説明

酵素的過酸生成用の改善されたペルヒドロラーゼ

【要約書】
本明細書に開示されているのは、構造的にCE−7酵素として分類され、過加水分解活性を有する変異酵素である。また、本明細書に開示されているのは、上述した変異酵素を使用してカルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生成するための方法ならびに、この変異酵素を含む方法および組成物である。さらに、本明細書に記載の方法で生成したペルオキシカルボン酸を含む殺菌剤配合物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ2008年10月3日にファイルされた、米国仮特許出願第61/102,505号明細書、同第61/102,512号明細書、同第61/102,514号明細書、同第61/102,520号明細書、同第61/102,531号明細書、同第61/102,539号明細書(各々全体を参照により本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、酵素的ペルオキシカルボン酸合成およびin situ酵素触媒作用の分野に関する。特に、ペルヒドロリシス活性が改善された変異酵素触媒に関する組成物および方法が得られる。少なくとも1種類のペルオキシカルボン酸が、表面の殺菌または消毒、医療機器の滅菌、食品加工設備の滅菌に有効かつ、漂白、脱染、脱臭、殺菌または消毒などの繊維製品および洗濯用途で使用するのに適した十分な濃度で生成される。
【背景技術】
【0003】
ペルオキシカルボン酸組成物は、効果的な抗微生物剤であることが報告されている。望ましくない微生物の成長が生じないように、硬質表面、肉製品、生きた植物組織、医療装置を洗浄、殺菌および/または消毒するための方法が説明されている(特許文献1〜5)。ペルオキシカルボン酸は、洗濯洗剤用途での漂白組成物を調製するにあたって有用であるとも報告されている(特許文献6〜8)。
【0004】
ペルオキシカルボン酸は、カルボン酸および過酸化水素の化学反応によって調製可能である(非特許文献1を参照のこと)。この反応は通常、濃硫酸などの強い無機酸によって触媒される。過酸化水素とカルボン酸との反応は平衡反応であり、ペルオキシカルボン酸の生成は、過剰濃度のペルオキシドおよび/またはカルボン酸を使用するか、あるいは水を除去することに支えられている。
【0005】
ペルオキシカルボン酸ベースの殺菌剤または漂白剤の中には、ペルオキシカルボン酸、過酸化水素、対応するカルボン酸の平衡混合物で構成されるものもある。これらの商業的なペルオキシカルボン酸洗浄システムの欠点のひとつに、ペルオキシカルボン酸が、溶液中で経時的に不安定なことが多い点があげられる。安定性の問題を解決するひとつの方法として、別個であれば長時間にわたって安定する複数の反応成分を合わせることで、使用直前にペルオキシカルボン酸を生成することがある。好ましくは、個々の反応成分は、保管が容易で、取り扱いが比較的安全で、混合時に有効濃度のペルオキシカルボン酸をすみやかに生成できるものである。
【0006】
最近になって、炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリがペルヒドロラーゼ活性を持つことが報告された。これらの「ペルヒドロラーゼ」酵素は、過酸素の源と合わせると多岐にわたるカルボン酸エステル基質からペルオキシカルボン酸を生成するのに特に効果的であることが実証されている(特許文献9および10、11、12(各々その内容全体を参照により本明細書に援用する)を参照のこと)。炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリのメンバの中には、アルコール、ジオール、グリセロールのアセチルエステルから、反応成分を混合後1分以内に4000〜5000ppm、5分〜30分の間で最大9000ppmの過酢酸を生成するのに十分なペルヒドロリシス活性を持つことが示されているものもある(特許文献12)。
【0007】
酵素的ペルヒドロリシスに基づいて多くの漂白および/または殺菌生成物を商業化する機能は、酵素触媒製造コストに左右されることがある。ペルヒドロリシス活性が改善された酵素触媒を使用すれば、業務用生成物における酵素触媒の量が低減されることもあり、生成コストが十分に小さくなり得る。それ自体、同定するペルヒドロリシス活性が改善された酵素触媒を同定する必要性が依然としてある。
【0008】
さらに、酵素的ペルヒドロリシスは一般に、水性反応条件を用いて実施される。ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒は一般に、反応混合物のpHを下げることのあるカルボン酸を形成しつつ加水分解活性を呈する。それ自体、エステル対ペルオキシカルボン酸のペルヒドロリシスに対する選択性が、同じエステル対カルボン酸の加水分解の場合よりも高いペルヒドロラーゼを利用するのが望ましい;「P/H」比(ペルヒドロリシス率/加水分解率)が、ペルヒドロリシスに対するペルヒドロラーゼの選択性を特徴付けるひとつの方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,545,047号明細書
【特許文献2】米国特許第6,183,807号明細書
【特許文献3】米国特許第6,518,307号明細書
【特許文献4】米国特許第5,683,724号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0026846号明細書
【特許文献6】米国特許第3,974,082号明細書
【特許文献7】米国特許第5,296,161号明細書
【特許文献8】米国特許第5,364,554号明細書
【特許文献9】DiCosimo et al.に対する国際特許出願公開第WO2007/070609号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0176299号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/176783号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2009/0005590号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Organic Peroxides, Daniel Swern, ed., Vol. 1, pp 313〜516; Wiley Interscience, New York, 1971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決すべき課題は、改善されたペルヒドロリシス活性を特徴とする酵素触媒を提供することにある。この改善は、ペルオキシカルボン酸をカルボン酸エステルから生成する場合のカルボン酸エステルに対するペルヒドロラーゼ比活性の亢進および/または加水分解に比したペルヒドロリシスに対する選択性の改善であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、ペルオキシカルボン酸をカルボン酸エステルから生成する場合のペルヒドロラーゼ比活性が改善および/または加水分解に比したペルヒドロリシスに対する選択性が改善された酵素触媒を提供することによって解決される。特に、ペルヒドロラーゼ比活性が改善および/または選択性が改善された(すなわちペルヒドロリシス/加水分解活性比が改善された)CE−7ペルヒドロラーゼ変異体が得られる。本変異体を含む組成物および方法も得られる。
【0013】
一態様は、ペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドに向けたものであり、前記ポリペプチドが、構造的に、炭水化物エステラーゼファミリ7の酵素として分類され、(a)配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25とのアミノ酸配列同一性が少なくとも95%であり、ただし、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25のアミノ酸残基277に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とするか、(b)配列番号30とのアミノ酸配列同一性が少なくとも95%であり、ただし、配列番号30のアミノ酸残基278に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、配列番号5、10、15、20、25または30を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、6、7、8、9、11、12、13、14、16、17、18、19、21、22、23、24、26、27、28または29を含む。
【0014】
もうひとつの態様は、ペルヒドロリシス活性を有し、かつ構造的に、炭水化物エステラーゼファミリ7の酵素として分類される、単離されたポリペプチドに向けたものであり、前記ポリペプチドが、(a)配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25とのアミノ酸配列同一性が少なくとも95%であり、ただし、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25のアミノ酸277に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする;または(b)配列番号30とのアミノ酸配列同一性が少なくとも95%であり、ただし、配列番号30のアミノ酸278に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする。いくつかの実施形態では、ポリペプチドが、配列番号5、10、15、20、25または30を含む。
【0015】
別の態様では、カルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生成するための方法であって、
(a)以下のものを含む反応成分すなわち
(1)カルボン酸エステルであって、
(i)エステルであって、以下の構造すなわち
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、RがC2〜C7である1つ以上のエーテルリンケージを含み、
は、任意選択によりヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
mは、1からRの炭素原子数である)を有し、
水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである、1種類以上のエステルと、
(ii)グリセリドであって、以下の構造すなわち
【化1】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である)を有する1種類以上のグリセリドと、
(iii)エステルであって、以下の式すなわち
【化2】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する1種類以上のエステルと、
(iv)1種類以上のアセチル化単糖、アセチル化二糖またはアセチル化多糖と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと、
(2)過酸素の源と、
(3)上述したようなペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドと、
を含む、一組の反応成分を提供し、
(b)前記反応成分同士を好適な水性反応条件下で組み合わせることによって、ペルオキシカルボン酸を生成することを含む、
方法が得られる。
【0016】
別の態様では、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸組成物を用いて硬質表面または無生物を殺菌または消毒するための方法であって、
(a)以下のものを含む反応成分すなわち
(1)カルボン酸エステルであって、
(i)エステルであって、以下の構造すなわち
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、RがC2〜C7である1つ以上のエーテルリンケージを含み、
は、任意選択によりヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
mは、1からRの炭素原子数である)を有し、
水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである、1種類以上のエステルと、
(ii)グリセリドであって、以下の構造すなわち
【化3】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である)を有する1種類以上のグリセリドと、
(iii)エステルであって、以下の式すなわち
【化4】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1種類以上のエステルと、
(iv)1種類以上のアセチル化単糖、アセチル化二糖またはアセチル化多糖と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと、
(2)過酸素の源と、
(3)上述したようなペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドと、
を含む、一組の反応成分を提供し、
(b)前記反応成分同士を好適な水性反応条件下で組み合わせることによって、ペルオキシカルボン酸生成物を形成し、
(c)任意選択により前記ペルオキシカルボン酸生成物を希釈し、
(d)前記硬質表面または無生物を、ステップ(b)またはステップ(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させることで前記表面または前記無生物を殺菌すること
を含む、前記方法が得られる。
【0017】
もうひとつの態様は、ペルオキシカルボン酸生産システムであって、
(a)気質であって、
(i)エステルであって、以下の構造すなわち
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、RがC2〜C7である1つ以上のエーテルリンケージを含み、
は、任意選択によりヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
mは、1からRの炭素原子数である)を有し、
水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである、1種類以上のエステルと、
(ii)グリセリドであって、以下の構造すなわち
【化5】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である)を有する1種類以上のグリセリドと、
(iii)エステルであって、以下の式すなわち
【化6】

(式中、Rは、エステルであって、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する1種類以上のエステルと、
(iv)1種類以上のアセチル化単糖、アセチル化二糖またはアセチル化多糖と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択される基質と、
(b)過酸素の源と、
(c)上述したペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドと、
を含む、ペルオキシカルボン酸生成システムに向けたものである。
【0018】
別の態様は、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸組成物を使用して、漂白、染み抜き、臭いの低減、消毒または殺菌を目的として衣類または繊維製品の物品を処理するための方法であって、
(a)以下のものを含む反応成分すなわち
(1)カルボン酸エステルであって、
(i)エステルであって、以下の構造すなわち
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、RがC2〜C7である1つ以上のエーテルリンケージを含み、
は、任意選択によりヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
mは、1からRの炭素原子数である)を有し、
水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである、1種類以上のエステルと、
(ii)グリセリドであって、以下の構造すなわち
【化7】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である)を有する
1種類以上のグリセリドと、
(iii)エステルであって、以下の式すなわち
【化8】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1種類以上のエステルと、
(iv)1種類以上のアセチル化単糖、アセチル化二糖またはアセチル化多糖と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと、
(2)過酸素の源と、
(3)上述したペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドと、
を含む、一組の反応成分を提供し、
(b)前記反応成分同士を好適な水性反応条件下で組み合わせることによって、ペルオキシカルボン酸生成物を形成し、
(c)任意選択により、前記ペルオキシカルボン酸生成物を希釈し、
(d)衣類または繊維製品の前記物品を、ステップ(b)またはステップ(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させることを含み、
衣類または繊維製品の前記物品を、脱染、脱臭、殺菌、漂白するか、あるいはこれらを組み合わせる、前記方法に向けたものである。
【0019】
別の態様では、(a)上述したペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、これらの混合物からなる群から選択されるカルボン酸エステルと、を含む第1の混合物であって、無機緩衝液または有機緩衝液、腐食阻害剤、湿潤剤、これらの組み合わせからなる群から選択される別の成分を任意選択により含む、前記第1の混合物と;(b)過酸素の源と水とを含む第2の混合物であって、過酸化水素安定剤を任意選択によりさらに含む、前記第2の混合物と、を含む、配合物が得られる。
【0020】
別の態様では、(a)上述したペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と、アセチル化単糖、アセチル化二糖、アセチル化多糖、これらの組み合わせからなる群から選択されるアセチル化糖類と、を含む第1の混合物であって、無機緩衝液または有機緩衝液、腐食阻害剤、湿潤剤を任意選択によりさらに含む、前記第1の混合物と、(b)過酸素の源と水とを含む第2の混合物であって、過酸化水素安定剤を任意選択により含む前記第2の混合物と、を含む、配合物が得られる。
【0021】
もうひとつの態様では、ペルヒドロリシス活性を有するサーモトガ属(Thermotoga)アセチルキシランエステラーゼポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドが得られ、当該ポリペプチドは配列番号31のC末端保存領域を含み、ただし、ポリペプチドが、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする、配列番号31のアミノ酸93に対する置換を有する。
【0022】
別の態様では、単離されたサーモトガ属(Thermotoga)アセチルキシランエステラーゼポリペプチドが提供され、該ポリペプチドはペルヒドロリシス活性を有し、そして、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択される配列番号31のアミノ酸93に対する置換を有することを条件として、配列番号31のC末端保存領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)(配列番号32)由来のアセチルキシランエステラーゼとThermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)MSB8(配列番号36)由来のアセチルキシランエステラーゼのCLUSTALW配列比較である。
【図2a】6種類のThermotoga(サーモトガ)種のアセチルキシランエステラーゼ間のCLUSTALW配列比較である。
【図2b】図2aの続きである。
【0024】
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、米国特許施行規則第1.821〜1.825(「Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules」)に準拠し、World Intellectual Property Organization(WIPO)Standard ST.25(1998)、European Patent Convention(EPC)の配列表要件、Patent Cooperation Treaty(PCT)Rules 5.2および49.5(a−bis)ならびに、Administrative Instructionのセクション208およびAnnex Cに一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに用いる記号およびフォーマットは、米国特許施行規則第1.822に記載の規則に準拠している。
【0025】
配列番号1、2、3、4は、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0026】
配列番号5は、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)のアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体からの推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基277位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0027】
配列番号6、7、8、9は、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0028】
配列番号10は、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基277位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0029】
配列番号11、12、13、14は、Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0030】
配列番号15は、Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基277位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0031】
配列番号16、17、18、19は、Thermotoga petrophila(サーモトガ・ペトロフィラ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0032】
配列番号20は、Thermotoga petrophila(サーモトガ・ペトロフィラ)からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基277位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0033】
配列番号21、22、23、24は、本明細書で「RQ2(a)」として説明するThermotoga(サーモトガ)種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0034】
配列番号25は、本明細書で「RQ2(a)」として説明するThermotoga(サーモトガ)種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基277位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0035】
配列番号26、27、28、29は、Thermotoga(サーモトガ)種RQ2由来の第2の変異アセチルキシランエステラーゼコード領域の核酸配列である。
【0036】
配列番号30は、本明細書で「RQ2(b)」として説明するThermotoga(サーモトガ)種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼの野生型配列由来のアセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列を表し、Xaa残基278位は、Ala、Val、SerまたはThrである。
【0037】
配列番号31は、Thermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼのC末端保存領域を表す。
【0038】
配列番号32は、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)(GENBANK(登録商標)受託番号AAB70869)からのアセチルキシランエステラーゼである。
【0039】
配列番号33および34は、実施例1に記載のプライマーである。
【0040】
配列番号35は、実施例1に記載の増幅およびコドン最適化Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)核酸産物である。
【0041】
配列番号36は、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)(GENBANK(登録商標)受託番号NP 227893.1)由来のアセチルキシランエステラーゼである。
【0042】
配列番号37は、実施例10に記載された増幅Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)核酸産物である。
【0043】
配列番号38および39は、実施例10に記載のプライマーである。
【0044】
配列番号40は、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼのコドン最適化配列である。
【0045】
配列番号41は、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼのコドン最適化配列である。
【0046】
配列番号42〜193は、表1に示すフォワードプライマーおよびリバースプライマーである。
【0047】
配列番号194〜201は、表6に示すフォワードプライマーおよびリバースプライマーである。
【0048】
配列番号202は、Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0049】
配列番号203は、Thermotoga petrophila(サーモトガ・ペトロフィラ)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0050】
配列番号204は、本明細書で「RQ2(a)」として説明するThermotoga(サーモトガ)種RQ2からの第1のアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0051】
配列番号205は、本明細書で「RQ2(b)」として説明するThermotoga(サーモトガ)種RQ2からの第2のアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0052】
配列番号206および207は、実施例10に記載したようなフォワードプライマーおよびリバースプライマーである。
【0053】
配列番号208は、プラスミドpSW207の作製に用いた配列番号206および207によって増幅された核酸産物の核酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書に開示されるのは、構造的にCE−7酵素として分類され、ペルヒドロリシス活性を有する変異酵素である。また、本明細書に開示されるのは、上述した変異酵素を用いてカルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生成するための方法ならびに、殺菌および洗濯での用途に当該変異体を使用するいくつかの方法でもある。さらに、本明細書に記載したような方法で製造されるペルオキシカルボン酸を含む殺菌剤および/または洗濯用配合物も提供される。
【0055】
本開示では、多数の用語および略語を使用する。特に明記しないかぎり、以下の定義を適用する。
【0056】
本明細書で使用する場合、本発明の要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」、「the」は、当該要素または成分の事例数(すなわち出現数)に関して非限定的であることを想定している。よって、「a」、「an」、「the」は、1つまたは少なくとも1つを含むものとして読むべきであり、要素または成分の単語の単数形は、それが単数であることが明示的に示されている場合を除いて複数形も含む。
【0057】
本明細書で使用する場合、「comprising(含む)」という表現は、特許請求の範囲に言及したような表記の特徴、整数、ステップまたは成分が存在することを意味するが、他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群が1つ以上存在したり追加されたりすることを除外するものではない。「comprising(含む)」という表現は、「consisting essentially of(本質的に〜からなる)」および「consisting of(〜からなる)」という表現に包含される実施形態を含むことを想定している。同様に、「consisting essentially of(本質的に〜からなる)」という表現は、「consisting of(〜からなる)」という表現に包含される実施形態を含むことを想定している。
【0058】
本明細書で使用する場合、本発明のまたは使用される成分または反応物の量を修飾する「約」という表現は、たとえば、実世界で濃縮物または溶液を生成するのに用いられる一般的な測定および液体処理手順;これらの手順での不注意による誤差;組成物の生成または方法の実施で用いる成分の製造業者、供給元または純度の差などによって生じ得る、数値量のばらつきを示す。また、「約」という用語は、特定の初期混合物に起因して組成物ごとに異なる平衡条件がゆえに差が出る量についても包含する。「約」という表現で修飾されるか否かを問わず、特許請求の範囲には当該量の等価物を含む。
【0059】
存在する場合、すべての範囲はその上限と下限の値も含み、組み合わせることが可能である。たとえば、「1〜5」の範囲があげられている場合、該当する範囲は、「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2と4〜5」、「1〜3と5」などの範囲を含むものと理解されたい。
【0060】
本明細書で使用する場合、「基質」、「好適な基質」、「カルボン酸エステル基質」という用語は、同義に、具体的に
(a)エステルであって、以下の構造すなわち
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、RがC2〜C7である1つ以上のエーテルリンケージを含み、
は、任意選択によりヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
mは、1からRの炭素原子数である)を有し、
水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである、
1種類以上のエステル;または
(b)グリセリドであって、以下の構造すなわち
【化9】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である)を有する
1種類以上のグリセリド;または
(c)エステルであって、以下の式すなわち
【化10】

