説明

酸化ジルコニウム面を採用する可動ベアリング人工脛骨基部器具

UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)等、生体適合性のあるポリマー材料の非荷重支持面との相互作用のためのインプラントの非荷重支持領域上に拡散硬化表面を備えた、整形外科用インプラント。該整形外科用インプラントは、ポリマー脛骨インサートの開口部との相互作用のためのプロテーゼの脛骨トレイの支柱上に酸化ジルコニウムの被膜が形成される、可動ベアリング人工膝関節及びシステムである。整形外科用インプラントの拡散硬化表面は、強化された支柱をもたらし、また、ポリマーインサートの開口部内の摩耗の低減をもたらす。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年2月11日に出願された米国特許出願第10/073705号の一部継続出願である。
【0002】
本発明の分野は、一般に、整形外科用人工器具に関し、より詳細には、拡散硬化表面を採用する可動ベアリング人工膝関節器具に関する。本発明は、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)等、生体適合性のあるポリマー材料との相互作用のためのインプラントの非荷重支持面/非接合面上に拡散硬化表面を備えた、膝インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1及び特許文献2(参照により本願に含まれるものとする)では、プロテーゼ(人工器官)、特に金属製の整形外科用インプラントの一部分で、酸化、窒化、炭化、又は炭窒化ジルコニウムの薄い被膜が、高い摩耗率に曝される荷重支持面に特に有用であることが認められた。記載されている一例は、超高分子量ポリエチレン等、より軟質の材料で形成されることの多い寛骨臼カップ内の反支持面に係合する、人工股関節システムの大腿骨ヘッドである。特許文献1及び特許文献2では、更に、組織と接触する整形外科用インプラントの非荷重支持面上の酸化及び窒化ジルコニウム被膜が、金属製プロテーゼと体組織との間に金属イオンの放出及びインプラントの腐食を防ぐ防壁をもたらすことも認められた。
【0004】
酸化又は窒化ジルコニウム被膜は、関節の1つもしくは複数の表面が、対合する接合面に関節接合し、もしくは該接合面に接して平行移動又は回転する、人工関節の関節接合面で使用するのに理想的に適した、薄い高密度/低摩擦/耐摩耗性の生体適合性面をプロテーゼにもたらす。酸化又は窒化ジルコニウムは、膝関節の大腿骨及び脛骨(メニスカルベアリング)表面の関節接合面で用いることができる。
【0005】
特許文献3(参照により本願に含まれるものとする)は、更に、特にニオブ、チタン、及びジルコニウム系合金を含め、医療インプラント用の材料として使用するのに適した生体適合性のある金属性の金属並びに合金の拡散硬化面の形成について論じている。そして、特許文献3は、金属及び合金を酸化又は窒化させて酸化物又は窒化物の微細な分散体を提供する様々な方法を論じている。
【0006】
しかし、特許文献3は、第2のプロテーゼの非荷重支持面と接触するプロテーゼの非荷重支持面に酸化ジルコニウム面等の拡散硬化面を有する人工膝関節の問題には対処していない。特許文献1〜3は、荷重支持接合面が体組織に接して、又は別の荷重支持接合面に接して関節接合される場所に酸化ジルコニウム面を有する、関節接合する荷重支持接合面しか扱っていない。
【0007】
特許文献4及び特許文献5(ともに参照により本願に含まれるものとする)は、遠位に延びるステムと、近位の脛骨プラトーと、該脛骨プラトーへと延びる円環形の陥凹部とを有する脛骨トレイを含む、脛骨近位端内に埋め込むための整形外科用膝コンポーネントを開示している。該陥凹部は、回転軸の周りにほぼ一定の曲率半径を有する。脛骨トレイによって支持されるベアリングは、大腿骨コンポーネントと係合するための関節状支持面を有する。該ベアリングは、陥凹部へと延びる円環形の突出部を有する。突出部及び陥凹部によって、ベアリングが脛骨プラトーに対して回転軸周りで旋回運動できるようになる。
【0008】
特許文献6(参照により本願に含まれるものとする)は、脛骨コンポーネントに、直立した支柱と、その上端に設けられたキャップとが含まれる、可動ベアリング人工膝関節を開示している。該キャップには、支柱から横方向外側に延びるリップが含まれていて、該キャップを概ね、支柱が受けられるA/P方向に主軸をもった楕円形にしている。アンダーカットキャビティは、それに沿って支柱をA/P方向に大きく運動させる長さと、支柱をM/L方向にはごくわずかしか運動させない幅とを有する。該インサートには、また、その中でリップの隣接部分を受け取る、キャビティの上側部分の周りを延びる上部カットアウトも含まれる。
【0009】
可動ベアリング人工膝関節の摩耗の問題が、脛骨トレイの支柱とポリマーインサートとの境界面に存在することがわかっている。一般に、可動ベアリング人工膝関節は、前方から後方への平行移動及び回転、回転のみ、平行移動のみ、又は相対運動なしを含めて、脛骨インサートと脛骨トレイ部分との間で可能ないくつかの異なる相対運動を可能にする、ポリマー脛骨インサートと協働する脛骨トレイ上の中央の支柱を使用する。関節接合の間に、中央のポリマー支柱は、大腿骨コンポーネントのカムと接触する。脛骨トレイ支柱とポリマーインサートとの接触域は、ともに非荷重支持面であるが、人工膝関節の関節接合がポリマーインサート及び脛骨トレイ支柱に凝着摩耗及び剥離摩耗を引き起こすことがわかっている。支柱からポリマーインサート上に及ぼされる摩耗は、望ましくないポリエチレン屑を生み出す。
【0010】
従って、第2のプロテーゼ部分の別の非荷重支持面との接触が起こるインプラントの非荷重支持面上に、低摩擦で耐摩耗性の高い強化された面をもたらす、人工インプラントが必要とされている。更に、ポリマーインサート及び中央の支柱の摩耗を低減し、かつ支柱の強度を改善するために、可動ベアリング人工膝関節の支柱が、拡散硬化面を採用することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第5037438号明細書
【特許文献2】米国特許第5180394号明細書
【特許文献3】米国特許第5415704号明細書
【特許文献4】米国特許第6123728号明細書
【特許文献5】米国特許第6428477号明細書
【特許文献6】米国特許第6296666号明細書
【特許文献7】米国特許第5169597号明細書
【特許文献8】米国特許第2987352号明細書
