説明

酵素による抗癌治療

アデノシン・デアミナーゼ、好ましくはポリアルキレンオキサイド結合型のアデノシン・デアミナーゼを、有効量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に援用される、2007年4月20日に出願の米国仮特許出願第60/913,039号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、アデノシンおよびデオキシアデノシンの組織内濃度を低減させるため、アデノシン・デアミナーゼを投与することにより、腫瘍、特に悪性固形腫瘍を治療および抑制する新規方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍は、無制限の細胞増殖から生じる、細胞または組織における良性または悪性の異常な増殖である。悪性腫瘍はその出現部位から拡散するものであり、当技術分野では癌としても知られている。よって、腫瘍および癌は、無制限または不適切な細胞増殖という一般的性質を共有する一群である。悪性腫瘍は、白血病などの血液に由来する腫瘍または固形腫瘍のいずれかに大別される。血液に由来する悪性腫瘍は一般に血中を循環するが、固形の悪性腫瘍は原発腫瘍から全身に広がる。分散型の腫瘍細胞は、その後、転移の過程において多発性の二次性腫瘍に発展する可能性を有している。固形腫瘍が転移拡散などを生じるためには、固形腫瘍細胞は、原発腫瘍または原腫瘍から抜け出して、血流またはリンパ系に入り込み、そこから別の臓器組織に侵入し、そこで増殖し、新しい腫瘍を形成しなければならない。転移は、腫瘍細胞の粘着性および運動性;タンパク質分解酵素、化学誘導物質(chemoattractants)、およびプロテオグリカンの分泌;および/または他の要因における変化を伴う、複雑な多段階プロセスである。加えて、血管形成、すなわち新しい血管の形成もまた、転移過程における重要なステップである(非特許文献1)。
【0004】
免疫系もまた、このような悪性の腫瘍細胞の転移を抑制することが示されており、アデノシンもこのような免疫防衛反応を抑制しうることが報告されている。例えば、Loshkinら(非特許文献2)は、アデノシンがキラーT細胞における活性化およびサイトカインの生成を抑制することが報告されている。アデノシンは、細胞要素および炎症性機能の両方を含む他の免疫機能にマイナスの影響を与える(例えば、Spychala(非特許文献3)およびSitkoveskyら(非特許文献4)の研究記事を参照のこと)。Sitkoveskyらは、2003年6月19日に公開された特許文献1において、アデノシン・デアミナーゼを含みうるアデノシン受容体拮抗薬を投与することにより、抗原に対する免疫反応の増大方法、および腫瘍の治療方法についても述べている。
【0005】
アデノシンが腫瘍細胞の転移および血管形成を促進すること(非特許文献5および6)、および、アデノシンが大腸癌細胞の増殖を刺激すること(非特許文献7)も判明している。ADAの注入により、特定の腫瘍細胞の増殖が、腹水症モデルマウスにおいて50%を上回って阻害されたことも、Asmarらの非特許文献8によって報告されている。これらは、リンパ性白血病L1210およびL4946、リンパ肉腫6C3HED、乳腺腺癌TA3、およびエールリッヒ癌E2である。同一の要約書には、上記の効果に対して腺癌755は2倍の耐性があることが報告されており、肉腫180は完全に耐性であった。特許文献1には、B16メラノーマ細胞上のアデノシン受容体の阻害剤の効果について記載されている。特許文献1はアデノシンの阻害剤としてのADAについて記載しているが、ADAを特定の癌、特に卵巣癌および前立腺癌の治療に適用することについては、具体的な記載はない。
【0006】
よって、一部の腫瘍にとっては、アデノシンの存在が、腫瘍増殖および血管形成への「開始」信号、および、通常はこれらの腫瘍を死滅させるであろうキラーT細胞への「停止」信号を提供すると考えられる。
【0007】
上述の発見とは対照的に、Lindら(特許文献3)は、アデノシンが、アデノシン・デアミナーゼ酵素の阻害剤、および/または、コホルマイシンなどの抗癌剤との組合せでは、上皮由来の新生細胞における細胞死を促進する方法に有用であることを報告している。よって、この参考文献は、癌におけるアデノシンの役割がさらに複雑で不安定であることを示唆している。
【0008】
上述の通り、内生のアデノシン濃度を低減させる薬剤は、アデノシン・デアミナーゼ酵素である。EC3.5.4.4として指定されているアデノシン・デアミナーゼ(「ADA」)は、プリンサルベージ回路の重要な酵素である。ADAはアデノシンまたはデオキシアデノシンのいずれかを、水の存在下、イノシンまたはデオキシイノシンおよびアンモニアに転換する。ADA遺伝子に有害な突然変異を有する個人は、軽度から重度に至るさまざまな進行度の免疫不全疾患、すなわち、重症複合型免疫不全症(「SCID」)を発症しうることが知られている。SCIDは、成熟リンパ球様細胞において、酵素基質であるアデノシンおよびデオキシアデノシンの毒性の蓄積の結果として生じることが確認されている。疾患の発症は、遺伝した突然変異に応じて、幼児期から成人まで多岐にわたる。ADA欠損症は、子供におけるSCIDの主な原因の1つであり、遺伝子の治療法にとって主な対象の1つでもある(非特許文献9)。
【0009】
これまで、ADAはウシ起源から工業的に単離され、ポリエチレングリコール(「PEG」)ポリマー結合型のウシADAの形態で、多くの疾患の治療に用いられてきた。医療用途のPEG化ADAは、アダジェン(ADAGEN(登録商標))という銘柄のPEG化ADAとして、Enzon Pharmaceuticals, Inc.から市販されている。免疫原性の反応の可能性を最小限にするため、PEG部分をADAに結合させると、循環期間(circulating life)が増大し、ADAを実質的に非抗原性になることにより、酵素の最大の治療効果が達成できる。参照することにより、それぞれ、全体を本明細書に援用する、「タンパク質の安定化(Stabilized Proteins)」という発明の名称で共同出願された特許文献4および「安定な組換えアデノシン・デアミナーゼ(Stable Recombinant Adenosine Deaminase)」という発明の名称で本願と同日に共同出願された、特許文献5の優先権の利益を主張する米国特許出願に記載されるように、結合形態で用いるための組換えヒトまたはウシADA酵素の生産も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第03/050241号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/050241号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,579,857号明細書
【特許文献4】米国特許出願第11/738,012号明細書
【特許文献5】米国仮特許出願第60/913,009号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Folkman, 1995, Nature Medicine 1:27-31
【非特許文献2】Loshkin et al., 2006, Cancer Res. 66: 7758-7765
【非特許文献3】Spychala, 2000, Pharmacology & Therapeutics 87: 161-173
【非特許文献4】Sitkovesky et al., 2005 Nature Reviews Immunology 5: 713-721
【非特許文献5】Barcz et al., 2000, Oncol. Rep. 7(6): 1285-91
【非特許文献6】Adair, 2005, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 289: R283-R296
【非特許文献7】Mujoomdar et al. 2003, Biochemical Pharmacology 66 1737-1747
【非特許文献8】Asmar et al., 1966, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. (Abstract No. 73)
【非特許文献9】R. Parkman et al., 2000, "Gene therapy for adenosine deaminase deficiency", Ann. Rev. Med., 51:33-47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当技術分野では、長年にわたり、癌の増殖、拡散、および進行を治療または抑制する新規の改良方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、ADAを有効量で、それを必要とする患者に投与することを含む、腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。有効量は、患者におけるアデノシンまたはデオキシアデノシンの組織内濃度を低減させることを目的として、当業者によって簡単に決定される量であり、患者におけるアデノシンの組織内濃度を実質的に低減させることによって腫瘍の増殖または拡散を抑制する。投与経路は、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、吸入、および経尿道などである。
【0014】
腫瘍は、悪性または良性であり、固形腫瘍であることが好ましく、例えば、前立腺癌、卵巣癌、および/または結腸直腸癌などの腫瘍である。
【0015】
アデノシン・デアミナーゼは、ポリアルキレンオキサイド(PAO)などの実質的に非抗原性のポリマーと結合することが好ましい。PAOは、約4,000〜約45,000ダルトンの範囲の大きさであることが好ましい。PAOは、ポリエチレングリコール(「PEG」)であることが好ましい。ADAのポリマーに対するモル比は1:1であるか、または、ポリマー当たり2モル以上のADAであって差し支えなく、あるいは、ADA1モルあたり約1〜約20のポリマー分子(すなわち、11〜18本のPEG鎖)を提供することがさらに好ましい。
【0016】
ポリマー結合ADAは、1kgあたり約10U〜約30U以上の用量で、腫瘍の阻害を維持するのに十分な期間、例えば約1〜約20日以上の期間、投与されることが好ましい。
【0017】
投与されるアデノシン・デアミナーゼの量は、患者におけるアデノシンまたはデオキシアデノシンの組成機内濃度を実質的に低減するのに有効であり、その患者におけるアデノシンの組成機内濃度を実質的に低減することにより、腫瘍の増殖または拡散が阻害される。これは、例えば、1kgあたり約10U〜約30Uの用量のアデノシン・デアミナーゼである。用量は、腫瘍の阻害を維持するのに十分な期間、例えば約1〜約20日間以上、繰り返される。用量は、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、吸入、および経尿道などの任意の簡便な経路で投与される。
【0018】
アデノシン・デアミナーゼは、ウシ起源から随意的に精製されるか、または組換えアデノシン・デアミナーゼである。組換えアデノシン・デアミナーゼは、例えば、配列番号:1を含む組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼ(Ser74−rbADA)、配列番号:3を含む組換えヒト・アデノシン・デアミナーゼ(Ser74−rhADA)、および配列番号:5を含む組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼおよび/またはそれらの異型または多型である。
【0019】
組換え産生されたウシ・アデノシン・デアミナーゼ、例えば配列番号:5は、水媒体での安定性のため、Cys74が随意的にキャップ化される。
【0020】
本発明の目的では、「残基」という用語は、別の化合物との置換反応に供した後に残る、例えばPEG、ADA、アミノ酸などのことを称する、化合物の部分を意味すると解されるものとする。
【0021】
本発明の目的では、「ポリマー残基」、例えば「PEG残基」という用語は、それぞれ、他の化合物、部分などとの反応に供した後に残るポリマーまたはPEGの部分を意味すると解されるものとする。
【0022】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環状のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素のことをいう。「アルキル」という用語は、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびC1-6アルキルカルボニルアルキル基も含む。アルキル基は、1〜12個の炭素を有することが好ましい。炭素数約1〜7の低級アルキルであることがさらに好ましく、炭素数約1〜4であることがさらになお好ましい。アルキル基は、飽和または不飽和でありうる。置換されている場合、その置換基としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0023】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「置換された」という用語は、官能基または化合物に含まれる1つ以上の原子を、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6アルキルカルボニルアルキル、アリール、およびアミノ基からなる群に由来する部分の1つを加えるか、これらの部分の1つで置換することをいう。
【0024】
本発明の目的では、「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む基のことをいう。アルケニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。アルケニル基は炭素数約2〜7の低級アルケニルであることがさらに好ましく、炭素数約2〜4であることがさらになお好ましい。アルケニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。
【0025】
本発明の目的では、「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基のことをいう。アルキニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。アルキニル基は炭素数約2〜7の低級アルキニルであることがさらに好ましく、炭素数約2〜4であることがさらになお好ましい。アルキニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。「アルキニル」の例としては、プロパギル、プロピン、および3−ヘキシンが挙げられる。
【0026】
本発明の目的では、「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族炭化水素環系のことをいう。芳香族環は、随意的に、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、およびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0027】
本発明の目的では、「シクロアルキル」という用語は、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0028】
本発明の目的では、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
本発明の目的では、「シクロアルキルアルキル」という用語は、C3-8シクロアルキル基で置換されたアルキル基のことをいう。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
本発明の目的では、「アルコキシ」という用語は、酸素橋を通じて親分子部分に結合している、所望の炭素原子数のアルキル基のことをいう。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびイソプロポキシが挙げられる。
【0029】
本発明の目的では、「アルキルアリール」基とは、アルキル基で置換されたアリール基のことをいう。
【0030】
本発明の目的では、「アラルキル」基とは、アリール基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0031】
本発明の目的では、「アルコキシアルキル」基という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0032】
本発明の目的では、「アルキル−チオ−アルキル」という用語は、例えばメチルチオメチルまたはメチルチオエチルなどのアルキル−S−アルキルチオエーテルのことをいう。
【0033】
本発明の目的では、「アミノ」という用語は、有機ラジカルによって1つ以上の水素ラジカルが置換されることにより、アンモニアから誘導される、当技術分野で既知の窒素含有基のことをいう。例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれ、アシルおよびアルキル置換基を有する特定のN−置換有機ラジカルのことをいう。
【0034】
本発明の目的では、「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で置換されたカルボニル基のことをいう。
【0035】
本発明の目的では、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のことをいう。
【0036】
