説明

酵素又は細胞の固定化のための担体及び該担体を用いた固定化方法

本発明は、酵素又は細胞固定化のための、開孔を有する有機発泡体から作られる担体、及び、固定化酵素又は細胞の調製のための方法を開示する。本発明は、酵素タンパク質又は細胞を、開孔を有する有機発泡物質に固定化するために、凝結及び架橋結合技術を用いる。結果の固定化産物は、大きい比表面領域、高い比活性を有し、また、種々の形状に作られることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素/細胞の固定化技術に関し、特に、合成有機物質を担体として用いた酵素/細胞の固定化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの進歩に伴い、酵素又は酵素産生細胞は、工業及び固定化された形態で他の分野について、繰り返して使用する際にそれらを産物から分離及び回収することが容易であり、また、それらが遊離酵素よりも安定であるために、しばしば用いられる。物理的な吸着、親和性結合、共有結合性の架橋結合、凝結及び封入のような、多くの固定化方法がある。
【0003】
固定化技術のレベルは、通常、比活性(単位重量の固定化酵素/固定化細胞の活性)によって評価される。比活性は、固定化方法及び単位重量の固定化酵素/細胞の表面領域(比表面領域)に関係する。一般に、比表面領域が大きいほど、比活性が高い。多くの固定化方法は、それ故、酵素粒子の比表面領域の増大に頼っている。現在、比表面領域を増大する通常の方法は、多孔質及び小さい大きさの担体を使用すること、及び、細胞及び酵素を吸着又は保持するために予め作られた(prefabricated)毛細管細孔を有する小粒子担体を適用することを含む。
【0004】
しかしながら、現在の技術は、固定化された酵素/細胞の比表面領域を増大することに大きく限定されている。現存の有機又は無機単体はほとんどが、細孔が担体の表面に普遍的に存在する硬性の物質からなっており、内部の細孔が多すぎる場合、その担体は容易に割れる。結果的に、当該分野の科学者は、比表面領域が大きく、且つ、破損を起こしにくい、固定化担体を探索している。
【発明の概要】
【0005】
(1) 限定された比表面領域;(2) 一つ又はいくつかの酵素の固定化のためにのみ適用可能であり、細胞の固定化のために適用できない;及び(3) 通常、高価である;を含む、現存の担体の欠点を解決するために、本発明は、比表面領域が大きく、脆弱性が低く、酵素及び細胞の両方の固定化に適用可能である、固定化担体を発見することを目的とする。本発明の他の技術的問題は、酵素を発現する酵素又は細胞を効率的に固定化することである。
【0006】
本発明は、固定化酵素(immobilized enzymes)/固定化細胞(immobilized cells)の比活性を増大するために、開孔を含む有機発泡物質(organic foam material)を利用する。その担体は、該担体の内側に開孔を有する。即ち、その細孔は、閉じておらず、少なくとも二つ内部連結された(inter-connected)細孔である。開示された担体を用いて、形成された固定化産物は、細孔を含む格子様3D構造を有し、反応溶液が固定化酵素/細胞の内部を通って流れることができる。それは、比表面領域を著しく増大させるのみならず、表面と伝統的な顆粒状の固定化産物の内部との間の反応率の変動を最小化する。さらに、顆粒又はシート形状の現存する産物とは異なって、本発明で開示された固定化酵素/固定化細胞は、種々の大きさ及び顆粒、ブロック、シート又はその比表面領域に著しく影響しない他の形状のような、異なる形状で調製されることができる。
【0007】
本発明における担体は、開孔を有し、水吸収性の性質を有する有機多孔質発泡体(organic porous foam)から調製される。該担体の開孔は、固定化の間、酵素が該担体の内部に侵入することを促進し、反応の間の基質と酵素の相互作用を促進し、及び、反応後の産物の物質輸送(mass transfer)を促進する。該単体の水吸収性の特徴は、担体の多孔質表面上での、酵素タンパク質又は細胞及び他の親水性成分の分配、適切な接着及び固定をさらに増強する。多孔質物質の吸収性性質が強ければ強いほど、水の天然の濡れ率が速くなる。本発明の発明者らは、固定化担体の適合性と水中における多孔質物質の天然の濡れ率との間に相関があることを発見した。物質は、濡れ率が0.2mm/秒より高い場合、好ましくは0.4mm/秒より高い場合、固定化担体として適している;一方、濡れ率が0.2mm/秒より低いものは適していない。多くの通常の合成物質(例えば、ポリウレタン発泡体)の水中での天然濡れ率は低い。本発明において担体として選択された物質は、PVA発泡体、パルプ発泡体及びメラミン発泡体を含む。
【0008】
本発明はまた、固定化酵素又は固定化細胞の調製のための方法を提供し、該方法は、次の工程を含む:
(i)開孔を有する多孔質有機発泡体(porous organic foam)を固定化担体として用いること;及び
(ii)酵素又は細胞を該担体上に固定化するために凝結(flocculation)及び架橋結合(crosslinking)を用いること。
【0009】
本発明は、現在の技術を超える多くの利点を有する。第一に、固定化酵素又は細胞のための担体としての、開孔を有する多孔質有機発泡体は、比表面領域を実質的に増大し、固定化酵素/固定化細胞の比活性を著しく増強する。第二に、本発明の方法は、応用酵素学のために広く用いられることができ、理論的には、該方法は種々のタイプの酵素及び細胞の固定化のためにほとんど適用可能である。第三に、該担体は安価である不活性物質を使用し、それ故、製造コストを減少させる。第四に、該担体は、強固な物質から作られておらず、活発な撹拌下であっても壊れにくい。第五に、本発明の産物は、比表面領域を変化させることなく、種々の形状及びサイズに合わせて作られることができ、これは特に、大規模工業生産のために有用である。
【発明の詳細な説明】
【0010】
上記のように、本発明の担体は、少なくとも0.2 mm/秒の水天然濡れ率を有する、開孔を有する多孔質有機発泡体で作られる。水濡れ率は、以下のように測定される:乾燥した有機多孔質物質を、長さ5 cmの立方体にカットし、該物質が深さ20 cmの蒸留水の表面上に静かに置かれたときに、ただちに測時(timing)が開始される。試験は、該物質が完全に濡れたか、又は測時開始から10分後の何れかで終了される。この条件下で、該物質の「水天然濡れ率(water natural wetting rate)」は、有機多孔質物質の濡れた部分(水に沈んだ部分を含む)の垂直方向の高さの、かかった時間(秒)に対する割合として定義される。
【0011】
本発明者らは、ポリマーの骨格上の又は分枝鎖上のヒドロキシル基、アミノ基、又はシアノ基のような親水性基を保持する多孔質有機発泡物質が、該担体のための適切な物質であろうと考える。市場から商業的に入手可能な開孔を有する多孔質有機物質のなかで、ポリビニルアルコール発泡体、パルプ発泡体及びメラミン発泡体が該担体に適した物質である。それらの物質から作られる担体は、顆粒、ひも、シート、カラム又はブロックのような異なる形状に作られることができる。
【0012】
