説明

酷使に耐える超多孔質ヒドロゲル

本発明は、改質超多孔質ヒドロゲル(SPH)およびこれらの形成方法を特徴とする。本発明のSPHは、疎水性/親水性反応性成分の注意深い選択によってならびに発泡反応と重合反応を調和させることによって調製され、結果として、均質な構造ならびに好適な物理的および機械的特性(膨潤、強度、凹凸および弾力性を含む。)を有するSPHが形成される。本発明のSPHは、胃の胃液の低pH環境などの非常に過酷な膨潤環境において長期間にわたって利用されるとき、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された物理的および機械的特性を有する超多孔質ヒドロゲルの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超多孔質ヒドロゲル(SPH)は、親水性および/または疎水性ポリマー鎖の多孔性の網である。SPHは、マイクロメートルからミリメートル範囲の直径を有する非常に多数の細孔を含有し、これらの細孔によって、脱水状態でのこれらのサイズとは無関係に、まさにわずか1分で水性液をこれらの重量の数十倍吸収することができる。SPH細孔は、ヒドロゲルマトリックス内で相互に接続されているので、吸収液はこれらの流路(毛管)を通って自由に移動することができる。これらの相互接続細孔によって、SPHは、同じ膨潤力を有する従来のヒドロゲルよりはるかに速く膨潤することができる。米国特許第6,271,278号には、様々なSPHの調製が詳細に記載されている。SPHは、Chen,et al.,in J Biomed Mater Res 44:53−62,1999にも記載されている。
【0003】
SPHは、アクリル酸およびこの塩、アクリルアミド、スルホプロピルアクリラートのカリウム、ヒドロキシエチルアクリラートならびにヒドロキシエチルメタクリラートをはじめとする親水性モノマーに基づいて、一般に調製される。一般に、この主モノマーの親水性または疎水性が、膨潤特性(膨潤力および膨潤速度)および機械的特性(弾性、圧縮強度、および弾力性)をはじめとするSPHの特性を支配し得る。親水性超多孔質ヒドロゲルの場合、膨潤は、ポリマー骨格内のイオン(例えば、イオン性モノマー)またはポリマー中の親水性官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミドおよびアミノ基など)のいずれかの存在によって助長される。これらのヒドロゲルは、非常に短期間に非常に大きなサイズに膨潤することができる。これらの優れた膨潤特性とは対照的に、これらのヒドロゲルは、弱い機械的特性を欠点として有することが多い。逆に言えば、親水性の劣る超多孔質ヒドロゲルを用いれば、好適な膨潤特性を犠牲にして強化された機械特性を獲得することができる。
【0004】
SPHは、薬物送達システム(DDS;Park et al.,(Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery,1993,Technomic Pub.Co.、およびHydrogels and Biodgradable Polymer for Bioapplications(ACS Symposium Series,627),1996,Eds.,Ottenbrite,et al.,American Chemical Societyにおけるもの、またはParkらによる米国特許第6,271,278号におけるものを参照)として有用であり得る。DDSとして使用されるSPHは、特定の期間にわたって体内の特定の位置から医薬品を放出するために利用されている。特に、SPHは、経口投与された薬物が、長期間、上部消化管内に滞留し、これによって薬物吸収を向上させる胃内停留デバイスとして利用されている。胃内停留のために、幾つかの品質がSPHにおいて重要である。このSPHは、幽門括約筋による胃からのこのSPHの放出を遅らせるために十分なサイズに膨潤することができなければならない。一般に、経口剤形が絶食状態の胃に留まるには、これらの寸法が15mm以上でなければならないと考えられる。更に、絶食状態の胃の状態は、機械的および化学的ストレスが非常に増した環境を特徴とする。従って、適するSPHには、100から130cm HOの範囲の最大圧力を示すことがある、胃の収縮中に発生する圧力ばかりでなく、胃内の酸性状態にも耐える十分な強さがなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,271,278号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chen,et al.,in J Biomed Mater Res 44:53−62,1999
【非特許文献2】Park et al.,(Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery,1993,Technomic Pub.Co.
【非特許文献3】Hydrogels and Biodgradable Polymer for Bioapplications(ACS Symposium Series,627),1996,Eds.,Ottenbrite,et al.,American Chemical Society
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
胃内停留システムについての1つの可能な設計は、人間が摂取するために適するカプセル内へのSPHの組込みを含む。患者の胃に入ると、このカプセルは崩壊してSPHを放出し、すると、SPHが膨潤して胃内停留を促進する。この方法を用いるには、SPHは、胃内停留を促進するために十分な膨潤特性および機械的特性を示さなければならない。これらの特性の全てを示す当分野において公知のSPHはない。従って、胃の胃媒質などの非常に過酷な環境の中で使用するために適する膨潤特性と高強度の機械的特性の両方を有するSPHが、当分野において、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、安定した物理的および機械的特性を有する超多孔質ヒドロゲル(SPH)ならびにこれらの特性を有するSPHの調製方法を特徴とする。この望ましい特性は、SPH構造の親水性/疎水性を制御することによりおよびSPH形成中の発泡/重合条件を調和することにより実現される。
【0009】
本発明の第一の態様は、a)ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)のエチレン性不飽和モノマー、少なくとも1つの架橋剤および少なくとも1つの特性改質剤を含む混合物を調製する段階(この場合、前記HEMAは、前記混合物中に80重量%より多い量で存在する。);およびb)少なくとも1つの重合剤(例えば、熱開始剤または酸化−還元反応を生じさせる薬剤)と接触させることにより前記混合物の重合を生じさせてヒドロゲルを形成する段階による、超多孔質ヒドロゲルの調製方法を特徴とする。好ましい実施形態において、特性改質剤は、イオン錯体形成可能部位を有する。もう1つの好ましい実施形態において、段階a)の混合物は、(例えば、H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+、またはCe4+)から選択されるイオンを含むイオン錯体形成可能部位を有する少なくとも1つの特性改質剤を含む。
【0010】
1つの実施形態において、特性改質剤は、モノマー、例えばアクリル酸;ポリマー;およびポリフェノール系錯体形成剤から選択される。
【0011】
更に他の実施形態おいて、段階a)の混合物は、希釈剤、発泡剤、発泡助剤および整泡剤のうちの1つ以上を更に含む。前記発泡剤は、固体塊として添加することができ;水性または有機/水性溶剤系に溶解することができ;有機溶剤に分散させることができ;前記発泡剤の水への溶解を遅らせるように有機化合物で被覆することができ;前記発泡剤の水への溶解を遅らせるようにカプセル封入することができ;または超多孔質ヒドロゲル重合に関与するモノマー中に分散させることができる。ヒドロゲルの重合は、このヒドロゲルのゲル化と実質的に同時に前記混合物を発泡条件に付すことを含む。
【0012】
もう1つの実施形態において、段階a)の混合物は、発泡剤および発泡助剤を更に含み、この発泡助剤は、この混合物への添加後、5秒から15秒以内にこの発泡剤と反応する。もう1つの好ましい実施形態において、段階a)の混合物は、この混合物中に20重量%未満で存在する、1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーを更に含み得る。
【0013】
もう1つの実施形態において、段階b)の重合は、約20℃から約100℃の範囲の温度で行われる。もう1つの実施形態において、前記温度は、約55℃から約75℃の範囲である。または、前記温度は、約30℃から約60℃の範囲であり得る。
【0014】
本発明の第一の態様のある実施形態において、前記方法は、c)ヒドロゲルと1つ以上のイオン(例えば、H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+、またはCe4+)を平衡条件下で反応させる段階を更に含む。好ましくは、段階a)において使用しなかった少なくとも1つのイオンを使用し、または段階a)およびc)において同じイオン混合物を使用する場合には、これらの段階において使用するイオンの比率は異なる。段階c)の混合物は、キレート剤、例えば、一価、二価または三価イオン塩も含むことがある。詳細には、キレート剤は、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化アルミニウムから選択することができる。
【0015】
もう1つの好ましい実施形態において、段階(c)の後、前記ヒドロゲルを、平衡条件下、1つ以上のイオン(例えば、H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+、またはCe4+)で更に処理することがある。
【0016】
方法段階c)の間、混合物の温度を、好ましくは約20℃と約80℃の間、更に好ましくは約20℃と約60℃の間、および最も好ましくは、約20℃と約40℃の間で維持する。
【0017】
他の実施形態では、例えば凍結乾燥によって、ヒドロゲルを脱水する。ヒドロゲルの凍結乾燥は、(a)ヒドロゲルを23℃から−10℃の範囲の温度で、1時間につき約1℃と1時間につき約5℃の間の冷却速度で凍結させること;(b)ヒドロゲルを約−5℃から約−20℃の範囲の温度で、約16から約24時間の間維持すること;(c)約60時間と約80時間の間、約−5℃から約−20℃の範囲の温度および約0.2トル未満の圧力でサンプルを凍結乾燥させること;(d)1時間につき約1℃と1時間につき約5℃の間の速度で、約5℃と約15℃の間にサンプル温度を上昇させること;および(e)約8時間から約48時間の間、約5℃と約15℃の範囲の温度および約200mトル未満の圧力でサンプルを維持することによって行ってもよい。脱水後、ヒドロゲルをカプセル封入することができる。カプセル封入方法を助長するために、ヒドロゲルを、脱水後、可塑剤(例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセリン)と接触させて、可塑化ヒドロゲルを形成することができる。可塑剤は、乾燥ヒドロゲルの約1重量/重量%と約20重量/重量%の間の量で使用することができる。好ましくは、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む経口投与可能なカプセルの中に可塑化ヒドロゲルを封入する。1つの実施形態において、前記経口投与可能なカプセルは、可塑化ヒドロゲルとこのカプセルとを隔てるために役立つ防止層を含有する。このように、防止層は、可塑化ヒドロゲルとカプセルとの移行および/または直接接触を防止する。好ましい実施形態において、可塑化ヒドロゲルは、可塑剤がカプセルと接触するのを防止するカプセル封入前にこのヒドロゲルに塗布することができる被覆剤で処理される。もう1つの実施形態において、ヒドロゲルは、(例えば、約60%相対湿度より高い)高い相対湿度環境にこのヒドロゲルを暴露することにより、約37℃より高い温度(例えば、温度約40℃、約50℃、または約60℃)で、可塑化することができる。好ましくは、ヒドロゲルは、このヒドロゲルの可塑化を触媒する急速吸湿剤を含む。
