説明

配電線搬送通信用受信装置

【課題】配電線を流れる高調波信号による通信品質の低下を抑制することができるようにした配電線搬送通信用受信装置を提供する。
【解決手段】配電線から検出部1により検出した信号をハイパスフィルタ2に通して商用周波数成分を除去した後、A/D変換部3により得たデジタル信号をFSK復調部4に与えて復調を行なう配電線搬送通信に用いる受信装置において、デジタル信号に含まれる高調波成分を検出する高調波成分検出部6と、フィルタ機能をオンオフすることができる高調波阻止フィルタ部5と、高調波成分検出部6によりFSK復調部4への入力を阻止する必要がある高調波成分が検出されているときに、高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオン状態にし、阻止する必要がある高調波成分が検出されていないときには、フィルタ機能をオフ状態にするように高調波阻止フィルタ部5を制御する制御部7とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統において、変電所の親局と柱上等に設けられた子局との間、または柱上等に設けられた子局どうしの間で配電線を通して通信を行う配電線搬送通信に用いる受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電自動化システムにおいては、変電所に親局を設置し、柱上等に子局を設置して、親局と各子局との間、または子局どうしの間で通信を行っている。通信を専用線を用いて行うこともあるが、場所によっては、通信路として配電線自体を用いる配電線搬送により通信を行うことがある。
【0003】
デジタル信号を搬送する配電線搬送通信においては、変調方式として、0と1をそれぞれ異なる周波数f0及びf1に割り当てるFSK(Frequency-Shift Keying)変調が用いられることが多い。FSK変調を採用した配電線搬送通信に用いる受信装置は、特許文献1に示されているように、配電線から変流器を通して検出したFSK変調信号(FSK変調された信号)をA/D変換器によりデジタル信号に変換し、このデジタル信号をデジタルバンドパルフィルタに入力してFSK変調された信号成分を取り出し、復調回路に入力してFSK変調信号の復調を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−268125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配電線に接続されている高調波発生機器が発生する高調波信号のレベルが基準以下に抑制されていて、配電線搬送通信に用いる受信装置が受信するノイズ信号のうち、除去すべきノイズ信号が実質的に50Hzまたは60Hzの商用周波数の信号のみである場合には、FSK変調信号の周波数f0,f1を商用周波数よりも十分に高く設定しておけば、配電線から検出した信号をフィルタに通すことにより、ノイズ信号を除去してFSK変調信号のみを取り出すことができ、FSK復調部での復調を正確に行わせて、復調の際のエラー発生率を低くすることができる。
【0006】
しかしながら、配電線に接続されている高調波発生機器が基準を超えるレベルの高調波を発生している場合には、受信装置が受信するノイズ信号の中に、商用周波数の信号に加えて高レベルの高調波信号が含まれることになる。これらのノイズ信号のうち、商用周波数の信号は、フィルタにより容易に除去することができるが、高調波信号は、その周波数がFSK変調信号の周波数成分f0,f1の近傍に存在することがあるため、フィルタでは容易に除去できないことがある。高調波信号を除去することができないと、除去されなかった高調波信号がFSK変調信号と干渉して通信速度を低下させたり、復調の際のエラー発生率を増大させたりすることがあるため、通信の品質が低下するのを避けられない。
【0007】
本発明の目的は、配電線を流れる高調波信号により通信速度が低下したり復調の際のエラー発生率が増大したりするのを防いで、通信品質の向上を図ることができるようにした配電線搬送通信用受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、FSK変調信号を含む交流電流が流れる配電線から前記交流電流を検出する検出部と、検出部の出力から商用周波数成分を除去するハイパスフィルタと、ハイパスフィルタの出力をデジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部から得られるデジタル信号を入力として、該デジタル信号に含まれるFSK変調信号の復調を行うFSK復調部とを備えた配電線搬送通信用受信装置を対象とする。
【0009】
本発明においては、フィルタ機能をオンオフし得るように構成されて、A/D変換部とFSK復調部との間に挿入された高調波阻止フィルタ部と、A/D変換部が出力するデジタル信号に高速フーリエ変換処理を施してデジタル信号に含まれる高調波成分を検出する高調波成分検出部と、高調波成分検出部による高調波成分の検出結果に応じて高調波阻止フィルタ部を制御する制御部とが設けられる。