また本発明は、発明された該担体上での酵素又は細胞の固定化の方法を提供する。酵素及び細胞の固定化の前に、該担体はシート又は顆粒にカットされる;該酵素溶液又は細胞懸濁液は、水又は緩衝液を用いて、適切な濃度に調節される。本発明の固定化方法の態様は、以下のように示される:a) 酵素溶液又は細胞懸濁液を担体に加え、該液体を該担体上に平らに分布させるために、及び、吸着されない液体を除去するために、手で押さえる;b) タンパク質凝結剤の適切な量の溶液を、吸着された酵素溶液を有する担体に加え、酵素又は細胞が凝結し、該担体の細孔壁に沈着するように、手で数回押さえ、そして、未吸着液体を除去するために再び手で押さえる;c) 凝結したタンパク質又は細胞を架橋結合及び固定化するために、適切な量の架橋結合剤溶液を該担体に加え、次いで、該担体を、架橋結合剤溶液を除去するために手で押さえる;及びd) 該担体上にロードされた酵素又は細胞の量を増加することが必要な場合に、工程(a)から(c)を繰り返す。最後に、該担体を水で数回洗浄し、乾燥する。本発明の固定化方法の他の代替の態様は、以下のように示される:a’) アルデヒド改変酵素(aldehyde-modified enzyme)又は細胞の溶液を産生するために、架橋結合剤として用いられるある量の多価アルデヒド化合物(multi-aldehyde compounds)を、固定されるべき酵素又は細胞を含有する溶液に加える;b’) 上記のアルデヒド改変酵素又は細胞溶液を、カットされた担体中に加え、これを、該溶液を平らに分布させるために手で押さえる;c’) ある量のタンパク質凝集剤(flocculant)を該担体に加え、これを、該成分を混合させるために、手で数回押し、次いで、該担体上の液体を除去するために、再び手で押す;d’) 該担体上にロードされた酵素又は細胞の量を増加することが必要な場合に、工程(a’)から(c’)を数回繰り返す。最後に、該担体を水で数回洗浄し、乾燥する。
【0013】
酵素又は細胞の固定化の間、該担体は、手によって、又は特別なデバイス又は機械によって押さえられてよい。用いられる緩衝液のpHは、酵素の最適な活性を考慮しなければならず、酵素及び凝集剤の表面電荷が反対であることが確認される。一般に、用いられる酵素タンパク質の濃度は0.3%-30%(W/V)であり、細胞の濃度は1-50%(V/V)であり、凝集剤の濃度は0.01%-30%(V/V)であり、及び架橋結合剤の濃度は0.01%-30%(V/V)である。用いられる凝集剤は、通常、キトサン、ポリエチレンイミン(PEI)、カルボキシメチルポリエチレンイミン(CMPEI)などのような、大きいカチオン分子である。架橋結合剤は、一般に、多価-アルデヒド化合物(例えば、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、グルカンジアルデヒド)である。凝集剤又は架橋結合剤は、単独で用いられてもよく、又は、互いに混合されて用いられてもよい。血清蛋白質、オボアルブミン、乳清タンパク質又はチーズタンパク質のような非酵素タンパク質が、用いられる酵素の量を減少するために、及び、回収酵素の活性を改善するために、酵素溶液中に添加されてもよい。さらに、異なる産物の要求に合わせて、固定化のさらなる工程又は他の成分が、活性、安定性、透過性、特異性又は見かけの特徴などの面から、生産性能を増強するために加えることができる。
【0014】
本発明で調製される顆粒形態の固定化酵素又は細胞は、撹拌タンク反応器又は充填層反応器において用いられることができる。シート形状の産物は、円柱状リール構造に巻かれて、反応カラムを直接、形成することができる。そのようなリール構造の産物は、ブロックとして用いられることができ、及び、バイオリアクターの中に充填され及び配置されることができ、又は、単独で又は互いに組み合わせて用いられて、工業的生産のために、調節された直径又は長さを有する反応カラムを形成することができる。
【0015】
巻きつけ操作(rolling operation)から発生する張力及び本発明のシート形状の産物の巻きつけの間、内側のコアに抗して多孔質物質に加えられる連続的な圧力は、多孔質物質の適度の圧縮をもたらす。この巻きつけプロセスは、それ故、リール構造産物の形成のプロセスと同時に多孔質物質の圧縮のプロセスである。リール構造の張りの程度は、多孔質物質に適用される圧力を調節することによって調節できる。リール構造の直径は、巻きつけの回数及び担体物質の厚さによって調節できる。リールシリンダーの高さは、担体の幅を変化させることによって調節でき、又は、リール構造を必要な高さに直接カットすることによって調節できる。
【0016】
記載された円柱状リールカラムの円柱状の表面は、巻き上げのゆるみを防ぐために、適切な充填物質を用いることによって固定化及び封着されることができる。充填物(packing)は、反応タンクを水で満たした後に、固定化酵素自体がそのような性質を有していない場合、乾燥したPVA発泡体及びパルプ発泡体のような水吸着性及び膨張性の物質からなり、カラム表面とカラムホルダーの内壁との間に存在し得るギャップを減少させる。そのようなギャップは顆粒化物質で詰められてもよい。円柱状リールカラムは、それが、反応カラムとして単独で用いられる場合、又は、カラムホルダーなしで他のカラムと共に用いられる場合に、エネルギー消費を減じるために、ポリウレタン発泡体のような耐水性及び絶縁性の物質で包まれる。一方では、反応の間に円柱状リールカラムが縮み、その容積が減じる場合、充填物質は、ギャップの発達を避けるために、例えば、ゴム又はゴム含有物質のような、連続的な縮みの性質を有するものである。
【0017】
円柱状リールカラムは単独で又は他のカラムと一緒に用いられる場合、該カラムの両端は、カラムと、反応溶液の効率的な流入と流出を可能にし且つ濾過の機能を有するチューブとを連結するデバイスを有する。直列型で用いられる場合、円柱状リールカラムは、カラム間の漏出を防ぐために、ゴムバンドで封着される。
【好ましい態様の説明】
【0018】
以下の実施例は、本発明の説明のためのものであり、本発明を限定するように見なされるようには意図されない。以下の実施例において、従来の習慣又は製造者の示唆/プロトコールは、その条件が限定されない場合に従われる。
【実施例】
【0019】
実施例1
有機多孔質物質の水天然濡れ率
乾燥した有機多孔質物質を、5 cmの長さの立方体にカットし、該物質が20 cmの深さの蒸留水の表面に静かに置かれたときに測時を直ちに開始した。この試験は、測時が開始されて10分後又は該物質が完全にぬれたときに終了した。この条件下で、該物質の水天然濡れ率は、有機多孔質物質の濡れた部分(水に沈んだ部分を含む)の垂直方向の高さの、該物質のその部分が濡れるのにかかった時間(秒)に対する割合として定義された。多くの有機多孔質物質を試験し、その結果を表1に示した。
【表1】

【0020】
実施例2
発現されたグルコースイソメラーゼを含有する大腸菌細胞の顆粒担体上での固定化(I)
pGEMT-Easy (Promega)の配列に基づいて、以下のPCRのためのプライマーRBS-NdeI及びRBS-AlwNIを設計した:
フォワードプライマーRBS-NdeI:
5’-CATATGTATATCTCCTTCTTGTGTGAAATTG-3’
リバースプライマーRBS-AlwNI:
5’-CAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTC-3’
