必要はない。なお、以下の説明では、各装置間でやり取りされる情報のことを、単にパケットと呼ぶ場合がある。
【0046】
図2では、計測装置630a(M1011)と、計測装置630b(M1012)と、計測装置630d(M1014)をそれぞれ通信元とする、模擬通信の結果を、テーブルT10a、T10B、T10dに示す。計測装置630a〜630g間で計測情報を転送するための通信経路を作成する前に、各計測装置630a〜630gは、所定範囲内の他の計測装置との間で模擬通信を実施する。各計測装置630a〜630gは、模擬通信の受信記録をテーブルT10(T10a、T10B、T10d以外の他のテーブルは不図示)に記録する。
【0047】
計測装置630aの場合、所定範囲内に存在する模擬通信の相手は、計測装置630b、630c、630d、630eの合計4台である。所定範囲とは、計測装置630aが無線通信可能な領域である。
【0048】
計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの1行目に記憶されている。計測装置630a(M1011)と計測装置630c(M1013)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの2行目に記載されている。同様に、計測装置630a(M1011)と、計測装置630d(M1014)、630e(M1015)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの3行目と4行目に記載されている。なお、テーブル内の数値の意味は、後述する。
【0049】
同様に、テーブルT10dは、計測装置630d(M1014)を通信元とする模擬通信の受信記録を示す。テーブルT10bは、計測装置630b(M1012)を通信元とする模擬通信の受信記録を示す。各計測装置630a〜630gは、模擬通信の相手方から送信されるはずの信号を受信していない場合に、未受信である旨を記録する。
【0050】
ここで、テーブル内の数値の意味を説明する。以下、計測装置630a〜630gを区別しない場合、計測装置630と呼ぶことがある。
【0051】
通信経路設定装置10の統計処理部110は、中継装置20の取得した模擬通信の結果から、各計測装置630での通信成功頻度を、点数で評価する。模擬通信は、一方の計測装置と他方の計測装置との間で双方向で行われる。一方の計測装置が通信元計測装置となり、他方の計測装置が通信先計測装置となった模擬通信と、これとは逆に、一方の計測装置が通信先計測装置となり、他方の計測装置が通信元計測装置となった模擬通信との、両方が実行される。通信元の計測装置とは、模擬通信のパケットを送信する装置であり、通信先の計測装置とは、模擬通信のパケットを受信する装置である。
【0052】
模擬通信のペアを形成する一方の計測装置及び他方の計測装置の間で、互いに模擬通信用パケットを受信できたときは、模擬通信に成功した場合であり、例えば、最も小さい評価点である0点が与えられる。
【0053】
相手方の計測装置から送信された模擬通信用パケットは受信できたが、相手方の計測装置が自装置から送信された模擬通信用パケットを受信できなかったときは、模擬通信は失敗した場合である。そこで、次に低い評価点として1点が与えられる。
【0054】
自装置は相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信できなかったが、相手方の計測装置が自装置からの模擬通信用パケットを受信できたときも、模擬通信は失敗した場合である。そこで、次に低い評価点として2点が与えられる。
【0055】
自装置も相手方の計測装置も、互いに模擬通信用パケットを受信できなかったときは、模擬通信が完全に失敗した場合なので、最も高い評価点である3点が与えられる。つまり、模擬通信の品質が低下するほど評価点が大きくなる。点数の設定方法は任意であり、模擬通信の品質(成功度)が低下するほど評価点を小さくしてもよいし、0〜3点以外の他の点数を設定してもよい。
【0056】
図2では、各計測装置は、相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信していないことを、テーブル内に該当欄に「2」という点数を設定することで記憶する。図2のテーブル中、空欄の部分は、相手方の計測装置から模擬通信用パケットを受信できたことを示している。
【0057】
テーブルT10aの1行目に着目する。1行目では、第1セットの2回目及び5回目と、第2セットの3回目とに、点数2が設定されている。その点数は、計測装置630a(M1011)が、通信相手である計測装置630b(M1012)からの模擬通信用パケットを受信できなかったことを意味し、模擬通信用パケットの受信に失敗したことを示している。
【0058】
図3は、各計測装置間の模擬通信の結果をまとめたテーブルである。統合テーブルT20は、例えば、計測装置の機種と、エリアと、計測装置の組合せと、模擬通信結果とを対応付けて管理している。
【0059】
図3の例では、計測装置は、需要家620に設置される検針装置(計測装置630)である。エリアは、柱上変圧器単位または中継装置単位で区分される。なお、計測装置の機種、または、エリアのいずれか一方だけで区分してもよい。
【0060】
テーブルT20の上部に示す組合せとは、模擬通信のペアとなる計測装置の組み合わせである。項目Aは送信側の計測装置であり、項目Bは受信側の計測装置である。例えば、計測装置630a(M1011)を送信側Aの装置とすると、受信側Bの装置には、計測装置630b(M1012)、630c(M1013)、630d(M1014)、630e(M1015)が該当する。テーブルT20の「組合せ」の送信側Aに示す他の計測装置についても同様である。例えば、計測装置630d(M1014)が送信側Aの装置である場合、受信側の装置は、中継装置20(TR10)、計測装置630a(M1011)、630b(M1012)、630e(M1015)である。どの装置とペアを形成しうるかは、各計測装置毎に異なる。通信可能な範囲内に存在する装置が、模擬通信の相手方となるためである。
【0061】
統合テーブルT20の上部右側に示す「模擬通信結果」とは、各計測装置が記録した模擬通信の送受信の結果を集計し、点数化したものである。一枠が模擬通信1回に相当する。本実施例では、5回で1セットとし、合計2セットの模擬通信を行う。
【0062】
模擬通信結果の枠内の数値は、各計測装置間の模擬通信用パケットの送受信状態を点数化したものである。計測装置の組み合わせに応じて、テーブルT10に記憶された点数を、次のように再度点数化する。
【0063】
(1)通信元の計測装置のテーブルT10と通信先の計測装置のテーブルT10とで、対応する模擬通信の結果を示す欄が、空欄または0点の場合、統合テーブルT20では、通信元及び通信先の対応箇所を、空欄または0点のままとする。この場合、通信元計測装置と通信先計測装置との間で模擬通信用パケットの送受信に成功したことを示す。
【0064】
(2)通信元の計測装置のテーブルT10または通信先の計測装置のテーブルT10のいずれか一方で、対応する模擬通信の結果を示す欄に「2」が記録されている場合、統合テーブルT20では、他方の計測装置の値として「1」を記憶する。自装置が相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信できなかった場合とは、裏返せば、相手方の計測装置が模擬通信用パケットの送信に失敗した場合だからである。この場合は、通信元の計測装置または通信先の計測装置のいずれかで、模擬通信用パケットの送受信に失敗したことを示す。
【0065】
(3)通信元の計測装置のテーブルT10及び通信先の計測装置のテーブルT10の両方で、対応する模擬通信の結果を示す欄に「2」が記録されている場合、統合テーブルT20では、通信元及び通信先の対応箇所に「3」をそれぞれ設定する。この場合は、通信元計測装置及び通信先計測装置の両方で、模擬通信用パケットの送受信に失敗したことを示す。
【0066】
統合テーブルT20の「A/B」欄は、上記(1)〜(3)で算出された点数の合計値を、下記数1に従って算出する。
【0067】
【数1】
ここで、Smnは模擬通信毎の点数、SmTは点数の合計値、mは計測装置ID、nは模擬通信回次である。
【0068】
統合テーブルT20の「A/B」は、A欄のIDを有する計測装置を送信側とし、B欄のIDを有する計測装置を受信側として見た場合の、点数の合計値である。これとは逆に、統合テーブルT20の「B/A」は、B欄のIDを有する計測装置を送信側とし、A欄のIDを有する計測装置を受信側として見た場合の、点数の合計値である。
【0069】
例えば、計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)の組み合わせで説明する。「A/B」は、計測装置630a(M1011)を送信側(通信元)とし、計測装置630b(M1012)を受信側(通信先)として計算したときの合計値である。同じ例において、「B/A」は、計測装置630b(M1012)を送信側とし、630a(M1011)を受信側として計算したときの合計値である。つまり、「B/A」の値は、対応する「A/B」において、送信側と受信側を入れ替えた場合の値と同じである。模擬通信のペアを形成する複数の計測装置において、「A/B」および「B/A」の両方の値を算出することで、それら計測装置間の通信経路の信頼性を双方向で評価することができる。
【0070】
統合テーブルT20の右端には、「A/B」欄の値と「B/A」欄の値との合計値が示されている。この合計値は、或る通信経路についての双方向の評価値である。合計値が小さいほど、模擬通信時の通信が安定しており、障害の発生回数が少ないと考えることができる。従って、本実施例では、或る計測装置の通信範囲内に複数の計測装置が存在する場合、統合テーブルT20の最終合計値が最も小さい計測装置を、通信相手の計測装置として選択する。判定対象の計測装置と最終合計値が最も少ない計測装置との間の通信経路が、最も安定していると考えられるためである。
【0071】
図4及び図5を参照して、通信経路テーブルT30を説明する。通信経路テーブルT30は、図3で述べた統合テーブルT20に基づいて作成される。
【0072】
図4は、図6(1)に示すチェーン状のトポロジに対応する。図5は、図6(2)に示す中継装置をルートとするツリー状のトポロジに対応する。特に区別しない場合、通信経路テーブルT30(1)、T30(2)を、通信経路テーブルT30と呼ぶ。
【0073】
通信経路テーブルT30は、各計測装置630から中継装置20に計測データの格納されたパケットを送信する場合の、経路を規定する。計測装置から中継装置20に向かう通信方向を、ここでは上り方向(上流方向)と呼ぶ。中継装置20から計測装置に向かう通信方向を、ここでは下り方向(下流方向)と呼ぶ。
【0074】
通信経路テーブルT30は、例えば、情報の宛先IDと、その情報の転送先IDとを対応付けて管理する。転送先IDとは、その情報を転送すべき装置のIDである。通信経路テーブルT30は、各計測装置630a〜630g毎の通信経路を一つのテーブルとしてまとめたものである。通信経路設定装置10の通信経路通知部140は、通信経路テーブルT30のうち、各計測装置に対応する部分の情報のみを通知する。
【0075】
図4に太い黒枠で示すように、計測装置630a(M1011)を例に挙げて、説明する。計測装置630a(M1011)が、中継装置20(TR10)を宛先とするパケットを受信したときは、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。計測装置630a(M1011)が、自装置(M1011)を宛先とするパケットを受信した場合は、そのまま受領し、どこにも転送しない。計測装置630a(M1011)が、計測装置630b(M1012)を宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。計測装置630a(M1011)が、計測装置630c(M1013)を宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。
