説明

酸化アルミニウム粉末、分散液及び被覆組成物

10〜90m2/gのBET表面積を有し、かつ結晶相として、ガンマ−酸化アルミニウム及び/又はシータ−酸化アルミニウムに加えて、少なくとも30%のデルタ−酸化アルミニウムを有する、一次粒子の凝集体の形の酸化アルミニウム粉末。この酸化アルミニウム粉末は、塩化アルミニウムを気化させ、前記蒸気を水素及び空気と一緒に燃焼させ、一次空気/二次空気の比は0.01〜2であり、前記反応混合物のバーナーからの射出速度vBは少なくとも10m/sであり、ラムダ値は1〜4であり、ガンマ値は1〜3であり、ガンマ・vB/ラムダの値は55以上であることにより製造される。前記酸化アルミニウムを有する分散液。前記分散液を有する被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウム粉末及びその製造に関する。本発明は、更に前記酸化アルミニウム粉末を有する分散液、及び前記分散液を有する被覆組成物に関する。
【0002】
微細な酸化アルミニウム粒子は、インクジェット記録媒体におけるインク受容層の成分として使用される。
【0003】
EP-A-1331102は、インクジェット媒体のインク受容層がデルタ−酸化アルミニウムを少なくとも20%有する場合に有利であることが開示されている。このインク受容層は、更に、シータ及びガンマ−酸化アルミニウムを有することができる。インク受容層がデルタ−、ガンマ−及びシータ−酸化アルミニウムの混合物を有する場合には、一方で所定の温度で水酸化アルミニウムを焼成する方法があり、他方で個々の変態の物理的混合物を提供する方法がある。か焼により得られた酸化アルミニウム粉末は比較的大きな凝集体を形成して凝固し、これは後からの分散によってもはやほとんど破壊することができないことは公知である。更に、沈殿プロセスにより得られた粉末は、多くの適用分野において許容できない不純物を含んでいることが欠点である。
【0004】
EP-A-1256548は酸化アルミニウム粒子を特許請求の範囲に記載しており、この酸化アルミニウム粒子は、非晶質であり及び/又はガンマ、デルタ及びシータ変態を含有し、かつ5〜100nmの平均一次粒子サイズを有し、かつ50〜800nmの平均凝集体サイズを有する。前記粒子を製造するための出発材料は塩化アルミニウムであり、これは酸化ガスと水との存在で500℃〜1300℃の温度での酸化プロセスで得られる。しかしながら、EP-A-1256548からは、ガンマ変態又は非晶質粉末とは異なる変態を得るためにどのようにこのプロセスを実施するかを推知することはできない。前記プロセスパラメータの広い範囲をカバーする実施例により、もっぱらガンマ−酸化アルミニウム(実施例1〜3、5、6)又は非晶質酸化アルミニウム(実施例4)が生じている。EP-A-1256548の粒子は、特にインクジェット用途のために使用することができる。
【0005】
EP-A-1264705は、デルタ−酸化アルミニウムが特にインクジェット被覆のために有利に使用できることが開示されている。しかしながら、この実施例中で使用された酸化アルミニウムC(Aluminiumoxid C(R) (Degussa))は、提供された情報に対して、デルタ−酸化アルミニウムのわずかな含有率を有するだけである。
【0006】
SpectrAl(R)51 (Cabot)は、55m2/gのBET表面積を有する酸化アルミニウム粉末であり、これは火炎加水分解により製造され、20%のデルタ変態の含有率を有し、ガンマ変態は有していない(Cabot Product Information, 2003)。この粉末は、特に、インクジェット用途のために使用することができる。
【0007】
本発明の主題は、インクジェット受容層の成分として有利に使用することができる酸化アルミニウム粉末を提供することであった。特に、前記の粉末は、インクジェット記録媒体において、良好なインク受容能力、急速な乾燥時間及び高い光沢を生じさせるのが好ましい。
【0008】
本発明の主題は、更に、前記酸化アルミニウム粉末の製造方法を提供することであった。
【0009】
本発明の主題は、更に、前記酸化アルミニウム粉末を有する分散液を提供することであった。
【0010】
本発明の主題は、更に、前記酸化アルミニウム粉末を有するコーティング組成物を提供することであった。
【0011】
本発明は一次粒子の凝集体の形の酸化アルミニウム粉末を提供し、前記酸化アルミニウム粉末は10〜90m2/gのBET表面積を有し、かつ結晶相として、ガンマ−酸化アルミニウム及び/又はシータ−酸化アルミニウムに加えて、少なくとも30%のデルタ−酸化アルミニウムを有する。
