説明

酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物、その製造方法、光触媒用塗膜および光触媒用塗布物

【課題】可視光領域において高い光吸収特性を発現する酸化チタン粉末を含む塗膜形成用組成物およびその製造方法、これを基材に塗布した際、硬度および密着性に優れる光触媒用塗膜および光触媒用塗布物を提供すること。
【解決手段】硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物および分散媒を含有する酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物、その製造方法、前記塗膜形成用組成物を基板に塗布し得られる光触媒用塗膜、並びに光触媒用塗布物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光応答型で光触媒活性が高く有害物分解や湿式太陽電池に有効な酸化チタン光触媒を分散した光触媒塗膜形成用組成物(以下、単に「塗膜形成用組成物」とも言う。)、その製造方法、光触媒用塗膜および光触媒用塗布物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粉末は、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料に広く利用されている。特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられており、酸化チタンに、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射することによって酸化チタンが励起されて、伝導帯に電子が生じ、価電帯に正孔が生じるが、この電子による還元力または正孔による酸化力を利用した光触媒反応の用途開発が盛んに行われている。この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0003】
しかしながら、酸化チタンは可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収は起こらない。これは、アナターゼ型二酸化チタンは3.2eV、ルチル型二酸化チタンは3.0eVというバンドギャップを有することに起因しており、酸化チタンの吸収可能な光の波長は、アナターゼ型酸化チタンで385nm以下、ルチル型酸化チタンで415nm以下である。これらの波長の光は大部分が紫外線領域に該当し、地球上に無限にある太陽光にはごく一部しか含まれておらず、従来知られている酸化チタン光触媒は、紫外線照射下では光触媒特性を発現するものの、太陽光のもとでは、そのエネルギーのうちごく一部しか活用できずに、光触媒として十分な活性は期待できない。また、屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯のスペクトルは殆どが400nm以上であるため、光触媒として十分な特性を発現することはできない。そこで可視光領域での触媒活性を発現させより利用性の高い高活性の光触媒の開発が行なわれている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平9−262482号公報)では、Cr、V、Cu、Fe、Mg、Ag、Pd、Ni、MnおよびPtからなる群から選択される1種以上の金属のイオンが1×1015イオン/g-TiO以上の割合で酸化チタンの表面から内部に含有させた光触媒が開示されており、これらの金属のイオンを30KeV以上の高エネルギーに加速して、酸化チタンに照射し、該金属イオンを酸化チタンに導入する。また、特許文献2(特開平11−290697号公報)では、真空槽内に遷移金属を含む固体と前記遷移金属がドーピングされる酸化チタンとを保持する工程と、前記真空槽内の内部に金属プラズマを発生させ、発生した前記金属プラズマを照射することにより前記遷移金属をドーピングした光触媒酸化チタンが開示されている。しかしながら、これらの発明は、酸化チタンに金属イオンをドーピングするために金属イオンを高エネルギーに加速したり、また金属プラズマを発生させるなど非常に特別な装置を用いなければならず、工業的規模での製造には適していない。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献3(特開平12−237598号公報)には、酸化チタンなどの半導体の表面に、前記半導体の構成成分とは異なる成分であるB、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pt、Hg、Pb、Bi、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である陽イオンを含む媒体を接触させることにより、前記半導体に前記陽イオンを含有させる第1の工程と、前記陽イオンを含有する前記半導体を還元雰囲気において加熱する第2の工程とを含むことを特徴とする可視光応答型光触媒の製造方法が開示されている。しかしながら、このような方法により金属イオンを酸化チタンにドープした光触媒は必ずしも触媒活性が十分ではなく、さらなる改良が望まれていた。