【0076】
計測装置630a(M1011)は、計測装置630d(M1014)を宛先とするパケットを受信することはない。図6(1)に示すように、計測装置630d(M1014)は、計測装置630a(M1011)の下流側に位置するためである。
【0077】
計測装置630a(M1011)が、計測装置630e(M1015)、630f(M1016)、630g(M1017)のいずれかを宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。
【0078】
このように、転送先IDが、計測装置630a(M1011)よりも上流側に有る計測装置のID(TR10、M1012、
M1013、 M1015、 M1016、
M1017)である場合、自装置630a(M1011)の次の計測装置630b(M1012)へ転送する。
【0079】
計測装置630a(M1011)よりも下流側に位置する計測装置630d(M1014)宛てのパケットは、送信することができないため、計測装置630a(M1011)は、そのパケットを受信した時点で破棄する。同様に、他の計測装置においても、通信経路テーブルT30(1)に示す通信方法に従って、パケットを送受信する。
【0080】
以上のように、各計測装置について、パケットの宛先IDと転送先IDとをそれぞれ設定することにより、計測装置で計測した測定値(パケット)を所定の通信経路に沿って送信することが可能である。
【0081】
ここで、図3の統合テーブルT20を参照する。計測装置630a(M1011)の通信相手の候補として、統合テーブルT20によれば、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)とが存在する。
【0082】
計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)の組合せの場合、最終合計値は「15」である。計測装置630a(M1011)と計測装置630d(M1014)の組合せの場合、その最終合計値は「18」である。計測装置630a(M1011)と他の計測装置630c(M1013)、630e(M1015)の組合せの合計値は、それぞれ「32」、「28」である。従って、計測装置630a(M1011)にとっては、最終合計値が少ない、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)が通信相手の候補となる。
【0083】
本実施例では、通信経路設定装置10は、模擬通信結果に基づく他の計測装置の通信相手の構成、および/または、通信経路に沿って累計した最終合計点数の合計に鑑みて、通信経路を設定する。先の例では、通信経路設定装置10は、計測装置630a(M1011)の送信先を計測装置630b(M1012)とし、受信先を計測装置630d(M1014)とする。
【0084】
なお、後述のように、通信経路を設定するに際して、通信経路設定装置10は、経路情報データベース320から読み込んだ故障履歴情報、通信障害発生回数、過去の点数の累積値のうち、いずれか少なくとも1つ以上の指標を用いてもよい。例えば、通信障害発生回数等の少ない順に、品質が安定していることを示す順位を設定してもよい。そして、順位の高い計測装置(通信品質の安定した計測装置)が、上流側に位置するように、通信相手の計測装置を選択する構成でもよい。
【0085】
または、数2に示すように、統合テーブルT20の右端に示す合計値が最小となる計測装置を通信相手として選択し、通信経路を設定してもよい。ここで、SRは、通信経路全体での点数合計値を示す。SmTは、模擬通信結果の合計値である。
【0086】
【数2】
【0087】
図6は、通信経路のトポロジの例を示す。図6(1)は、いわゆる数珠つなぎの通信経路の例である。図6(2)は、いわゆるツリー状の通信経路の例を示す。
【0088】
図6(1)に示す数珠つなぎの通信経路の構成は、図4の通信経路テーブルT30(1)に基づいて描いたものである。図6(1)の通信経路構成は、中継装置20を終点として、通信経路631gと、計測装置630fと、通信経路631fと、計測装置630cと、通信経路631eと、計測装置630eと、通信経路631dと、計測装置630gと、通信経路631cと、計測装置630bと、通信経路631bと、計測装置630aと、通信経路631aと、計測装置630dとをひとつなぎに結んで構成される。
【0089】
各計測装置は、定期的に系統状態を計測する。系統情報の計測値を含むパケットは、図6(1)に示す通信経路に従って、中継装置20までバケツリレー方式で送信される。以下、理解のために、計測値を収容したパケットを、計測データと呼ぶ。
【0090】
まず、計測装置639d(M1014)の計測データが、通信経路631aを介して、計測装置630a(M1011)に送信される。次に、計測装置630a(M1011)から、計測装置630dの計測データと計測装置630aの計測データとが、通信経路631bを介して、計測装置630b(M1012)に送信される。
【0091】
計測装置630d、630a、630bの各計測データは、通信経路631cを介して計測装置630e(M1017)に送信される。同様に、計測装置630d、
630a、630b、630gの各計測データは、通信経路631dを介して、計測装置630e(M1015)に送信される。
【0092】
以下、マルチホップ通信と同様に、各計測装置の計測データを追加しながら、最終的に中継装置20まで計測データが送信される。なお、各計測装置の計測データの宛先IDは中継装置20(TR10)であり、各計測装置に予め設定されている。
【0093】
図6(2)に示すツリー状の通信経路は、図5に示す通信経路テーブルT30(2)に基づいて描いたものである。図6(2)に示す通信経路構成では、中継装置20から3本の経路が延びている。
【0094】
一つの経路は、通信経路632bと、計測装置630dと、通信経路632aと、計測装置630aとを結んで構成される。他の一つの経路は、通信経路632dと、計測装置630eと、通信経路632eと、計測装置630cとを結んで構成される。さらに別の経路は、通信経路632gと、計測装置630fと、通信経路632fと、計測装置630gと、通信経路632cと、計測装置630bとを結んで構成される。
【0095】
例えば、計測装置630a(M1011)の計測データは、通信経路632aを介して、計測装置630d(M1014)に送信される。計測装置630d(M1014)は、計測装置630aの計測データに自装置630d(M1014)の計測データを追加し、それら計測データを通信経路632bを介して、中継装置20に送信する。
【0096】
同様に、計測装置630c(M1013)の計測データは、通信経路632eを介して、計測装置630e(M1015)に送信される。計測装置630e(M1015)は、自装置630e(M1015)の計測データを追加し、計測装置630e、630cの計測データを通信経路632dを介して中継装置20に送信する。
【0097】
同様に、計測装置630b(M1012)の計測データは、通信経路632cを介して、計測装置630g(M1017)に送られる。計測装置630b及び630gの各計測データは、通信経路632fを介して、計測装置630fに送られる。計測装置630bと630g及び630fの各計測データは、通信経路632gを介して、中継装置20に送られる。
【0098】
本実施例の動作を説明する。以下に述べる模擬通信処理、通信経路決定処理等の各処理は、中継装置20または通信経路設定装置10の有するCPU(Central Processing Unit)が、所定のコンピュータプログラムを実行することで実現される。所定のコンピュータプログラムは、CPUがアクセス可能なメモリ等に格納されている。所定のコンピュータプログラムは、図外のプログラム管理サーバから遠隔操作により、メモリに記憶させることもできる。なお、CPUがコンピュータプログラムが実行する構成に代えて、または、その構成とと共に、IC(Integrated Circuit)またはLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア回路を用いてもよい。
【0099】
図7は、模擬通信処理を示すフローチャートである。中継装置20の模擬通信管理部210は、各計測装置630に模擬通信のスケジュールを事前に通知する(S10)。そのスケジュールには、模擬通信の実行予定時刻と、模擬通信の相手となる計測装置のIDとが含まれている。上述の通り、模擬通信は、定期的に行うこともできるし、所定イベントの発生時に行うこともできる。
【0100】
各計測装置630は、タイマをそれぞれ内蔵しており、所定の時刻が到来したかを監視している(S11)。所定時刻が到来すると(S11:YES)、各計測装置630は、周辺の他の計測装置(自装置と通信可能な圏内に存在する計測装置)との間で、模擬通信を行う(S12)。
【0101】
各計測装置630は、模擬通信の結果(図2に示すテーブルT20の内容)を中継装置20に送信する(S13)。中継装置20は、各計測装置630における模擬通信の結果を集計し、統合テーブルT20に記録する(S14)。
【0102】
図8のフローチャートを参照して、通信経路決定処理を説明する。本処理は、各計測装置630を結ぶための通信経路を、各候補経路(通信相手となる装置の候補)毎の安定性に基づいて決定する。
【0103】
通信経路設定装置10の統計処理部110は、中継装置20の模擬通信管理部210から模擬通信結果を取得する(S20)。統計処理部110は、模擬通信結果に基づいて、計測装置間の通信成功頻度を評価した点数を計算する(S21)。統計処理部110は、計測装置同士の通信候補組み合わせに基づいて、各計測装置に記録されている点数を照合する。
【0104】
その際に、統計処理部110は、模擬通信の同じ回次の点数同士を照合する。計測装置単独では、自身の受信失敗時の点数2が記録されているため、統計処理部110は、前述した(1)〜(3)に従って点数を書き換える。統計処理部110は、各計測装置における、照合後の点数の合計値を計算する(数1)。
【0105】
通信経路設定装置10の評価部120は、統計処理部110により算出された合計値に基づいて、各計測装置毎に、通信相手の候補となる装置を少なくとも一つ以上選択する(S22)。評価部120は、例えば、合計値の小さい順に複数の(2つの)計測装置を、通信相手候補として選択する。
【0106】
評価部120は、経路情報データベース320から、計測装置630の通信状態に関する履歴を取得する(S23)。通信状態の履歴情報には、例えば、計測装置の故障履歴情報および通信障害発生回数等の通信障害の履歴を示す情報と、過去の点数の累積値とを含めることができる。
【0107】
評価部120は、ステップS22で選択した複数の通信相手候補について、他の計測装置との重複がなく一意に通信経路が決まる場合は、その一意に定まる一つの通信相手候補を通信相手の計測装置として決定する。
【0108】
対象の通信相手候補が他の計測装置の通信相手にもなり得るため、通信経路が一意に定まらない場合ような場合、評価部120は、故障履歴、通信障害発生回数、過去の点数の累積値等に基づいて、通信相手候補を順位付けし、選択する(S24)。
【0109】
過去の点数累積値を例に挙げて説明する。この場合、点数が高い計測装置ほど通信障害の発生回数が多いと判断して、通信経路の下流側に配置する。点数の低い計測装置ほど通信障害発生回数が少ないと判断して、通信経路の上流側(中継装置側)に配置する。
【0110】
つまり、評価部120は、対象の計測装置の通信相手候補として2つの計測装置が有る場合、通信状態の良い方の計測装置が上流側の通信相手となり、通信状態の悪い方の計測装置が下流側の通信相手となるように、選択する。
【0111】
通信経路作成部130は、ステップS24で決定された各計測装置の通信相手に基づいて、計測装置毎の通信経路テーブル(ルーティングテーブル)を作成する(S25)。通信経路テーブルは、情報の送受信に関する宛先IDの項目と、情報の転送先を示す転送先IDの項目とを含んで構成される。
