説明

酢酸からエタノールを製造する方法

第1の金属、シリカ質担体、及び少なくとも1種類の担体変性剤の存在下で酢酸を水素化することによって酢酸からエタノールを選択的に形成する方法。好ましくは、第1の金属は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される。更に、触媒に、好ましくは銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択される第2の金属を含ませることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、「カルボン酸の調節可能な接触気相水素化」と題された2009年10月26日出願の米国出願12/588,727(その全部を参照として本明細書中に包含する)の優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概して、酢酸を水素化してエタノールを形成する方法、及びかかる方法において用いるためのエタノールに関する高い選択性を有する新規な触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]酢酸をエタノール(これは、それ自体で用いることができるか、或いは、酢酸ビニル及び/又は酢酸エチル或いは任意の広範囲の他の化学生成物に転化させることができるので重要な商業的供給材料であるエチレンにその後に転化させることができる)に転化させる経済的に実行可能なプロセスに対する必要性が長い間感じられている。例えば、エチレンは数多くのポリマー及びモノマー生成物に転化させることもできる。変動する天然ガス及び原油の価格は、従来製造されている石油又は天然ガス由来のエチレンのコストの変動の一因となり、石油の価格が上昇している場合にはエチレンの別の源に対する必要性がなお更に大きくなる。
【0004】
[0004]アルカン酸及び他のカルボニル基含有化合物を還元するための接触プロセスは広範囲に研究されており、触媒、担体、及び運転条件の種々の組合せが文献において言及されている。金属酸化物上での種々のカルボン酸の還元は、T. Yokoyamaら, "Fine chemicals through heterogeneous catalysis. Carboxylic acids and derivatives"によって概説されている。8.3.1章においては、種々のカルボン酸のための水素化触媒に関する開発努力の幾つかが要約されている(Yokoyama, T.; Setoyama, T., "Carboxylic acids and derivatives": "Fine chemicals through heterogeneous catalysis, 2001, 370-379)。
【0005】
M.A. Vanniceらによる一連の研究は、種々の不均一触媒上での酢酸の転化に関する(Rachmady, W.; Vannice, M.A.; J. Catal. 2002, vol.207, p.317-330)。担持及び非担持の両方の鉄上でのHによる酢酸の気相還元が別の研究において報告された(Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal., 2002, vol.208, p.158-169)。触媒表面種及び有機中間体に関する更なる情報が、Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2002, vol.208, p.170-179に示されている。気相酢酸水素化は、Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2002, vol.209, p.87-98、及びRachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2000, vol.192, p.322-334において、更に一群の担持Pt−Fe触媒に関して研究された。
【0006】
[0006]不飽和アルデヒドの選択水素化に関する種々の関連する出版物は、(Djerboua, F.; Benachour, D.; Touroude, R., Applied Catalysis A: General 2005, 282, 123-133;Liberkova, K.; Tourounde, R., J. Mol. Catal. 2002, 180, 221-230;Rodrigues, E.L.; Bueno, J.M.C., Applied Catalysis A: General 2004, 257, 210-211;Ammari, F.; Lamotte, J.; Touroude, R., J. Catal., 2004, 221, 32-42;Ammari, F.; Milone, C.; Touroude, R., J. Catal. 2005, 235, 1-9;Consonni, M.; Jokic, D.; Murzin, D.Y.; Touroude, R., J. Catal. 1999, 188, 165-175;Nitta, Y.; Ueno, K.; Imanaka, T.; Applied Catal. 1989, 56, 9-22)において見ることができる。
【0007】
[0007]クロトンアルデヒドの不飽和アルコールへの選択水素化におけるコバルト、白金、及びスズ含有触媒に関する活性及び選択性を報告する研究が、R. Touroudeら(Djerboua, F.; Benachour, D.; Touroude, R., Applied Catalysis A: General 2005, 282, 123-133、及びLiberkova, K.; Tourounde, R.; J. Mol. Catal. 2002, 180, 221-230)、並びにK. Lazarら(Lazar, K.; Rhodes, W.D.; Borbath, I.; Hegedues, M.; Margitfalvi, 1.L., Hyperfine Interactions, 2002, 1391140, 87-96)において見られる。
【0008】
[0008]M. Santiagoら(Santiago, M.A.N.; Sanchez-Castillo, M.A.; Cortright, R.D.; Dumesic, 1.A., J. Catal. 2000, 193, 16-28)においては、量子化学的計算と組み合わせたマイクロ熱量測定、赤外分光測定、及び反応速度測定が議論されている。
【0009】
[0009]酢酸水素化における触媒活性はまた、レニウム及びルテニウムを有する不均一系に関して報告されている(Ryashentseva, M.A.; Minachev, K.M.; Buiychev, B.M.; Ishchenko, V.M., Bull. Acad. Sci. USSR1988, 2436-2439)。
【0010】
[0010]Kitsonらの米国特許5,149,680においては、白金族金属合金触媒を用いてカルボン酸及びそれらの無水物をアルコール及び/又はエステルに接触水素化する方法が記載されている。Kitsonらの米国特許4,777,303においては、カルボン酸の水素化によってアルコールを製造する方法が記載されている。Kitsonらの米国特許4,804,791においては、カルボン酸の水素化によってアルコールを製造する他の方法が記載されている。また、USP−5,061,671;USP−4,990,655;USP−4,985,572;及びUSP−4,826,795;も参照。
【0011】
[0011]Malinowskiら(Bull. Soc. Chim. Belg. (1985), 94(2), 93-5)においては、シリカ(SiO)又はチタニア(TiO)のような担体材料上で不均一化されている低価チタン上での酢酸の接触反応が議論されている。
【0012】
[0012]二金属ルテニウム−スズ/シリカ触媒は、テトラブチルスズをシリカ上に担持されている二酸化ルテニウムと反応させることによって製造されている(Loessardら, Studies in Surface Science and Catalysis (1989), 1988年号, 48(Struct. React. Surf.), 591-600)。
【0013】
[0013]酢酸の接触還元はまた、例えばHindermanら(Hindermannら, J. Chem. Res., Synopses (1980), (11), 373)において研究されており、ここでは鉄上及びアルカリ促進鉄上での酢酸の接触還元が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許5,149,680
【特許文献2】米国特許4,777,303
【特許文献3】米国特許4,804,791
【特許文献4】USP−5,061,671
【特許文献5】USP−4,990,655
【特許文献6】USP−4,985,572
【特許文献7】USP−4,826,795
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Yokoyama, T; Setoyama, T, "Fine chemicals through heterogeneous catalysis"の"Carboxylic acids and derivatives", 2001, 370-379
【非特許文献2】Rachmady W.; Vannice, M.A.; J. Catal. 2002, vol.207, p.317-330
【非特許文献3】Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal., 2002, vol.208, p.158-169
【非特許文献4】Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2002, vol.208, p.170-179
【非特許文献5】Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2002, vol.209, p.87-98
【非特許文献6】Rachmady, W.; Vannice, M.A., J. Catal. 2000, vol.192, p.322-334
【非特許文献7】Djerboua, F.; Benachour, D.; Touroude, R., Applied Catalysis A: General 2005, 282, 123-133
【非特許文献8】Liberkova, K.; Touroude, R., J. Mol. Catal. 2002, 180, 221-230
【非特許文献9】Rodrigues, E.L.; Burno, J.M.C., Applied Catalysis A: General 2004, 257, 210-211
【非特許文献10】Ammari, F.; Lamotte, J.; Touroude, R., J. Catal., 2004, 221, 32-42
【非特許文献11】Ammari, F.; Milone, C.; Touroude, R., J. Catal. 2005, 235, 1-9
【非特許文献12】Consonni, M.; Jokic, D.; Murzin, D.Y.; Touroude, R., J. Catal. 1999, 188, 165-175
【非特許文献13】Nitta, Y.; Ueno, K.; Imanaka, T.; Applied Catal. 1989, 56, 9-22
【非特許文献14】Djerboua, F.; Benachour, D.; Touroude, R., Applied Catalysis A: General 2005, 282, 123-133
【非特許文献15】Liberkova, K.; Touroude, R.; J. Mol. Catal. 2002, 180, 221-230
【非特許文献16】Lazar, K.; Rhodes, W.D.; Borbath, I.; Hegedues, M.; Margitfalvi, 1.L., Hyperfine Interactions, 2002, 1391140, 87-96
【非特許文献17】Santiago, M.A.N.; Sanchez-Castillo, M.A.; Cortright, R.D.; Dumesic, 1.A., J. Catal. 2000, 193, 16-28
【非特許文献18】Ryashentseva, M.A.; Minachev, K.M.; Buiychev, B.M.; Ishchenko, V.M., Bull. Acad. Sci. USSR1988, 2436-2439
【非特許文献19】Malinowskiら, Bull. Soc. Chim. Belg. (1985), 94(2), 93-5
【非特許文献20】Loessardら, Studies in Surface Science and Catalysis (1989), 1988年号, 48(Struct. React. Surf.), 591-600
【非特許文献21】Hindermannら, J. Chem. Res., Synopses (1980), (11), 373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
[0014]既存のプロセスは、(i)エタノールへの必要な選択性を有しない触媒;(ii)場合によっては法外に高価で、及び/又はエタノールの形成に対して非選択性であり、望ましくない副生成物を生成する触媒;(iii)過度の運転温度及び圧力;及び/又は(iv)不十分な触媒寿命;などの商業的な実行可能性を妨げる種々の問題点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[0015]本発明は、酢酸を水素化して高い選択率でエタノールを製造する方法に関する。第1の態様においては、本発明は、第1の金属、シリカ質担体(silicaceous support)、及び少なくとも1種類の担体変性剤(support modifier)を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法に関する。第1の金属は、第IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、又はVIII族の遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、又は第IIIA族、IVA族、VA族、又はVIA族のいずれかからの金属からなる群から選択することができる。より好ましくは、第1の金属は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択することができる。第1の金属は、触媒の全重量を基準として0.1〜25重量%の量で存在させることができる。
【0018】
[0016]他の形態においては、触媒に、銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択することができる第2の金属(好ましくは第1の金属と異なる)を含ませることができる。この形態においては、触媒の全重量を基準として、第1の金属を例えば0.1〜10重量%の量で存在させることができ、第2の金属を0.1〜10重量%の量で存在させることができる。他の形態においては、触媒に、コバルト、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、白金、スズ、及びレニウムからなる群から選択することができ、及び/又は触媒の全重量を基準として0.05〜4重量%の量で存在させることができる第3の金属(好ましくは第1の金属及び第2の金属と異なる)を含ませることができる。
【0019】
[0017]好ましくは、第1の金属は白金であり、第2の金属はスズであり、0.4:0.6〜0.6:0.4の白金とスズとのモル比を有する。他の好ましい組合せにおいては、第1の金属はパラジウムであり、第2の金属はレニウムであり、0.7:0.3〜0.85:0.15のレニウムとパラジウムとのモル比を有する。
【0020】
[0018]好ましい形態の方法においては、水素化中に酢酸の少なくとも10%が転化する。場合によっては、触媒は、少なくとも80%のエタノールへの選択率、及び/又は4%未満のメタン、エタン、及び二酸化炭素への選択率を有する。一態様においては、触媒は、触媒の使用100時間あたり6%未満減少する生産性を有する。
【0021】
[0019]シリカ質担体は、場合によってはシリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、触媒の全重量を基準として25重量%〜99重量%の量で存在させることができる。好ましくは、シリカ質担体は50m/g〜600m/gの表面積を有する。
【0022】
[0020]担体変性剤、例えばメタシリケート担体変性剤は、(i)アルカリ土類金属酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。1つのオプションとして、担体変性剤は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、及び亜鉛の酸化物及びメタシリケートからなる群から選択することができ、好ましくはCaSiOである。担体変性剤は、触媒の全重量を基準として0.1重量%〜50重量%の量で存在させることができる。
【0023】
[0021]一態様においては、水素化は、125℃〜350℃の温度、10KPa〜3000KPaの圧力、及び4:1より大きい水素と酢酸とのモル比において蒸気相中で行う。
[0022]他の態様においては、本発明は、(a)15〜70重量%、好ましくは20〜50重量%、又はより好ましくは25〜50重量%の量のエタノール;(b)0〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、又はより好ましくは44〜65重量%の量の酢酸;(c)5〜30重量%、好ましくは10〜30重量%、又はより好ましくは10〜26重量%の量の水;及び(d)10重量%未満の量の任意の他の化合物;(ここで全ての重量%は粗エタノール生成物の全重量を基準とするものである)を含む粗エタノール生成物(場合によっては上記に議論したような酢酸の水素化から得られる)に関する。好ましい粗エタノール生成物は、20〜50重量%の量のエタノール;28〜70重量%の量の酢酸;10〜30重量%の量の水;及び6重量%未満の量の任意の他の化合物;を含む。更なる好ましい粗エタノール生成物は、25〜50重量%の量のエタノール;44〜65重量%の量の酢酸;10〜26重量%の量の水;及び4重量%未満の量の任意の他の化合物;を含む。
【0024】
[0023]他の態様においては、本発明は、
PtPdReSnCaSi
(式中、(i)v:yの比は3:2〜2:3の間であり、及び/又は(ii)w:xの比は1:3〜1:5の間であり;そしてp及びqはp:qが1:20〜1:200であるように選択され、rは原子価の要件を満足するように選択され、そして、v及びwは、
【0025】
【化1】