(式中、Rは、任意選択によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1種類以上のエステル;または
(d)1種類以上のアセチル化単糖、アセチル化二糖またはアセチル化多糖;または
(e)(a)〜(d)の任意の組み合わせ
を示す。
【0061】
前記カルボン酸エステル基質の例は、モノアセチン;トリアセチン;モノプロピオニン;ジプロピオニン;トリプロピオニン;モノブチリン;ジブチリン;トリブチリン;グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシランフラグメント;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−グルカール;プロピレングリコールジアセテート;エチレングリコールジアセテート;1,2−エタンジオールのモノエステルまたはジエステル;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;2,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,2−ペンタンジオール;2,5−ペンタンジオール;1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;1,6−ヘキサンジオール;またはこれらの任意の組み合わせを含むものであってもよい。
【0062】
本明細書で使用する場合、「過酸(peracid)」という用語は、過酸素酸、ペルオキシカルボン酸、過酸(peroxy acid)、過カルボン酸、ペルオキソ酸と同義である。
【0063】
本明細書で使用する場合、「過酢酸」という用語は「PAA」と略され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキソ酸ならびに、CAS登録番号79−21−0の他のすべての類義語と同義である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「モノアセチン」という用語は、グリセロールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリルモノアセテートと同義である。
【0065】
本明細書で使用する場合、「ジアセチン」という用語は、グリセロールジアセテート;グリセリンジアセテート、グリセリルジアセテートならびに、CAS登録番号25395−31−7の他のすべての類義語と同義である。
【0066】
本明細書で使用する場合、「トリアセチン」という用語は、グリセリントリアセテート;グリセロールトリアセテート;グリセリルトリアセテート、1,2,3−トリアセトキシプロパン;1,2,3−プロパントリオールトリアセテートならびに、CAS登録番号102−76−1の他のすべての類義語と同義である。
【0067】
本明細書で使用する場合、「モノブチリン」という用語は、グリセロールモノブチレート、グリセリンモノブチレート、グリセリルモノブチレートと同義である。
【0068】
本明細書で使用する場合、「ジブチリン」という用語は、グリセロールジブチレート、グリセリルジブチレートと同義である。
【0069】
本明細書で使用する場合、「トリブチリン」という用語は、グリセロールトリブチレート、1,2,3−トリブチリルグリセロールならびに、CAS登録番号60−01−5の他のすべての類義語と同義である。
【0070】
本明細書で使用する場合、「モノプロピオニン」という用語は、グリセロールモノプロピオネート、グリセリンモノプロピオネート、グリセリルモノプロピオネートと同義である。
【0071】
本明細書で使用する場合、「ジプロピオニン」という用語は、グリセロールジプロピオネート、グリセリルジプロピオネートと同義である。
【0072】
本明細書で使用する場合、「トリプロピオニン」という用語は、グリセリルトリプロピオネート、グリセロールトリプロピオネート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロールならびに、CAS登録番号139−45−7の他のすべての類義語と同義である。
【0073】
本明細書で使用する場合、「酢酸エチル」という用語は、酢酸エーテル、アセトキシエタン、エタン酸エチル、酢酸エチルエステル、エタン酸エチルエステル、エチル酢酸エステルならびに、CAS登録番号141−78−6の他のすべての類義語と同義である。
【0074】
本明細書で使用する場合、「エチルラクテート」という用語は、乳酸エチルエステルならびに、CAS登録番号97−64−3の他のすべての類義語と同義である。
【0075】
本明細書で使用する場合、「アセチル化糖」および「アセチル化糖類」という用語は、少なくとも1つのアセチル基を有する単糖、二糖、多糖を示す。例として、グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシランフラグメント;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−グルカールがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、「ヒドロカルビル部分」という用語は、単結合、二重結合または三重結合の炭素炭素結合および/またはエーテルリンケージによって結合され、水素原子で置換されている、直鎖、分枝鎖または環状配置の炭素原子を意味する。当該ヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であってもよい。ヒドロカルビル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルがあげられる。好ましい実施形態では、このヒドロカルビル部分は、炭素炭素単結合および/またはエーテルリンケージによって結合され、水素原子で置換されている、直鎖、分枝鎖または環状配置の炭素原子である。
【0077】
本明細書で使用する場合、1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;2,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,2−ペンタンジオール;2,5−ペンタンジオール;1,6−ペンタンジオール;1,2−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;1,6−ヘキサンジオール;これらの混合物の「モノエステル」および「ジエステル」という言い回しは、式RC(O)O(式中、RはC1〜C7の線状ヒドロカルビル部分である)の少なくとも1つのエステル基を有する前記化合物を示す。一実施形態では、カルボン酸エステル基質が、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールジアセテート(EDGA)、これらの混合物からなる群から選択される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「プロピレングリコールジアセテート」という用語は、1,2−ジアセトキシプロパン、プロピレンジアセテート、1,2−プロパンジオールジアセテートならびに、CAS登録番号623−84−7の他のすべての類義語と同義である。
【0079】
本明細書で使用する場合、「エチレングリコールジアセテート」という用語は、1,2−ジアセトキシエタン、エチレンジアセテート、グリコールジアセテートならびに、CAS登録番号111−55−7の他のすべての類義語と同義である。
【0080】
本明細書で使用する場合、「好適な酵素的反応混合物」、「過酸(peracid)のin situ生成に適した成分」、「好適な反応成分」、「好適な水性反応混合物」という表現は、反応物と酵素触媒とが接触するようになる材料および水を示す。本明細書では好適な水性反応混合物の成分が得られ、当業者であれば、この方法に適した成分のバリエーションが自明であろう。一実施形態では、好適な酵素的反応混合物を用いることで、反応成分と組み合わせた際にin situでペルオキシカルボン酸が生成される。そのようなものとして、反応成分は、1種類以上の反応成分が使用時まで別々に維持される多成分系として提供されてもよい。もうひとつの実施形態では、反応成分を先に組み合わせてペルオキシカルボン酸の水溶液を生成し、これをあとから殺菌および/または漂白対象の表面に接触させる。複数の活性成分を分離し、それらを組み合わせるための系および手段の設計は従来技術において周知であり、通常は個々の反応成分の物理的形態に左右されることになる。たとえば、複数の活性流体(液体−液体)系では一般に、マルチチャンバ式の分注ボトルまたは二相系(米国特許出願公開第2005/0139608号明細書;米国特許第5,398,846号明細書;同第5,624,634号明細書;同第6,391,840号明細書;欧州特許第0807156号B1;米国特許出願公開第2005/0008526号明細書;PCT公開第WO00/61713号A1パンフレット)を使用しており、これらは反応性の流体同士を混合すると所望の漂白剤が生産される漂白用途などで見られる。ペルオキシカルボン酸を生成するのに用いられる多成分系の他の形態としては、1種類以上の固体成分または固体−液体成分の組み合わせ、たとえば粉末(米国特許第5,116,575号明細書など)、多層錠(米国特許第6,210,639号明細書など)、複数のコンパートメントを有する水溶性のパケット(米国特許第6,995,125号明細書など)、水の添加時に反応する固体の凝集体(米国特許第6,319,888号明細書など)として設計されたものがあげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、2種類の別個の成分として提供されることで、2種類の成分を組み合わせた際にペルオキシカルボン酸殺菌剤が生成される多成分配合物が得られる。もうひとつの実施形態では、
a)配合物であって、以下のもの
i)本明細書に開示したような酵素粉末と、
ii)カルボン酸エステル基質と、
を含む第1の成分であって、無機緩衝液または有機緩衝液、腐食阻害剤、湿潤剤、これらの組み合わせからなる群から選択される別の成分を任意選択により含む前記第1の成分と、
b)過酸素の源および水を含む第2の成分であって、過酸化水素安定剤を任意選択により含む前記第2の成分と、
を含む配合物が得られる。
【0081】
もうひとつの実施形態では、第1の混合物のカルボン酸エステルが、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、これらの組み合わせからなる群から選択される。もうひとつの実施形態では、第1の混合物のカルボン酸エステルが、アセチル化糖類である。もうひとつの実施形態では、第1の混合物の酵素触媒が微粒子固体である。もうひとつの実施形態では、第1の反応混合物が固体錠剤または粉末である。
【0082】
本明細書で使用する場合、「ペルヒドロリシス」という用語は、ペルオキシカルボン酸を形成するための選択された基質とペルオキシドとの反応として定義される。一般に、無機過酸化物は、触媒の存在下にて、選択された基質と反応し、ペルオキシカルボン酸を生産する。本明細書で使用する場合、「化学的なペルヒドロリシス」という表現は、基質(ペルオキシカルボン酸前駆物質)と過酸化水素源とを組み合わせるペルヒドロリシス反応を含み、この場合のペルオキシカルボン酸は酵素触媒の非存在下で形成される。
【0083】
本明細書で使用する場合、「ペルヒドロラーゼ比活性」または「ペルヒドロラーゼ活性」という用語は、単位質量(ミリグラムなど)のタンパク質、乾燥細胞重量または固定化触媒重量あたりの触媒活性を意味する。
【0084】
本明細書で使用する場合、「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、特定の温度で1分あたり1μmolのペルオキシカルボン酸生成物を生成するのに必要なペルヒドロラーゼ活性の量として定義される。
【0085】
本明細書で使用する場合、「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」という用語は、ペルヒドロリシス活性を有する酵素を含む触媒を示し、微生物細胞全体、透過処理した微生物細胞(単数または複数)、微生物細胞抽出物の1種類以上の細胞成分、部分精製酵素または精製酵素であってもよい。また、酵素触媒は、化学修飾されていてもよい(ペグ化または架橋試薬との反応によるなど)。ペルヒドロラーゼ触媒は、当業者間で周知の方法を用いて可溶性または不溶性支持体に固定化されていてもよい;たとえば、Immobilization of Enzymes and Cells; Gordon F. Bickerstaff, Editor; Humana Press, Totowa, NJ, USA; 1997を参照のこと。本明細書で説明するように、ペルヒドロリシス活性を有する本酵素はいずれも、構造的に酵素の炭水化物ファミリエステラーゼファミリ7(CE−7ファミリ)のメンバである(Coutinho, P.M., Henrissat, B. “Carbohydrate−active enzymes: an integrated database approach” in Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering, H.J. Gilbert, G. Davies, B. Henrissat and B. Svensson eds., (1999) The Royal Society of Chemistry, Cambridge, pp. 3〜12を参照のこと)。酵素のCE−7ファミリは、過酸素の源と組み合わせた場合に多岐にわたるカルボン酸エステル基質からペルオキシカルボン酸を生成するのに特に効果的であることが実証されている(DiCosimoらによるPCT公開第WO2007/070609号パンフレットおよび米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、同第2008/176783号明細書、同第2009/0005590号明細書(その内容全体を参照により本明細書に援用する)を参照のこと)。CE−7酵素ファミリは、セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH;E.C.3.1.1.41)およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)を含む。CE−7酵素ファミリのメンバには、同じ保存されたシグネチャモチーフがある(Vincent et al., J. Mol. Biol., 330:593〜606 (2003))。
【0086】
本明細書で使用する場合、「シグネチャモチーフ」、「CE−7シグネチャモチーフ」、「診断モチーフ」という用語は、定義された活性を有する酵素ファミリ間で共通の保存された構造を示す。このシグネチャモチーフを用いて、定義された基質のファミリと同様の酵素活性を有する構造的に関連する酵素のファミリを定義および/または同定することができる。シグネチャモチーフは、単一の連続したアミノ酸配列でもよいし、一緒になってシグネチャモチーフを形成する不連続な保存されたモチーフの集合であってもよい。一般に、保存されたモチーフ(単数または複数)はアミノ酸配列で表される。ペルヒドロリシス活性を有する本変異酵素(「ペルヒドロラーゼ」)は、CE−7炭水化物エステラーゼのファミリに属する(すなわち、本変異体がすべてCE−7シグネチャモチーフを保持する)。
【0087】
本明細書で使用する場合、「構造的にCE−7酵素として分類される」、「構造的に炭水化物エステラーゼファミリ7の酵素として分類される」、「構造的にCE−7炭水化物エステラーゼとして分類される」、「CE−7ペルヒドロラーゼ」とは、CE−7シグネチャモチーフの存在(Vincent et al.(上掲))を根拠に構造的にCE−7炭水化物エステラーゼとして分類されるペルヒドロリシス活性を有する酵素を示すのに用いられる。CE−7エステラーゼの「シグネチャモチーフ」は、以下の3つの保存されたモチーフ(残基位置の番号は基準配列である配列番号32を基準に付与)を含む。
a)Arg118−Gly119−Gln120;
b)Gly186−Xaa187−Ser188−Gln189−Gly190;
c)His303−Glu304。
【0088】
一般に、アミノ酸残基187位のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファンまたはトレオニンである。触媒三残基に属する3つのアミノ酸残基のうちの2つが太字である。一実施形態では、アミノ酸残基187位のXaaが、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、トレオニンからなる群から選択される。
【0089】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリ内の保存されたモチーフをさらに分析すると、CE−7炭水化物エステラーゼファミリのメンバをさらに定義するのに使用できるかもしれない別の保存されたモチーフ(配列番号32のアミノ酸272〜274位のLXD)が存在することがわかる。別の実施形態では、上記にて定義したシグネチャモチーフが、以下のように定義される4番目の保存されたモチーフを含む。
Leu272−Xaa273−Asp274.
【0090】
アミノ酸残基273位のXaaは一般に、イソロイシン、バリンまたはメチオニンである。4番目のモチーフは、触媒三残基に属するアスパラギン酸残基(太字)を含む(Ser188−Asp274−His303)。
【0091】
いくつかの野生型Thermotoga(サーモトガ)種でCE−7ペルヒドロラーゼとともに見出される保存されたモチーフ。
【0092】
【表1】

【0093】
本明細書で使用する場合、「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」とは、セファロスポリンCおよび7−アミノセファロスポラン酸(Mitsushima et al., (1995) Appl. Env. Microbiol. 61(6):2224〜2229)などのセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を示す。
【0094】
本明細書で使用する場合、「アセチルキシランエステラーゼ」とは、アセチル化キシランおよび他のアセチル化糖類の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72;AXE)を示す。
【0095】
本明細書で使用する場合、「Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)」とは、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告されたThermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)の株(GENBANK(登録商標) AAB70869)を示す。このThermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列を配列番号32としてあげておく。
【0096】
本明細書で使用する場合、「Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞(GENBANK(登録商標) NP 227893.1)を示す。Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列を配列番号36としてあげておく。
【0097】
本明細書で使用する場合、「Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞(GENBANK(登録商標) CP000812)を示す。Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列を配列番号202としてあげておく。
【0098】
本明細書で使用する場合、「Thermotoga petrophila(サーモトガ・ペトロフィラ)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞(GENBANK(登録商標) CP000702)を示す。Thermotoga lettingae(サーモトガ・レッティンガエ)由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列を配列番号203としてあげておく。
【0099】
本明細書で使用する場合、「Thermotoga(サーモトガ)種RQ2」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞(GENBANK(登録商標) CP000969)を示す。Thermotoga(サーモトガ)種RQ2からは2種類の異なるアセチルキシランエステラーゼが同定されており、本明細書では「RQ2(a)」(推定アミノ酸配列を配列番号204として示す)および「RQ2(b)」(推定アミノ酸配列を配列番号205として示す)と呼ぶ。
【0100】
本明細書で使用する場合、「単離された核酸分子」および「単離された核酸フラグメント」は同義に用いられ、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーを意味し、任意選択により、合成、非天然または改変されたヌクレオチド塩基を含む。DNAのポリマーの形態での単離された核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントで構成されていてもよい。
【0101】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基礎となる化学構造単位を示す。本明細書では、特定のアミノ酸を示すのに以下の略語を使用する
【0102】
【表2】

