説明

酸化セルロースの製造方法

【課題】 酸化セルロースの製造方法を提供する。
【解決手段】 平均分子量が少なくとも5000の酸化セルロースを、前記酸化セルロースの部分加水分解を生じさせるのに充分な時間、或る温度で、アルカリ性水溶液で処理する。その結果生じる酸化セルロースを前記溶液から回収する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
この発明は酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose:ORC)のオリゴ糖などの酸化オリゴ糖(oxidized oligosaccharides)に関する。この発明は創傷ドレッシング(wound dressings)ならびに他の医療用途および製薬用途における酸化オリゴ糖の使用にも関し、また酸化オリゴ糖を製造する方法にも関する。
【0002】
ORCは長年にわたり製造され、止血を行うために、および手術後の癒着を防止するためのバリア材として、医療上使用されている。ORCの鍵となる特徴は体内に移植された時にそれが吸収されやすいことであるが、これに対し、セルロースはそうでない。ORCは該高分子の加水分解開裂により吸収されて小さなオリゴ糖を生じ、これが代謝され体から排出される。セルロースの重量につき10%乃至21%のカルボキシル基を生じるセルロースの酸化によって、移植後2週間乃至3週間以内にその材料がほぼ完全に吸収されることが可能となる。
【0003】
ORCは、米国特許公報第3122479号に記載されているように四酸化二窒素などの酸化剤にセルロースを曝すことによって製造される。セルロース材料の物理的形態は重要でない。例えば、セルロースのフィルム、紙、スポンジ、布地は全て酸化されてORCを生じる。しかし、商業的に好適な材料は織った布または編んだ布である。編布の形態のORCは吸収性止血性材料として用いるためにSURGICEL(商標)により入手可能であり、またORCは癒着バリアとして用いるためにINTERCEED(商標)により入手可能である。
【0004】
セルロース以外の多糖も、酸化されて医療上有用な止血性材料を生じ得る。このような他の多糖には、微生物性多糖、例えば、デキストラン、ゲラン(gellan)ゴム、キサンタン(xanthan)ゴム;植物由来の多糖、例えば、寒天、デンプン、こんにゃく、カラゲナン(carrageenan)、グアール(guar)ゴム、イヌリン、ペクチン;および多糖誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロースがある。
【0005】
創傷ドレッシングとして使用するため、ORCを他の材料と組み合わせることが提案されている。例えば、米国特許公報第2517772号(Doubら)はトロンビンで含浸したORCより形成したドレッシングを開示している。しかし、ORCはかなり酸性である。十分に水で飽和したORC布片の表面pHは1.7程度に低いことがある。多くのタンパク質薬剤、例えばトロンビン等は、酸の影響を非常に受け易く、このようなマトリックスと接触して直ぐに不活性化される。従って、Doubらはトロンビンで含浸する前にORCを中和すべきことを教示している。酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニアおよびアルコール性エチルアミンが適切な中和剤の例として与えられているが、Doubらは、溶液またはゲル化と分解の理由により、水中に入れた時にORCがその繊維性を失うような程度までORCを中和すべきでないことを警告している。
【0006】
欧州特許公開第0437095号は、ORC布地を中和するために炭酸ナトリウムの水溶液を使用する結果、部分的にゲル化し、その当初のサイズから歪み、非常に弱く、ほとんど一体性がない布地が生じることを開示している。その布地の引張強度は非常に低くて、実際の用途、例えば止血性材料等に向かないと記載されている。強塩基性の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液の使用により、同様の結果が得られると記載されている。欧州特許公開第0437095号は従って、酸で酸化したセルロース材料を、塩化物の存在しない弱酸の僅かに塩基性の塩のアルコールと水の溶液に接触させて、セルロース材料のpHを5と8の間に上げる工程;そのpHを上げたセルロース材料をアルコールで洗浄して、余分な塩と水を除去する工程;およびそのセルロース材料を乾燥して、アルコールを除去する工程を含む、貯蔵安定性、非刺激性で治療効果のある中和した酸化セルロース製品の製造方法を教示している。