【0112】
通信経路通知部140は、ステップS25で作成された各計測装置毎の通信経路テーブルを、対応する計測装置にそれぞれ送信し(S26)、本処理を終了する。
【0113】
図9は、通信経路を決定する処理の他の例を示すフローチャートである。中継装置20の模擬通信管理部210は、配電系統に設置される各計測装置間で、集計直前に実施された同じ回次の模擬通信の結果(各計測装置)を集計する(S30)。
【0114】
統計処理部110は、各計測装置毎の模擬通信の結果を、通信の組み合わせに応じて照合し、前述した(1)〜(3)の手順に従って点数を計算する(S31)。統計処理部110は、点数の合計値を計算する(S32)。その際、統計処理部110は、図3のテーブルT20に示すように、送信側(A)からみた合計値(A/B)と、受信側(B)から見た場合の合計値(B/A)と計算する(数1)。そして、統計処理部110は、それぞれの合計値(A/B)と(B/A)を足し合わせた最終合計値を計算する。
【0115】
評価部120は、ステップS32で算出された点数の合計値を比較し、計測装置毎に、合計値の低い通信相手の候補を1つ以上(できれば2つ以上)選択する。例えば、図3のテーブルT20において、計測装置630a(M1011)の場合、合計値が低い通信相手候補は、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)の2つである。
【0116】
上述の通り、計測装置630b(M1012)の最終合計値は「15」であり、計測装置630d(M1014)の最終合計値は「18」であり、他の計測装置630c(M1012)の合計値「32」及び計測装置630e(M1015)の合計値「28」よりも、小さい。評価部120は、最終合計値の小さいものから順番に、少なくとも1つ、できれば複数の計測装置を通信相手候補として選択する。
【0117】
評価部120は、経路情報データベース320から、通信相手候補として選択された計測装置についての、通信状態の履歴を読み込む(S34)。ここでは、通信状態の履歴のうち、故障回数に着目する。
【0118】
評価部120は、例えば、故障回数が1回の場合は1点、故障回数が2回の場合は2点、故障回数が3回の場合は3点、のように故障回数に応じた点数を付与する。パケットの送受信ができなかった場合、故障が生じたと判定できる。
【0119】
評価部120は、ステップS33で選定した通信相手候補(もしくは通信経路)について重複があるかどうかを、計測装置毎に判定する(S35)。通信相手に重複がある場合(S35:YES)、評価部120は、故障回数に基づいて、通信相手候補を順位付けする(S36)。
【0120】
評価部120は、順位付けした結果に基づいて、各計測装置の通信相手を決定する(S37)。上述の例で言えば、計測装置630a(M1011)の通信相手候補として、計測装置630b(M1012)の最終点数と630e(M1015)の最終点数とが同点の場合を考える。
【0121】
例えば、計測装置630a(M1012)の累計点数が計測装置630e(M1015)の累積点数よりも少ない場合、計測装置630a(M1011)の通信相手として、計測装置630b(M1012)を選択する。
【0122】
なお、ツリー状のトポロジが許可されている場合、或る一つの計測装置が複数の計測装置の通信相手として選択されてもよい。ツリー状のトポロジでセンサネットワーク(通信システム)を生成する場合、通信相手候補は少なくとも1つ抽出されればよい。数珠つなぎ状のトポロジの場合は、末端の計測装置を除いて、少なくとも2つの通信相手候補が抽出されればよい。
【0123】
通信経路作成部130は、決定された各計測装置の通信相手に基づいて、各計測装置の通信経路テーブル(ルーティングテーブル)を作成し(S38)、対応する各計測装置に通知し(S39)、本処理を終了する。
【0124】
以上のように構成される本実施例では、各計測装置間で模擬通信を事前に行い、模擬通信の結果に応じて、各計測装置を接続する通信経路を設定する。従って、通信環境が日々変動する状況下において、より安定な通信経路を、実情に即して設定することができ、この結果、配電網用通信システムの信頼性を高めることができる。
【0125】
本実施例では、模擬通信を複数回実施して統計処理するため、一時的な通信障害の影響を排除して、精度よく通信経路を設定することができる。
【0126】
本実施例では、通信相手候補が重複した場合(例えば、統計処理の結果、同一点数の場合)、通信状態の履歴に基づいて、通信相手となる装置を決定する。従って、より安定した通信経路を設定することができ、通信システムの信頼性を向上できる。
【0127】
本実施例では、通信状態の安定している方の計測装置が通信上の上流側に位置するように、通信経路を設定する。つまり、統計処理後の点数が小さい装置ほど、または、点数が小さくかつ障害の発生回数も小さい装置ほど、中継装置側に配置されるように、通信システム全体の通信経路を設定する。これにより、計測データを含むパケットが通信障害等で失われる可能性を低減できる。
【実施例2】
【0128】
図10を参照して、第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との相違を中心に説明する。本実施例では、配電網の通信システムの構成変化に応じて、通信経路を変更する。
【0129】
図10は、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。通信経路設定装置10は、配電網(高圧配電系統50、低圧配電系統60)内に、新たな計測装置が追加されたかを判定する(S50)。
【0130】
例えば、新たな計測装置は、配電網に設置されると、周囲に向けて所定のパケットを送信する。既存の計測装置のいずれかが、その所定パケットを受信し、中継装置20を介して通信経路設定装置10に転送する。
【0131】
新たな計測装置の追加を検出すると(S50:YES)、通信経路設定装置10は、新たな計測装置のための通信経路を設定し、その通信経路を、対応する各計測装置に通知する(S51)。最も簡単な方法は、新たな計測装置からの所定パケットを受信した計測装置を通信相手候補とし、その通信相手候補の中からいずれか1つを通信相手の計測装置として選択する。
【0132】
新たな計測装置の追加が発見されない場合(S50:NO)、通信経路設定装置10は、既存の各計測装置に障害が発生したかを判定する(S52)。ここでの障害とは、一時的なものではなく、計測装置が故障して停止している、または、計測装置が取り外された等の、比較的長時間にわたる障害を意味する。例えば、計測装置の寿命が尽きた場合、火災等で計測装置が壊れてしまった場合、計測装置の設置されていた建物が建て直し等のために取り壊された場合などである。
【0133】
障害発生が検出された場合(S52:YES)、通信経路設定装置10は、障害の生じた計測装置を迂回するための通信経路を探り、その通信経路を構成する計測装置を選択する(S53)。通信経路設定装置10は、新たに作成された迂回用通信経路を構成する各計測装置に向けて、通信経路の変更を通知する(S54)。
【0134】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、計測装置が新たに追加されたり、計測装置に恒久的な障害が発生した場合にも、対応することができる。
【実施例3】
【0135】
図11、図12を参照して第3実施例を説明する。図11は、本実施例による通信システムのネットワーク構成を示す。図12は、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。
【0136】
本実施例では、配電網の通信システムの中から通信状態の最も安定している経路を検出し、主要通信経路Pmとする(S60)。理解のために、主要通信経路Pmに属する計測装置630a〜630eを、第1の計測装置と呼ぶことにする。通信状態が最も安定している通信経路とは、例えば、上述の最終合計値が小さく、かつ、障害回数も最も少ない通信経路である。
【0137】
主要通信経路Pmに属していない計測装置630f、630g、630hのうち、第1の計測装置630a〜630eのいずれかに通信可能な計測装置630f、630gを、第2の計測装置と呼ぶ。
【0138】
第2の計測装置630f、630gは、最寄りの第1の計測装置630b、630dに接続されるよう、通信経路Ps1、Ps2が設定される(S61)。図11の例では、第2の計測装置630fを第1の計測装置630bに接続するための通信経路Ps1が設定される。同様に、第2の計測装置630gを第1の計測装置630dに接続するための通信経路Ps2が設定される。
【0139】
第1の計測装置630a〜630eのいずれにも直接通信できない計測装置630hを、第3の計測装置と呼ぶ。第3の計測装置630hは、その周辺に存在する通信可能な第2の計測装置630fに接続されるよう、通信経路Ps3が設定される(S62)。
【0140】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、通信の安定した主要通信経路Pmを検出し、その主要通信経路Pmを中心として、他の計測装置に接続するための通信経路Ps1〜Ps3を設定する。従って、具体的な通信環境の変化に対応して、比較的安定した通信経路を速やかに設定できる。
【0141】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、通信経路設定装置10と電力情報管理装置30とを一つの装置として構成したり、通信経路設定装置10の機能の一部または全部を中継装置20に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0142】
10:通信経路設定装置
20:中継装置
30:電力情報管理装置
50:高圧配電系統
60:低圧配電系統
110:統計処理部
120:評価部
130:通信経路作成部
140:通信経路通知部
210:模擬通信管理部
320:経路情報データベース
520:柱上変圧器
530:計測装置付き開閉器
630:計測装置
650:計測装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網用通信システム、通信経路設定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、温暖化防止等の観点から、太陽光発電及び風力発電等の分散型電源を電力系統に接続することが求められている。しかし、分散型電源の出力は、一般的に、天候等により左右され、不安定である。
【0003】
そこで、通信機能を有する計測装置を電力系統の各所に設置することで、分散型電源及び蓄電装置を制御することが求められている。通信機能を有する計測装置として、例えば、検針装置(AMI:Advanced Meter Infrastructure)、センサ付き開閉器などが考えられる。それらの計測装置からデータを収集するために、無線通信またはPLC(Power Line Communication)を用いることができる。
【0004】
従来技術として、通信装置による中継数を最適化するシステムが知られている(特許文献1)。その従来技術では、通信端局からゲートウェイにTC(Tepology Control)メッセージを送信する際、通信端局からゲートウェイまでのホップ数(中継数)を考慮して、TTL(Time To Live)を設定する。TTLとは、パケットの有効時間である。
【0005】
例えば、通信端局からゲートウェイに到着するまでホップ数が7つ必要な場合、TTL=7となる。通信端局から発信されたTCメッセージは、1つ中継するごとにTTLを1つずつ減らしていきながら、ゲートウェイに到着する。TCメッセージがゲートウェイに到着した時にTTL=0となり、TCメッセージは破棄される。従って、ゲートウェイよりも先の通信端局には、TCメッセージが送信されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−199742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、無駄な通信端局を経由させずに最適なホップ数で情報を送信することができる。しかし、情報の送信経路の途中で、通信端局などに通信障害が発生した場合、情報が欠落する恐れがある。