【0006】
上記のように遷移金属などの金属イオンを酸化チタンにドープし可視光領域での触媒活性を発現させた光触媒の他、特許文献4(WO 01/010552号公報)では、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換すること、または酸化チタン結晶の格子間に窒素原子をドーピングすること、または酸化チタンの結晶粒界に窒素原子をドーピングすることのいずれかまたはこれらの組み合わせにより酸化チタン結晶に窒素原子を含有させた光触媒物質であり、酸化チタン結晶に窒素を含有させたTi−O−N構成を有した、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質が開示されている。このような光触媒物質を得る方法として、窒素ガス雰囲気中での酸化チタンのスパッタリングが挙げられているが、製造コストが高く工業的規模での製造は困難である。また、酸化チタンをアンモニア雰囲気で焼成するという簡便な方法の開示もあるが、酸化チタン中に十分に窒素原子がドーピングされず、結果として得られる光触媒は触媒活性が十分ではなかった。
【0007】
一方、上記のように酸化チタンを光触媒として用いる場合、水あるいは有機溶剤等の分散媒に懸濁し分散させてコーティング剤や塗料を調製し、これを基材に塗布して乾燥し、光触媒用酸化チタン塗膜を形成する。この場合、酸化チタン粉末の溶媒への分散性が問題となる。具体的には、酸化チタン粉末を溶媒に分散させた後、酸化チタン粉末が凝集して沈殿してしまう。
【0008】
このような酸化チタン粉末の分散性に関する問題を解決するために、シリカ、アルミナ等の元来分散性の高い疎水性物質を酸化チタン粉末表面に被覆する方法が知られており、例えば特許文献5(特開平5−281726号公報)では、アルミニウム塩基性塩水溶液を酸でpHを10.5〜12.0に調節し、これに二酸化チタンスラリーを混合し、次いでこれを酸で中和して二酸化チタン粉末表面に酸化アルミニウム水和物を均一に析出させる方法が開示されている。また、特許文献6(特開2001−220141号公報)および特許文献7(特開2001−262005号公報)では、ペルオクソチタン酸含有分散媒に酸化チタン粉末を均一分散してなる酸化チタン分散体または酸化チタン光触媒用塗膜形成用組成物が開示されている。
【0009】
しかし、これらの酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物は、分散媒に対する酸化チタン粉末の分散性は改善されているものの、これら酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を使用して形成した酸化チタン塗膜の硬度や密着性が低く、酸化チタン塗膜によりコーティングした基材を加工した際に、塗膜が剥がれてしまうという問題があった。
【0010】
また、WO98/03607には、(a)金属酸化物からなる光触媒粒子と(b)シリカ微粒子、シリコーン樹脂皮膜を形成可能なシリコーン樹脂皮膜前駆体、およびシリカ皮膜を形成可能なシリカ皮膜前駆体からなる群から選択される少なくとも一種と、(c)溶媒とを少なくとも含む組成物が開示されている。また、この組成物の(b)成分としては、加水分解性シラン誘導体が使用でき、酸化チタン光触媒粒子を基板面に固定化することが記載されている。しかし、この酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物は、十分な分散性が得られておらず、塗布後の基板に防曇性と硬度の高い塗膜を付与しているものの、基板と塗膜の密着性や塗膜の平滑性については記載がない。また、これらの先行文献は、本発明に用いられる硫黄含有酸化チタン粉末を用いた光触媒塗膜形成用組成物について開示したものではない。
【特許文献1】特開平9−262482号公報
【特許文献2】特開平11−290697号公報
【特許文献3】特開平12−237598号公報
【特許文献4】WO 01/010552号公報
【特許文献5】特開平5−281726号公報
【特許文献6】特開2001−220141号公報
【特許文献7】特開2001−262005号公報
【特許文献8】WO 98/03607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、可視光領域において高い光吸収特性を発現する酸化チタン粉末を含む塗膜形成用組成物およびその製造方法、これを基材に塗布した際、硬度および密着性に優れる光触媒用塗膜および光触媒用塗布物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸および分散媒を、特定の配合割合で含有する酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布して得られる塗膜は、硬度および密着性に優れると共に、可視光領域において、高い光吸収特性