【0007】
さて、ORCおよび他の酸化多糖は穏やかなアルカリ性条件下で部分加水分解して多くの医療上有用な特性を有するオリゴ糖を生じ得ることが、今、見出された。
【0008】
従って、本発明は平均分子量が1000ダルトン乃至50000ダルトンの範囲にある酸化オリゴ糖を含む、局所、経口もしくは非経口投与用医薬組成物を提供するものである。
【0009】
特に、本発明の酸化オリゴ糖組成物は治療上有用な薬剤を結合し、次にそのような結合薬剤を高収率で放出することができる。したがって、本発明の酸化オリゴ糖医薬組成物は、そのような薬剤を創傷部位に送達するために、例えば創傷ドレッシングにおいて使用することができる。酸化オリゴ糖により結合される治療上有用な薬剤には、薬理活性なペプチド及びタンパク質、好ましくは成長因子、例えば、PDGF AB,PDGF BB,TGF−β1,TGF−β2,TGF−β3,塩基性FGF,酸性FGF、および場合によりEGFおよびTGF−αがある。
【0010】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、酸化オリゴ糖のアニオン性カルボキシレート基がペプチド及びタンパク質のカチオン性アミノ基と複合体形成する(complex) と考えられる。アニオン性の基を有する治療活性薬剤との複合体形成は、例えば、イオン性架橋剤としてCa2+またはZn2+のような多価金属イオンを使用することによっても容易に達成することができる。
【0011】
本発明の医薬組成物の別の利点は、それらがタンパク質等の他の材料や他の多糖と親密に組み合わさって(化学的に架橋するか架橋しないかに拘わらない)、新規な特性を有する組成物を形成し得ることである。例えば、酸化オリゴ糖は、ヒアルロン酸、キトサンまたはアルギン酸塩(特にアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウムまたはアルギン酸ナトリウム/カルシウム混合物)と組み合わさって新規な止血性組成物を形成し得る。あるいは、酸化オリゴ糖と他のオリゴ糖、多糖またはタンパク質との複合体は、種々の治療薬剤、例えば防腐剤、抗生物質、タンパク質成長因子、抗炎症剤、鎮痛剤、アプロチニン等のプロテイナーゼインヒビター、またはヒドロキサム酸に対し、調節された放出マトリックスとして使用し得る。本発明の組成物の酸化オリゴ糖は溶液中にある間、所望の治療薬剤と組み合わせられ(該治療薬剤は溶液中または懸濁液中にある)、次に、その酸化オリゴ糖は適切な手段により溶液から取り出されて、該治療薬剤がほぼ均一に分配された材料を生じる。あるいは、溶媒を、例えば凍結乾燥により除去してもよい。
【0012】
酸化オリゴ糖はまた、三次元構造の形成を可能とするように架橋結合することもできる。例えば、酸化オリゴ糖は非常に低い濃度のペプシン可溶化コラーゲンが添加された水に溶解することができる。次にカルボジイミドを架橋剤として添加すれば、該コラーゲンはオリゴ糖間の架橋基として作用し、そのため凍結乾燥することにより三次元構造を得ることができる。
【0013】
好ましくは、本発明の組成物における酸化オリゴ糖の分子量は少なくとも1000ダルトンであり、一般的に100000よりも小さい。分子量は5000ダルトン乃至30000ダルトンよりも小さいことが最も通常であろう。(本発明における酸化オリゴ糖は異なるサイズの分子が混在した集団を形成することが理解されよう。従って、本願における特定の分子量範囲を有する酸化オリゴ糖への言及は、分子の少なくとも90重量%がその特定の範囲に該当することを意味する。)
【0014】
一つの実施形態において、本発明による組成物において使用するためのオリゴ糖は、不溶性の酸化多糖から誘導され、中性およびアルカリ性pHで可溶であるが酸性pHでは不溶であるような分子量のものである。そのようなオリゴ糖は、単にpHを下げてそれらを沈殿させるだけで、溶液から容易に回収することができる。あるいは、他の不揮発性成分を含有しない溶液に移し、その溶媒を蒸発させることによって、酸化オリゴ糖を溶液から回収することもできる。例えば、酸化オリゴ糖は、イオン交換固相抽出カラム(例えば、予めメタノールで活性化し希酢酸で平衡化したフェニルボロン酸固相カラム)を使用し、次に希薄な(例えば0.1M)水酸化アンモニウム水溶液で溶出することにより、単離することができる。