【0008】
例えば、いわゆるバケツリレー方式で、隣接する通信端局間でパケットを送信する場合、或る通信端局で障害が発生すると、それまでの通信経路上の他の通信端局の情報は、障害の発生した通信端局から先に送信できず、失われる。従来技術では、通信経路の信頼性を確認する手段を持たないため、もしも、障害の発生しやすい通信端局がゲートウェイの近くに配置されていたりすると、多量の情報欠落が頻繁に生じる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の計測装置と通信するための通信経路を比較的高い信頼性で設定することのできる配電網用通信システム、通信経路設定装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う配電網用通信システムは、配電網の有する複数の計測装置と通信するための配電網用通信システムであって、各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、各計測装置が所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部と、模擬通信結果収集部から取得する模擬通信の結果に基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する通信経路設定部とを備え、通信経路設定部は、模擬通信の結果に基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、各計測装置に対し、通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる。
【0011】
各計測装置間で模擬通信が複数回行われるようになっており、通信経路設定部は、模擬通信の成否を統計処理し、統計処理の結果を評価し、統計処理の評価に基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0012】
通信経路設定部は、通信障害に関する情報を管理する通信障害情報管理部から通信障害の履歴を取得し、統計処理の結果と通信障害の履歴とに基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0013】
通信経路設定部は、模擬通信の成功回数が多くなるほど点数が小さくなるように模擬通信の成否を統計処理し、各計測装置が通信可能な計測装置のうち、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい計測装置を、通信相手となる計測装置として、各計測装置毎に少なくとも一つずつ決定することもできる。
【0014】
通信経路設定部は、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい計測装置同士の組合せほど、模擬通信結果収集部に近くなるように、通信経路を設定することもできる。
【0015】
通信経路設定部は、点数が最も小さく、かつ、通信障害の発生回数が最も小さい第1の計測装置同士の組合せからなる通信経路を主要通信経路として検出し、各計測装置のうち主要通信経路に属さない第2の計測装置であって、第1の計測装置のいずれかに通信可能な第2の計測装置を、通信可能な第1の計測装置のうちいずれかに接続させるように通信経路を設定し、各計測装置のうち主要通信経路に属さない第3の計測装置であって、第1の計測装置のいずれとも直接通信できない第3の計測装置を、第2の計測装置のうち通信可能ないずれかの第2の計測装置に接続させるように通信経路を設定してもよい。
【0016】
本発明の構成の少なくとも一部は、コンピュータプログラムとして実現できる。コンピュータプログラムは、例えば、インターネットのような通信媒体、ハードディスクまたはフラッシュメモリデバイスのような記録媒体を介して、配布することができる。また、本発明の構成の一部は、電子回路として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る配電網用通信システムの全体概要を示す説明図である。
【図2】図2は、計測装置間の模擬通信の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、模擬通信結果をまとめた表の例を示す。
【図4】図4は、計測装置間の通信経路を示す表の例を示す。
【図5】図5は、通信経路を示す表の他の例を示す。
【図6】図6は、計測装置間の通信経路の構成例を示す。
【図7】図7は、計測装置間で模擬通信させる処理のフローチャートである。
【図8】図8は、通信経路を設定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、通信経路を設定する処理の他の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2実施例に係り、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第3実施例に係り、計測装置間の通信経路の構成例を示す説明図である。
【図12】図12は、通信経路を変更する処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、配電系統(配電網)50、60に含まれる複数の計測装置(530、630、650)間の通信状態を事前に評価して、安定性の高い通信経路を設定する。
【0019】
これにより、本実施形態では、通信障害等によって計測データが欠損したり欠落したりする可能性を低減することができ、配電網用通信システムの信頼性を向上できる。
【実施例1】
【0020】
図1は、配電網用通信システム1の全体概要を示す。配電網用通信システム1は、高圧配電系統50及び低圧配電系統60にそれぞれ設置された各種計測装置530、630、650間での模擬通信の結果を、中継装置20で集計する。通信経路設定装置10は、中継装置20から取得した模擬通信結果と、電力情報管理装置30から取得する経路情報とに基づいて、各計測装置間の通信経路を設定する。
【0021】
配電網の構成を先に説明する。配電網は、高圧配電系統50と、低圧配電系統60とを備える。本実施例では、高圧配電系統50として、配電変電所の変圧器510から延びる1フィーダの規模を想定する。高圧配電系統50は、例えば、変圧器510と、ノードとして示す複数の柱上変圧器520a〜520fと、複数の計測装置付き開閉器530a〜530fと、高圧配電線540a、540bとを備える。なお、特に区別しない場合は、符号に添えたアルファベットを省略する。例えば、柱上変圧器520a〜520fは、柱上変圧器520と、呼ぶ場合がある。
【0022】
低圧配電系統60は、高圧配電線からの電力を、低圧配電線610に接続されている複数の需要家620a〜630cに供給する。図1の例では、低圧配電系統60は、或る一つの柱上変圧器520eに接続されている。他の柱上変圧器520a〜520d及び520fについても、同様に低圧配電系統60が接続されており、複数の需要家に電力を供給している。
【0023】
低圧配電系統60に含まれる各需要家620a〜620cは、例えば、一般の個人住宅、工場、商業店舗、病院、ビルディング、集合住宅等である。需要家620a〜620cは、計測装置630a〜630cを備えている。計測装置630a〜630cは、例えば、需要家の電力消費量を定期的に計測し、計測データを中継装置20を介して電力情報管理装置30に送信する。計測装置630a〜630cは、例えば、自動検針装置、計量メータ等のように構成される。
【0024】
複数の需要家620a〜620cのうち、一部の需要家620a、620cは、分散型電源640a、640cを備えることができる。分散型電源としては、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、蓄電装置、電気自動車などを挙げることができる。分散型電源640a、640cには、計測装置650a、650cが設けられる。それら計測装置650a、650cは、例えば、分散型電源640a、640cの発電量または蓄電量等を計測し、その計測データを電力情報管理装置30に向けて送信する。
【0025】
情報通信に関する構成を説明する。中継装置20、電力情報管理装置30、通信経路設定装置10の順番で説明する。
【0026】
「模擬通信結果収集部」の一例である中継装置20は、各計測装置520、530、630、650からの計測データを受信し、それら計測データを電力情報管理装置30に送信する。
【0027】
計測装置の種類毎に、計測データが中継装置20に送信される。つまり、計測装置付き開閉器530の計測データは、計測装置付き開閉器530同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。需要家620の計測装置630も、計測装置630同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。分散型電源640の計測装置650の計測データも、計測装置650同士のバケツリレー方式で、中継装置20に送信される。
【0028】
中継装置20は、各計測装置520、530、630、650からの計測データを、電力情報管理装置30に転送する。中継装置20は、電力情報管理装置30からの指示等を各計測装置520、530、630、650に通知することもできる。
【0029】
さらに、本実施例の中継装置20は、後述のように、計測装置間の模擬通信を管理して集計する。中継装置20の備える模擬通信管理部210は、計測装置間の模擬通信結果を取得して集計し、集計結果を通信経路設定装置10に送信する。また、中継装置20は、通信経路設定装置10からの指示等を、各計測装置に通知する。
【0030】
模擬通信管理部210は、各計測装置520、530、630、650で実施した模擬通信の結果を、定期的にまたは不定期に取得する。模擬通信実施の時間間隔は、計測装置での計測間隔に合わせることができる。模擬通信時期を計測時期に一致させるのではなく、例えば、1日1回、1週間1回等のように指定してもよい。
【0031】
なお、中継装置20は、フィーダ線毎に、または、配電変電所の変圧器バンク毎に、設置できる。または、中継装置20は、柱上変圧器520毎に設けてもよい。電力情報管理装置30及び通信経路設定装置10は、例えば、配電変電所毎に、または、変圧器バンク毎に、あるいは、フィーダ線毎に、設けることができる。
【0032】
電力情報管理装置30は、配電系統50、60から電力情報を収集して管理するためのコンピュータシステムである。電力情報管理装置30は、例えば、管理サーバ310と、経路情報データベース320とを備える。電力情報としては、例えば、電圧、電流、電力、周波数に関する情報を挙げることができる。経路情報データベース320は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリデバイス、RAM( Random Access Memory)等の記憶装置に設けられる。
【0033】
管理サーバ310は、各計測装置520、530、630、650からの電力情報を中継装置20を介して受信し、所定の情報処理を行う。管理サーバ310は、その情報処理の結果を、例えば、電力事業会社、電力コンサルタント会社、電気機器製造会社等に提供することができる。
【0034】
経路情報データベース320は、「通信障害情報管理部」の一例である。経路情報データベース320は、例えば、各計測装置520、530、630、650の構成に関する情報と、各計測装置520、530、630、650の通信履歴に関する情報とを記憶することができる。
【0035】
計測装置の構成に関する情報には、例えば、管理番号、機種名、メーカ名、設置場所、設置エリアなどが含まれる。通信履歴に関する情報には、例えば、故障履歴、通信障害の発生回数、過去の通信経路の構成(経路表)などが含まれる。