【0012】
このパーセンテージデータは結晶性成分の合計に対する。結晶相の含有率は、X線回折分析により測定される。他の相は、この分析法を用いて検出することはできない。
【0013】
本発明による酸化アルミニウム粉末は、一次粒子の凝集体の形である。前記一次粒子は多孔性ではない。前記一次粒子の表面はヒドロキシル基を有する。
【0014】
本発明による前記酸化アルミニウム粉末のBET表面積は、30〜70m2/g、特に有利に45〜65m2/gであることができる。
【0015】
本発明による酸化アルミニウム粉末のデルタ−酸化アルミニウムの含有率は、有利に70%〜95%であることができる。
【0016】
結晶性のデルタ−、ガンマ−及びシータ−酸化アルミニウム変態に加えて、本発明による前記酸化アルミニウム粉末は、非晶質酸化アルミニウム成分も含有することができる。非晶質酸化アルミニウムの含有率は、それぞれの場合に、酸化アルミニウム粉末の全量に対して、有利に5質量%より少なく、特に有利に2質量%より少ない。非晶質酸化アルミニウムの含有率は、X線回折図から推定することができる。
【0017】
40〜60m2/gのBET表面積を有し、かつそれぞれの場合に、結晶性の成分の合計に対して、80%〜90%のデルタ−酸化アルミニウム含有率を有し、かつ10〜20%のシータ−酸化アルミニウム及び/又はガンマ−酸化アルミニウムの含有率を有する、本発明による酸化アルミニウム粉末が特に有利である。
【0018】
70〜90m2/gのBET表面積を有し、かつそれぞれの場合に、結晶性の成分の合計に対して、30%〜40%のデルタ−酸化アルミニウム含有率を有し、かつ0〜5%のシータ−酸化アルミニウムの含有率を有し、かつ60〜70%のガンマ−酸化アルミニウムの含有率を有する、本発明による酸化アルミニウム粉末が更に特に有利である。
【0019】
更に、本発明による前記酸化アルミニウム粉末が8 OH/nm2より大きなヒドロキシル基密度を有する場合に利点が提供される。8 OH/nm2より大きな値では、水性媒体中への粉末の特に容易な取り込みが観察される。9〜12 OH/nm2のヒドロキシル基密度が特に有利である。
【0020】
本発明による粉末のタップ密度が10〜200g/lである場合が更に有利である。35〜135g/lの範囲は特に有利であることができる。ここでも、前記の範囲内で本発明による粉末を水性媒体中へ特に容易に取り込むことができることが観察される。
【0021】
本発明は、次の工程
− 塩化アルミニウムを気化させ、この蒸気を、キャリアガスを用いて混合室内へ運び、
− それとは別に、水素、場合により酸素濃度を高めかつ/又は予熱した空気(一次空気)を前記混合室内へ運び、引き続き
− 塩化アンモニウム蒸気、水素及び空気の混合物をバーナー中で点火し、この火炎を周囲空気から隔てられている反応室内で燃焼させ。
【0022】
− 二次空気を付加的に反応室内へ導入し、
− この固体を、次いでガス状の物質から除去し、かつ引き続き水蒸気及び場合により空気で処理し、
その際に、
− 一次空気/二次空気の比は0.01〜2であり、
− バーナーからの反応混合物の射出速度VBは少なくとも10m/sであり、
− このラムダ値は1〜4であり、
− ガンマ値は1〜3であり、かつ
− ガンマ・VB/ラムダの値は、55以上である、
の方法も提供する。
【0023】
本発明による方法は、火炎加水分解法である。
【0024】
有利に、このラムダ値は1〜2.5であり、ガンマ値は1〜2であり、ガンマ・VBの値は55〜200であることができる。
【0025】
ガンマ及びラムダは次のように定義される:
ガンマ=供給されたH2/化学量論的に必要なH2
ラムダ=供給されたO2/化学量論的に必要なO2。この関係で、ラムダは一次空気と二次空気とから導入される全酸素を有する。
【0026】
有利に、この関係で、0.15から1.5の間の一次空気/二次空気の比を選択することができる。
【0027】
本発明は、本発明による酸化アルミニウム粉末10〜60質量%を有する分散液も提供する。
【0028】