【0015】
好ましくは、本発明の組成物において使用される酸化オリゴ糖は5重量%乃至25重量%のカルボキシル含有量を有し、より好ましくは8重量%乃至14重量%のカルボキシル含有量を有する。このオリゴ糖のカルボキシル含有量は、以下のようにして決定する。
【0016】
酸化オリゴ糖の試料(約0.2g)を0.5M水酸化ナトリウム(5ml)に溶解し、2,3滴の0.1%フェノールフタレイン指示薬溶液を加える。余分な水酸化ナトリウムは、0.1MのHClでフェノールフタレイン終点(赤から透明)まで逆滴定される。5mlの0.1M水酸化ナトリウムを0.1MのHClで滴定することにより、ブランク値を決定する。カルボキシル含有量の値は、以下の式を用いて計算される。
C= 4.5×(B−S)×M

式中、C=カルボキシル含有量%
B=ブランクを滴定するための標準HClの量(ml)
S=試料を滴定するための標準HClの量(ml)
M=標準HClのモル濃度
W=試料の乾燥重量(g)
(4.5=カルボキシルのミリ当量重量×100)
【0017】
本発明はまた、分子量が少なくとも50000(通常は少なくとも100000、例えば30000より大きい)の酸化セルロースを、前記酸化セルロースの部分加水分解を生じさせるのに充分な時間、或る温度でアルカリ性水溶液で処理すること、および次にその結果生じる酸化セルロースを例えばpHを7以下に調整することにより、溶液から回収することを含む酸化セルロースの製造方法を提供する。このアルカリ性溶液はアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、例えば、水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの溶液であることが好都合であるが、他のアルカリ(例えば水酸化アンモニウム水溶液)も用いることができる。この処理条件(特にpH)はその結果生じる生成物について所望される分子量範囲に依存することが理解されるだろう。しかしながら、適当な条件は任意の特定の場合において日常的実験により容易に決定することができる。例示すれば、酸化再生セルロースは、1M乃至8Mの水酸化ナトリウム中、0℃乃至50℃の温度で5分間乃至120分間で加水分解されて分子量範囲1000ダルトン乃至20000ダルトンのオリゴ糖を生じることが可能であり、あるいは0.01M乃至1Mの炭酸ナトリウム中、0℃乃至50℃の温度で10時間乃至10日間で分子量範囲7000ダルトン乃至50000ダルトンのオリゴ糖を生じることが可能である。
【0018】
加水分解反応は、その溶液がおよそ中性になるまで鉱酸のような酸を加えることによって止めることができる。濃塩酸を用いるのが好都合である。
【0019】
本発明を以下の実施例により、さらに説明する。
【0020】
実施例1
ORCの溶液は、Surgicel(商標)の布を20mg/mlの濃度で6Mの水酸化ナトリウム中で溶解させることによって調製した。その溶液を45分間37℃でインキュベート(保温)し、その後6MのHClを、沈殿が生じpHがアルカリ性からpH7以下へ変化するまで加えることによって、反応を止めた。その沈殿を一晩放置し、次に余分な液を除去した。その沈殿を分子量1000カットオフのチューブで水に対して透析し、次に凍結乾燥して粉末を得た。
【0021】
ゲル電気泳動により、および高性能液体クロマトグラフィにより決定された、そのオリゴ糖の分子サイズは、およそ1000ダルトン乃至15000ダルトンにわたる範囲を示した。
【0022】
実施例2
ORCの溶液は、Surgicel(商標)の布を10mg/mlの濃度で0.1Mの炭酸ナトリウム中で溶解させることによって調製した。全てのORCが溶解し終えるまで、この溶液を2日間乃至3日間37℃でインキュベートした。沈殿が生じpHがアルカリ性からpH7以下へ変化するまで、6MのHClを加えることによって反応を止めた。この沈殿を一晩静置し、次に余分な液を除去した。この沈殿を分子量1000カットオフのチューブで水に対して透析し、次に凍結乾燥して粉末を得た。