【0103】
本明細書で使用する場合、「実質的に類似」とは、核酸分子において、1つ以上のヌクレオチド塩基における変化によって、1つ以上のアミノ酸の付加、置換または欠失が生じるが、そのDNA配列によってコードされるタンパク質の機能的特性(すなわちペルヒドロリシス活性)に影響を与えないことを示す。また、本明細書で使用する場合、「実質的に類似」は、本明細書にて報告する配列に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、一層好ましくは少なくとも60%、一層好ましくは少なくとも70%、なお一層好ましくは少なくとも80%、さらになお一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する酵素も示し、ここで、得られる酵素は本発明の機能的特性(すなわちペルヒドロリシス活性)を保持する。また、「実質的に類似」は、ストリンジェントな条件下で本明細書にて報告する核酸分子とハイブリダイズされる核酸分子によってコードされるペルヒドロリシス活性を有する酵素も示す。したがって、本発明は、特定の例示された配列よりも多くの配列を包含する。
【0104】
たとえば、所定の部位で化学的に等価なアミノ酸を生じるが、コードされるタンパク質の機能的特性には影響しない遺伝子の変更が一般的であることは、従来技術において周知である。本発明の目的で、置換は、以下の5群のうちのいずれか1つの範囲内の変換であると定義される。
1.非極性またはわずかに極性の小さな脂肪族残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly);
2.極性で負に荷電した残基およびそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln;
3.極性で正に荷電した残基:His、Arg、Lys;
4.非極性の大きな脂肪族残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys);
5.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0105】
よって、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対応するコドンが、それより疎水性の低い別の残基(グリシンなど)や、それより疎水性の高い残基(バリン、ロイシンまたはイソロイシンなど)をコードするコドンで置換されていてもよい。同様に、負に荷電した残基1つが別の残基で置換される(アスパラギン酸のグルタミン酸での置換など)、あるいは正に荷電した残基1つが別の残基で置換される(リシンのアルギニンでの置換など)変化でも、機能的に等価な産物を得られると想定可能である。多くの場合において、タンパク質分子のN末端部分およびC末端部分を変化させるヌクレオチドの変化もまた、タンパク質の活性を変えないと想定される。
【0106】
上記にて提案された修飾は各々、当該技術分野における常法の範囲内であり、コードされる産物の生物活性が保持されているかどうかの決定も同様である。さらに、実質的に類似の配列も本発明に包含されることは当業者であれば自明であろう。一実施形態では、実質的に類似の配列は、ストリンジェントな条件下(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、続いて0.1×SSC、0.1%SDS、65℃で洗浄)で、本明細書にて例示する配列とハイブリダイズする機能によって定義される。
【0107】
本明細書で使用する場合、核酸分子は、温度および溶液イオン強度の適切な条件下で、第1の分子の一本鎖が別の分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAなどの別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrook, J. and Russell, D., T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (2001)に例示されている。ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決めるのは、温度およびイオン強度の条件である。ストリンジェンシー条件を調節して、中程度に類似の分子(関連性の遠い生物体由来の相同配列)から、高度に類似の分子(密接に関連した生物体由来の機能的酵素を複製する遺伝子など)をスクリーニングすることができる。一般に、ハイブリダイゼーション後の洗浄によってストリンジェンシー条件が決まる。好ましい条件の一構成として、6×SSC、0.5%SDSで室温にて15分間の洗浄から開始して、2×SSC、0.5%SDSで45℃にて30分間の洗浄を繰り返し、続いて0.2×SSC、0.5%SDSで50℃にて30分間の洗浄を2回繰り返す一連の洗浄を使用する。一層好ましい条件の構成では、さらに高い温度を使用し、0.2×SSC、0.5%SDSを用いる最後の30分間ずつ2回の洗浄時の温度が60℃に上がったことを除いて、洗浄は上記の洗浄と同一である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の好ましい構成は、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃ならびに、2×SSC、0.1%SDSで洗浄、続いて最後に本明細書にて例示した配列を用いて0.1×SSC、0.1%SDS、65℃で洗浄する。
【0108】
ハイブリダイゼーションでは2種類の核酸が相補的な配列を含む必要があるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第では、塩基間のミスマッチも許容される。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、従来技術において周知の変数である核酸の長さと相補性の度合いに左右される。2種類のヌクレオチド配列間の類似性または相同性の度合いが大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTm値も大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTmに対応)は、以下の順に低くなる:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドのついては、Tmの計算式が導かれている(SambrookおよびRussell(上掲))。短めの核酸すなわちオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置の重要性が高くなり、オリゴヌクレオチドの長さによってその特異性が決まる(SambrookおよびRussell(上掲))。一態様において、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリダイズ可能な核酸の最短長が、少なくとも約15ヌクレオチド長、一層好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長、なお一層好ましくは少なくとも30ヌクレオチド長、なお一層好ましくは少なくとも300ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも800ヌクレオチド長である。さらに、プローブの長さなどの要因次第で必要に応じて温度と洗浄溶液の塩濃度を調節してもよいことは、当業者であれば自明であろう。
【0109】
本明細書で使用する場合、「同一性(%)」という表現は、配列を比較して求められる、2種類以上のポリペプチド配列間または2種類以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。従来技術において、「同一性」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列の関連性の度合いも意味し、これは、場合によっては当該配列のストリング間のマッチングによって決まることもある。「同一性」および「類似性」は、Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, NY (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, NY (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, NJ (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., ed.) Academic Press (1987); and Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY (1991)に記載されているものを含むがこれに限定されるものではない、周知の方法で容易に計算可能である。同一性および類似性を求める方法は、公に利用可能なコンピュータープログラムで体系化されている。配列アライメントおよび同一性(%)の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc., Madison, WI)、Vector NTI v. 7.0のAlignXプログラム(Informax, Inc., Bethesda, MD)またはEMBOSS Open Software Suite(EMBL−EBI; Rice et al., Trends in Genetics 16, (6):276〜277 (2000))を用いて行ってもよい。European Molecular Biology Laboratory via the European Bioinformatics Institute)から入手可能なアライメントのClustal法(すなわちCLUSTALW;たとえばバージョン1.83)(Higgins and Sharp, CABIOS, 5:151〜153 (1989); Higgins et al., Nucleic Acids Res. 22:4673−4680 (1994); and Chenna et al., Nucleic Acids Res 31 (13):3497〜500 (2003))をデフォルトのパラメータで用いて、配列のマルチプルアライメントを実施することも可能である。CLUSTALWタンパク質アライメントの好適なパラメータとして、GAP存在ペナルティ=15、GAP伸長=0.2、マトリクス=Gonnet(Gonnet250など)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、KTUPLE=1があげられる。一実施形態では、ファストアライメントまたはスローアライメントをデフォルトの設定で用いるが、スローアライメントが好ましい。あるいは、CLUSTALW法(バージョン1.83)を用いるパラメータを修正し、KTUPLE=1、GAP PENALTY=10、GAP伸長=1、マトリクス=BLOSUM(BLOSUM64など)、WINDOW=5、TOP DIAGONALS SAVED=5も使用するようにしてもよい。
【0110】
本発明の一態様では、好適な単離された核酸分子(本発明の単離されたポリヌクレオチド)が、本明細書で報告するアミノ酸配列と少なくとも約50%、好ましくは少なくとも60%、一層好ましくは少なくとも70%、一層好ましくは少なくとも80%、なお一層好ましくは少なくとも85%、なお一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。本発明の好適な核酸分子は、上記の相同性を有するだけでなく、一般に、約300〜約340アミノ酸、一層好ましくは約310〜約330アミノ酸、最も好ましくは約325アミノ酸のポリペプチドをコードする。
【0111】
本明細書で使用する場合、「コドンの縮重」とは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列のばらつきを許容する遺伝コードの性質を示す。したがって、本発明は、本微生物ポリペプチドをコードするアミノ酸配列の全部または相当部分をコードするあらゆる核酸分子に関する。当業者であれば、所定のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用時に特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」のことをよく知っている。よって、宿主細胞における発現が改善された遺伝子を合成する場合、そのコドンの使用頻度が宿主細胞での好ましいコドンの使用頻度に近くなるように遺伝子を設計することが望ましい。
【0112】
本明細書で使用する場合、「コドン最適化された」という表現は、さまざまな宿主のトランスフォーメーション用の核酸分子のコード領域または遺伝子を示す場合、DNAがコードするポリペプチドを変化させることなく宿主細胞の一般的なコドン使用を反映させるような核酸分子のコード領域または遺伝子のコドンの変化を示す。
【0113】
本明細書で使用する場合、「合成遺伝子」は、当業者間で周知の手順で化学合成されたオリゴヌクレオチドのビルディングブロックからアセンブル可能なものである。これらのビルディングブロックをライゲートし、アニールして遺伝子のセグメントを形成し、続いてこれを酵素的にアセンブルして遺伝子全体を構築する。「化学合成された」とは、DNA配列に関する場合、成分のヌクレオチドがin vitroでアセンブルされたことを意味する。十分に確立された手順でDNAを手作業で化学合成してもよいし、多数の市販の機械のうちのいずれか1つを用いて自動化学合成を実施してもよい。このように、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適な遺伝子発現がなされて宿主細胞のコドンバイアスが反映されるように、遺伝子を適合させることが可能である。コドンの使用が宿主にとって好ましいコドンに偏っている場合に遺伝子発現が成功する尤度を、当業者であれば理解できよう。好ましいコドンについては、配列情報を入手可能な宿主細胞由来の遺伝子を調査した結果をもとに判断可能である。
【0114】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」とは、コード配列に先行する制御配列(5’非コード配列)およびコード配列に続く制御配列(3’非コード配列)をはじめとして、特定のタンパク質を発現する核酸分子を示す。「天然遺伝子」とは、自らの制御配列を有し、天然に見られるような遺伝子を示す。「キメラ遺伝子」とは、天然では一緒に見られない制御配列およびコード配列を含む、天然遺伝子ではない遺伝子を意味する。よって、キメラ遺伝子は、異なる起源由来の制御配列およびコード配列を含むものであってもよいし、同じ起源由来であるが天然に見られるものとは異なる形で配置された制御配列およびコード配列を含むものであってもよい。「内因性遺伝子」とは、生物体のゲノムで本来の位置に存在する天然遺伝子を示す。「外来」遺伝子とは、通常は宿主生物で見られないが遺伝子移入によって宿主生物に導入される遺伝子を示す。外来遺伝子は、非天然の生物に挿入される天然遺伝子を含むことも可能であるし、キメラ遺伝子を含むものであっても構わない。「導入遺伝子」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0115】
本明細書で使用する場合、「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。「適切な制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置し、転写、RNAプロセシングまたは会合コード配列の安定性あるいは翻訳に影響するヌクレオチド配列を示す。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、ステム−ループ構造を含むものであってもよい。
【0116】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を示す。通常、コード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、全体が天然遺伝子由来のものであってもよいし、天然に見られる異なるプロモーター由来の異なる要素で構成されていてもよいし、合成DNAセグメントを含むものであってもよい。さまざまなプロモーターが、異なる発達段階で、あるいは異なる環境条件または生理学的条件に応答して遺伝子の発現を指示し得る旨は、当業者であれば理解できよう。最も多くの場合に遺伝子を発現させるプロモーターを一般に「構成的プロモーター」と称する。さらに、ほとんどの場合、制御配列の厳密な境界が完全に定まっているわけではないため、長さの異なるDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を有する場合もあることが認識されている。
【0117】
本明細書で使用する場合、「3’非コード配列」とは、コード配列の下流に位置するDNA配列を示し、ポリアデニル化認識配列(通常は真核生物に限定される)ならびに、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響し得る調節シグナルをコードする他の配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは一般に、mRNA前駆物質の3’末端へのポリアデニル酸領域の付加(通常は真核生物に限定される)に影響を与えることで特徴付けられる。
【0118】
本明細書で使用する場合、「作動的に結合された」という用語は、一方の機能が他方の影響を受けるように単一の核酸分子で核酸配列が会合していることを示す。たとえば、プロモーターがコード配列の発現に影響し得る場合、そのプロモーターは当該コード配列と作動的に結合されているすなわち、そのコード配列がプロモーターの転写制御下にある。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向で制御配列に作動的に結合可能なものである。
【0119】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、本発明の核酸分子由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を示す。発現は、mRNAからポリペプチドへの翻訳を示すこともある。
【0120】
本明細書で使用する場合、「形質転換」とは、核酸分子が宿主生物のゲノムに移入することで遺伝的に安定な遺伝が生じることを示す。本発明では、宿主細胞のゲノムは、染色体遺伝子と染色体外(プラスミドなど)遺伝子を含む。形質転換後の核酸分子を含む宿主生物は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」生物体と呼ばれる。
【0121】
本明細書で使用する場合、「プラスミド」、「ベクター」、「カセット」という用語は、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を持つことの多い染色体外因子を示し、通常は環状の二本鎖DNA分子の形態である。このような要素は、どのような起源に由来する一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、自己複製配列、ゲノム組込配列、ファージまたはヌクレオチド配列(線状または環状)であってもよく、この場合、多数のヌクレオチド配列が結合されるか組換えられて、選択された遺伝子産物のためのプロモーターフラグメントおよびDNA配列を適切な3’非翻訳配列と一緒に細胞に導入できる独特の構成になる。「形質転換カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特定のベクターを示す。「発現カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えてその遺伝子の外来宿主での発現を強化できる要素を有する特定のベクターを示す。
【0122】
本明細書で使用する場合、「配列解析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析に有用なコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを示す。「配列解析ソフトウェア」は、市販のものであってもよいし、独立に開発されたものであってもよい。一般的な配列解析ソフトウェアとしては、プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, WI), BLASTP, BLASTN, BLASTX (Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403〜410 (1990)、DNASTAR (DNASTAR, Inc. 1228 S. Park St. Madison, WI 53715 USA), CLUSTALW (for example, version 1.83; Thompson et al., Nucleic Acids Research, 22(22):4673〜4680 (1994)、スミス・ウォーターマンアルゴリズムを採用したFASTAプログラム(W. R. Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994), Meeting Date 1992, 111〜20. Editor(s): Suhai, Sandor. Publisher: Plenum, New York, NY)、Vector NTI (Informax, Bethesda, MD)、Sequencher v.4.05があげられるが、これに限定されるものではない。本出願の文脈の範囲内で、解析に配列解析ソフトウェアを用いる場合、解析結果は、特に明記しないかぎり表記のプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解できよう。本明細書で使用する場合、「デフォルト値」とは、ソフトウェアの製造元が設定した値またはパラメータの組を意味し、このようなデフォルト値は、最初の初期設定時に当該ソフトウェアに実装されるものである。
【0123】