【特許文献9】米国特許第4671824号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、第2の人工器具の別の非荷重支持面との接触が起こる人工器具の非荷重支持面上に、低摩擦で耐摩耗性の高い強化された面をもたらす、新規の人工インプラントを提供する。非荷重支持面の接触域は、荷重支持面が受ける荷重支持の高い応力レベル及び摩耗率には曝されないが、第2の人工器具と接触するプロテーゼの非荷重支持面上で拡散硬化被覆面を採用することによって利益を得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に、本発明は、可動ベアリング膝関節システムを対象とする。該膝関節システムには、近位面と遠位面とを有する脛骨トレイが含まれる。該遠位面は、外科的に切断された患者の脛骨近位端上に外科的に埋め込まれるように適合されている。該システムには、また、大腿骨コンポーネントに係合するように成形された近位面を有する脛骨インサートも含まれる。インサートの遠位面は、脛骨トレイの近位面に接して嵌合し、かつ関節接合する。脛骨トレイは、該トレイがインサートと連通する該トレイの少なくとも一部分に沿って、拡散硬化表面を有する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、可動ベアリング膝関節システムを対象とする。該膝関節システムには、近位面と遠位面とを備えた脛骨トレイが含まれており、該トレイは、外科的に切断された患者の脛骨近位端上に外科的に埋め込まれるように適合されている。脛骨トレイは、該トレイの近位面から上に延びる支柱を有する。該膝関節システムには、また、大腿骨コンポーネントに係合するように成形された近位面を備える脛骨インサートも含まれる。更に、該脛骨インサートは、脛骨トレイの近位面に接して嵌合し、かつ関節接合する、遠位面を有する。
【0014】
脛骨インサートが、超高分子量ポリエチレン等、生体適合性のあるポリマー材料から形成されることが好ましい。インサートの近位面には、大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を設けることができる。
【0015】
脛骨トレイの支柱は、該支柱の少なくとも一部分に沿って拡散硬化表面を有する。支柱全体が拡散硬化表面を有することが好ましい。ただし、拡散硬化表面は、支柱とインサートとが接触する部分を覆うこともできる。一実施形態では、支柱の拡散硬化表面は、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜である。更に、支柱の拡散硬化表面を、また、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルから成る群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜で形成することもできる。
【0016】
支柱は、脛骨トレイの一部として一体に形成される。或いは、支柱のすべて又は一部をトレイから分離可能にすることもできる。支柱上のソケットに嵌合する係止プラグ部材を、支柱とともに使用することができる。可動ベアリング膝関節システムの脛骨トレイの遠位面には、患者の脛骨近位端に移植するためのステムを設けることができる。更に、脛骨トレイの遠位面には、埋込み向上のために患者の脛骨近位端に移植するための少なくとも1つのスパイクを設けることもできる。脛骨トレイの近位面が、該トレイの近位面の少なくとも一部分に沿って拡散硬化表面を有することが好ましい。一実施形態では、トレイの拡散硬化表面は、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜を有する。被膜は、表面のすべて又は一部分の上に形成することができる。更に、トレイの拡散硬化表面を、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルから成る群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜で形成することもできる。
【0017】
他の実施形態では、脛骨インサートは、該インサートの遠位面上のスロットと、該スロットと連通する、該インサートの近位面上の開口部とを有する。係止プラグ部材は、インサートの近位面から開口部を通じて支柱に到達することができる。スロットには、インサートの近位面と連通する略円筒形の部位又は他の形状の部位を設けることができる。
【0018】
インプラントの製作の間に、支柱の拡散硬化表面の被膜の厚さを、荷重支持面の拡散硬化表面の被膜の厚さとは異なるものにすることができる。
【0019】
以下に記載する例示的な諸実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することによって、本発明のさらなる理解を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書で使用する単数形の語は、1つ又は複数を意味することがある。本明細書の特許請求の範囲で、「含む」と併せて使用するときには、単数形の語は、1つ又はそれ以上を意味することがある。本明細書で使用する「他の」は、少なくとも第2のもの又はそれ以上を意味することがある。
【0021】
本明細書で使用する「拡散硬化表面」は、ある特定の原位置(in−situ)酸化又は窒化プロセスによって形成される、あるタイプの耐摩滅表面として定義される。この表面は、それがその上に位置する基材に対して酸化又は窒化されることを特徴とする。それは、酸素又は窒素がそれによって表面から内部基材ドメインへと拡散する、原位置酸化又は窒化プロセスによって酸化又は窒化される。下にある基材材料に関して使用されるとき、それは、「表面硬化した」と同義である。やはり同義として、表面酸化又は窒化層は、また、「拡散接合した」とも呼ばれる。本明細書で使用する用語、酸化又は窒化ジルコニウム面は、拡散硬化面の一例であり、他の金属又は金属合金が、また、酸化又は窒化によって拡散硬化面を形成することもできる。人工器具上の拡散硬化面の様々な応用及び実施形態に関する本明細書のすべての議論では、酸化面に関する議論が同様に窒化面にも当てはまることを理解すべきである。
【0022】
本明細書で使用する「金属性」は、純金属又は合金の場合がある。
【0023】
本明細書で使用する「窒化」は、それによって基材材料、好ましくは金属が、窒素と化合して対応する窒化物を形成する化学プロセスとして定義される。