【0026】
となるように選択される)
を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法に関する。
[0024]更に他の態様においては、本発明は、
PtPdReSnAlCaSi
(式中、(i)vとyは3:2〜2:3の間であり、及び/又は(ii)wとxは1:3〜1:5の間であり;そしてp及びz、及び存在するアルミニウム及びカルシウム原子の相対位置は、その表面上に存在するブレンステッド酸部位が担体変性剤によって中和されるように制御され;そして、p及びqはp:qが1:20〜1:200であるように選択され;rは原子価の要件を満足するように選択され、そして、v及びwは、
【0027】
【化2】

【0028】
となるように選択される)
を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法に関する。
[0025]下記において、添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。同様の数値は同様の構成部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】[0026]図1Aは、SiO−PtSn1−m触媒を用いたエタノール及び酢酸エチルへの選択率のグラフである。 [0027]図1Bは、図1Aの触媒のエタノール及び酢酸エチルへの生産性のグラフである。 [0028]図1Cは、図1Aの触媒の酢酸の転化率のグラフである。
【図2】[0029]図2Aは、SiO−RePd1−n触媒を用いたエタノール及び酢酸エチルへの選択率のグラフである。 [0030]図2Bは、図2Aの触媒のエタノール及び酢酸エチルへの生産性のグラフである。 [0031]図2Cは、図2Aの触媒の酢酸の転化率のグラフである。
【図3】[0032]図3Aは、15時間の試験における触媒のエタノールへの生産性のグラフである。 [0033]図3Bは、図3Aの触媒のエタノールへの選択率のグラフである。
【図4】[0034]図4Aは、本発明の他の態様にしたがう100時間の試験における触媒のエタノールへの生産性のグラフである。 [0035]図4Bは、図4Aの触媒のエタノールへの選択率のグラフである。
【図5】[0036]図5Aは、本発明の他の態様にしたがう20時間の試験における触媒のエタノールへの生産性のグラフである。 [0037]図5Bは、図5Aの触媒のエタノールへの選択率のグラフである。
【図6A】[0038]図6Aは、実施例18の触媒の転化率のグラフである。
【図6B】[0039]図6Bは、実施例18の触媒の生産性のグラフである。
【図6C】[0040]図6Cは、実施例18の触媒の250℃における選択率のグラフである。
【図6D】[0041]図6Dは、実施例18の触媒の275℃における選択率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0042]本発明は、触媒の存在下で酢酸を水素化することによってエタノールを製造する方法に関する。本方法において用いる触媒は、少なくとも1種類の金属、シリカ質担体、及び少なくとも1種類の担体変性剤を含む。本発明はまた、この方法において用いる触媒、及び触媒の製造方法にも関する。水素化反応は次のように表すことができる。
【0031】
【化3】

【0032】
[0043]驚くべきことに且つ予期しなかったことに、本発明の触媒は、酢酸の水素化において用いると、エタノール及び酢酸エチルのようなエトキシレート、特にエタノールへの高い選択率を与えることが見出された。本発明の幾つかの態様は、経済的に実行可能な規模でエタノールを製造する工業用途において用いることができる。
【0033】
[0044]本発明の触媒は、担体上の、第1の金属、及び場合によっては第2の金属、第3の金属、又は更なる金属の1以上を含む。これに関し、「第1」、「第2」、「第3」等の数値用語は、「金属」の語を修飾するように用いる場合には、それぞれの金属が互いと異なることを示すように意図される。触媒中に存在する全ての担持金属の合計重量は、好ましくは0.1〜25重量%、例えば0.1〜15重量%、又は0.1重量%〜10重量%である。本明細書の目的に関しては、他に示さない限りにおいて、重量%は金属及び担体を含む触媒の全重量を基準とする。触媒中の1種類又は複数の金属は、1種類以上の金属酸化物の形態で存在させることができる。触媒中の1種類又は複数の金属の重量%を求める目的のためには、金属に結合している酸素の重量は無視する。
【0034】
[0045]第1の金属は、第IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、又はVIII族の遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、或いは第IIIA族、IVA族、VA族、又はVIA族のいずれかからの金属であってよい。好ましい態様においては、第1の金属は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される。好ましくは、第1の金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケル、及びルテニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の金属は白金及びパラジウムから選択される。第1の金属が白金を含む場合には、白金の利用可能性のために、触媒は、5重量%未満、例えば3重量未満、又は1重量未満の量の白金を含むことが好ましい。
【0035】
[0046]上記に示すように、触媒は、場合によっては、通常は促進剤として機能する第2の金属を更に含む。存在する場合には、第2の金属は、好ましくは、銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属は、銅、スズ、コバルト、レニウム、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属はスズ及びレニウムから選択される。
【0036】
[0047]触媒が2種類以上の金属を含む場合には、1つの金属は促進剤金属として機能させることができ、他の金属は主金属である。例えば、白金/スズ触媒を用いる場合には、白金は主金属と考えることができ、スズは促進剤金属と考えることができる。便宜上のために、本明細書において、第1の金属を主金属と、第2の金属(及び場合によって用いる複数の金属)を1種類又は複数の促進剤と呼ぶ。これは、触媒活性の基本的なメカニズムを示すものと捉えるべきではない。
【0037】
[0048]触媒が2種類以上の金属、例えば第1及び第2の金属を含む場合には、第1の金属は、場合によっては、0.1〜10重量%、例えば0.1〜5重量%、又は0.1〜3重量%の量で触媒中に存在する。第2の金属は、好ましくは、0.1〜20重量%、例えば0.1〜10重量%、又は0.1〜5重量%の量で存在する。2種類以上の金属を含む触媒に関しては、2種類以上の金属は互いと合金化することができ、或いは非合金化金属溶液又は混合物を構成することができる。
【0038】
[0049]好ましい金属比は、触媒において用いる金属によって多少変化させることができる。幾つかの態様においては、第1の金属と第2の金属とのモル比は、好ましくは、10:1〜1:10、例えば4:1〜1:4、2:1〜1:2、1.5:1〜1:1.5、又は1.1:1〜1:1.1である。驚くべきことに且つ予期しなかったことに、白金/スズ触媒に関して、図1A、1B、及び1Cに示すように、高い選択率、転化率、及び生産性で酢酸からエタノールを形成するためには、0.4:0.6〜0.6:0.4のオーダー(又は約1:1)の白金とスズとのモル比が特に好ましいことが発見された。エタノールへの選択率は、本明細書全体にわたって記載する変性担体を導入することによって更に向上させることができる。
【0039】
[0050]他の触媒に関しては1:1以外のモル比が好ましい可能性がある。例えばレニウム/パラジウム触媒を用いる場合には、パラジウム装填量よりも高いレニウム装填量において、より高いエタノール選択率を達成することができる。図2A、2B、及び2Cにおいて示すように、選択率、転化率、及び生産性の観点でエタノールを形成するために好ましいレニウムとパラジウムとのモル比は、0.7:0.3〜0.85:0.15のオーダー、又は約0.75〜0.25(3:1)である。ここでも、エタノールへの選択率は、本明細書全体にわたって記載する変性担体を導入することによって更に向上させることができる。
【0040】
[0051]触媒が第3の金属を含む態様においては、第3の金属は、第3の金属が第1及び第2の金属と異なる限りにおいては、第1又は第2の金属に関連して上記に列記した任意の金属から選択することができる。好ましい形態においては、第3の金属は、コバルト、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、白金、スズ、及びレニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第3の金属は、コバルト、パラジウム、及びルテニウムから選択される。存在する場合には、第3の金属の全重量は、好ましくは0.05〜4重量%、例えば0.1〜3重量%、又は0.1〜2重量%である。
【0041】
[0052]一態様においては、触媒は第1の金属を含み、更なる金属を含まない(第2の金属等を含まない)。この態様においては、第1の金属は、好ましくは0.1〜10重量%の量で存在する。他の態様においては、触媒は担体上の2種類以上の金属の組み合わせを含む。本発明のこの態様の種々の触媒に関する具体的な好ましい金属の組成を下表1に与える。触媒が第1の金属及び第2の金属を含む場合には、第1の金属は好ましくは0.1〜5重量%の量で存在し、第2の金属は好ましくは0.1〜5重量%の量で存在する。触媒が第1の金属、第2の金属、及び第3の金属を含む場合には、第1の金属は好ましくは0.1〜5重量%の量で存在し、第2の金属は好ましくは0.1〜5重量%の量で存在し、第3の金属は好ましくは0.1〜2重量%の量で存在する。1つの代表的な態様においては、第1の金属は白金であり、0.1〜5重量%の量で存在し、第2の金属は0.1〜5重量%の量で存在し、第3の金属は、存在する場合には好ましくは0.05〜2重量%の量で存在する。
【0042】
【表1】