本発明の目的では、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、非芳香族環系のことをいう。ヘテロシクロアルキル環は、随意的に、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、3〜7員環であることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例として、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、およびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基として、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびピロリジニルが挙げられる。
【0037】
本発明の目的では、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、芳香族環系のことをいう。ヘテロアリール環は、1つ以上のヘテロアリール環、芳香族または非芳香族炭化水素環、またはヘテロシクロアルキル環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロアリール基の例として、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、およびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例として、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0038】
本発明の目的では、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、および硫黄のことをいう。
【0039】
一部の実施の形態では、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルを含み、置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニル、およびメルカプトアルケニルを含み、置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニル、およびメルカプトアルキニルを含み、置換シクロアルキルは、4−クロロシクロヘキシルなどの部分を含み、アリールは、ナフチルなどの部分を含み、置換アリールは、3−ブロモフェニルなどの部分を含み、アラルキルは、トリルなどの部分を含み、へテロアルキルはエチルチオフェンなどの部分を含み、置換へテロアルキルは、3−メトキシ−チオフェンなどの部分を含み、アルコキシは、メトキシなどの部分を含み、フェノキシは、3−ニトロフェノキシなどの部分を含む。ハロは、フッ素、塩素、ヨウ素、および臭素を含むものと解されるべきものとする。
【0040】
本発明の目的では、「正の整数」は、1以上の整数を含み、当業者には当然のことながら、当業者における合理的範囲内であると解されるべきものとする。
【0041】
本発明の目的では、「結合した(linked)」という用語は、1つの基が別の基に共有的に付加すること(好ましい)または非共有的に付加することを含むと解されるべきものとする。
【0042】
「有効量」および「十分量」という用語は、本発明の目的では、当業者に理解されるような効果として、所望の効果または治療効果を達成する量を意味するものとする。
【0043】
本発明の目的では、「アデノシン」という用語は、ヌクレオシドである、アデノシンおよびデオキシアデノシンを含むと解されるべきものとする。アデノシンには、AMP、ADP、ATP、dAMP、dADPまたはdATPの形態で存在するアデノシンおよびデオキシアデノシンも含まれる。
【0044】
本発明の目的では、「アデノシン介在性の腫瘍」または「アデノシン・デアミナーゼ感受性の腫瘍」とは、投与経路に関わらず、ADAまたはその活性画分などの投与が有効である、任意の種類の腫瘍を幅広く含むものと解されるべきものとする。
【0045】
本発明の目的では、「アデノシン介在性の腫瘍の治療」または「アデノシン・デアミナーゼ感受性の腫瘍の治療」、あるいは、「アデノシン介在性の腫瘍の抑制」または「アデノシン・デアミナーゼ感受性の腫瘍の抑制」とは、症状または病状が、ADA治療をしない場合に観察される状態と比較した場合に、最小限に抑えられるか、弱小化されることを意味すると解されるべきものとする。病状の治療は、例えば、腫瘍の増殖の抑制、および/または癌細胞または組織におけるアデノシンレベルの減少によって確認することができる。
【0046】
大まかに言えば、治療は、所望の臨床反応が得られた場合に、成功とみなされるべきものとする。例えば、治療の成功は、例えば10%以上(すなわち、20%、30%、40%)の腫瘍の増殖の抑制を得られることによって定義されうる。あるいは、治療の成功は、本明細書に記載されるADA治療をせずに観察されるものと比較した場合に、当分野における技術者によって意図される他の臨床的指標を含む、癌細胞または組織におけるアデノシンレベルにおける、少なくとも20%、または好ましくは30%、さらに好ましくは40%またはそれ以上(すなわち、50%または80%)の減少をもたらすことによって定義されうる。
【0047】
さらには、記載の便宜上の単数形の語句の使用は、そのように限定されることを全く意図していない。よって、例えば、1つの酵素を含む1つの化合物についての言及は、その酵素の1つまたはそれ以上の分子のことをいう。本発明はまた、本明細書に開示される特定の構造、工程段階、および材料に限定されるのではなく、そのような構造、工程段階、および材料は幾分変化しうるものと解されるものとする。
【0048】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって限定されるであろうことから、本明細書で用いられる技術用語についても、特定の実施形態を説明する目的でのみ用いられるのであって、限定されることは意図していないと解されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0049】
したがって、本発明は、ADA酵素を、それを必要とする患者に有効量で、かつ患者の組織および/または体液に存在するアデノシンの量を低減するのに十分な期間、投与することにより、癌を含めた、腫瘍の新しい治療方法を提供する。ADA酵素は、結合型のポリマーである。増殖、転移拡散、および/または患者の免疫システムからの保護をアデノシンの存在に依存している腫瘍では、内因性のアデノシンの十分な低減が、癌の増殖、転移拡散を抑えるか、または予防し、および/または患者の免疫システムによる抗腫瘍活性の正常な作用を可能にするであろう。
【0050】
本発明に係る腫瘍のADAによる治療は、随意的に、以下に非常に詳細に論じる、1つ以上の他の適切な当技術分野で既知の抗癌治療方法および薬剤と組み合わせて、または、連携して行われる。本発明の併用療法は、本明細書に記載される化合物を有効量で、単独で、または第2の化学療法薬と同時にまたは連続して組み合わせて、投与することを含む。
【0051】
このような併用療法のための典型的な当技術分野で既知の抗癌薬としては、例えば、タクソール(商標)、ベバシズマブ(アバスチン(Avastin(商標登録))、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ネオマイシン、コンブレタスタチン、ポドフィロトキシン、TNF−α、アンギオスタチン、エンドスタチン、バスキュロスタチン(vasculostatin)、αv−β3アンタゴニスト、カルシウムイオノフォア、カルシウム流誘発剤(calcium-flux inducing agents)、それらの任意の誘導体またはプロドラッグが挙げられる。
【0052】
さらなる抗癌剤としては、化学療法薬、放射線治療薬、サイトカイン、血管新生阻害剤、アポトーシス誘導剤、または抗癌性の免疫毒素またはコアグリガンド(coaguligands)も挙げられる。このような免疫毒素の1つとして、例えば、アービタックス(Erbitux(登録商標))(セツキシマブ)がある。「化学療法薬」とは、本明細書では、悪性腫瘍の治療に用いられる古典的な化学療法剤または薬のことをいう。この用語は、抗癌作用を発揮するという点では、他の化合物も技術的には化学療法薬とされうるのが現実であるものの、便宜上、単純化して用いられている。しかしながら「化学療法薬」は、当技術分野では明確に区別される意味を有するものとされており、この標準的な意味に従って用いられている。
【0053】
したがって、本発明の方法は、癌の治療に有効であることが知られている1種類以上の化学療法薬の組合せを採用することができ、それらとしては、限定はしないが、5−アザシチジン、5−フルオロウラシルを、随意的に、ロイコボリン、5−フルオロデオキシウリジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、ミトキサントロン、アジリジニルベンゾキノン(AZQ)、カルムスチン(Bristol−Myers Squibb社製のBCNUまたはBiCNU(登録商標))、ブレオマイシン、カルボプラチン(CBDCA)、ロムスチン(CCNU)、メチル−CCNUまたはMeCCNU、クロラムブシル、クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デオキシコホルマイシン、ドキソルビシン、デオキシコホルマイシン(doxycoformycin)、DTIC (ダカルバジン)、エピルビシン、エトポシド(VP−16)、フルダラビン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イホスファミドおよびメスナ、レバミゾール(levamisol)、N−アセチルシステイン(「NAC」)、L−フェニルアラニン・マスタード、4'−(9−アクリジニルアミノ)メタンスルホン−m−アニシジド(「mAMSA」)、多剤耐性に対する当技術分野で既知の阻害剤(すなわち、MDR阻害剤)、メルファラン、メトトレキサートと組み合わせて、随意的に、ロイコボリン、ミトラマイシン、マイトマイシン−c、タンパク質に関連する多剤耐性の阻害剤(「MRP」阻害剤)、パクリタキセル、プロカルバジン、ストレプトゾトシン、N,N'N'−トリエチレンチオホスホラミド(「チオTEPA」)、トポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの阻害剤、タクソール、ビンブラスチン、ビンクリステイン(vincristein)、ビンクリスチン、ビンデシン、テニポシド(VM−26(登録商標))、および他のものなど枚挙にいとまがないが、これらと組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明の方法と組み合わせて用いられることが意図されている他の癌治療方法としては、X線、γ線の直接照射または標的の断層撮影を用いた照射、放射能を有するペレットまたは「シード」の埋め込みを用いた癌組織の治療、ホウ素化合物で準備刺激した組織への中性子ビームの放射、および/または他の種類の当技術分野で既知の粒子線治療が挙げられる。
【0055】
本発明の方法と組み合わせて、または連携して随意的に投与される、さらなる抗腫瘍剤または抗癌剤(抗新生物薬)としては、参照することによりその全体が本明細書に援用される、“GOODMAN AND GILMAN'S, THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS”, TENTH EDITION, Eds. Hardman and Limbirdに記載されるものが挙げられる。
【0056】
本発明の認識をより深めるため、以下の用語を定義する。
【0057】
本明細書では、「アデノシン」への言及は、他に特記しない限り、デオキシアデノシン、およびインビボで存在する当技術分野で知られているそれらの異型および誘導体もまた包含している。
【0058】
アデノシン・デアミナーゼ、すなわちADAへの言及は、精製された天然酵素、例えば、精製天然ADA、組換えヒトまたはウシADA、ならびにそれらの異型、多型、および誘導体を含めた、任意の当技術分野で既知の酵素を含む。ウシ起源から精製されたADA酵素は、Cys74残基がシステインで天然にキャップ化または保護化された、配列番号5に従った配列を有し、配列番号5のADAをコードする遺伝子から予想される6C−末端残基が存在しない。しかしながら、本発明は、予測される6C−末端残基の有無にかかわらず、天然および組換えにより生じる、代替となる対立遺伝子および多型を含む、天然ウシADAにおける代替となる異型を用いて行なうことができることが意図されている。ウシADAの多型としては、例えば、198位のリジンに代わるグルタミン、245位のトレオニンに代わるアラニン、351位のグリシンに代わるアルギニンが挙げられる。
【0059】
ADA酵素の好ましい誘導体としては、変異していない組換えADA酵素と比べて安定性を向上させるために変異させた、組換えにより産生させたADA酵素を含む。これらには、例えば、溶媒に曝露させた酸化されうるCys残基を、適切な酸化されないアミノ酸残基に置換するための、配列番号:5および/または上記多型を1つ以上含む配列番号:5から改変修飾された組換えADA酵素がある。このような酸化されない残基には、任意の当技術分野で既知の天然アミノ酸残基および/またはそれらの任意の当技術分野で既知の誘導体が含まれる。例えば、ウシまたはヒト起源から最初に単離された遺伝子から発現させた成熟組換えADAは不安定なCys74残基を有しており、例えばSer74などの酸化されないアミノ酸残基と置換することが好ましい。このような組換えADA酵素は、配列番号:1(ウシADAの構造)および配列番号:3(ヒトADAの構造)によって例証されている。配列番号:2および配列番号:4は、大腸菌(E. coli)の発現にとって最適化されたコドンである、同一の発現に有用なDNA分子を例証するものである。このような組換えADAの突然変異タンパク質、およびこれらタンパク質の生成および精製に関する更なる詳細は、参照することによりその全体が本明細書に援用される、本願と同日に出願された「安定な組換えアデノシン・デアミナーゼ(Stable Recombinant Adenosine Deaminase)」という発明の名称の米国仮特許出願第60/913,009号明細書の優先権の利益を主張する、共同出願された米国特許出願第12/105,913号明細書に提供されている。ベクターおよび精製方法における具体的詳細は、その明細書の、特に実施例の部分、最も詳細には実施例1〜4に記載されている。
【0060】
あるいは、ADA酵素は、ADAタンパク質を実質的に不活性化させることなく、反応性のシステインをキャップするのに十分な反応条件下でADA酵素を十分な量のキャッピング剤で処理することで、溶液に曝露させた酸化されうるCys残基をキャップ化することにより、必要に応じて、安定化させることができる。この方法は、突然変異タンパク質または野生型のADA酵素のいずれかである、組換えにより産生させたADAを用いて行なうことが好ましい。
【0061】
例えば、キャッピング剤としては、限定はしないが、酸化型グルタチオン(好ましい)、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸、シスチン、および当業者に知られている他のジチオール、およびそれらの混合物が挙げられる。本明細書に記載される方法の反応段階の間に含まれるキャッピング剤の量および濃度は、使用する具体的なキャッピング剤および技術者のニーズに応じて幾分異なるが、過度の実験は必要としないであろう。プロトタイプとして酸化型グルタチオンを使用して、rhADAなどの組換えタンパク質と反応させる場合に用いられる濃度は、約25μM〜約100mMの範囲でありうる。酸化型グルタチオンは、約5nM〜約25mMの濃度で組換えタンパク質と反応させることが好ましい。
【0062】
キャッピング剤と組換えタンパク質との反応の際に用いられる反応条件は、約6.5〜約8.4のpH、好ましくは約7.2〜約7.8のpHを有する水溶液を使用する工程をさらに有してなる。加えて、水溶液は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、Tris、およびHepesなどの適切な緩衝液、ならびにそれらの混合物を、約10〜約150mMの濃度で含むことが好ましい(随意的に、10mM未満または150mMよりも高い、この緩衝液の範囲外でもキャップ化を行なうことができる)。反応条件は、さらに、タンパク質の分解に影響を及ぼさないであろう温度、すなわち、約4〜37℃で反応を進行させる工程を有してなる。随意的に、この温度の範囲外、例えば0〜4℃未満または37℃より高い温度範囲でキャップ化を行なうことができる。反応は、反応性のシステインの所望される安定化を実現するのに十分な時間、行なわれる。単に一例を挙げれば、反応は約5秒〜約8時間(例えば、一晩)行われる。
【0063】
キャップ化された、安定化された組換えADAについての更なる詳細は、参照することにより本明細書に援用される「安定化タンパク質(Stabilized Proteins)」という発明の名称で共同出願された特許文献4、特に、その実施例部分に提供されている。
【0064】
さらには、記載の便宜上の単数形の語句の使用は、そのように限定されることを全く意図していない。よって、例えば、1つの酵素を含む1つの組成物についての言及は、その酵素の1つ以上の分子のことをいう。本発明はまた、本明細書に開示される特定の構造、工程段階、および材料に限定されるのではなく、そのような構造、工程段階、および材料は幾分変化しうると解されるものとする。
【0065】
A.ポリマー−ADA複合体
ADAの好ましい形態は、ポリマー結合型の酵素の形態である。本発明のADA−ポリマー複合体は、一般に、式(I):
(I) [R−NH]z−(ADA)
に相当し、式中、
(ADA)は、アデノシン・デアミナーゼ酵素、あるいは随意的にその誘導体または断片を表し、
NH−は、ポリマーに結合する、ADA、その誘導体または断片に認められるアミノ酸のアミノ基であり、
(z)は正の整数であり、約1〜約80であることが好ましく、約5〜約80がさらに好ましく、約11〜約18がさらになお好ましく、
Rは、放出可能な形態または放出できない形態でADAに結合する、実質的に非抗原性のポリマー残基を含む。
【0066】
複合体の非抗原性のポリマー残基部分(R)は、ポリマー系のシステムの限定されないリストから選択することができ、例えば、次のものが挙げられる:
【化1−1】