【0024】
本明細書で使用する「ジルコニウム合金」は、約10重量%よりも多くの量のジルコニウムを含有する任意の金属合金として定義される。従って、ジルコニウムが約10重量%以上の微量成分である合金は、本明細書では「ジルコニウム合金」と見なされる。同様に、他のいずれか指定された金属の「金属合金」(例えば、ハフニウム合金又はニオブ合金;これらの場合、指定された金属は、それぞれハフニウム及びニオブである)は、指定された金属を約10重量%よりも多くの量で含有する任意の合金として定義される。
【0025】
本発明は、酸化ジルコニウムや窒化ジルコニウム等、拡散硬化された酸化物又は窒化物表面を有する整形外科用インプラントを提供する。より一般的には、チタン、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、及び/もしくはタンタルの金属又は金属合金を基材材料として使用して、拡散硬化された適切な酸化物表面層を形成することができる。本明細書の実施例のほとんどが、ジルコニウム又はジルコニウム合金基材並びに酸化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムの表面層を論じているが、ハフニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、タンタル、それらの合金等、他の金属も本発明に適していることを理解すべきである。金属合金プロテーゼ基材の所望の表面上に連続的かつ有用な酸化物又は窒化物被膜を形成するには、金属合金が、好ましくは約80〜約100重量%、より好ましくは約95〜約100重量%の所望の金属を含有する必要がある。場合によっては、所望の金属をより少量にすることも可能であることに留意すべきである。場合によっては、所望の金属が約10重量%以上である合金が、許容可能な結果をもたらすこともある。例えば、チタン約74重量%、ニオブ約13重量%、ジルコニウム約13重量%の合金(「Ti−13−13」)を、本明細書でうまく使用することができる。Ti−13−13は、特許文献7で教示されている。従って、所望の金属のレベルを約10重量%以上にすれば許容可能な結果が得られることが知られているが、このレベルを続けて増大させると、徐々により良い結果がもたらされ、好ましいレベルは少なくとも80重量%であり、最も好ましいレベルは少なくとも95重量%である。
【0026】
酸化又は窒化ジルコニウムの場合、共通の合金化元素として、数ある中でも、酸素、ニオブ、及びチタンを、しばしばハフニウムが存在する合金に含めることができる。また、イットリウムをジルコニウムと合金にして、合金の酸化時に、より頑丈なイットリア安定化酸化ジルコニウム被膜の形成を促進することもできる。本明細書では例示の目的で酸化又は窒化ジルコニウムが使用されるが、この教示が同様に、可能な他の金属候補にも当てはまることを理解すべきである。そのようなジルコニウム含有合金は、冶金学の技術分野で知られている従来の方法によってカスタム配合できるが、適切な合金がいくつか市販されている。酸化ジルコニウムの場合、一部の市販の合金には、数ある中でも、Zircadyne 705、Zircadyne 702、及び Zircalloy が含まれる。
【0027】
ベースメタル及び金属合金は、従来の方法によって、適切なプロテーゼ基材を得るのに望ましい形状及びサイズへと鋳造又は機械加工される。次いで、基材は、その表面上で、密着した酸化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムの拡散接合被膜の原位置形成を引き起こすプロセス条件に曝される。用語「拡散硬化」及び「拡散接合」は、これら特定の表面の形成が、表面から内部に向かう(すなわち、未酸化の基材、自然の金属、又は金属合金に接近する)酸素又は窒素の拡散によって特徴付けられるので、所望の酸化物又は窒化物に関して使用される。酸素又は窒素のこの拡散こそが、これらの表面に高い強度及び高い耐摩耗性を与えると考えられている。配合のプロセス条件には、例えば、空気酸化、蒸気酸化、もしくは水酸化、又は塩浴中での酸化が含まれる。これらのプロセスは、理想的には、プロテーゼ基材の表面上に、通常は厚さ数ミクロン(10−6メートル)程度の、薄い硬質の高密度/低摩擦/耐摩耗性窒化ジルコニウム又は濃紺色又は黒色の耐摩耗性酸化ジルコニウムのフィルム又は被膜を提供する。この被膜の下では、酸化又は窒化プロセスからの拡散酸素又は窒素が、下にある基材金属の硬度及び強度を増大させる。
【0028】
空気酸化、蒸気酸化、及び水酸化プロセスは、特許文献8でジルコニウム及びジルコニウム合金に関して記載されており、参照により該特許の教示を詳細に記載したかのように本願に含まれるものとする。これらの方法は、また、ハフニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、及びタンタルの金属並びに合金にも適用することができる。ジルコニウム又はジルコニウム合金の場合、空気酸化プロセスは、配向性の高い単斜晶の形態の、強く接着した黒色又は濃紺色の酸化ジルコニウムの層をもたらす。酸化プロセスが過度に継続されると、被膜は、白色化し、金属基材から分離する。酸化ステップは、空気、蒸気、又は熱水中で実施することができる。便宜のために、金属プロテーゼ基材を、酸素含有雰囲気(空気等)を有する炉内に置いて、通常、700°F〜1100°F(371℃〜593℃)で最大約6時間まで加熱することができる。ただし、温度と時間の他の組合せも可能である。より高い温度が用いられるときには、白色酸化物の形成を避けるために、酸化時間を短縮すべきである。
【0029】
酸化物層の厚さは、約1〜約20ミクロンの範囲になるはずであるが、約1〜約5ミクロンの範囲が好ましい。全体的な平均厚さは、時間及び温度のパラメータによって制御することができる。例えば、1000°F(538℃)で3時間にわたって炉内空気酸化させると、Zircadyne 705 上に厚さ約2〜3ミクロンの酸化物被膜が形成され、1175°F(635℃)で1時間酸化させると、厚さ約4〜5ミクロンの全体的な平均酸化物被膜が得られ、1175°F(635℃)で3時間酸化させると、厚さ約10〜11ミクロンの全体的な平均酸化物被膜が得られる。他の例として、1300°F(704℃)で1時間では、厚さ約14ミクロンの酸化物被膜が形成され、1000°F(538℃)で21時間では、厚さ約9ミクロンの酸化物被膜が形成される。酸化時間とより高い酸化温度との異なる組合せを使用するとこの厚さが増減するが、より高い温度及びより長い酸化時間は、基材の性質及び他の因子によっては、被膜の完全性を損なうことがある。より厚い酸化物被膜のためには、いくらかの試行錯誤が必要なことがある。言うまでもなく、通常の場合、表面上には薄い酸化物しか必要ないので、通常はプロテーゼの厚さ全体で10ミクロン未満の、ごく小さな寸法変化しか生じない。一般に、被膜が薄いほど(1〜4ミクロン)、より良好な付着強度を有する。