【0043】
[0053]主として触媒をどのようにして製造するかによって、本発明の触媒の金属を、担体全体に分散させるか、担体の外表面上に被覆するか(卵殻型)、又は担体の表面上に装飾状に施すことができる。
【0044】
[0054]1種類以上の金属に加えて、本発明の触媒は、変性担体(これは、担体材料、及び担体材料の酸性度を調節する担体変性剤を含む担体を意味する)を更に含む。例えば、担体材料上の酸部位、例えばブレンステッド酸部位を担体変性剤によって調節して、酢酸の水素化中においてエタノールへの選択性に有利に働くようにすることができる。担体材料の酸性度は、担体材料上のブレンステッド酸部位の数を減少させるか又は利用可能性を減少させることによって調節することができる。担体材料はまた、担体変性剤によって担体材料のpKaを変化させることによって調節することもできる。記載が他に示さない限りにおいては、表面の酸性度又はその上の酸部位の数は、F. Delannay編, "Characterization of Heterogeneous Catalysts", III章, Measurement of Acidity of Surfaces, p.370-404; Marcel Dekker, Inc., N.Y. 1984(その全文を参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法によって求めることができる。ここで、用いる金属前駆体及び製造条件に加えて、金属−担体相互作用がエタノールへの選択率に対して強い影響を有する可能性があることが発見された。特に、担体の酸性度を調節して担体をより酸性が低いか又はより塩基性にする変性担体を用いると、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、他の水素化生成物よりもエタノールの形成が優勢になることがここで示された。
【0045】
[0055]当業者に認められるように、担体材料は、触媒系がエタノールを形成するために用いるプロセス条件下において好適に活性で、選択性で、且つ強靱であるように選択される。好適な担体材料としては、例えば安定な金属酸化物をベースとする担体又はセラミックをベースとする担体を挙げることができる。好ましい担体としては、シリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケートのような第IIA族シリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物のようなシリカ質担体が挙げられる。本発明の幾つかの態様においては、限定なしに酸化鉄、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、炭素、グラファイト、高表面積グラファイト化炭素、活性炭、及びこれらの混合物などの他の担体を用いることができる。
【0046】
[0056]好ましい態様においては、担体は、低い揮発性を有するか又は非揮発性である塩基性担体変性剤を含む。低揮発性の変性剤は、担体変性剤の酸性度が触媒の寿命中に逆転しないのに十分に低い損失率を有する。かかる塩基性変性剤は、例えば、(i)アルカリ土類酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。本発明の幾つかの態様においては、酸化物及びメタシリケートに加えて、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、及び乳酸塩などの他のタイプの変性剤を用いることができる。好ましくは、担体変性剤は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、及び亜鉛のいずれかの酸化物及びメタシリケート、並びに上記のいずれかの混合物からなる群から選択される。好ましくは、担体変性剤はケイ酸カルシウム、より好ましくはカルシウムメタシリケート(CaSiO)である。担体変性剤がカルシウムメタシリケートを含む場合には、カルシウムメタシリケートの少なくとも一部は結晶形態であることが好ましい。
【0047】
[0057]触媒の全重量を基準とする担体材料及び担体変性剤を含む変性担体の全重量は、好ましくは75重量%〜99.9重量%、例えば78重量%〜97重量%、又は80重量%〜95重量%である。担体変性剤は、好ましくは、例えば活性ブレンステッド酸部位の数を減少させるか又は利用可能性を減少させることによって酸性度を調節し、より好ましくは担体の表面が活性ブレンステッド酸部位を実質的に含まないことを確保するのに十分な量で与える。好ましい態様においては、担体変性剤は、触媒の全重量を基準として0.1重量%〜50重量%、例えば0.2重量%〜25重量%、0.5重量%〜15重量%、又は1重量%〜8重量%の量で存在する。好ましい態様においては、担体材料は、25重量%〜99重量%、例えば30重量%〜97重量%、又は35重量%〜95重量%の量で存在する。
【0048】
[0058]一態様においては、担体材料は、シリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケートのような第IIA族シリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物からなる群から選択されるシリカ質担体材料である。シリカ質担体としてシリカを用いる場合には、シリカに関する通常の汚染物質であるアルミニウムの量が低く、好ましくは変性担体の全重量を基準として1重量%より低く、例えば0.5重量%より低く、又は0.3重量%より低いことを確保することが有益である。この点に関し、焼成シリカは、通常は99.7重量%より高い純度で入手できるので好ましい。本明細書全体にわたって用いる高純度シリカとは、アルミニウムのような酸性汚染物質が、存在していても0.3重量%未満、例えば0.2重量%未満、又は0.1重量%未満のレベルで存在するシリカを指す。担体変性剤としてカルシウムメタシリケートを用いる場合には、担体材料として用いるシリカの純度に関して非常に厳格にする必要はないが、アルミニウムは望ましくないままであり、通常は意図的には加えない。かかるシリカのアルミニウム含量は、例えば10重量%未満、例えば5重量%未満、又は3重量%未満であってよい。担体が2重量%〜10重量%の範囲の担体変性剤を含む場合には、それらが適当な量の担体変性剤によって実質的に中和される限りにおいては、より多い量のアルミニウムのような酸性不純物を許容することができる。
【0049】
[0059]シリカ質担体材料、例えばシリカの表面積は、好ましくは、少なくとも約50m/g、例えば少なくとも約100m/g、少なくとも約150m/g、少なくとも約200m/g、又は最も好ましくは少なくとも約250m/gである。範囲に関しては、シリカ質担体材料は、好ましくは、50〜600m/g、例えば100〜500m/g、又は100〜300m/gの表面積を有する。本明細書全体にわたって用いる高表面積シリカとは、少なくとも約250m/gの表面積を有するシリカを指す。本明細書の目的のためには、表面積とは、BET窒素表面積(ASTM−D6556−04(その全部を参照として本明細書中に包含する)によって求められる表面積を意味する)を指す。
【0050】
[0060]シリカ質担体材料はまた、好ましくは、水銀侵入ポロシメトリーによって測定して5〜100nm、例えば5〜30nm、5〜25nm、又は約5〜10nmの平均孔径、及び水銀侵入ポロシメトリーによって測定して0.5〜2.0cm/g、例えば0.7〜1.5cm/g、又は約0.8〜1.3cm/gの平均孔容積を有する。
【0051】
[0061]担体材料及びしたがって得られる触媒組成物の形態は広範囲に変化させることができる。幾つかの代表的な態様においては、担体材料及び/又は触媒組成物の形態は、ペレット、押出物、球状体、噴霧乾燥微小球体、環、ペンタリング、三つ葉形、四つ葉形、多葉形、又はフレーク状であってよいが、円筒形のペレットが好ましい。好ましくは、シリカ質担体材料は、0.1〜1.0g/cm、例えば0.2〜0.9g/cm、又は0.5〜0.8g/cmの充填密度を可能にする形態を有する。寸法に関しては、シリカ担体材料は、好ましくは、0.01〜1.0cm、例えば0.1〜0.5cm、又は0.2〜0.4cmの平均粒径(例えば、球状粒子に関しては直径、又は非球状粒子に関しては等価球直径を意味する)を有する。変性担体の上か又はその中に配置されている1種類以上の金属は一般に寸法が非常に小さいので、これらは触媒粒子全体の寸法には実質的に影響を与えない。而して、上記の粒径は、一般的に、変性担体及び最終触媒粒子の寸法の両方に適用される。
【0052】
[0062]好ましいシリカ担体材料は、Saint-Gobain NorProからのSS61138高表面積(HSA)シリカ触媒担体である。Saint-Gobain NorPro SS61138シリカは、約250m/gの表面積;約12nmの中央孔径;水銀侵入ポロシメトリーによって測定して約1.0cm/gの平均孔容積;及び約0.352g/cm(22 lb/ft)の充填密度;の約95重量%の高表面積シリカを含む。
【0053】
[0063]好ましいシリカ/アルミナ担体材料は、約5mmの見かけ直径、約0.562g/mLの密度、約0.583g−HO/g−担体の吸水度、約160〜175m/gの表面積、及び約0.68mL/gの孔容積を有するKA-160(Sud Chemie)シリカ球状体である。
【0054】
[0064]実質的に純粋なエタノールを高い選択率で製造する態様においては、上記に示すように、担体変性剤を導入することによって担体材料のブレンステッド酸性度を制御することが非常に有益である可能性がある。酢酸の水素化の1つの可能性のある副生成物は酢酸エチルである。本発明によれば、担体は好ましくは、酢酸エチルの製造を抑えて、触媒組成物をエタノールに対して高度に選択性にするのに有効な担体変性剤を含む。而して、触媒組成物は好ましくは、酢酸エチル及びアルカンのような非常に望ましくない副生成物への酢酸の転化に対して低い選択率を有する。担体の酸性度は、好ましくは、酢酸の4%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは約1%未満が、メタン、エタン、及び二酸化炭素に転化するように制御する。更に、担体の酸性度は、上記に議論したように焼成シリカ又は高純度シリカを用いることによって制御することができる。
【0055】
[0065]一態様においては、変性担体は、担体材料、及び、担体変性剤として、例えばシリカ中の残留アルミナに起因するブレンステッド酸部位を中和するのに有効な量のカルシウムメタシリケートを含む。好ましくは、カルシウムメタシリケートは、担体が実質的に中性又は塩基性であることを確保するために、触媒の全重量を基準として1重量%〜10重量%の量で存在させる。
【0056】
[0066]担体変性剤、例えばカルシウムメタシリケートは、担体材料、例えばシリカ質担体材料よりも低い表面積を有する傾向があるので、一態様においては、担体材料に、担体変性剤を含ませるこの効果を中和するために、少なくとも約80重量%、例えば少なくとも約85重量%、又は少なくとも約90重量%の高表面積シリカを含むシリカ質担体材料を含ませる。
【0057】
[0067]他の形態においては、触媒組成物は、式:
PtPdReSnCaSi
(式中、(i)v:yの比は3:2〜2:3の間であり、及び/又は(ii)w:xの比は1:3〜1:5の間である)
によって表すことができる。而して、この態様においては、触媒に、(i)白金とスズ;(ii)パラジウムとレニウム;又は(iii)白金、スズ、パラジウム、及びレニウム;を含ませることができる。p及びqは、好ましくはp:qが1:20〜1:200であるように選択され、rは原子価の要件を満足するように選択され、そしてv及びwは、
【0058】
【化4】