本明細書で使用する場合、「生物学的汚染物質」という用語は、1種類以上の不要および/または病原性の生物学的物体を示し、微生物、胞子、ウイルス、プリオン、これらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。本明細書に開示の方法では、生存可能な生物学的汚染物質の存在を低減および/または排除するのに役立つ有効濃度の少なくとも1種類の過カルボン酸が得られる。好ましい実施形態では、生物学的汚染物質が生存可能な病原性微生物である。
【0124】
本明細書で使用する場合、「殺菌する」という表現は、生物学的汚染物質を破壊したり、その増殖を予防したりする方法を示す。本明細書で使用する場合、「殺菌剤」という用語は、生物学的汚染物質を破壊、中和またはその増殖を阻害することによって殺菌する作用剤を示す。一般に、殺菌剤は、無生物または表面を処理するのに用いられる。本明細書で使用する場合、「殺菌」という用語は、殺菌する行為または方法を示す。本明細書で使用する場合、「防腐剤」という用語は、病気を媒介する微生物の増殖を阻害する化学的作用剤を示す。一態様では、生物学的汚染物質が病原微生物である。
【0125】
本明細書で使用する場合、「衛生」という用語は一般に、健康を損ないかねない作用剤を除去、妨害または制御することによって、健康を回復または保つことを意味するまたはこれに関する。本明細書で使用する場合、「消毒する」という用語は、衛生を作り出すことを意味する。本明細書で使用する場合、「消毒剤」という用語は、作用剤を消毒することを示す。本明細書で使用する場合、「消毒」という用語は、消毒の行為またはプロセスを示す。
【0126】
本明細書で使用する場合、「殺ウイルス剤」という用語は、ウイルスを阻害または破壊する作用剤を示し、「viricide」と同義である。ウイルスを阻害または破壊する機能を呈する作用剤は、「殺ウイルス」活性を有すると記載される。過酸は殺ウイルス活性を有する可能性がある。本発明での使用に適する可能性がある従来技術において周知の一般的な別の殺ウイルス剤として、たとえば、アルコール、エーテル、クロロホルム、ホルムアルデヒド、フェノール、βプロピオラクトン、ヨウ素、塩素、水銀塩、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、エチレングリコール、第4級アンモニウム化合物、酵素、洗剤があげられる。
【0127】
本明細書で使用する場合、「殺生物剤」という用語は、微生物を不活性化または破壊する、一般にスペクトルの広い化学的作用剤を示す。微生物を不活性化または破壊する機能を呈する化学的作用剤は、「殺生物」活性を有すると記載される。過酸は殺生物活性を有する可能性がある。本発明での使用に適する可能性がある従来技術において周知の一般的な別の殺生物剤としては、たとえば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌレート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール、銅塩、有機硫黄化合物、第4級アンモニウム塩があげられる。
【0128】
本明細書で使用する場合、「最小殺生物濃度」という言い回しは、特定の接触時間で、標的微生物の生存可能な個体群を所望の形で致死的かつ回復不能の状態まで減らす殺生物剤の最少濃度を示す。その有効性については、処理後の生存可能な微生物でのlog10の減少によって測定可能である。一態様において、生存可能な微生物を処理後の目標減少量は、少なくとも3対数の減少、一層好ましくは少なくとも4対数の減少、最も好ましくは少なくとも5対数の減少である。別の態様では、最小殺菌濃度が、生存可能な微生物細胞の少なくとも6対数減少である。
【0129】
本明細書で使用する場合、「過酸素源」および「過酸素の源」とは、水溶液に入れた場合に約1mM以上の濃度で過酸化水素を提供できる化合物を示し、たとえば、過酸化水素、過酸化水素アダクト(尿素−過酸化水素アダクト(カルバミドペルオキシド)など)、ペルボーレート、ペルカーボネートがあげられるが、これに限定されるものではない。本明細書で説明するように、水性反応配合物中で過酸素化合物によって得られる過酸化水素の濃度は、反応成分を合わせた際に、最初は少なくとも1mM以上である。一実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度が少なくとも10mMである。もうひとつの実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度が少なくとも100mMである。もうひとつの実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度が少なくとも200mMである。もうひとつの実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度が500mM以上である。さらに別の実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度が1000mM以上である。水性反応配合物中での過酸化水素とトリグリセリドなどの酵素基質とのモル比(H:基質)は、約0.002〜20であればよく、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5であればよい。
【0130】
ペルヒドロリシス活性を有し、構造的にCE−7酵素として分類されるポリペプチド変異体
本発明の目的は、起源となった野生型酵素に比して、殺菌(細菌、ウイルス、胞子の不活性化など)用の有効濃度の過カルボン酸を生成するために、活性が改善されたペルヒドロラーゼを提供することにある。本発明の第2の目的は、野生型酵素に比して活性のpH範囲全体にわたって活性が改善されたペルヒドロラーゼを提供することにあり、この場合の比活性の改善は、有効濃度のペルオキシカルボン酸の生成に必要な酵素量の減少(ならびにこれに付随して生じる、配合物に含まれる酵素のコストの削減)につながる。本発明の第3の目的は、野生型酵素に対するペルヒドロリシス/加水分解比(P/H比)が改善されたペルヒドロラーゼを提供することにある。
【0131】
T. maritima(サーモトガ・マリティマ)CE−7アセチルキシランエステラーゼのX線結晶構造が刊行物に記されている(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB)タンパク質データバンクを参照のこと)。T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)CE−7ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列は、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼに対する同一性が91%であることから、これをT. maritima(サーモトガ・マリティマ)X線結晶構造にマッピング可能である。正準触媒三残基(H303、S188、D274)に加えて、いくつかの残基もT. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)の活性部位内にあり、これらの部位での置換を選んで、野生型酵素に比して、得られる変異酵素に、活性部位のpKa、基質およびペルヒドロリシス/加水分解比(P/H比)の改善に関してKcatおよびK全体の有利な変化があるか否かを判断した。観察されたペルヒドロリシス活性に基づいて、野生型CE−7酵素に比して過酢酸生成活性が亢進した一連の変異体CE−7酵素を作製した。
【0132】
ペルヒドロリシス活性を改善するプロセスでは、構造的にCE−7酵素として分類されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築し、この酵素コード配列を突然変異誘発し、最後に過酢酸生成活性が亢進した変異体を単離することを伴う。一般に、この手法では、アセテート、トリアセチン、過酸化水素の存在下にて過酢酸生成活性が亢進される変異酵素を作製して単離する必要がある。突然変異誘発の以後のラウンドが望まれる場合は、それによって酵素−コード配列を進化させることが可能である。
【0133】
突然変異誘発の開始材料として、野生型(または実質的に類似の)ヌクレオチド配列を用いて、構造的にCE−7酵素として分類されるポリペプチドをコードする変異酵素ライブラリを調製可能である。配列を突然変異させるための方法は、文献にて十分に確立されている。たとえば、in vitro突然変異誘発および選択、部位特異的突然変異誘発、変異性PCR(Melnikov et al., Nucleic Acids Res. 27(4):1056−62 (1999))、「遺伝子シャッフリング」または他の手段を用いて、酵素配列の変異を得ることが可能である。これは、たとえば、野生型酵素に比して殺菌用過カルボン酸の生成に対する酸性pHでの活性が改善されたポリペプチド、野生型酵素に比して活性のpH範囲全体の活性が改善されたポリペプチドおよび/または野生型酵素に比してP/H比が改善されたポリペプチドの生成を可能にし得るものである。
【0134】
必要であれば、常法の部位特異的突然変異誘発、得られる変異体ポリペプチドの発現、その活性の判断によって、酵素的活性に重要な酵素の領域を判断することも可能である。突然変異体は、欠失、挿入、点変異またはこれらの組み合わせを含むものであってもよい。
【0135】
以下の実施例で論じるように、アラニン、バリン、セリンまたはトレオニンに変化すると、特定のアミノ酸置換を欠いた野生型アセチルキシランエステラーゼに比して、変異体ポリペプチドのペルヒドロリシス活性が予想外に亢進されるThermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼで、鍵になるシステイン残基が同定された。Thermotoga(サーモトガ)属では全体のアセチルキシランエステラーゼの相同性が高いため、いずれかのThermotoga(サーモトガ)属でこのシステインがアラニン、バリン、セリンまたはトレオニンで置換されると、作業例で説明したものと類似の結果が得られると想定される。よって、いくつかの実施形態では、当該ポリペプチドをコードする変異体ポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、ペルヒドロリシス活性を有する野生型Thermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼ由来であり、この場合のThermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼは、配列番号31に示すようなC末端領域を含み、変異体ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸93位のシステイン残基に代えて、アラニン、バリン、セリンまたはトレオニン残基を有する。配列番号31に示すC末端領域は、Thermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼで高度に保存され(6種類のアセチルキシランエステラーゼのアライメントについての図2を参照のこと)、よって、本明細書に開示の鍵となるシステイン残基の変異に従うアセチルキシランエステラーゼのアイデンティファイアとして機能できる。
【0136】
配列番号31のいくつかの残基を「任意の」残基と示したが、これらの残基の多くに見られる一般的なアミノ酸がある。たとえば、配列番号31のXaaで示す位置の一般的なアミノ酸は、2位のグリシン、13位のセリン、18位のリシン、20位のリシン、23位のロイシン、24位のシステイン、25位のアスパラギン酸、32位のフェニルアラニン、33位のアルギニン、38位のロイシン、39位のバリンまたはトレオニン、41位のトレオニン、42位のヒスチジン、45位のアラニン、48位のトレオニン、49位のアスパラギン、50位のフェニルアラニンまたはチロシン、51位のロイシン、53位のトレオニン、55位のアルギニン、58位のグルタミン酸、60位のイソロイシン、75位のアラニンまたはバリン、79位のイソロイシン、86位のグリシン、90位のアルギニン、91位のイソロイシン、104位のヒスチジンまたはチロシン、108位のプロリン、110位のグルタミン酸、112位のアルギニン、113位のイソロイシン、116位のチロシン、118位のアルギニン、123位のグリシン、126位のグルタミン、127位のアラニン、128位のイソロイシン、130位のグルタミン、131位のバリンまたはロイシン、132位のリシン、134位のロイシン、136位のアルギニンまたはリシンである。
【0137】
Thermotoga(サーモトガ)アセチルキシランエステラーゼC末端領域における1つ以上のアミノ酸の付加および/または欠失は、当該付加(単数または複数)および/または欠失が酵素の機能的特性に影響しないかぎり、許容される。
【0138】
さらに別の特定の実施形態では、本明細書に開示の変異体ポリペプチドは、
(a)配列番号5、10、15、20または25と比較した場合(ただし、配列番号5、10、15、20または25のアミノ酸277に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする);または
(b)配列番号30と比較した場合(ただし、配列番号30のアミノ酸278に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件とする)に、たとえば、アライメントのClustal法を対アライメントのデフォルトパラメータすなわちKTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5で用いると、アミノ酸に対して、配列同一性が少なくとも95%(あるいは、さまざまな実施形態では、配列同一性が96%、97%、98%または99%)である。
【0139】
特に、ペルヒドロリシス活性が活性化された(ペルヒドロリシス活性および/またはP/H比が増加した)変異体ポリペプチドは、配列番号5、10、15、20、25または30を含む。もうひとつの実施形態では、変異体ポリペプチドが、配列番号5、10、15、20、25、30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、それぞれの配列のXaaは、アラニン、セリン、トレオニン、バリンからなる群から選択される。別の実施形態では、変異体ポリペプチドが、配列番号5および10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、それぞれの配列のXaaは、アラニン、セリン、トレオニン、バリンからなる群から選択される。
【0140】
タンパク質工学
本CE−7エステラーゼ変異体を突然変異誘発によって生成した。本ヌクレオチドを使用し、活性が亢進あるいは変更された遺伝子産物を生成できることが企図される。1)ランダム突然変異誘発、2)ドメインスワッピング(ジンクフィンガードメインまたは制限酵素を使用)、3)変異性PCR(Melnikov et al., Nucleic Acids Research 27(4):1056〜1062 (1999))、4)部位特異的突然変異誘発(Coombs et al., Proteins (1998), pp 259〜311, 1 plate. Angeletti, Ruth Hogue, Ed., Academic: San Diego, Calif.)、5)「遺伝子シャッフリング」(本明細書に援用する、米国特許第5,605,793号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,837,458号明細書)を含むが、これに限定されるものではない、天然遺伝子配列を変異させて活性が変更または亢進された遺伝子産物を生成するためのさまざまな方法が周知である。
【0141】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用し、ヌクレオチドの誤取込みによって多数の変異を同時生成することで、DNAフラグメントを増幅することが可能である。これは、dNTPの比を変えたり反応時にさまざまな量の塩化マンガンを添加するなど、PCR条件に手を加えることで達成可能である(Fromant et al., Anal Biochem, 224(1):347〜53 (1995); Lin−Goerke et al., Biotechniques, 23(3):409〜12 (1997))。次に、変異DNAフラグメントのプールをクローニングして変異プラスミドのライブラリを生成した後、E. coli(大腸菌)などの宿主での発現後にスクリーニング可能である。
【0142】
遺伝子シャッフリングの方法は、手軽に実施でき、突然変異誘発率が高く、スクリーニングが容易であるがゆえに特に魅力的である。遺伝子シャッフリングのプロセスは、対象遺伝子と類似および/または相違するDNA領域の別の個体群の存在下、対象遺伝子から特定のサイズのフラグメントへの制限エンドヌクレアーゼ切断を伴う。その後、このフラグメントのプールを変性・再アニールし、変異遺伝子を生成する。この変異遺伝子を変化した活性についてスクリーニングする。
【0143】
本発明の本配列を変異させ、この方法によって変化または亢進された活性についてスクリーニングしてもよい。配列は二本鎖でなければならず、50bp〜10kBの範囲のさまざまな長さのものであり得る。これらの配列は、従来技術において周知の制限エンドヌクレアーゼを用いて、ランダムに消化されて約10bp〜1000bpのフラグメントになり得る(Sambrook、J.およびRussell(上掲))。本微生物配列に加えて、配列の全部または一部にハイブリダイズ可能なフラグメントの個体群を加えてもよい。同様に、本配列とハイブリダイズ可能ではないフラグメントの個体群を加えてもよい。一般に、これらの別のフラグメント個体群は、全核酸に対して重量で約10〜20倍過剰に加えられる。一般に、このプロセスを採ると、混合物中の異なる特定の核酸フラグメントの数は約100〜約1000になる。ランダム核酸フラグメントの混合個体群を変性させ、一本鎖核酸フラグメントを形成した後、再アニールする。他の一本鎖核酸フラグメントと相同な領域を有する一本鎖核酸フラグメントだけが再アニールされる。ランダム核酸フラグメントを加熱によって変性させてもよい。二本鎖核酸を完全に変性させるのに必要な条件を、当業者であれば判断できよう。好ましくは、この温度は約80℃〜100℃である。核酸フラグメントを冷却によって再アニールしてもよい。好ましくは、この温度は約20℃〜75℃である。ポリエチレングリコール(「PEG」)または塩を加えて、復元を加速してもよい。好適な濃度は、0mM〜200mMの範囲であり得る。次に、アニール後の核酸フラグメントを、核酸ポリメラーゼおよびdNTP(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、dTTP)の存在下にてインキュベートする。核酸ポリメラーゼは、従来技術において周知のクレノーフラグメント、Taqポリメラーゼまたは他の任意のDNAポリメラーゼであればよい。ポリメラーゼをランダム核酸フラグメントに加えるのは、アニーリング前、アニーリングと同時、あるいはアニーリングであればよい。変性、復元、ポリメラーゼ存在下でのインキュベーションのサイクルのサイクルを、所望の回数繰り返す。好ましくは、このサイクルを約2〜50回繰り返し、一層好ましくは、配列を10〜40回繰り返す。得られる核酸は、約50bp〜約100kBの範囲の大きめの二本鎖ポリヌクレオチドであり、発現および変化後の活性について標準的なクローニングおよび発現プロトコール(Sambrook、J.およびRussell(上掲))でスクリーニングしてもよい。
【0144】
さらに、遺伝子シャッフリングを用いる機能ドメインの融合によってハイブリッドタンパク質をアセンブルすることも可能である(Nixon et al., PNAS, 94:1069〜1073 (1997)など)。本遺伝子の機能ドメインを、他の遺伝子の機能ドメインと組み合わせ、所望の触媒機能を有する新規な酵素を生成してもよい。ハイブリッド酵素については、当業者間で周知の技術を用いて、PCRオーバーラップ伸長法を用いて構築し、さまざまな発現ベクターにクローニングすればよい。
【0145】
カルボン酸エステルおよび過酸化水素からのペルオキシカルボン酸の酵素触媒による調製に適した反応条件
本発明の一態様では、ペルヒドロリシス活性を有する本酵素触媒の少なくとも1種類の存在下、カルボン酸エステルと、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムおよび過炭酸ナトリウムを含むがこれに限定されるものではない過酸素の源とを反応させることによって、ペルオキシカルボン酸を含む水性配合物を生成する方法が得られる。一実施形態では、本酵素触媒は、ペルヒドロリシス活性を有する本酵素変異体を少なくとも1種類を含み、前記酵素が構造的にCE−7炭水化物エステラーゼファミリのメンバとして分類される。もうひとつの実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒がセファロスポリンCデアセチラーゼである。もうひとつの実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒がアセチルキシランエステラーゼである。
【0146】
一実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒が、本明細書に開示するペルヒドロリシス活性を有する本CE−7変異体ポリペプチドを少なくとも1種類含む。
【0147】
好適なカルボン酸エステル基質は、以下の式で示されるエステルを含むものであってもよい。
[X]
式中、X=式RC(O)Oのエステル基であり、
=ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは任意選択により、R=C2〜C7での1つ以上のエーテルリンケージを含み、
=ヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、式中、Rの各炭素原子は個々に、ヒドロキシル基を1つしか含まないかエステル基を1つしか含まず、かつ、式中、Rは、任意選択により、1つ以上のエーテルリンケージを含み、
m=1からRの炭素原子数である)を有し、
前記エステルは、水に対する溶解性が25℃で少なくとも5ppmである。
【0148】
他の実施形態では、好適な基質は以下の式で表されるエステルを含むものであってもよい。
【化11】