pGEMT-Easy (Promega)をテンプレートとして用い、RBS-NdeI及びRBS-AlwNIをプライマーとして用いて、755 bpのDNA断片をPCR増幅によって得た。PCR増幅条件は、50 ng pGEMT-Easy (Promega)、0.4μM RBS-NdeI、0.4μM RBS-AlwNI、50μM dATP、50μM dTTP、50μM dCTP、50μM dGTP、20 mM Tris-HCl (pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、2 mM MgSO4、0.1% Triton X-100、2.5 U Pfu DNAポリメラーゼ(Promega)であり、その容量は、滅菌蒸留水で50μlに調節した。反応のためのPCR増幅プログラムは、94℃、5分;次いで、35サイクルの94℃、1分;50℃、1分;72℃、4分;及び72℃、10分であった。PCR産物(755 bp)は、5’末端にNdeI酵素切断部位及びリボソーム結合部位を含み、3’末端にAlwNI酵素切断部位を含んだ。該断片を、0.8%アガロースゲル電気泳動により分離し、精製し、NdeI及びAlwIにより消化し、NdeI及びAlwNIで消化されたpRSETA (Invitrogen)とライゲートしてpRSET-lacを生成した。pRSET-lac及びpRSET-kan (China Patent Application Publication No: CN1680558A)をAlwI及びEcoRIで消化し、得られた断片を0.8%アガロース電気泳動で分離し、精製し、及びライゲートしてpRSET-lac-kanを生成した。
【0021】
中国特許出願公報第CN1702172号に開示されているようなグルコースイソメラーゼ変異体の調製方法に従って、F87L、W139F、R182A、F187S、V217G、D260A及びT299Qの7つの突然変異を含むグルコースイソメラーゼ変異体のMGI4-35の遺伝子を、プライマー対T1及び87LR、87LF及び217GR、217GF及び260AR、260AF及びT2 (表2)を用い、及びpGEMT-MGI-4をテンプレートとして用いて、PCR増幅によって得た。MGI4-35をNdeI及びEcoRIにより消化し、NdeI及びEcoRIで消化したpRSET-lac-kanとライゲートし、プラスミドpRSET-lac-MGI4-35-kanを生成した。プラスミドpRSET-lac-MGI4-35-kanの完全な配列を配列表の配列1に示した。
【表2】

【0022】
プラスミドpRSET-lac-MGI4-35-kanを、大腸菌BL21(DE3)pLysS中に形質転換した。MGI4-35を含有する大腸菌形質転換体を、1%接種で、70L LB液体培地(50 mg/Lカナマイシンを含む)中に接種し、37℃で36時間インキュベートした。670 gのウェット細胞ペレットを遠心分離後に収集し、等重量の蒸留水中に再懸濁した。
【0023】
6グラムの乾燥PVA発泡体(Hao Bang Shou Ri Yong Pin Co Ltd, Ninghai County Zhejiang Province)を、15 mm3の立方体にカットし、ナイロンメッシュバッグの内側に置き、これを次いで、プラスチックバッグ中に配置した。40 mlの大腸菌の細胞懸濁液を、発泡体の立方体に加え、該発泡体上の細胞懸濁液の均一な分布を保証するために、少なくとも3分間、繰り返し手で押して該構成成分を混合した。40 mlの0.5%(w/v) pH 7.0 PEI (Sigma Chemicals, St. Louis, USA)を、該発泡体に加え、少なくとも3分間、繰り返し手で押し、成分を混合した。40 mlの0.5% (v/v) グルタルアルデヒド溶液(Xilong Chemical Industry Factory Co. Ltd, Shantou, Guangdong)を、該発泡体に加え、少なくとも5分間繰り返し手で押し、該成分を混合させた。ナイロンメッシュバッグをプラスチックバッグから取り出し、液体を除去するために手で押した。次いで、手で再び押し、水で3回洗浄して未吸着液体を除去した。これを、空気流下で5-10時間乾燥し、発現されたグルコースイソメラーゼを含む固定化された大腸菌細胞の顆粒11gを得た。
【0024】
該実施例で調製された固定化細胞の比活性を、参考文献 (Dische et al., 1951, J. Biol. Chem, 192:583-587; Nakamura, 1968, Agr. Biol. Chem. 32:701-706)に開示されたような酵素活性アッセイの方法に従って測定した。詳細には、1 mlの36%(w/v)グルコース溶液(0.25 mM CoCl2, 5 mM MgCl2, 20 mM リン酸溶液, pH6.5を含む)を、上記のように得られた0.5-2 mgの固定化細胞粒子に加え、得られた溶液を75℃で振盪して10分間反応させ、該反応を停止するため氷槽上に置いた。グルコースイソメラーゼ活性の1ユニットを、1μmoleのグルコースを、上記条件下、1分間でフルクトースに転換するのに必要な酵素の量として定義した。実施例2に記載したように調製した固定化細胞の比活性は、2,540 U/gであった。
【0025】
実施例3
発現されたグルコースイソメラーゼを含む大腸菌細胞の顆粒担体上の固定化(II)
実施例2に記載したように調製した40 mlの細胞懸濁液を、6 mlの0.25 mM CoCl2と均一に混合した。パルプ発泡体(3M Hong Kong Ltd)を完全に洗浄し、全ての界面活性剤を除去し、およそ15mm3 のサイズの粒子にカットし、乾燥した。4グラムの乾燥発泡体立方体をナイロンメッシュバッグの中に置き、次いでこれをプラスチックバック中に置き、CoCl2を含む46 mlの細胞懸濁液を加えた。この混合物を、該発泡体中の液体の均一な分布を保証するために、少なくとも3分間、手で押して該構成成分を混合させ、これに10 mlの2.5% PEI溶液(pH 7.0)を加え、少なくとも3分間、再び手で繰り返し押し、該成分を混合させた;10 mlの2.5%グルタルアルデヒド溶液を加え、その混合物を手で繰り返し少なくとも5分間押して該成分を混合させた。次いで、ナイロンメッシュバッグをプラスチックバッグから取り出し、再び手でおして液体を除去し、次いで、手で押して、水で3回洗浄し、未吸着液体を除去し、流動空気下で5-10時間乾燥した。発現されたグルコースイソメラーゼを含む9グラムの固定化大腸菌細胞粒子が得られた。
【0026】
グルコースイソメラーゼの活性を実施例2に記載されたように測定した。実施例3において調製された固定化細胞の比活性は、4,442 U/gであった。
【0027】
実施例4
発現されたグルコースイソメラーゼを含む大腸菌細胞の顆粒担体上の固定化(III)