【0059】
となるように選択される。
[0068]この形態においては、プロセス条件、並びにv、w、x、y、p、q、及びrの値は、好ましくは、転化した酢酸の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、又は少なくとも90%がエタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される化合物に転化し、一方、酢酸の4%未満がアルカンに転化するように選択する。より好ましくは、プロセス条件、並びにv、w、x、y、p、q、及びrの値は、好ましくは、転化した酢酸の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、又は少なくとも90%がエタノールに転化し、一方、酢酸の4%未満がアルカンに転化するように選択する。本発明の多くの態様においては、pは、存在する全ての少量の不純物を考慮して、担体の表面が活性のブレンステッド酸部位を実質的に含まないことを確保するように選択する。
【0060】
[0069]他の形態においては、触媒組成物は、
PtPdReSnAlCaSi
(式中、(i)vとyは3:2〜2:3の間であり;及び/又は(ii)wとxは1:3〜1:5の間である)
を含む。p及びz、及び存在するアルミニウム及びカルシウム原子の相対位置は、好ましくは、その表面上に存在するブレンステッド酸部位が担体変性剤、例えばカルシウムメタシリケートによって中和されるように制御され;p及びqは、p:qが1:20〜1:200であるように選択され;rは原子価の要件を満足するように選択され、そして、v及びwは
【0061】
【化5】