式中、R=ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキル、R=直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール,(CHCH−O)Hまたは(CHCH(CH)−O)H、n=1〜10である。
【0149】
他の実施形態では、好適なカルボン酸エステル基質は、以下の式のグリセリドを含むものであってもよい。
【化12】

式中、R=ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキル、RおよびRは、個々にHまたはRC(O)である。
【0150】
他の実施形態では、Rが、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、任意選択により1つ以上のエーテルリンケージを含む。さらに好ましい実施形態では、Rが線状のC2〜C7ヒドロカルビル部分であり、任意選択によりヒドロキシル基および/または任意選択により1つ以上のエーテルリンケージである。
【0151】
他の実施形態では、好適なカルボン酸エステル基質が、アセチル化一糖、二糖、多糖からなる群から選択されるアセチル化糖類を含むものであってもよい。別の実施形態では、アセチル化糖類が、アセチル化単糖、二糖、多糖を含む。さらに別の実施形態では、アセチル化糖類が、アセチル化キシラン;アセチル化キシランのフラグメント;アセチル化キシロース(キシローステトラアセテートなど);アセチル化グルコース(グルコースペンタアセテートなど);β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−D−グルカール;アセチル化セルロースからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、アセチル化糖類が、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−D−グルカール;アセチル化セルロースからなる群から選択される。そのようなものとして、アセチル化炭水化物が、本方法およびシステムを用いて(すなわち、過酸素源の存在下)過カルボン酸を生成するのに好適な基質のことがある。
【0152】
別の実施形態では、カルボン酸エステル基質が、モノアセチン;トリアセチン;モノプロピオニン;ジプロピオニン;トリプロピオニン;モノブチリン;ジブチリン;トリブチリン;グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシランフラグメント;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−グルカール;プロピレングリコールジアセテート;エチレングリコールジアセテート;1,2−エタンジオールのモノエステルまたはジエステル;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;2,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,2−ペンタンジオール;2,5−ペンタンジオール;1,6−ペンタンジオール;1,2−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;1,6−ヘキサンジオール;これらの混合物からなる群から選択される。本方法およびシステムの好ましい実施形態では、基質がトリアセチンを含む。
【0153】
カルボン酸エステルは、酵素触媒ペルヒドロリシス時に、反応配合物中に、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を生成できるだけの十分な濃度で存在する。カルボン酸エステルは、反応配合物に対して完全に可溶である必要はないが、ペルヒドロラーゼ触媒によってエステルを対応するペルオキシカルボン酸に変換可能なだけの十分な溶解性を有する。カルボン酸エステルは、反応配合物の0.05wt%〜40wt%の濃度で、好ましくは反応配合物の0.1wt%〜20wt%の濃度で、一層好ましくは反応配合物の0.5wt%〜10wt%の濃度で、反応配合物中に存在し得る。
【0154】
過酸素源は、過酸化水素、過酸化水素アダクト(尿素−過酸化水素アダクト(カルバミドペルオキシド)など)ペルボレート塩およびペルカーボネート塩を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。反応配合物中の過酸素化合物の濃度は、0.0033wt%〜約50wt%、好ましくは0.033wt%〜約40wt%、一層好ましくは0.33wt%〜約30wt%であればよい。
【0155】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(ホールセル、透過処理したホールセル、部分精製したホールセル抽出液)が、カタラーゼ活性(EC1.11.1.6)を有することが報告された。カタラーゼは、過酸化水素から酸素および水への変換を触媒する。一態様において、ペルヒドロリシス触媒がカタラーゼ活性を欠いている。もうひとつの態様では、カタラーゼ阻害剤が反応配合物に加えられる。カタラーゼ阻害剤の例としては、ナトリウムアザイドおよび硫酸ヒドロキシアミンがあげられるが、これに限定されるものではない。当業者であれば、カタラーゼ阻害剤の濃度を必要に応じて調節可能である。一実施形態では、カタラーゼ阻害剤の濃度が、約0.1mM〜約1M;好ましくは約1約mM〜約50mM;一層好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。一態様において、ナトリウムアザイド濃度は一般に約20mM〜約60mMの範囲であるのに対し、硫酸ヒドロキシアミンは、濃度が一般に約0.5mM〜約30mM、好ましくは約10mMの範囲である。
【0156】
もうひとつの実施形態では、酵素触媒は、有意なカタラーゼ活性を欠いているあるいは、カタラーゼ活性を低減または排除するよう操作される。宿主細胞のカタラーゼ活性は、トランスポソン突然変異誘発、RNAアンチセンス発現、標的化突然変異誘発、ランダム突然変異誘発を含むがこれに限定されるものではない、周知の技術を用いて、カタラーゼ活性を担う遺伝子(単数または複数)の発現を破壊することで、下方制御または排除可能である。好ましい実施形態では、内因性カタラーゼ活性をコードする遺伝子(単数または複数)が、下方制御または破壊(すなわちノックアウト)される。本明細書で使用する場合、「破壊された」遺伝子は、変性遺伝子でコードされるタンパク質の活性および/または機能がもう存在しないことである。遺伝子を破壊するための手段は従来技術において周知であり、対応するタンパク質の活性および/または機能がもう存在しないかぎり、遺伝子に対する挿入、欠失または変異を含み得るが、これに限定されるものではない。さらに好ましい実施形態では、生成宿主が、katGおよびkatEからなる群から選択される破壊されたカタラーゼ遺伝子を含むE. coli(大腸菌)生成宿主である。もうひとつの実施形態では、生成宿主が、katGおよびkatEカタラーゼ遺伝子の両方に下方制御および/または破壊を含むE. coli(大腸菌)株。katGおよびkatEのダブルノックアウトを含むE. coli(大腸菌)株は、本明細書にて、E. coli(大腸菌)株KLP18(米国特許出願公開第2008/0176299号を参照のこと)として説明する。
【0157】
水性反応配合物中の触媒の濃度は、触媒の特定の触媒活性に左右され、所望の反応速度が得られるよう選択される。ペルヒドロリシス反応中の触媒の重量は一般に、合計反応容量1mLあたり0.0001mg〜10m、好ましくは1mLあたり0.001mg〜2.0mgの範囲である。当業者間で周知の方法を用いて、触媒を可溶性または不溶性固定化してもよい。たとえば、Immobilization of Enzymes and Cells; Gordon F. Bickerstaff, Editor; Humana Press, Totowa, NJ, USA; 1997を参照のこと。固定化触媒を用いると、以後の反応で触媒の回収および再利用が可能になる。酵素触媒は、微生物ホールセル、透過処理した微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分的に精製された酵素または精製された酵素、これらの混合物の形であってもよい。
【0158】
一態様において、カルボン酸エステルの化学的ペルヒドロリシスおよび酵素的ペルヒドロリシスの組み合わせによって生成されたペルオキシカルボン酸の濃度は、所望のpHで、殺菌、漂白、消毒、脱臭または脱染用に有効濃度のペルオキシカルボン酸を提供するのに十分である。もうひとつの態様では、本方法は、所望の有効濃度のペルオキシカルボン酸を生成するための酵素と酵素基質との組み合わせを提供するものであり、この場合、追加の酵素なしで、有意に低い濃度mのペルオキシカルボン酸が生成される。場合によっては、無機過酸化物と酵素基質との直接的な化学反応による酵素基質の相当な化学的ペルヒドロリシスが生じるが、所望の用途で有効濃度のペルオキシカルボン酸を得られるだけの十分な濃度のペルオキシカルボン酸がない場合もあり、適当なペルヒドロラーゼ触媒を反応配合物に加えることでペルオキシカルボン酸の合計濃度の有意な増加が達成される。
【0159】
少なくとも1種類のカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって生成されるペルオキシカルボン酸(過酢酸)の濃度は、ペルヒドロリシス反応開始から(すなわち、反応成分の混合から反応配合物の形成までの間に測定される時間)10分以内、好ましくは5分以内、最も好ましくは1分以内に、ペルオキシカルボン酸が少なくとも約20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、一層好ましくは少なくとも約200ppm、一層好ましくはペルオキシカルボン酸が少なくとも300ppm、一層好ましくは少なくとも500ppm、一層好ましくは少なくとも700ppm、一層好ましくは少なくとも約1000ppm、一層好ましくはペルオキシカルボン酸が少なくとも2000ppm、なお一層好ましくは少なくとも3000ppm、最も好ましくは少なくとも4000ppmである。ペルオキシカルボン酸を含む生成配合物を、任意選択により、水あるいは主に水からなる溶液で希釈し、所望の低めの濃度のペルオキシカルボン酸を含む配合物を生成してもよい。一態様において、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を生成するのに必要な反応時間は、約2時間以下、好ましくは約30分以下、一層好ましくは約10分以下、最も好ましくは約5分以内またはそれ未満である。ある濃度の生物学的汚染物質(単数または複数)で汚染された硬質表面または無生物を、本明細書に記載の方法に従って形成したペルオキシカルボン酸と接触させる。一実施形態では、硬質表面または無生物を、前記反応成分を合わせてから約5分〜約168時間以内に、あるいは前記反応成分を合わせてから約5分〜約48時間以内または約5分〜2時間以内に、あるいはあいだにあるそのような時間で、記載の方法に従って形成したペルオキシカルボン酸と接触させる。
【0160】
もうひとつの態様では、本明細書に記載の方法に従って形成されるペルオキシカルボン酸は洗濯用途で用いられ、この場合、ペルオキシカルボン酸を繊維製品と接触させて、殺菌、漂白、脱染、脱臭および/またはこれらの組み合わせなどの利益を得る。ペルオキシカルボン酸は、繊維製品の前洗い処理、洗濯洗剤、しみ抜き剤、漂白組成物、脱臭組成物、すすぎ剤を含むがこれに限定されるものではない多岐にわたる洗濯用製品で使用できるものである。一実施形態では、標的表面用のペルオキシカルボン酸を生成するための本方法を、in situで実施する。
【0161】
洗濯用途の文脈で、「衣類または繊維製品の物品を接触させる」という表現は、その衣類または繊維製品の物品を、本明細書に開示の配合物に曝露することを意味する。この目的のために、液体、固体、ゲル、ペースト、バー、錠剤、スプレー、泡沫、粉末または顆粒状を含むがこれに限定されるものではない、衣類または繊維製品の物品の処理に配合物を使用できる多数の形態があり、手で分注、ユニット分注、基質からの分注、洗濯機または乾燥機からの噴霧および自動分注することで、送達可能である。顆粒状の組成物は、コンパクトな形態にもすることが可能である。液体組成物は、濃縮形態にすることも可能である。
【0162】
本明細書に開示の配合物を洗濯機で使用する場合、この配合物はさらに、洗濯用洗剤で一般的な成分を含有できる。たとえば、一般的な成分として、界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、別の酵素、石鹸の泡の抑制剤、分散剤、石灰−石鹸分散剤、土壌懸濁液および再汚染防止剤、柔軟剤、腐食阻害剤、焼け阻害剤、殺菌剤、pH調節剤、非ビルダアルカリ度源、キレート化剤、有機および/または無機フィラー、溶媒、ハイドロトロープ、蛍光増白剤、染料、香料があげられるが、これに限定されるものではない。
【0163】
本明細書に記載の配合物は、固体または液体形態の洗剤添加製品としても使用可能である。このような添加製品は、従来の洗剤組成物の性能を補うまたは促進することを想定したものであり、洗浄方法のどの段階でも添加可能である。
【0164】
漂白、染み抜き、臭いの低減のうちの1つ以上のために過酸(peracid)が生成される洗濯用の本システムおよび方法に関して、少なくとも1種類のカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって生成される過酸(peracid)(過酢酸など)の濃度は、過酸(peracid)が少なくとも約2ppm、好ましくは少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、一層好ましくは少なくとも約200ppmであればよい。殺菌または消毒用に過酸(peracid)が生成される洗濯用の本システムおよび方法に関して、少なくとも1種類のカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって生成される過酸(peracid)(過酢酸など)の濃度は、ペルヒドロリシス反応開始の10分以内、好ましくは5分以内、最も好ましくは1分以内に、過酸(peracid)が少なくとも約2ppm、一層好ましくは少なくとも20ppm、一層好ましくは少なくとも200ppm、一層好ましくは少なくとも500ppm、一層好ましくは少なくとも700ppm、一層好ましくは少なくとも約1000ppmであればよく、最も好ましくは過酸(peracid)が少なくとも2000ppmであればよい。過酸(peracid)を含む生成配合物を、任意選択により水または主に水で構成される溶液で希釈して、過酸(peracid)を所望の低めの濃度で含む配合物を生産してもよい。本方法およびシステムの一態様では、所望の濃度の過酸(peracid)を生成するのに必要な反応時間は、約2時間以内、好ましくは約30分以内、一層好ましくは約10分以内、なお一層好ましくは約5分以内、最も好ましくは約1分以下である。
【0165】
反応温度は、酵素触媒活性の安定性と反応速度の両方が制御されるように選択される。反応温度は、反応配合物の凝固点(約0℃)のすぐ上の温度から約95℃までの範囲であればよく、反応温度の好ましい範囲は約5℃〜約55℃である。
【0166】
ペルオキシカルボン酸を含有する最終反応配合物のpHは、約2〜約9、好ましくは約3〜約8、一層好ましくは約5〜約8、なお一層好ましくは約6〜約8、さらになお一層好ましくは約6.5〜約7.5の範囲であればよい。もうひとつの実施形態では、反応配合物のpHが酸性(pH<7)であってもよい。反応および最終反応配合物のpHについては、任意選択により好適な緩衝液を添加することで制御してもよく、このような緩衝液としては、ホスフェート、ピロホスフェート、メチルホスホネート、ビカーボネート、アセテートまたはシトレートならびに、これらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。緩衝液を使用する場合の濃度は一般に0.1mM〜1.0M、好ましくは1mM〜300mM、最も好ましくは10mM〜100mMである
【0167】
もうひとつの態様では、酵素的ペルヒドロリシス反応配合物が、反応混合物中でのカルボン酸エステルの溶解速度を高めるための分散剤として作用する有機溶媒を含有するものであってもよい。このような溶媒としては、プロピレングリコールメチルエーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、エタノール、プロピレングリコール、これらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。
【0168】
もうひとつの態様では、酵素的ペルヒドロリシス産物は、所望の機能を提供する別の成分を含有するものであってもよい。これらの別の成分としては、緩衝液、洗剤ビルダー、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、浸潤剤、腐食阻害剤(ベンゾトリアゾールなど)、酵素安定剤、ペルオキシド安定剤(金属イオンキレート剤など)があげられるが、これに限定されるものではない。別の成分の多くが洗剤業界では周知である(たとえば、本明細書に援用する米国特許第5,932,532号明細書を参照のこと)。乳化剤の例としては、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンががげられるが、これに限定されるものではない。増粘剤の例としては、LAPONITE(登録商標)RD、コーンスターチ、PVP、CARBOWAX(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、CABOSIL(登録商標)、ポリソルベート 20、PVA、レシチンがあげられるが、これに限定されるものではない。緩衝系の例としては、リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素ナトリウム;スルファミン酸/トリエタノールアミン;クエン酸/トリエタノールアミン;酒石酸/トリエタノールアミン;コハク酸/トリエタノールアミン;酢酸/トリエタノールアミンがあげられるが、これに限定されるものではない。界面活性剤の例としては、a)エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのブロックコポリマー、エトキシル化またはプロポキシル化された線状および分枝状の第1級および第2級アルコールならびに、脂肪族ホスフィンオキシドなどの非イオン界面活性剤;b)第4級アンモニウム化合物、特に、3つのC1〜C2アルキル基が結合した窒素原子にさらにC8〜C20アルキル基が結合した第4級アンモニウム化合物などのカチオン界面活性剤;c)アルカンカルボン酸(C8〜C20脂肪酸など)、アルキルホスホネート、アルカンスルホネート(ドデシル硫酸ナトリウム「SDS」など)または直鎖または分枝状のアルキルベンゼンスルホネート、アルケンスルホネートなどのアニオン界面活性剤;d)アミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、アルキベタインなどの両性および双性イオン界面活性剤ならびにこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。別の成分が、芳香剤、色素、過酸化水素の安定剤(たとえば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸といった金属キレート剤(DEQUEST(登録商標) 2010、Solutia Inc., St. Louis, MOおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA))、TURPINAL(登録商標) SL (CAS# 2809−21−4)、DEQUEST(登録商標) 0520、DEQUEST(登録商標) 0531、酵素活性の安定剤(ポリエチレングリコール(PEG)など)、洗剤ビルダーを含んでいてもよい。
【0169】
ペルヒドロラーゼ触媒を用いるペルオキシカルボン酸のIn Situ生成
セファロスポリンCデアセチラーゼ(E.C.3.1.1.41;分類名セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ;CAH)は、セファロスポリンC、7−アミノセファロスポラン酸、7−(チオフェン−2−アセトアミド)セファロスポラン酸などのセファロスポリンに結合したアセチルエステルを加水分解機能を有する酵素である(Abbott,
B. and Fukuda, D., Appl. Microbiol. 30(3):413〜419 (1975))。CAHは、炭水化物エステラーゼファミリ7(「CE−7」;Coutinho, P.M., Henrissat, B.(上掲)を参照のこと)と称される、構造的に関連する酵素の大きめのファミリに属する。本明細書で使用する場合、「CE−7」、「CE−7エステラーゼ」、「CE−7炭水化物エステラーゼ」、「CE−7ペルヒドロラーゼ」、「CE−7酵素」という用語は同義に用いられ、構造的に炭水化物エステラーゼファミリ7のメンバとして分類される酵素を示す。
【0170】
CE−7酵素ファミリのメンバは、植物、菌類(Cephalosporidium acremonium(セファロスポリジウム・アクレモニウム)など)、酵母(Rhodosporidium toruloides(ロドトルラ・トルロイデス)、Rhodotorula glutinis(ロドトルラ・グルチニス)など)さらには、Thermoanaerobacterium(サーモアナエロバクテリウム)種;Norcardia lactamdurans(ノカルジア・ラクタムジュランス)、Bacillus(バチルス)属のさまざまなメンバなどの細菌(Politino et al., Appl. Environ. Microbiol., 63(12):4807〜4811 (1997); Sakai et al., J. Ferment. Bioeng. 85:53〜57 (1998); Lorenz, W. and Wiegel, J., J. Bacteriol 179:5436〜5441 (1997); Cardoza et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 54(3):406〜412 (2000); Mitsushima et al., (1995) Appl. Env. Microbiol. 61(6):2224〜2229; Abbott, B. and Fukuda, D., Appl. Microbiol. 30(3):413〜419 (1975); Vincent et al.(上掲), Takami et al., NAR, 28(21):4317〜4331 (2000); Rey et al., Genome Biol., 5(10): article 77 (2004); Degrassi et al., Microbiology., 146:1585〜1591 (2000);米国特許第6,645,233号明細書;同第5,281,525号明細書;同第5,338,676号明細書;国際特許出願公開第WO 99/03984号パンフレットに見られる。DiCosimo et al.による国際特許出願公開第WO2007/070609号パンフレットおよび米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、同第2008/176783号明細書、同第2009/0005590号明細書には、過酸素の源と合わせたときに、多岐にわたるカルボン酸エステル基質から有効濃度のペルオキシカルボン酸を生成するのに適したペルヒドロリシス活性を有する、構造的にCE−7酵素として分類されるさまざまな酵素が開示されている。
【0171】
CE−7ファミリは、CAHとアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)の両方を含む。CE−7ファミリのメンバには、共通の構造的モチーフがあり、一般にアセチル化キシロオリゴ糖およびセファロスポリンCのどちらに対してもエステル加水分解活性を呈することから、CE−7ファミリが、さまざまな小さな基質に対して多機能のデアセチラーゼ活性を有する単一のタンパク質クラスを示すことが示唆される(Vincent et al.(上掲))。
【0172】
Vincent et al.は、このファミリのメンバにおける構造的な類似性を分析し、CE−7ファミリに特徴的なシグネチャモチーフを定義している。このシグネチャモチーフは、以下に示すような少なくとも3つの高度に保存されたモチーフの組み合わせである。配列ナンバリングはいずれも、基準配列(この場合、野生型Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)ペルヒドロラーゼ;配列番号32)に対する相対的なものである。
【0173】
基準配列である配列番号32のアミノ酸残基のナンバリングのように、CE−7シグネチャモチーフは、以下のように定義される3つの保存されたモチーフを含む。
a)Arg118−Gly119−Gln120;
b)Gly186−Xaa187−Ser188−Gln189−Gly190;
c)His303−Glu304。
【0174】
一般に、アミノ酸残基187位のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファンまたはトレオニンである。触媒三残基に属する3つのアミノ酸残基のうちの2つが太字である。一実施形態では、アミノ酸残基187位のXaaが、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、トレオニンからなる群から選択される。
【0175】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリ内の保存されたモチーフをさらに分析すると、CE−7炭水化物エステラーゼファミリに属するペルヒドロラーゼをさらに定義するのに使用できるかもしれない別の保存されたモチーフ(配列番号32のアミノ酸272〜274位のLXD)が存在することがわかる(図1および図2)。別の実施形態では、上記にて定義したシグネチャモチーフが、以下のように定義される4番目の保存されたモチーフを含む。
Leu272−Xaa273−Asp274。
【0176】
アミノ酸残基273位のXaaは一般に、イソロイシン、バリンまたはメチオニンである。4番目のモチーフは、触媒三残基の3つ目のメンバであるアスパラギン酸残基(太字)を含む(Ser188−Asp274−His303)。
【0177】
2つ以上のアミノ酸配列(ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を示す)をアラインし、本シグネチャモチーフの存在を判断するには、周知のグローバルアライメントのアルゴリズム(すなわち配列解析ソフトウェア)のどれを使用してもよい(たと、CLUSTALWまたはNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol., 48:443〜453 (1970))。アライメントされた配列(単数または複数)は、基準配列(配列番号32)と比較される。一実施形態では、基準アミノ酸配列
(本明細書で用いられるように、(本明細書で使用する場合、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)由来のCAH配列(配列番号32))を用いたCLUSTALアライメント(CLUSTALW)を用いて、CE−7エステラーゼファミリに属するペルヒドロラーゼを同定する。保存されたアミノ酸残基の相対的な番号は、表Aに示すようなアライメントされた配列内の小さな挿入または欠失(一般にアミノ酸5〜6個以下)を考慮に入れるために、基準アミノ酸配列における残基の番号をもとにしている。
【0178】
【表3】