【0018】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の方法によって調製された超多孔質ヒドロゲルを特徴とする。好ましい実施形態において、ヒドロゲルは、改善された強度および機械的特性(例えば、約2から約50Nの間の圧縮荷重に耐える能力;およびこの流体膨潤状態にあるとき、約5.0未満、更に好ましくは約3.0未満、および最も好ましくは約1.0未満のpHで、好ましくは1時間より長く、および最も好ましくは3時間より長く、この機械的完全性を維持する能力)を示す。もう1つの実施形態において、ヒドロゲルは、この乾燥状態にあるとき、約1μmから約5000μmの範囲、好ましくは約10μmから約3000μmの範囲の平均孔径を有する。
【0019】
他の実施形態において、超多孔質ヒドロゲルの相対圧縮強度は、特性改質剤を欠く超多孔質ヒドロゲルの圧縮強度より約5倍大きく、超多孔質ヒドロゲルの破断点圧縮強度は、この流体膨潤状態にあるとき、約1.0pkPaと約500kPaの間、更に好ましくは約100kPaと約500kPaの間である。好ましくは、超多孔質ヒドロゲルの平衡体積膨潤率(膨潤:非膨潤)は、約8から18の範囲である。
【0020】
本発明の第三の態様は、生物活性剤の薬理学的に有効な用量と本発明の第一の態様の方法によって調製された超多孔質ヒドロゲルとを含む固体剤形での医薬組成物を特徴とする。好ましい実施形態において、生物活性剤は、薬物、栄養補助食品または肥料であり、ならびに固体剤形は、錠剤、カプセル、粒子、ワックス、油、顆粒、フィルム、シート、繊維、棒および管から選択することができる。好ましい実施形態において、錠剤またはカプセルは、成形によって、直接圧縮によって、またはプレスコーティング圧縮技術の使用によって形成される。
【0021】
本発明の第四の態様は、胃内停留による医薬品(例えば、薬物または栄養補助食品、例えばビタミン)の長期停留方法を特徴とする。この方法は、前記医薬品を含む本発明の第一の態様の方法によって調製された超多孔質ヒドロゲルを患者に投与することを含み、前記ヒドロゲルは、患者の胃に入ると膨潤し、少なくとも1時間、前記医薬品の放出を延長する。
【0022】
「約」は、述べられている値の±10%を意味する。
【0023】
「カチオン錯体形成可能部位」は、非共有化学結合によって別の分子、原子またはイオンと可逆的会合を形成することができる、分子内の位置を意味する。
【0024】
「架橋剤」は、マトリックス形成の際に別の基質への化学結合を形成することができる分子を意味する。
【0025】
「ヒドロゲル」は、水に可溶でないが、水性流体の存在下で平衡サイズに膨潤する、架橋ポリマー網を意味する。
【0026】
「ペプチド」は、あるアミノ酸のカルボキシル基と隣のアミノ酸からのアミノ基の間で形成されるアミド結合によって接続された2から100の天然または非天然アミノ酸残基を含有する分子を意味する。架橋剤に言及するとき、用語「機能化ペプチド」は、架橋反応を行うために適する少なくとも2つの基を有するペプチドを指す。これらの基としては、オレフィン、カルボニル、エステル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキルなどが挙げられる。
【0027】
「タンパク質」は、あるアミノ酸のカルボキシル基と隣のアミノ酸からのアミノ基で形成されるアミド結合によって接続された100より多くの天然または非天然アミノ酸残基を含有する分子を意味する。架橋剤に言及するとき、用語「機能化タンパク質」は、架橋反応を行うために適する少なくとも2つの基を有するタンパク質を指す。これらの基としては、オレフィン、カルボニル、エステル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキルなどが挙げられる。
【0028】
「超多孔質ヒドロゲル」は、相互接続細孔を有するヒドロゲルを意味する。これらの細孔は、1μmを超えて、10μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、またはミリメートル範囲までであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA、2000μL)、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEGDA、40μL)、アクリル酸(50μL)、酢酸(40μL)、F127−10%(250μL)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED−40%、65μL)、水(200μL)および過硫酸アンモニウム(APS−10%、250μL)を含有する調合物に基づくSPHの形成中に得られた時間/温度プロフィールを示すグラフである。
【図2】室温で開始した本発明の代表的SPHの形成中の温度および発泡の変化についてのプロフィールを示すグラフである。チャート中の正方形の記号(□)は、発泡度を表し、三角形の記号(△)は、反応温度を示す。
【図3】60℃の開始反応温度で合成され、脱イオン水膨潤媒質に4時間膨潤されたp(HEMA)系SPHについてのSPH機械的特性および均質性を示すグラフである。
【図4】60℃の開始反応温度で合成され、人工胃液膨潤媒質に0.5時間膨潤されたp(HEMA)系SPHについてのSPH機械的特性および均質性を示すグラフである。
【図5】60℃の開始反応温度で合成され、人工胃液膨潤媒質に4時間、37℃で膨潤されたp(HEMA)系SPHについてのSPH機械的特性および均質性を示すグラフである。
【図6】60℃の開始反応温度で合成され、人工胃液膨潤媒質に4時間、37℃で膨潤されたp(HEMA/HEA)系SPHについてのSPH機械的特性および均質性を示すグラフである。
【図7】4時間、22から25℃での脱イオン水膨潤媒質中のp(HEMA)系SPHの機械的特性に対する異なる開始反応温度の影響を示すグラフである。
【図8】人工胃液膨潤媒質中のp(HEMA)系SPHの機械的特性に対する異なる開始反応温度の影響を示すグラフである。
【図9】p(HEMA)系SPHの機械的特性に対するHEAのコモノマーとしての使用効果を示すグラフである。
【図10】60℃で合成したp(HEMA)系SPHの機械的特性に対する異なる膨潤媒質の影響を示すグラフである。
【図11】p(HEMA)系SPHのアルコール吸収能力を示すグラフである。
【図12】p(HEMA)系SPHの機械的特性に対する異なる周期的圧縮荷重の影響を示すグラフである。
【図13】p(HEMA)系SPHの機械的特性に対する異なる周期的圧縮荷重の影響を示すグラフである。
【図14】経時的なp(HEMA)系SPHの変形に対する異なる周期的圧縮荷重の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、独特な機械的特性および膨潤能力(例えば、高い圧縮強度と、流体吸収中の最小の拡散および最大の毛管吸収)を有するSPHを特徴とする。本発明のSPHは、親水性の劣るモノマー、例えば、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)または類似のものを使用して調製され、これは、水の吸収の減少により一定の有益なヒドロゲル特性を有するスポンジ様材料を生じさせることができる。他の超多孔質ヒドロゲル調合物と同様に、HEMAモノマーは、例えば熱またはレドックス重合開始剤を使用して、室温または高温で重合するように調合することができる。膨潤特性を補うために、本発明のSPH調合物は、架橋剤を大量に含有することができ、これにより、膨潤状態での弾性特性が強化されたSPHが生成される。SPHの特性(膨潤特性および機械的特性)を更に改善するために、キレート化能力を有する特性改質剤を副成分としてこのヒドロゲル網に組み込むことができる。重合反応を開始する温度を調節することにより、SPHの多孔質構造および均質性も改善される。
【0031】
改質されたポリHEMA SPHである、本発明のSPHは、試験した全てのpH値で、しかし特に、1.0のpHの人工胃液(SGF)などの非常に過酷な膨潤環境で試験したとき、長期間(例えば、1から5時間)にわたって改善された機械的完全性および膨潤能力を示す。
【0032】
本発明の脱水SPHは、水性流体と接触させると比較的大きなサイズに急速に膨潤し、しかもなお、膨潤状態で長期間にわたって、例えば4時間まで、機械的強度を維持する。本発明は、非常に強い非反射性SPHを得るために適切な調合および反応条件を選択することを含む、これらのSPHの調製方法を特徴とする。本発明のSPHは、完全膨潤状態で、0.1から50ニュートンの範囲の静および動荷重に耐えることができ、この高いほうの範囲は、最も厳格な医薬または生物医学用途以外の全てに対する要件より十分に上である。
【0033】
従って、本発明のSPHは、先行技術のSPHと比較して優れた化学的および機械的完全性を有し、その上、pH非依存性(低減されたpH感度)である。従って、本発明のSPHは、胃内停留薬物送達に、特に、絶食状態の過酷な環境の中で、有効に使用することができる。
【0034】
超多孔質ヒドロゲルの形成
本発明のSPHを調製するために、エチレン性不飽和モノマー、好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)を、以下の成分のうちの1つ以上と混合して重合反応を形成する。イオン錯体形成可能部位を含む1つ以上のコモノマー、1つ以上の架橋剤、希釈剤、界面活性剤、発泡剤、発泡助剤および開始剤。好ましい実施形態において、前記HEMAは、前記混合物中に80重量%以上、例えば、85、90または95重量%の量で存在する。前記混合物は、イオン性多糖類も含むことがあり、ならびに当業者に公知の任意の方法、例えば、OdianがPrinciples of Polymerization,3rd Edition(1991),Wiley−Interscienceに記載した方法によって重合することができる。重合技術としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、ミクロ懸濁重合、逆懸濁重合、分散重合、乳化重合、マイクロエマルジョン重合、および逆乳化重合が挙げられる。
【0035】