本発明による分散液の適当な分散剤は、水及び/又は有機溶剤、例えば1〜8個の炭素原子を有するアルコール、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール及びi−プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、1〜8個の炭素原子を有するケトン、特にアセトン、ブタノン及びシクロヘキサノン、エステル、特に酢酸エチル及びグリコールエステル、エーテル、特にジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン、グリコールエーテル、特にモノ−、ジ−、トリ−及びポリグリコールエーテル、グリコール、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール、アミド及び他の窒素化合物、特にジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、N−メチルピロリジン及びアセトニトリル、スルホキシド及びスルホン、特にスルホラン及びジメチルスルホキシド、ニトロ化合物、例えばニトロベンゼン、ハロゲン炭化水素、特に塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリ−及びテトラクロロエテン及び塩化エチレン、塩化フッ化炭素、5〜15個の炭素原子を有する脂肪族、環式脂肪族又は芳香族炭化水素、特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン、シクロヘキサン、ベンジン、石油エーテル、メチルシクロヘキサン、デカリン、ベンゼン、トルエン及びキシレンである。特に有利な有機分散剤は、エタノール、n−及びi−プロパノール、エチレングリコール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン及びo−、m−及びp−キシレンである。
【0029】
上記の化合物の混合物も、これらが混合可能でありかつ1つの相だけを形成する場合に、分散剤として利用できる。
【0030】
水は特に有利な分散剤である。
【0031】
本発明による分散剤は、更に、pHを調節するための物質、例えば酸、塩基又は緩衝系、分散液の安定化のための添加物、例えば塩、界面活性物質、有機溶剤、抗菌剤及び/又は殺菌剤を含有することができる。
【0032】
本発明による分散液は、本発明による酸化アルミニウム粉末を分散剤、有利に水中に前分散させ、次いで分散させることにより得ることができる。例えば、ディソルバー又は歯付きディスクが前分散のために適している。ロータ−ステータ装置、例えばUltra Turrax (IKA)又はYstral社の装置、及び他のビーズミル又は撹拌ビーズミルもこの分散のために適している。高エネルギーの導入は遊星形ニーダー/ミキサを用いて可能である。しかしながら、このシステムの有効性は、粒子の破砕のために必要な高い剪断エネルギーを導入するために、加工する混合物の十分に高い粘度と関連している。200nm未満、有利に70〜150nmの平均凝集体直径を有する分散液は、高圧ホモジナイザーを用いて得ることができる。これらの装置において、2つの前分散された懸濁液流は高圧下でノズルを介して放圧される。この2つの分散液噴流は互いに正確に衝突し、粒子自体は粉砕される。他の実施態様の場合には、同様に前分散液が高圧下に置かれるが、粒子の衝突は補強された壁部領域に対して行われる。より小さい粒子サイズが得るために、この作業を任意に繰り返すことができる。ドイツ連邦共和国特許出願番号10360766.8号の出願日2003年12月23日の明細書に記載された方法が特に有利に使用することができる。
【0033】
本発明は、インクジェット記録媒体の製造のための、及び化学機械研磨のための本発明による分散液の使用も提供する。
【0034】
本発明は、本発明による分散液及び少なくとも1種の、有利に親水性の結合剤を有する被覆組成物も提供する。
【0035】
使用できる結合剤は次のものである:ポリビニルアルコール、主鎖又は側鎖に第1級、第2級又は第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基を有する部分的又は完全にけん化され、かつカチオン化されたポリビニルアルコール。更に、前記ポリビニルアルコール同士の組合せ及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタート、シラン化されたポリビニルアルコール、スチレン/アクリラートラテックス、スチレン/ブタジエンラテックス、メラミン樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、合成樹脂、例えばポリメチルメタクリラート、ポリエステル樹脂(例えば不飽和ポリエステル樹脂)、ポリアクリラート、化工デンプン、カゼイン、ゼラチン及び/又はセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)。ポリビニルアルコール又はカチオン化されたポリビニルアルコールを有利に使用することができる。
