説明

酸化エチレン製造用触媒および該触媒を用いた酸化エチレンの製造方法

【課題】高い活性および高い選択性で酸化エチレンを製造し得る触媒およびこれを用いたエチレンの分子状酸素含有ガスによる気相酸化による酸化エチレンの製造方法を提供する。
【解決手段】KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収スペクトルが実質的にゼロであるα−アルミナを主成分とする担体に銀を担持してなる酸化エチレン製造用触媒およびその使用による酸化エチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化エチレン製造用触媒および該触媒を用いた酸化エチレンの製造方法に関し、詳しくは、触媒活性および選択性に優れた酸化エチレン製造用触媒、ならびに該触媒の存在下にエチレンを分子状酸素により気相接触酸化して酸化エチレンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化して酸化エチレンを製造する際に用いる酸化エチレン製造用触媒については、従来から数多くの文献が紹介されている。
【0003】
例えば、α−アルミナ担体の外表面上および気孔の表面上に非晶質シリカの被覆層を設けた担体に銀を担持した触媒が開示されている(特許文献1)。また、元素周期律表のIIIa−VIIaおよびIIIb−Vb族の第4、5および6周期の元素(例えばチタン、スズ、ハウニウムなど)からなる群より選ばれた1種あるいは2種以上の化合物を含むα−アルミナ担体に、銀を担持した触媒も開示されている(特許文献2)。さらに、高純度α−アルミナ、アルカリ土類金属酸化物、ケイ素酸化物および酸化ジルコニウムを含む担体を用いた触媒が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平2−194839号公報
【特許文献2】特開平4−363139号公報
【特許文献3】特開平6−47278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載の触媒は、触媒性能に優れ、工業的に十分満足し得るものである。しかしながら、酸化エチレンの生産規模は非常に大きく、選択率が僅かに向上するだけでも、原料であるエチレンを著しく節約できるので、その経済的効果が高いとの事情から、より優れた触媒性能を有する酸化エチレン製造用触媒の開発が望まれている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、高い活性および高い選択性で酸化エチレンを製造し得る酸化エチレン製造用触媒を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、触媒の存在下にエチレンを分子状酸素により気相接触酸化して、高い収率で酸化エチレンを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸化エチレン製造用触媒および該触媒に用いる担体について鋭意検討した結果、KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収ピークが実質ゼロであるα−アルミナを主成分とする担体を用いて調製された酸化エチレン製造用触媒は、上記波数領域の赤外吸収スペクトルにおいて実質的に赤外吸収ピークが認められるα−アルミナを主成分とする担体を用いて調製された酸化エチレン製造用触媒に比べて、エチレンに対する活性が高くかつ酸化エチレンの選択率が高いことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、上記諸目的は、下記(1)〜(4)により達成される。
【0009】
(1) KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収スペクトルが実質的にゼロであるα−アルミナを主成分とする担体に銀を担持してなる酸化エチレン製造用触媒。
【0010】
(2) 該担体の波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収スペクトルのピーク高さが0.1以下である前記(1)に記載の触媒。
【0011】
(3) 該担体のSiO含有率が0.1〜2質量%である前記(1)または(2)に記載の触媒。
【0012】
(4) 前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の触媒の存在下にエチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化することを特徴とする酸化エチレンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記触媒用担体を用いることで、高活性かつ高選択性の触媒を得ることができる。また、本発明の酸化エチレン製造用触媒を用いて気相接触酸化反応を行うことで、高い収率で酸化エチレンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による酸化エチレン製造用触媒は、KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収ピークが実質ゼロであるα−アルミナ担体を用いることを特徴とする。具体的には、赤外吸収スペクトルが実質的に図1に示される赤外吸収スペクトルを示す担体を用いることを特徴とする。
【0015】