【0036】
通信経路設定装置10は、同種の計測装置間での通信経路を設定するためのコンピュータシステムである。通信経路設定装置10は、例えば、統計処理部110と、評価部120と、通信経路作成部130と、通信経路通知部140とを備える。
【0037】
統計処理部110は、後述のように、中継装置20の模擬通信管理部210から取得する情報に基づいて、各計測装置間の通信経路の安定性を点数化する。安定性とは、例えば、計測装置間の模擬通信が成功した回数等である。評価部120は、統計処理で算出された点数基づいて、各計測装置毎に、一つまたは複数の計測装置を通信相手の候補として選択する。
【0038】
より詳しくは、評価部120は、統計処理で算出された点数と、経路情報データベース320から取得する通信障害の履歴とに基づいて、各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から、通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する。
【0039】
通信経路作成部130は、評価部120で決定された、通信元の計測装置と通信先の計測装置との組合せに従って、各計測装置の通信経路を作成する。通信経路通知部140は、作成された通信経路を、中継装置20を介して、各計測装置520、530、630、650に通知する。
【0040】
通信経路設定装置10は、模擬通信管理部210による模擬通信の集計に応じて、計測装置間の通信経路を設定することができる。または、通信経路設定装置10は、例えば、配電系統50、60内のセンサネットワーク(各計測装置520、530、630、650から構成されるネットワーク)に構成変化が生じた場合に、計測装置間の通信経路を設定することもできる。さらに、通信経路設定装置10は、模擬通信結果の集計時期とは別のタイミングで、定期的にまたは不定期に、通信経路を設定してもよい。
【0041】
図2を参照して、計測装置間での模擬通信の様子を説明する。なお、説明の便宜上、以下では、需要家の計測装置630を中心に説明するが、本実施例は、需要家の計測装置630以外の他の計測装置530、650についても適用できる。
【0042】
図2は、所定のエリアに属する計測装置630a〜630gの模擬通信例を示す。図2には、7台の計測装置630a〜630gと1台の中継装置20とが示されている。中継装置20のIDは、「TR10」である。計測装置630a〜630gのIDは、M1011、
M1012、 M1013、 M1014、
M1015、 M1016、 M1017である。
【0043】
所定のエリアとは、同一の柱上変圧器520と電気的に接続されている需要家620である。本実施例では、柱上変圧器520毎にエリアを区分する。なお、エリアの設定は、任意であり、例えば、市区町村単位に設けてもよいし、所定距離で区分してもよいし、所定面積で区分してもよい。
【0044】
図2に示すように、各計測装置630a〜630gは、無線通信機能を備えており、通信範囲内に有る他の計測装置と無線で模擬通信を行う。無線による模擬通信の様子を、図2では、各計測装置を結ぶ点線で示している。
【0045】
各計測装置630a〜630gで電力量を計測する間に、中継装置20及び各計測装置630a〜630gは、周囲に存在する他の装置に向けてパケット情報を送信し、模擬通信を行う。模擬通信の時期は事前に決定されており、かつ、各装置20、630a〜630gの内蔵タイマは同期されているものとする。本実施例では、突発的な環境変化等を考慮し、例えば、5回を1セットとして、合計2セットの模擬通信を行う。周囲の計測装置との間で複数回の模擬通信が行えればよく、5回で1セットの模擬通信を2セット行う必要はない。なお、以下の説明では、各装置間でやり取りされる情報のことを、単にパケットと呼ぶ場合がある。
【0046】
図2では、計測装置630a(M1011)と、計測装置630b(M1012)と、計測装置630d(M1014)をそれぞれ通信元とする、模擬通信の結果を、テーブルT10a、T10B、T10dに示す。計測装置630a〜630g間で計測情報を転送するための通信経路を作成する前に、各計測装置630a〜630gは、所定範囲内の他の計測装置との間で模擬通信を実施する。各計測装置630a〜630gは、模擬通信の受信記録をテーブルT10(T10a、T10B、T10d以外の他のテーブルは不図示)に記録する。
【0047】
計測装置630aの場合、所定範囲内に存在する模擬通信の相手は、計測装置630b、630c、630d、630eの合計4台である。所定範囲とは、計測装置630aが無線通信可能な領域である。
【0048】
計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの1行目に記憶されている。計測装置630a(M1011)と計測装置630c(M1013)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの2行目に記載されている。同様に、計測装置630a(M1011)と、計測装置630d(M1014)、630e(M1015)との模擬通信の結果は、テーブルT10aの3行目と4行目に記載されている。なお、テーブル内の数値の意味は、後述する。
【0049】
同様に、テーブルT10dは、計測装置630d(M1014)を通信元とする模擬通信の受信記録を示す。テーブルT10bは、計測装置630b(M1012)を通信元とする模擬通信の受信記録を示す。各計測装置630a〜630gは、模擬通信の相手方から送信されるはずの信号を受信していない場合に、未受信である旨を記録する。
【0050】
ここで、テーブル内の数値の意味を説明する。以下、計測装置630a〜630gを区別しない場合、計測装置630と呼ぶことがある。
【0051】
通信経路設定装置10の統計処理部110は、中継装置20の取得した模擬通信の結果から、各計測装置630での通信成功頻度を、点数で評価する。模擬通信は、一方の計測装置と他方の計測装置との間で双方向で行われる。一方の計測装置が通信元計測装置となり、他方の計測装置が通信先計測装置となった模擬通信と、これとは逆に、一方の計測装置が通信先計測装置となり、他方の計測装置が通信元計測装置となった模擬通信との、両方が実行される。通信元の計測装置とは、模擬通信のパケットを送信する装置であり、通信先の計測装置とは、模擬通信のパケットを受信する装置である。
【0052】
模擬通信のペアを形成する一方の計測装置及び他方の計測装置の間で、互いに模擬通信用パケットを受信できたときは、模擬通信に成功した場合であり、例えば、最も小さい評価点である0点が与えられる。
【0053】
相手方の計測装置から送信された模擬通信用パケットは受信できたが、相手方の計測装置が自装置から送信された模擬通信用パケットを受信できなかったときは、模擬通信は失敗した場合である。そこで、次に低い評価点として1点が与えられる。
【0054】
自装置は相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信できなかったが、相手方の計測装置が自装置からの模擬通信用パケットを受信できたときも、模擬通信は失敗した場合である。そこで、次に低い評価点として2点が与えられる。
【0055】
自装置も相手方の計測装置も、互いに模擬通信用パケットを受信できなかったときは、模擬通信が完全に失敗した場合なので、最も高い評価点である3点が与えられる。つまり、模擬通信の品質が低下するほど評価点が大きくなる。点数の設定方法は任意であり、模擬通信の品質(成功度)が低下するほど評価点を小さくしてもよいし、0〜3点以外の他の点数を設定してもよい。
【0056】
図2では、各計測装置は、相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信していないことを、テーブル内に該当欄に「2」という点数を設定することで記憶する。図2のテーブル中、空欄の部分は、相手方の計測装置から模擬通信用パケットを受信できたことを示している。
【0057】
テーブルT10aの1行目に着目する。1行目では、第1セットの2回目及び5回目と、第2セットの3回目とに、点数2が設定されている。その点数は、計測装置630a(M1011)が、通信相手である計測装置630b(M1012)からの模擬通信用パケットを受信できなかったことを意味し、模擬通信用パケットの受信に失敗したことを示している。
【0058】
図3は、各計測装置間の模擬通信の結果をまとめたテーブルである。統合テーブルT20は、例えば、計測装置の機種と、エリアと、計測装置の組合せと、模擬通信結果とを対応付けて管理している。
【0059】
図3の例では、計測装置は、需要家620に設置される検針装置(計測装置630)である。エリアは、柱上変圧器単位または中継装置単位で区分される。なお、計測装置の機種、または、エリアのいずれか一方だけで区分してもよい。
【0060】
テーブルT20の上部に示す組合せとは、模擬通信のペアとなる計測装置の組み合わせである。項目Aは送信側の計測装置であり、項目Bは受信側の計測装置である。例えば、計測装置630a(M1011)を送信側Aの装置とすると、受信側Bの装置には、計測装置630b(M1012)、630c(M1013)、630d(M1014)、630e(M1015)が該当する。テーブルT20の「組合せ」の送信側Aに示す他の計測装置についても同様である。例えば、計測装置630d(M1014)が送信側Aの装置である場合、受信側の装置は、中継装置20(TR10)、計測装置630a(M1011)、630b(M1012)、630e(M1015)である。どの装置とペアを形成しうるかは、各計測装置毎に異なる。通信可能な範囲内に存在する装置が、模擬通信の相手方となるためである。
【0061】
統合テーブルT20の上部右側に示す「模擬通信結果」とは、各計測装置が記録した模擬通信の送受信の結果を集計し、点数化したものである。一枠が模擬通信1回に相当する。本実施例では、5回で1セットとし、合計2セットの模擬通信を行う。
【0062】
模擬通信結果の枠内の数値は、各計測装置間の模擬通信用パケットの送受信状態を点数化したものである。計測装置の組み合わせに応じて、テーブルT10に記憶された点数を、次のように再度点数化する。
【0063】
(1)通信元の計測装置のテーブルT10と通信先の計測装置のテーブルT10とで、対応する模擬通信の結果を示す欄が、空欄または0点の場合、統合テーブルT20では、通信元及び通信先の対応箇所を、空欄または0点のままとする。この場合、通信元計測装置と通信先計測装置との間で模擬通信用パケットの送受信に成功したことを示す。
【0064】
(2)通信元の計測装置のテーブルT10または通信先の計測装置のテーブルT10のいずれか一方で、対応する模擬通信の結果を示す欄に「2」が記録されている場合、統合テーブルT20では、他方の計測装置の値として「1」を記憶する。自装置が相手方の計測装置からの模擬通信用パケットを受信できなかった場合とは、裏返せば、相手方の計測装置が模擬通信用パケットの送信に失敗した場合だからである。この場合は、通信元の計測装置または通信先の計測装置のいずれかで、模擬通信用パケットの送受信に失敗したことを示す。
【0065】
(3)通信元の計測装置のテーブルT10及び通信先の計測装置のテーブルT10の両方で、対応する模擬通信の結果を示す欄に「2」が記録されている場合、統合テーブルT20では、通信元及び通信先の対応箇所に「3」をそれぞれ設定する。この場合は、通信元計測装置及び通信先計測装置の両方で、模擬通信用パケットの送受信に失敗したことを示す。
【0066】
統合テーブルT20の「A/B」欄は、上記(1)〜(3)で算出された点数の合計値を、下記数1に従って算出する。
【0067】
【数1】
ここで、Smnは模擬通信毎の点数、SmTは点数の合計値、mは計測装置ID、nは模擬通信回次である。
【0068】