【0036】
この被覆組成物は、更に付加的に1種又は数種の顔料、例えば炭酸カルシウム、層状ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、プラスチック顔料(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン)、シリカ(例えばコロイドシリカ、沈殿シリカ)、シリカゲル、前記シリカ化合物のカチオン化された変異体、アルミニウム化合物(例えばアルミニウムゾル、コロイド酸化アルミニウム及びそのヒドロキシ化合物、例えば擬ベーマイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、カオリン、粘土、タルク、硫酸カルシウム、炭酸亜鉛、サチン白、リトポン及びゼオライトを含有することができる。
【0037】
この被覆組成物は、有利に、10〜60質量%の酸化アルミニウム粒子の含有率を有することができる。前記含有率は15質量%より多く、特に有利に25質量%より多いことができる。
【0038】
この被覆組成物は、更に、酸化アルミニウム粉末に対して3〜150質量%の結合剤の含有率を有することができる。この含有率は10〜40質量%にあるのが有利であり、3〜15質量%にあるのが特に有利である。
【0039】
架橋剤、例えば酸化ジルコニウム、ホウ酸、メラミン樹脂、グリオキサール及びイソシアナート及び結合剤系相互の分子鎖を結合する他の分子は、結合剤系及び前記被覆の水に対する耐性を高めることができる。
【0040】
助剤、例えば蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝剤、UV吸収剤及び粘度助剤を、更に使用することができる。
【0041】
この被覆組成物は、有利に、撹拌の間に本発明による分散液を、更に場合により添加物が添加されていてもよい結合剤の溶液に添加し、かつ場合により酸化アルミニウム粉末対結合剤の所望の比及び所望の全固体含有率が達成されるまで前記混合物を希釈することにより製造することができる。この添加の順序はこの場合に重要ではない。前記混合物を、場合により所定の期間撹拌し、必要な場合に、引き続き真空に脱気する。添加物とは、例えば顔料、架橋剤、蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝剤、UV吸収剤及び粘度助剤であると解釈される。
【0042】
本発明は、インクジェット記録媒体の製造のための本発明による被覆組成物の使用も提供する。
【0043】
実施例
実施例1:AlCl3の4.5kg/hを気化させる。この蒸気を、不活性ガスを用いて混合室内へ運ぶ。これとは別個に、水素2.1Nm3/h及び一次空気5Nm3/hを前記混合室中に導入する。この反応混合物を、バーナーの中心管に供給し、点火する。バーナーからの前記反応混合物の射出速度は33.1m/sである。この火炎は、この場合、水冷された反応室内で燃焼する。二次空気15Nm3/hを更に反応空間中へ導入する。生成された粉末を、下流に配置されたフィルターで分離し、次いで空気及び水蒸気で向流で約700℃で処理する。
【0044】
実施例2〜6を実施例1と同様に実施するが、反応条件の変更を表1に記載した。
【0045】
実施例1から6の粉末の物理化学データを表1に記載する。
【0046】
実施例1〜3により、49.54及び89m2/gのBET表面積の値を有しかつ30〜90%のデルタ−酸化アルミニウムの含有率を有する本発明による酸化アルミニウム粉末が生じる。ガンマ、ラムダ、vB及びガンマ・vB/ラムダについての値及び一次空気対二次空気の比は、特許請求の範囲に記載された範囲内である。
【0047】
実施例4で得られた酸化アルミニウム粉末は、それに対して、デルタ−酸化アルミニウムの低すぎる含有率で、高すぎるBET表面積を有する。ガンマ、ラムダ及びvBの値及び一次空気対二次空気の比は、特許請求の範囲に記載された範囲内であるが、ガンマ・vB/ラムダの値は範囲外である。
【0048】
表1:出発物質及び量;酸化アルミニウム粉末の物理化学データ
【表1】

【0049】
