説明

酵素組成物から重亜硫酸塩副産物を除去するための方法

提供されるものは、重亜硫酸塩物質及び酵素を含有する組成物から、重亜硫酸塩物質を除去する方法である。この方法は、組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成することを含み、これによってアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
各種の酵素を、治療剤として作用させるために経口製剤中に含むことができる。例えば、酵素を、口腔の多糖を加水分解するために、又は細菌の増殖を阻害するために含むことができる。更に具体的には、例えば、ムタナーゼ、デキストラナーゼ、パパイン、及び1,3−グルカナーゼのような酵素を、歯垢の沈積を除去するための経口製剤中で使用することができることが報告されている。
【0002】
一般的に、酵素は、本来pH、温度、及びイオン濃度のような環境の変化に対して脆弱であり、そして従って、通常、酵素の意図する口腔保護効力を維持するために、酵素を保護する手段をとる必要がある。酵素の性能を改良するために、キレート化剤及び抗酸化剤のような酵素安定化剤が示唆されている。このような酵素安定化剤の例は、EDTA、グルコン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、金属没食子酸塩、スズ酸ナトリウム、及びアスコルビン酸である。
【0003】
然しながら、酵素安定化剤の中で、重亜硫酸塩物質、即ち、重亜硫酸イオンを含有する化合物が、ある個人に対して毒性を示し、及び/又はしばしば口腔保護製剤の感覚受容特性を変更することが示されている。従って、組成物が更に加工され、そして消費者に届く前に、酵素組成物中の重亜硫酸塩物質を除去又は減少することが好ましいことであることができる。重亜硫酸塩物質は、塩基による抽出及び酸化剤による中和のような慣用的な技術によって除去することができるが、これらの技術は、しばしば経口組成物中の酵素の触媒活性に不都合に影響する。従って、処理される組成物中の酵素の活性に、負に影響しない重亜硫酸塩物質を除去するための別の方法を、導入することが好ましい。今日まで、その方法が中性の非酸化性条件下で行われる、酵素組成物から重亜硫酸塩物質を除去するための好都合な方法はない。
【0004】
発明の簡単な概要
本発明によれば、重亜硫酸塩物質及び一つ又はそれより多い酵素を含んでなる組成物から、重亜硫酸塩物質を除去する方法を提供する。この方法は、組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成することを含んでなり;これによってアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することができる。
【0005】
一つの方法において、この方法は、組成物を、アルドース糖のような少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そしてアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を組成物から分離することを含んでなり、ここにおいて、酵素は、パパイン、ブロメライン、セリンプロテアーゼ、キモトリプシン、フィシン、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ ラクトースペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、リゾチーム、脂肪分解酵素、アルカラーゼ、カルボヒドラーゼ、グルコアミラーゼ、デキストラナーゼ、ムターゼ、タンナーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される。
【0006】
もう一つの態様において、重亜硫酸塩物質及び酵素を含有する組成物から重亜硫酸塩物質を除去する方法が提供され、ここにおいて、この方法は、組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を有するマトリックスと接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そしてマトリックスと結合した重亜硫酸塩を、組成物から分離することを含んでなる。
【0007】
もう一つの態様において、更に、実質的に重亜硫酸塩物質を欠いている酵素組成物が提供される。酵素組成物は、組成物を少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そして次いでアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離する方法によって得ることが可能である。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、一つ又はそれより多い酵素を含有する組成物から重亜硫酸塩を除去する方法に関する。更に具体的には、本発明は、酵素組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そして重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することにより、重亜硫酸イオンを除去する方法に関する。更に、本発明は、酵素組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そして重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することによって調製される重亜硫酸塩を含まない酵素組成物にも関する。
【0009】
本発明は、重亜硫酸塩物質と複合体を形成する少なくとも一つのアルデヒド基を有する化合物を使用し、そしてアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することによって、重亜硫酸塩物質を酵素組成物から除去する方法を提供する。好ましくは、この方法は、実質的に中性の、非酸化条件下で行われ、これによって実質的に重亜硫酸塩を含まず、実質的に分解していない酵素を含有する組成物を得る。