【0023】
上述のようにして決定された、分子サイズは、およそ1000ダルトン乃至30000ダルトンの範囲を示した。
【0024】
実施例3
酸化カルボキシメチルセルロースのスポンジを、以下のようにして調製した。500gの水に、アクアロン社(Aqualon Corporation)からの7.5gのカルボキシメチルセルロース(CMC)を攪拌しながら加える。この高分子が溶解した時に、溶液を一晩脱気し、トラップ(捕捉)した気泡を除去する。この溶液を3×4×1/4インチのトレイに注ぎ入れ、凍結乾燥機で24時間凍結乾燥する。この手順により、柔軟で白色で水溶性のCMCスポンジが得られる。
【0025】
このCMCスポンジの酸化は、8gの四酸化二窒素を含有した小フラスコが付いた樹脂ケトル内に、5.8gの乾燥スポンジを置くことによって行う。この四酸化二窒素を小フラスコから樹脂ケトルに蒸発させ、CMCスポンジをガス雰囲気で覆う。そのスポンジを48時間樹脂ケトル内に置いた後、ガスを腐食性トラップに逃し、そのスポンジを取り出して500mlの水中につける。その酸化CMCスポンジは水中で不溶である。酸化CMCスポンジを水で15分間洗浄し、次に新鮮な水中につけてさらに洗浄する。この酸化CMCスポンジの洗浄を、その洗浄水のpHが3より大きくなるまで繰り返す。その白色酸化カルボキシメチルセルローススポンジを100%イソプロピルアルコール中に15分間つけることによって乾燥する。これを合計2回繰り返し、次にそのスポンジを空気乾燥する。その酸化CMCスポンジは柔軟で適合性があり、また等張性食塩水中で自己の14倍の重量を吸収する。その酸化CMCスポンジは0.5N水酸化ナトリウム中で可溶であり、また、滴定により26.3%と求められる、そのカルボキシル酸含有量によってキャラクタライズ(特徴付け)される。
【0026】
酸化カルボキシメチルセルローススポンジの溶液は、上記スポンジ材料を10mg/mlの濃度で0.1Mの水酸化アンモニウム中で溶解させることによって調製した。その溶液を2時間37℃でインキュベートし、そして次に、沈殿が生じるまで6MのHClを加えることによって反応を止めた。その沈殿を集め、分子量1000カットオフのチューブで蒸留水に対して大規模に透析し、次に凍結乾燥して粉末を得た。
【0027】
その分子量は、ゲル電気泳動により1000ダルトンと30000ダルトンに決定された。
【0028】
実施例4
メチルセルロースを実施例3に述べた手順と類似の手順で酸化し、その酸化材料を20mg/mlの濃度で6M水酸化アンモニウム中で溶解させ、45分間37℃でインキュベートすることによって溶液を調製した。その溶液を遠心分離して不溶解材料を除去し、6MのHClを加えることによって溶液からオリゴ糖を沈殿させた。その沈殿を集め、分子量1000カットオフのチューブで蒸留水に対して大規模に透析した。
【0029】
その分子量は、ゲル電気泳動により1000ダルトンと5000ダルトンの間にあることが決定された。
【0030】
実施例5
10mlの容器に100mgの吸着剤材料を含有したフェニルボロン酸(PBA)固相抽出カラム(ボンドエルト,ヴァリアンアソシエーツ(Bond Elut, Varian Associates))を、10mlのメタノールを用いて活性化し、該カラムを濡らした後、10mlの0.1M酢酸により該カラムを適正なpHで平衡化した。
【0031】
ORC溶液は、Intercreed(商標)材料の1gを6M水酸化ナトリウム溶液100ml中で溶解させることによって調製した。そのInterceed(商標)材料が完全に溶解した後に、その溶液をpH3.0に酸性化し、沈殿を遠心分離により除去した。その上澄を取り、2mlを上記活性化PBAカラムに通した。そのカラムを次に0.1M酢酸2mlと蒸留水4×2mlポーション(部分)とで洗浄して、塩や他の内因性物質をすべて除去した。0.1M水酸化アンモニウム2×2mlポーション(部分)を用いて、そのカラムからORCオリゴ糖を溶出させた。それらのポーションをプール(蓄液)し、冷凍し、凍結乾燥して、粉末を得た。その酸化オリゴ糖のイオン交換クロマトグラフィによる分離後、質量スペクトル分析ではその分子量が600ダルトン乃至1200ダルトンの範囲にあることを示した。
【0032】
実施例6