実施例2に記載したように細胞懸濁液を調製した。2.67 gの含有量>95%の開孔を有する乾燥したメラミン発泡体(Zhuhai Tin Hong Special Sponge Factory)を15mm3 立方体にカットし、ナイロンメッシュバッグの中に置き、次いでこれをプラスチックバッグの中に置いた。80 mlの細胞懸濁液を該発泡体立方体に加え、該発泡体上の細胞懸濁液の均一な分布を保証するために、手で繰り返し少なくとも3分間押さえ、該成分を混合させた。160 mlの0.5% PEI溶液(pH 7.0)を発泡体中に加え、手で繰り返し少なくとも3分間押し、該成分を混合させ、再び手で押し、未吸着液体を除去した。160 mlの0.5% グルタルアルデヒド溶液を発泡体中に加え、手で繰り返し少なくとも3分間押し、該成分を混合させた。ナイロンメッシュバッグをプラスチックバッグから取り出し、手で押して液体を除去した。これを次いで手で再び押し、水で3回洗浄し、未吸着液体を除去した。これを、流動空気下で5-10時間乾燥し、発現されたグルコースイソメラーゼを含む13 gの固定化大腸菌細胞の顆粒を得た。
【0028】
グルコースイソメラーゼの活性を、実施例2に記載したように測定した。実施例4において調製された固定化細胞の比活性は、5,544 U/gであった。
【0029】
実施例5
発現されたグルコースイソメラーゼを含む大腸菌細胞の顆粒担体上の固定化(IV)
細胞懸濁液を実施例2に記載したように調製した。該細胞を、5容積の蒸留水中に懸濁した。10グラムのメラミン発泡体を15 mm3の立方体にカットし、ナイロンメッシュバッグ中に置き、次のように固定化した:a) 該発泡体立方体を、1,000 mlの細胞懸濁液中に少なくとも3分間浸し、取り出して手で押して未吸着液体を除去した;b) 100 mlの0.1% PEI溶液(pH 7.0)を該発泡体に加え、これを手で少なくとも3分間押して、該成分を混合し、次いで、再び手で押して、未吸着液体を除去した;c) 100 mlの0.1%グルタルアルデヒド溶液を該発泡体に加え、これを手で押し、該成分を混合させ、そして、3分間静置し、次いで、再び手で押して未吸着液体を除去した;d) 工程(a)〜(c)を5回繰り返し、次いで、手で押し、そして、水で3回洗浄し、再度手で押して未吸着液体を除去し、流動空気下で5-10時間乾燥した。発現されたグルコースイソメラーゼを含む固定化大腸菌細胞の60グラムの顆粒を得た。
【0030】
グルコースイソメラーゼの活性を実施例2に記載したように測定した。実施例5で調製した固定化細胞の比活性は、6,150 U/gであった。
【0031】
実施例6
発現されたグルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸アシラーゼを含む大腸菌細胞の顆粒担体上の固定化
pT7-kan-ACYの構築物:シュードモナスSE83グルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸アシラーゼ(Matsuda, A. et al., 1987, J. Bacteriol. 169, 5821-5826)のDNA配列に基づいて、以下のプライマーを設計した:
フォワードプライマーNdeI-ACY:
5’-CATATGAACGCTCCCGTCCCCGTCCC-3’
バックワードプライマーBglII-ACY:
5’-AGATCTTCAGATGGTGAAGCGGGCAC-3’
テンプレートとしてシュードモナスSE83を用い、プライマーNdeI-ACY及びBglII-ACYを用いて、1,676 bpのDNA断片を増幅した。増幅条件は、50 ng シュードモナスSE83 DNA、0.4μM NdeI-ACY、0.4μM BglII-ACY、50μM dATP、50μM dTTP、50μM dCTP、50μM dGTP、20 mM Tris-HCl (pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、2 mM MgSO4、0.1% Triton X-100、2.5 U Pfu DNAポリメラーゼ(Promega)であり、その容量は滅菌蒸留水で50μlに調節した。
【0032】
反応のためのPCR増幅プログラムは、95℃、5分間;次いで、35サイクルの94℃、1分間;50℃、1分間;72℃、3分間;及び72℃、10分間であった。PCR産物(1,676 bp)は、NdeI及びBglII酵素切断部位を5’及び3’末端にそれぞれ含んだ。このPCR断片を0.8%アガロースゲル電気泳動で分離し、精製し、NdeI及びBglIIで消化し、NdeI及びBglIIで消化したpRSET-kanとライゲートし、pT7-kan-ACYを生成した。その配列は配列表に配列2として示した。大腸菌BL21(DE3)pLysS (Novagen)のコンピテントセルを、pT7-kan-ACYで形質転換し、BL-T7K-ACYを生成した。
【0033】
この大腸菌BL-T7K-ACYの細胞を、カナマイシン(50mg/L)を含む20L LB培地中で、37℃で24時間インキュベートし、遠心分離後に235gのウェット細胞ペレットを得た。次いでこのペレットを、5倍重量の蒸留水中に懸濁した。
【0034】
10グラムのメラミン発泡体を15 mm3の立方体にカットし、ナイロンバッグ中に置き、次のように固定化した:a) 発泡体立方体を1,000 mlの細胞懸濁液中に少なくとも3分間浸し、取り出して手で押し、未吸着液体を除去した;b) 100 mlの0.1% PEI溶液(pH 7.0)を該発泡体に加え、手で繰り返し少なくとも3分間押し、該成分を混合させ、次いで、再び手で押し、吸着液体を除去した;c) 100 mlの0.1%グルタルアルデヒド溶液を該発泡体に加え、手で繰り返し押し、該成分を混合させ、次いで、5分間静置し、再び手で押し、未吸着液体を除去した;d) 工程(a)〜(c)を5回繰り返し、次いで、手で押し、水で洗浄し、再び手で押して未吸着液体を除去し、流動空気下で5-10時間乾燥した。発現されたGL-7-ACAアシラーゼを含む固定化大腸菌細胞の50グラムの顆粒を得た。
【0035】
発現されたGL-7-ACAアシラーゼを含む固定化大腸菌細胞の比活性を、Binder, R. et al., (1994, Appl. Environ. Microbiol. 60, 1805-1809)に従って測定した。具体的には、発現されたGL-7-ACAアシラーゼを含む18gの固定化細胞を、600 mlの75 mMのグルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸溶液(25 mMのリン酸ナトリウムを含有、pH 8.0)(グルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸の調製は、Shibuya, Y. etal., 1981, Agric. Biol. Chem. 45, 1561-1567に従って行った)中に再懸濁し、37℃で撹拌(450 rpm)しながら、得られた混合物を反応させた。pH 8.0を5N 水酸化ナトリウムで維持した。60μlのサンプルを、反応開始後0、10及び20分間の時点で収集し、30μLの10%TCAを該サンプルに均一になるまで加えて、該反応を終結させた。該反応混合物を遠心分離し(10,000g、3分間)、10μLの上清を990μLのHPLCの移動相(50 mM リン酸ナトリウム、pH 7; 5% アセトニトリル)と混合した。該酵素反応を、次の条件下でHPLCにより評価した:HPLCカラム:Diamonsil(登録商標)C18、250×4.6mm (Dikma Technologies, Beijing);カラム温度:30℃;流速:1 mL/minute;検出波長:260 nm。1ユニットのGL-7-ACAアシラーゼ活性は、上記条件下、1分間で、1μmoleのグルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸を7-アミノセファロスポラニン酸に変換するために必要な酵素の量として定義した。実施例6で調製された固定化細胞の比活性は、初期10分間で140.8 U/gであった。