【0010】
本明細書中で使用される用語“分解”は、重亜硫酸塩物質が抽出されていない酵素組成物に対する酵素活性の減少を意味する。本発明によれば、好ましくは50%より多い、80%より多い、又は90%より多い酵素活性が、重亜硫酸塩のアルデヒドとの接触の工程後、及びその後の重亜硫酸塩−アルデヒド複合体の分離後、又は両方の後に保持される。
【0011】
用語“重亜硫酸塩物質”は、重亜硫酸ナトリウム又は他の重亜硫酸塩のような化学的に結合された、又は化学複合体の成分としての重亜硫酸イオンを含有する化合物を意味する。
【0012】
重亜硫酸塩を酵素組成物から除去するために、本発明は、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物を使用する。“アルデヒド”は、R基が芳香族又は脂肪族のいずれかであることができる構造R−CHOを有するカルボニル化合物の一つの種類として定義される。実質的に分解されていない酵素を含有する実質的に重亜硫酸塩を含まない組成物を得るために、中性の、非酸化条件下で重亜硫酸塩物質と複合体を形成することが可能なアルデヒドを選択することが好ましいことであることができる。本発明のアルデヒドは、例えば約1000ダルトンより小さい、低分子量を有する単官能性アルデヒドであることができる。アルデヒドは、アルドース糖であることができる。
【0013】
実質的に重亜硫酸塩を含まない組成物は、重亜硫酸塩−アルデヒド複合体を組成物から分離することによって得られる。このような分離は、化学的又は物理的方法、或いは化学的及び物理的方法の組合せのような当技術において既知のいずれかの分離技術によって達成することができる。本発明に適用可能な分離技術の例は、制約されるものではないが、濾過、ディファレンシャル拡散(differential diffusion)、カラム分離、及びビーズ分離、並びに局在化又は隔絶を含む。
【0014】
更に、分離は、組成物をアルデヒドが接続する物体又は物品に晒し、複合体を形成し、そしていまやアルデヒド−重亜硫酸塩複合体が接続した物体又は物品を分離することよって達成することができる。別の方法として、実質的に分解されていない酵素を有する組成物を得るために、重亜硫酸塩物質及び酵素組成物を接触させ、そしてその後重亜硫酸塩−アルデヒド複合体を分離する工程を通して、実質的に中性の非酸化条件を維持することが好ましいことであることができる。例えば、酵素溶液のpHを、約5ないし約8の範囲内に保ち、そしてイオン強度を維持することができる。
【0015】
本発明により重亜硫酸塩を除去する方法は、いずれもの種類の酵素を含有する組成物に適用することができる。好都合には、本発明は、最終的にヒト又は動物の皮膚又は粘膜と接触する目的のための酵素組成物を処理するために使用することができる。例えば、酵素組成物は、口腔保護又は個人医療用品に組込むことができるもののいずれか一つであることができる。このような酵素の例は、制約されるものではないが、グルコアミラーゼのようなカルボヒドラーゼ、プロテアーゼにような天然の果実製品から抽出された酵素、アルファ−アミラーゼ、ベータ−アミラーゼ及びタンナーゼのようなカルボヒドラーゼ、並びに植物リパーゼ、胃リパーゼ及び膵臓リパーゼのようなリパーゼを含む。好ましくは、本発明によって処理される組成物中の酵素は、植物学的供給源から得ることができる。本発明の実施において有用な酵素は、アルファ−及びベータ−アミラーゼ、デキシトラナーゼ、ムタナーゼ、パパイン(パパイヤから)、及びブロメライン(パイナップルから)のような天然に存在する酵素、キモトリプタンのようなセリンプロテアーゼ、フィシン、アルカラーゼ、リゾザイム、ペクチナーゼ、及びグルカナーゼからなる群から選択することができる。
【0016】
本発明の一つの態様によれば、重亜硫酸塩−アルデヒド複合体の都合のよい除去を行うための、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有するマトリックスを使用する方法が提供される。少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有するマトリックスを使用する方法は、マトリックスを使用しない重亜硫酸塩を除去する方法のためのものと同一の条件下で操作可能である。アルデヒド官能基を有するマトリックスは、慣用的なもの、例えば多孔質又は非多孔質ビーズ、フィルム、小粒子、及び粒子からなる群から選択される。もう一つの態様において、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有するマトリックスは、重亜硫酸塩−アルデヒド複合体の分離を援助する支持体上に分散することができる。いずれもの種類の当技術において既知の支持体を、本発明において使用することができる。支持体の例は、制約されるものではないが、カラム、容器、フィルター、スポンジ、及びゲルを含む。
【0017】
なおもう一つの態様において、本発明による重亜硫酸塩物質に除去の方法によって調製された、実質的に重亜硫酸塩物質を欠いている酵素組成物が提供され、ここにおいて、酵素組成物は、組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し、そしてアルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離することによって製造される。本発明の酵素組成物が、中性の、非酸化性条件下で調製されるため、組成物中の酵素活性は、実質的に分解されない。好ましくは、約90%の酵素の活性が分解されないままである。本発明の方法によって製造された酵素組成物は、実質的に重亜硫酸塩物質を含まず、そして従って、歯磨き剤、皮膚保護用品、並びに毛髪及び爪保護用品のような口腔保護又は個人医療用品において都合よく使用することができる。