【0179】
ペルヒドロリシス活性を有する本CE−7変異体は各々、表Aに示す野生型ペルヒドロラーゼ配列のうちの1つに由来していた。本変異体は各々、CE−7シグネチャモチーフを保持している(すなわち、野生型配列に導入された変化が、表Aに示す保存されたモチーフに対する変化を含まない)。特に、活性が改善された本ペルヒドロラーゼは、アミノ酸残基277に対する置換を有し、野生型システインが、セリン、トレオニン、バリンまたはアラニンで置換されている(配列番号32、36、202、203、204の番号付けによる)。同じ置換が配列番号205のアミノ酸残基278でも生じる(すなわち、配列番号205が、相対的な残基番号を1ずつシフトする単一のアミノ酸挿入を含む)。
【0180】
本変異体は各々、ペルヒドロラーゼ比活性[U/mgタンパク質]、反応混合物中での酵素容積活性[U/mL]および/またはペルヒドロリシス活性対加水分解活性の比(すなわち「P/H比」)の改善を含む。一実施形態では、活性の改善が、起源となった野生型配列と比較した場合の活性(ペルヒドロラーゼ比活性[U/mgタンパク質]、反応混合物中でのペルヒドロリシス容積活性[U/mL]および/またはP/H比)の増加率として測定される。もうひとつの実施形態では、配列番号5に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での酵素活性(ペルヒドロリシス比活性、ペルヒドロリシス容積活性および/またはP/H比の増加)の改善率が、配列番号32で測定した活性に対する相対的なものである。配列番号10に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での活性の改善率が、配列番号36で測定した活性に対する相対的なものである。配列番号15に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での活性の改善率が、配列番号202で測定した活性に対する相対的なものである。配列番号20に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での活性の改善率が、配列番号203で測定した活性に対する相対的なものである。配列番号25に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での活性の改善率が、配列番号204で測定した活性に対する相対的なものである。配列番号30に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも95%である変異体CE−7酵素での活性の改善率が、配列番号205で測定した活性に対する相対的なものである。
【0181】
一実施形態では、本変異体のペルヒドロラーゼ比活性の増加率が、実質的に類似の条件下での野生型配列の活性と比較した場合に、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、11、12または13倍である。
【0182】
もうひとつの実施形態では、本変異体のP/H比の増加率が、実質的に類似の条件下での野生型配列のP/H比と比較した場合に、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0または10倍である。
【0183】
本方法は、炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリに属する変異酵素のペルヒドロラーゼ活性を利用して、水性反応条件下で、工業的に有用な有効濃度のペルオキシカルボン酸を生成するものである。一実施形態では、本方法は、有効濃度の1種類以上のペルオキシカルボン酸をin situで生成するものである。
【0184】
過酸および過酸化水素の濃度を求めるためのHPLCアッセイ法
本方法では、滴定、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動(CE)、U. Karst et al.,(Anal. Chem., 69(17):3623〜3627 (1997))に記載の分析手順、本例に記載したような2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(ABTS)アッセイ(S. Minning, et al., Analytica Chimica Acta 378:293〜298 (1999)および国際特許出願公開第WO 2004/058961 A1号パンフレット)を含むがこれに限定されるものではない、多岐にわたる分析方法を用いて、反応物および生成物を分析することが可能である。
【0185】
過酸の最小殺生物濃度の判定
J. Gabrielson, et al. (J. Microbiol. Methods 50: 63〜73 (2002))によって説明されている方法を用いて、過酸(peracid)または過酸化水素および酵素基質の最小殺生物濃度(MBC)を求めることが可能である。このアッセイ法は、XTT還元の阻害に立脚したものであり、この場合、XTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、一ナトリウム塩)が、490nmまたは450nmで測定される光学密度(OD)の変化によって微生物の呼吸活性を指示する酸化還元色素である。しかしながら、殺菌剤および防腐剤の活性を試験するのに利用可能な方法には、生存可能なプレートの計数、直接的な顕微鏡計数、乾燥質量、濁度測定、吸光度および生物発光を含むがこれに限定されるものではない、多岐にわたる他の方法がある(たとえば、Brock, Semour S., Disinfection, Sterilization, and Preservation, 5th edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, USA; 2001を参照のこと)。
【0186】
酵素的に調製されたペルオキシカルボン酸組成物の使用
本方法に従って製造される酵素触媒で生成されるペルオキシカルボン酸は、多岐にわたる硬質表面/無生物での用途において、医療機器(内視鏡など)、繊維製品(衣類、カーペットなど)、調理に使われる表面、食品保存および食品包装設備、食品の包装に用いられる材料、ニワトリの孵化場および飼育施設、動物の囲い、微生物および/または殺ウイルス活性を有する使用済みプロセス水の汚染除去など、生物学的汚染物質の濃度を下げるために使用可能である。酵素で生成されるペルオキシカルボン酸を、プリオンを不活性化するよう設計された製剤(特定のプロテアーゼなど)に用いて、さらに殺生物活性を高めてもよい。好ましい態様では、本ペルオキシカルボン酸組成物が、オートクレーブ処理のできない医療機器や食品包装設備用の殺菌剤として特に有用である。ペルオキシカルボン酸含有製剤は、GRASまたは食品グレードの成分(酵素、酵素基質、過酸化水素、緩衝液)を用いて調製できるものであるため、酵素で生成される過酸(peracid)をさらに、動物の死体、肉、果物および野菜の汚染除去用、あるいは加工食品の汚染除去用に使用してもよい。酵素で生成されるペルオキシカルボン酸を、最終的な形態が、粉末、液体、ゲル、フィルム、固体またはエアロゾルである製品に取り入れてもよい。酵素で生成されるペルオキシカルボン酸を、有効な汚染除去効果が得られる濃度に希釈してもよい。
【0187】
有効濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物を用いて、生物学的汚染物質で汚染された(または汚染の疑いのある)表面および/または物体を、その表面または物体に本方法によって生成される生成物を接触させて、殺菌することが可能である。本明細書で使用する場合、「接触させる」とは、病気を引き起こす物体での汚染の疑いのある表面または無生物を、有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む殺菌用組成物と、洗浄・殺菌に十分な時間だけ接触状態におくことを示す。「接触させること」には、噴霧、処理、浸漬、フラッシング、表面または中に流し込むこと、混合、組み合わせ、ペイント、コーティング、塗布、付着させるか、そうでなければ他の方法で、有効濃度のペルオキシカルボン酸を含むペルオキシカルボン酸溶液または組成物、あるいは有効濃度のペルオキシカルボン酸を形成する溶液または組成物と、ある濃度の生物学的汚染物質で汚染されている疑いのある表面または無生物とを連通させることを含む。殺菌剤組成物を洗浄用組成物と組み合わせ、洗浄および殺菌の両方を提供してもよい。あるいは、洗浄剤(界面活性剤または洗剤など)を配合物に取り入れて、洗浄と殺菌をひとつの組成物で達成するようにしてもよい。
【0188】
有効濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、少なくとも1種類の別の抗微生物剤、プリオン分解プロテアーゼの組み合わせ、殺ウイルス剤、殺胞子剤または殺生物剤を含有するものであっても構わない。これらの作用剤と特許請求の範囲に記載の方法で生成されるペルオキシカルボン酸とを組み合わせることで、微生物、胞子、ウイルス、菌類および/またはプリオンなどの生物学的汚染物質で汚染された(または汚染の疑いのある)表面および/または物体の洗浄および殺菌に用いる場合に、高い効果および/または相乗効果を提供することができる。好適な抗微生物剤としては、微生物から所望の程度保護できるだけの十分な量で、カルボン酸エステル(p−ヒドロキシアルキルベンゾエート、アルキルシンナメートなど);スルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸など);ヨード化合物または活性ハロゲン化合物(元素ハロゲン、ハロゲン酸化物(NaOCl、HOCl、HOBr、ClOなど)、ヨウ素、インターハライド(一塩化ヨウ素、二塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素、四塩化ヨウ素、塩化臭素、一臭化ヨウ素または二臭化ヨウ素など);ポリハライド;次亜塩素酸塩;次亜塩素酸;次亜臭素酸塩;次亜臭素酸;クロロヒダントインおよびブロモヒダントイン;二酸化塩素;亜塩素酸ナトリウムなど)、過酸化ベンゾイル、過酸化アルキルベンゾイル、オゾン、一重項酸素発生剤およびこれらの混合物などの有機過酸化物、フェノール誘導体(o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、tert−アミルフェノール、C〜Cアルキルヒドロキシベンゾエートなど)、第4級アンモニウム化合物(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、これらの混合物など);このような抗微生物剤の混合物があげられる。抗微生物剤の有効量としては、抗微生物剤約0.001wt%〜約60wt%、抗微生物剤約0.01wt%〜約15wt%または抗微生物剤約0.08wt%〜約2.5wt%があげられる。
【0189】
一態様では、本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸を用いて、ある場所の表面および/またはその場に塗布すると、生存可能な生物学的汚染物質(生存可能な微生物個体群など)の濃度を下げることが可能である。本明細書で使用する場合、「場所」とは、殺菌または漂白に適した標的表面の一部または全部を含む。標的表面としては、生物学的で汚染される可能性があるあらゆる表面があげられる。非限定的な例として、食品または飲料産業で見られる設備の表面(タンク、コンベヤ、床、ドレーン、クーラー、冷凍庫、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、ドレーン、ジョイント、クレバス、これらの組み合わせなど);建造物の表面(壁、床、窓など);水処理施設、プールおよびスパ、発酵タンクなどの食品業界以外で使われるパイプおよびドレーン;病院または動物病院の表面(壁、床、ベッド、設備(内視鏡など)、衣類、スクラブ、靴をはじめとする病院/動物病院または他の医療現場で着用される衣類、病院または動物病院の他の表面);レストランの表面;浴室の表面;トイレ;衣服および靴;家禽、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマ、ブタなどの家畜のための納屋または家畜小屋の表面;家禽またはエビのための孵化場;薬剤または生物薬剤の表面(薬剤または生物薬剤の製造設備、薬剤または生物薬剤の成分、薬剤または生物薬剤の賦形剤など)があげられる。また、別の硬質表面として、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、果物、海産物、これらの組み合わせなどの食料品もあげられる。上記の場所としては、感染したリネンまたは他の繊維製品などの水分を吸収する材料も挙げられる。また、上記の場所としては、種子、球茎、塊茎、果実および野菜、発芽植物、特に作物の発芽植物(穀草、葉野菜、サラダ用作物、根野菜、豆類、ベリー類、柑橘類、硬い果物など)をはじめとする収穫された植物または植物製品もあげられる。
【0190】
硬質表面材料の非限定的な例としては、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、銅、黄銅、アルミニウム、これらの合金など)、鉱物(コンクリートなど)、ポリマーおよびプラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロンなどのポリアミドなど)があげられる。別の表面としては、レンガ、タイル、セラミック、磁器、木材、ビニル、リノリウム、カーペットがあげられる。
【0191】
本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸を用いて、殺菌、消毒、漂白、脱染、脱臭を含むがこれに限定されるものではない、衣類または繊維製品の物品に対する利点を提供することもできる。また、繊維製品の前洗い処理、洗濯洗剤、しみ抜き剤、漂白組成物、脱臭組成物、すすぎ剤を含むがこれに限定されるものではない洗濯用製品に、本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸を使用してもよい。
【0192】
組換え微生物の発現
本配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種宿主細胞、特に微生物宿主の細胞で生成できるものである。本遺伝子および核酸分子を発現させるための好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌ファミリに見出すことが可能で、広範囲にわたる温度、pH値、溶媒耐性で増殖する微生物宿主である。たとえば、細菌、酵母、糸状菌のいずれかが、本核酸分子の発現の適切な宿主となり得ることが企図される。ペルヒドロラーゼは、細胞内、細胞外または細胞内と細胞外の両方の組み合わせで発現し得るものであり、この場合、細胞内での発現で産生されたタンパク質を回収する方法よりも、細胞外で発現させるほうが、所望のタンパク質を発酵産物から回収しやすい。転写、翻訳およびタンパク質生合成装置は、細胞のバイオマスを生成するのに用いられる細胞原料と比較して変わっていないにもかかわらず、機能的な遺伝子は発現される。宿主株の例としては、Aspergillus(アスペルギルス)、Trichoderma(トリコデルマ)、Saccharomyces(サッカロミセス)、Pichia(ピキア)、Phaffia(赤色酵母)、Kluyveromyces(クリベロマイセス)、Candida(カンジダ)、Hansenula(ハンゼヌラ)、Yarrowia(ヤロウイア)、Salmonella(サルモネラ)、Bacillus(バチルス)、Acinetobacter(アシネトバクター)、Zymomonas(ザイモモナス)、Agrobacterium(アグロバクテリウム)、Erythrobacter(エリスロバクター)、Chlorobium(クロロビウム)、Chromatium(クロマチウム)、Flavobacterium(フラボバクテリウム)、Cytophaga(サイトファーガ)、Rhodobacter(ロドバクター)、Rhodococcus(ロドコッカス)、Streptomyces(ストレプトマイセス)、Brevibacterium(ブレビバクテリウム)、Corynebacteria(コリネバクテリウム)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Deinococcus(ディノコッカス)、Escherichia(エシェリキア)、Erwinia(エルウィニア)、Pantoea(パンテア)、Pseudomonas(シュードモナス)、Sphingomonas(スフィンゴモナス)、Methylomonas(メチロモナス)、Methylobacter(メチロバクター)、Methylococcus(メチロコッカス)、Methylosinus(メチロサイナス)、Methylomicrobium(メチロマイクロビウム)、Methylocystis(メチロシスチス)、Alcaligenes(アルカリゲネス)、Synechocystis(シネコシスティス)、Synechococcus(シネココッカス)、Anabaena(アナベナ)、Thiobacillus(チオバチルス)、Methanobacterium(メタノバクテリウム)、Klebsiella(クレブシエラ)、Myxococcus(ミキソコッカス)などの細菌、真菌、酵母種があげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、細菌宿主株として、Escherichia(エシェリキア)、Bacillus(バチルス)、Kluyveromyces(クリベロマイセス)、Pseudomonas(シュードモナス)があげられる。好ましい実施形態では、細菌宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)である。
【0193】
大規模な微生物の増殖および機能的な遺伝子の発現では、単純または複雑な広範囲にわたる炭水化物、有機酸およびアルコールあるいは、メタンなどの飽和炭化水素または二酸化炭素を利用する場合があり、光合成または化学的独立栄養宿主の場合、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素またはあらゆる微量栄養素(小さな無機イオンなど)の形態と量を利用することもある。増殖率の調節が、特定の調節分子を培養に添加するか否かに影響される場合もあり、これらは一般に、栄養塩またはエネルギ源とはみなされない。
【0194】
好適な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは、従来技術において周知。一般に、ベクターまたはカセットは、関連する遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、自己複製または染色体組み込みを可能にする配列を含む。好適なベクターは、転写開始の制御を担う遺伝子の5’領域、転写終結を制御するDNAフラグメントの3’領域を含む。両方の制御領域が、形質転換宿主細胞に相同な遺伝子および/または生成宿主に対して天然の遺伝子から誘導されるのが最も好ましいが、このような制御領域は、そのようにして誘導されていなくてもよい。
【0195】
所望の宿主細胞で本セファロスポリンCデアセチラーゼコード領域を発現させるのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。事実上、これらの遺伝子を発動できればどのようなプロモーターでも本発明に適しており、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(Saccharomyces(サッカロミセス)における発現に有用);AOX1(Pichia(ピキア)における発現に有用);lac、araB、tet、trp、lPL、lPR、T7、tac、trc(Escherichia coli(大腸菌)における発現に有用)ならびに、amy、apr、nprプロモーター、Bacillusにおける発現に有用なさまざまなファージプロモーターがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0196】
終結制御領域も、好ましい宿主細胞に対して天然のさまざまな遺伝子から誘導できる。一実施形態では、終結制御領域を含むかどうかは任意選択による。もうひとつの実施形態では、キメラ遺伝子が、好ましい宿主細胞由来の終結制御領域を含む。
【0197】
工業的な製造
多岐にわたる培養方法を用いて、本ペルヒドロラーゼ触媒を生成することができる。たとえば、組換え微生物宿主から過発現させた特定の遺伝子産物の大規模な生成物を、バッチ培養法、流加培養法、連続培養法によって製造できる。バッチ培養および流加培養の方法は一般的かつ従来技術において周知であり、Thomas D. Brock in Biotechnology: A Textbook of Industrial Microbiology, Second Edition, Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA (1989) and Deshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol., 36:227〜234(1992)に一例が見られる。
【0198】
連続培養を用いて、所望のペルヒドロラーゼ触媒を量産してもよい。連続培養は、規定の培地がバイオリアクターに連続投入され、同時に等量の馴化培地がプロセシング用に除去される、開放系である。連続培養では通常、主に対数増殖期にある細胞が一定の高い液相密度に維持される。あるいは、固定化した細胞を用いて連続培養を実施してもよく、この場合は炭素と栄養塩を連続的に添加し、価値のある生成物、副産物または廃棄物を細胞塊から連続的に除去する。細胞の固定化は、天然および/または合成材料で構成される、多岐にわたる固相支持体を用いて実施すればよい。
【0199】
バッチ発酵、流加培養発酵または連続培養からの所望のペルヒドロラーゼ触媒の回収は、当業者間で周知の任意の方法で実施すればよい。たとえば、酵素触媒が細胞内で生成されたら、遠心分離または膜濾過によって細胞ペーストを培養液から分離し、任意選択により水または所望のpHの水性緩衝液で洗浄した後、所望のpHの水性緩衝液中の細胞ペースト懸濁液をホモジナイズして、所望の酵素触媒を含有する細胞抽出液を生成する。この細胞抽出液を任意選択によりセライトまたはシリカなどの適切なフィルタエイドで濾過し、熱処理ステップの前に細胞デブリを除去して、望ましくないタンパク質を酵素触媒溶液から沈殿させてもよい。次に、所望の酵素触媒を含む溶液を、膜濾過または遠心分離によって沈殿細胞デブリおよびタンパク質から分離し、得られた部分精製酵素触媒溶液をさらに膜濾過して濃縮した後、任意選択により適切な賦形剤(マルトデキストリン、トレハロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液またはこれらの混合物など)と混合し、噴霧乾燥させて所望の酵素触媒を含む固体粉末を生成してもよい。
【0200】
量、濃度または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられている場合、これは、上限の限界値または好ましい値と、下限の限界値または好ましい値の任意の対から形成されるあらゆる範囲を、範囲が別途開示されているか否かとは関係なく、具体的に開示しているものとして理解されたい。本明細書において一定範囲の数値が明記される場合、特に指定のないかぎり、当該範囲は両端値および範囲内の全整数と分数を含むものとする。範囲を規定する際にも、範囲を表記の特定値に限定することは想定していない。
【0201】
好ましい実施形態を実証するにあたり、以下の実施例を示す。以下の実施例に開示の技術は、本発明者らによって本明細書に開示の方法を実施する上で十分に機能することが判明した技術を示し、その実施に好ましいモードを構成するものとみなせる旨は、当業者であれば自明であろう。しかしながら、当業者であれば、本開示を踏まえて、ここに開示の特定の実施形態に多くの変更をほどこしても、なお本発明の主旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得られることは自明であろう。
【0202】
特に明記しないかぎり、試薬および材料は、DIFCO Laboratories(Detroit、MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg、MD)、TCI America(Portland、OR)、Roche Diagnostics Corporation(Indianapolis、IN)またはSigma−Aldrich Chemical Company(St. Louis、MO)から入手したものである。
【0203】
明細書中の以下の略語は、以下のとおり測定、技術、特性または化合物の単位に相当する:「sec」または「s」は秒(単数または複数)を意味し、「min」は分(単数または複数)を意味し、「h」または「hr」は時間(単数または複数)を意味し、「μL」はマイクロリットル(単数または複数)を意味し、「mL」はミリリットル(単数または複数)を意味し、「L」はリットル(単数または複数)を意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモル(単数または複数)を意味し、「ppm」は百万分率(単数または複数)を意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラム(単数または複数)を意味し、「μg」はマイクログラム(単数または複数)を意味し、「ng」はナノグラム(単数または複数)を意味し、「g」は重力を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味し、「dd HO」は蒸留・脱イオン水を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「ATCC」または「ATCC(登録商標)」はAmerican Type Culture Collection(Manassas、VA)を意味し、「U」はペルヒドロラーゼ活性の単位(単数または複数)を意味し、「rpm」は1分あたりの回転数(単数または複数)を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
【実施例】
【0204】
実施例1
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)からのアセチルキシランエステラーゼのクローニングおよび発現
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)(GENBANK(登録商標)受託番号AAB70869、配列番号32)からのアセチルキシランエステラーゼをコードするコード領域を、E. coli(大腸菌)(DNA 2.0、Menlo Park、CA)での発現に合わせて最適化したコドンを用いて合成した。続いて、配列番号33および配列番号34として同定したプライマーを使用して、コード領域をPCR増幅した(94℃で0.5分、55℃で0.5分間、70℃で1分、30サイクル)。得られた核酸産物(配列番号35)をpTrcHis2−TOPO(登録商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)にサブクローニングし、pSW196として同定されるプラスミドを生成した。このプラスミドpSW196を使用して、E. coli(大腸菌) KLP18を形質転換し、KLP18/pSW196(として同定した株を生成した(内容全体を参照により本明細書に援用する、DiCosimo et al.の米国特許出願公開第2008/0176299号明細書を参照のこと)。KLP18/pSW196を、最大OD600nm=0.4〜0.5で振盪しながらLB培地で37℃にて成長させ、その時点で最終濃度1mMになるようIPTGを加え、インキュベーションを2〜3時間継続した。細胞を遠心分離によって回収し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の20〜40%のペルヒドロラーゼの発現を確認した。
【0205】
実施例2
T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼを発現するE. coli(大腸菌) KLP18形質転換体の発酵
2L容の振盪フラスコに、酵母エキス(Amberex 695、5.0g/L)、KHPO(10.0g/L)、KHPO(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NHSO(4.0g/L)、MgSO七水和物(1.0g/L)、クエン酸第二鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有する0.5Lの種培地を仕込んで、発酵槽種培養を調製した。培地のpHを6.8に調節し、培地をフラスコ内で滅菌した。滅菌後添加物には、グルコース(50wt%、10.0mL)および1mLアンピシリン(25mg/mL)ストック溶液を含んでいた。種培地にE. coli(大腸菌) KLP18/pSW196(実施例1)の1mL培養を20%グリセロール中にて播種し、35℃および300rpmで培養した。種培養を、約1〜2OD550で、KHPO(3.50g/L)、FeSO七水和物(0.05g/L)、MgSO七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母エキス(Amberex 695、5.0g/L)、Biospumex153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation、Monheim、Germany)、NaCl(1.0g/L)、CaCl二水和物(10g/L)、NIT微量元素溶液(10mL/L)を含有(35℃)する8Lの培地の入った14L容の発酵槽(Braun Biotech、Allentown、PA)に移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO七水和物(0.5g/L)、ZnSO七水和物(0.2g/L)、CuSO五水和物(0.02g/L)およびNaMoO二水和物(0.02g/L)を含有していた。滅菌後添加物には、グルコース溶液(50%w/w、80.0g)およびアンピシリン(25mg/mL)ストック溶液(16.00mL)を含んでいた。グルコース濃度が0.5g/Lまで低下したら、グルコース溶液(50%w/w)を流加培養に使用した。0.31g供給/分で開始して、徐々に時間ごとに0.36、0.42、0.49、0.57、0.66、0.77、0.90、1.04、1.21、1.41および1.63g/分まで上げて、グルコースの供給を開始した;その後は速度を一定に保った。培地のグルコース濃度をモニタし、濃度が0.1g/Lを超えたら、供給速度を落とすか一時的に停止させた。OD550=56とOD550=80の間で、さまざまな株に対して16mLのIPTG(0.5M)を加えることで、誘導を開始した。溶存酸素(DO)濃度を空気飽和の25%で制御した。まずはインペラの攪拌速度(400〜1400rpm)、続いて通気速度(2〜10slpm)によって、DOを制御した。pHについては6.8に制御した。NHOH(29%w/w)およびHSO(20%w/v)をpH制御に用いた。頭部圧力を0.5バールとした。IPTG付加の16時間後に細胞を遠心分離によって回収した。
【0206】
実施例3
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼのモデリング
T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)(配列番号32)およびThermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)MSB8(配列番号36)由来のアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列を、CLUSTALW(図1)を用いてアライメントした。T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ(1VLQ)のX線結晶構造を、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB)タンパク質データバンク(PDP)から得た(H.M. Berman, J. Westbrook, Z. Feng, G. Gilliland, T.N. Bhat, H. Weissig, I.N. Shindyalov, P.E. Bourne: The Protein Data Bank. Nucleic Acids Research, 28 pp. 235〜242 (2000)およびH.M. Berman, K. Henrick, H. Nakamura, Announcing the worldwide Protein Data Bank., Nature Structural Biology 10 (12), p. 980 (2003)を参照のこと。対応するT. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アミノ酸とは異なるT. maritima(サーモトガ・マリティマ)アミノ酸はいずれも、Accelrys DISCOVERY STUDIO(登録商標) 2.0ソフトウェア(プロトコール>タンパク質モデリング>ビルド突然変異体;Accelrys Software Inc., San Diego, CA)を用いてT. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アミノ酸と置き換えた。また、セレノメチオニンをメチオニンと置き換えた。出力用に選択したモデル数は3であり、最適化レベルを「高」に設定し、Use DOPE法を「真(true)」に設定した。構造の重層および可視化については、PyMol(商標)バージョン0.99(DeLano Scientific LLC, (Palo Alto, CA))で実施した。触媒三残基(H303、S188,およびD274)が正しい位置に残ったかどうか、全体としての構造が元のモデルに対して維持されたか否かによって、モデル品質を判断した。
【0207】
実施例4
飽和突然変異誘発用のThermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼにおけるアミノ酸残基の同定
正準触媒三残基(H303、S188、D274)に加えて、モデルに基づくとアセチルキシランエステラーゼ活性部位にはいくつかの残基も存在する。これらの残基1つ以上が別のアミノ酸で置換されると、酵素の機能性が変化すると想定されよう。しかしながら、このような置換の特異的効果は、a prioriでは未知である。配列番号32の残基F213(Phe213)、I276(Ile276)、C277(Cys277)およびN93(Asn93)を、部位飽和突然変異誘発用に選択した。残基Y92(Tyr92)は、CE−7ファミリ全体でこの残基の保存レベルが高いため、選択しなかった。
【0208】
実施例5
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸残基F213、I276、C277、N93位での飽和突然変異誘発
4つの選択した残基(F213、I276、C277、N93)各々を他の可能な19のアミノ酸各々に個々に変化させるために、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ(プラスミドpSW196の配列番号35(上記の実施例1および米国特許出願公開第2008/0176299号明細書を参照のこと))のコドン最適化配列に基づいてプライマー対(表1)を設計した。
【0209】
【表4】