本発明において、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収ピークが実質ゼロである担体とは、KBr錠剤法で測定された担体の赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域において赤外吸収ピークを実質的に認めることができないこと、すなわち、当該スペクトル領域において明確な赤外吸収ピークが存在しないことを意味する。詳しくは、当該スペクトル領域における吸光度のピーク面積が実質上ゼロであることを意味する。更に詳しくは、測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150cm−1の吸光度と3,800cm−1の吸光度を直線で結んだ場合の当該直線と、波数3,150〜3,800cm−1の領域の赤外吸収スペクトルの線が実質的に重なることを意味する。
【0016】
本発明における担体の赤外吸収スペクトルは、従来公知のKBr錠剤法で測定される。具体的には、触媒用担体を磨り潰して粉末状にし、該担体1質量部とKBr75質量部を均−に混合した後、プレスしたものについて赤外吸収スペクトルを測定する。
【0017】
前記担体の波数3,150〜3,800cm−1の領域の赤外ピークが何に由来するかは正確には不明であるが、SiOHに由来するものと推定している。
【0018】
本発明において赤外吸収ピークが「実質ゼロ」とは、上記赤外吸収ピークの高さが0.1以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下のことをいう。
【0019】
ここで、ピーク高さの求め方は、つぎのとおりである。
【0020】
図1に示すグラフにおいて、赤外吸収スペクトル(図中、太い実線)において、波数3,150cm−1の時の吸光度をX、波数3,800cm−1の時の吸光度をYとし、XとYを直線(図中、破線)で結ぶ。
【0021】
波数3,150〜3,800cm−1の吸収スペクトルのうち、最も吸光度の高い部分をAとし、Aからの垂線(図中、細い実線)を下ろして上記の直線と交差する点をBとする。
【0022】
A−Bを本発明におけるピーク高さとする(すなわち、点Aの吸光度−点Bの吸光度=ピーク高さ)。
【0023】
ピーク高さを求める際、吸収スペクトルのバックグラウンド補正はしない。
【0024】
本発明の酸化エチレン製造用触媒に用いるα−アルミナを主成分とする担体については、KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域の赤外吸収ピークが実質ゼロであることを除けば、特段の制限はないが、特に以下の組成および物性を有する担体が好ましい。
【0025】
本発明で用いるα−アルミナを主成分とする担体の成分の一例としては、α−アルミナは90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属(いずれも酸化物換算)0〜5質量%、好ましくは0.01〜4質量%および遷移金属酸化物を0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%からなるものを挙げることができる。
【0026】
前記担体中のSiOの含有量は0.1〜2質量%、特に0.3〜1.5質量%が好ましい。
【0027】
なお、上述した担体の組成や各成分の含有量は、蛍光X線分析法を用いて決定されうる。
【0028】
本発明で使用する担体の形状については特に制限はなく、リング状、球状、円柱状など、任意の形状を選択することができる。また、その大きさ(平均相当直径)は、通常、3〜20mmであり、好ましくは5〜10mmである。
【0029】
本発明で使用する担体のBET(Brunauer−Emmet−Teller)比表面積は、0.03〜10m/g、好ましくは0.5〜5m/g、より好ましくは1.0〜2.5m/gの範囲にあるものがよい。比表面積が低すぎると触媒成分の高分散担持が困難となる。逆に、比表面積が高すぎると、担体の微小細孔が多くなり、該担体を用いて調製した触媒において、生成物である酸化エチレンの逐次酸化が促進される。
【0030】
本発明で使用する担体の細孔容積は、0.25〜0.55cc/g、好ましくは0.3〜0.5cc/g、より好ましくは0.35〜0.45cc/gにあるのがよい。
【0031】
本発明で使用する担体の平均細孔径は、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜3μm、より好ましくは0.3〜1.5μmの範囲にあるのがよい。平均細孔径が大きすぎると、実用的な担体の強度が得られない。逆に、平均細孔径が小さすぎると、生成ガスの滞留により生成物である酸化エチレンの逐次酸化が促進されるおそれがある。
【0032】
本発明で使用する担体の吸水率は、10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%の範囲にあるのがよい。吸水率が上記範囲より低すぎると触媒成分の担持が困難になり、逆に、吸水率が上記範囲より高すぎると実用上十分な強度が得られない。
【0033】
本発明の酸化エチレン製造用触媒は、担体として上記赤外吸収スペクトルを示す担体を用いる点を除けば、酸化エチレン製造用触媒の調製において一般に採用されている方法にしたがって調製することができる。
【0034】
例えば、銀を形成させるための銀化合物単独、または銀化合物および銀錯体を形成するための錯化剤、もしくは更に必要に応じて用いる反応促進剤を含む水溶液を調製し、これに担体を含浸させた後、乾燥し、焼成する。この乾燥は空気、酸素ガス、または窒素などの不活性ガス雰囲気中で80〜120℃の温度で行うのが好ましい。焼成は、空気、酸素ガス、または窒素などの不活性ガス雰囲気中で150〜700℃、特に200〜600℃の温度で行うのが好ましい。なお、この焼成は、1段階または2段階以上で行ってもよい。中でも、好ましくは、1段階目を空気雰囲気中で150〜250℃で0.1〜10時間、2段階目を空気雰囲気中で250〜450℃で0.1〜10時間処理したものが好適である。さらに好ましくは、3段階目を窒素、ヘリウム、アルゴンなどから選択される不活性ガス雰囲気中で450〜700℃で0.1〜10時間で処理したものが好ましい。