【0030】
金属合金プロテーゼに酸化物被膜を適用するために使用できる塩浴方法の1つは、特許文献9の方法であり、参照によりその教示を詳細に記載したかのように本願に含まれるものとする。酸化ジルコニウムの場合、塩浴方法は、類似した、わずかに耐摩滅性の高い濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウム被膜をもたらす。該方法は、溶融塩浴中でジルコニウムを酸化可能な酸化化合物の存在を必要とする。溶融塩には、塩化物、硝酸塩、シアン化物等が含まれる。酸化化合物である炭酸ナトリウムは、最大約5重量%までの少量で存在する。炭酸ナトリウムを加えると、塩の融点が低下する。空気酸化の場合と同様に、酸化速度は、溶融塩浴の温度に比例しており、特許文献9では、550℃〜800℃(1022°F〜1470°F)を好んでいる。ただし、浴中の酸素レベルが低いと、同一の時間及び温度での炉内空気酸化の場合よりも薄い被膜が生成される。1290°F(699℃)で4時間塩浴処理すると、厚さ約7ミクロンの酸化物被膜が生成される。
【0031】
炉内空気酸化が使用されても塩浴酸化が使用されても、酸化物被膜は、硬度が全く類似している。例えば、鍛造 Zircadyne 705(Zr、2〜3重量%Nb)プロテーゼ基材の表面が酸化される場合、表面の硬度は、元の金属表面の200ヌープ硬度を上回る大幅な増大を示す。塩浴又は空気酸化プロセスによる Zircadyne 705 の酸化後に得られる濃紺色の酸化ジルコニウム表面の表面硬度は、約1700〜2000ヌープ硬度である。
【0032】
ジルコニウム及びジルコニウム合金の窒化の場合、類似の手順が使用される。酸化物の場合と同様に、窒化物層の厚さは、約1〜約20ミクロンの範囲になるはずであるが、約1〜約5ミクロンの範囲が好ましい。空気が酸素の約4倍多くの窒素を含有する場合でも、ジルコニウム又はジルコニウム合金が前述のように空気中で加熱されるときには、酸化物被膜は、窒化物被膜よりも優先的に形成される。これは、これらの条件下では、熱力学的平衡が窒化よりも酸化に有利に働くからである。従って、窒化物被膜を形成するには、窒化物反応に有利に働くように平衡を傾けなければならない。これは、気体環境(「空気酸化」に類似)が使用されるときには、酸素を取り除き、かつ空気又は酸素の代わりに窒素又はアンモニア雰囲気を使用することによって容易に達成される。厚さ約5ミクロンの窒化ジルコニウム被膜を形成するには、ジルコニウム又はジルコニウム合金プロテーゼを、窒素雰囲気中で約1時間にわたって約800℃に加熱する必要がある。従って、酸素の除去(もしくは酸素分圧の低減)又は温度上昇を除けば、窒化ジルコニウム被膜形成のための条件は、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウム被膜を形成するのに必要な条件とさほど異ならない。必要とされる調整は、当業者には容易に明らかである。
【0033】
塩浴方法を使用して窒化物被膜を生成するときには、酸素ドナー塩を、例えばシアン化物塩等、窒素ドナー塩に取り替える必要がある。そのように置き換えると、酸化物被膜を得るのに必要な条件に類似した条件下で、窒化物被膜を得ることができる。必要な修正は、当業者が容易に決定することができる。或いは、イオン支援蒸着法を使用するものを含め、標準的な物理又は化学気相蒸着法によって、窒化ジルコニウムをジルコニウム又はジルコニウム合金表面上に蒸着することもできる。物理又は化学気相蒸着法が無酸素環境で実施されることが好ましい。そのような環境を作り出す技術は、当該技術分野で公知であり、例えば、酸素の大部分をチャンバの排気によって除去することができ、残りの酸素を脱酸素剤で除去することができる。
【0034】
ジルコニウム又はジルコニウム合金に、ジルコニウム多孔質ビーズ、ジルコニウムワイヤメッシュ表面、又はテクスチャード表面が設けられるときには、場合によっては、やはりこの表面層を、体内での金属イオン化防止効果をもたらすために、酸化又は窒化ジルコニウムで被覆することができる。
【0035】
これらの拡散接合された低摩擦で耐摩耗性の高い酸化又は窒化ジルコニウム被膜は、原位置で成長し、摩耗条件に曝される整形外科用インプラントの表面上で使用される。
【0036】
<可動ベアリング人工膝関節 − 支柱を備える脛骨トレイ>
ここで、図1〜6を参照すると、諸図は、概ね、符号110により図1、図3、及び図4に全体が示された可動ベアリング人工膝関節の装置の一実施形態を示している。
【0037】
可動ベアリング人工膝関節110は、好ましくは平らな、外科的に切断された近位面112のところで、外科的に切断された患者の脛骨近位端111上に設置される。これによって、図3及び図4に示したように、トレイ113を表面112のところで脛骨近位端111に据え付けることができる。トレイ113は、平らな近位面114と、図3及び図4に示したように、外科的に調製された表面112に面し、かつ対合する、略平らな遠位面115とを有する。トレイ113は、患者の脛骨近位端111への埋込みを向上させる、複数のスパイク116及びステム117を提供することができる。
【0038】
トレイ113の近位面114は、内ねじ付きソケット119を有する支柱118を提供する。支柱118は、拡散硬化表面を採用する。支柱の表面全体が拡散硬化表面を採用することが好ましい。ただし、支柱が、脛骨インサート128との接触域にある支柱の表面の周りだけで、もしくは該表面の周りで部分的に、拡散硬化表面を採用することができ、それが耐摩耗性を改善する。接触域は、脛骨インサート128と接触又は相互作用する支柱の表面である。一実施形態では、酸化ジルコニウム被膜は、ジルコニウム又はジルコニウム系合金の酸化によって支柱118上に形成される。酸化ジルコニウム被膜の形成は、本明細書に記載のように形成することができる。支柱118上の酸化物被膜が形成された後、鏡面状の仕上がりを示すように、該酸化物被膜を研磨することができる。支柱の拡散硬化表面は、支柱に強度を追加することになる。更に、コバルトクロム等、人工膝関節の製造に使用される他の金属を上回る、支柱に対する摩耗の低減が達成される。更に、係止部材124が、その外周部に拡散硬化表面を採用することもできる。そのような拡散硬化表面は、係止部材124の表面がインサート128と接触する場所で特に有用である。