【0210】
【表5】

【0211】
【表6】

【0212】
【表7】

【0213】
【表8】

【0214】
QUIKCHANGE(登録商標)(Stratagene, La Jolla, CA)キットを使用して、製造業者の指示に従って変異を生み出した。増幅プラスミドを1UのDpnIで37℃にて1時間処理した。処理後のプラスミドを使用して、化学的にコンピテントなE. coli(大腸菌)XL1−Blue(Stratagene)(残基213、276、277)または化学的にコンピテントなE. coli(大腸菌) TOP10F’(Invitrogen, Carlsbad, CA)(残基93)を形質転換した。形質転換体を、0.1mgアンピシリン/mL加LB寒天に蒔き、一晩37℃で増殖させた。最大5つの個々のコロニーを選び、プラスミドDNAを配列決定して想定変異を確認した。
【0215】
実施例6
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ突然変異体のペルヒドロラーゼ活性アッセイ
突然変異体の個々のコロニーを、0.1mgアンピシリン/mLを含む0.1mLのLBを入れた96ウェルのプレートに取り、振盪せずに一晩37℃で増殖させた。一晩培養(0.003mL)を、0.3mLのLB、0.5mMのIPTGおよび0.1mgのアンピシリン/mLの入った「誘導プレート」(96ディープウェル)に移した。誘導プレートを一晩37℃で振盪しながら増殖させた。0.01mLの誘導培養を、0.09mLの56mg/mL CELYTIC(商標)Express (Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)の入った「細胞溶解プレート」(96ウェル)に移した。プレートをまずわずかに攪拌した上で、25℃で30分間インキュベートした。約0.01mLの細胞溶解培養を、0.09mLの「アッセイ溶液pH5.0」(100mMトリアセチン、100mM過酸化水素、50mM酢酸、pH5.0)の入った「アッセイプレート」(96ウェル)に移した。約0.01mLの細胞溶解培養も、0.09mLの「アッセイ溶液pH7.5」(100mMトリアセチン、100mM過酸化水素、50mMリン酸ナトリウム、pH7.5)の入った「アッセイプレートpH7.5」(96ウェル)に移した。プレートを30秒間静かに攪拌した上で、周囲温度で10分間インキュベートした。「停止緩衝液」(100mMオルト−フェニレンジアミン(OPD)、500mM NaHPO、pH2.0)0.1mLを加えてアッセイをクエンチした。プレートを30秒間静かに攪拌した上で、25℃で30分間インキュベートした。458nmで蓋を使用せずに、SPECTRAMAX(登録商標) Plus384(Molecular Devices,(Sunnyvale, CA))で吸光度を読み取った。結果を分析したところ、未変性酵素に比して有意に大きなペルヒドロラーゼ活性を呈する4種類の突然変異体が示された(表2および3)。4つともペルヒドロラーゼ活性を高めた残基277でのシステインの変化である(C277A、C277V、C277S、C277T;配列番号5参照)。
【0216】
【表9】

【0217】
【表10】

【0218】
実施例7
E. coli(大腸菌) KLP18におけるThermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ変異体の発現
確認済みのアセチルキシランエステラーゼ変異を有するプラスミドを使用して、E. coli(大腸菌) KLP18(実施例1)を形質転換した。形質転換体をLB−アンピシリン(100μg/mL)プレートに蒔き、一晩37℃でインキュベートした。20%(v/v)グリセロールを加えた2.5mLのLB培地を用いてプレートから細胞を回収し、得られた細胞懸濁液の1.0mLのアリコートを−80℃で冷凍した。1mLの解凍細胞懸濁液を、KHPO(5.0g/L)、FeSO七水和物(0.05g/L)、MgSO七水和物(1.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母エキス(Amberex 695、5.0g/L)、Biospumex153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation)、NaCl(1.0g/L)、CaCl二水和物(0.1g/L)、NIT微量元素溶液(10mL/L)を含有する0.7Lの培地を入れた1L容のAPPLIKON(登録商標) Bioreactor (Applikon(登録商標) Biotechnology,(Foster City, CA))に移した。微量元素溶液には、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO七水和物(0.5g/L)、ZnSO七水和物(0.2g/L)、CuSO五水和物(0.02g/L)、NaMoO二水和物(0.02g/L)を含有させた。滅菌後の添加物には、グルコース溶液(50%w/w、6.5g)およびアンピシリン(25mg/mL)ストック溶液(2.8mL)を含めた。グルコース溶液(50%w/w)も流加培養に使用した。グルコース濃度が0.5g/L未満になった40分後に、0.03g供給/分からグルコースの供給を開始し、時間ごとに0.04、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.12、0.14g/分まで徐々に増加させた;その後は速度を一定に保った。培地のグルコース濃度をモニタし、濃度が0.1g/Lを超えたら、供給速度を落とすか一時的に停止させた。0.8mLのIPTG(0.05M)を加えて、OD550=50で誘導を開始した。まず攪拌(400〜1000rpm)した後、通気(0.5〜2slpm)して、溶存酸素(DO)濃度を空気飽和の25%に制御した。温度を37℃に制御し、pHを6.8に制御した;NHOH(29%w/w)およびHSO(20%w/v)をpH制御に使用した。IPTG添加の20時間後に、細胞を遠心分離によって回収した(5,000×gで15分間)。
【0219】
実施例8
半精製T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼまたはT. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)変異アセチルキシランエステラーゼの細胞可溶化物の調製
E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型ペルヒドロラーゼ)の細胞培養を実施例2で説明したようにして増殖させた。得られた細胞ペーストを、1.0mMのDTTを加えた50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に再懸濁させた(20%w/v)。再懸濁細胞をフレンチプレス細胞破砕機に2回通し、>95%細胞溶解させた。溶解細胞を30分間12,000×gで遠心処理し、上清を75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間クエンチした。沈殿したタンパク質を10分間11,000×gで遠心除去した。SDS−PAGEによって、熱処理済みの抽出上清にてCE−7酵素が全タンパク質の約85〜90%をなすことが示された。
【0220】
E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277S(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277V(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277V変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277A(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277A変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277T(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)の細胞培養を、各々実施例7で説明したようにして増殖させた。得られた細胞ペーストを、1.0mMのDTTを加えた50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に再懸濁させた(20%w/v)。再懸濁細胞をフレンチプレス細胞破砕機に2回通し、>95%細胞溶解させた。溶解細胞を30分間12,000×gで遠心処理し、上清を75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間クエンチした。沈殿したタンパク質を10分間11,000×gで遠心除去した。SDS−PAGEによって、熱処理済みの抽出上清にてCE−7酵素が全タンパク質の約85〜90%をなすことが示された。
【0221】
実施例9
T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシラン野生型エステラーゼおよびC277エステラーゼ変異体の比活性およびペルヒドロリシス/加水分解比
反応(40mL合計容量)を、トリアセチン(100mM)、過酸化水素(100mM)、以下のアセチルキシランエステラーゼ突然変異体すなわち、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277S由来の熱処理抽出全タンパク質0.010mg/mL)、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277T由来の熱処理抽出全タンパク質0.010mg/mL)、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277A変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277A由来の熱処理抽出全タンパク質0.0125mg/mL)、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277V変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196/C277V由来の熱処理抽出全タンパク質0.0125mg/mL)(実施例8で説明したようにして調製)のうちの1種類を含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中にて25℃で実施した。反応物を反応開始時の30秒間だけ攪拌し、最初に反応物と酵素とを混合した。
【0222】
E. coli(大腸菌) KLP18/pSW196(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型アセチルキシランエステラーゼ(実施例1)を発現)から単離した0.050mg/mLの熱処理抽出全タンパク質を用いて、すぐ上で説明したものと同じ条件で反応を実施した。この場合、熱処理抽出上清については、実施例8の手順で調製した。
【0223】
各反応の最初の1分後と、以後は2分ごとに15分間、上述した各々の反応混合物から得られる2種類の試料を同時に抜き取り、2種類の試料のうちの一方を過酢酸で分析し、第2の試料をトリアセチンの酵素的加水分解と、それに続くメチル−p−トリルスルフィド(MTS、下記参照)との反応による試料中の過酢酸から酢酸への変換で生成された全酢酸について分析した。
【0224】
Karst et al.(上掲)によって説明されている方法を改変したものを用いて、反応混合物における過酢酸生成率を測定した。反応混合物の試料(0.040mL)をあらかじめ定められた時点で除去し、水中で0.960mLの5mMリン酸とすみやかに混合し、希釈試料のpHをpH4未満まで調節することで反応を終了させた。得られた溶液をULTRAFREE(登録商標) MCフィルタユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Millipore Corp.、Billerica、MA;カタログ番号UFC3LKT 00)にて2分間12,000rpmで遠心処理して濾過した。得られた濾液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水が入った1.5mLのスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies、Palo Alto、CA;番号5182−0715)に移した後、0.100mLの20mM MTS(メチル−p−トリルスルフィド)のアセトニトリル溶液を加え、バイアルにキャップをし、遮光下約25℃での10分間のインキュベーション前に中身を軽く混合した。次に、このバイアルに0.400mLのアセトニトリルと0.100mLのトリフェニルホスフィン(TPP、40mM)のアセトニトリル溶液とを加え、バイアルに再びキャップをし、得られた溶液を混合し、約25℃で30分間、遮光下でインキュベートした。次に、このバイアルに0.100mLの10mMN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET;HPLC外部標準)を加え、得られた溶液をHPLCでMTSO(メチル−p−トリルスルホキシド)について分析し、MTSと過酢酸との反応によって化学量論的な酸化生成物を生成した。抽出タンパク質またはトリアセチンを加えることなく対照反応を実施し、バックグラウンドMTS酸化についての過酢酸生成率の補正用に、アッセイ混合物中での過酸化水素によるMTSの酸化率を求めた。HPLC方法:Supelco Discovery C8カラム(10cm×4.0mm、5μm)(カタログ番号569422−U)とSupelco Supelguard Discovery C8プレカラム(Sigma−Aldrich;カタログ番号59590−U)の併用;10マイクロリットル注入容量;CHCN(Sigma−Aldrich;カタログ番号270717)および脱イオン水で1.0mL/分および周囲温度での勾配法(表4)。
【0225】
【表11】

【0226】
反応におけるペルヒドロラーゼ触媒酢酸生成率を判断するために、反応混合物の試料(0.900mL)をあらかじめ定められた時点で除去し、0.040mLの0.75M HPOが入った1.5mL容の微小遠心管にすみやかに加え、得られた溶液を軽く混合してpH3.0〜4.0で反応を停止させた。次に、この管に10mg/mLのAspergillus nigerカタラーゼ(Sigma−Aldrich;C3515)を50mMのリン酸緩衝液pH(7.2)に入れた溶液0.020mLに加え、得られた溶液を混合し、周囲温度で15分間反応させて、未反応の過酸化水素を水と酸素に分けた。次に、この管に0.040mLの0.75M HPOを加え、得られた溶液を混合し、ULTRAFREE(登録商標) MCフィルタユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Millipore Corp.、カタログ番号UFC3LKT 00)にて2分間12,000rpmで遠心処理して濾過した。得られた濾液のアリコート(0.100mL)を、0.150mLの20mM MTS(メチル−p−トリルスルフィド)のアセトニトリル溶液と混合し、得られた溶液を遮光下約25℃で10分間インキュベートした。トリアセチンの酵素的加水分解と、MTSとの反応による過酢酸から酢酸への変換の両方で生成された試料中での酢酸濃度を、炎イオン化検出器(FID)およびDB−FFAPカラム(長さ15m;ID、0.530mm;膜厚、1.00μm)を装着したガスクロマトグラフ(GC)で求めた;速度判断ごとに新しい注入ポートライナを使用(合計で8種類の試料を分析)し、経時的に注入ポートライナにリン酸が蓄積するのを回避した。
【0227】
Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ変異体は、野生型エステラーゼよりもトリアセチンのペルヒドロリシスに対する比活性が有意に高かった(表5)。PAA生成率(ペルヒドロリシス率)を、トリアセチンから酢酸への加水分解率(加水分解率)(PAAおよび酢酸の両方から、このアッセイ法での全酢酸生成率から算出し、過酢酸生成率について補正した)で割って、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ変異体のペルヒドロリシス/加水分解比を求めた;T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)アセチルキシランエステラーゼ変異体のP/H比は、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型アセチルキシランエステラーゼのP/H比とほぼ等しいか、これより大きかった(表5)。
【0228】
【表12】

【0229】
実施例10
Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)からのアセチルキシランエステラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(受託番号NP 227893.1)に報告されているようなT. maritima(サーモトガ・マリティマ)由来のアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子を合成した(DNA 2.0、Menlo Park CA)。次に、配列番号206および配列番号207として同定したプライマーを使用して、この遺伝子をPCRで増幅した(94℃で0.5分、55℃で0.5分間、70℃で1分、30サイクル)。得られた核酸産物(配列番号208)を制限酵素PstIおよびXbalで切断し、pUC19のPstIとXbaI部位の間にサブクローニングして、pSW207として同定したプラスミドを生成した。GENBANK(登録商標)(受託番号NP 227893.1;配列番号36)に報告されているようなT. maritima(サーモトガ・マリティマ) MSB8由来のアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子を、E. coli(大腸菌)(DNA 2.0、Menlo Park CA)での発現に合わせて最適化したコドンを用いて合成した。次に、配列番号38および配列番号39として同定したプライマーを使用して、この遺伝子をPCRで増幅した(94℃で0.5分、55℃で0.5分間、70℃で1分、30サイクル)。得られた核酸産物(配列番号37)を制限酵素EcoRIおよびPstIで切断し、pTrc99A(GENBANK(登録商標) 受託番号M22744)のEcoRIとPstI部位の間にサブクローニングして、pSW228として同定したプラスミドを生成した(コドン最適化T. maritima(サーモトガ・マリティマ)コード配列 配列番号41を含む)。プラスミドpSW207およびpSW228を使用して、E. coli(大腸菌) KLP18(米国特許出願公開第2008/0176299)を形質転換し、それぞれKLP18/pSW207およびKLP18/pSW228として同定した株を生成した。KLP18/pSW207およびKLP18/pSW228をLB培地で振盪しながら最大OD600nm=0.4〜0.5まで37℃で増殖させ、その時点でIPTGを加えて最終濃度を1mMとし、インキュベーションを2〜3時間継続した。細胞を遠心分離によって回収し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の20〜40%のペルヒドロラーゼ発現を確認した。
【0230】
実施例11
残基C277でのThermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ変異体の構築
プラスミドpSW228におけるT. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号41)のコドン最適化配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチドプライマー対(表6)を用いて、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼのC277(Cys277)位を、Val、Ala、Ser、Thrの各々に変更した。QUIKCHANGE(登録商標)(Stratagene)を用いて、製造業者の指示に従って変異を生み出した。増幅プラスミドを1UのDpnIで37℃にて1時間処理した。処理後のプラスミドを使用して、化学的にコンピテントなE. coli(大腸菌) XL1−Blue(Stratagene)を形質転換した。形質転換体を、0.1mgアンピシリン/mL加LB寒天に蒔き、一晩37℃で増殖させた。最大5つの個々のコロニーを選び、プラスミドDNAを配列決定して想定変異を確認した。
【0231】
【表13】