本発明の超多孔質ヒドロゲルを製造するために使用されるエチレン性不飽和コモノマーは、アクリル酸(AA)およびこの塩、アクリル酸のC1−6アルキルエステルおよびこの塩、メタクリル酸およびこの塩、メタクリル酸のC1−6アルキルエステル、アクリルアミド(AM)、C1−6メタクリル酸およびこの塩、メタクリル酸のC1−6アルキルエステル、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸のC1−6アルキルアミド、アクリル酸のC2−12ジアルキルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、メタクリルアミド、メタクリル酸のC1−6アルキルアミド、メタクリル酸のC2−12ジアルキルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリラート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、エチルアクリラート、ブチルアクリラート、イソデシルメタクリラート、メチルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、ブタンジオールモノアクリラート、イタコン酸、N−ビニルピロリドン(VP)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリラート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸3−スルホプロピルカリウム(SPAK)、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウム(SPMAK)または2−(アクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムメチルスルファート(ATMS)であり得る。好ましくは、前記コモノマーは、AAm、NIPAM、HEA、AAcもしくはこの塩、メタクリル酸もしくはこの塩、DADMACまたはSPMAKである。更に好ましくは、前記混合物は、アクリル酸コモノマーとHEAコモノマーの組み合わせを含む。
【0036】
望ましくは、コモノマーの濃度は、存在する場合、この全反応混合物の、約0.5%から約20%(v/v)、好ましくは約5%から約15%(v/v)、および最も好ましくは約10(v/v)である。最も望ましくは、この反応混合物は、主モノマーとしての2−ヒドロキシメチルメタクリラート(HEMA)と、AAm、NIPAM、メタクリル酸、AACもしくはこれらの塩、DADMACまたはSPMAKのうちの1つ以上から選択されるコモノマーとを含む。
【0037】
架橋剤は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、N,N’−エチレンビスアクリルアミド(EBA)、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEGDA)、ポリエチレングリコールジメタクリラート(PEGDMA)、エチレングリコールジグリシジルエーテル、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリラート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノメタクリラート、エトキシ化ヒドロキシエチルメタクリラート、メトキシポリエチレングリコール(350)メタクリラート、グリシジルメタクリラート、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)、ピペラジンジアクリルアミド、グルタルアルデヒドまたはエピクロロヒドリンならびに分解性架橋剤(1,2−ジオール構造を含有する架橋剤(例えば、N,N’−ジアリル酒石酸ジアミドおよびエチレングリコールジメタクリラート)、および機能化ペプチドまたはタンパク質(例えば、ビニル基で改質されたアルブミン)を含む。)であり得る。望ましくは、架橋剤のモノマーに対する容量/容量比は、約0.01/100から約1/10である。最も望ましくは、架橋剤のモノマーに対する容量/容量比は、約1/100から約5/100である。望ましくは、架橋剤は、PEGDAである。
【0038】
本発明のSPHを形成するために使用することができる希釈剤としては、脱イオン水(DI)、水中の任意の有機溶剤または任意のアルコール(例えば、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコール(IPA)を含む。)が挙げられる。有用な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ギ酸、酢酸、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトンまたは2−ブタノンが挙げられる。望ましくは、非水性溶剤はエタノールである。
【0039】
本発明のSPHの合成では、発泡反応と重合反応を同時にまたはほぼ同時に行う。従って、これらの反応のタイミングの制御は重要である。化学的手段によって発泡を促進するために、発泡剤(ポリマーマトリックス内に気泡構造を作ることができる任意の物質または物質の組み合わせと定義される。)を発泡助剤と接触させる。好ましくは、発泡剤は、この発泡剤の添加後、約5から約15秒以内に、この混合物中の発泡助剤との反応を開始する。発泡剤は、固体塊としてこの反応混合物に添加することができ、または水性もしくは有機/水性溶剤系に溶解することができ;有機溶剤に分散させることができ;水への発泡剤の溶解を遅らせるように有機化合物で被覆することができ;水への発泡剤の溶解を遅らせるようにカプセル封入することができ;またはSPHの重合に関与するモノマー中に分散させることができる。
【0040】
発泡剤は、圧力が解放されると膨張する物理作用物質(例えば、窒素および二酸化炭素)、および例えば酸の存在下で、分解または反応してガスを形成する化学作用物質(例えば、アゾジカルボンアミド、NaHCO、NaCOおよびCaCO)を含む。無機炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、または、最も望ましくは重炭酸ナトリウムが、発泡剤としての使用に好ましい。望ましくは、発泡剤のモノマーに対する重量(単位:mg)対容量(単位:μL)比は、約0.1/100から約2/5である。最も望ましくは、発泡剤のモノマーに対するw/v比は、約1/7である。
【0041】
発泡助剤は、ガスを発生させるために発泡剤と併用される。発泡助剤としては、例えば、アクリル酸、クエン酸、酢酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、塩素酸および塩酸などの、有機および無機酸が挙げられる。好ましい発泡助剤の一例は、氷酢酸である。望ましくは、発泡助剤のモノマーに対する容量/容量または重量(単位:mg)対容量(単位:μL)比は、約0.01/100から約1/10である。最も望ましくは、発泡助剤のモノマーに対するv/vまたはw/v比は、約1/100から5/100である。
【0042】
SPH反応混合物は、1つ以上の特性改質剤、例えば、カチオン錯体形成部位を含有する薬剤、も含むことがある。特性改質剤としては、例えば、モノマー、例えばアクリル酸、ポリマー(例えば、アルギナートおよびこの誘導体、キチン、キトサンおよびこの誘導体、セルロースおよびこの誘導体、デンプンおよびこの誘導体、シクロデキストリン、デキストランおよびこの誘導体、ゴム、リグニン、ペクチン、サポニン、デオキシリボ核酸ならびにリボ核酸から選択される、多糖類;アルブミン、ウシ血清アルブミン、カゼイン、コラーゲン、フィブリノーゲン、ゼラチンおよびこの誘導体、グリアジン、炭酸グリシンナトリウム、細菌細胞膜酵素、およびポリ(アミノ酸)、特に、ポリプロリン、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(L−リシン)、ポリサルコシン、ポリ(L−ヒドロキシプロリン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(S−カルボキシメチル−L−システイン)およびポリ(アスパラギン酸)から選択される、ポリペプチドもしくはタンパク質;ならびにアクロレインカリウム、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸およびこの塩、(メタ)アクリラート、アクリロニトリル、エチレン、エチレングリコール、エチレンイミン、エチレンオキシド、スチレンスルホナート、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルクロリド、およびビニルピロリドンからなる群より選択される1つ以上のモノマーからなる、ホモもしくはコポリマー)、およびポリフェノール系錯体形成剤が挙げられる。好ましいポリマーとしては、天然および合成高分子電解質;実効中性電荷および400Daから40kDaの範囲の分子量を有する親水性ポリマー;多価カチオンと錯体を形成することができる反応基(例えば、カルシウム、鉄またはアルミニウムイオンと錯体形成することができるカルボキシル基)を有する分子;デオキシリボ核酸;およびリボ核酸が挙げられる。前記ポリマーは、アクロレインカリウム、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸およびこの塩、(メタ)アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、エチレングリコール、スチレンスルホナート、アルパラギン酸、リシン、エチレンイミン、エチレンオキシド、スチレンスルホナート、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルクロリド、CARBOPOL、ビニルピロリドン、およびウルトラミロペクチンからなる群より選択されるモノマーからなる、ホモまたはコポリマーから選択されることができる。
【0043】
更に他の実施形態において、前記特性改質剤は、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、デンプングリコラート、カルボキシメチルデンプン、デキストラン、ペクチナート、キサンタン、カラゲナン、ゲラン、ヒアルロン酸およびペクチン酸またはこれらの塩(この場合の塩は、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、およびMn2+から選択される対イオンを含む。)ならびにポリ(アクリル酸)およびこの塩、ポリ(メタクリル酸)およびこの塩、ポリアクリルアミド、ポリ(スチレンスルホナート)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリリシン、CARBOPOL、またはウルトラミロペクチンから選択される。
【0044】
好ましい多糖類としては、例えば、カチオン/アニオンの正/負電荷に対抗することができる負に/正に帯電した基を有するイオン性多糖類が挙げられる。通常、第一級カチオンは、SPH調合物のイオン性多糖類と共に最初に提供され、前記多糖類は、後続のイオン平衡の方法で重要な役割を果たす。好ましくは、前記多糖類は、アルギナートおよびこの誘導体、キチン、キトサンおよびこの誘導体、セルロースおよびこの誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)、デンプンおよびこの誘導体(例えば、デンプングリコラートおよびカルボキシメチルデンプン)、デキストランおよびこの誘導体(例えば、シクロデキストリンおよび硫酸デキストラン)、ゴム、リグニン、ペクチン、ペクチナート、サポニン、ヒアルロン酸、キサンタン、カラゲナン、ゲランおよびアルギナート、またはこれらの塩(この場合の塩は、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、およびMn2+から選択される対イオンを含む。)を含むリストから選択される。最も好ましくは、前記多糖類は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。多糖類の全溶液に対する比は、約0.1から約10% w/vの範囲であり得る。好ましくは、前記範囲は、約0.2から約5% w/vである。最も好ましくは、前記範囲は、約0.2から約1.5% w/vである。