【0039】
支柱118は、図2に示したように、直径の小さい略円筒形の部位120と、該円筒形部120の上に装着された拡大フランジ121とで構成される。トレイ113は、外周部122を有する。トレイ113の近位面114とフランジ121との間に、陥凹部123が設けられる。
【0040】
係止部材124は、ソケット119と取外し可能な連結を形成する。係止部材124は、図4に示したように該係止部材124をソケット119に螺入できるように、ソケット119内側のねじ山に対応するねじ山が構成される外側円筒部125を有する。係止部材124には、例えば六角ソケット等、工具受取ソケット127を有する拡大円筒形ヘッド126が含まれる。
【0041】
ポリマーインサート128は、図3及び図4に示したように、支柱118と連通させて配置することができる垂直チャネル133を提供する。インサート128は、トレイ113の平らな近位面114と連通する、好ましくは平らな遠位面129を提供する。インサート128の遠位面上には、患者の大腿骨又は大腿骨コンポーネント上の対応する形状をした関節接合面と協働する関節接合面を画定する、離隔された1対の凹面130、131が設けられる。インサート128は、トレイ113の外周部122と概ね対応する形状の外周部132を有する。また、脛骨トレイの近位面は、拡散硬化表面を採用する。例えば、脛骨トレイの近位面上に酸化ジルコニウムの被膜を形成すると、トレイ及び対合ポリマー表面の摩耗が低減される。
【0042】
垂直チャネル133は、支柱118及び係止部材124と相互作用するように特に成形されたいくつかの部位で構成される。従って、垂直チャネル133には、近位の円筒形の部位134と、楕円形スロット135と、遠位開口部136と、が含まれる。遠位開口部136には、略楕円形の部位137と、やや半楕円形の部位138と、が含まれる。図5及び図6から最もよくわかるように、平らな表面139、140は、楕円形スロット135の上部及び底部に位置決めされる。係止部材124の円筒形ヘッド126は、円筒形の部位136に密接に嵌合する。
【0043】
インサート128をトレイ113に組み立てるには、インサート128の遠位面129を、トレイ113の近位面114の隣に、かつ略平行に設置する。支柱118は、インサート128の垂直チャネル133と位置合わせされる。インサート128をトレイ113に組み立てる間に、支柱118は、遠位開口部136の楕円形開口部分137に入るように成形される。インサート128の遠位面129がトレイ113の近位面114に接したら、フランジ121は、垂直チャネル133の楕円形スロット135と位置合わせされる。そのような組立ての後、インサート128は、支柱118によって所定の位置に保持される。
【0044】
ポリマーインサート128には、任意選択で、該インサート128の遠位面から延びる支柱を設けることもできる。ポリマーインサートから延びる支柱を使用して、大腿骨コンポーネントとともに後部の安定性をもたらすことができる。この支柱は、カムとボックスとを有する大腿骨コンポーネントと関節接合する。
【0045】
スロットの周りの拡散硬化表面に加えて、任意選択で、近位面114を拡散硬化表面で形成することもでき、又は任意選択で、脛骨トレイ113全体を拡散硬化表面で形成することもできる。
【0046】
<可動ベアリング人工膝関節 − スロットを備える脛骨トレイ>
ここで、図7及び図8を参照すると、可動ベアリング人工膝関節の代替的な実施形態が示されている。インサート128は、トレイ113の平らな近位面114と連通する、好ましくは平らな遠位面129を提供する。インサート128の遠位面上には、患者の大腿骨又は大腿骨コンポーネント上の対応する形状をした関節接合面と協働する関節接合面を画定する、離隔された1対の凹面130、131が設けられる。インサート128は、トレイ113の外周部122と概ね対応する形状の外周部132を有する。
【0047】
ポリマーインサート128は、該インサート128の近位面から延びる支柱140を有する。支柱140がポリマーインサート128と一体に形成されることが好ましい。ただし、支柱140を着脱可能にすることもできる。支柱140は、トレイ140と同一の材料から形成されることが好ましいが、金属や他のポリマー等、他の材料から形成することもできる。脛骨トレイ113は、ポリマーインサートの支柱140がその中に関節接合するスロット141を有する。好ましくは、スロット141の形状によって、支柱140がスロット141内で回転又は関節接合できるようになる。制限ではなく一例として、支柱140には、部分的な球状、楕円状、円錐状、円筒状、及びそれらの組合せを含め、様々な形状を使用することができる。脛骨トレイ113のスロット141は、スロット壁142の表面に沿って拡散硬化表面を採用する。スロット壁142は、平面、凹面、凸面、又は有用な他のいずれかの形状にすることができる。スロット壁142の表面全体が、特にインサートの支柱140がスロット141と関節接合するスロット壁142の表面に沿って、拡散硬化表面を採用することが好ましい。一実施形態では、酸化ジルコニウム被膜は、ジルコニウム又はジルコニウム系合金の酸化によってスロット壁142の表面上に形成される。スロット壁142上の酸化物被膜が形成された後、鏡面状の仕上がりを示すように、該酸化物被膜を研磨することができる。
【0048】
ポリマーインサート128には、任意選択で、該インサートの遠位面から延びる支柱を設けることもできる。ポリマーインサートから延びる支柱を使用して、大腿骨コンポーネントとともに後部の安定性をもたらすことができる。この支柱は、カムとボックスとを有する大腿骨コンポーネントと関節接合する。
【0049】
支柱の周りの拡散硬化表面に加えて、任意選択で、近位面114を拡散硬化表面で形成することもでき、又は任意選択で、脛骨トレイ113を拡散硬化表面で形成することもできる。
【0050】
可動ベアリング人工膝関節 − チャネル及びレールを備えるトレイ
ここで、図9を参照すると、可動ベアリング人工膝関節の代替的な実施形態が示されている。ただし、図9は、脛骨トレイ113だけを示す。トレイ113は、外周部122を有する。トレイ113は、患者の脛骨近位端への埋込みを向上させる、複数のスパイク(図示せず)及びステム117を提供することができる。脛骨トレイ113は、近位面114から延びてチャネル145を形成するレール144を有する。ポリマーインサートは、脛骨トレイ113のチャネル及びレールがポリマーインサートのチャネル及びレールと噛み合うような、対応する構造を有する。最も外側のチャネル146は、トレイ113の側部に類似した輪郭である。