【0035】
上記銀化合物の代表例としては、硝酸銀、炭酸銀、シュウ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、ク工ン酸銀、ネオデカン酸銀などを挙げることができる。鎖化剤の代表例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどを挙げることができる。
【0036】
反応促進剤の代表例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムのアルカリ金属、タリウム、硫黄、クロム、モリブデン、タングステンなどを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。反応促進剤は、担体に水溶液を含浸させる前段階で、銀アンミン錯体水溶液に溶解させて同時に含浸させても、あるいは銀を担持後に担持させてもよい。
【0037】
本発明の酸化エチレン製造用触媒としては、触媒成分としての銀とセシウムなどの反応促進剤とを担持したものが好ましい。銀および反応促進剤の担持量については特に制限はなく、酸化エチレンの製造に有効な量を担持すればよい。例えば銀の場合、その担持量は触媒の質量基準で1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。また、反応促進剤の担持量は、触媒の質量基準で、通常、0.001〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.7質量%である。
【0038】
本発明における酸化エチレンの製造方法は、触媒として本発明の酸化エチレン製造用触媒を使用する点を除けば、従来から一般に用いられている方法によって行うことができる。
【0039】
具体的には、例えば、エチレン0.5〜40容量%、好ましくは5〜30容量%、分子状酸素3〜10容量%、好ましくは4〜9容量%、炭酸ガス1〜30容量%、好ましくは1〜20容量%、残部が窒素、アルゴン、水蒸気などの不活性ガス、メタン、エタンなどの低級炭化水素類からなり、さらに反応抑制剤としての二塩化エチレン、塩化ジフェニルなどのハロゲン化物を0.1〜10ppm(容量)、好ましくは0.5〜5ppm(容量)含む原料ガスを1,000〜30,000hr−1(STP)、好ましくは3,000〜8,000hr−1(STP)の空間速度、2〜40kg/cmG、好ましくは10〜30kg/cmGの圧力、150〜300℃、好ましくは180〜280℃の温度で上記の酸化エチレン製造用触媒に接触させればよい。
【0040】
本発明において使用される分子状酸素含有ガスとしては空気、酸素および富化空気が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を、さらに具体的に説明する。また、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。さらに、本実施例において、各種パラメータの測定は以下の手法により行われた。
【0042】
<担体の細孔分布スペクトル/細孔容積/平均細孔直径の測定>
水銀圧入法により測定した。具体的には、200℃にて少なくとも30分間脱気した担体をサンプルとし、測定装置としてオートポアIII9420W(株式会社島津製作所製)を用い、1.0〜60,000psiaの圧力範囲及び60個の測定ポイントで細孔分布スペクトル、細孔容積、および平均細孔直径を得た。
【0043】
<担体中のシリカ含有量の測定>
蛍光X線分析法により測定した。
【0044】
<担体の比表面積の測定>
担体を粉砕した後、0.85〜1.2mmの粒径に分級したもの約0.2gを正確に秤量した。秤量したサンプルを200℃にて少なくとも30分間脱気し、BET(Brunauer−Emmet−Teller)法により測定した。
【0045】
<担体の吸水率の測定>
日本工業規格(JIS R 2205(1998年度))に記載の方法に準拠して、以下の手法により測定した。
【0046】
a)破砕前の担体を、120℃に保温した乾燥機中に入れ、恒量に達した際の質量を秤量した(乾燥質量:W1(g))。
【0047】
b)上記a)で秤量した担体を水中に沈めて30分間以上煮沸した後、室温の水中にて冷却し、飽水サンプルとした。
【0048】
c)上記b)で得た飽水サンプルを水中から取り出し、湿布ですばやく表面を拭い、水滴を除去した後に秤量した(飽水サンプル質量:W2(g))。
【0049】
d)上記で得られたW1およびW2を用い、下記数式1に従って、吸水率を算出した。
【0050】
【数1】

【0051】
なお、実施例および比較例に記載する転化率および選択率は、下記数式2および数式3により算出されたものである。
【0052】
【数2】

【0053】
なお、本実施例においては、以下の条件にて担体の赤外吸収スペクトルを測定した。
【0054】
<赤外吸収スペクトル測定条件>
(1) KBr300mg、測定する担体4mgをメノウ乳鉢で粉砕しながら十分に混合する。
【0055】
(2) 混合粉体120mgを秤量し、錠剤成型機にセットし、真空ポンプで3分間脱気する。
【0056】
(3) ついで、600kg/cmGの圧力をかけながら3分間脱気する(出来上がったサンプルは、直径10mmの円盤状)。
【0057】