【化1−2】

【0067】
式中:
10-11およびR22-23は、同一でも異なっていてもよく、独立して選択される非抗原性ポリマー残基であり、
3-9、R12-21およびR24(下記参照)は、同一または異なっており、水素、C1-6アルキル、C3-12分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1−6ヘテロアルコキシの中からそれぞれ独立して選択され、
Arは、 多置換の芳香族炭化水素または多置換の複素環基を形成する部分であり、
1-11およびY13は、同一でも異なっていてもよく、O、S、およびNR24から独立して選択され、
Aは、アルキル基、標的部分、検査薬、および生物活性部分の中から選択され、
Xは、O、NQ、S、SOまたはSO2であり、ここでQはH、C1-8 アルキル、C1-8分岐鎖アルキル、C1-8置換アルキル、アリール、またはアラルキルであり、
ZおよびZ’は、標的細胞内に能動輸送される部分、疎水性部分、二官能性の結合部分およびそれらの組合せの中から独立して選択され、
1-6およびL8は、同一でも異なっていてもよく、独立して選択される二官能性リンカー基であり、
(a)、(c)、(d)、(f)、(g)、(i)、(j)、(j')、(k)、(l)、(n)、(o)、(p)、(q)および(t)は、 同一でも異なっていてもよく、好ましくは、ほとんどの態様において、独立して0または正の整数であり、
(b)、(e)、(r)、(r')、(s)、(h)、(h')および(m)は、同一でも異なっていてもよく、独立して0または1であり、
mPEGはメトキシPEGであり、
(u)は、約2,000〜約100,000、 好ましくは約4,000〜約45,000の総分子量を有するポリマーを提供する、正の整数である。
【0068】
上記において、Y1-11およびY13がOであり、R3-8、R12-21およびR24が、それぞれ独立して水素またはC1-6 アルキルのいずれかであることが好ましく、メチルおよびエチルが最も好ましいアルキルであり、R7-9はCH3であることが好ましい。
【0069】
本発明の更なる態様では、複合体のポリマー部分は、ADAに、結合部分を複数提供するものでありうる。このような系の限定されない例としては下記のものが挙げられる:
【化2】

【0070】
ここで、すべての変数は、上記のものと同一である。
【0071】
あるいは、および/または好ましくは、複数のPEG鎖がADAに付加している。これらの態様では、ADAポリマー複合体は、酵素上のLysのε−アミノ基に付加する、少なくとも5本から最大で80本のポリエチレングリコール鎖を含みうるが、酵素上のLysのε−アミノ基に付加する約11〜18本のPEG鎖を含むことが好ましい。
【0072】
ADAは、Lys結合を介して、酵素分子あたり約11〜約18のPEG分子と結合するが、PEGのADAに対する比は、特定の臨床的症状に適合させるため、一体となった複合体の物理的性質および力学的性質を改変する目的で、変化させることができる。
【0073】
ADA複合体を作るのに使用することのできる活性化ポリマーは、当然ながら、上記ポリマー部分と直接結合するであろう。重要な相違点は、本明細書で、B1として指定されることのある脱離基または活性化基の存在であり、これは、ADAに認められるアミン基(例えばリジンのε−アミン基)へのポリマー系の付加を促進する。したがって、化合物(i)〜(xiii)は、下記のような脱離基または活性化基:
【化3】