【0045】
好ましいポリペプチドまたはタンパク質としては、アルブミン、ウシ血清アルブミン、カゼイン、コラーゲン、フィブリノーゲン、ゼラチンおよびこの誘導体、グリアジン、炭酸グリシンナトリウム、細菌細胞膜酵素、およびポリ(アミノ酸)、例えば、ポリプロリン、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(L−リシン)、ポリサルコシン、ポリ(L−ヒドロキシプロリン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(S−カルボキシメチル−L−システイン)、およびポリ(アスパラギン酸)が挙げられる。
【0046】
ポリフェノール系錯体形成剤は、以下のうちのいずれか1つから選択することができる。ガロタンニン、エラジタンニン、タラガロタンニン、カフェタンニン、プロアントシアニジン、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸およびアルブチン。
【0047】
SPHを調製する際、気泡安定化は、物理的または化学的手段によって達成することができる。例えば、急冷または高温乾燥(例えば、高温、不活性雰囲気下での気流乾燥)方法を用いて、ガス吹き込み技術によって生成された発泡体を安定させることができる。本発明のSPHを調製する際に使用するための界面活性剤は、液体に溶解したときに、発泡体を形成するために界面活性剤の溶液にガスを導入できる程度に、この液体の表面張力を低下させる、任意の組成物を含む。望ましくは、ゲル化方法が始まるまで発泡体を安定させるために界面活性剤を使用することができる。有用な界面活性剤としては、化学的界面活性剤、例えば、Triton界面活性剤、TweenおよびSpan界面活性剤、Pluronic(登録商標)界面活性剤(ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー)(BASF)、Silwet(登録商標)界面活性剤(OSi Specialties Inc.)およびドデシル硫酸ナトリウム(Bio−Rad Laboratories)、およびタンパク質様界面活性剤、例えばアルブミン(Sigma Chemical Company)、オボアルブミン、ゼラチンまたはこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、Pluronic(登録商標)F127(PF127)を使用する。全溶液の約0.2%から約2%(w(単位:g)/v(単位:mL))の範囲の界面活性剤濃度が適切であることが判明した。好ましくは、前記界面活性剤濃度は、約0.4%から約1%(w(単位:g)/v(単位:mL))の範囲である。最も好ましくは、前記界面活性剤濃度は、約0.9%(w(単位:g)/v(単位:mL))である。
【0048】
超多孔質ヒドロゲルの重合
SPHの重合は、均一相または不均一相での不飽和モノマーの重合に適する重合開始剤系によって開始させることができる。一般的に言うと、本発明による方法において使用することができる開始剤系は、当業者に公知である(例えば、米国特許第6,960,617号、同第6,271,278号および同第5,750,585号ならびに米国特許出願公開番号US 2003/0232895および米国特許第7,056,957号を参照のこと。これらのそれぞれが、本明細書に参照により組み入れられる。)。好ましい実施形態では、約20℃から約100℃の範囲、好ましくは約30℃から約60℃の範囲の温度で重合を行う。より高い温度、例えば、約50℃より高い温度でのSPHの重合は、より大きな構造均質性、より小さな孔径、膨潤状態でのより大きな可撓性、より速い吸収速度を有し、精製がより容易で、より効率的なSPHを生じさせる。
【0049】
本発明を限定するのではないが、望ましくは、このような重合開始剤は、場合によっては金属塩および/またはキレート剤の存在下の、例えば、ヒドロペルオキシド、好ましくは、クミルヒドロペルオキシドおよびt−ブチルヒドロペルオキシド;有機過酸化物、好ましくは、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルベンゾイルペルオキシド、ペルオキシジ炭酸ジイソプロピル、またはペルオキシジ炭酸ジシクロヘキシル、ジ−t−ブチルペルオキサラート;無機過酸化物、好ましくは、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、または過酸化水素;アゾ化合物、好ましくは、アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、またはトリフェニル−メチルアゾベンゼン;およびレドックス系などの物質のフリーラジカルまたはフリーラジカル形成性化合物または混合物;好ましくは、過酸化物とアミンの混合物(例えば、過硫酸アンモニウム/メタ重亜硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウム/テトラメチルエチレンジアミン)、または過酸化物と還元剤の混合物である。
【0050】
開始剤系は、純粋である場合もあり、または2つ、3つもしくはこれ以上の異なる開始剤系の混合物の形態である場合もある。もう1つの例では、開始剤系の部分を、固体、液体または気体形態で、別々に反応に添加する。この手順は、特に、レドックス開始剤系に適する。本発明において、酸化剤と還元剤の組み合わせ(レドックスペア)は、開始剤として望ましい。最も望ましくは、過硫酸アンモニウム(APS)とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)のレドックスペアを使用する。レドックス開始剤系を使用して調製されるヒドロゲルの例は、例えば、米国特許第5,750,585号(本明細書に参照により組み入れられる。)において見つけることができる。
【0051】
または、本発明のSPHは、熱分解性開始剤(例えば、過硫酸アンモニウム)などの熱重合開始剤を使用して形成することができる。
【0052】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明のSPHは、熱開始剤系とレドックス開始剤系を併用して形成することができる。
【0053】
超多孔質ヒドロゲルの更なる改質
イオン平衡は、基質構造内でイオン交換が発生する方法である。この交換方法は、異なる価(例えば、一価、二価、三価またはこれ以上)のイオンの任意の種類間で発生し得る。例えば、基質内の二価カチオンを三価カチオンによって部分的に置換することができまたはこの逆もできる。イオン平衡方法が完了すると、SPH生成物は、2以上のカチオンの平衡量を含有する。今説明した平衡は、基質特性の著しい変化を生じさせる。例えば、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩は水溶性であるが、このカルシウム処理誘導体は水不溶性である。従って、カルシウムカチオンでのナトリウムの単純な部分的置換が、最終ポリマーを貧水溶性または水不溶性にする。イオン交換に基づく基質の特性を劇的に変化させる一般的な方法も、本発明のSPH調合に適用することができる。
【0054】
本発明のSPHは、元々、イオンを含有する場合もありまたはこの形成後にイオン化される場合もある。SPHは、塩、イオン性モノマー、イオン性ポリマーまたは任意の他のイオン成分から選択される第一級カチオンを含有し得る。後にこの第一級カチオンを別のカチオン、即ち第二級カチオンによって部分的にまたは完全に置換することができる。第一級カチオンと第二級カチオンの平衡混合物を第三のカチオン、即ち第三級カチオンと平衡させることもできる、等々。望ましいヒドロゲル特性を獲得するために、多数の異なるカチオンを用いてこのイオン平衡方法を繰り返すことができる。単純な塩、イオン性モノマー、イオン性ポリマーまたは別のイオン源が、第二級または第三級カチオンを提供し得る。イオン平衡方法は、イオンが自由自在に動くことができる水性または混合水性/アルコール媒質中で発生し得る。
【0055】
発泡および重合が完了した後、直ちに、イオン担持SPHを水性または混合水性/アルコール溶液(任意の一価、二価もしくは三価カチオンまたはこれらのもしくはより高価のカチオンの混合物、例えばセリウムを含む。)に入れることができる。好ましくは、前記一価カチオンは、H、Na、KまたはNH4である。好ましくは、前記二価カチオンは、Ca2+、Ba2+、Mg2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+またはFe2+である。最も好ましくは、前記二価カチオンは、Ca2+である。好ましくは、前記三価カチオンは、Fe3+、Cr3+またはAl3+である。通常、一価カチオンと二価カチオンの間のイオン交換方法は、迅速である。なぜならSPHの急速な膨潤がこの交換/平衡に必要な時間を有意に減少させるからである。イオン平衡方法は急速であるが、このイオン交換方法が完了したことを確実にするために、約0.5時間から約24時間の範囲の処理時間が推奨される。改善された機械的特性などの追加の望ましい特性を得るために、このイオン平衡SPHを、第三級カチオンを含む溶液で処理することができる。好ましくは、この第三級カチオンは、鉄またはアンモニウムである。前述した第二級カチオン平衡と同様に、三価カチオンを含む媒質にこのSPHを入れ、カチオン平衡が迅速に発生する。イオン平衡が完了したことを確実にするために、このヒドロゲルを、しばらくの間、好ましくは約0.5時間から約24時間、この溶液に放置する。好ましくは、この平衡方法を約20℃から約60℃の間、更に好ましくは約20℃から約35℃の間の温度で行う。SPH特性に対するカチオンの影響は、例えば、米国特許出願公開番号、米国特許第7,056,957号(表1を参照)に開示されている。
【0056】
その後、このイオン平衡ヒドロゲルを、純水で入念に洗浄し、非水性、水混和性溶剤で洗浄し、オーブンでまたは真空オーブンで乾燥させる。または、この精製された超多孔質ヒドロゲルを、オーブン/真空オーブンでまたは凍結乾燥技術によって乾燥させてもよい。
【0057】
超多孔質ヒドロゲルの脱水
本発明のSPHは、通常、使用前に脱水し、保管する。凍結乾燥によりSPHを脱水する場合、利用することができる1つの方法は、(a)SPHサンプルを約23℃から約−10℃の温度で1時間につき約3℃の冷却速度で凍結させる段階;(b)このサンプルを約−10℃で約16から約24時間、維持する段階;(c)このサンプルを約−10℃でおよび約0.2トル未満で約60から約80時間、凍結乾燥させる段階;(d)このサンプル温度を1時間につき約3℃の速度で約10℃に上昇させる段階;および(e)このサンプルを約10℃でおよび約200mトル未満で少なくとも約12時間、維持する段階を含む。
【0058】