【0062】
となるように選択される。
[0070]好ましくは、この形態においては、触媒は少なくとも約100m/g、例えば少なくとも約150m/g、少なくとも約200m/g、又は最も好ましくは少なくとも約250m/gの表面積を有し、z及びp≧zである。本発明の多くの態様においては、pはまた、存在する全ての少量の不純物を考慮して、担体の表面が、エタノールの酢酸エチルへの転化を促進すると考えられる活性のブレンステッド酸部位を実質的に含まないことを確保するように選択される。而して、上述の態様と同様に、プロセス条件、並びにv、w、x、y、p、q、及びrの値は、好ましくは、転化した酢酸の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、又は少なくとも90%がエタノールに転化し、一方、酢酸の4%未満がアルカンに転化するように選択する。
【0063】
[0071]したがって、理論には縛られないが、担体表面上に存在する酸部位を中和する効果;又は表面を熱的に安定化する効果;のいずれかを有する非揮発性担体変性剤を導入することにより本発明の触媒のための酸化物担体材料を変性及び安定化することによって、エタノールへの選択率、長い触媒寿命、又は両方の所望の向上を達成することが可能になる。一般に、それらの最も安定な原子価状態の酸化物をベースとする担体変性剤は低い蒸気圧を有し、したがって低い揮発性を有するか、或いはどちらかというと非揮発性である。したがって、(i)担体材料の表面上に存在する酸性部位を中和するか;(ii)水素化温度における形状変化に対する抵抗性を与えるか;又は(iii)両方を行う;のに十分な量の担体変性剤を与えることが好ましい。理論には縛られないが、形状変化に対する抵抗性を与えるとは、例えば、焼結、結晶粒成長、粒界移動、欠陥及び転位の移動、塑性変形、及び/又は微細構造における他の温度誘発変化に対する抵抗性を与えることを指す。
【0064】
[0072]自動車用触媒及びディーゼル煤煙捕捉装置と同様のモノリシック担体上の洗浄被覆内に含侵するのではなく、本発明の触媒は、好ましくは、任意の種々の形状を有する時にはビーズ又はペレットとも呼ばれる粒子に成形し、多数のこれらの成形触媒を反応器内に配置することによって触媒金属を反応区域に与えるという意味では、本発明の触媒は粒子状触媒である。通常見られる形状としては、押出物の表面を画定する生成元が平行線であるという意味で一般的な円筒の形態をとる任意断面の押出物が挙げられる。上記に示すように、ペレット、押出物、球状体、噴霧乾燥微小球体、環、ペンタリング形、三葉形、四葉形、及び多葉形状などの任意の好都合な粒子形状を用いることができるが、円筒形のペレットが好ましい。通常は、形状は、蒸気相を触媒試薬と有効に接触させる認められる能力に基づいて実験的に選択される。
【0065】
[0073]本発明の触媒の1つの有利性は、エタノールを製造するための触媒の安定性又は活性である。したがって、本発明の触媒は、特にエタノールの製造における酢酸を水素化するための商業的な規模の工業用途において用いることが完全に可能であることを認めることができる。特に、触媒活性が、触媒使用100時間あたり6%未満、例えば100時間あたり3%未満、又は100時間あたり1.5%未満の生産性の減少率を有するような安定度を達成することができる。好ましくは、生産性の減少率は、触媒が定常状態条件を達成した時点で求める。
【0066】
[0074]一態様においては、触媒担体が高純度シリカを含み、担体変性剤としてカルシウムメタシリケートを用いると、触媒活性によって、酢酸蒸気の存在下、125℃〜350℃の温度で、2500hr−1より高い空間速度における商業的に実行可能な運転の触媒の生産性及び選択性を、1週間以上、2週間以上、及び更には数ヶ月に延びた長期間に延ばすか又は安定化させることができる。
【0067】
[0075]本発明の触媒組成物は、好ましくは変性担体の金属含侵によって形成するが、化学蒸着のような他のプロセスを用いることもできる。通常は、金属を含侵する前に、例えば担体材料に担体変性剤を含侵させる工程によって変性担体を形成することが望ましい。酢酸塩又は硝酸塩のような担体変性剤の前駆体を用いることができる。一形態においては、担体変性剤、例えばCaSiOを、担体材料、例えばSiOに加える。例えば、固体の担体変性剤を脱イオン水に加え、次にコロイド状の担体材料をそれに加えることによって、担体変性剤の水性懸濁液を形成することができる。得られる混合物を撹拌し、例えば、担体変性剤溶液の体積と同等の孔容積を有する担体材料に担体変性剤を加える初期湿潤法を用いて更なる担体材料に加えることができる。次に、毛管作用によって担体変性剤を担体材料中の細孔中に引き込む。次に、乾燥及びか焼して担体変性剤溶液内の水及び揮発性成分を除去して、担体変性剤を担体材料上に堆積させることによって、変性担体を形成することができる。乾燥は、例えば、50℃〜300℃、例えば100℃〜200℃、又は約120℃の温度において、場合によっては1〜24時間、例えば3〜15時間、又は6〜12時間の間行うことができる。変性担体は、形成されたら所望の寸法分布を有する粒子に成形して、例えば0.2〜0.4cmの範囲の平均粒径を有する粒子を形成する。担体は、押出し、ペレット化、錠剤化、プレス、粉砕、又は所望の寸法分布に篩別することができる。担体材料を所望の寸法分布に成形する任意の公知の方法を用いることができる。成形した変性担体のか焼は、例えば、250℃〜800℃、例えば300〜700℃、又は約500℃の温度において、場合によっては1〜12時間、例えば2〜10時間、4〜8時間、又は約6時間の間行うことができる。
【0068】
[0076]好ましい触媒の製造方法においては、金属を変性担体上に含侵させる。好ましくは、対象の第1の金属を含む水溶性化合物又は水分散性化合物/コンプレックスのような第1の金属の前駆体(第1の金属前駆体)を金属含侵工程において用いる。用いる金属前駆体によって、水、氷酢酸、又は有機溶媒のような溶媒を用いることが好ましい可能性がある。また好ましくは、第2の金属前駆体から第2の金属を変性担体中に含侵させる。所望の場合には、第3の金属又は第3の金属前駆体も変性担体中に含侵させることができる。
【0069】
[0077]含侵は、好ましくは懸濁液又は溶液中の第1の金属前駆体及び/又は第2の金属前駆体及び/又は更なる金属前駆体のいずれか又は両方を、乾燥した変性担体に添加、場合によっては滴加することによって行う。次に、溶媒を除去するために、得られる混合物を例えば場合によっては真空下で加熱することができる。次に、場合によっては傾斜加熱を用いて更なる乾燥及びか焼を行って最終触媒組成物を形成することができる。加熱及び/又は真空の適用によって、1種類又は複数の金属前駆体の1種類又は複数の金属が、好ましくはそれらの元素状(又は酸化物)形態に分解する。幾つかの場合においては、触媒を使用状態に配置し、か焼し、例えば運転中に遭遇する高温にかけるまでは、液体キャリア、例えば水の除去を完了させることはできない。か焼工程中か又は少なくとも触媒の初期使用段階中において、かかる化合物は、金属又はその触媒活性酸化物の触媒活性形態に転化する。
【0070】
[0078]変性担体中への第1及び第2の金属(及び場合によっては更なる金属)の含侵は、同時(共含侵)か又は逐次的に行うことができる。同時含侵においては、第1及び第2の金属前駆体(及び場合によっては更なる金属前駆体)を混合し、一緒に変性担体に加え、次に乾燥及びか焼して最終触媒組成物を形成する。同時含侵を用いる場合、2つの前駆体が所望の溶媒、例えば水と非混和性である場合においては、分散剤、界面活性剤、又は可溶化剤、例えばシュウ酸アンモニウムを用いて、第1及び第2の金属前駆体の分散又は可溶化を促進させることが望ましい可能性がある。
【0071】
[0079]逐次含侵においては、まず第1の金属前駆体を変性担体に加え、次に乾燥及びか焼し、次に得られる材料に第2の金属前駆体を含侵させ、次に更なる乾燥及びか焼工程を行って最終触媒組成物を形成する。更なる金属前駆体(例えば第3の金属前駆体)は、第1及び/又は第2の金属前駆体と一緒か、或いは別の第3の含侵工程のいずれかで加えて、次に乾燥及びか焼することができる。勿論、所望の場合には、逐次含侵と同時含侵の組み合わせを用いることができる。
【0072】
[0080]好適な金属前駆体としては、例えば、金属ハロゲン化物、アミン可溶化金属水酸化物、金属硝酸塩、又は金属シュウ酸塩が挙げられる。例えば、白金前駆体及びパラジウム前駆体に関する好適な化合物としては、クロロ白金酸、クロロ白金酸塩アンモニウム、アミン可溶化水酸化白金、硝酸白金、テトラアンモニウム硝酸白金、塩化白金、シュウ酸白金、硝酸パラジウム、テトラアンモニウム硝酸パラジウム、塩化パラジウム、シュウ酸パラジウム、塩化ナトリウムパラジウム、及び塩化ナトリウム白金が挙げられる。一般に、経済的な見地及び環境的な見地の両方から、白金の可溶性化合物の水溶液が好ましい。一態様においては、第1の金属前駆体は金属ハロゲン化物ではなく、実質的に金属ハロゲン化物を含まない。理論には縛られないが、かかる非(金属ハロゲン化物)前駆体はエタノールへの選択性を増加させると考えられる。特に好ましい白金への前駆体は、硝酸白金アンモニウム:Pt(NH(NOである。
【0073】
[0081]一形態においては、まず「促進剤」金属又は金属前駆体、次に「主」又は「主要」金属又は金属前駆体を変性担体に加える。勿論、逆の添加順も可能である。促進剤金属に関する代表的な前駆体としては、金属ハロゲン化物、アミン可溶化金属水酸化物、金属硝酸塩、又は金属シュウ酸塩が挙げられる。上記に示すように、逐次の態様においては、好ましくはそれぞれの含侵工程の後に乾燥及びか焼を行う。上記に記載の促進二元金属触媒の場合においては、促進剤金属の添加から主発して、次に2つの主要金属、例えばPt及びSnの共含侵を含む第2の含侵工程を行う逐次含侵を用いることができる。
【0074】
[0082]一例として、SiO上のPtSn/CaSiOは、まずSiO上にCaSiOを含侵させ、次にPt(NH(NO及びSn(AcO)を共含侵させることによって製造することができる。ここでも、それぞれの含侵工程の後に乾燥及びか焼工程を行うことができる。殆どの場合においては、含侵は金属硝酸塩溶液を用いて行うことができる。しかしながら、か焼によって金属イオンを放出する種々の他の可溶性塩を用いることもできる。含侵のために好適な他の金属塩の例としては、過レニウム酸溶液のような金属酸、金属シュウ酸塩などが挙げられる。実質的に純粋なエタノールを製造する場合には、白金族金属に関するハロゲン化前駆体の使用を避け、その代わりに窒素を含有するアミン及び/又は硝酸塩ベースの前駆体を用いることが一般的に好ましい。
【0075】
[0083]本発明の一態様にしたがって酢酸を水素化してエタノールを形成するプロセスは、当業者に容易に認められるように、固定床反応器又は流動床反応器を用いて種々の構成で実施することができる。本発明の多くの態様においては、「断熱」反応器を用いることがき、即ち、熱を加えるか又は除去するために反応区域を通る内部配管を用いる必要性は少しかないか又は全くない。或いは、熱伝達媒体を備えたシェルアンドチューブ反応器を用いることができる。多くの場合においては、反応区域は、単一の容器内か、或いはその間に熱交換器を有する一連の複数の容器内に収容することができる。断熱反応器の構成は通常はチューブアンドシェルの構成よりもはるかに設備コストが少ないので、本発明の触媒を用いる酢酸還元プロセスを断熱反応器内で行うことができることは重要であると考えられる。
【0076】
[0084]通常は、触媒は、例えば、通常は蒸気形態の反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過する細長いパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。所望の場合には、流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、水素化触媒を不活性材料と組み合わせて用いて、触媒床を通る反応物質流の圧力降下、及び反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することができる。
【0077】
[0085]水素化反応は液相又は蒸気相のいずれかで行うことができる。好ましくは、反応は次の条件下において蒸気相で行う。反応温度は、125℃〜350℃、例えば200℃〜325℃、225℃〜約300℃、又は250℃〜約300℃の範囲であってよい。圧力は、10KPa〜3000KPa(約0.1〜30気圧)、例えば50KPa〜2300KPa、又は100KPa〜1500KPaの範囲であってよい。反応物質は、500hr−1より高く、例えば1000hr−1より高く、2500hr−1より高く、又は更には5000hr−1より高い気体空間速度(GHSV)で反応器に供給することができる。範囲に関しては、GHSVは50hr−1〜50,000hr−1、例えば500hr−1〜30,000hr−1、1000hr−1〜10,000hr−1、又は1000hr−1〜6500hr−1の範囲であってよい。
【0078】
[0086]本発明方法の他の形態においては、水素化は選択されるGHSVにおいて触媒床を横切る圧力降下を克服するのに丁度十分な圧力において行うが、より高い圧力を使用することに対する制約はなく、例えば5000hr−1又は6,500hr−1の高い空間速度においては反応器床を通る相当な圧力降下に遭遇する可能性があると理解される。
【0079】
[0087]反応は、1モルのエタノールを製造するために酢酸1モルあたり2モルの水素を消費するが、供給流中の水素と酢酸との実際のモル比は、約100:1〜1:100、例えば50:1〜1:50、20:1〜1:2、又は12:1〜1:1で変化させることができる。最も好ましくは、水素と酢酸とのモル比は4:1より大きく、例えば5:1より大きく、又は10:1より大きい。
【0080】
[0088]接触又は滞留時間も、酢酸の量、触媒、反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも蒸気相反応に関しては0.1〜100秒、例えば0.3〜80秒、又は0.4〜30秒である。
【0081】
[0089]酢酸は反応温度において気化させることができ、次に気化した酢酸を、非希釈状態か、或いは窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのような比較的不活性のキャリアガスによって希釈した状態で、水素と一緒に供給することができる。蒸気相での反応運転のためには、温度は酢酸の露点より低くならないように系内で制御しなければならない。
【0082】
[0090]特に、本発明の触媒及び方法を用いると、酢酸の有利な転化率、並びにエタノールへの有利な選択率及び生産性を達成することができる。本発明の目的のためには、転化率という用語は、酢酸以外の化合物に転化する供給流中の酢酸の量を指す。転化率は、供給流中の酢酸を基準とするモル%として表す。
【0083】
[0091]酢酸(AcOH)の転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0084】
【化6】

【0085】
を用いて計算する。
[0092]本発明の目的のためには、転化率は少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%にすることができる。少なくとも80%、又は少なくとも90%のような高い転化率を有する触媒が望ましいが、エタノールに関する高い選択率においては低い転化率を許容することができる。勿論、多くの場合においては、適当な再循環流又はより大きな反応器の使用によって転化率を補償することができるが、劣った選択率を補償することはより困難であることがよく理解されている。
【0086】
[0093]「選択率」は、転化した酢酸を基準とするモル%として表す。酢酸から転化するそれぞれの化合物は独立した選択率を有し、選択率は転化率とは独立していることを理解すべきである。例えば、転化した酢酸の50モル%がエタノールに転化する場合には、エタノール選択率を50%と言う。エタノール(EtOH)への選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0087】
【化7】