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸および分散媒を含有し、オルガノシラン化合物の配合量が、質量基準で、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物中の酸化チタン濃度に対し、ペルオクソチタン酸との合計濃度で0.37〜2.2倍であり、かつペルオクソチタン酸との合計濃度の30%以上、99%以下であることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸、アルカンスルホン酸塩および分散媒を含有し、前記アルカンスルホン酸塩の含有量が、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物中、0.04〜0.4質量%であることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物およびペルオクソチタン酸を、分散媒に分散して、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を得ることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法を提供するものである。また、本発明は、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布し、乾燥して得られる光触媒用塗膜を提供し、また、本発明は、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布し、乾燥して得られる光触媒用塗布物を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基板に塗布して得られる光触媒用塗膜は、硬度および密着性に優れ、容易に剥がれることはなく、更に可視光領域において高い光吸収特性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物で用いる硫黄含有酸化チタン粉末としては、特に制限されず、酸化チタン中に硫黄原子を含有するものの他、さらにこの硫黄原子は酸化チタン中のチタン原子と置換して陽イオンとして酸化チタン中にドープされたものを含むものである。このような硫黄含有酸化チタン粉末を得る方法としては、四塩化チタンと酸素また必要に応じて水素ガスなどの可燃性ガスや水蒸気を気相で反応させて得られたルチル型またはアナターゼ型酸化チタンと硫黄または含硫黄化合物を混合し焼成する方法、硫酸チタニル、硫酸チタンおよび硫酸チタンアンモニウムを焼成する方法、硫酸チタニル、硫酸チタンおよび硫酸チタンアンモニウムなどの含チタン水溶液を加水分解させ得られた酸化チタンと硫黄または含硫黄化合物を混合し焼成する方法、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を加水分解させ得られた酸化チタンと硫黄または含硫黄化合物を混合し焼成する方法および塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得る際、この何れかの段階において硫黄または含硫黄化合物を混合させ、次いで硫黄または含硫黄化合物を含む固形物を焼成する方法等が挙げられる。このうち、塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得る際、この何れかの段階において硫黄または含硫黄化合物を混合させ、次いで硫黄または含硫黄化合物を含む固形物を焼成する方法(以下、単に、「塩化チタン水溶液を用いた方法」とも言う)で得られる硫黄含有酸化チタン粉末は、これを光触媒として用いた場合、可視光領域で光触媒活性が発現する点で好ましい。以下、塩化チタン水溶液を用いた方法について詳述する。
【0018】
塩化チタン水溶液は、三塩化チタン水溶液または四塩化チタン水溶液である。三塩化チタン水溶液は、例えば塩酸に金属チタンを溶解することで得ることができる。金属チタンとしてはチタン粉末やスポンジ状チタン、または切粉などのチタンスクラップなどが用いられる。四塩化チタン水溶液は、四塩化チタンを水または塩酸に溶解させて得ることができる。塩化チタン水溶液中のチタン濃度は任意であるが、製造効率また得られる酸化チタン粉末の粒径などを考慮するとチタン含有量が1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜5質量%である。また塩化チタン水溶液は不純物成分が少なく純度が高いことが望ましく、具体的にはアルミニウム、鉄、及びバナジウムがそれぞれ1ppm以下、ケイ素及びスズがそれぞれ10ppm以下である。
【0019】
また、上記塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得るが、この固形物は、ルチル型あるいはアナターゼ型の酸化チタン、オルトチタン酸、メタチタン酸、水酸化チタンまたは酸化チタン水和物であり粉末状あるいはコロイド状である。また、この固形物は、硫黄又は硫黄化合物を含む場合も同様の結晶及び形態である。このような固形物を得る方法として、具体的には以下のような方法が挙げられる。