【0036】
実施例7
発現されたアデノシルメチオニン合成酵素を含む大腸菌細胞の顆粒担体上の固定化
プライマー対SAM-F及びSAM-Rを、GENBANK NC_000909に従って設計した。
【0037】
SAM-Fの配列は5’AGCCTAGGTTAATTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGAGAAACATAATTGTAA 3’であり、SAM-Rの配列は5’ ATAAGCTCAGCGGCGCGCCTTAGAATGTAGTTACTTTTCCTTCA 3’であった。
【0038】
DNAテンプレートとしてメタノコッカス・ジャナスチー(Methanococcus jannaschii)JAL-1 ATCC 43067 (ATCC, USA)を用い、プライマーSAM-F及びSAM-Rを用い、S-アデノシルメチオニン合成酵素の遺伝子を次の増幅条件下で増幅した:20 mM Tris-HCl (pH8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、0.1% Triton X-100、50μM dATP、50μM dTTP、50μM dCTP、50μM dGTP、400nM SAM-F、400μM SAM-R、4.5U Taq DNAポリメラーゼ(Promega、USA)。容量は、滅菌蒸留水で50μlに調節した。PCR増幅は次のようにプログラムした:95℃、3分間;次いで40サイクルの95℃、50 秒;50℃、30秒;72℃、1分間;及び最後に72℃、10分間。増幅した断片(1.3 KBの長さ)は、pRSET-lac-kan中にクローン化し、該産物を大腸菌BL21(DE3)pLysS中に形質転換し、次いでこれを、LBプレート(50 mg/L カナマイシンを含有)上で一晩培養した。シングルコロニーを単離した。
【0039】
発現されたM. jannaschii S-アデノシルメチオニン合成酵素を含む大腸菌BL21(DE3)pLysSの細胞を、カナマイシン(50mg/L)を含有する50LのLB培地中、1% 接種で、37℃で40時間、インキュベートし、遠心分離後に480 gのウェット細胞ペレットを得た。次いでこのペレットを、5倍重量の蒸留水に再懸濁した。
【0040】
10グラムのメラミン発泡体を15 mm3の立方体にカットし、ナイロンバッグ中においた。次いで、次のように固定化を行った:a) 発泡体立方体を1,000 mlの細胞懸濁液中に少なくとも3分間浸漬した後取り出し、手で押して未吸着溶液を除去した;b) 100 mlの0.1% PEI溶液(pH 7.0)を該発泡体に加え、これを手で繰り返し少なくとも3分間押し、該成分を混合させ、次いで、再び手で押し、未吸着溶液を除去した;c) 100 mlの0.1 % グルタルアルデヒド溶液を該発泡体に加え、これを手で繰り返し押し、該成分を混合させ、5分間静置し、次いで再び手で未吸着液体を除去した;d) 工程(a)〜(c)を3回繰り返し、次いで、該発泡体を手で押し、水で洗浄し、70℃の水で30分間処理し、手で再び押して未吸着液体を除去し、該発泡体を流動空気下で5-10時間乾燥し、発現されたアデノシルメチオニン合成酵素を含有する固定化大腸菌細胞の50グラムの顆粒を得た。
【0041】
該酵素の活性は、George D. Markham et al (1980, Journal of Biological Chemistry, 255, 9082-9092)に従って測定した。詳細には、15 mgの固定化細胞を500μlの反応バッファー(2 mM ATP、8 mM L-メチオニン、20 mM MgCl2、100 mM KCl、100 mM Tris-Cl pH8.3)中に加え、58℃で振盪しながら20分間、該反応を進行させた。300μlの10%TCAを添加して該反応を終結させた。次いで、該反応混合物を遠心分離し、沈殿物を除去した。上清中のSAM量をHPLCにより評価した。HPLCアッセイは、米国特許第6881837号に開示されているように行った(HPLCカラム:C18, 4.6mm x 250mm, Beckman Coulter, USA; buffer: 0.02 M citric acid, 0.01 M sodium dihydrogen phosphate; mobile phase: a. 0.4% SDS含有バッファー; b. アセトニトリル;aとbの割合は56:44;流速:1.5 ml/minute;検出波長:260 nm)。実施例7で調製された固定化細胞の比活性は0.6 U/gであった。
【0042】
実施例8
D-アミノ酸オキシダーゼの顆粒担体上の固定化
菌株BL-HS-GHA(組換えD-アミノ酸オキシダーゼGHA含有大腸菌BL21(DE3)pLysSの細胞)の調製は次のように行った:
BL-HS-GHAの起源:サーモアナエロバクテリウム・サッカロリチカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)グルコースイソメラーゼ (GenBank L09699)のDNA配列に基づき、次のPCRプライマーを設計した:
フォワードプライマー:
5’-AGCCTAGGTTAATTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGAATAAATATTTTGAGA
リバースプライマー:
5’-ATAAGCTCAGCGGCGCGCCTTATTCTGCAAACAAATAC
DNAテンプレートとしてサーモアナエロバクテリウム・サッカロリチカム(ATCC, USA)を用い、フォワード及びリバースプライマーを用いて、1,376 bpのDNA断片を増幅した。PCR増幅条件は次の通りである:50 ng T. サッカロリチカムDNA、0.4μM GI-NdeI、0.4μM GI-EcoRI、50μM dATP、50μM dTTP、50μM dCTP、50μM dGTP、20 mM Tris-HCl (pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、2 mM MgSO4、0.1% Triton X-100、2.5 U Platinum Taq High Fidelity DNAポリメラーゼ (Invitrogen)。容量を滅菌蒸留水で50μLに調節した。PCR増幅は次のようにプログラムした:95℃、5分間;次いで35サイクルの94℃、1分;50℃、1分;72℃、3分;及び72℃、10分。PCR産物を、0.8% アガロースゲル電気泳動により分離し、精製し、TAクローニング方法によりpGEMT-Easy (Promega)中にクローン化してpGEMT-Easy-GIを調製し、これを、NdeI及びEcoRIで消化し、0.8% アガロースゲル電気泳動による分離後に精製した。この断片を、NdeI及びEcoRIで消化したpRSET-lac-kanベクターとライゲートし、pRSET-lac-GI-kanを生成した。10プライマー対の配列(表3)を、既知のhok/sok DNA配列(GenBank X05813)に基づいて設計した。