コラーゲン/ORCオリゴ糖のスポンジを、以下の方法で調製した。石灰処理したコラーゲン繊維を0.01のHCl(pH3.0)160ml中でスラリー化し、そして実施例2で調製したORCオリゴ糖の0.16gを加えた。その混合物を15秒間ホモジェナイズ(均質化)し、HMDIを加え(コラーゲンの10%W/W)、そのスラリーをさらに2×15秒間ホモジェナイズした。そのスラリーを脱気し、2つの9cm径ペトリ皿に注ぎ入れ、冷凍し、72時間にわたり−30℃乃至70℃で運転する熱勾配(heat ramp)を用いて凍結乾燥した。
【0033】
次に、このコラーゲン/ORCオリゴ糖スポンジを、その血小板由来増殖因子(PDGF)結合能について試験した。比較のため、Interceed(商標)布および(上述のように調製したがORCオリゴ糖を加えていない)単なるコラーゲンスポンジも試験した。それぞれの場合に、試験材料の小区分(Interceed(商標)布のおよそ1cm 正方形、およびスポンジのおよそ1cm×0.5cm×0.4cm区分)の重量を計り、150mM塩化ナトリウム含有100mMリン酸ナトリウム二塩基性緩衝液(合計量1ml)中に室温で少なくとも1時間浸した。次に、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)と共に試料を2時間室温でインキュベートした。次に25ngのPDGFを、2%BSA含有PBS 250μl中の各試料に加え、次に試料をさらに1時間37℃でインキュベートした。
【0034】
次に、各試料を250μl PBSで3回洗浄した後、塩化ナトリウム濃度を増加させた。最後に、各試料を4.0M尿素で洗浄した。当初(original)のPDGF調製物および試料材料からの種々の洗浄物のELISA分析により、以下の結果が得られた。
【0035】
表I:
PDGF−ABの結合
試料 コラーゲン コラーゲン/ORC INTERCEED
当初 100% 100% 100%
結合しない 20.6% 22.9% 15.9%
PBS洗浄 1.8% 11.1% 7.5%
0.3M NaCl 4.50% 12.3% 1.9%
0.5M NaCl 22.0% 22.2% 7.7%
1.0M NaCl 11.9% 15.2% 11.2%
2.0M NaCl 3.0% 5.1% 7.8%
3.0M NaCl 0% 4.3% 3.4%
4.0M 尿素 0% 4.0% 9.7%
回収率 63.8% 97.1% 64.6%
【0036】
この結果は、3つの試験材料が全て類似の量のPDGFを結合するが、コラーゲン/ORCオリゴ糖スポンジから最も高収率でPDGFを回収できることを示す。
【0037】
結合特性もまた、個々の比較材料に比べて、コラーゲン/ORCオリゴ糖材料が特有に異っている。これらの観察結果は、該複合体が特有のPDGF結合を有し、これを成長因子の外因性の結合および内因性の結合と放出の双方のために適切に利用し得ることを示す。
本発明の具体的な実施態様は、以下の通りである。
1.平均分子量が1000ダルトン乃至50000ダルトンの範囲にある酸化オリゴ糖組成物。
2.酸化された細菌性もしくは植物性多糖から誘導された実施態様1に記載のオリゴ糖組成物。
3.酸化された動物性多糖または酸化された合成多糖から誘導された実施態様1に記載のオリゴ糖組成物。
4.酸化セルロースまたは酸化セルロース誘導体から誘導された実施態様1に記載のオリゴ糖組成物。
5.デキストラン、ゲランゴム、キサンタンゴム、寒天、デンプン、こんにゃく、カラゲナン、グアールゴム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、リン酸セルロース、エチルセルロースまたはイヌリンの酸化誘導体から誘導された実施態様1に記載のオリゴ糖組成物。
6.平均分子量が5000ダルトン乃至25000ダルトンの範囲にある実施態様1乃至実施態様5のいずれかに記載のオリゴ糖組成物。
7.実施態様1乃至実施態様6のいずれかに記載の酸化オリゴ糖組成物を含む、局所、経口もしくは非経口投与用医薬組成物。
8.酸化オリゴ糖は薬理活性なペプチドもしくはタンパク質に結合されている実施態様7に記載の医薬組成物。
9.ペプチドもしくはタンパク質は成長因子である実施態様8に記載の医薬組成物。
10.創傷ドレッシングとして、あるいは創傷ドレッシングにおいて用いる組成物を製造するための実施態様1乃至実施態様6のいずれかに記載の酸化オリゴ糖組成物の使用。