【0088】
を用いて計算する。
[0094]式中、「C全ミリモル(GC)」は、ガスクロマトグラフによって分析される全ての生成物からの炭素の全ミリモル数を指す。
【0089】
[0095]本発明の目的のためには、触媒のエトキシレートへの選択率は少なくとも60%、例えば少なくとも70%、又は少なくとも80%である。ここで用いる「エトキシレート」という用語は、具体的には、エタノール、アセトアルデヒド、及び酢酸エチルの化合物を指す。好ましくは、エタノールへの選択率は少なくとも80%、例えば少なくとも85%、又は少なくとも88%である。本発明の幾つかの態様においては、メタン、エタン、及び二酸化炭素のような望ましくない生成物への低い選択率を有することも望ましい。これらの望ましくない生成物への選択率は4%未満、例えば2%未満、又は1%未満である。好ましくは、水素化中においては検出できる量のこれらの望ましくない生成物は形成されない。本発明の幾つかの態様においては、アルカンの形成は低く、通常は触媒上を通過する酢酸の2%未満、しばしば1%未満、多くの場合においては0.5%未満が、燃料として以外の価値を少ししか有しないアルカンに転化する。
【0090】
[0096]生産性とは、1時間あたり、用いた触媒1kgを基準とする水素化中に形成される具体的な生成物、例えばエタノールのグラム数を指す。本発明の一態様においては、触媒1kgあたり1時間あたり少なくとも200gのエタノール、例えば少なくとも400gのエタノール、又は少なくとも600gのエタノールの生産性が好ましい。範囲に関しては、生産性は、好ましくは触媒1kgあたり1時間あたり200〜3,000、例えば400〜2,500、又は600〜2,000gのエタノールである。
【0091】
[0097]本発明の幾つかの触媒は、少なくとも10%の酢酸の転化率、少なくとも80%のエタノールへの選択率、及び触媒1kgあたり1時間あたり少なくとも200gのエタノールの生産性を達成することができる。本発明の触媒の部分集合は、少なくとも50%の酢酸の転化率、少なくとも80%のエタノールへの選択率、4%未満の望ましくない化合物への選択率、及び触媒1kgあたり1時間あたり少なくとも600gのエタノールの生産性を達成することができる。
【0092】
[0098]他の態様においては、本発明は本発明方法によって形成される粗エタノール生成物に関する。本発明の水素化方法によって製造される粗エタノール生成物は、精製及び分離のような任意の引き続く処理の前においては、通常は、主として未反応の酢酸及びエタノールを含む。幾つかの代表的な態様においては、粗エタノール生成物は、粗エタノール生成物の全重量を基準として15重量%〜70重量%、例えば20重量%〜50重量%、又は25重量%〜50重量%の量のエタノールを含む。好ましくは、粗エタノール生成物は、少なくとも22重量%のエタノール、少なくとも28重量%のエタノール、又は少なくとも44重量%のエタノールを含む。粗エタノール生成物は、通常は、転化率によって、例えば、0〜80重量%、例えば5〜80重量%、20〜70重量%、28〜70重量%、又は44〜65重量%の量の未反応の酢酸を更に含む。反応プロセス中に水が形成されるので、水も、例えば、5〜30重量%、例えば10〜30重量%、又は10〜26重量%の範囲の量で粗エタノール生成物中に存在する。例えばエステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルカン、及び二酸化炭素のような他の成分は、検出できる場合には合計で10重量%未満、例えば6重量%未満、又は4重量%未満の量で存在してよい。範囲に関しては、他の成分は、0.1〜10重量%、例えば0.1〜6重量%、又は0.1〜4重量%の量で存在してよい。而して、本発明の種々の態様における代表的な粗エタノールの組成範囲を下表2に与える。
【0093】
【表2】

【0094】
[0099]好ましい態様においては、粗エタノール生成物は、例えばCaSiOによって変性されている変性シリカ担体上の白金/スズ触媒上で形成する。用いる具体的な触媒及びプロセス条件によって、粗エタノール生成物は下表3に示す組成のいずれかを有することができる。
【0095】
【表3】

【0096】
[0100]本発明方法に関連して用いる原材料は、天然ガス、石油、石炭、バイオマスなどをはじめとする任意の好適な源から誘導することができる。メタノールカルボニル化、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、酸化発酵、及び嫌気発酵によって酢酸を製造することは周知である。石油及び天然ガスの価格は変動してより高価か又はより安価になるので、代替の炭素源から酢酸並びにメタノール及び一酸化炭素のような中間体を製造する方法に益々興味が持たれている。特に、石油が天然ガスと比べて比較的高価である場合には、任意の入手できる炭素源から誘導される合成ガス(シンガス)から酢酸を製造することが有利になる可能性がある。例えば、Vidalinの米国特許6,232,352(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)においては、酢酸を製造するためにメタノールプラントを改造する方法が教示されている。メタノールプラントを改造することによって、新しい酢酸プラントのためのCO製造に関連する大きな設備コストが大きく減少するか又は大きく排除される。シンガスの全部又は一部をメタノール合成ループから迂回させ、分離器ユニットに供給してCO及び水素を回収し、これを次に酢酸を製造するために用いる。酢酸に加えて、このプロセスを用いて水素を製造することもでき、これを本発明に関して用いることができる。
【0097】
[0101]Steinbergらの米国特許RE35,377(これも参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が与えられている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを追加の天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを形成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。この方法では更に、上述のように本発明に関して用いることができる水素が生成する。Gradyらの米国特許5,821,111(ガス化によって廃バイオマスを合成ガスに転化させる方法が開示されている)、及びKindigらの米国特許6,685,754(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)も参照。
【0098】
[0102]或いは、Scatesらの米国特許6,657,078(その全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている種類のメタノールカルボニル化ユニットのフラッシュ容器からの粗生成物として、蒸気形態の酢酸を直接回収することができる。粗蒸気生成物は、例えば、酢酸及び軽質留分を凝縮するか又は水を除去する必要なしに本発明のエタノール合成反応区域に直接供給することができ、これによって全体の処理コストが節約される。
【0099】
[0103]本発明の水素化方法から得られるエタノールは、それ自体で燃料として用いることができ、或いはその後に、ポリエチレン、酢酸ビニル、及び/又は酢酸エチル、或いは任意の広範囲の他の化学生成物に転化させることができるので重要な商業的供給材料であるエチレンに転化させることができる。例えば、エチレンは数多くのポリマー及びモノマー生成物に転化させることもできる。エチレンへのエタノールの脱水を下記に示す。
【0100】
【化8】