【0051】
ポリマーインサートのチャネル及びレール並びに脛骨トレイ113のチャネル及びレールは、インサートとトレイ113とが直線的な前後運動で関節接合するような相互作用をする。
【0052】
脛骨トレイ113は、レール144の表面に沿って、またチャネル144の表面に沿って、拡散硬化表面を採用する。チャネル壁144は、平面、凹面、凸面、又は有用な他のいずれかの形状にすることができる。一実施形態では、酸化ジルコニウム被膜は、ジルコニウム又はジルコニウム系合金の酸化によってレール144及びチャネル145の表面上に形成される。酸化物被膜が形成された後、鏡面状の仕上がりを示すように該酸化物被膜を研磨することができる。
【0053】
ポリマーインサートには、任意選択で、該インサートの遠位面から延びる支柱を設けることもできる。ポリマーインサートから延びる支柱を使用して、大腿骨コンポーネントとともに後部の安定性をもたらすことができる。この支柱は、カムとボックスとを有する大腿骨コンポーネントと関節接合する。
【0054】
レール及びチャネルの周りの拡散硬化表面に加えて、任意選択で、脛骨トレイ113全体を拡散硬化表面で形成することもできる。
【0055】
<可動ベアリング人工膝関節 − 円形表面を備えるトレイ>
ここで、図10を参照すると、可動ベアリング人工膝関節の代替的な実施形態が示されている。ただし、図10は、脛骨トレイ113だけを示す。トレイ113は、外周部122を有する。トレイ113は、患者の脛骨近位端への埋込みを向上させる、複数のスパイク(図示せず)及びステム117を提供することができる。一実施形態では、トレイ113は、隆起した円筒形表面を有しており、インサートの近位面は、隆起した該円筒形表面の形状に概ね対応する、陥没した表面を有する。代替的な実施形態(図示せず)では、トレイは、陥没した円筒形表面を有しており、トレイは、陥没した該円筒形表面に対応する、隆起した円筒形表面を有する。そのような構造によって、トレイ113及びインサートが互いに回転できるようになる。トレイ113は、インサートのそれ以上の回転を防ぐために、インサートがその脛骨トレイと接触する場所に2つの止め具148を有する。
【0056】
いずれの実施形態でも、トレイ113の円筒形表面は、拡散硬化表面を採用する。一実施形態では、酸化ジルコニウム被膜は、ジルコニウム又はジルコニウム系合金の酸化によって、成形された表面上に形成される。円形表面上の酸化物被膜が形成された後、鏡面状の仕上がりを示すように該酸化物被膜を研磨することができる。
【0057】
ポリマーインサートには、任意選択で、該インサートの遠位面から延びる支柱を設けることもできる。ポリマーインサートから延びる支柱を使用して、大腿骨コンポーネントとともに後部の安定性をもたらすことができる。この支柱は、カムとボックスとを有する大腿骨コンポーネントと関節接合する。
【0058】
円形表面の表面周りの拡散硬化表面に加えて、任意選択で、脛骨トレイ113全体を拡散硬化表面で形成することもできる。
【0059】
本発明及びその利点について詳細に説明したが、冒頭の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に基づき様々な変更、置換、及び修正を実施できることを理解すべきである。更に、本願の範囲は、本明細書に記載した本発明の特定の諸実施形態だけに制限されるものではない。本発明の開示から当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載した対応する実施形態とほぼ同一の機能を果たす、もしくはほぼ同一の結果を達成する、現存する又は今後開発される器具、手段、金属、及び合金を、本発明に従って使用することが可能である。従って、冒頭の特許請求の範囲は、そのような器具、手段、並びに金属及び合金を、その範囲内に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】可動ベアリング人工膝関節装置の一実施形態を示した分解斜視図である。
【図2】可動ベアリング人工膝関節装置の一実施形態における関節状ポリマーインサート及びそのトレイ部分を示す分解背面図である。
【図3】可動ベアリング人工膝関節装置の一実施形態において、係止部材が除去された立て状態を示す断面図である。
【図4】可動ベアリング人工膝関節装置の一実施形態において、回転運動だけが望ましいときの動作位置で係止部材を示す断面図である。
【図5】本発明の装置の一実施形態におけるポリマーインサートの部分上面を示す図である。
【図6】本発明の装置の一実施形態におけるポリマーインサートの部分底面を示す図である。
【図7】可動ベアリング人工膝関節装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】可動ベアリング人工膝関節装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図9】可動ベアリング人工膝関節装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】可動ベアリング人工膝関節装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
110 可動ベアリング人工膝関節
111 患者の脛骨近位端
112 外科的に切断された近位面
113 トレイ
114 近位面
115 遠位面
116 スパイク
117 ステム
118 支柱
119 内ねじ付きソケット
121 フランジ
122 外周部
124 係止部材
128 インサート
129 遠位面
130 凹面
131 凹面
132 外周部
133 垂直チャネル
134 円筒形部位
135 楕円形スロット
136 遠位開口部
137 楕円形部位
138 半楕円形部位
140 支柱
141 スロット
142 スロット壁
144 レール
145 チャネル
146 最外のチャネル
148 止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ベアリング膝関節システムであって、
近位面と、外科的に切断された患者の脛骨近位端上に整形移植されるように構成された遠位面と、を備えた脛骨トレイと、