【0074】
または、他の適切な脱離基または活性化基を含み、例えば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシフタルイミジル、イミダゾリル、O−アシル尿素、ペンタフルオロフェノールまたは2,4,6−トリ−クロロフェノール、または、複合体形成反応の後にADAが付加する場所に認められる、当業者にとって明らかな他の適切な脱離基などが挙げられる。
【0075】
一部の好ましい活性化PEGとしては、参照することによりその内容が本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第5,122,614号、同第5,324,844号、同第5,612,460号、および同第5,808,096号(炭酸スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール(SC−PEG)および関連する活性化PEG類)、および米国特許第5,349,001号(環状イミドチオン活性化PEG類)の各明細書に開示されるものが挙げられる。当業者には明らかなように、これらの複合体形成反応は、典型的には、数倍モル過剰の活性化PEGを用いて、適切な緩衝液中で行なわれる。上述のSC−PEGのような直線PEGを用いて調製される一部の好ましい複合体は、平均して、酵素あたり約1〜約80のPEG鎖を含みうる。その結果として、これらには、数百倍、例えば、200〜1000倍のモル過剰を用いることができる。分岐鎖ポリマーおよび酵素に付加したポリマーに用いられるモル過剰はもっと小さく、以下に記載するのと同一のことが記載される特許および特許出願記載の技術を用いて決定することができる。
【0076】
本発明の目的では、 活性化基は、ADA、例えばLysに認められるアミン基(求核性)と反応することが可能な基と解されるべきものとする。
【0077】
本発明の目的では、前述のものは、活性化ポリマーリンカーとも称される。ポリマー残基は、ポリアルキレンオキサイド系であることが好ましく、ポリエチレングリコール(PEG)系であることがさらに好ましく、ここでPEGは、直鎖、分岐鎖、またはマルチアームである。
【0078】
上記ポリマーを参照すると、Arは、多置換の芳香族炭化水素または多置換の複素環基を形成する部分であることがわかる。重要な特徴は、Ar部分が事実上、芳香族化合物であることである。一般に、芳香族化合物となるには、π電子が、環状の分子の平面の上下両方の「雲」の中で共有されなければならない。さらには、π電子の数がヒュッケル則(4n+2)を満たさなければならない。当業者は、無数の部分が、芳香族化合物の部分についての要求を満たし、したがって本発明の用途に適していることを理解するであろう。
【0079】
本発明の一部の好ましい態様では、ベンジル基の脱離またはトリメチルロックのラクトン化に基づくポリマー系の活性化ポリマーリンカーが、参照することによりその内容が本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第6,180,095号、同第6,720,306号、同第5,965,119号、同第6,624,142号、および同第6,303,569号の各明細書にしたがって調製される。本発明においては、次の活性化ポリマーリンカーが好ましい:
【化4】

【0080】
本発明の1つの代替となる態様では、ADAポリマー複合体は、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第7,122,189号および同第7,087,229号の各明細書、ならびに米国特許出願第10/557,522号、同第11/502,108号および同第11/011,818の各明細書に記載されるものなど、特定のビシンポリマー残基を用いて調製される。これら特許出願のそれぞれの開示は、参照することにより本明細書に援用される。好ましい活性化ポリマーのいくつかとして、下記のものが挙げられる:
【化5】

【0081】
上記脱離基および活性化基は適切な基のうちの1つでしかなく、本明細書で言及する他のものもまた過度の実験をすることなく用いることができると解されるものとする。
【0082】
別の態様では、活性化ポリマーリンカーは、参照することによりそれぞれの開示が本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第5,681,567号、同第5,756,593号、同第5,643,575号、同第5,919,455号、同第6,113,906号、同第6,153,655号、同第6,395,266号、同第6,638,499号、同第6,251,382号および同第6,824,766号の各明細書に記載されるような分岐鎖ポリマーを使用して調製される。
【0083】
このような活性化ポリマーとして、以下に代表されるポリマー系(iv)〜(ix)が挙げられる:
【化6】

【0084】
ここでB1は、活性化基であり、すべての変数は、先に定義したとおりである。
【0085】
さらに別の態様では、活性化ポリマーにヒンダードエステル系リンカーを用いることができる。参照することによりその内容が本明細書に援用される、「ヒンダードエステル系の生体分解性リンカーを有するポリアルキレンオキサイド(Polyalkylene Oxides Having Hindered Ester-Based Biodegradable Linkers)」という発明の名称の国際出願第PCT/US07/78593号パンフレットを参照のこと。例えば、このような化合物の限定されないリストとして、下記のものが挙げられる:
【化7】

【0086】
ここで、(u)は約10〜約2300の範囲の整数であって、約4,000〜約45,000の総分子量を有するポリマーを提供することが好ましい。
【0087】
1つの好ましい実施の形態では、活性化ポリエチレングリコールは、タンパク質と共にウレタン結合またはアミド結合を提供するものである。
【0088】
高純度の末端カルボン酸を有するポリマーの調製方法は、参照することによりその内容が本明細書に援用される、米国特許出願第11/328,662号明細書に記載されている。その方法は、最初に、ポリアルキレンオキサイドの第3級アルキルエステルを調製し、続いてそのカルボン酸誘導体へと転換する。その方法のPAOカルボン酸の調製の最初の工程は、ポリアルキレンオキサイド・カルボン酸のt−ブチルエステルなどの中間体を形成する工程を有してなる。この中間体は、カリウムt−ブトキシドなどの塩基の存在下で、PAOをt−ブチルハロ酢酸と反応させることにより形成される。t−ブチルエステル中間体が形成されると、92%を超える純度で、好ましくは97%、さらに好ましくは99%、最も好ましくは99.5%を超える純度で、ポリアルキレンオキサイドのカルボン酸誘導体を容易に得ることができる。
【0089】
さらに別の態様では、第3級アミン基を有するポリマーを用いてADA複合体を調製することができる。高純度の、第3級アミンを含むポリマーの調製方法は、参照することによりそれぞれの内容が本明細書に援用される、米国特許出願第11/508,507号および同第11/537,172号の各明細書に記載されている。例えば、アジドを有するポリマーは、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン系の還元剤、またはNaBH4などのアルカリ金属ホウ化水素還元剤と反応する。あるいは、脱離基を含むポリマーを、メチル−t−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNMeBoc)またはジ−t−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNBoc2)などの保護化されたアミン塩と反応させて、その後、保護化アミン基を脱保護する。これらの方法で形成される第3級アミンを含むポリマーの純度は、約95%よりも高く、99%よりも高いことが好ましい。
【0090】
1.実質的に非抗原性のポリマー
上述のように、R10-11、およびR22-23は、それぞれ、好ましくは実質的に非抗原性の、ポリアルキレンオキサイド(PAO)などの水溶性のポリマー残基であることが好ましく、mPEGのようなポリエチレングリコールであることがさらに好ましい。説明のためであって限定はしないが、ポリエチレングリコール(PEG)の残基部分のR10-11およびR22-23は、次の中から選択されうる:
【化8】

【0091】
ここで、
(u)は重合度、すなわち約10〜約2,300であり、
25は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6 置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6ヘテロアルコキシの中から選択され、
Jはキャッピング基、すなわち、ポリマーの末端に認められる基であって、一部の態様では、NH2 (またはCH2CH2NH2)、H、SH(またはCH2CH2SH)、CO2H(またはCH2CO2H)、好ましくはメチルであるC1-6アルキル、または他のPEG末端活性化基のいずれかから選択することができ、そのような基は当業者に理解されている。
【0092】
1つの特に好ましい実施の形態では、R10-11およびR22-23には以下のものが挙げられる:
【化9】

【0093】
ここで(u)は正の整数であり、ポリマー部分の平均総分子量が約2,000〜約100,000の範囲になるように選択されることが好ましい。R10-11およびR22-23が独立して、約4,000〜約45,000の平均総分子量を有することがさらに好ましく、約5,000の平均総分子量を有することが最も好ましい。技術者のニーズに合わせるため、他の分子量もまた意図されている。
【0094】
PEGは、一般に、下記の構造で表すことができる:
【化10】

【0095】
10-11およびR22-23は、この構造式の残基を含むことが好ましい。ポリマーの重合度はポリマー鎖における繰り返し単位の数で表され、ポリマーの分子量によって決まる。
【0096】
あるいは、本発明のポリエチレングリコール(PEG)の残基部分は下記の構造で表すことができる:
【化11】

【0097】
ここで、
31およびY33は独立して、O、S、SO、SO2、NR33または結合であり、
32は、O、S、またはNR34であり、
31-34は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6 置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択され、
(a11)、(a12)、および(b11)は、独立して、0または正の整数であり、0〜6が好ましく、0、1、または2がさらに好ましく、
(u)は約10〜約2300の正の整数である。
【0098】
例として、PEGは次の限定されない方式で官能化することができる:
【化12】

【0099】
ここで、
31、R35およびR36は、独立して、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、および置換C1-6アルキルの中から選択され、
(m11)は0または正の整数であり、1または2が好ましく、
34はOまたはSであり、
(u)は重合度を表す。
【0100】
これらの態様では、メチルなどのキャッピング基(J)は、PEGの末端に付加している。
【0101】
例えば、本発明の複合体は、参照することによりその開示が本明細書に援用される、日油株式会社の薬物送達システムカタログ第8版(2006年4月)に記載されるようなマルチアームPEG−OHまたは「スター型PEG」製品を、前述の米国特許第5,122,614号または同第5,808,096号の明細書に記載される活性化技術を使用して、適切な活性化ポリマーに転換する工程を有してなる方法によって調製することができる。参照することにより本明細書に援用される、Shearwater Corporationの2001年のカタログ「生物医学的応用のためのポリエチレングリコールおよび誘導体(Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application)」も参照のこと。
【0102】
マルチアームポリマーは、4本以上のポリマーアームを含み、4本または8本のアームが好ましい。説明のためであって限定はしないが、マルチアーム・ポリエチレングリコール(PEG)は次の化学式でありうる:
【化13】

【0103】
ここで、
(x)は0または正の整数、すなわち、約0〜約28であり、
(n)は重合度である。
【0104】
本発明の1つの特定の実施の形態では、マルチアームPEGは次の構造を有する:
【化14】

【0105】
ここで(n)は正の整数である。本発明の1つの好ましい実施の形態では、ポリマーは、約2,000〜約100,000の総分子量を有し、4,000〜45,000であることが好ましい。
【0106】
具体的には、PEGは、次の構造でありうる:
【化15】

【0107】
ここで、
(u')は約10〜約570の整数であり、4,000〜45,000の総分子量を有するポリマーを提供することが好ましく、残基の最大3つの末端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャップ化される。
【0108】
一部の好ましい実施の形態では、組換えタンパク質への付加を促進するため、PEGの4つのアームのすべてが、適切な官能基、すなわちSCなどに転換される。転換前のこのような化合物としては、下記のものが挙げられる:
【化16−1】