【0101】
[0104]エタノールを脱水するために、共に係属中の米国出願12/221,137及び米国出願12/221,138(これらの全ての内容及び開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているもののような任意の公知の脱水触媒を用いることができる。例えば、脱水触媒としてゼオライト触媒を用いることができる。少なくとも約0.6nmの孔径を有する任意のゼオライトを用いることができるが、好ましいゼオライトとしては、モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される脱水触媒が挙げられる。例えば、ゼオライトXは米国特許2,882,244に、ゼオライトYは米国特許3,130,007(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0102】
[0105]エタノールはまた、燃料として、医薬品、洗浄剤、殺菌剤、水素化輸送又は消費において用いることもできる。エタノールはまた、酢酸エチル、アルデヒド、及びより高級のアルコール、特にブタノールを製造するための原材料として用いることもできる。更に、本発明にしたがってエタノールを製造するプロセス中に形成される酢酸エチルのような任意のエステルは、酸触媒と更に反応させて更なるエタノール及び酢酸を形成することができ、これを水素化プロセスに再循環することができる。
【0103】
[0106]以下において、例示及び例証のみの目的の数多くの態様を参照して本発明を詳細に記載する。特許請求の範囲に示される本発明の精神及び範囲内の特定の態様に対する修正は当業者に容易に明らかになるであろう。
【0104】
[0107]以下の実施例は、本発明方法において用いる種々の触媒を製造するために用いる手順を記載する。
【実施例】
【0105】
触媒の製造(基本手順)
[0108]触媒担体は、使用前に循環空気下120℃において一晩乾燥した。全ての市販の担体(即ち、SiO、ZrO)は、他に言及していない限りにおいて、14/30メッシュとしてか又はその元々の形状(1/16インチ又は1/8インチのペレット)で用いた。粉末材料(即ちCaSiO)は、金属を加えた後にペレット化し、粉砕し、篩別した。以下において、個々の触媒の製造を詳細に記載する。
【0106】
実施例1:SiO−CaSiO(5)−Pt(3)−Sn(1.8)触媒
[0109]まずCaSiO(Aldrich)をSiO触媒担体に加え、次にPt/Snを加えることによって触媒を調製した。まず、0.52gの固体を13mLの脱イオンHOに加え、次に1.0mLのコロイド状SiO(15重量%溶液、NALCO)を加えることによって、CaSiO(≦200メッシュ)の水性懸濁液を調製した。懸濁液を室温において2時間撹拌し、次に初期湿潤法を用いて10.0gのSiO触媒担体(14/30メッシュ)に加えた。2時間放置した後、材料を蒸発乾固させ、次に循環空気下120℃において一晩乾燥し、500℃において6時間か焼した。次に、Pt/Sn金属含侵のためにSiO−CaSiO材料の全部を用いた。
【0107】
[0110]触媒は、まずSn(OAc)(酢酸スズ、AldrichからのSn(OAc))(0.4104g、1.73ミリモル)を、6.75mLの1:1希釈氷酢酸(Fisher)を含むガラスビンに加えることによって調製した。混合物を室温において15分間撹拌し、次に0.6711g(1.73ミリモル)の固体のPt(NH(NO(Aldrich)を加えた。混合物を室温において更に15分間撹拌し、次に100mLの丸底フラスコ内において、5.0gのSiO−CaSiO担体に滴加した。金属溶液を全て添加した後、全てのPt/Sn混合物がSiO−CaSiO担体に付加されるまで、フラスコを回転させながら金属溶液を連続的に撹拌した。金属溶液の添加が完了した後、含侵した触媒を含むフラスコを室温において2時間放置した。次に、フラスコをロータリーエバポレーター(浴温80℃)に取り付け、フラスコをゆっくりと回転させながら乾燥するまで排水した。次に、材料を120℃において更に一晩乾燥した後、次の温度プログラム:25→160℃/5.0℃/分で昇温;2.0時間保持;160→500℃/2.0℃/分で昇温;4時間保持:を用いてか焼した。収量:11.21gの暗灰色の物質。
【0108】
実施例2:KA160−CaSiO(8)−Pt(3)−Sn(1.8)
まずCaSiOをKA160触媒担体(SiO−(0.05)Al、Sud Chemie、14/30メッシュ)に加え、次にPt/Snを加えることによって材料を調製した。まず、0.42gの固体を3.85mLの脱イオンHOに加え、次に0.8mLのコロイド状SiO(15重量%溶液、NALCO)を加えることによって、CaSiO(≦200メッシュ)の水性懸濁液を調製した。懸濁液を室温において2時間撹拌し、次に初期湿潤法を用いて5.0gのKA160触媒担体(14/30メッシュ)に加えた。2時間放置した後、材料を蒸発乾固させ、次に循環空気下120℃において一晩乾燥し、500℃において6時間か焼した。次に、Pt/Sn金属含侵のためにKA160−CaSiO材料の全部を用いた。
【0109】
[0112]触媒は、まずSn(OAc)(酢酸スズ、AldrichからのSn(OAc))(0.2040g、0.86ミリモル)を、6.75mLの1:1希釈氷酢酸(Fisher)を含むガラスビンに加えることによって調製した。混合物を室温において15分間撹拌し、次に0.3350g(0.86ミリモル)の固体のPt(NH(NO(Aldrich)を加えた。混合物を室温において更に15分間撹拌し、次に100mLの丸底フラスコ内において、5.0gのSiO−CaSiO担体に滴加した。金属溶液の添加が完了した後、含侵した触媒を含むフラスコを室温において2時間放置した。次に、フラスコをロータリーエバポレーター(浴温80℃)に取り付け、フラスコをゆっくりと回転させながら乾燥するまで排水した。次に、材料を120℃において更に一晩乾燥した後、次の温度プログラム:25→160℃/5.0℃/分で昇温;2.0時間保持;160→500℃/2.0℃/分で昇温;4時間保持:を用いてか焼した。収量:5.19gの小麦色の物質。
【0110】
実施例3:SiO−CaSiO(2.5)−Pt(1.5)−Sn(0.9)
[0113]この触媒は、次の出発材料:担体変性剤として0.26gのCaSiO;0.5mLのコロイド状SiO(15重量%溶液、NALCO);0.3355g(0.86ミリモル)のPt(NH(NO;及び0.2052g(0.86ミリモル)のSn(OAc);を用いて、実施例1と同じようにして調製した。収量:10.90gの暗灰色の物質。
【0111】
実施例4:SiO+MgSiO−Pt(1.0)−Sn(1.0)
[0114]この触媒は、次の出発材料:担体変性剤として0.69gのMg(AcO);1.3gのコロイド状SiO(15重量%溶液、NALCO);0.2680g(0.86ミリモル)のPt(NH(NO;及び0.1640g(0.86ミリモル)のSn(OAc);を用いて、実施例1と同じようにして調製した。収量:8.35g。SiO担体にMg(AcO)及びコロイド状SiOの溶液を含侵させた。担体を乾燥し、次に700℃にか焼した。
【0112】
実施例5:SiO−CaSiO(5)−Re(4.5)−Pd(1)
[0115]実施例1に記載のようにしてSiO−CaSiO(5)変性触媒担体を調製した。次に、SiO−CaSiO(5)(1/16インチの押出物)にNHReO及びPd(NOを含む水溶液を含侵させることによってRe/Pd触媒を調製した。まず、NHReO(0.7237g、2.70ミリモル)を、12.0mLの脱イオンHOを含むガラスビンに加えることによって金属溶液を調製した。混合物を室温において15分間撹拌し、次に0.1756g(0.76ミリモル)の固体のPd(NOを加えた。混合物を室温において更に15分間撹拌し、次に100mLの丸底フラスコ内において、10.0gの乾燥SiO−(0.05)CaSiO触媒担体に滴加した。金属溶液の添加が完了した後、含侵した触媒を含むフラスコを室温において2時間放置した。全ての他の操作(乾燥、か焼)は実施例1に記載のようにして行った。収量:10.9gの褐色の物質。
【0113】
実施例6:SiO−ZnO(5)−Pt(1)−Sn(1)
[0116]約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高表面積シリカNPSG SS61138(100g)を、循環空気オーブン雰囲気内において120℃で一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、硝酸亜鉛6水和物の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥し、次にか焼した。これに、蒸留水中の硝酸白金(Chempur)の溶液、及び希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含侵した触媒混合物を500℃においてか焼した(6時間、1℃/分)。
【0114】
[0117]更に、以下の比較触媒も調製した。
実施例7:比較例
[0118]TiO−CaSiO(5)−Pt(3)−Sn(1.8):まずCaSiOをTiO触媒(Anatase、14/30メッシュ)担体に加え、次に実施例1において記載したようにしてPt/Snを加えることによって材料を調製した。まず、0.52gの固体を7.0mLの脱イオンHOに加え、次に1.0mLのコロイド状SiO(15重量%溶液、NALCO)を加えることによって、CaSiO(≦200メッシュ)の水性懸濁液を調製した。懸濁液を室温において2時間撹拌し、次に初期湿潤法を用いて10.0gのTiO触媒担体(14/30メッシュ)に加えた。2時間放置した後、材料を蒸発乾固させ、次に循環空気下120℃において一晩乾燥し、500℃において6時間か焼した。次に、実施例1に記載した手順にしたがう、0.6711g(1.73ミリモル)のPt(NH(NO及び0.4104g(1.73ミリモル)のSn(OAc)を用いるPt/Sn金属含侵のために、TiO−CaSiO材料の全部を用いた。収量:11.5gの明灰色の物質。
【0115】
実施例8:比較例
[0119]高純度低表面積シリカ上のSn(0.5):約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高純度低表面積シリカ(100g)を、オーブン内において、窒素雰囲気下120℃で一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含侵した触媒混合物を500℃においてか焼した(6時間、1℃/分)。
【0116】
実施例9:比較例
[0120]高表面積シリカ上のPt(2)−Sn(2):約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高表面積シリカNPSG SS61138(100g)を、循環空気オーブン雰囲気中120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに硝酸塩6水和物(Chempur)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥し、次にか焼した。これに、蒸留水中の硝酸白金(Chempur)の溶液、及び希硝酸中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含侵した触媒混合物を500℃においてか焼した(6時間、1℃/分)。
【0117】
実施例10:比較例
[0121]KA160−Pt(3)−Sn(1.8):実施例16において記載したようにして、KA160触媒担体(SiO−(0.05)Al、Sud Chemie、14/30メッシュ)の初期湿潤含侵によって材料を調製した。まず、Sn(OAc)(0.2040g、0.86ミリモル)を、4.75mLの1:1希釈氷酢酸を含むガラスビンに加えることによって金属溶液を調製した。混合物を室温において15分間撹拌し、次に0.3350g(0.86ミリモル)の固体のPt(NH(NOを加えた。混合物を室温において更に15分間撹拌し、次に100mLの丸底フラスコ内において、5.0gの乾燥KA160触媒担体(14/30メッシュ)に滴加した。全ての他の操作(乾燥、か焼)は、実施例16において記載のようにして行った。収量:5.23gの小麦色の物質。
【0118】
実施例11:比較例
[0122]SiO−SnO(5)−Pt(1)−Zn(1):約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高表面積シリカNPSG SS61138(100g)を、循環空気オーブン雰囲気中120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに酢酸スズ(Sn(OAc))の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥し、次にか焼した。これに、蒸留水中の硝酸白金(Chempur)の溶液、及び希硝酸中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内において110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含侵した触媒混合物を500℃においてか焼した(6時間、1℃/分)。
【0119】
実施例12:比較例
[0123]SiO−TiO(10)−Pt(3)−Sn(1.8):以下のようにしてTiO変性シリカ担体を調製した。2−プロパノール(14mL)中の4.15g(14.6ミリモル)のTi{OCH(CHの溶液を、100mLの丸底フラスコ内において、10.0gのSiO触媒担体(1/16インチの押出物)に滴加した。フラスコを室温において2時間放置し、次にロータリーエバポレーター(浴温80℃)を用いて排水乾固させた。次に、20mLの脱イオンHOをフラスコにゆっくりと加え、材料を15分間放置した。次に、得られた水/2−プロパノールを濾過によって除去し、HOの添加を更に2回繰り返した。最終的な材料を、循環空気下120℃において一晩乾燥し、次に500℃において6時間か焼した。次に、実施例1に関して上記に記載した手順にしたがう、0.6711g(1.73ミリモル)のPt(NH(NO及び0.4104g(1.73ミリモル)のSn(OAc)を用いるPt/Sn金属含侵のために、SiO−TiO材料の全部を用いた。収量:11.98gの暗灰色の1/16インチの押出物。
【0120】
実施例13:比較例
[0124]SiO−WO(10)−Pt(3)−Sn(1.8):以下のようにしてWO変性シリカ担体を調製した。脱イオンHO(14mL)中の1.24g(0.42ミリモル)の(NH1240・nHO(AMT)の溶液を、100mLの丸底フラスコ内において、10.0gのSiO:NPSGSS 61138触媒担体(SA=250m/g、1/16インチの押出物)に滴加した。フラスコを室温において2時間放置し、次にロータリーエバポレーター(浴温80℃)を用いて排水乾固させた。得られた材料を循環空気下120℃において一晩乾燥し、次に500℃において6時間か焼した。次に、実施例1に関して上記に記載した手順にしたがう、0.6711g(1.73ミリモル)のPt(NH(NO及び0.4104g(1.73ミリモル)のSn(OAc)を用いるPt/Sn金属含侵のために、(明黄色の)SiO−WO材料の全部を用いた。収量:12.10gの暗灰色の1/16インチの押出物。
【0121】
実施例14:実施例1〜13からの触媒上での酢酸の水素化、及び粗エタノール生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析
[0125]実施例1〜13の触媒を試験して、表4に示すエタノールへの選択率及び生産性を求めた。
【0122】
[0126]酢酸の反応供給液を蒸発させ、表4に示す平均合計気体空間速度(GHSV)、温度、及び圧力を用いて、水素及びキャリアガスとしてヘリウムと一緒に反応器に充填した。供給流は、表4に示すモル比の水素と酢酸を含んでいた。