非水性溶剤を使用するイオン平衡SPHの脱水のために望ましい方法は、(a)ヒドロゲルマトリックスに含有されている水を一連の洗浄により非水性、水混和性溶剤または溶剤混合物で置換する段階;および(b)この非水性溶剤または溶剤混合物を約50トル未満の圧力でまたは熱によって除去する段階を含む。前記非水性溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ギ酸、酢酸、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトンまたは2−ブタノンが挙げられる。好ましくは、前記非水性溶剤は、エタノールである。
【0059】
本発明の超多孔質ヒドロゲルの使用
本発明のSPHは、HEMAを組み込まずに製造される他のSPHをはじめとする他のヒドロゲルに勝る、これらのSPHによって示される独特な特性のために、様々な異なる用途で使用することができる。SPHは、フィルム、シート、粒子、顆粒、繊維、棒または管をはじめとする(しかし、これらに限定されない。)任意の形態であり得る。例えば、本発明のSPHは、薬物送達において、望ましくは、経口医薬品としての使用に、極めて有用である。薬物送達は、本発明の脱水SPHのマトリックス内への制御放出薬物または薬物組成物の内植を含むことがある。そしてまた、これは、胃内の酸性状態によって侵食され得るカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)または類似の収容システムの中に収容することができる。SPHの胃内停留は、これらの独特な膨潤特性、即ち、大きなサイズへの急速膨潤に基づく。本発明のSPHは胃液に暴露されると、この最大膨潤容量に迅速に、一般には10分未満で、膨潤する。人間でのこれらの使用には、低pH条件で約2cmより大きい直径に膨潤するSPHが望ましい。なぜならその後、これらは幽門括約筋を通過することができず、その結果、胃内での長期滞留およびより良好な薬物吸収が確保されるからである。
【0060】
薬物送達に加えて、本発明のSPHは、例えば、組織エンジニアリング、血管手術(例えば、血管形成術)および排液(例えば、腎臓から)をはじめとする、様々な他の用途を有し得る。本発明のSPHを使用して作製することができるデバイスとしては、人工血管、ステント、カテーテル、カニューレ、プラグ、圧迫器、組織スカホルドおよび組織または生物学的封入体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明のSPHは、多孔質ヒドロゲル材料を必要とする任意の用途、特に、開孔構造を有するヒドロゲル材料を必要とする用途に適用することができる。例えば、これらの材料は、細胞が移動できるマトリックスまたはスカホルドとして有用であり、細胞は、この中に適合することができ、成長してこれらの所定の機能、例えば組織置換を果たし、最終的にはこのマトリックスをこの生体分解性に依存して置換する。更に、これらの材料を使用して、既に細胞に結合しているマトリックスを生じさせることができ、その後、これを外科手術によって体内に内植することができる。更に、これらの材料は、創傷治癒用マトリックス材料として、インビトロ細胞培養研究またはこれに類似した用途のためのマトリックスとして、使用することができる。本発明のSPHは、これらの安定な構造のため、細胞を培養する際の使用に理想的である。
【0062】
本発明のSPHは、細胞移植にも適用することができる。例えば、本発明のSPHは、肝細胞の移植(例えば、D.J.Mooney,P.M.Kaufmann,K.Sano,K.M.McNamara,J.P.Vacanti,and R.Langer,「Transplantation of hepatocytes using porous biodegradable sponges,」Transplantation Proceedings,1994,26:3425−3426;D.J.Mooney,S.Park,P.M.Kaufmann,K.Sano,K.McNamara,J.P.Vacanti,and R.Langer,「Biodegradable sponges for hepatocyte transplantation,」Journal of Biomedical Materials Research,1995,29:959−965を参照)、軟骨細胞の移植、および骨芽細胞の移植(例えば、S.L.Ishaug,M.J.Yaszemski,R.Biciong,A.G.Mikos,「Osteoblast Function of Synthetic Biogradable Polymers」,J of Biomed Mat Res,1994,28:1445−1453を参照)に使用することができる。
【0063】
本発明のSPHは、例えば平滑筋細胞を含む三次元組織を作るために使用することもでき、特に、適切な場合には、細胞接着リガンド(単数または複数)をSPHに連結させる。加えて、本発明のSPHに成長因子を組み込むことができる。従って、本発明のSPHを使用して、細胞増殖に適する環境を提供することができる。
【0064】
本発明のSPHについてのもう1つの有用な用途は、組織再生誘導法(GTR)用である。この用途は、組織再生の責任を負う前駆細胞が、基礎健常組織内に存在し、これらを、欠損部に移動し、損失組織を再生するように誘導することができるという前提に基づく。GTRのための材料の重要な特徴は、この材料への細胞の輸送(孔径分布および細孔連続性、即ち相互接続によって左右される特性)である。この材料は、所望の細胞がこの材料に侵入できなければならないが、横断して他の細胞タイプに侵入しないようにしなければならない。
【0065】
本発明のSPHの吸収特性のため、これらは、吸収性物品での使用、および特に、使い捨て吸収性物品としての使用に適切である。「吸収性物品」は、水および他の流体(即ち、液体)、例えば体液の有意な量を吸収することができる消費製品を意味する。吸収性物品の例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、ペーパータオル、化粧紙などが挙げられる。
【0066】
本発明のSPHは、種子、実生苗、塊茎、挿し木、苗木、根、移植物などの形態の生長植物の保護、保持または移植にも有用である。これらのSPHは、単独でまたは全体にわたって均一に分散させた肥料、農業用改質鉱物などと併用で、生長植物を助けることができる。
【0067】
本発明のSPHは、吸収、抽出、分離および濾過のためにも有用である。例えば、SPHは、周囲環境から湿分を除去する乾燥剤として使用することができる。本発明のSPHは、例えば混合された水/油、水/アルコール、水/有機溶剤、および同様のものを含有する混合物から水を分離するために使用することができる。
【0068】
本発明の超多孔質ヒドロゲルの特徴
本発明のSPHは、例えば、これらの膨潤状態で(例えば、非常に過酷な膨潤媒質、例えば人工胃液に膨潤させたとき)の長時間の安定した膨潤および機械的特性ならびに構造均質性をはじめとする、幾つかの改善された特徴を示す。本発明のSPHの平衡体積膨潤率(膨潤体積対非膨潤体積)は、約8から約18の範囲に入る。
【0069】
本発明のSPHは、より大きな圧縮荷重、例えば10N以上の圧縮荷重(例えば、約10Nから約50Nの範囲の圧縮荷重)にも耐えることができる。本発明のSPHは、胃の環境において見出される膨潤条件、即ち、胃液での膨潤および胃によってかけられる圧縮荷重のもとで、これらの機械的完全性も維持する。好ましい実施形態において、SPHは、約5.0未満のpHで、更に好ましくは約3.0のpHでおよび最も好ましくは約1.0のpHで、少なくとも1時間より長くおよび更に好ましくは3時間より長く、この機械的完全性を維持することができる。好ましい実施形態において、上で説明したものなどの1つ以上の特性改質剤を含む本発明のSPHは、特性改質剤(単数または複数)を用いずに調製したSPHより、少なくとも約5倍大きい、更に好ましくは少なくとも約10倍大きいおよび最も好ましくは少なくとも約20倍大きい圧縮荷重に耐えることができる。
【0070】
他の実施形態において、本発明のSPHは、約1μmから約5,000μmの平均孔径を示す。更に好ましくは、SPHは、約10μmから約3,000μmの平均孔径を示す。SPHの孔径は、SPHの特性に重大な影響を及ぼす。より高い反応温度、反応媒質のより高い含水率およびより高い発泡成分濃度などの条件は、より高い膨潤度、より良好な加工性および膨潤状態でのより低い機械的特性を有する、より高い発泡体を生じさせる。低い発泡体ほど、膨潤状態で、大きな孔径および大きな剛性を示す。
【0071】
本発明の方法は、高い開始反応温度を用いて調製することができる、超加工性ポリHEMA系SPH製品を生じる。SPHは、この膨潤形態の非常に薄いヒドロゲルに加工することができる。
【0072】
高い開始反応温度を用いる本発明のポリHEMA SPHの調製は、より小さい細孔、膨潤状態でのより大きな可撓性およびより速い吸収速度を有する、ならびに容易に精製することができる、非常に均質な多孔質構造を生じさせる。本発明のポリHEMA SPHは、水に対してスポンジのように動作し、主として毛管メカニズムによって水を吸収する。
【0073】
以下の非限定的実施例は、本発明の例示となる。
【0074】
実施例
【実施例1】
【0075】
超多孔質ヒドロゲルの製造における調和した発泡およびゲル化
本発明のSPHを調製するために、発泡反応と重合反応を同時に制御する(「調和させる」)。これは、SPH形成中の時間/温度プロフィールを監視し、発泡方法の進行に注意することによって行う。1つの実施例において、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA、2000μL)、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEGDA、40μL)、アクリル酸(50μL)、酢酸(40μL)、F127−10%(250μL)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED−40%、65μL)、水(200μL)および過硫酸アンモニウム(APS−10%、250μL)を含有する調合物に基づいて、図1に示す温度/時間プロフィールを得た。
【0076】
表1および図1が示すように、このプロフィールの温度は、25℃で開始する。約100秒の導入期間の後、反応が開始し、次の400秒にわたって円滑に継続し、温度が線形的に約55℃に上昇する。この時間の間、反応混合物の粘度のわずかな増加が観察された。その後、反応が活発になり、温度は、次の100秒にわたって、より急勾配で線形的に上昇する。この時間の間に、溶液は、混濁塊に急速に変わる。この調合を使用して調製したSPHは、改善された強度および機械的特性を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
このプロフィールを活用して、室温でポリHEMA SPHを調製した。発泡剤として重炭酸ナトリウム(SBC)を約2分後に添加し、その後、過硫酸アンモニウム(APS)を添加した。粘度が増加している間、SBC分散を続けた。このSPH発泡体を約20分間、5重量%塩化アンモニウム溶液中で放置した。最終SPHは、膨潤状態で改善された機械的特性を示す、非常に強い均質な発泡体であった。
【0079】