大腿骨コンポーネントに係合するように成形された近位面を備え、前記脛骨トレイの前記近位面に接して嵌合し且つ関節接合する遠位面を備えた脛骨インサートと、
を含んでなり、
前記脛骨トレイが、前記脛骨トレイが前記脛骨インサートと連通する前記脛骨トレイの少なくとも一部分に沿って、拡散硬化面を備えていることを特徴とする可動ベアリング膝関節システム。
【請求項2】
前記脛骨トレイが近位面を備え、前記脛骨トレイの前記近位面から上に支柱が延びており、前記支柱が、前記支柱が前記脛骨インサートと連通する前記支柱の少なくとも一部分に沿って、拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項3】
前記支柱の前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項4】
前記支柱の前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項5】
生体適合性のあるポリマー材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項6】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるためのステムを備えていることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項7】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるための少なくとも1つのスパイクを備えていることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項8】
前記インサートの前記近位面が、前記大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を備えていることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項9】
前記支柱のすべて又は一部が前記トレイから分離可能であることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項10】
前記支柱上のソケットに嵌合する係止プラグ部材を更に含んでなることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項11】
前記インサートが、前記インサートの前記遠位面上のスロットと、前記スロットと連通する、前記インサートの前記近位面上の開口部と、を備えてなり、前記係止プラグ部材が、前記インサートの前記近位面から前記開口部を介して前記支柱に到達可能であることを特徴とする請求項10に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項12】
前記スロットが、前記インサートの前記近位面と連通する略円筒形の部位を備えていることを特徴とする請求項11に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項13】
前記脛骨トレイの前記近位面が、前記トレイの前記近位面の少なくとも一部分に沿って第1の拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項14】
前記脛骨トレイの前記近位面における前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項13に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項15】
前記脛骨トレイの前記近位面の前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項14に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項16】
前記支柱が、部分的に球形、楕円形、円錐形、又は円筒形に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項17】
前記近位面が、前記近位面の少なくとも一部分に沿って拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項2に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項18】
前記脛骨トレイ近位面がスロットを有しており、前記脛骨インサート遠位面が前記スロットと連通する支柱を有しており、前記スロットが、前記支柱が前記スロットと連通する前記スロットの少なくとも一部分に沿って拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項19】
前記スロットの前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項20】
前記スロットの前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項21】
生体適合性のあるポリマー材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項22】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるためのステムを備えていることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項23】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるための少なくとも1つのスパイクを備えていることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項24】
前記インサートの前記近位面が、前記大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を備えていることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項25】
前記支柱が、部分的に球形、楕円形、円錐形、又は円筒形に形成されていることを特徴とする請求項18に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項26】