【0010】
ここで、高調波阻止フィルタ部は、FSK変調部に与えると該FSK復調部にエラーを生じさせるおそれがある高調波成分を阻止対象高調波成分として、フィルタ機能がオン状態にあるときにA/D変換部から与えられるデジタル信号に含まれる各阻止対象高調波成分の通過を阻止する阻止帯域幅が狭い(Qが高い)帯域阻止フィルタとして機能し、フィルタ機能がオフ状態にあるときには、A/D変換部から与えられるデジタル信号をそのままFSK復調部に与えるように構成される。
【0011】
また制御部は、高調波成分検出部により設定レベル以上の阻止対象高調波成分が検出されているときに、検出されている阻止対象高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能をオン状態にし、高調波成分検出部により設定レベル以上の阻止対象高調波成分が検出されていないときには、該阻止対象高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能をオフ状態にするように、高調波成分検出部の検出結果に応じて前記高調波阻止フィルタを制御する。
【0012】
上記のように構成すると、配電線に基準を超える高レベルの高調波信号が流れているときに、該高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオン状態にして、FSK復調部にエラーを生じさせるおそれがある高調波成分を除去することができるため、FSK復調部が高調波信号により誤動作するのを防いで、エラー発生率の低減を図ることができる。
【0013】
しかし、FSK復調部の前段にQが高い高調波阻止フィルタを設けると、通信速度が低下するのを避けられないため、FSK復調部の前段にQが高い高調波阻止フィルタを常時設けておくことは好ましくない。そこで、本発明では、高調波成分検出部により設定レベル以上の阻止対象高調波成分が検出されていないときに、高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能をオフ状態にして、A/D変換部から与えられるデジタル信号をそのままFSK復調部に与えるようにしている。
【0014】
このように構成しておくと、配電線にFSK復調部を誤動作させるおそれがある高調波信号電流が流れていないときに、高調波阻止フィルタの存在により通信速度が低下するのを防ぐことができる。一般に、市販の高調波発生機器は、配電線に流出する高調波成分のレベルを基準以下に抑えることを定めたガイドラインに準拠して製作されているので、FSK復調部に誤動作を生じさせるおそれがあるレベルの高調波成分が常時配電線を流れているわけではない。従って、配電線搬送通信用の受信装置が、復調部に誤動作を生じさせるおそれがあるレベルの高調波信号を受信する時間は、そのような高調波信号を受信しない時間にくらべて短いのが普通である。従って本発明のように構成すれば、通信速度の平均値を高い状態に保って、エラー発生率の低減を図ることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、高調波阻止フィルタ部が、配電線を流れる電流に含まれることが想定される複数の阻止対象高調波成分のそれぞれを阻止するノッチフィルタを少なくとも一つずつ含む複数のノッチフィルタを有して、該複数のノッチフィルタを直列に接続した構成を有している。この場合、各ノッチフィルタは、フィルタ機能を有効とするオン状態と、フィルタ機能を停止して入力信号をバイパスさせるオフ状態とを切換えることができるように構成されている。また制御部は、高調波成分検出部が検出している阻止対象高調波成分のレベルが設定レベル以上であるときに該阻止対象高調波成分を阻止するノッチフィルタの少なくとも一つをオン状態にし、他のノッチフィルタをオフ状態にするように構成されている。
【0016】
本発明の他の好ましい態様では、各阻止対象高調波成分を阻止するノッチフィルタが複数個設けられ、制御部は、高調波成分検出部が検出している阻止対象高調波成分に対応するノッチフィルタをオン状態にする際に、該阻止対象高調波成分のレベルに応じてオン状態にするノッチフィルタの数を変えるように構成されている。
【0017】
上記のように構成すると、A/D変換部とFSK復調部との間に設けるノッチフィルタを機能させる際に、機能するノッチフィルタの数を必要最小限とすることができるため、ノッチフィルタを機能させる際の通信速度の低下を必要最小限に抑えることができる。
【0018】