(4) 円盤状のサンプルを赤外吸収スペクトル測定装置にセットし、110℃で1時間加熱する。
【0058】
(5) サンプルを室温に戻してから積算回数100回、分解能4カイザーでサンプルの赤外吸収スペクトルを測定する(使用した赤外吸収スペクトル測定装置:VARIAN社製EXCALIBUR Series)。
【0059】
実施例1
外径8mm、内径4mm、長さ8mmのα−アルミナを主成分とする担体(a)(SiO0.5質量%)1リットルに蒸留水1リットルを加え、常圧下に30分間煮沸洗浄した後、洗浄液を除去し、蒸留水で洗浄した。さらに、この煮沸洗浄を2回繰り返した後、120℃で3時間乾燥した。
【0060】
シュウ酸銀52.0g、硝酸セシウム0.37gおよび蒸留水100mlを均一に混合してスラリーを調製し、これを水浴中で冷却しながらエチレンジアミン25mlを加え、銀含有溶液を調製した。沸騰した水浴上に設置した蒸発皿に、予め100℃に加熱した担体(a)を200g投入し、ついで銀含有溶液を加えて撹拌しながら蒸発乾固した。ついで、熱風乾燥機を用いて空気気流中で400℃で20分加熱処理を行なった。さらに、これを窒素雰囲気中にて550℃で3時間加熱処理し、触媒(A)を得た。触媒中の銀含有率は15質量%であった。
【0061】
使用した担体(a)について、赤外吸収スペクトルを測定したところ、波数3,150〜3,800cm−1の範囲には赤外吸収スペクトルは認められなかった。担体(a)の赤外吸収スペクトルを図2に示した。また、担体(a)の物性を表1にまとめた。
【0062】
実施例2〜4
実施例1において、担体(a)の代わりに、担体(b)、担体(c)および担体(d)をそれぞれ用い、硝酸セシウムの添加量をそれぞれ0.43g、0.40gおよび0.67gとした以外は、実施例1と同様にして触媒(B)、触媒(C)および触媒(D)を得た。触媒(B)に使用した担体(b)、触媒(C)に使用した担体(c)および触媒(D)に使用した担体(d)の物性を表1にまとめた。
【0063】
比較例1
実施例1において、担体(a)の代わりに、担体(e)を用いた以外は、実施例1と同様にして触媒(E)を得た。使用した担体(e)についての赤外吸収スペクトルを測定したところ、波数3,150〜3,800cm−1の範囲に赤外吸収ピークを認めた。担体(e)の赤外吸収スペクトルを図3に示した。また、担体(e)の物性を表1にまとめた。
【0064】
比較例2〜4
実施例2〜4において、担体(b)の代わりに担体(f)、担体(c)の代わりに担体(g)および担体(d)の代わりに担体(h)をそれぞれ用いた以外は、実施例2、実施例3および実施例4と同様にして触媒(F)、触媒(G)および触媒(H)を得た。触媒(F)に使用した担体(f)、触媒(G)に使用した担体(g)および触媒(H)に使用した担体(h)の物性を表1にまとめた。
【0065】
実施例5〜6
実施例1において、担体(a)の代わりに、担体(i)および担体(j)をそれぞれ用い、硝酸セシウムの添加量をそれぞれ0.25gおよび0.20gとした以外は、実施例1と同様にして触媒(I)および触媒(J)を得た。触媒(I)に使用した担体(i)および触媒(J)に使用した担体(j)の物性を表1にまとめた。
【0066】
実施例7
実施例1〜6および比較例1〜4にて得られた(A)〜(J)をそれぞれ粉砕し、600〜850メッシュに篩い分け、その1.2gを内径3mm、管長600mmのステンレス銅製の反応管に充填し、下記条件下にてエチレンの気相酸化反応をそれぞれ行なった。エチレン転化率が10%のときの選択率および反応温度を表2に示した。
【0067】
<エチレンの気相酸化反応条件>
空間速度:6,000hr−1
反応圧力:20kg/cm
原料ガス:エチレン23容量%、酸素7.8容量%、二酸化炭素7容量%、
エチレンジクロリド2.0ppmおよび残余(メタン、窒素、
アルゴンおよびエタン)。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明で使用されるα−アルミナを主成分とする担体の赤外吸収ピーク高さの求め方に用いられるグラフである。
【図2】実施例1で酸化エチレン製造用触媒(A)に使用した担体(a)の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】比較例1で酸化エチレン製造用触媒(E)に使用した担体(e)の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペクトルにおいて、波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収スペクトルが実質的にゼロであるα−アルミナを主成分とする担体に銀を担持してなる酸化エチレン製造用触媒。
【請求項2】
該担体の波数3,150〜3,800cm−1の領域における赤外吸収スペクトルのピークの高さが0.1以下である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
該担体のSiO含有率が0.1〜2質量%である請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒の存在下にエチレンを分子状酸素含有ガスにより気相酸化することを特徴とする酸化エチレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−86938(P2008−86938A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272311(P2006−272311)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】