前記脛骨トレイ近位面が少なくとも1つのレールを備えており、前記脛骨インサート遠位面が前記少なくとも1つのレールと連通する少なくとも1つのチャネルを備えており、前記レールが、前記レールが前記チャネルと連通する前記レールの少なくとも一部分に沿って拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項27】
前記レールの前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項28】
前記レールの前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項29】
生体適合性のあるポリマー材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項30】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるためのステムを備えていることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項31】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるための少なくとも1つのスパイクを備えていることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項32】
前記インサートの前記近位面が、前記大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を備えていることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのレールの表面すべてが拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項26に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項34】
前記脛骨トレイ近位面が少なくとも1つのチャネルを備えており、前記脛骨インサート遠位面が前記少なくとも1つのチャネルと連通する少なくとも1つのレールを備えており、前記少なくとも1つのチャネルが、前記レールが前記チャネルと連通する前記チャネルの少なくとも一部分に沿って拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項35】
前記チャネルの前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項36】
前記チャネルの前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項37】
生体適合性のあるポリマー材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項38】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるためのステムを備えていることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項39】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるための少なくとも1つのスパイクを備えていることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項40】
前記インサートの前記近位面が、前記大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を備えていることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項41】
前記少なくとも1つのチャネルの表面すべてが拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項34に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項42】
前記脛骨トレイ近位面が、成形された円形表面を備えており、前記脛骨インサート遠位面が、前記脛骨トレイの成形された円形表面と連通する成形された円形表面を備えており、更に、前記脛骨トレイの成形された円形表面が拡散硬化面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項43】
前記拡散硬化面が、濃紺色又は黒色の酸化ジルコニウムの薄い被膜であることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項44】
前記拡散硬化面が、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、及びタンタルからなる群の1つ又は複数の金属から選択される酸化金属の薄い被膜であることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項45】
生体適合性のあるポリマー材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項46】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるためのステムを備えていることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項47】
前記脛骨トレイの前記遠位面が、前記患者の脛骨近位端に移植されるための少なくとも1つのスパイクを備えていることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。
【請求項48】
前記インサートの前記近位面が、前記大腿骨コンポーネントと関節接合する1つ又は複数の凹面を備えていることを特徴とする請求項42に記載の可動ベアリング膝関節システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−501659(P2007−501659A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522788(P2006−522788)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025665
【国際公開番号】WO2005/013858
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】