なお本発明におけるFSK変調は、変調指数を0.5として行うFSK変調であるMSK変調を含むものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、FSK復調部が誤動作するおそれがある高レベルの高調波信号が受信されたときに、FSK復調部の前段に設けた高調波阻止フィルタ部をオン状態にすることにより、高調波信号によりFSK復調部が誤動作するの防いで高調波信号発生時のエラー発生率を低減し、FSK復調部が誤動作するおそれがある高調波信号が受信されていないときには、高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能をオフ状態にして、A/D変換部から与えられる信号をそのままFSK復調部に与えることにより、通信速度の低下を防ぐようにしたので、通信速度の平均値を高い状態に保って、復調の際のエラー発生率の低減を図ることができ、通信品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる受信装置の一実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】配電線搬送通信において受信装置で受信される信号の周波数スペクトルの一例を示した波形図である。
【図3】本発明に係わる受信装置において、高調波成分検出部により検出される周波数成分のスペクトル分布の一例を示したスペクトルダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明に係わる受信装置の一実施形態の構成を概略的に示したもので、同図において、1は、FSK変調信号を含む交流電流が流れる図示しない配電線から交流電流を検出する検出部で、この検出部は、例えば、配電線に装着された変流器(CT)により構成される。2は検出部1の出力から商用周波数成分のノイズを除去するハイパスフィルタ、3はハイパスフィルタ2の出力をデジタル信号に変換するA/D変換部である。
【0022】
また4はA/D変換部から得られるデジタル信号を入力として、該デジタル信号に含まれるFSK変調信号の復調を行うFSK復調部、5はフィルタ機能をオンオフし得るように構成されて、A/D変換部3とFSK復調部4との間に挿入された高調波阻止フィルタ部である。
【0023】
高調波阻止フィルタ部5は、A/D変換部3からFSK変調部4に与えられるデジタル信号に含まれる高調波成分のうち、FSK復調部4に与えられると該復調部にエラーを生じさせるおそれがある高調波成分を阻止対象高調波成分として、フィルタ機能がオン状態にあるときにA/D変換部から与えられるデジタル信号に含まれる各阻止対象高調波成分の通過を阻止する阻止帯域幅が十分に狭い(Qが高い)帯域阻止フィルタとして機能し、フィルタ機能がオフ状態にあるときには、A/D変換部3から与えられるデジタル信号をそのままFSK復調部4に与えるように構成されている。
【0024】
図示の高調波阻止フィルタ部5は、配電線を流れる電流に含まれることが想定される複数の阻止対象高調波成分のそれぞれを阻止するノッチフィルタを少なくとも一つ含む複数のノッチフィルタN11,N12,N21及びN22を備えて、これらのノッチフィルタN11,N12,N21及びN22を直列に接続した構成を有している。
【0025】
本実施形態では、デジタル信号の状態0及び1にそれぞれ搬送周波数fcよりもΔfだけ低い周波数f0(=fc−Δf)、及び搬送周波数fcよりもΔfだけ高い周波数f1(=fc+Δf)を割り当てて、図示しない送信装置で、デジタル信号の状態が0であるときに搬送周波数fcを−Δfだけ偏倚させ、デジタル信号の状態が1であるときに搬送周波数fcを+Δfだけ偏倚させることによりFSK変調信号を得る。このFSK変調信号は、図示しない送信装置内の変調器で生成されて配電線に注入される。
【0026】
本実施形態においては、商用周波数を60Hzとし、搬送周波数fcを450Hz、Δfを15Hzとして、デジタル信号の状態が0であるときに周波数を435Hzとし、デジタル信号の状態が1であるときに周波数を465HzとしてFSK変調信号を得る。
【0027】
この場合、検出部1により検出される信号には、図2に示したように、FSK変調信号の周波数成分435Hz及び465Hzの他に、ノイズ信号として、商用周波数60Hzの信号と、商用周波数の高調波信号とが含まれる。FSK変調信号の周波数成分を435Hz及び465Hzとした場合、これらの周波数成分の近傍には、商用周波数の第7高調波fh7(420Hz)の信号及び第8高調波fh8(480Hz)の信号が現れる。
【0028】
この場合、60Hzのノイズ周波数成分は、検出部1から得られる信号をハイパスフィルタ2に通すことにより除去することができるが、FSK変調信号の周波数成分435Hz及び465Hzに近接しているノイズ周波数420Hz及び480Hzの成分は容易には除去することができない。図2に示されているように、ノイズ周波数420Hz及び480Hzの信号レベルが高い場合には、FSK変調部4でFSK変調信号の周波数成分とノイズ周波数成分とを弁別することができなくなって、FSK変調信号の復調に誤りが生じるのを避けることができない。
【0029】
そこで、本実施形態では、420Hz及び480Hzのノイズ周波数成分を阻止対象高調波成分として、高調波阻止フィルタ部5でこれらのノイズ周波数成分を除去する処理を行なう。そのため、本実施形態では、420Hzの阻止対象高調波成分を阻止するフィルタとして、デジタルフィルタからなるノッチフィルタN11,N12を用意し、480Hzの阻止対象高調波成分を阻止するフィルタとして、デジタルフィルタからなるノッチフィルタN21及びN22を用意してこれらを直列に接続している。