11.薬理活性薬剤が前記創傷ドレッシング全体にわたってほぼ均一に分配されている実施態様8に記載の使用。
12.前記薬理活性薬剤は抗生物質、防腐剤またはタンパク質成長因子である実施態様11に記載の使用。
13.(a)平均分子量が少なくとも5000の酸化多糖を、前記多糖の部分加水分解を生じさせるのに充分な時間、或る温度で、アルカリ性水溶液で処理する工程、および
(b)その結果生じる酸化オリゴ糖を前記溶液から回収する工程を含む、酸化オリゴ糖の製造方法。
14.アルカリ性溶液はアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩である実施態様13に記載の方法。
15.酸化オリゴ糖は、酸を用いてpHを7以下に調整することにより前記溶液から回収される実施態様13または実施態様14に記載の方法。
16.酸は濃鉱酸である実施態様15に記載の方法。
17.実施態様13乃至実施態様16のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、
(a)酸化オリゴ糖のアルカリ性溶液を供給する工程、
(b)前記アルカリ性溶液に治療活性薬剤を溶解または分散させる工程、および
(c)前記溶液または分散液のpHを下げて前記酸化オリゴ糖を沈殿させる工程を含む方法。
18.実施態様13乃至実施態様16のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、
(a)酸化オリゴ糖のアルカリ性溶液を供給する工程、
(b)前記アルカリ性溶液に治療活性薬剤を溶解または分散させる工程、および
(c)前記溶液または分散液から溶媒を除去する工程を含む方法。
19.溶媒は工程(c)において凍結乾燥により除去される実施態様18に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均分子量が少なくとも5000の酸化セルロースを、前記酸化セルロースの部分加水分解を生じさせるのに充分な時間、或る温度で、アルカリ性水溶液で処理する工程、および
(b)その結果生じる酸化セルロースを前記溶液から回収する工程を含む酸化セルロースの製造方法。
【請求項2】
アルカリ性溶液はアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化セルロースは、酸を用いてpHを7以下に調整することにより前記溶液から回収される請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸は濃鉱酸である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)前記酸化セルロースのアルカリ性溶液を供給する工程、
(b)前記アルカリ性溶液に治療活性薬剤を溶解または分散させる工程、および
(c)前記溶液または分散液のpHを下げて前記酸化セルロースを沈殿させる工程を含む方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)前記酸化セルロースのアルカリ性溶液を供給する工程、
(b)前記アルカリ性溶液に治療活性薬剤を溶解または分散させる工程、および
(c)前記溶液または分散液から溶媒を除去する工程を含む方法。
【請求項7】
溶媒は工程(c)において凍結乾燥により除去される請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2009−102645(P2009−102645A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314228(P2008−314228)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願平10−503913の分割
【原出願日】平成9年6月27日(1997.6.27)
【出願人】(598010953)ジョンソン・アンド・ジョンソン・メディカル・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Medical  Ltd.
【住所又は居所原語表記】Erskine House,68−73 Queen Street,Edinburgh EH2 4NH,United Kingdom
【Fターム(参考)】