実施例5で得られた酸化アルミニウム粉末は、高すぎるBET表面積を有し、同時にデルタ−酸化アルミニウムは検出できない。この実施例の場合に、ラムダ及びvBの値及びガンマ・vB/ラムダの値、及び一次空気対二次空気の比は、特許請求の範囲に記載された範囲内であるが、ガンマ値は範囲内ではない。
【0050】
実施例6で得られた酸化アルミニウム粉末は、デルタ酸化アルミニウムの低すぎる含有率を有する。この実施例の場合に、ガンマ、ラムダ及びvBの値及びガンマ・vB/ラムダの値は特許請求の範囲に記載された範囲内であるが、一次空気対二次空気の比は範囲内ではない。
【0051】
分散液:
分散液1: 実施例1に記載された酸化アルミニウム粉末80kg(酸化アルミニウム20質量%に相当)を、pHをプロピオン酸で3.9に調節されている脱イオン水280リットル中に、分散条件下(ローターステーターユニット)で少しずつ導入し、水中へ導入すると共に分散させた。粉末の全量を導入した後に、得られた懸濁液を約60分間強力な剪断力にさらした。粉末の導入の間に、このpH値をプロピオン酸の添加により4.0〜4.1に保持した。この分散液中の平均凝集体サイズは136nm(動的光散乱法により測定)である。
【0052】
分散液2: 前記分散液の一部を更に高圧ホモジナイザー(Ultimaizer System from Sugino Machine Ltd., model HJP-25050)で更に粉砕するが、Ultimaizer System中に設置された二噴流式チャンバー(two-jet chamber)の代わりに三噴流式チャンバー(three-jet chamber)を備えている。(このUltimaizer Systemは高圧ポンプとしてだけ使用する。)この三噴流チャンバーは高圧下にある前分散液を3つの部分流に分け、この部分流のそれぞれを0.25mmの直径を有するダイアモンド製ノズルを介して放圧させる。極め高速で噴射されるこの3つの噴散液噴流は衝突点で出会い、その際、達成すべき分散/粉砕効果が達成される。この衝突点は、サファイアのビーズにより四面体に取り囲まれている(3つの基本ビーズは8mm、上側ビーズは10mm)。全ての3つの液体の噴流は1つの共通の仮想平面上にあり、隣接する噴流に対する角度はそれぞれ120°である。250MPaが、酸化アルミニウム前分散液の粉砕のための圧力として選択される。この分散液は次に通常の熱交換器を用いて問題なく冷却することができる。この分散液中の平均凝集体サイズは51nm(動的光散乱法により測定)である。
【0053】
着色ペイント
着色ペイントA: 12.26%の固体含有率を有する水性ポリビニルアルコール溶液(PVA Mowiol 40-88, Clarian)を最初にガラスビーカーに導入し、一定量の水を添加して、分散液2の添加後に、34質量%の固体含有率を有する着色ペイントが得られる。この場合、水が添加されているポリビニルアルコール溶液にそれぞれの分散液が、毎分500回転(500rpm)でディソルバーディスクを用いて撹拌しながら添加される。添加が完了した場合に、この混合物を引き続き500rpmで更に30分間撹拌する。その後で、前記着色ペイントをデシケータ及び水流ポンプを用いて脱気する。
【0054】
着色ペイントB: 着色ペイントAと同様であるが、水性ポリビニルアルコール溶液(PVA Mowiol 26-98, Clariant)は13.30質量%の固体含有率を有する。この着色ペイントの固体含有率は26質量%に調節される。
【0055】
着色ペイントC: 着色ペイントAと同様。この着色ペイントの固体含有率は26質量%に調節される。
【0056】
これらの着色ペイントは、極めて低い粘度を特徴とする。
【0057】
インク受容媒体
着色ペイントA及びBを、艶消しインクジェット紙(Zweckform社, no. 2576)に24マイクロメーターのウェットフィルムスパイラルブレードを用いて適用する。ヘアドライヤーで乾燥を行う。この被覆紙を、次いで、実験室用カレンダーを用いて50℃で10barの圧力下で圧延した。着色ペイントAについて得られた適用速度は12g/m2であり、Bについては15g/m2である。この被覆紙を、プレミアム光沢写真紙、1440dpi、双方向、校正Epson、ガンマ(D):1.8の設定で内部テストイメージを用いてEpson Stylus Color 980で印刷する。
【0058】
着色ペイントCは100マイクロメートルウェットフィルムスパイラルブレードを用いて、100マイクロメートルの厚さの未処理のポリエステルフィルム(Benn社)に適用される。ヘアドライヤーで乾燥を行う。この被覆フィルムを、写真品質光沢フィルム、1440dpi、校正Epson、ガンマ(D):1.8の設定で内部テストイメージを用いてEpson Stylus Color 980で印刷する。