【0232】
実施例12
E. coli(大腸菌)KLP18におけるThermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ変異体の発現
アセチルキシランエステラーゼ変異が確認されたプラスミドを用いて、E. coli(大腸菌) KLP18(実施例1)を形質転換した。形質転換体をLB培地で37℃にて振盪しながら最大OD600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、その時点でIPTGを加えて最終濃度を1mMにし、インキュベーションを2〜3時間継続した。細胞を遠心分離によって回収し、DS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の20〜40%のアセチルキシランエステラーゼ発現を確認した。
【0233】
実施例13
半精製T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ突然変異体を含有する細胞可溶化物の調製
細胞培養(実施例12で説明したようにして調製)を、実施例7で説明したものと類似の発酵プロトコールを用いて、1Lスケール(Applikon)にて増殖させた。細胞を5,000×gで15分間の遠心分離によって回収した後、1.0mMのDTTを加えた50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に再懸濁させた(20%w/v)。再懸濁細胞をフレンチプレス細胞破砕機に2回通し、>95%細胞溶解させた。溶解細胞を30分間12,000×gで遠心処理し、上清を75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間クエンチした。沈殿したタンパク質を10分間11,000×gで遠心除去した。SDS−PAGEによって、CE−7酵素が調製物中の全タンパク質の約85〜90%をなすことが示された。
【0234】
実施例14
T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシラン野生型エステラーゼおよびC277エステラーゼ変異体の比活性およびペルヒドロリシス/加水分解比
反応(40mL合計容量)を、トリアセチン(100mM)、過酸化水素(100mM)、以下のアセチルキシランエステラーゼ変異体すなわち、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW228/C277S由来の熱処理抽出全タンパク質0.010mg/mL)、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW228/C277T由来の熱処理抽出全タンパク質0.010mg/mL)、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)C277A変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW228/C277A由来の熱処理抽出全タンパク質0.0125mg/mL)、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)C277V変異体ペルヒドロラーゼ(E. coli(大腸菌) KLP18/pSW228/C277V由来の熱処理抽出全タンパク質0.0125mg/mL)(実施例13で説明したようにして調製)のうちの1種類を含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中にて25℃で実施した。反応物を反応開始時の30秒間だけ攪拌し、最初に反応物と酵素とを混合した。
【0235】
E. coli(大腸菌) KLP18/pSW228(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型アセチルキシランエステラーゼ(実施例10)を発現)から単離した0.050mg/mLの熱処理抽出全タンパク質を用いて、すぐ上で説明したものと同じ条件で反応を実施した。この場合、熱処理抽出上清については、実施例13の手順で調製した。
【0236】
各反応の最初の1分後と、以後は2分ごとに15分間、上述した各々の反応混合物から得られる2種類の試料を同時に抜き取り、Karst et al.(上掲)が説明している方法に手を加えたものを用いて2種類の試料のうちの一方を過酢酸で分析し、第2の試料をトリアセチンの酵素的加水分解と、それに続くメチル−p−トリルスルフィド(MTS、実施例9参照)との反応による試料中の過酢酸から酢酸への変換で生成された全酢酸について分析した。
【0237】
Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ突然変異体は、野生型エステラーゼよりもトリアセチンのペルヒドロリシスに対する比活性が有意に高かった(表7)。PAA生成率(ペルヒドロリシス率)を、トリアセチンから酢酸への加水分解率(加水分解率)(PAAおよび酢酸の両方から、このアッセイ法での全酢酸生成率から算出し、過酢酸生成率について補正した)で割って、T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ変異体のペルヒドロリシス/加水分解比を求めた;T. maritima(サーモトガ・マリティマ)アセチルキシランエステラーゼ変異体のP/H比は、T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型アセチルキシランエステラーゼのP/H比とほぼ等しいか、これより大きかった(表7)。
【0238】
【表14】

【0239】
実施例15
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸生成
トリアセチン(2mM)、過酸化水素(10mM)、0.1μg/mL〜2.0μg/mLの熱処理細胞抽出タンパク質(上述したように調製、熱処理は85℃で20分間実施)を含有する反応(100mL合計容量)を、10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)にて20℃で実施した。反応混合物中の過酢酸濃度を、Karst et al.(上掲)が説明している方法で求めた。1分、5分、20分、40分、60分の時点での過酢酸濃度を表8にあげておく。
【0240】
【表15】

【0241】
実施例16
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸生成
トリアセチン(2mM)、過酸化水素(10mM)、0.1μg/mL〜2.0μg/mLの熱処理細胞抽出タンパク質(上述したように調製、熱処理は85℃で20分間実施)を含有する反応(100mL合計容量)を、10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)にて20℃で実施した。反応混合物中の過酢酸濃度を、Karst et al.(上掲)が説明している方法で求めた。1分、5分、20分、40分、60分の時点での過酢酸濃度を表9にあげておく。
【0242】
【表16】

【0243】
実施例17
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸生成
トリアセチン(100mM)、過酸化水素(100mM)、10μg/mL〜50μg/mLの熱処理T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)またはT. maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型またはC277変異体ペルヒドロラーゼ(上述したように調製した熱処理細胞抽出液タンパク質として。熱処理は75℃で20分間実施)を含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中、25℃で反応(40mL合計容量)を実施した。反応物を反応開始時の30秒間だけ攪拌し、最初に反応物と酵素とを混合した。反応混合物中の過酢酸濃度を、Karst et al.(上掲)が説明している方法で求めた。1分、5分、30分の時点での過酢酸濃度を表10にあげておく。
【0244】
【表17】

【0245】
実施例18
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸生成
トリアセチン(100mMまたは150mM)、過酸化水素(100mM、250mMまたは420mM)、熱処理T. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)またはT. maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型、C277SまたはC277T変異体ペルヒドロラーゼ(上述したように調製した熱処理細胞抽出液タンパク質として。熱処理は75℃で20分間実施;濃度は表11に示すとおりである)を含有する重炭酸ナトリウム緩衝液(1mM、初期pH6.0)中、25℃で反応(10mL合計容量)を実施した。さらに500ppmのTURPINAL(登録商標)SLを含有する420mM過酸化水素を用いて反応を実施した。反応物を反応開始時の30秒間だけ攪拌し、最初に反応物と酵素とを混合した。反応混合物中の過酢酸濃度を、Karst et
al.(上掲)が説明している方法で求めた。1分、5分、30分の時点での過酢酸濃度を表11にあげておく。
【0246】
【表18】

【0247】
実施例19
T. maritima(サーモトガ・マリティマ)およびT. neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型および変異体ペルヒドロラーゼを用いるプロピレングリコールジアセテートまたはエチレングリコールジアセテートのペルヒドロリシス
細胞ペースト(20wt%湿細胞重量)を、ジチオトレイトール(1mM)を含有する0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に入れた懸濁液に、作業圧16,000psi(約110MPa)のフレンチプレスで2回通して、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196)、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277S)、Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277T)、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228)、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277S)、Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277T)を発現する形質転換体の細胞抽出液を各々調製した。溶解した細胞を12,000×gで30分間遠心処理し、清澄化した細胞抽出液を生成した。これを全可溶性タンパク質についてアッセイ(Bradfordアッセイ)した。上清を75℃で20分間加熱した後、氷浴で2分間クエンチした。沈殿したタンパク質を10分間11,000×gで遠心除去した。得られた熱処理抽出タンパク質上清のSDS−PAGEによって、CE−7酵素が調製物中の全タンパク質の約85〜90%をなすことが示された。熱処理抽出タンパク質上清をドライアイスで冷凍し、使用するまで−80℃で保管した。
【0248】
プロピレングリコールジアセテート(PGDA)またはエチレングリコールジアセテート(EGDA)(100mM)、過酸化水素(100mM)ならびに、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196/C277S (Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196/C277T(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW228(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW228/C277S(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW228/C277T(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)(上述したようにして調製)由来の25μg/mLの熱処理抽出タンパク質を含有する10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、第1の組の反応(10mL合計容量)を20℃で実施した。各反応条件の対照反応を実施して、抽出タンパク質を加えることなく過酸化水素によってトリアセチンの化学的ペルヒドロリシスで生じた過酢酸の濃度を求めた。1分、5分、30分の時点で反応をサンプルし、Karst誘導体化プロトコール(Karst et al.(上掲))およびHPLC分析法(上掲)を用いて過酢酸について試料を分析した。1分、5分、30分の時点での過酢酸濃度を表12にあげておく。
【0249】
【表19】

【0250】
プロピレングリコールジアセテート(PGDA)またはエチレングリコールジアセテート(EGDA)(2mM)、過酸化水素(10mM)ならびに、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)野生型ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196/C277S (Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW196/C277T(Thermotoga neapolitana(サーモトガ・ネアポリタナ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW228(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)野生型ペルヒドロラーゼ)、E. coli(大腸菌)KLP18/pSW228/C277S(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277S変異体ペルヒドロラーゼ),およびE. coli(大腸菌)KLP18/pSW228/C277T(Thermotoga maritima(サーモトガ・マリティマ)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)(上述したようにして調製)由来の10μg/mLの熱処理抽出タンパク質を含有する10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、第2の組の反応(10mL合計容量)を20℃で実施した。各反応条件の対照反応を実施して、抽出タンパク質を加えることなく過酸化水素によってトリアセチンの化学的ペルヒドロリシスで生じた過酢酸の濃度を求めた。5分の時点で反応をサンプルし、Karst誘導体化プロトコール(Karst et al.(上掲))およびHPLC分析法(上掲)を用いて過酢酸について試料を分析した。5分の時点での過酢酸濃度を表13にあげておく。
【0251】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドが、構造的に、炭水化物エステラーゼファミリ7の酵素として分類され、
(a)配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25のアミノ酸残基277に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件として、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25と、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するか、
(b)配列番号30のアミノ酸残基278に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件として、配列番号30と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、
上記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリペプチドが、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20、配列番号25または配列番号30を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
調節配列と作動可能に連結された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えDNAコンストラクト。
【請求項6】
請求項5に記載の組換えDNAコンストラクトを含む、宿主細胞。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドで細胞を形質転換することを含む、細胞を形質転換するための方法。
【請求項8】
ペルヒドロリシス活性を有し、構造的に、炭水化物エステラーゼファミリ7の酵素として分類される、単離されたポリペプチドであって、
(a)配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25のアミノ酸277に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件として、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20または配列番号25と、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するか;または
(b)配列番号30のアミノ酸278に対する置換が、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択されることを条件として、配列番号30と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、
上記単離されたポリペプチド。
【請求項9】
ポリペプチドが、配列番号5、配列番号10、配列番号15、配列番号20、配列番号25または配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
カルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生成させるための方法であって、
(a)(1)(i)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択的にヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、C2〜C7であるRは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
は、任意選択的にヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rの各炭素原子はそれぞれ、1つより多くないヒドロキシル基、または1つより多くないエステル基を含み、そしてここでRは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
mは、1からRにおける炭素原子の数である)を有し、
25℃で少なくとも5ppmの水に対する溶解度を有する、
1つまたはそれ以上のエステルと、
(ii)構造
【化1】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、それぞれHまたはRC(O)である)を有する1つまたはそれ以上のグリセリドと、
(iii)式
【化2】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する1つまたはそれ以上のエステルと、
(iv)1つまたはそれ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類またはアセチル化多糖類と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと;
(2)過酸素の源と;
(3)請求項8または9に記載のポリペプチドと;
を含む、一式の反応成分を備えることと:
(b)該反応成分を適した水性反応条件下で混ぜ合わせ、それによって、ペルオキシカルボン酸を生成させることと:
を含む、上記方法。
【請求項11】
酵素生成ペルオキシカルボン酸組成物を用いて硬表面または無生物対象を殺菌または消毒するための方法であって、
(a)(1)(i)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択的にヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、C2〜C7であるRは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
は、任意選択的にヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rの各炭素原子はそれぞれ、1つより多くないヒドロキシル基、または1つより多くないエステル基を含み、そしてここで、Rは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
mは、1からRにおける炭素原子の数である)を有し、
25℃で少なくとも5ppmの水に対する溶解度を有する、
1つまたはそれ以上のエステルと、
(ii)構造
【化3】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、それぞれHまたはRC(O)である)を有する
1つまたはそれ以上のグリセリドと、
(iii)式
【化4】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1つまたはそれ以上のエステルと、
(iv)1つまたはそれ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類またはアセチル化多糖類と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと;
(2)過酸素の源と;
(3)請求項8または9に記載のポリペプチドと;
を含む、一式の反応成分を備えることと:
(b)該反応成分を適した水性反応条件下で混ぜ合わせ、それによって、ペルオキシカルボン酸生成物を形成させることと:
(c)任意選択的に該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈することと:
(d)上記硬表面または無生物対象を、ステップ(b)またはステップ(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させ、それにより該表面または該無生物対象を殺菌または
消毒することと:
を含む、上記方法。
【請求項12】
酵素生成ペルオキシカルボン酸組成物を使用して、漂白、汚れ除去、臭気低減、衛生化または殺菌を目的として衣料品または繊維製品の物品を処理するための方法であって、
(a)以下のものを含む反応成分すなわち
(1)(i)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択的にヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、C2〜C7であるRは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
は、任意選択的にヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rの各炭素原子はそれぞれ、1つより多くないヒドロキシル基、または1つより多くないエステル基を含み、そしてここで、Rは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
mは、1からRにおける炭素原子の数である)を有し、
25℃で少なくとも5ppmの水に対する溶解度を有する、
1つまたはそれ以上のエステルと、
(ii)構造
【化5】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、それぞれHまたはRC(O)である)を有する
1つまたはそれ以上のグリセリドと、
(iii)式
【化6】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1つまたはそれ以上のエステルと、
(iv)1つまたはそれ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類またはアセチル化多糖類と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと;
(2)過酸素の源と;
(3)請求項8または9に記載のポリペプチドと;
を含む、一式の反応成分を備えることと:
(b)該反応成分を適した水性反応条件下で混ぜ合わせ、それによって、ペルオキシカルボン酸生成物を形成させることと:
(c)任意選択的に、該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈することと:
(d)衣料品または繊維製品の上記物品を、ステップ(b)またはステップ(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させることと:
を含む、衣料品または繊維製品の該物品を、汚れ除去、脱臭、殺菌、漂白するか、またはこれらの組み合わせである、上記方法。
【請求項13】
ペルオキシカルボン酸発生システムであって、
(a)(i)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択的にヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、C2〜C7であるRは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
は、任意選択的にヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rの各炭素原子はそれぞれ、1つより多くないヒドロキシル基、または1つより多くないエステル基を含み、そしてここで、Rは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
mは、1からRにおける炭素原子の数である)を有し、
25℃で少なくとも5ppmの水に対する溶解度を有する、1つまたはそれ以上のエステルと、
(ii)構造
【化7】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、それぞれHまたはRC(O)である)を有する1つまたはそれ以上のグリセリドと、
(iii)式
【化8】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖でC1〜C10の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1つまたはそれ以上のエステルと、
(iv)1つまたはそれ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類またはアセチル
化多糖類と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択される基質と;
(b)過酸素の源と;
(c)請求項8または9に記載のポリペプチドと;
を含む、ペルオキシカルボン酸発生システム。
【請求項14】
調合物であって、
(a)請求項8または9に記載のポリペプチドを含む酵素触媒と、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカルボン酸エステルと、を含む第1の混合物であって、任意選択的に無機緩衝剤または有機緩衝剤、腐食防止剤、湿潤剤またはこれらの組み合わせを含む、該第1の混合物と、
(b)過酸素の源と水とを含む第2の混合物であって、任意選択的に過酸化水素安定剤をさらに含む、該第2の混合物と、
を含む、上記調合物。
【請求項15】
配合物であって、
(a)請求項8または9に記載のポリペプチドを含む酵素触媒と、アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、アセチル化多糖類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアセチル化糖類と、を含む第1の混合物であって、任意選択的に無機緩衝剤または有機緩衝剤、腐食防止剤、湿潤剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、該第1の混合物と、
(b)過酸素の源と水とを含む第2の混合物であって、任意選択的に過酸化水素安定剤を含む該第2の混合物と、
を含む、上記調合物。
【請求項16】
ペルヒドロリシス活性を有するサーモトガ属アセチルキシランエステラーゼポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、セリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択される配列番号31のアミノ酸93に対する置換を有することを条件として、配列番号31のC末端保存領域を含む、上記ポリペプチド。
【請求項17】
単離されたサーモトガ属アセチルキシランエステラーゼポリペプチドであって、ペルヒドロリシス活性を有し、そしてセリン、トレオニン、バリン、アラニンからなる群から選択される配列番号31のアミノ酸93に対する置換を有することを条件として、配列番号31のC末端保存領域を含む、上記ポリペプチド。
【請求項18】
酵素生成ペルオキシカルボン酸組成物を用いて、衣料品または繊維製品の物品に効果を与えるための方法であって、
(a)(1)(i)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、任意選択的にヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C7ヒドロカルビル部分であり、ここで、C2〜C7であるRは任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
は、任意選択的にヒドロキシル基で置換されていてもよい、線状、分枝または環式のC1〜C6ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rの各炭素原子はそれぞれ、1つより多くないヒドロキシル基、または1つより多くないエステル基を含み、そしてここで、Rは、任意選択的に、1つまたはそれ以上のエーテル結合を含み、
mは、1からRにおける炭素原子の数である)を有し、
25℃で少なくとも5ppmの水に対する溶解度を有する、
1つまたはそれ以上のエステルと、
(ii)構造
【化9】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、RおよびRは、それぞれHまたはRC(O)である)を有する
1またはそれ以上のグリセリドと、
(iii)式
【化10】

(式中、Rは、任意選択的にヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖のC1〜C7アルキルであり、Rは、直鎖または分枝鎖のC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)または(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)を有する
1つまたはそれ以上のエステルと、
(iv)1つまたはそれ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類またはアセチル化多糖類と、
(v)(i)〜(iv)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択されるカルボン酸エステルと;
(2)過酸素の源と;
(3)請求項8または9に記載のポリペプチドと;
を含む、一式の反応成分を備えることと:
(b)該反応成分を適した水性反応条件下で混ぜ合わせ、それによって、ペルオキシカルボン酸生成物を形成させることと:
(c)任意選択的に、該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈することと:
(d)衣料品または繊維製品の上記物品を、ステップ(b)またはステップ(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させ、それによって衣料品または繊維製品の該物品が、漂白、汚れ除去、脱臭、殺菌、消毒およびこれらの組み合わせからなる群から選択される効果を受けることと:
を含む、上記方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2012−504419(P2012−504419A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530230(P2011−530230)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059230
【国際公開番号】WO2010/039958
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】