PCR遺伝子の構築は、Kikuchi, M. et al.(1999, Gene 236:159-167)に従って、幾つかの工程に改変を加えて行った。PCR増幅条件は次の通りである:20 ngの各プライマー、50μM dATP、50μM dTTP、50μM dCTP、50μM dGTP、20 mM Tris-HCl (pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、2 mM MgSO4、0.1% Triton X-100、2.5U Pfu DNAポリメラーゼ(Promega)。その容量は滅菌蒸留水で50 μLに調節した。PCR増幅は次のようにプログラムした:95℃、4分間;次いで30サイクルの94℃、1.5分間;50℃、1.5分間;72℃、5分間;及び72℃、10分間。5μLのPCR反応混合物を、同じ条件下で、プライマー1及び10を用いて増幅した。5’及び3’末端にAscI及びEcoRI制限部位をそれぞれ有する580 bpの長さのPCR産物を得た。PCR産物を0.8% アガロースゲル電気泳動により分離し、精製し、及びAscI及びEcoRIで消化した。この断片を、AscI及びEcoRIで消化したpRSET-lac-GI-kanとライゲートし、pRSET-lac-GI-hok/sok-kanを生成した。
【表3】

【0043】
1,074 bpの長さのDNA断片(D-アミノ酸オキシダーゼ変異体GHA遺伝子を含む)を、プラスミドpRSET-kan-DAOGHA(中国特許第CN1680558A号)がNdeI及びBglIIにより消化された後に得た。この断片を0.8% アガロースゲル電気泳動により分離し、精製し、NdeI及びBglIIにより消化したpRSET-lac-GI-hok/sok-kanとライゲートし、pHS-GHAを生成した(配列表の配列番号3を参照)。大腸菌BL21(DE3)pLysS (Novagen)のコンピテントセルを、pHS-GHAで形質転換し、菌株BL-HS-GHAを生成した。
【0044】
BL-HS-GHA(組換えD-アミノ酸オキシダーゼGHA含有大腸菌BL21 (DE3) pLysS)の細胞の調製は次の通りであった:大腸菌BL-HS-GHAの細胞のシングルコロニーを、カナマイシン(50 μg/mL)含有LB寒天プレート培地から単離し、カナマイシン(50 μg/mL)含有2×5 ml LBブロス中に接種した。この細胞を37℃で8時間インキュベートし(振盪機の回転数は250 rpmであった)、カナマイシン(100 μg/mL)及びクロラムフェニコール(40 μg/mL)を含有する2×50 ml 播種培地に接種した。この細胞を30℃で16時間インキュベートした(振盪機の回転数は400 rpmであった)。
【0045】
コーンスティープ液1の調製:
300グラムのコーンスティープ固体(North China Pharmaceutical Kangxin Co Ltd製)を300 mLの蒸留水に溶解し、混合し、遠心分離した(5,000 g、8分間)。この上清がコーンスティープ液1である。その沈殿物は後の使用のために保存した。
【0046】
コーンスティープ液2の調製:
得られた沈殿物を、600 mLの蒸留水中に溶解し、混合し、遠心分離した(5,000 g、8分間)。この上清がコーンスティープ液2である。
【0047】
50 mLの播種培地は以下の成分を含む:
コーンスティープ液1 4 mL
コーンスティープ液2 4 mL
イーストエクストラクト 0.2 g
硫酸アンモニウム 0.075g
リン酸水素二ナトリウム 0.25 g
リン酸二水素カリウム 0.04 g
塩化ナトリウム 0.075 g
この混合物を50 mLの蒸留水に溶解し、10Nの水酸化ナトリウムでpHを7.15に調整し、次いで、この溶液を高温で滅菌した。
【0048】
種を一晩発酵させ、合計で100 mLの種を、カナマイシン(50 μg/mL)を含有する2 Lの発酵タンク(BIOENGINEERING, Benchtop Fermentor, KLF2000)に接種した。
【0049】
2Lの発酵培地の組成を以下に示した:
コーンスティープ液1 160 mL
コーンスティープ液2 160 mL
イーストエクストラクト 8 g
硫酸アンモニウム 3 g
リン酸水素二ナトリウム 10 g
リン酸二水素カリウム 1 g
塩化ナトリウム 3 g
この混合物を、1.9 Lの蒸留水に溶解し、10N 水酸化ナトリウムでpHを7.15に調整し、次いで該溶液を、2 Lの発酵タンク(BIOENGINEERING, Benchtop Fermentor, KLF2000)中で、高温で滅菌した。
【0050】
グルコース(12.5 g)を50 mLの蒸留水に溶解し、この溶液を高温で滅菌した。硫酸マグネシウム(1.25 g)を50 mLの蒸留水中に溶解し、この溶液を高温で滅菌した。滅菌したグルコース及び硫酸マグネシウムを、発酵の前に2 Lの発酵タンク中においた。
【0051】
サプリメントの調製:
それぞれ250 mLのコーンスティープ液1及びコーンスティープ液2を混合し、その混合物のpHを10N水酸化ナトリウムで7.25に調整し、次いで、その混合物を高温で滅菌した。
【0052】
2.25 gの硫酸アンモニウム、7.56 gのリン酸水素二ナトリウム、1.2 gのリン酸二水素カリウム及び2.25 gの塩化ナトリウムを含有する60 mLの蒸留水を高温で滅菌した。
【0053】
15グラムのイーストエクストラクトを100 mLの蒸留水に溶解し、次いでこの溶液を高温で滅菌した。
70グラムのグルコースを140 mLの蒸留水に溶解し、次いでこの溶液を高温で滅菌した。
30 mLのグリセロールを10 mLの蒸留水と混合し、次いでこの溶液を高温で滅菌した。
20グラムの硫酸マグネシウムを30 mLの蒸留水に溶解し、次いでこの溶液を高温で滅菌した。
上記の溶液を混合し、カナマイシンを最終濃度50 μg/mLで添加し、2 mLの消泡剤を加えた。
【0054】
細胞を35℃で増殖させた。最初の6時間に、この溶液のpHが6.9〜7.2に上昇したとき、サプリメントを加えた(50 mL/hour)。この細胞をさらに26時間、平衡条件下(5Nの水酸化ナトリウムでpHを7.2に維持し、溶解酸素含量pO2 は0.5%未満であった)で増殖させた。
【0055】
発酵後、この混合物を4℃で遠心分離し(5,000g、8分間)、上清を除去し、198 gの細胞ペレットを得た。この細胞を600 mLのリン酸ナトリウムバッファー(50 mM, pH7.5)に再懸濁し、ダイノミル(dyno-mill)(DYNO-MILL TYP KL, 0.2 mm 直径ビーズ、WA Bachofen)中で、50 mL/分の流量で破壊した。
【0056】