図3は、SPHを60℃の開始反応温度で調製したことを除き、上で説明した方法によって調製したpHEMA SPHの評価結果を示すグラフである。SPHを形成したら、Chatillon TCD−200デジタル機械試験機を使用してこれを試験した。膨潤媒質として脱イオン水を使用して、22から25℃の温度で、このSPHを膨潤させた。SPHは、機械試験前、少なくとも4時間、この膨潤媒質中で保持した。
【0080】
SPHの試験は、次のとおりであった。円柱形の脱水SPHサンプルを室温で約4時間、水に入れておいた。この完全に膨潤したゲルを機械試験に付した。膨潤ゲルの頂部、中間部および底部を試験し、圧縮下で同じ機械的特性を提示することを証明した。合成中、ゲル化が進行している間、二酸化炭素ガスが上方に移動する。ゲル化中にゲルの異なる部分に異なるCOガス濃度が存在しないようにすることによって、非常に均質なSPHが製造される。ゲル化中にゲルの異なる部分に異なるCOガス濃度が存在すると、均質でない膨潤および機械的特性を示すSPHが生じ、これを回避しなければならない。
【0081】
図4は、上で説明した方法によって調製したpHEMA SPHの評価結果を示すグラフである。SPHの膨潤は、37℃で0.5時間、1.0のpHの人工胃液を使用して行った。60℃の開始反応温度でSPHを調製した。SPHを形成したら、Chatillon TCD−200デジタル機械試験機を使用してこれを試験した。
【0082】
SPHの試験は、次のとおりであった。円柱形の脱水SPHサンプルを37℃で約0.5時間、SGFの中に入れておいた。この完全に膨潤したゲルを機械試験に付した。膨潤ゲルの頂部、中間部および底部を試験し、圧縮下で同じ機械的特性を提示することを証明した。
【0083】
図5は、上で説明した方法によって調製したpHEMA SPHの評価結果を示すグラフである。SPHの膨潤は、37℃で4時間、1.0のpHの人工胃液を使用して行った。60℃の開始反応温度でSPHを調製した。SPHを形成したら、Chatillon TCD−200デジタル機械試験機を使用してこれを試験した。
【0084】
SPHの試験は、次のとおりであった。円柱形の脱水SPHサンプルを37℃で約4時間、SGFの中に入れておいた。この完全に膨潤したゲルを機械試験に付した。膨潤ゲルの頂部、中間部および底部を試験し、圧縮下で同じ、安定した機械的特性を提示することを証明した。
【実施例2】
【0085】
超多孔質ヒドロゲルの低温調製
以下の実施例における全ての反応混合物成分は、表2に示す量で使用した。
【0086】
標準Pyrexガラス管を使用し、HEMA、PEGDA、アクリル酸、酢酸、Pluronic(登録商標)F127、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)、および脱イオン水を25℃で共に混合した。2分後、発泡体が形成し始めるまで、混合し続けながらAPSおよび固体SBCを添加してこの発泡剤(SBC)および開始剤(APS)を均一に分散させた。反応が完了(約11分)したら(温度および発泡体の高さが変わらないことがこの証しとなる。)、5重量%塩化アルミニウム溶液を添加し、このヒドロゲルを、この膨潤状態に至るように、すり合わせることによって平衡させた。発泡体の高さは、約3cmであった。形成したSPHは、非常に強靭である。水和中、ガラスからゴムへの転移は非常に迅速であるが、全体的に膨潤は非常に遅く、その結果、非常に耐久性のある水和SPHが生じる。
【0087】
【表2】

【実施例3】
【0088】
超多孔質ヒドロゲルの高温調製
以下の実施例における全ての反応混合物成分は、表2に示した量で使用した。
【0089】
標準Pyrexガラス管を使用し、HEMA、PEGDA、アクリル酸、酢酸、Pluronic(登録商標)F127、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)、脱イオン水、APSおよびSBCを入念に混合した。混合後、このガラス管を60℃の水浴内に配置し、スパチュラを使用して、発泡体が形成し始めるまでSBC分散を続けた。発泡体が固化されれるまで(約4から5分)、この管をこの浴の中に放置した。発泡体の高さは、約7cmであった。形成したSPHを5重量%塩化アルミニウム溶液で30分間処理した。60℃で形成したSPHは、これらの膨潤状態で、25℃で形成したものより塑性(遅い回復)挙動を示すが、25℃で形成したSPHのほうが弾性(速い回復)であった。
【0090】
図7は、SPH形成を開始する温度に基づくポリHEMA SPH強度の差を例示する。示されているとおり、25℃または60℃の開始反応温度でポリHEMA SPHを調製した。Chatillon TCD−200デジタル機械試験機を使用してSPHを試験した。22から25℃の温度で脱イオン水を膨潤媒質として使用してSPHを膨潤させた。この膨潤媒質中で4時間、SPHを保持した。
【0091】
SPHの試験は、次のとおりであった。円柱形の脱水SPHサンプルを室温で約4時間、水の中に入れておいた。この完全に膨潤したゲルを機械試験に付した。膨潤ゲルの頂部、中間部および底部を試験し、圧縮下で同じ機械的特性を提示することを証明した。高い温度で合成したポリHEMA SPHのほうが、低い温度で形成したポリHEMA SPHより柔軟であり、変形度が大きいが、それでも非常に強い。加えて、高い温度で合成したポリHEMA SPHのほうが速い膨潤動態を有し、これは非常に望ましい特性である。
【0092】
図8は、SPH形成を開始する温度に基づくポリHEMA SPH強度の差を例示する。このポリHEMA SPHは、図7のポリHEMA SPHを暴露したのと同じ反応条件に暴露したが、但し、37℃で4時間、1.0のpHの人工胃液に膨潤させた。高い温度で合成したポリHEMA SPHのほうが柔軟であり、大きく変形するが、それでも非常に強い。異なる温度で合成したこれらのゲルの機械的挙動は、SGF中でも、脱イオン水中でも、非常に安定していることが判明した(図7を参照)。
【0093】
ポリHEMA SPHの特性は、開始反応温度、反応混合物の含水率、および調合物中の発泡助剤(例えば、酢酸)濃度に依存する。温度が高いほど、含水率が高いほど、および酸濃度が高いほど、結果として、高い発泡体、小さい孔径、大きな可撓性、大きな加工性、および良好な膨潤特性が得られる(図7から8を参照)。
【0094】
図3および7は、高温での調製ポリHEMA SPHの機械的強度がpH依存性であることを例示する。図4、5、および10は、ポリHEMA SPHが、低pHの膨潤媒質中に4時間および0.5時間、保持されたときに同じ機械的特性を明示することを示している。これは、酸膨潤状態での本発明のポリHEMA SPHが、物理的および機械的特性の点で非常に安定していることを示している。図10から13は、本発明のSPHの追加の優れた特性を例示する。特に注目すべきこととして、図11は、アルコールの存在下で膨潤する本発明のSPHの能力を例示しており、これは、他のヒドロゲルでは通常示されない特性であり、薬物送達に有用な意味があり得る特性である。最大アルコール吸収は、60%アルコールを含有する水/アルコール溶液について見出された。
【0095】
加えて、図12は、HEMA系SPHが、この膨潤ゲルにかけられる異なる範囲の動的圧縮荷重に耐えることができることを示している。非常に強靭な超多孔質ヒドロゲルのみが、長期間にわたって0.1から30Nの圧縮サイクルに耐えることができ、本明細書に開示する方法によって製造したポリHEMA SPHも耐えられた。図13は、時間に対してプロットした図12の荷重データを示すグラフである。図14は、経時的なポリHEMA SPHの伸長に対する様々な荷重の影響を示すグラフである。
【実施例4】
【0096】
発泡剤の添加を制御することによる超多孔質ヒドロゲルの形成
モノマー(例えば、HEMA)、コモノマー(使用する場合、例えば、HEAおよびアクリル酸)、架橋剤(例えば、PEGDA)および整泡剤(例えば、F127)の別個の水溶液を調製し、非常に穏やかな混合条件下で発泡助剤(例えば、酢酸)および追加の水と併せる。別個の開始剤溶液(還元剤と酸化剤、例えば、それぞれTMEDとAPS、の溶液)をそれぞれ添加し、十分に分散させる(約10から15秒)。その後間もなく(約20秒後)、反応混合物は均質になり、発泡剤(例えば、SBC)を添加し、均一に分散させる。全ての添加は、通常、室温(約20から25℃)で、周囲大気条件下で行う。発泡剤の溶解により、開始剤がより速く分解するレベルに反応媒質のpHが上昇する。開始剤ラジカルの形成が一定レベルに達すると、重合反応は急速に進行し、反応混合物は経時的に粘稠になる。発泡剤の溶解は、発泡助剤とのこの相互作用も促進して、吹き込み方法に必要なガスを生じさせる。これら2つの方法は、制御された発泡および重合を可能にするように行われる。図2に示す場合、t=0は、発泡剤を添加した時であり、チャート内の(□)記号は、発泡度を表し、および(△)記号は、反応中の温度上昇を表す。この方法のステージIでは、発泡の約80%が発生するが、反応混合物温度の有意な上昇によって示されるような重合/ゲル化方法は、実質的に始まっていない。ステージIIで、反応温度が(約5℃から約10℃)上昇し始めると、発泡方法の残りが発生する。ステージIおよびIIの発泡体コンシステンシーは、それぞれ、流体および軟質固体である。この時点を越えて発泡体発生はないが(ステージIII)、重合は進行し、反応温度が最大になると、発泡体は固体可撓性ゴムに戻る。重合方法中、液体から低粘度油へ、高粘度油へ、最後に固体可撓性ゴムへと前進的に変化する。重合反応は、通常、発泡剤添加の約10分後までに完了する。
【0097】
本発明者らが達成したように、SPHが非常に均質な多孔質構造を有すれば、完全に膨潤した状態のSPHで高いまたは非常に高い機械的特性を達成することができる。このSPHが、大きな細孔、異なるサイズの細孔、または異なる多孔率(非多孔質対多孔質)の領域などの弱点を有する場合、膨潤したSPHは、静的および動的機械荷重(圧縮、張力、曲げ、加撚)のもとで早々に破損する。発泡前の時期尚早のゲル化は、多孔性に恵まれた超多孔質ヒドロゲルではなく有意な多孔性を欠くヒドロゲル生成物を形成させる。一方、ゲル化前の時期尚早な高度の発泡は、不均質な細孔構造およびサイズを生じさせる。発泡剤を反応混合物に添加する方法、反応混合物とこの混合、反応温度、ならびに希釈剤、発泡助剤および/または整泡剤の量は、調和した発泡およびゲル化反応を達成するために重要な要因である。
【実施例5】
【0098】
ポリHEMA系超多孔質ヒドロゲルの改質
胃内停留に有用であり、モノマー2−ヒドロキシエチルメタクリラートに基づく、幾つかのSPHを製造した。ポリHEMA SPHは、強く(患者の胃によって課せられる収縮に耐える能力を明示する。)ならびに速い膨潤速度および大きな流体体積を吸収する能力をはじめとする卓越した膨潤特性を示す。経口薬物送達のために、SPHを経口投与可能なカプセル(例えば、ゼラチン、HPMC)に封入する必要がある。ポリHEMA SPHのカプセル封入には、外部/内部可塑剤および湿分の利用をはじめとする更なる可塑化段階が必要である。外部可塑剤を用いる一般的実施は、最終精製された乾燥されたSPHの可塑剤溶液への浸漬である。この方法により、可塑剤分子はポリマー鎖間に組込まれ、これらのより良好な動きを助長し、その結果、これらをより可撓性にする。内部可塑剤の場合、非常に低いガラス転移温度を有するモノマー(単数または複数)(例えば、エチルアクリラート、エチルメチルアクリラート、ブチルアクリラート、および類似のもの)を、HEMAなどの高ガラス転移モノマーの構造に組み込む。このようにして、およびこのモノマー組成に依存して、外部可塑剤と比較して一定の利点および欠点を有する低/高ガラス転移モノマーの可撓性コポリマーを形成する。