統合テーブルT20の「A/B」は、A欄のIDを有する計測装置を送信側とし、B欄のIDを有する計測装置を受信側として見た場合の、点数の合計値である。これとは逆に、統合テーブルT20の「B/A」は、B欄のIDを有する計測装置を送信側とし、A欄のIDを有する計測装置を受信側として見た場合の、点数の合計値である。
【0069】
例えば、計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)の組み合わせで説明する。「A/B」は、計測装置630a(M1011)を送信側(通信元)とし、計測装置630b(M1012)を受信側(通信先)として計算したときの合計値である。同じ例において、「B/A」は、計測装置630b(M1012)を送信側とし、630a(M1011)を受信側として計算したときの合計値である。つまり、「B/A」の値は、対応する「A/B」において、送信側と受信側を入れ替えた場合の値と同じである。模擬通信のペアを形成する複数の計測装置において、「A/B」および「B/A」の両方の値を算出することで、それら計測装置間の通信経路の信頼性を双方向で評価することができる。
【0070】
統合テーブルT20の右端には、「A/B」欄の値と「B/A」欄の値との合計値が示されている。この合計値は、或る通信経路についての双方向の評価値である。合計値が小さいほど、模擬通信時の通信が安定しており、障害の発生回数が少ないと考えることができる。従って、本実施例では、或る計測装置の通信範囲内に複数の計測装置が存在する場合、統合テーブルT20の最終合計値が最も小さい計測装置を、通信相手の計測装置として選択する。判定対象の計測装置と最終合計値が最も少ない計測装置との間の通信経路が、最も安定していると考えられるためである。
【0071】
図4及び図5を参照して、通信経路テーブルT30を説明する。通信経路テーブルT30は、図3で述べた統合テーブルT20に基づいて作成される。
【0072】
図4は、図6(1)に示すチェーン状のトポロジに対応する。図5は、図6(2)に示す中継装置をルートとするツリー状のトポロジに対応する。特に区別しない場合、通信経路テーブルT30(1)、T30(2)を、通信経路テーブルT30と呼ぶ。
【0073】
通信経路テーブルT30は、各計測装置630から中継装置20に計測データの格納されたパケットを送信する場合の、経路を規定する。計測装置から中継装置20に向かう通信方向を、ここでは上り方向(上流方向)と呼ぶ。中継装置20から計測装置に向かう通信方向を、ここでは下り方向(下流方向)と呼ぶ。
【0074】
通信経路テーブルT30は、例えば、情報の宛先IDと、その情報の転送先IDとを対応付けて管理する。転送先IDとは、その情報を転送すべき装置のIDである。通信経路テーブルT30は、各計測装置630a〜630g毎の通信経路を一つのテーブルとしてまとめたものである。通信経路設定装置10の通信経路通知部140は、通信経路テーブルT30のうち、各計測装置に対応する部分の情報のみを通知する。
【0075】
図4に太い黒枠で示すように、計測装置630a(M1011)を例に挙げて、説明する。計測装置630a(M1011)が、中継装置20(TR10)を宛先とするパケットを受信したときは、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。計測装置630a(M1011)が、自装置(M1011)を宛先とするパケットを受信した場合は、そのまま受領し、どこにも転送しない。計測装置630a(M1011)が、計測装置630b(M1012)を宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。計測装置630a(M1011)が、計測装置630c(M1013)を宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。
【0076】
計測装置630a(M1011)は、計測装置630d(M1014)を宛先とするパケットを受信することはない。図6(1)に示すように、計測装置630d(M1014)は、計測装置630a(M1011)の下流側に位置するためである。
【0077】
計測装置630a(M1011)が、計測装置630e(M1015)、630f(M1016)、630g(M1017)のいずれかを宛先とするパケットを受信した場合、そのパケットを計測装置630b(M1012)に転送する。
【0078】
このように、転送先IDが、計測装置630a(M1011)よりも上流側に有る計測装置のID(TR10、M1012、
M1013、 M1015、 M1016、
M1017)である場合、自装置630a(M1011)の次の計測装置630b(M1012)へ転送する。
【0079】
計測装置630a(M1011)よりも下流側に位置する計測装置630d(M1014)宛てのパケットは、送信することができないため、計測装置630a(M1011)は、そのパケットを受信した時点で破棄する。同様に、他の計測装置においても、通信経路テーブルT30(1)に示す通信方法に従って、パケットを送受信する。
【0080】
以上のように、各計測装置について、パケットの宛先IDと転送先IDとをそれぞれ設定することにより、計測装置で計測した測定値(パケット)を所定の通信経路に沿って送信することが可能である。
【0081】
ここで、図3の統合テーブルT20を参照する。計測装置630a(M1011)の通信相手の候補として、統合テーブルT20によれば、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)とが存在する。
【0082】
計測装置630a(M1011)と計測装置630b(M1012)の組合せの場合、最終合計値は「15」である。計測装置630a(M1011)と計測装置630d(M1014)の組合せの場合、その最終合計値は「18」である。計測装置630a(M1011)と他の計測装置630c(M1013)、630e(M1015)の組合せの合計値は、それぞれ「32」、「28」である。従って、計測装置630a(M1011)にとっては、最終合計値が少ない、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)が通信相手の候補となる。
【0083】
本実施例では、通信経路設定装置10は、模擬通信結果に基づく他の計測装置の通信相手の構成、および/または、通信経路に沿って累計した最終合計点数の合計に鑑みて、通信経路を設定する。先の例では、通信経路設定装置10は、計測装置630a(M1011)の送信先を計測装置630b(M1012)とし、受信先を計測装置630d(M1014)とする。
【0084】
なお、後述のように、通信経路を設定するに際して、通信経路設定装置10は、経路情報データベース320から読み込んだ故障履歴情報、通信障害発生回数、過去の点数の累積値のうち、いずれか少なくとも1つ以上の指標を用いてもよい。例えば、通信障害発生回数等の少ない順に、品質が安定していることを示す順位を設定してもよい。そして、順位の高い計測装置(通信品質の安定した計測装置)が、上流側に位置するように、通信相手の計測装置を選択する構成でもよい。
【0085】
または、数2に示すように、統合テーブルT20の右端に示す合計値が最小となる計測装置を通信相手として選択し、通信経路を設定してもよい。ここで、SRは、通信経路全体での点数合計値を示す。SmTは、模擬通信結果の合計値である。
【0086】
【数2】
【0087】
図6は、通信経路のトポロジの例を示す。図6(1)は、いわゆる数珠つなぎの通信経路の例である。図6(2)は、いわゆるツリー状の通信経路の例を示す。
【0088】
図6(1)に示す数珠つなぎの通信経路の構成は、図4の通信経路テーブルT30(1)に基づいて描いたものである。図6(1)の通信経路構成は、中継装置20を終点として、通信経路631gと、計測装置630fと、通信経路631fと、計測装置630cと、通信経路631eと、計測装置630eと、通信経路631dと、計測装置630gと、通信経路631cと、計測装置630bと、通信経路631bと、計測装置630aと、通信経路631aと、計測装置630dとをひとつなぎに結んで構成される。
【0089】
各計測装置は、定期的に系統状態を計測する。系統情報の計測値を含むパケットは、図6(1)に示す通信経路に従って、中継装置20までバケツリレー方式で送信される。以下、理解のために、計測値を収容したパケットを、計測データと呼ぶ。
【0090】
まず、計測装置639d(M1014)の計測データが、通信経路631aを介して、計測装置630a(M1011)に送信される。次に、計測装置630a(M1011)から、計測装置630dの計測データと計測装置630aの計測データとが、通信経路631bを介して、計測装置630b(M1012)に送信される。
【0091】
計測装置630d、630a、630bの各計測データは、通信経路631cを介して計測装置630e(M1017)に送信される。同様に、計測装置630d、
630a、630b、630gの各計測データは、通信経路631dを介して、計測装置630e(M1015)に送信される。
【0092】
以下、マルチホップ通信と同様に、各計測装置の計測データを追加しながら、最終的に中継装置20まで計測データが送信される。なお、各計測装置の計測データの宛先IDは中継装置20(TR10)であり、各計測装置に予め設定されている。
【0093】
図6(2)に示すツリー状の通信経路は、図5に示す通信経路テーブルT30(2)に基づいて描いたものである。図6(2)に示す通信経路構成では、中継装置20から3本の経路が延びている。
【0094】
一つの経路は、通信経路632bと、計測装置630dと、通信経路632aと、計測装置630aとを結んで構成される。他の一つの経路は、通信経路632dと、計測装置630eと、通信経路632eと、計測装置630cとを結んで構成される。さらに別の経路は、通信経路632gと、計測装置630fと、通信経路632fと、計測装置630gと、通信経路632cと、計測装置630bとを結んで構成される。
【0095】
例えば、計測装置630a(M1011)の計測データは、通信経路632aを介して、計測装置630d(M1014)に送信される。計測装置630d(M1014)は、計測装置630aの計測データに自装置630d(M1014)の計測データを追加し、それら計測データを通信経路632bを介して、中継装置20に送信する。
【0096】
同様に、計測装置630c(M1013)の計測データは、通信経路632eを介して、計測装置630e(M1015)に送信される。計測装置630e(M1015)は、自装置630e(M1015)の計測データを追加し、計測装置630e、630cの計測データを通信経路632dを介して中継装置20に送信する。
【0097】
同様に、計測装置630b(M1012)の計測データは、通信経路632cを介して、計測装置630g(M1017)に送られる。計測装置630b及び630gの各計測データは、通信経路632fを介して、計測装置630fに送られる。計測装置630bと630g及び630fの各計測データは、通信経路632gを介して、中継装置20に送られる。
【0098】
本実施例の動作を説明する。以下に述べる模擬通信処理、通信経路決定処理等の各処理は、中継装置20または通信経路設定装置10の有するCPU(Central Processing Unit)が、所定のコンピュータプログラムを実行することで実現される。所定のコンピュータプログラムは、CPUがアクセス可能なメモリ等に格納されている。所定のコンピュータプログラムは、図外のプログラム管理サーバから遠隔操作により、メモリに記憶させることもできる。なお、CPUがコンピュータプログラムが実行する構成に代えて、または、その構成とと共に、IC(Integrated Circuit)またはLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア回路を用いてもよい。
【0099】
図7は、模擬通信処理を示すフローチャートである。中継装置20の模擬通信管理部210は、各計測装置630に模擬通信のスケジュールを事前に通知する(S10)。そのスケジュールには、模擬通信の実行予定時刻と、模擬通信の相手となる計測装置のIDとが含まれている。上述の通り、模擬通信は、定期的に行うこともできるし、所定イベントの発生時に行うこともできる。