【0030】
各ノッチフィルタは、阻止対象高調波成分のみを阻止する阻止帯域幅が十分に狭い帯域阻止フィルタで,フィルタ機能をオンオフする機能を有している。各ノッチフィルタは、フィルタ機能がオン状態にあるときに阻止対象高調波成分の通過を阻止する帯域阻止フィルタとしての機能を果たし、フィルタ機能がオフ状態にあるときにフィルタ機能を停止して入力信号をバイパスさせるように構成されている。各ノッチフィルタのオンオフの切換はソフトウェア的に行なわれる。
【0031】
高調波阻止フィルタ部5を制御するため、高調波成分検出部6と、制御部7とが設けられている。高調波成分検出部6は、A/D変換部3が出力するデジタル信号に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を施してデジタル信号に含まれる高調波成分を検出する部分である。受信装置が受信する信号に図2に示すような周波数成分が含まれている場合、高調波成分検出部6は、図3に示すように離散的な検出信号を出力する。
【0032】
制御部7は、高調波成分検出部6による高調波成分の検出結果に応じて高調波阻止フィルタ部を制御する部分である。本実施形態で用いる制御部7は、高調波成分検出部6により設定レベル以上の阻止対象高調波成分が検出されているときに、検出されている阻止対象高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオン状態にし、高調波成分検出部6により設定レベル以上の阻止対象高調波成分が検出されていないときには該阻止対象高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオフ状態にするように、高調波成分検出部の検出結果に応じて高調波阻止フィルタ5を制御する。
【0033】
制御部7はまた、高調波成分検出部6が検出している阻止対象高調波成分に対応するノッチフィルタをオン状態にする際に、阻止対象高調波成分のレベルが高い場合ほどフィルタ機能をオン状態にするノッチフィルタの数を多くするように(減衰量を多くするように)、阻止対象高調波成分のレベルに応じてオン状態にするノッチフィルタの数を変えるように構成されている。
【0034】
図示の制御部7は、例えば、高調波成分検出部6で検出されている480Hzの高調波成分のレベルは設定レベル(FSK復調部の誤動作を生じさせるおそれがあるレベルの最低値)未満であるが、420Hzの高調波成分が設定レベル以上であるときに、検出されている420Hzの高調波成分のレベルの高低に応じて、ノッチフィルタN11及びN12の双方または一方のフィルタ機能をオン状態にし、ノッチフィルタN21及びN22のフィルタ機能をオフ状態にする。
【0035】
また420Hzの高調波成分のレベルは設定レベル未満であるが、480Hzの高調波成分は設定レベル以上であることが検出されたときには、検出されている480Hzの高調波成分のレベルの高低に応じて、ノッチフィルタN21及びN22の双方または一方のフィルタ機能をオン状態にし、ノッチフィルタN11及びN12のフィルタ機能をオフ状態にする。
【0036】
更に、高調波成分検出部6で検出されている420Hzの高調波成分及び480Hzの高調波成分の双方のレベルが設定レベル以上であるときには、検出されているノイズ周波数成分のレベルに応じて、ノッチフィルタN11及びN12の一方または双方並びにノッチフィルタN21及びN22の一方または双方のフィルタ機能をオン状態にする。
【0037】
高調波成分検出部6で、420Hzの高調波成分及び480Hzの高調波成分の双方のレベルが設定レベル未満であることが検出されている場合には、すべてのノッチフィルタN11,N12,N21及びN22のフィルタ機能をオフ状態にして、A/D変換部3が出力するデジタル信号をそのままFSK復調部4に与える。
【0038】
図1に示した受信装置においては、FSK復調部4、高調波阻止フィルタ部5、高調波成分検出部6及び制御部7により復調装置8が構成されている。復調装置8の各部は、マイクロプロセッサまたは信号処理に特化したマイクロプロセッサであるDSP(Digital Signal Processor)に所定のプログラムを実行させることにより構成することができる。
【0039】
上記のように構成すると、配電線に基準を超える高レベルの高調波信号電流が流れているときに、該高調波成分を阻止する高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオン状態にして、FSK復調部にエラーを生じさせるおそれがある高調波成分を除去することができるため、FSK復調部が高調波信号により誤動作するのを防いで、エラー発生率の低減を図ることができる。
【0040】
また高調波成分検出部6により阻止対象高調波成分が検出されていないときには、高調波阻止フィルタ部5のフィルタ機能をオフ状態にして、A/D変換部から与えられるデジタル信号をそのままFSK復調部に与えるので、配電線にFSK復調部4を誤動作させるおそれがある高調波信号電流が流れていないときに、高調波阻止フィルタ(ノッチフィルタ)の存在により通信速度が低下するのを防ぐことができる。