【0020】
(1)塩化チタン水溶液を還流下で加熱し、加水分解して固形物を析出させる方法。このとき塩素ガスが発生するが、加圧または還流器などにより塩酸ガスの発生を抑え、低pH領域で加水分解することによって、より微粒の酸化チタン粉末を得ることができる。
(2)塩化チタン水溶液中に、アンモニアなどのアルカリを添加し、固形物を析出させる方法。このときこれらのアルカリの内、金属成分を含まないアンモニアまたはアンモニア水で中和することが望ましい。
(3)アンモニア水などのアルカリ溶液中に、塩化チタン水溶液を添加して固形物を析出させる方法。
【0021】
上記のように塩化チタン水溶液を加水分解あるいは中和して得られた後、オルトチタン酸またはメタチタン酸が生成するが、光触媒活性を向上させるためにはメタチタン酸が生成するような条件で塩化チタン水溶液を加水分解または中和することが望ましい。その後、塩酸分やアルカリ成分など不純物を除去するために洗浄を行ない、必要に応じて分離、乾燥して粉末状にする。さらに、必要に応じて結晶水などの水分を除去するために乾燥を行なう。固形物の分離方法は、フィルターあるいはフィルタープレスによる濾過、デカンテーション、遠心分離などで行なわれ、乾燥は固形物の粒子の凝集を防止できる方法が好ましく、スプレードライヤーや市販の乾燥機が用いられる。また、得られた固形物は、乾燥せずに懸濁状態のまま硫黄または含硫黄化合物と混合させたり、焼成工程を行なってもよい。
【0022】
上記(2)の方法において、塩化チタン水溶液をNaOH、KOH、Ca(OH)(消石灰)などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属等の金属の水酸化物で中和し、得られる酸化チタン粉末にこれらの金属成分が残留しても差し支えなく、最終的に得られる光触媒の特性にあまり影響はない。例えば、塩化チタン水溶液に消石灰溶液を添加し中和して酸化チタン水和物を析出させ、この懸濁液にポリ塩化アルミニウムのような凝集剤を添加して固形物を沈降分離させる。このような方法は、酸性水などの排水処理などに一般に用いられている工程であり、工業的規模で非常に効率よく酸化チタン粉末を製造することが可能となる。
【0023】
また、塩化チタン水溶液を硫酸アンモニウム存在下に加水分解して固形物を得ることによって、最終的に得られる酸化チタン光触媒の活性などの性能を向上させることができる。さらに、塩化チタン水溶液を硫酸アンモニウムの存在下に加水分解し、次いでアンモニアで中和して固形物を得ることによっても、最終的に得られる酸化チタン光触媒の活性などの性能を向上させることができる。
【0024】
さらに、上記の塩化チタン水溶液を中和または加水分解して固形物を得る時点で、最終的に得られる硫黄含有酸化チタン粉末の酸化チタンの結晶型を制御することもできる。酸化チタンの結晶型はルチル型、アナターゼ型あるいはこれらの混合結晶であり、光触媒の用途に応じて酸化チタンの結晶型(ルチル化率)を制御する。得られる酸化チタン粉末のルチル化率は、上記の塩化チタン水溶液の加水分解またはアルカリによる中和の時間または速度によって制御することができる。例えば四塩化チタン水溶液をアンモニア水などで中和する場合、短時間で中和するとアナターゼリッチのルチル化率の低い酸化チタンが得られ、また中和反応の速度を遅くするとルチル化率の高い酸化チタンを得ることができる。中和速度としてはチタン原子を質量換算で1分当たり50〜500gが好ましく、より好ましくは100〜300gである。1分当たり200gのチタン原子を中和する速度より遅い場合、ルチル化率が50%以上となる。また、塩化チタン水溶液を中和あるいは加水分解する際の反応系のpHによっても得られる酸化チタンのルチル化率を制御でき、例えば酸化チタン粉末が析出した後、低pH雰囲気で熟成反応するとルチル化率が向上し、ルチル型とアナターゼ型の混合結晶を得ることができる。
上記のようにして得られる固形物は、加水分解あるいはアルカリでの中和の条件により平均粒径、比表面積また結晶形を制御することができるが、光触媒の活性を向上させるためには、比表面積が大きいほうが好ましい。具体的にはBET比表面積で50m/g以上、好ましくは100m/g以上、特に好ましくは150〜300m/gである。結晶形としてはルチル型、アナターゼ型またはルチル型とアナターゼ型の混合結晶であって、かつ比表面積が50m/g以上の微粒酸化チタンが好ましい。
【0025】
硫黄または含硫黄化合物を混合する何れかの段階としては、固形物を調製する前の段階、固形物を析出させる段階または固形物を析出させた後の段階の何れかの段階であり、そのうち、原料である前記塩化チタン水溶液への混合か、または析出した固形物への混合が望ましい。
【0026】