【実施例6】
【0099】
内部可塑剤としてHEAを使用するHEMA系超多孔質ヒドロゲルの調製
以下の実施例における全ての反応混合物成分は、表3に示される量で使用した(体積はμLの単位で、および重量はmgの単位で与えられる。)。
【0100】
標準Pyrexガラス管を使用し、HEMAおよびHEAのモノマーを、PEGDA、アクリル酸、酢酸、Pluronic(登録商標)F127、脱イオン水、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)、ASPおよびSBCと併せ、入念に混合した。混合後、このガラス管を70℃の水浴内に配置し、スパチュラを使用して、反応混合物が発泡し始めるまでSBC分散を続けた。HEMA系SPHの膨潤および機械的特性を最適にするために、HEA濃度を、0から50v/v%のHEA/HEMA比の範囲で変化させた。この実施例において製造したヒドロゲルから、HEA/HEMA比が約25v/v%以下(例えば、F−1、F−2およびF−3)のとき、経口薬物送達ビヒクルとして使用される超多孔質ヒドロゲルに最適な特性を達成した。SPHに組み込まれるHEAの量を増加させることにより、純粋なHEMAに基づく対照と比較して、より高い膨潤度、より大きな可撓性およびより速い吸収、しかしより低い機械的特性を示すSPHを生成した。少なくとも80%のHEMAおよび20%のHEAを用いて調製したSPHが最適な特性を示した。
【0101】
図6は、圧縮下でのポリHEMA/HEA SPHの均質性を例示する。ポリHEMA/HEA SPHの膨潤は、37℃で4時間、1.0のpHの人工胃液を使用して行った。60℃の開始反応温度でこのポリHEMA/HEA SPHを調製した。SPHを形成したら、Chatillon TCD−200デジタル機械試験機を使用してこれを試験した。
【0102】
SPHの試験は、次のとおりであった。円柱形の脱水SPHサンプルを37℃で約4時間、SGFの中に入れておいた。この完全に膨潤したゲルを機械試験に付した。膨潤ゲルの頂部、中間部および底部を試験し、圧縮下で同じ、安定した機械的特性を提示することを証明した。
【0103】
図9は、本発明のHEMA系SPHおよびポリHEMA/HEA SPH(下のほうがHEA濃度)の異なる機械的特性を例示する。示されているように、両方のSPHが、4時間の停留後、1.0のpHで(人工胃液)、同様の卓越した機械的特性を示す。ポリHEMAのほうがポリHEMA/HEAより、わずかに変形が小さかった。
【0104】
HEMAとEHAの混合モノマーを使用して、異なる機械的特性を有する広範なSPHを調製することができる。HEMAがSPHの改善された高い機械的特性の要因である一方で、HEAは、膨潤速度および膨潤力の増加をはじめとする、より良好な膨潤特性をもたらす。
【0105】
コモノマーとしてHEAによりHEMAモノマーを部分的に置換すると、機械的特性に影響を及ぼすことなく、SPHの可撓化タイプを得ることができる。高い温度、高い含水率および高いEHA濃度は、全て、結果として、乾燥状態および水膨潤状態でのより大きな可撓性をもたらす。HEA濃度を上昇させることにより、この機械的特性を犠牲にして優れた膨潤特性を有するSPHが生成される。好ましくは、HEA濃度は、0から50v/v%のHEA/HEMA比の範囲で変化させることができるが、最も好適な濃度は、約25v/v%以下のHEA/HEMA比である。好ましい実施形態において、HEAのHEMAに対する比は、20v/v%である。
【0106】
【表3】

【実施例7】
【0107】
ポリ(エチレングリコール)を外部可塑剤として使用するHEMA系超多孔質ヒドロゲルの調製
異なる乾燥SPHサンプルを、10%PEG−600、10%PEG−1450、10%PEG−4000、ならびに異なるグレードの混合物(5%PEG−600/5%PEG−1450および5%PEG−1450/5%PEG−4000)の温溶液に入れた。比較のため、サンプルを水および10%グリセリン溶液にも入れた。
【0108】
これらのサンプルを、数日、溶液中で放置して、可塑剤を吸収させた。乾燥後、浸出を回避するために最高平均分子量と最もよく作用する可塑剤の組み合わせを見つけることを目的として、手作業でこれらのサンプルを試験した。より低い分子量のPEGは非常に有効であることが判明した。それにも関わらず、カプセル封入による人間に投与するための最終剤形は、可塑剤とカプセルの相互作用を防止するために疎水性被覆を必要とする。
【実施例8】
【0109】
湿分を加工助剤として使用するHEMA系超多孔質ヒドロゲルの調製
異なるアルミニウム量を含有するpHEMA−AAc/Al3+のサンプルを湿度95%および40℃のオーブンに入れた。短時間(約1時間)の後、これらを取り出し、手作業で硬さについて試験した。これらをオーブンに戻し、一晩、温置した。これらを再び取り出し、手作業で硬さについて試験した。最後に、pHEMA−AAc/Al3+ SPHを数日間、周囲条件で放置し、再び手作業で硬さについて試験した。
【0110】
湿気のあるオーブンに入れたサンプルは、すぐに柔らかくなった。これらはオーブンに入れて1時間以内に軟化し、後程、オーブンから取り出しても柔らかかった。吸湿方法は、SPH構造への吸湿材料の組み込みによって触媒され得る。これらとしては、例えば、シリカゲル、超崩壊剤および超吸水材が挙げられる。ポリHEMA SPHは、この環境の相対湿度および温度がSPH可塑化の発生に好適である条件で、カプセル封入することができる。
【0111】
上の説明から、本明細書において説明した本発明を変化または修飾して、様々な用途および条件にこれを取り入れることができることは明白である。このような実施形態も後続の特許請求の範囲の範囲である。
【0112】
本明細書において言及した全ての特許、特許出願公報および他の出版物は、それぞれの独立した出版物または特許出願が参照により組み入れられると具体的におよび個々に示されたのと同程度に、本明細書に参照により組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)のエチレン性不飽和モノマー、少なくとも1つの架橋剤およびイオン錯体形成可能部位を含む少なくとも1つの特性改質剤を含む混合物を調製する段階(この場合、前記HEMAは、前記混合物中に80重量%より多い量で存在する。);および
b)前記混合物と少なくとも1つの重合剤を接触させることにより前記混合物の重合を生じさせてヒドロゲルを形成する段階、
を含む、超多孔質ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項2】
特性改質剤が、H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+およびCe4−から選択されるイオンを含むイオン錯体形成可能部位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
c)H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+またはCe4+から選択される1つ以上のイオンと前記ヒドロゲルを平衡条件下で反応させる段階、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階a)の混合物が、希釈剤、発泡剤、発泡助剤および整泡剤のうちの1つ以上を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記重合剤が、熱開始剤、または酸化−還元反応を生じさせる薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡剤が、酸との化学反応に基づいてまたは分解および前記分解中のガス放出に基づいて、発泡を促進する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
(i)段階a)の混合物が、発泡剤および発泡助剤を更に含む(この場合、発泡剤は、前記発泡剤の前記混合物への添加後、5秒から15秒以内に発泡助剤と反応する。);または
(ii)段階a)の混合物が、前記混合物中に20重量%未満で存在する1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和コモノマーが、アクリル酸(AAc)およびこの塩、アクリル酸のC1−6アルキルエステルおよびこの塩、メタクリル酸およびこの塩、メタクリル酸のC1−6アルキルエステル、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸のC1−6アルキルアミド、アクリル酸のC2−12ジアルキルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、メタクリルアミド、メタクリル酸のC1−6アルキルアミド、メタクリル酸のC2−12ジアルキルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリラート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、エチルアクリラート、ブチルアクリラート、イソデシルメタクリラート、メチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、ブタンジオールモノアクリラート、イタコン酸、N−ビニルピロリドン(VP)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリラート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸3−スルホプロピルカリウム(SPAK)、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウム(SPMAK)、または2−(アクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムメチルスルファート(ATMS)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、アクリル酸およびHEAをコモノマーとして含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋剤が、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、N,N’−エチレンビスアクリルアミド(EBA)、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEGDA)、ポリエチレングリコールジメタクリラート(PEGDMA)、エチレングリコールジグリシジルエーテル、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリラート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノメタクリラート、エトキシ化ヒドロキシエチルメタクリラート、メトキシポリエチレングリコール(350)メタクリラート、グリシジルメタクリラート、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)、ピペラジンジアクリルアミド、グルタルアルデヒド、またはエピクロロヒドリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記希釈剤が、脱イオン水(DI)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、または水中の水混和性有機溶剤である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記発泡助剤が、アクリル酸、クエン酸、酢酸、塩酸、リン酸、カルボン酸、ホウ酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸および塩素酸から選択される有機または無機酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記発泡剤が、カルボナート、ビカルボナートもしくはこの塩またはアゾ化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物が、一価、二価および三価イオン塩から選択されるキレート剤を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記キレート剤が、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化アルミニウムから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