【化16−2】

【0109】
本明細書に含まれるポリマー物質は、室温で水溶性であることが好ましい。このようなポリマーの限定されないリストとしては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールなどのポリアルキレンオキサイド・ホモポリマー、それらの共重合体および、水溶性が保持されることを条件とした、それらのブロック共重合体が挙げられる。
【0110】
さらなる実施の形態では、および、PAO系ポリマーの代用として、R10-11およびR22-23は、それぞれ、デキストラン、ポリビニル・アルコール、炭水化物系のポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキサイド、および/またはそれらの共重合体などの1つ以上の有効な非抗原性の材料の中から、それぞれ随意的に選択される。参照することによりその内容が本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第6,153,655号明細書も参照されたい。同一タイプの活性化は、PEGなどのPAOに関しては、当業者には、本明細書に記載されるように用いられるものと理解されよう。当業者は、前述のリストが単に説明のためであって、本明細書に記載される品質を有するすべてのポリマー材料が意図されており、ポリプロピレングリコールなどの他のポリアルキレンオキサイド誘導体も意図されているものと理解するであろう。
【0111】
2.二官能性リンカー基
本発明の多くの態様では、L1-6 およびL8は、例えばR10-11および/またはR22-23などのポリマー鎖の付加を促進する連結基である。結合(linkage)は、直接、または当業者に既知のさらなるカップリング基を介して提供されうる。本発明のこの態様では、L1-6 およびL8は、同一でも異なっていてもよく、二官能性およびヘテロ二官能性の脂肪族および芳香族−脂肪族基、アミノ酸など、当業者に既知のさまざまな基から選択することができる。よって、L1-6 およびL8は同一でも異なっていてもよく、下記のような基が挙げられる:
【化17】

【0112】
好ましくは、L1-6 およびL8は、下記の中から選択される:
【化18】

【0113】
あるいは、適切なアミノ酸残基は、既知の天然L−アミノ酸、いくつか例を挙げると、例えばアラニン、バリン、ロイシンなど、および/またはそれらの組合せから選択することができる。L1-6 およびL8は、例えば、約2〜約10のアミノ酸残基の大きさのペプチドを含みうる。
【0114】
天然アミノ酸の誘導体および類似体、ならびに、疎水性または非疎水性にかかわらず、さまざまな当技術分野で既知の非天然アミノ酸(DまたはL型)もまた、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0115】
3.Z部分およびその機能
本発明の1つの態様は、ZおよびZ'はL7−C(=Y12)であり、ここでL7は、L1-6を定義する基の中から選択される二官能性のリンカーであり、Y12は、Y1を定義する基と同一の基の中から選択される。本発明のこの態様では、Z基はADAとポリマー送達システムの残りの部分との結合としての働きをする。本発明の他の態様では、Zは、標的細胞内に能動輸送される部分、疎水性部分、およびそれらの組合せである。Z'が存在する場合は、Z'は二官能性リンカー、標的細胞内に能動輸送される部分、疎水性部分、およびそれらの組合せとして機能しうる。
【0116】
本発明のこの態様では、放出可能なポリマー系は、インビボにおける加水分解によってADAからポリマーが切り離され、Z部分に結合した状態のままの酵素を細胞外液へと放出するように調製される。例えば、一部の可能性のあるZ−Bの組合せは、ロイシン−ADAおよびGly−Phe−Leu−Gly−ADAである。
【0117】
B.ADA複合体の調製
説明のためであるが、適切な複合体形成反応は、ADAを本明細書に記載される適切な活性化ポリマー系と反応させる工程を有してなる。反応は、約6.5〜8.5のpHを用い、PBS緩衝系などの利用を含めたタンパク質修飾の分野における当業者に周知の条件を使用して行うことが好ましい。大抵の場合、過剰の活性化ポリマーをADAと反応させることが意図されている。
【0118】
この種の反応は、ADAに付加する1つ以上のポリマーを含む複合体を形成する結果となることが多い。認識されるように、多くの場合、さまざまな画分を分離し、さらに均質な生成物を提供することが望ましいであろう。本発明のほとんどの態様では、反応混合物を回収し、適切なカラム樹脂に負荷し、緩衝液のレベルを上昇させるにつれ、所望する画分が連続的に溶出される。各画分を適切な分析用具によって分析し、さらなる処理をする前に結合タンパク質の純度を決定する。合成経路および選択される活性化ポリマーに関わらず、複合体は本明細書に定義される式(I)に一致するであろう。本明細書に記載される合成技術から得られる一部の好ましい複合体として、下記のものが挙げられ、
【化19】

【0119】
ここでBはADAである。
【0120】
本発明に従って調製される更なる複合体としては、下記のものが挙げられ、
【化20】

【0121】
ここですべての変数は上記のものと同一であり、BはADAである。
【0122】
更なる複合体としては、下記のものが挙げられ、
【化21】

【0123】
ここでBはADAである。
【0124】
特に好ましい複合体としては下記のものが挙げられ、
【化22】

【0125】
ここでmPEGの分子量は約4,000〜約45,000である。
【0126】
ビシン系ポリマーシステムを用いる場合、2つの好ましい複合体として、下記のものが挙げられ、
【化23】

【0127】
ここでmPEGの分子量は上記のものと同一である。
【0128】
さらに好ましい複合体としては下記のものが挙げられる。
【化24】

【0129】
ADAのPEG化は、タンパク質あたりの全PEG付加数、PEGポリマーの大きさ、およびPEGリンカーの設計のため、経験的に最適化されるであろう。PEG化の最適化の評価にとって重要なPEG化ADAの特徴付けには、インビトロ分析(例えば、酵素の活性および安定性)およびインビボ分析(例えば、薬物動態および薬力)の両方が含まれる。
【0130】
C.治療すべき腫瘍
本発明の方法は、治療されるべきヒトまたは動物の血液および/または組織のアデノシンまたはデオキシアデノシンのレベルを低減させる余地のある癌を含むすべての種類の腫瘍の治療に適用することができる。広範には、これらには血液の腫瘍および固形腫瘍が含まれる。固形腫瘍の中には、アデノシンのレベルの低下によって患者の免疫系が腫瘍および/または複数の腫瘍をさらに有効に抑制するようになる場合に抑制されるものが含まれ、それは、例えばすでに低酸素状態にある腫瘍など、血液の供給を阻害するアデノシンのレベルを低下させることによって抑制される。
【0131】
さらに好ましくは、本発明の方法による治療に感受性の腫瘍は固形腫瘍であり、これには、アデノシンの組織内濃度の低下を伴う、血管新生刺激の低減という追加的効果が有効に作用する。
【0132】
治療されるべき腫瘍としては、単なる例証として、免疫系、骨格系、筋肉および心臓、乳房、消化管、中枢および末梢神経系、腎臓系、生殖器系、呼吸器系、皮膚、関節を含む結合組織系、脂肪組織、血管壁を含む循環系などに由来するものが挙げられる。
【0133】
骨格系の腫瘍としては肉腫および芽細胞腫の両方が挙げられ、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、軟骨芽細胞腫などである。筋肉および心臓の腫瘍には、骨格筋および平滑筋の両方が挙げられ、例えば、平滑筋腫(平滑筋の良性腫瘍)、平滑筋肉腫、横紋筋腫(骨格筋の良性腫瘍)、横紋筋肉腫、心臓肉腫などが挙げられる。消化管の腫瘍としては、例えば、口腔、食道、胃、小腸、結腸および結腸直腸の腫瘍、ならびに唾液腺、肝臓、膵臓、胆管などの消化系分泌器官が挙げられる。
【0134】
中枢神経系の腫瘍には、脳、網膜、および脊髄の腫瘍が挙げられ、関連する結合組織、骨、血管、または神経組織に由来しうる。末梢神経系の腫瘍もまた、治療することが意図されている。さらには、末梢神経系の腫瘍には悪性末梢神経鞘腫が含まれる。
【0135】
腎臓系の腫瘍には、例えば、腎細胞癌ならびに尿管および膀胱の腫瘍など、腎臓の腫瘍が含まれる。生殖器系の腫瘍には、子宮頚部、子宮、卵巣、前立腺、睾丸、および関連する分泌腺が挙げられる。免疫系の腫瘍には、血液系の腫瘍および固形腫瘍の両方があり、例えば、ホジキンおよび非ホジキンの両方のリンパ腫が挙げられる。
【0136】
呼吸器系の腫瘍としては、鼻腔、気管支および肺の腫瘍が挙げられる。乳房の腫瘍には、例えば、小葉癌および腺管癌の両方が挙げられる。
【0137】
治療すべき悪性腫瘍の特によく見られるタイプとしては、例証としてほんの数例を挙げれば、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、皮膚黒色腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫(筋肉から生じる)、網膜芽腫、骨肉腫、およびユーイング肉腫などである。
【0138】
D.投与量の選択
技術者は、薬が使用される状況において、動物かヒトかに関わらず、「Adagen」の用量が、腫瘍の臨床反応および個別の患者の副作用プロフィールに応じて個々に行われることを認識するであろう。以下に提供する研究例では、最大用量とは、許容される技術的に投与可能な最大用量である。「Adagen」は、250U/mLで市販されている。これは、0.2mlの「Adagen」を注射されたおよそ25gのマウスにとって2000U/kgに相当する。以下に提供される研究例で用いられる最少用量は、ヒトの臨床用量に近い。ヒト重症複合型免疫不全症患者の治療における推奨される投薬スケジュールは、初回投与では10U/kgであり、2回目投与では15U/kg、3回目投与では20U/kgである。最大単回投与量の30U/kgに至るまで、5U/kg/週ずつさらに増加させることが可能である。下記例示されるプロトコルにおける用量(100U/kg)は、子供におけるおよそ12U/kgの臨床用量に等しい、マウスの投与量である。
【0139】
酵素の量に基づいた用量は、例えば、約0.10U/kg〜約30U/kgまたはそれ以上の範囲であり、約0.5U/kg〜約20U/kgが好ましく、約0.5U/kg〜約5U/kgなど、約0.5U/kg〜約12U/kg(患者の体重のkgあたり)の範囲であることがさらに好ましい。1週間の総投与量は、服用者が許容できるように、最大40U/kgまたはそれ以上でありうる。服用者が許容できるように、最大単回投与量の30U/kgまたはそれ以上に至るまで、5U/kg/週のさらなる増加が認められる。一般に、15U/kgの「Adagen」を毎週注射した後の血漿におけるADA活性の平均トラフレベルは20〜25μmol/時間/mlの範囲である。
【0140】
当然ながら、技術者は、ポリマー結合ADAの用量が、具体的ポリマーの大きさ、リンカー化学、および価数によって調整されうることを認識するであろう。例えば、ポリマーあたり2つまたは4つのADA酵素を含むポリマー複合体の投与計画は、ADAの任意の具体的ポリマー複合体の溶液のmlあたりのADAの単位にしたがって調整されよう。
【0141】
注入により、ADAまたはADAのPEG複合体を提供する際、至適用量の範囲は、血漿のアデノシンレベルをモニターすることによって調整することができる。一般には、約10〜100μmol/時間/ml、好ましくは約15〜約35μmol/時間/mlの範囲で血漿ADA活性(トラフレベル)が維持されるであろう投与量(37℃でアッセイ)を服用者に提供し、赤血球アデノシンの減少、すなわち、パック内の赤血球におけるdATPが約0.001〜0.057μmol/ml以下、好ましくは約0.005〜約0.015μmol/mlであるか、または、注入前サンプルで測定して、正常アデノシンレベルでのdATPが、総赤血球アデノシン(すなわち、ATP+dATP含量)の約1%以下であることを実証することが望ましい。dATPの正常値は約0.001μmol/ml未満である。
【0142】
ADAの投薬情報の詳細は、参照することによりその内容が援用される、「Adagen」(Enzon,Inc.社製)に挿入される処方箋に記載されている。
【実施例】
【0143】
以下の実施例は、本発明のさらなる認識を提供する役割をすることであり、本発明の効力範囲を多少なりとも制限することを意味するものではない。
【0144】
実施例1
DU145における「ADAGEN」の抗腫瘍効果
ヒト前立腺腫瘍異種移植モデル
A)試験系
種類: ネズミ、ハツカネズミ
系統: 胸腺欠損ヌードマウス
供給業者: Harlan−Sprague Dawley社
性別: 雌
平均初期体重: 27.2g
研究個体数: 40
順応期間: 到着後7日間
識別: ケージ番号および耳パンチ
【0145】
B)方法
実験計画
DU145ヒト前立腺腫瘍細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(米国バージニア州マナッサス所在)から入手した。腫瘍は、2.0×106 DUの145細胞/マウスの右の脇腹への皮下注射によって、ヌードマウスに確立された。腫瘍増殖を週2回モニターし、触診で一度測定した。腫瘍が78mm3の平均体積に達したときに、マウスを各実験群(8匹/群)に分けた。マウスを、2000、500、または100IU/kgのいずれかの量の「Adagen」で、週2回、5週間治療した。陽性対照として、「Avastin」(ベバシズマブ、抗VEGFモノクローナル抗体)を5mg/kg用量で、「Adagen」と同一の頻度でマウスに与えた。下記の表1に示すように実験群を用意した。投薬の初日を第1日目とした。各マウスの腫瘍体積は、カリパスを用いて二次元で測定して決定し、次式を使用して計算した: 腫瘍体積=(長さ×幅2)/2)。マウスの体重および腫瘍の大きさは、研究の開始時および8週間の間、週2回測定した。
【表1】