残留細胞を800 mLのリン酸ナトリウムバッファー(50 mM、pH 7.5)で洗浄した。溶解した細胞懸濁液を、55℃で30分間、ウォーターバス中でインキュベートし、高速(10,000、30分間)で遠心分離し、上清を得た。これは、粗製組換えD-アミノ酸オキシダーゼGHAを含んだ。D-アミノ酸オキシダーゼの精製を、Alonso, J., Barredo, J.L., Diez, B., Mellado, E., Salto, F., Garcia, J.L., Cortes, E. (1998, Microbiology 144:1095-1101)に従って行った。グリセロールを粗製D-アミノ酸オキシダーゼGHAに、最終濃度10%で加え、そのpHを5N水酸化ナトリウムで8に調整し、次いで、該混合物を遠心分離し(13,000g、30分間)、上清を収集した。DEAE-セルロースイオン交換樹脂(Sigma, D-0909)を、製造者の説明書に従って調製した。各1 mLの粗製酵素抽出物を、0.5 mL DEAE-セルロースイオン交換樹脂と混合し、該混合物を4℃で5時間撹拌した(100 rpm/分)。この酵素溶液を濾過漏斗(Buchner filter funnel, 120 mm P1)により濾過した。DEAE-セルロースイオン交換樹脂を3容積の40 mM リン酸二水素カリウムバッファー(10% グリセロールを含む)で洗浄し、次いで、2容積の400 mM リン酸二水素カリウムバッファーで、組換えD-アミノ酸オキシダーゼ GHAを溶出した。262 gの硫酸アンモニウムを、各1Lの溶出D-アミノ酸オキシダーゼGHAに加え、該混合物を室温で15分間撹拌し(100 rpm/minute)、遠心分離(13,000g, 15分間)して上清を除去し、ペレットを収集した。この沈殿物を20 mM リン酸二水素カリウムバッファー(pH7.5)に溶解し、Millipore YM30膜を用いて限外濾過して残留硫酸アンモニウムを除去し、それ故、この酵素溶液は25 mg/mLに濃縮された。このタンパク質の純度を、SDS-PAGEにより測定した。重量3.75 gのウシ血清(オバルブミン)及び112.5 mlの水を、25 mlのD-アミノ酸オキシダーゼ酵素溶液(25 mg/mL)に加え、この混合物を完全に撹拌して、希釈酵素溶液を生成した。
【0057】
5グラムのメラミン発泡体を15 mm3の立方体にカットし、ナイロンメッシュバッグ中に置いた。次いで、固定化を、以下のように行った:a) 50 mlの希釈酵素溶液を該発泡体立方体に加え、これを手で押し、該成分を均一に混合させた;b) 400 mlの0.05% PEI溶液(pH 7.0)を該発泡体に加え、これを少なくとも5分間手で押し、該成分を混合させ、次いで再び手で押し、未吸着液体を除去した;c) 400 mlの0.05 % グルタルアルデヒド溶液を該発泡体に加え、これを手で繰り返し押し、該成分を混合させ、5分間静置し、次いで再び手で押し、未吸着液体を除去した;d) 工程(a)〜(c)を3回繰り返し、次いで、該発泡体を手で押し、水で3回洗浄し、再び手で押して未吸着液体を除去し、その後、該発泡体を流動空気下で5-10時間乾燥した。発現されたD-アミノ酸オキシダーゼを含む固定化大腸菌細胞の30グラムの顆粒を得た。
【0058】
該酵素の活性を、Isogai, T., Ono, H., Ishitani, Y., Kojo, H., Ueda, Y., Kohsaka, M. (1990, J Biochem [Tokyo]. 108, 1063-1069)の幾つかの工程に改変を加えたものに従って測定した。詳細には、発現されたD-アミノ酸オキシダーゼを含む5 gの固定化大腸菌を、酸素を補充した75 mMのファロスポリンC水溶性ナトリウムに再懸濁した。この混合物を、撹拌しながら22℃で60分間、反応させた。100μlの反応混合物を0、15、30分の時点で集め、10μlの3%過酸化水素と混合した。50μlの10% TCAと混合してこの反応を終結させ、該混合物を遠心分離した(10,000g、3分間)。10μlの上清を990μlのHPLC移動相と混合し、該混合物を検出用のHPLCカラムにロードした。HPLCカラム:Diamonsil(登録商標)C18、250×4.6mm (Dikma Technologies, Beijing);移動相:50 mM K2HPO4/KH2PO4 (pH 7.0)、5% アセトニトリル;カラム温度:30℃;流速:1ml/分;検出波長:260 nm UV。1ユニットの酵素活性は、上記の条件下で、1分間に、1μモルのセファロスポリンCをグルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸に転換するために必要な酵素の量として定義した。実施例8で調製した固定化酵素の比活性は、初期15分間で156 U/gであった。
【0059】
実施例9
発現されたグルコースイソメラーゼを含む大腸菌細胞の条片担体上での固定化
細胞を、実施例2で記載したように調製し、5容積の蒸留水に懸濁した。メラミン発泡体(4.8g)を、0.5×10×120 cmの次元の条片(strips)にカットした。次いで、以下のように固定化を行ったa) 発泡体条片を細胞懸濁液中に浸漬し、手で押して該発泡体中の細胞懸濁液の均一な分布を確実にし、一対のローラーを通して圧搾して未吸着溶液を除去した。二つのローラーの間のギャップは、200 gの細胞懸濁液が該発泡体に吸着されるように調節した;b) 500 mlの0.1% PEI (pH 7.0)を該発泡体に加え、手で押してPEIの均一な分布を確実にし、該発泡体を再びローラーに通して、未吸着溶液を除去した;c) 500 mlの0.1%グルタルアルデヒド溶液を発泡体に加え、手で押し、液体の均一な分布を確実にし、及び未吸着液体を除去し、次いで、該発泡体を5分間静置した;d) 工程(a)〜(c)を5回繰り返した。ローラー間のギャップは、工程(a)において、約100 gの細胞懸濁液が吸着されるように調節した。該発泡体を洗浄し、水中で1回手で押し、次いで、圧搾して未吸着液体を除去した。該発泡体を流動空気下で5-10時間、乾燥した後、グルコースイソメラーゼを含む24グラムの固定化大腸菌細胞の条片を得た。その酵素活性を該細胞条片の小部分を用いて、実施例2に開示したように測定した。その酵素比活性は6,608 U/gであった。
【0060】
実施例10
発現されたグルコースイソメラーゼを含む固定化大腸菌細胞を備えたリール様円柱カラム
実施例9で調製したものに固定化された細胞を有する条片の一部(3.5g)を、円柱状コア(図1a)に沿って巻きつけ、直径1.8 cm、高さ9.6 cmのカラムを形成した(図1b)。巻き取りの前に、該発泡体条片の両端を、内部コアと外壁の間のギャップが発達するのを防ぐために、傾斜表面にカットした。該カラムの表面を4 cm 幅のゴムバンド(図1c)で包んだ。二つのインターフェースデバイス(図1d)を、ゴムバンドでカラムの両端に固定し、ガラス接着剤で封着し、シリコンチューブ(図1e)に連結した。このカラムを、ポリウレタン絶縁物質(図1f)を用いて包んだ。
【0061】
75℃の50% (w/v)グルコースシロップ(2.5 mM リン酸、0.5 mM MgCl2, 0.05 mM CoCl2を含む、pH 6.5)を、1.62 ml/分の初期流速で、カラムに通した;その流出物は、全糖質量のフルクトースの重量で51.6%を含んだ。144時間後、流速は1.63 ml/分であり、流出物は全糖質量のフルクトースの45.6%を含んだ。
【0062】
本発明において調製されたリール様円柱カラムは、より簡単であり、設置及び除去の面から固定化酵素の顆粒よりもより効率的であり、大規模製造において有利である。またこれは、固定投資を減少させる。加えて、製造規模の変化に合わせるために、カラムを単独で又は可変数を並行に又は連続して組み合わせて、及び長くして、用いることができる。また、酵素活性は、操作プロセスの間に徐々に減少する:流入端に近い程、活性の損失が速くなる。時間の経過後には、流入端と流出端の間の酵素活性の著しい相違がある。本発明の生成物の使用により、それらの活性が減少したカラムは、固定化酵素/細胞の新しいカラムに容易に交換でき、従って、全デバイスの寿命及び生産性が改善される。これは、現存する固定化酵素の顆粒によってはできないことである。