特性改質剤が、モノマー、ポリマーまたはポリフェノール系錯体形成剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
モノマーが、アクリル酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーが、以下、
(a)アルギナートおよびこの誘導体、キチン、キトサンおよびこの誘導体、セルロースおよびこの誘導体、デンプンおよびこの誘導体、シクロデキストリン、デキストランおよびこの誘導体、ゴム、リグニン、ペクチン、サポニン、デオキシリボ核酸、およびリボ核酸から選択される多糖類;
(b)アルブミン、ウシ血清アルブミン、カゼイン、コラーゲン、フィブリノーゲン、ゼラチンおよびこの誘導体、グリアジン、炭酸グリシンナトリウム、細菌細胞膜酵素、およびポリ(アミノ酸)から選択される、ポリマー、ポリペプチドもしくはタンパク質;または
(c)アクロレインカリウム、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸およびこの塩、(メタ)アクリラート、アクリロニトリル、エチレン、エチレングリコール、エチレンイミン、エチレンオキシド、スチレンスルホナート、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルクロリド、およびビニルピロリドンからなる群より選択される1つ以上のモノマーからなる、ホモもしくはコポリマー
の1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ポリ(アミノ酸)が、ポリプロリン、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(L−リシン)、ポリサルコシン、ポリ(L−ヒドロキシプロリン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(S−カルボキシメチル−L−システイン)およびポリ(アスパラギン酸)から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ポリフェノール系錯体形成剤が、ガロタンニン、エラジタンニン、タラガロタンニン、カフェタンニン、プロアントシアニジン、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸およびアルブチンからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
特性改質剤が、以下、
(a)天然もしくは合成高分子電解質、実効中性電荷および400Daから40kDaの範囲の分子量を有する親水性ポリマー、またはイオンと錯体を形成することができる反応基を有する分子;
(b)カルボキシメチルセルロース、アルギナート、デンプングリコラート、カルボキシメチルデンプン、デキストラン、ペクチナート、キサンタン、カラゲナン、ゲラン、ヒアルロン酸およびペクチン酸またはこれらの塩(この場合、塩は、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+およびMn2+から選択される対イオンを含む。);または
(c)ポリ(アクリル酸)もしくはこの塩、ポリ(メタクリル酸)もしくはこの塩、ポリアクリルアミド、ポリ(スチレンスルホナート)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリリシン、CARBOPOLまたはウルトラミロペクチン
の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反応基が、カルシウム、鉄またはアルミニウムイオンと錯体形成することができるカルボキシル基である、請求項30に記載の方法。
【請求項23】
段階(c)後、前記ヒドロゲルが、平衡条件下で、H、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+およびCe4+から選択される1つ以上のイオンで更に処理されることがある、請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記混合物の温度が、
(i)段階(c)中、20℃と80℃の間;
(ii)段階c)中、20℃と60℃の間;または
(iii)段階(c)中、20℃と40℃の間
で維持される、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記重合が、
(i)20℃から100℃;
(ii)55℃から75℃;または
(iii)30℃から60℃
の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記発泡剤が、固体塊として添加される;水性または有機/水性溶剤系に溶解される;有機溶剤に分散される;前記発泡剤の水への溶解を遅らせるように有機化合物で被覆される;前記発泡剤の水への溶解を遅らせるようにカプセル封入される;または超多孔質ヒドロゲル重合に関与するモノマー中に分散される、請求項4に記載の方法。
【請求項27】
前記重合が、前記ヒドロゲルのゲル化と実質的に同時に前記混合物を発泡条件に付すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒドロゲルが脱水される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒドロゲルが凍結乾燥によって脱水される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
脱水後、前記ヒドロゲルがカプセル封入される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
脱水後、前記ヒドロゲルを可塑剤と、湿分とまたは両方と接触させて、可塑化ヒドロゲルを形成する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記可塑化が、
(i)40℃より高い温度で;または
(ii)60%相対湿度より高い湿度で
行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
可塑化ヒドロゲルが、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルセルロースを含む経口投与可能なカプセルにカプセル封入される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
経口投与可能なカプセルが、可塑化ヒドロゲルと前記カプセルとを隔てる防止層を含有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
被覆剤が、カプセル封入前にヒドロゲルに塗布される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ヒドロゲルが、前記ヒドロゲルの可塑化を触媒する急速吸湿剤を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
可塑化が、
(i)40℃より高い温度で;または
(ii)60%相対湿度より高い湿度で
行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の方法によって調製される超多孔質ヒドロゲル。
【請求項39】
(i)2から50Nの間の圧縮荷重に耐えること;
(ii)前記特性改質剤を欠く超多孔質ヒドロゲルの圧縮強度より5倍大きい相対圧縮強度を有すること;
(iii)この流体膨潤状態にあるとき、1時間より長く5.0未満のpHでこの機械的完全性を維持することができること;
(iv)この流体膨潤状態にあるとき、1.0kPaと500kPaの間のヒドロゲルの破断点圧縮強度を有すること;
(v)この乾燥状態にあるとき、1μmから5000μmの範囲の平均孔径を有すること;および
(vi)8から18の範囲の平衡体積膨潤率を有すること
を特徴とする、請求項38に記載のヒドロゲル。
【請求項40】
流体膨潤状態にあるとき、1時間より長く1.0未満のpHでその機械的完全性を維持することができる、請求項39に記載のヒドロゲル。
【請求項41】
流体膨潤状態にあるとき、3時間より長く5.0未満のpHでその機械的完全性を維持することができる、請求項39に記載のヒドロゲル。
【請求項42】
生物活性剤の薬理学的に有効な用量と、請求項1に記載の方法によって調製された超多孔質ヒドロゲルとを含む固体剤形での医薬組成物。
【請求項43】
前記生物活性剤が、薬物、栄養補助食品、ビタミンまたは肥料である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記固体剤形が、錠剤、カプセル、粒子、ワックス、油、顆粒、フィルム、シート、繊維、棒または管を含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
医薬品を含む請求項1に記載の方法によって調製された超多孔質ヒドロゲルを患者に投与することを含み、前記ヒドロゲルが患者の胃に入ると膨潤し、少なくとも1時間、前記医薬品の放出を延長する、胃内停留による医薬品の長期停留方法。
【請求項46】
前記医薬品が、薬物、栄養補助食品またはビタミンである、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−542895(P2009−542895A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530490(P2009−530490)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/072892
【国際公開番号】WO2009/029087
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509071792)アボツト・レスピラトリー・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】