【0146】
投与量の選択
「Adagen」または「Avastin」 を、週2回、5週間にわたり、腹腔内(「i.p.」)経路によって投与された(合計10回投与)。
【0147】
アダジェン:ロット番号:NV0604、濃度:229IU/ml
アバスチン:ロット番号:M66781、濃度:25mg/ml
用量計算は、第1日目の体重に基づいて行った。
【0148】
臨床検査
到着時にマウスを視覚的に検査した。続いて最初の腫瘍の触診の後、臨床的症状、一般的な行動変化についてマウスを個別に週2回検査し、体重をモニターした。致死および臨床的症状を記録した。食物および水の消費についてはモニターしなかった。開いた壊死病斑を示す腫瘍を有するマウスを殺処分した。体重が20%を超えて減少したマウスも、人道的に殺処分した。
【0149】
統計分析:
さまざまな処置による腫瘍体積の%変化の差異を、一元配置分散分析を用いて比較した。全対多重比較は、Holm−Sidak法を用いて行った。
【0150】
C)結果
用いられる用語の定義
(a)最初の腫瘍体積の%:(任意の日における腫瘍体積/第1日目における腫瘍体積)×100
(b)腫瘍体積の%変化:[(任意の日における腫瘍体積−第1日目における腫瘍体積)/第1日目における腫瘍体積]×100
(c)%腫瘍増殖阻害(TGI):[(対照群の平均腫瘍体積−治療群の平均腫瘍体積)/対照群の平均腫瘍体積]×100
(d)腫瘍退縮は、第1日目と比較した負の腫瘍体積として定義される。
(e)治癒は、人の肉眼で観察される腫瘍の完全な欠如として定義される。
【0151】
実験開始時における平均の腫瘍の大きさは、78mm3であった。実験開始時における平均体重は27.20gであった。マウスのすべての群で体重が増加し、実験の終わりまでに種々の群におけるマウスの体重は、治療開始前の体重の20〜25%増加した。実験は第57日目に終了し、その時点では、動物の大部分は、潰瘍化した腫瘍を有するか、1500mm3を超える腫瘍体積を有するかのいずれかであった。
【0152】
下記表2および3に、実験第49日目に見られた最終結果をまとめ、「Adagen」で治療した動物および「Avastin」で治療した動物について群の生残率についての比較を提供する。対照群における腫瘍は実験期間全体を通じて、着実に増加した。第49日目には、平均腫瘍体積の大きさは、783.1(±556.2)mm3であった。腫瘍増殖の%変化は833.3 %(±622.7)であった。「Adagen」での治療は、3種類の用量レベルのすべてにおいて、腫瘍増殖の阻害に有効であった。治療群のすべてにとって、投薬の最終日(第33日目)まで、緩やかな速度で腫瘍が増殖し、その後、腫瘍の増殖速度は速まった(データ示さず)ことに注意すべきである。この観察は、「Adagen」の3種類の用量レベルにおける腫瘍体積の%変化が第36日目までの対照群のものとは顕著に異なる(P<0.05)(データ示さず)という事実と一致する。
【0153】
このことは、「Adagen」が腫瘍増殖における細胞静止作用を有することを示唆している。第36日目の後、実験の最終日まで、腫瘍体積における%変化は対照群のものと統計的な差異はないが、「Adagen」での治療は、検出可能なほどの腫瘍増殖阻害に至る。特に、2000IU/kgの「Adagen」で治療された腫瘍は第49日目において343.0(±249.8)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は424.2%(±360.6)であった。2000IU/kgの「Adagen」では、56%の腫瘍増殖阻害を示した。
【0154】
500IU/kgの「Adagen」で治療した腫瘍は、第49日目において696.3(±290.4)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は797.6%(±492.7)であり、最初の腫瘍からの変化は897.6%(±492.7)であった。腫瘍増殖阻害は11.1%であった。この群の腫瘍は、第40日目までは他の「Adagen」で治療された群と同様の腫瘍増殖速度を有しており、その後、非常に速い速度で増殖した。この相違の理由は不明である。
【0155】
100IU/kgの「Adagen」で治療された腫瘍は、第49日目において414.8(±219.0)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は489.9%(±307.0)であり、最初の腫瘍からの平均%変化は589.9%(±307.0)であった。腫瘍増殖阻害、すなわちTGIは47.0%であった。
【0156】
「Adagen」の治療効果は、100IU/kgの最低用量における最大効果に達した。100IU/kgの用量が、人における臨床用量(SCIDの子供の治療に使用する用量)に近いことに注意すべきある。「Avastin」は、92.5%の腫瘍増殖阻害、すなわちTGIという、最も有効な腫瘍の大きさの減少を示した。
【0157】
結論として、「Adagen」での治療は、3種類の投薬量のすべてにおいて、インビボにおけるDU145腫瘍の増殖阻害に有効であった。
【表2】

【表3】

【0158】
実施例2
SK−OV−3ヒト卵巣腫瘍の異種移植モデルにおける「ADAGEN」の抗腫瘍効果
A)試験系
種類: ネズミ、ハツカネズミ
系統: 胸腺欠損ヌードマウス
供給業者: Harlan−Sprague Dawley社
性別: 雌
平均初期体重: 22.18g
研究個体数: 54
順応期間: 到着後7日間
【0159】
B)方法
実験計画
SK−OV−3ヒト卵巣腺癌腫瘍は、3×106 細胞/マウスの右の脇腹への皮下注射によって、ヌードマウスに確立された。腫瘍増殖を週2回モニターし、触診で一度測定した。各マウスの腫瘍体積は、カリパスを用いて二次元で測定して決定し、次式を使用して計算した: 腫瘍体積=(長さ×幅2)/2)。腫瘍が90mm3の平均体積に達したときに、マウスを各実験群(9匹/群)に分けた。下記表に示すように実験群を用意した。投薬の初日を第1日目とした。
【0160】
マウスの体重および腫瘍の大きさは、実験の開始時および実験の終了までの間、週2回測定した。実験は、およそ7週間後に終了し(52日間)、その時点では、動物の大部分は、大きい腫瘍、または潰瘍化した腫瘍を有していた。
【表4】

【0161】
投与計画
「Adagen」、「Avastin」、または天然ADAを週2回、5週間、 静脈内投与した(合計:10回投与)。
【0162】
試験物品
「Adagen」:ロット番号:NV0604、濃度:229IU/ml
「Avastin」:ロット番号:M66781、濃度:25mg/ml
天然ADA:ロット番号:06−0315−111
用量計算
第1日目の体重に基づく。
【0163】
臨床検査
到着時にマウスを視覚的に検査した。続いて、最初の腫瘍の触診の後、臨床的症状、一般的な行動変化についてマウスを個別に週2回検査し、体重をモニターした。致死および臨床的症状を記録した。食物および水の消費についてはモニターしなかった。開いた壊死病斑を示す腫瘍を有するマウスを殺処分した。体重が20%を超えて減少したマウスも、人道的に殺処分した。
【0164】
統計分析
さまざまな治療による腫瘍体積における%変化の差異を、一元配置分散分析を用いて比較した。全対多重比較は、Tukey−Kramer法を用いて行った。
【0165】
C)結果
用いられる用語の定義
(a)最初の腫瘍体積の%:(任意の日における腫瘍体積/第1日目における腫瘍体積)×100
(b)腫瘍体積における%変化:[(任意の日における腫瘍体積−第1日目における腫瘍体積)/第1日目における腫瘍体積]×100
(c)%腫瘍増殖阻害(TGI):[(対照群の平均腫瘍体積−治療群の平均腫瘍体積)/対照群の平均腫瘍体積]×100
(d)腫瘍退縮は、第1日目と比較した負の腫瘍体積として定義される。
(e)治癒は、人の肉眼で観察される腫瘍の完全な欠如として定義される。
【0166】
実験開始時における平均の腫瘍の大きさは、90mm3であった。実験開始時における平均体重は22.2gであった。すべての群において、平均体重は、実験を通じて変化しなかった。実験は第52日目に終了した。1500mm3を超える腫瘍の増殖に起因して、4匹のマウスを殺処分した。
【0167】
下記表5に、実験第32日目(対照動物の最終日の生残率66%)の最終結果のまとめを示す。対照群における腫瘍は実験期間全体を通じて、着実に増加した。第32日目には、平均腫瘍体積の大きさは、754.9(±700.7)mm3であった。腫瘍増殖の%変化は693.2%(±673.6)であった。
【表5】