【0100】
各計測装置630は、タイマをそれぞれ内蔵しており、所定の時刻が到来したかを監視している(S11)。所定時刻が到来すると(S11:YES)、各計測装置630は、周辺の他の計測装置(自装置と通信可能な圏内に存在する計測装置)との間で、模擬通信を行う(S12)。
【0101】
各計測装置630は、模擬通信の結果(図2に示すテーブルT20の内容)を中継装置20に送信する(S13)。中継装置20は、各計測装置630における模擬通信の結果を集計し、統合テーブルT20に記録する(S14)。
【0102】
図8のフローチャートを参照して、通信経路決定処理を説明する。本処理は、各計測装置630を結ぶための通信経路を、各候補経路(通信相手となる装置の候補)毎の安定性に基づいて決定する。
【0103】
通信経路設定装置10の統計処理部110は、中継装置20の模擬通信管理部210から模擬通信結果を取得する(S20)。統計処理部110は、模擬通信結果に基づいて、計測装置間の通信成功頻度を評価した点数を計算する(S21)。統計処理部110は、計測装置同士の通信候補組み合わせに基づいて、各計測装置に記録されている点数を照合する。
【0104】
その際に、統計処理部110は、模擬通信の同じ回次の点数同士を照合する。計測装置単独では、自身の受信失敗時の点数2が記録されているため、統計処理部110は、前述した(1)〜(3)に従って点数を書き換える。統計処理部110は、各計測装置における、照合後の点数の合計値を計算する(数1)。
【0105】
通信経路設定装置10の評価部120は、統計処理部110により算出された合計値に基づいて、各計測装置毎に、通信相手の候補となる装置を少なくとも一つ以上選択する(S22)。評価部120は、例えば、合計値の小さい順に複数の(2つの)計測装置を、通信相手候補として選択する。
【0106】
評価部120は、経路情報データベース320から、計測装置630の通信状態に関する履歴を取得する(S23)。通信状態の履歴情報には、例えば、計測装置の故障履歴情報および通信障害発生回数等の通信障害の履歴を示す情報と、過去の点数の累積値とを含めることができる。
【0107】
評価部120は、ステップS22で選択した複数の通信相手候補について、他の計測装置との重複がなく一意に通信経路が決まる場合は、その一意に定まる一つの通信相手候補を通信相手の計測装置として決定する。
【0108】
対象の通信相手候補が他の計測装置の通信相手にもなり得るため、通信経路が一意に定まらない場合ような場合、評価部120は、故障履歴、通信障害発生回数、過去の点数の累積値等に基づいて、通信相手候補を順位付けし、選択する(S24)。
【0109】
過去の点数累積値を例に挙げて説明する。この場合、点数が高い計測装置ほど通信障害の発生回数が多いと判断して、通信経路の下流側に配置する。点数の低い計測装置ほど通信障害発生回数が少ないと判断して、通信経路の上流側(中継装置側)に配置する。
【0110】
つまり、評価部120は、対象の計測装置の通信相手候補として2つの計測装置が有る場合、通信状態の良い方の計測装置が上流側の通信相手となり、通信状態の悪い方の計測装置が下流側の通信相手となるように、選択する。
【0111】
通信経路作成部130は、ステップS24で決定された各計測装置の通信相手に基づいて、計測装置毎の通信経路テーブル(ルーティングテーブル)を作成する(S25)。通信経路テーブルは、情報の送受信に関する宛先IDの項目と、情報の転送先を示す転送先IDの項目とを含んで構成される。
【0112】
通信経路通知部140は、ステップS25で作成された各計測装置毎の通信経路テーブルを、対応する計測装置にそれぞれ送信し(S26)、本処理を終了する。
【0113】
図9は、通信経路を決定する処理の他の例を示すフローチャートである。中継装置20の模擬通信管理部210は、配電系統に設置される各計測装置間で、集計直前に実施された同じ回次の模擬通信の結果(各計測装置)を集計する(S30)。
【0114】
統計処理部110は、各計測装置毎の模擬通信の結果を、通信の組み合わせに応じて照合し、前述した(1)〜(3)の手順に従って点数を計算する(S31)。統計処理部110は、点数の合計値を計算する(S32)。その際、統計処理部110は、図3のテーブルT20に示すように、送信側(A)からみた合計値(A/B)と、受信側(B)から見た場合の合計値(B/A)と計算する(数1)。そして、統計処理部110は、それぞれの合計値(A/B)と(B/A)を足し合わせた最終合計値を計算する。
【0115】
評価部120は、ステップS32で算出された点数の合計値を比較し、計測装置毎に、合計値の低い通信相手の候補を1つ以上(できれば2つ以上)選択する。例えば、図3のテーブルT20において、計測装置630a(M1011)の場合、合計値が低い通信相手候補は、計測装置630b(M1012)と計測装置630d(M1014)の2つである。
【0116】
上述の通り、計測装置630b(M1012)の最終合計値は「15」であり、計測装置630d(M1014)の最終合計値は「18」であり、他の計測装置630c(M1012)の合計値「32」及び計測装置630e(M1015)の合計値「28」よりも、小さい。評価部120は、最終合計値の小さいものから順番に、少なくとも1つ、できれば複数の計測装置を通信相手候補として選択する。
【0117】
評価部120は、経路情報データベース320から、通信相手候補として選択された計測装置についての、通信状態の履歴を読み込む(S34)。ここでは、通信状態の履歴のうち、故障回数に着目する。
【0118】
評価部120は、例えば、故障回数が1回の場合は1点、故障回数が2回の場合は2点、故障回数が3回の場合は3点、のように故障回数に応じた点数を付与する。パケットの送受信ができなかった場合、故障が生じたと判定できる。
【0119】
評価部120は、ステップS33で選定した通信相手候補(もしくは通信経路)について重複があるかどうかを、計測装置毎に判定する(S35)。通信相手に重複がある場合(S35:YES)、評価部120は、故障回数に基づいて、通信相手候補を順位付けする(S36)。
【0120】
評価部120は、順位付けした結果に基づいて、各計測装置の通信相手を決定する(S37)。上述の例で言えば、計測装置630a(M1011)の通信相手候補として、計測装置630b(M1012)の最終点数と630e(M1015)の最終点数とが同点の場合を考える。
【0121】
例えば、計測装置630a(M1012)の累計点数が計測装置630e(M1015)の累積点数よりも少ない場合、計測装置630a(M1011)の通信相手として、計測装置630b(M1012)を選択する。
【0122】
なお、ツリー状のトポロジが許可されている場合、或る一つの計測装置が複数の計測装置の通信相手として選択されてもよい。ツリー状のトポロジでセンサネットワーク(通信システム)を生成する場合、通信相手候補は少なくとも1つ抽出されればよい。数珠つなぎ状のトポロジの場合は、末端の計測装置を除いて、少なくとも2つの通信相手候補が抽出されればよい。
【0123】
通信経路作成部130は、決定された各計測装置の通信相手に基づいて、各計測装置の通信経路テーブル(ルーティングテーブル)を作成し(S38)、対応する各計測装置に通知し(S39)、本処理を終了する。
【0124】
以上のように構成される本実施例では、各計測装置間で模擬通信を事前に行い、模擬通信の結果に応じて、各計測装置を接続する通信経路を設定する。従って、通信環境が日々変動する状況下において、より安定な通信経路を、実情に即して設定することができ、この結果、配電網用通信システムの信頼性を高めることができる。
【0125】
本実施例では、模擬通信を複数回実施して統計処理するため、一時的な通信障害の影響を排除して、精度よく通信経路を設定することができる。
【0126】
本実施例では、通信相手候補が重複した場合(例えば、統計処理の結果、同一点数の場合)、通信状態の履歴に基づいて、通信相手となる装置を決定する。従って、より安定した通信経路を設定することができ、通信システムの信頼性を向上できる。
【0127】
本実施例では、通信状態の安定している方の計測装置が通信上の上流側に位置するように、通信経路を設定する。つまり、統計処理後の点数が小さい装置ほど、または、点数が小さくかつ障害の発生回数も小さい装置ほど、中継装置側に配置されるように、通信システム全体の通信経路を設定する。これにより、計測データを含むパケットが通信障害等で失われる可能性を低減できる。
【実施例2】
【0128】
図10を参照して、第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との相違を中心に説明する。本実施例では、配電網の通信システムの構成変化に応じて、通信経路を変更する。
【0129】
図10は、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。通信経路設定装置10は、配電網(高圧配電系統50、低圧配電系統60)内に、新たな計測装置が追加されたかを判定する(S50)。
【0130】
例えば、新たな計測装置は、配電網に設置されると、周囲に向けて所定のパケットを送信する。既存の計測装置のいずれかが、その所定パケットを受信し、中継装置20を介して通信経路設定装置10に転送する。
【0131】
新たな計測装置の追加を検出すると(S50:YES)、通信経路設定装置10は、新たな計測装置のための通信経路を設定し、その通信経路を、対応する各計測装置に通知する(S51)。最も簡単な方法は、新たな計測装置からの所定パケットを受信した計測装置を通信相手候補とし、その通信相手候補の中からいずれか1つを通信相手の計測装置として選択する。
【0132】
新たな計測装置の追加が発見されない場合(S50:NO)、通信経路設定装置10は、既存の各計測装置に障害が発生したかを判定する(S52)。ここでの障害とは、一時的なものではなく、計測装置が故障して停止している、または、計測装置が取り外された等の、比較的長時間にわたる障害を意味する。例えば、計測装置の寿命が尽きた場合、火災等で計測装置が壊れてしまった場合、計測装置の設置されていた建物が建て直し等のために取り壊された場合などである。
【0133】
障害発生が検出された場合(S52:YES)、通信経路設定装置10は、障害の生じた計測装置を迂回するための通信経路を探り、その通信経路を構成する計測装置を選択する(S53)。通信経路設定装置10は、新たに作成された迂回用通信経路を構成する各計測装置に向けて、通信経路の変更を通知する(S54)。
【0134】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、計測装置が新たに追加されたり、計測装置に恒久的な障害が発生した場合にも、対応することができる。
【実施例3】
【0135】
図11、図12を参照して第3実施例を説明する。図11は、本実施例による通信システムのネットワーク構成を示す。図12は、通信経路を変更する処理を示すフローチャートである。
【0136】
本実施例では、配電網の通信システムの中から通信状態の最も安定している経路を検出し、主要通信経路Pmとする(S60)。理解のために、主要通信経路Pmに属する計測装置630a〜630eを、第1の計測装置と呼ぶことにする。通信状態が最も安定している通信経路とは、例えば、上述の最終合計値が小さく、かつ、障害回数も最も少ない通信経路である。
【0137】
主要通信経路Pmに属していない計測装置630f、630g、630hのうち、第1の計測装置630a〜630eのいずれかに通信可能な計測装置630f、630gを、第2の計測装置と呼ぶ。
【0138】
第2の計測装置630f、630gは、最寄りの第1の計測装置630b、630dに接続されるよう、通信経路Ps1、Ps2が設定される(S61)。図11の例では、第2の計測装置630fを第1の計測装置630bに接続するための通信経路Ps1が設定される。同様に、第2の計測装置630gを第1の計測装置630dに接続するための通信経路Ps2が設定される。