【0059】
前記着色ペイントを用いて得られた視覚的な光沢、接着及びテストイメージの印象は、良好〜極めて良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜90m2/gのBET表面積を有し、かつ結晶相として、ガンマ−酸化アルミニウム及び/又はシータ−酸化アルミニウムに加えて、少なくとも30%のデルタ−酸化アルミニウムを有することを特徴とする、一次粒子の凝集体の形の酸化アルミニウム粉末。
【請求項2】
BET表面積は30〜70m2/gであることを特徴とする、請求項1記載の酸化アルミニウム粉末。
【請求項3】
デルタ−酸化アルミニウム含有率が70%〜95%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の酸化アルミニウム粉末。
【請求項4】
非晶質酸化アルミニウムを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の酸化アルミニウム粉末。
【請求項5】
BET表面積が40〜60m2/gであり、デルタ−酸化アルミニウムの含有率が80%〜90%であり、かつシータ−酸化アルミニウム及び/又はガンマ−酸化アルミニウムの含有率が10〜20%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の酸化アルミニウム粉末。
【請求項6】
BET表面積が70〜90m2/gであり、デルタ−酸化アルミニウムの含有率が30%〜40%であり、かつシータ−酸化アルミニウムの含有率が0〜5%であり、ガンマ−酸化アルミニウムの含有率が60〜70%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の酸化アルミニウム。
【請求項7】
タップ密度が10〜200g/lであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1光輝シアノ酸化アルミニウム。
【請求項8】
次の工程
− 塩化アルミニウムを気化させ、この蒸気を、キャリアガスを用いて混合室内へ運び、
− それとは別に、水素、場合により酸素濃度を高めかつ/又は予熱した空気(一次空気)を前記混合室内へ運び、引き続き
−塩化アンモニウム蒸気、水素及び空気の混合物をバーナー中で点火し、この火炎を周囲空気から隔てられている反応室内で燃焼させ、
− 二次空気を付加的に反応室内へ導入し、
− この固体を、次いでガス状の物質から除去し、かつ引き続き水蒸気及び場合により空気で処理し、
その場合に
− 一次空気/二次空気の比は0.01〜2であり、
− バーナーからの反応混合物の射出速度VBは少なくとも10m/sであり、
− このラムダ値は1〜4であり、
− ガンマ値は1〜3であり、かつ
− ガンマ・VB/ラムダの値は、55以上である、
を特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の酸化アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の酸化アルミニウム粉末10〜60質量%を有する分散液。
【請求項10】
分散液中の平均凝集体直径が200nmより低いことを特徴とする、請求項9記載の分散液。
【請求項11】
インクジェット記録媒体の製造のため及び化学機械研磨のための請求項9又は10記載の分散液の使用。
【請求項12】
請求項9又は10記載の分散液及び少なくとも1種の結合剤を有する被覆組成物。
【請求項13】
結合剤の含有率が、酸化アルミニウム粉末に対して3〜150質量%であることを特徴とする、請求項12記載の被覆組成物。
【請求項14】
インクジェット記録媒体の製造のための、請求項13記載の被覆組成物の使用。

【公表番号】特表2008−524109(P2008−524109A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547480(P2007−547480)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056936
【国際公開番号】WO2006/067127
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】