【0041】
上記の実施形態では、420Hzの高調波成分に対して2個のノッチフィルタN11及びN12を設け、480Hzの高調波に対して2個のノッチフィルタN21及びN22を設けたが、これらのノッチフィルタの数は上記実施形態で示した例に限定されない。各阻止対象高調波成分に対してノッチフィルタを一つだけ設ける場合、及び各阻止対象高調波成分に対してノッチフィルタを3以上設ける場合も本発明の範囲に包含される。また配電系統の状況に応じて、阻止対象高調波成分毎にノッチフィルタの数を異ならせることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係わる受信装置は、FSK変調信号を用いて配電線搬送通信を行なう配電系統に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 検出部
2 ハイパスフィルタ
3 A/D変換部
4 FSK復調部
5 高調波阻止フィルタ部
6 高調波成分検出部
7 制御部
8 復調装置
N11,N12,N21,N22 ノッチフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FSK変調信号を含む交流電流が流れる配電線から前記交流電流を検出する検出部と、前記検出部の出力から商用周波数成分を除去するハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタの出力をデジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部から得られるデジタル信号を入力として、該デジタル信号に含まれるFSK変調信号の復調を行うFSK復調部とを備えた配電線搬送通信用受信装置において、
フィルタ機能をオンオフし得るように構成されて、前記A/D変換部と前記FSK復調部との間に挿入された高調波阻止フィルタ部と、前記A/D変換部が出力するデジタル信号に高速フーリエ変換処理を施して前記デジタル信号に含まれる高調波成分を検出する高調波成分検出部と、前記高調波成分検出部による高調波成分の検出結果に応じて前記高調波阻止フィルタ部を制御する制御部とを具備し、
前記高調波阻止フィルタ部は、前記FSK変調部に与えると該FSK復調部にエラーを生じさせるおそれがある高調波成分を阻止対象高調波成分として、フィルタ機能がオン状態にあるときに前記A/D変換部から与えられるデジタル信号に含まれる各阻止対象高調波成分の通過を阻止する阻止帯域幅が狭い帯域阻止フィルタとして機能し、フィルタ機能がオフ状態にあるときには、前記A/D変換部から与えられるデジタル信号をそのまま前記FSK復調部に与えるように構成され、
前記制御部は、前記高調波成分検出部により設定レベル以上の前記阻止対象高調波成分が検出されているときに、検出されている阻止対象高調波成分を阻止する前記高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能をオン状態にし、前記高調波成分検出部により設定レベル以上の前記阻止対象高調波成分が検出されていないときには該阻止対象高調波成分を阻止する前記高調波阻止フィルタ部のフィルタ機能ををオフ状態にするように、前記高調波成分検出部の検出結果に応じて前記高調波阻止フィルタを制御すること、
を特徴とする配電線搬送通信用受信装置。
【請求項2】
前記高調波阻止フィルタ部は、前記配電線を流れる電流に含まれることが想定される複数の阻止対象高調波成分のそれぞれを阻止するノッチフィルタを少なくとも一つずつ含む複数のノッチフィルタを有して、該複数のノッチフィルタを直列に接続した構成を有し、
各ノッチフィルタは、フィルタ機能を有効とするオン状態と、フィルタ機能を停止して入力信号をバイパスさせるオフ状態とを切換えることができるように構成され、
前記制御部は、前記高調波成分検出部が検出している阻止対象高調波成分のレベルが設定レベル以上であるときに該阻止対象高調波成分を阻止するノッチフィルタの少なくとも一つをオン状態にし、他のノッチフィルタをオフ状態にするように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の配電線搬送通信用受信装置。
【請求項3】
前記各阻止対象高調波成分を阻止するノッチフィルタは複数設けられ、
前記制御部は、前記高調波成分検出部が検出している阻止対象高調波成分に対応するノッチフィルタをオン状態にする際に、該阻止対象高調波成分のレベルに応じてオン状態にするノッチフィルタの数を変えるように構成されていること、
を特徴とする請求項2に記載の配電線搬送通信用受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−156844(P2012−156844A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15012(P2011−15012)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】