【0139】
第1の計測装置630a〜630eのいずれにも直接通信できない計測装置630hを、第3の計測装置と呼ぶ。第3の計測装置630hは、その周辺に存在する通信可能な第2の計測装置630fに接続されるよう、通信経路Ps3が設定される(S62)。
【0140】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、通信の安定した主要通信経路Pmを検出し、その主要通信経路Pmを中心として、他の計測装置に接続するための通信経路Ps1〜Ps3を設定する。従って、具体的な通信環境の変化に対応して、比較的安定した通信経路を速やかに設定できる。
【0141】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、通信経路設定装置10と電力情報管理装置30とを一つの装置として構成したり、通信経路設定装置10の機能の一部または全部を中継装置20に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0142】
10:通信経路設定装置
20:中継装置
30:電力情報管理装置
50:高圧配電系統
60:低圧配電系統
110:統計処理部
120:評価部
130:通信経路作成部
140:通信経路通知部
210:模擬通信管理部
320:経路情報データベース
520:柱上変圧器
530:計測装置付き開閉器
630:計測装置
650:計測装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電網の有する複数の計測装置と通信するための配電網用通信システムであって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部と、
前記模擬通信結果収集部から取得する前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置間の通信経路を設定する通信経路設定部とを備え、
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
配電網用通信システム。
【請求項2】
前記各計測装置間で前記模擬通信が複数回行われるようになっており、
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の成否を統計処理し、
前記統計処理の結果を評価し、
前記統計処理の評価に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から前記通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する、
請求項1に記載の配電網用通信システム。
【請求項3】
前記通信経路設定部は、
通信障害に関する情報を管理する通信障害情報管理部から前記通信障害の履歴を取得し、
前記統計処理の結果と前記通信障害の履歴とに基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から前記通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する、
請求項2に記載の配電網用通信システム。
【請求項4】
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の成功回数が多くなるほど点数が小さくなるように前記模擬通信の成否を統計処理し、
前記各計測装置が通信可能な計測装置のうち、前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい計測装置を、前記通信相手となる計測装置として、前記各計測装置毎に少なくとも一つずつ決定する、
請求項3に記載の配電網用通信システム。
【請求項5】
前記通信経路設定部は、
前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい計測装置同士の組合せほど、前記模擬通信結果収集部に近くなるように、通信経路を設定する、
請求項4に記載の配電網用通信システム。
【請求項6】
前記通信経路設定部は、
前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい第1の計測装置同士の組合せからなる通信経路を主要通信経路として検出し、
前記各計測装置のうち前記主要通信経路に属さない第2の計測装置であって、前記第1の計測装置のいずれかに通信可能な第2の計測装置を、通信可能な前記第1の計測装置のうちいずれかに接続させるように通信経路を設定し、
前記各計測装置のうち前記主要通信経路に属さない第3の計測装置であって、前記第1の計測装置のいずれとも直接通信できない第3の計測装置を、前記第2の計測装置のうち通信可能ないずれかの第2の計測装置に接続させるように通信経路を設定する、
請求項5に記載の配電網用通信システム。
【請求項7】
前記計測装置は、設置箇所における電圧、電流、電力、周波数の少なくともいずれか一つを含む電力情報を計測し、前記通信相手の計測装置に送信する、
請求項6に記載の配電網用通信システム。
【請求項8】
前記模擬通信結果収集部は、前記各計測装置と前記通信経路設定部との間の通信を中継するための中継装置に設けられている、
請求項7に記載の配電網用通信システム。
【請求項9】
前記通信障害情報管理部は、前記各計測装置からの前記電力情報を前記中継装置を介して受信し、前記各電力情報を管理する電力情報管理装置に設けられている、
請求項8に記載の配電網用通信システム。
【請求項10】
配電網に含まれる複数の計測装置と通信するための通信経路を設定する通信経路設定装置であって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部から前記模擬通信の結果を取得し、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
通信経路設定装置。
【請求項11】
配電網に含まれる複数の計測装置と通信するための通信経路をコンピュータにより設定する方法であって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記コンピュータは、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部から前記模擬通信の結果を取得し、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
通信経路設定方法。
【請求項1】
配電網の有する複数の計測装置と通信するための配電網用通信システムであって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部と、
前記模擬通信結果収集部から取得する前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置間の通信経路を設定する通信経路設定部とを備え、
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
配電網用通信システム。
【請求項2】
前記各計測装置間で前記模擬通信が複数回行われるようになっており、
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の成否を統計処理し、
前記統計処理の結果を評価し、
前記統計処理の評価に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から前記通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する、
請求項1に記載の配電網用通信システム。
【請求項3】
前記通信経路設定部は、
通信障害に関する情報を管理する通信障害情報管理部から前記通信障害の履歴を取得し、
前記統計処理の結果と前記通信障害の履歴とに基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置が通信可能な計測装置の中から前記通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定する、
請求項2に記載の配電網用通信システム。
【請求項4】
前記通信経路設定部は、
前記模擬通信の成功回数が多くなるほど点数が小さくなるように前記模擬通信の成否を統計処理し、
前記各計測装置が通信可能な計測装置のうち、前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい計測装置を、前記通信相手となる計測装置として、前記各計測装置毎に少なくとも一つずつ決定する、
請求項3に記載の配電網用通信システム。
【請求項5】
前記通信経路設定部は、
前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい計測装置同士の組合せほど、前記模擬通信結果収集部に近くなるように、通信経路を設定する、
請求項4に記載の配電網用通信システム。
【請求項6】
前記通信経路設定部は、
前記点数が最も小さく、かつ、前記通信障害の発生回数が最も小さい第1の計測装置同士の組合せからなる通信経路を主要通信経路として検出し、
前記各計測装置のうち前記主要通信経路に属さない第2の計測装置であって、前記第1の計測装置のいずれかに通信可能な第2の計測装置を、通信可能な前記第1の計測装置のうちいずれかに接続させるように通信経路を設定し、
前記各計測装置のうち前記主要通信経路に属さない第3の計測装置であって、前記第1の計測装置のいずれとも直接通信できない第3の計測装置を、前記第2の計測装置のうち通信可能ないずれかの第2の計測装置に接続させるように通信経路を設定する、
請求項5に記載の配電網用通信システム。
【請求項7】
前記計測装置は、設置箇所における電圧、電流、電力、周波数の少なくともいずれか一つを含む電力情報を計測し、前記通信相手の計測装置に送信する、
請求項6に記載の配電網用通信システム。
【請求項8】
前記模擬通信結果収集部は、前記各計測装置と前記通信経路設定部との間の通信を中継するための中継装置に設けられている、
請求項7に記載の配電網用通信システム。
【請求項9】
前記通信障害情報管理部は、前記各計測装置からの前記電力情報を前記中継装置を介して受信し、前記各電力情報を管理する電力情報管理装置に設けられている、
請求項8に記載の配電網用通信システム。
【請求項10】
配電網に含まれる複数の計測装置と通信するための通信経路を設定する通信経路設定装置であって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部から前記模擬通信の結果を取得し、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
通信経路設定装置。
【請求項11】
配電網に含まれる複数の計測装置と通信するための通信経路をコンピュータにより設定する方法であって、
前記各計測装置は、所定範囲内の他の計測装置と無線通信するための機能を有し、
前記コンピュータは、
前記各計測装置が前記所定範囲内に存在する他の計測装置と模擬通信を行った結果を収集して管理する模擬通信結果収集部から前記模擬通信の結果を取得し、
前記模擬通信の結果に基づいて、前記各計測装置毎に、該各計測装置の通信相手となる計測装置を少なくとも一つずつ決定し、
前記各計測装置に対し、前記通信相手として決定された計測装置に関する情報を通知して、通信経路を設定させる、
通信経路設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−106255(P2013−106255A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249777(P2011−249777)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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