【0063】
実施例11
格子構造様(Lattice Structure-like)条片でのグルコースイソメラーゼの固定化
実施例2において調製された細菌細胞を、3容積の蒸留水に再懸濁し、高圧ホモジナイザーで破壊した(Niro Soavi S.P.A., Type NS1001L 2K)。得られた液体を80℃で5分間熱処理し、遠心分離し、次いで、10,000分子量をカットオフする限外濾過膜を通して上清を15 mg/mlのタンパク質濃度に濃縮し、粗製グルコースイソメラーゼ酵素溶液を得た。65 mlの1% グルタルアルデヒド溶液を、650 mlの粗製酵素溶液に加えてアルデヒドグルコースイソメラーゼ溶液を生成し、該混合物を30分間穏やかに撹拌しながら混合した。
【0064】
メラミン発泡体を0.5×50×125 cm (3.25 g)の次元の条片にカットし、固定化を次のように行った:a) 上記のように調製した130 mlのアルデヒドグルコースイソメラーゼ溶液を、発泡体条片に加え、これを手で押して、該溶液を該発泡体内で均一に分布させた;b) 130 mlの0.25% PEIを該発泡体条片に加え、これを繰り返し手で押して、該成物を混合させ、該酵素及びPEI溶液を均一に分布させ、完全に反応させ、該発泡体条片を、液体が完全にクリアになるまで手で押し、次いで、該発泡体条片を再び手で押し、発泡体中の液体を除去した;c) 工程(a)〜(b)を4回繰り返し、該発泡体条片を手で押し、水で2回洗浄し、次いで、該発泡体条片を手で再び押し、未吸着の液体を除去し、流動空気下で5-10時間乾燥し、その上に固定化されたグルコースイソメラーゼを有する、21.6gの格子様条片(lattice-like strips)を得た。固定化された酵素の比活性は、6,330 U/gであった。グルコースイソメラーゼ活性は、実施例2に記載したように測定した。
【0065】
挙げられた文献及び特許出願の開示は、参照によって本明細書に援用される。本発明は、上記実施例の詳細な記載に限定されない。種々の改変は、当該分野の技術者によって行われることができ、それらの改変は、本発明の請求項の範囲内にあるとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、固定化細胞をその上に有する、リール形状の担体をロードした充填層固定化カラムの調製を示す。a:インナーコア、b:その中に固定化された細胞を備えたリール形状担体、c:ゴムバンド、d:インターフェースデバイス、e:シリコンチューブ、f:ポリウレタン絶縁物質。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化酵素又は固定化細胞を調製するための担体であって、該担体が開孔を有する多孔質有機発泡物質から作られることを特徴とする担体。
【請求項2】
請求項1に記載の担体であって、前記担体が少なくとも0.2 mm/sの水天然濡れ率(水天然 wetting rate)を有することを特徴とする担体。
【請求項3】
請求項2に記載の担体であって、前記担体がポリビニルアルコール発泡体、パルプ発泡体、及びメラミン発泡体から選択される少なくとも一つの発泡体である担体。
【請求項4】
請求項3に記載の担体であって、前記担体が顆粒、ひも、シート、カラム又はブロックの形状であることを特徴とする担体。
【請求項5】
固定化酵素又は固定化細胞を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程を含む方法:
a)開孔を有する多孔質有機発泡物質を、固定化担体として用いること;及び
b)前記担体上での前記酵素又は細胞の凝結及び架橋結合すること。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記担体が少なくとも0.2 mm/sの水天然 濡れ率を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記担体がポリビニルアルコール発泡体、パルプ発泡体、及びメラミン発泡体から選択される少なくとも一つの発泡体であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記担体が顆粒、ひも、シート、カラム又はブロックの形状であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記担体が、リール様円柱カラムに巻きつけられることのできるひも形物質であり、該リール様円柱カラム自体を反応カラムとして用いることができることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、前記凝結及び架橋結合することが、タンパク質凝結剤及び多価アルデヒド化合物を用いることによって達成され、酵素タンパク質又は細胞が凝結され、前記担体の孔壁に架橋結合されて沈積されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記タンパク質凝結剤が、キトサン、ポリエチレンイミン(PEI)、又はカルボキシメチルポリエチレンイミンである方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記多価アルデヒド化合物がグルタルアルデヒドである方法。
【請求項13】
請求項5に記載の方法であって、前記酵素がグルコースイソメラーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、グルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸アシラーゼ、及びアデノシルメチオニン合成酵素から選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項5に記載の方法であって、グルコースイソメラーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、グルタリル-7-アミノセファロスポラニン酸アシラーゼ、及びアデノシルメチオニン合成酵素から選択される少なくとも一つの酵素が、前記細胞中で発現されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記細胞が大腸菌細胞であることを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519019(P2009−519019A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544736(P2008−544736)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002512
【国際公開番号】WO2007/068173
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(308040753)
【Fターム(参考)】