【0168】
2000IU/kgの「Adagen」で治療した腫瘍は、第32日目において437.7(±122.2)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は402.1%(±177.7)であった。2000IU/kgの「Adagen」は、42%の腫瘍増殖阻害を示した。
【0169】
500IU/kgの「Adagen」で治療した腫瘍は、第32日目において471.1(±60.0)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は421.3%(±102.2)であり、最初の腫瘍からの変化は521.3%(±102.2)であった。腫瘍増殖阻害は37.6%であった。
【0170】
100IU/kgの「Adagen」で治療された腫瘍は、第32日目において497.7(±152.6)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は450.7%(±172.7)であり、最初の腫瘍からの平均%変化は550.7%(±172.7)であった。腫瘍増殖阻害は34.1%であった。
【0171】
2000IU/kgの天然ADAで治療した腫瘍は、第32日目において356.6(±213.0)mm3の平均腫瘍体積を有していた。腫瘍体積における平均変化は340.1%(±210.0)であり、最初の腫瘍からの平均%変化は440.1%(±239.1)であった。腫瘍増殖阻害は52.8%であった。
【0172】
アダジェンを用いた治療は、いずれの用量レベルにおいても、対照から得られる結果に相応していた。しかしながら、各用量レベルでのアダジェンを用いた治療は、上述のようなTGIを生じた。
【0173】
「Adagen」の治療効果は、100IU/kgの最も低い用量で最大効果に達した。100IU/kgの用量が、「Adagen」の人における臨床用量(SCIDの子供の治療に使用する用量)に近いことに注目すべきである。この実験における陽性対照として与えられた「Avastin」は、72%のTGIという、腫瘍の大きさの最も有効な減少を示した。
【0174】
結論として、100、500、または2000IU/kgの「Adagen」での治療は、結果的に、34〜42%の腫瘍の増殖阻害をもたらした。
本発明の方法のための別の組換えADA酵素について、以下に記載する。
【0175】
実施例3
成熟タンパク質の74位のCysがSerに変化した、組換えヒトADAを発現する、E.coli発現株の構築
ヒトのアデノシン・デアミナーゼの報告されているアミノ酸配列(参照することにより本明細書に援用される、GenBank NP_000013)を、システインのコドンの存在について分析した。成熟(N−末端Metが開裂している)ポリペプチドの5つの位置が、システインをコードしていた(C74、C152、C153、C168、C261)。ヒトADAを発現する設計され、修飾された遺伝子では、これら5つのシステインのコドン(システイン74、TGC)の1つだけが、セリンのコドン(TCC)に変化していた(これは、翻訳されたタンパク質における75位である)。重複するオリゴヌクレオチド部分の標準的化学合成を使用して、E.coliにおける発現に最適化されたコドンを有する新しい遺伝子の全合成のため、定義されたポリペプチド配列(配列番号:3参照)をBlue Heron Corporation (米国ワシントン州ボセル所在)に提供した。要するに、配列を、細菌の発現用に最適化し、続いて、Grantham R.ら; 1981; "Codon catalogue usage in genome strategy modulated for gene expressivity," Nucleic Acid Res. 9:r43-r47、およびLathe, R.; 1985; "Synthetic oligonucleotide probes deduced from amino acid sequence data, Theoretical and practical considerations." J. Mol Biol; 183:1-12に記載されるコドンデータを利用して、標準的な細菌コドンを大腸菌K12に使用した。
【0176】
次に、対応するRNA配列をヘアピン構造の形成またはループ形成について分析し、自由エネルギーの計算を最小限に抑えるようにした。フランキングする制限酵素認識部位、NdeIおよびBamHIは、遺伝子の末端に含まれていた。制限酵素NdeIおよびBamHIを用いた合成DNAの切断の後、1.1キロベースの遺伝子を、T4DNAリガーゼを介して、同じくこれら2種類の酵素で切断されたプラスミドベクターpET−28a(Novagen Corporation社製)内に結合させた。メーカーの使用説明書に従い、BTX Electro Cell Manipulator 600を使用するエレクトロポレーションによって、組換えプラスミドを、E.coli株BLR(DE3)またはHMS174(DE3)内に導入した。プラスミドpET−28a/ADAcysSer(ADAc75s/pET28a:BLR(DE3)またはADAc75s/pET28a:HMS174(DE3)を指定)を含むコロニーの選択を可能にするため、形質転換混合物を、カナマイシン(15μg/ml)を含むLB寒天プレート上に塗沫した。ADA変異体遺伝子ヌクレオチド配列は、Big Dye Terminatorsを使用したABI Prism 310 Genetic AnalyzerでDNA配列分析することによって確認した。Ser74−rhADAのオープン・リーディング・フレーム(コード領域と疑われる)をコードするDNA配列は、配列番号:4によるものである。
【0177】
単離したコロニーを塗沫し、参照することにより本明細書に援用されるNovagen社のpETシステムマニュアル第9版に記載されるような標準的方法によって、LB培地においてイソプロピル-β−D−チオガラクトピラノシド(「IPTG」)を誘発可能な遺伝子の発現について分析することによって、さらに精製した。
【0178】
時間、温度、および誘発因子の濃度を含めた幾つかの誘発パラメータについて試験した。宿主細菌の細胞質内に、総細胞タンパク質の約20%という高濃度でのADAの産生を可能にする、好ましい条件は、25℃で12時間、50μMのIPTGを用いた誘発であった。発現させたADAタンパク質は、およそ40,000という正確な分子量を示すことが、SDS PAGE分析で確認された(データ示さず)。
【0179】
実施例4
成熟タンパク質の74位のCysがSerに変化した、組換えウシADAを発現する、E.coli発現株の構築
ウシの腸の処置から得られる精製された成熟ADAタンパク質は、N−末端のメチオニンが欠如し、cDNA配列から予想された最後の6つのC−末端の残基も欠如している、356アミノ酸タンパク質である(参照することにより本明細書に援用される、GenBank NP_776312)。ウシADAアミノ酸配列を、システインのコドンの存在について分析した。成熟ポリペプチドの5つの位置は、システインをコードしている(C74、C152、C153、C168、C261)。設計および修飾されたウシADA合成遺伝子では、これら5つのシステイン位置の1つ(システイン74)だけが、セリン残基に変化していた。これは、成熟タンパク質の74位(または翻訳生成物の75位)における通常のシステインのコドンの代わりにセリンのコドン(TCC)を挿入することによって実現した。遺伝子はまた、E.coliでの発現に最適化されたコドンであった。
【0180】
簡潔に述べると、重複するオリゴヌクレオチド部分の化学合成を含む方法を用いて、E.coliにおける発現に最適化されたコドンを有する新しい遺伝子の全合成を目的として、確定したポリペプチド配列(配列番号:1参照)をBioCatalytics Inc.に提供した。BioCatalytics社の方法は、参照することによりその内容全体を本明細書に援用する、米国特許第6,366,860号明細書に詳細に記載されている。
【0181】
幾つかの発現系において、ウシADAの発現を研究した。フランキングする制限酵素認識部位、NdeIおよびBamHIは、遺伝子の末端に含まれていた。制限酵素NdeIおよびBamHIを用いた合成DNAの切断の後、1.1キロベースの遺伝子を、T4DNAリガーゼを介して、同じくこれら2種類の酵素で切断されたプラスミドベクターpET−9d(Novagen Corporation社製)内に結合させた。メーカーの使用説明書に従い、BTX Electro Cell Manipulator 600を使用するエレクトロポレーションによって、組換えプラスミドを、E.coli株BLR(DE3)またはHMS174(DE3)内に導入した。プラスミドpET−9d/bADA(bADA/pET9d:BLR(DE3)またはbADA/pET9d:HMS174(DE3)を指定)を含むコロニーの選択を可能にするため、形質転換混合物を、カナマイシン(15μg/ml)を含むLB寒天プレート上に塗沫した。ADA変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、Big Dye Terminatorsを使用したABI Prism 310 Genetic AnalyzerでDNA配列分析することによって確認した。変異型ADAをコードするDNA分子は、配列番号:2によって示されている。
【0182】
単離したコロニーを塗沫し、Novagen社のpETシステムマニュアル第9版に記載されるような標準的方法によって、LB培地においてIPTGの誘発が可能な遺伝子の発現について分析することによってさらに精製した。時間、温度、および誘発因子の濃度を含めた幾つかの誘発パラメータについて研究した。宿主細菌の細胞質内に、総細胞タンパク質の約20%という高濃度でADAを産生させる好ましい条件は、37℃で12時間、0.3%の乳糖を用いた誘発であった。ADA生成物は、およそ40,000という正確な分子量を示すことが、SDS PAGE分析で確認された。
【0183】
実施例5
組換えヒト変異型ADAタンパク質の精製
変異型rhADAの精製は、Enzon社によって確立された3クロマトグラフィー・プロトコルで行った。宿主細胞HMS174(DE3)におけるプラスミドpET28a(Novagen社製)上の合成遺伝子からrhADAを発現するE.coliについて、細菌発酵を行った。リファンピシン(200μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)を、酵母エキス(30g/l)を補充したグリセロールの最少培地に含めて、細胞を28℃で11OD600まで増殖させ、5mMの最終濃度に至るまで、誘発因子IPTGを加えた。40時間後(OD600〜110)、遠心分離によって細胞を回収し、−20℃で冷凍した。簡潔に言えば、解凍した細胞ペースト(50g)を10mMのトリス緩衝液[トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン]、1mMのDTT、pH8.0の1800ml緩衝液に再懸濁し、Tempest Virtis(Sentry(商標)社(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製のマイクロプロセッサ)を用いて1200RPMで10秒間、均質化した。この懸濁液をステンレス鋼のメッシュ(開口部のマイクロメーター250μ、No.60、W.S Tyler社製)に通し、大きな粒子を除去した。3サイクルの間、103,400kPa(15,000psi)で、均質な細胞懸濁液を微小流動化した(装置を氷浴した)(Micro Fluidizer、Microfluidics Corp.(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製、110Yモデル)。微小流動化の終わりに、上記と同一の緩衝液200mlを使用して装置一式をすすぎ、この溶液を上記懸濁液と合わせた。細胞溶解物から得られた可溶性タンパクを、4℃で40分間、16,000rpmで遠心分離することによって抽出した(Sorvall(登録商標)社製のRC 5C plus、ローターSLA−1000)。無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。pHを8.0に調整し、1mMのMgCl2および20mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を加え、室温で2時間インキュベートした。次に1NのHClを用いてpHを6.5に合わせた。2回目の遠心分離を上記のようにして行い、上清を回収し、2mMのEDTAに応じて調整し、その後、ナルゲン(Nalgene(登録商標))の90mmのフィルター・ユニットでろ過した。ろ過した上清の体積は500mlであり、BCA法による総タンパク質濃度は8.5mg/mlであった。
【0184】
細胞抽出液(100ml)をpH7.2および4.5mS/cmに調整し、20mMのBis−Tris、20mMのNaCl、pH6.5でHiTrap DEAE ff上に負荷し、20mMのBis−Tris、500mMのNaCl、pH6.5で溶離させた。ピーク画分を酵素アッセイおよびSDS−PAGEによって同定し、20mMのNaHPO4中の1.5Mの硫酸アンモニウム、pH6.5に調整し、HiTrap Phenyl ffカラムに負荷した。負荷する緩衝液の勾配、および20mMのNaHPO4、pH6.5を用いてタンパク質を溶出させた。ピーク画分(55ml;0.4mg/ml)を、20mMのNaHPO4、1mMのEDTA、1mMのDTT、pH6.5に対し、ダイアフィルター(diafiltered)を行ない、HiTrap SP−Sepharose ff上に負荷し、20mMのNaHPO4、500mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、pH6.5で溶出させた。回収画分は、精製ADAタンパク質を含んでいた(77ml;0.1mg.ml)。
【0185】
実施例6
組換えウシADAタンパク質の精製