【0018】
本発明は、具体的な例を参照して記載してきたが、これに対して、その範囲に入る各種の改変を行うことができることは当業者にとって明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重亜硫酸塩物質及び酵素を含んでなる組成物から重亜硫酸塩物質を除去する方法であって、組成物を少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成することを含んでなり、これによって、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を組成物から分離することができる、前記方法。
【請求項2】
前記方法が、更に、前記組成物から前記アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を分離することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物が、低分子量を有する単官能性アルデヒドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単官能性アルデヒドが、香料又は芳香物質である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単官能性アルデヒドが、アルドース糖である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記分離が、濾過、ディファレンシャル拡散(differential diffusion)、カラム分離、及びビーズ分離からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物が、約5ないし約8のpHの範囲で組成物と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一つ又はそれより多い酵素が、前記アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成する工程後、実質的に分解されていない、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、前記アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を分離する工程後、実質的に分解されていない、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素が、植物学的供給源由来のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素が、パパイン、ブロメライン、セリンプロテアーゼ、キモトリプシン、フィシン、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ ラクトースペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、リゾチーム、脂肪分解酵素、アルカラーゼ、カルボヒドラーゼ、グルコアミラーゼ、デキストラナーゼ、ムターゼ、タンナーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
90%より多い酵素活性が、分離工程後、未分解である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
重亜硫酸塩及び酵素を含有する組成物から、重亜硫酸塩を除去する方法であって、組成物を、少なくとも一つのアルデヒド官能基を有しているマトリックスと接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成することを含んでなり、これによって組成物からマトリックスに結合した重亜硫酸塩を分離することができる、前記方法。
【請求項14】
前記方法が、更に、組成物からマトリックスに結合した重亜硫酸塩を分離することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックスが、多孔質又は非多孔質ビーズ、フィルム、小粒子、及び粒子から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記マトリックスが、支持体上に分散されている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記支持体が、カラム、容器、フィルター、スポンジ、及びゲルからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルデヒドが、アルドース糖である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
実質的に重亜硫酸塩物質を欠いている酵素組成物であって:
(a)組成物を少なくとも一つのアルデヒド官能基を含有する化合物と接触させて、アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を形成し;そして
(b)アルデヒド−重亜硫酸塩複合体を、組成物から分離すること;
によって得られる、前記酵素組成物。
【請求項20】
酵素の活性の約90%が、未分解のままである、請求項19に記載の酵素組成物。

【公表番号】特表2009−504187(P2009−504187A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527085(P2008−527085)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/031926
【国際公開番号】WO2007/022231
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】