【0123】
[0127]オンラインGCによって生成物(粗エタノール組成物)の分析を行った。1つの炎イオン化検出器(FID)及び2つの熱伝導検出器(TCD)を備える3チャンネル小型GCを用いて、反応物質及び生成物を分析した。フロントチャンネルには、FID及びCP-Sil 5(20m)+WaxFFap(5m)カラムを取り付け、これを用いて、アセトアルデヒド;エタノール;アセトン;酢酸メチル;酢酸ビニル;酢酸エチル;酢酸;エチレングリコールジアセテート;エチレングリコール;エチリデンジアセテート;及びパラアルデヒド;を定量した。ミドルチャンネルには、TCD及びPorabond Qカラムを取り付け、これを用いて、CO;エチレン;及びエタン;を定量した。バックチャンネルには、TCD及びMolsieve 5Aカラムを取り付け、これを用いて、ヘリウム;水素;窒素;メタン;及び一酸化炭素;を定量した。
【0124】
[0128]反応の前に、個々の化合物をスパイクすることによって異なる成分の保持時間を求め、公知の組成の較正用ガス又は公知の組成の液体溶液のいずれかを用いてGCを較正した。これによって、種々の成分に関する応答係数を求めることができた。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例15:触媒安定性(15時間)
[0129]気化酢酸及び水素を、約250m/gの表面積を有する高純度高表面積シリカ上の、3重量%のPt、1.5重量%のSn、及び促進剤として5重量%のCaSiOを含む本発明の水素化触媒の上に、約5:1の水素と酢酸とのモル比(0.09g/分のHOAc;160sccm/分のH;60sccm/分のN;の供給速度)で、約225℃の温度、200psig(約1400KPag)の圧力、及びGHSV=6570h−1において通過させた。2.5mLの固体触媒(14/30メッシュ、1:1に希釈(v/v、石英片によって希釈、14/30メッシュ)を用いる通常範囲の運転条件における水素化及びエステル化反応によって主としてエタノール、アセトアルデヒド、及び酢酸エチルを製造する、固定床連続反応器システムを用いる225℃における15時間の継続時間の実験において、酢酸の水素化における5%のCaSiOによって安定化したSiOを研究した。図3Aは、触媒寿命の初期部分中における運転時間の関数としての触媒の選択率を示し、図3Bは生産性を示す。図3A及び図3Bに報告するこの実施例の結果から、90%を超える選択率及び触媒1kgあたり1時間あたり500gを超えるエタノールの生産性を達成することができることを認めることができる。
【0127】
実施例16:触媒安定性(100時間)
[0130]触媒安定性:SiO−CaSiO(5)−Pt(3)−Sn(1.8):SiO−CaSiO(5)−Pt(3)−Sn(1.8)の触媒性能及び初期安定性を、一定の温度(260℃)において100時間の反応時間にわたって評価した。100時間の全反応時間にわたって、触媒性能及び選択率の小さい変化しか観察されなかった。アセトアルデヒドが唯一の副生成物であると思われ、その濃度(約3重量%)は実験中にわたって大きくは変化しないで保持された。触媒の生産性及び選択率の概要を図4A及び4Bに与える。
【0128】
実施例17:触媒安定性
[0131]約250℃の温度において実施例16の手順を繰り返した。図5A及び5Bは、触媒寿命の初期部分中における運転時間の関数としての触媒の生産性及び選択率を示す。図5A及び5Bに報告するこの実施例の結果から、この温度においては、90%を超える選択率活性を、触媒1kgあたり1時間あたり800gを超えるエタノール生産性と共に達成することが更に可能であることを認めることができる。
【0129】
実施例18
[0132]担体変性剤:CaSiOの異なる装填量を用いて実施例3の触媒を調製して、次の触媒:(i)SiO−Pt(1.5)−Sn(0.9);(ii)SiO−CaSiO(2.5)−Pt(1.5)−Sn(0.9);(iii)SiO−CaSiO(5.0)−Pt(1.5)−Sn(0.9);(iv)SiO−CaSiO(7.5)−Pt(1.5)−Sn(0.9);及び(v)SiO−CaSiO(10)−Pt(1.5)−Sn(0.9);を製造した。それぞれの触媒を、同等の条件、即ち1400bar(200psig)、2500hr−1のGHSV、及び10:1の水素と酢酸とのモル供給比(0.183g/分のAcOHに対して683sccm/分のH)において、250℃及び275での酢酸の水素化において用いた。転化率を図6A、生産性を図6B、250℃における選択率を図6C、及び275℃における選択率を図6Dに示す。
【0130】
[0133]図6Aに示されるように、250℃及び275℃における酢酸の転化率は、2.5重量%より大きいCaSiO装填量において驚くほど増加した。0〜2.5重量%のCaSiOにおいて示される転化率の最初の降下は、転化率はより多くのCaSiOを加えると減少すると予想されることを示唆する。しかしながら、この傾向は驚くべきことにより多くの担体変性剤を加えると保持される。また、図6Bに示されるように、転化率が増加すると生産性も増加する。図6C及び6Cにおいて、選択率は担体変性剤の量が増加するにつれて僅かな増加を示す。
【0131】
[0134]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(それらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、下記及び/又は特許請求の範囲において示す本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができると理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属、シリカ質担体、及び少なくとも1種類の担体変性剤を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法。
【請求項2】
第1の金属が、第IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、又はVIII族の遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、又は第IIIA族、IVA族、VA族、又はVIA族のいずれかからの金属からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の金属が、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の金属が触媒の全重量を基準として0.1〜25重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種類の担体変性剤が、(i)アルカリ土類金属酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種類の担体変性剤が、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、及び亜鉛の酸化物及びメタシリケートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種類の担体変性剤が触媒の全重量を基準として0.1重量%〜50重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
担体が触媒の全重量を基準として25重量%〜99重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
担体が50m/g〜600m/gの表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
担体が、シリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
担体が触媒の全重量を基準として1重量%未満のアルミニウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒が第1の金属と異なる第2の金属を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
第1の金属が白金であり、第2の金属がスズである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
白金とスズとのモル比が0.4:0.6〜0.6:0.4である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の金属がパラジウムであり、第2の金属がレニウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
レニウムとパラジウムとのモル比が0.7:0.3〜0.85:0.15である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の金属が、銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
第2の金属が触媒の全重量を基準として0.1〜10重量%の量で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
触媒が第1及び第2の金属と異なる第3の金属を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
第3の金属が、コバルト、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、白金、スズ、及びレニウムからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第3の金属が触媒の全重量を基準として0.05〜4重量%の量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
水素化中に酢酸の少なくとも10%が転化する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
水素化が少なくとも80%のエタノールへの選択率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
水素化が、4%未満のメタン、エタン、及び二酸化炭素、並びにこれらの混合物への選択率を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
触媒が触媒の使用100時間あたり6%未満減少する生産性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
酢酸が、石炭源、天然ガス源、又はバイオマス源から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
水素化中に得られるエタノールを脱水してエチレンを製造することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
水素化を、125℃〜350℃の温度、10KPa〜3000KPaの圧力、及び4:1より大きい水素と酢酸とのモル比において蒸気相中で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
粗エタノール生成物が、
(a)15〜70重量%の量のエタノール;
(b)0〜80重量%の量の酢酸;
(c)5〜30重量%の量の水;及び
(d)10重量%未満の量の任意の他の化合物;
を含み、ここで全ての重量%は粗エタノール生成物の全重量を基準とするものである、請求項1に記載の方法によって形成される粗エタノール生成物。
【請求項30】
(a)15〜70重量%の量のエタノール;
(b)0〜80重量%の量の酢酸;
(c)5〜30重量%の量の水;及び
(d)10重量%未満の量の任意の他の化合物;
を含み、ここで全ての重量%は粗エタノール生成物の全重量を基準とするものである、粗エタノール生成物。
【請求項31】
20〜50重量%の量のエタノールを含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項32】
25〜50重量%の量のエタノールを含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項33】
28〜70重量%の量の酢酸を含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項34】
44〜65重量%の量の酢酸を含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項35】
10〜30重量%の量の水を含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項36】
10〜26重量%の量の水を含む、請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項37】
エタノールが20〜50重量%の量で存在し;
酢酸が20〜70重量%の量で存在し;
水が10〜30重量%の量で存在し;そして
任意の他の化合物が6重量%未満の量で存在する;
請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項38】
エタノールが25〜50重量%の量で存在し;
酢酸が44〜65重量%の量で存在し;
水が10〜26重量%の量で存在し;そして
任意の他の化合物が4重量%未満の量で存在する;
請求項30に記載の粗エタノール生成物。
【請求項39】
PtPdReSnCaSi
(式中
(i)v:yの比は3:2〜2:3の間であり、及び/又は(ii)w:xの比は1:3〜1:5の間であり;そして、
p及びqはp:qが1:20〜1:200であるように選択され、rは原子価の要件を満足するように選択され、そしてv及びwは、
【化1】

となるように選択される)
を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法。
【請求項40】
v:yの比が3:2〜2:3の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
w:xの比が1:3〜1:5の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
PtPdReSnAlCaSi
(式中、
(i)vとyは3:2〜2:3の間であり、及び/又は(ii)wとxは1:3〜1:5の間であり;そして、
p及びz、及び存在するアルミニウム及びカルシウム原子の相対位置は、その表面上に存在するブレンステッド酸部位が担体変性剤によって中和されるように制御され;そして、
p及びqはp:qが1:20〜1:200であるように選択され;rは原子価の要件を満足するように選択され、そして、
v及びwは
【化2】

となるように選択される)
を含む触媒の存在下で酢酸を水素化することを含むエタノールの製造方法。
【請求項43】
v:yの比が3:2〜2:3の間である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
w:xの比が1:3〜1:5の間である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種類の担体変性剤が、(i)アルカリ土類金属酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公表番号】特表2013−508362(P2013−508362A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535196(P2012−535196)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/022947
【国際公開番号】WO2011/053365
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】