実施例4のクローンによって発現させた変異型rbADAの精製は、Enzon社によって確立された3クロマトグラフィー・プロトコルで行った。簡潔に言えば、−80℃で保管された、200gの解凍した細胞ペースト(それぞれ、Blue Hereon社またはBiocatalytics社から入手)を、20mMのBis−Tris、1mMのEDTA、pH7.4の緩衝液1800mlに再懸濁し、Tempest Virtis(Sentry(商標)社(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製のマイクロプロセッサ)を用いて1200RPMで5分間、均質化した。この懸濁液をステンレス鋼のメッシュ(開口部マイクロメーター250μ、No.60、W.S Tyler社製)に通し、大きな粒子を除去した。3サイクルの間、103,400kPa(15,000psi)で、均質な細胞懸濁液を微小流動化した(装置一式を氷浴した)(Micro Fluidizer、Microfluidics Corp.(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製、110Yモデル)。微小流動化の終わりに、上記と同一の緩衝液200mlを使用して装置一式をすすぎ、この溶液を上記懸濁液と合わせた。細胞溶解物から得られた可溶性タンパク質を、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離することによって抽出した(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。
【0186】
この細胞抽出液中のヌクレオチドを除去するため、トリエチレンイミン(PEI)を上記上清に加え(最終的には0.15%、wt/v)、10分間攪拌することにより完全に混合させた。次に、この細胞抽出液を4℃で一晩放置した。この一晩放置したサンプルから得られた沈殿を、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離することによって除去した(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。同様に、無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。第1のカラムにADAが結合するのを補助するため、10%のPEG4600をこの細胞抽出液にゆっくりと加え、この細胞抽出液のpHを1NのNaOHおよび1NのHClを用いてゆっくりと6.5に調整した。次のカラムに負荷する前に、この上清を再度、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離にかけた(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。
【0187】
細胞抽出液を、予め平衡化したCapto Qカラム(カタログ番号17−5316−01、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製、総容積350ml、XK−50に予め充填済み)に、20mMのBis−Tris、1mMのEDTA、pH6.5の緩衝液を用いて負荷した。ADAを、80mMのNaClを用いてカラムから平衡化した緩衝液中に溶出させる前に、まず、60mMおよび70mMのNaClでの溶出を行い、不純物を除去した。溶出液の特性を、ADA活性、SDS−PAGE分析、ウェスタンブロット、およびRP−HPLCを用いて解析した。
【0188】
Capto Qカラムにかけた後、2つの疎水性相互作用によるクロマトグラフィー(「HIC」)精製を1つずつ行い、タンパク質の純度をさらに高めた。最初のHICはオクチルセファロース(Octyl Sepharose)4FF(カタログ番号17−0946−02、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)であった。Capto Qカラムから得られたADA画分の貯留液を、硫酸アンモニウム粉末を用いて直接、1.5Mの(NH42SO4に応じて調整し、pHを6.5に調整した。ろ過したサンプル(Nalgene Nunc社(米国ニューヨーク州ロチェスター所在)製、カタログ番号540887、MEMB0.2PES)を、1.5Mの(NH42SO4、20mMのリン酸カリウム、1mMのEDTA、pH6.5を用いて予め平衡化した第1のHICカラムに負荷した(総容積150ml、XK−50、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)。ADAタンパク質を硫酸アンモニウムの勾配を用いて溶出させ、この溶出液の純度特性をSDS−PAGEおよびRP−HPLCを用いて決定した。第1のHICカラムの画分のADAタンパク質を貯留し、1Mの(NH42SO4に応じて調整し、1Mの(NH42SO4、20mMのKH2PO4−K2HPO4、1mMのEDTA、pH6.5を用いて予め平衡化した第2のHICカラム(総容積150ml、XK−50、HIC Phenyl HP、カタログ番号17−1082−01、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)に直接負荷した。これらの画分のADA純度をSDS−PAGEおよびRP−HPLCを用いて分析した。精製rbADAまたはrhADAをさらに脱塩し、保存緩衝液(例えば、100mMのリン酸緩衝液、1mMのEDTA、pH6.5)についてLabScale(商標)TFFシステム(Membrane BioMax5(米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在))で濃縮した。
【0189】
実施例7
ウレタン結合を介した、PEG化Ser74−rbADAの調製
SC−PEG(炭酸N−スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール、0.084mmol)を、穏やかに攪拌しながら、3mlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.8)中Ser74−rbADA(0.00027mmol)の溶液に加えた。溶液を30℃で30分間攪拌する。GPCカラム(Zorbax GF−450)を用いてPEG複合体をモニターした。 反応の終了時に(天然酵素の不存在によって分かる)、混合物を12mlの調製用緩衝液(0.05Mのリン酸ナトリウム、0.85%の塩化ナトリウム、pH7.3)を用いて希釈し、セントリプレップ(Centriprep)濃縮器(Amicon社製)を用いてダイアフィルトレーションを行ない、未反応のPEGを除去した。ダイアフィルトレーションは、等量の濾液と0.1%のPMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)を混合しても遊離のPEGが検出されなくなるまで、4℃にて、必要に応じて引き続き行なった。
【0190】
実施例8
ウレタン結合を介した、PEG化Ser74−rhADAの調製
実施例7に記載される条件と同一の条件を用いて、SC−PEG(0.084mmol)をSer74−rhADA(0.00027mmol)と反応させた。
【0191】
実施例9
アミド結合を介した、PEG化Ser74−rbADAの調製
SS−PEG(コハク酸N−スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール、0.084mmol)を、穏やかに攪拌しながら、3mlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.8)中Ser74−rbADA(0.00027mmol)の溶液に加えた。溶液を30℃で30分間攪拌した。GPCカラム(Zorbax GF−450)を用いてPEG複合体をモニターした。 反応の終了時に(天然酵素の不存在によって分かる)、混合物を12mlの調製用緩衝液(0.05Mのリン酸ナトリウム、0.85%の塩化ナトリウム、pH7.3)を用いて希釈し、セントリプレップ濃縮器(Amicon社製)を用いてダイアフィルトレーションを行ない、未反応のPEGを除去した。ダイアフィルトレーションは、等量の濾液と0.1%のPMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)を混合しても遊離のPEGが検出されなくなるまで、4℃にて必要に応じて引き続き行なった。
【0192】
実施例10
アミド結合を介した、PEG化突然変異タンパク質rhADAの調製
SS−PEG(0.084mmol)を、実施例9に記載された条件と同一条件を用いて、突然変異タンパク質rhADA(0.00027mmol)と反応させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシン・デアミナーゼを有効量で、それらを必要としている前記患者に投与することを含む、腫瘍を有する患者を治療する方法。
【請求項2】
前記腫瘍が悪性であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
投与されるアデノシン・デアミナーゼの量が、前記患者におけるアデノシンまたはデオキシアデノシンの組織内濃度を実質的に低減させるのに有効であり、
前記腫瘍の増殖または拡散が、前記患者におけるアデノシンの組織内濃度の低減によって阻害されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍が固形腫瘍であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍が、前立腺癌、卵巣癌、および結腸直腸癌からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記アデノシン・デアミナーゼが、実質的に非抗原性のポリマーと結合することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記実質的に非抗原性のポリマーが、ポリアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレンオキサイドが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記実質的に非抗原性のポリマーが、約4,000〜約45,000の範囲の分子量を有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記結合したアデノシン・デアミナーゼが、1kgあたり約10U〜約30Uの用量で投与されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記結合したアデノシン・デアミナーゼが、前記腫瘍の阻害を維持するのに十分な期間、投与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記結合したアデノシン・デアミナーゼが、約1〜約20日間の期間、投与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記複合体が、実質的に非抗原性のポリマーあたり2分子以上のアデノシン・デアミナーゼを含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項14】
前記アデノシン・デアミナーゼが、該アデノシン・デアミナーゼの1つ以上のLys残基のε−アミノ基に付加する約11〜約18本のポリエチレングリコール鎖を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項15】
前記アデノシン・デアミナーゼが、ウレタン結合を介して、前記ポリエチレングリコールと結合することを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記アデノシン・デアミナーゼが、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、吸入、および経尿道からなる群より選択される経路によって投与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記アデノシン・デアミナーゼが、ウシ起源から生成されるアデノシン・デアミナーゼ、または組換えアデノシン・デアミナーゼであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼが、配列番号:1を含む組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼ、配列番号:3を含む組換えヒト・アデノシン・デアミナーゼ、および配列番号:5を含む組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
配列番号:5を含む前記組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼが、水媒体中での酸化を防ぐためにキャップ化されたCys74を含むことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼが、Lys198に代わるGln、Thr245に代わるAla、Gly351に代わるArg、およびそれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸置換を有する、配列番号:1または配列番号:5に従うことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
アデノシン・デアミナーゼまたはその活性断片を、有効量で、それらを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法。

【公表番号】特表2010−524968(P2010−524968A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504262(P2010−504262)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060733
【国際公開番号】WO2008/131163
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】