塩化チタン水溶液を用いた方法で用いられる含硫黄化合物は、常温で液体あるいは固体の化合物が好ましく、含硫黄無機化合物、含硫黄有機化合物あるいは金属の硫化物などが挙げられる。具体的にはチオエーテル類、チオ尿素類、チオアミド類、チオアルコール類、チオアルデヒド類、チアジル類、メルカプタール類、チオール類、チオシアン酸塩類などであり、具体的な化合物としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、スルホ酢酸、チオフェノール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チオベンゾフェノン、ビチオフェン、フェノチアジン、スルホラン、チアジン、チアゾール、チアジアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、チアントレン、チアン、チオアセトアニリド、チオアセトアミド、チオベンズアミド、チオアニソール、チオニン、メチルチオール、チオエーテル、チオシアン、硫酸、スルホン酸類、スルホニウム塩類、スルホンアミド類、スルフィン酸類、スルホキシド類、スルフィン類、スルファン類などが挙げられる。なおこれらの化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記のなかでも含硫黄有機化合物が好ましく、さらには酸素原子を含まず硫黄原子と窒素原子が混在した有機化合物が特に好ましく、具体的には、チオ尿素およびジメチルチオ尿素が好ましい。
【0028】
塩化チタン水溶液を用いた方法において、固形物と硫黄または含硫黄化合物の混合物の形成方法として、具体的には以下のような方法が挙げられる。
(1)塩化チタン水溶液に硫黄または含硫黄化合物を混合し、次いで加水分解またはアルカリで中和して固形物と硫黄または含硫黄化合物との混合物を得る方法、
(2)塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得、次いで該固形物と硫黄または含硫黄化合物とを混合し混合物を得る方法、
(3)塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得、得られた固形物を仮焼し、次いで該固形物と硫黄または含硫黄化合物とを混合し混合物を得る方法、
(4)塩化チタン水溶液に硫黄または含硫黄化合物を混合し、次いで加水分解またはアルカリで中和して固形物を形成した後、さらに硫黄または含硫黄化合物を該固形物と混合して固形物と硫黄または含硫黄化合物の混合物を得る方法
などが挙げられる。
【0029】
塩化チタン水溶液を用いた方法で用いる固形物と混合する硫黄または含硫黄化合物の量は、硫黄原子の質量に換算すると、固形物に対し、通常1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜30質量%である。硫黄または含硫黄化合物の混合量が少ないと、最終的に光触媒酸化チタンに含まれる硫黄原子量が少なくなり、十分な可視光吸収が起こらなくなる。
【0030】
硫黄または含硫黄化合物はそのまま固体あるいは液体のまま混合してもよいが、純水やアルコールなどの溶媒に溶解させ、あるいは懸濁させて混合してもよく、この場合、硫黄または含硫黄化合物が固形物中に均一に分散し、結果として硫黄原子が酸化チタン中に均一にドープした性能のよい硫黄含有酸化チタン粉末を得ることができる。
【0031】
次いで、上記で得られた固形物と硫黄または含硫黄化合物の混合物を焼成し酸化チタン光触媒を形成するが、焼成温度は200〜800℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは400〜500℃である。含硫黄有機化合物を用いた場合、その化合物が分解し硫黄原子が遊離して固形物中のチタン原子と置換する温度で行なう。また焼成雰囲気は、空気、酸素などの酸化性雰囲気、水素ガスやアンモニアガスなどの還元性雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性雰囲気、また真空下などで行なわれる。これらのなかでも水素ガスのような還元性雰囲気で行なうことによって、より可視光領域での光触媒活性が向上し好ましい。水素ガスのような還元性ガスのみでもよいが、水素と酸素の混合ガス、水素と酸素と不活性ガスの混合ガスの雰囲気で焼成することも有効である。さらに焼成時に硫黄が蒸発しまたは含硫黄化合物が分解して硫黄成分が焼成炉から排出しないよう、ある程度硫黄成分の分圧を保持するよう焼成雰囲気を保つことが重要である。炭素原子を有する含硫黄有機化合物など焼成時に分解して炭酸ガスなどの副生ガスを発生する場合は、ある程度焼成雰囲気から排出したほうがよい。従って、焼成する際の容器は、完全にオープンまたは密閉のものではなく、ある程度の圧力がかかりかつ副生ガスを排出し得るような、上部が開放され、この上部に非固定式の蓋体を備えた円筒形、皿状または矩形などの容器が好ましい。
【0032】
上記のようにして得られた硫黄含有酸化チタン粉末は、必要に応じて洗浄して遊離の硫黄成分やその他を除去する。また、粒子の分散性を向上させるために界面活性剤などにより表面処理することもできる。
【0033】
上記のようにして得られた硫黄含有酸化チタン粉末は、淡黄色または黄色の粉末であり酸化チタン中に硫黄原子を含有するものであり、さらにこの硫黄原子は酸化チタン中のチタン原子と置換して陽イオンとして酸化チタン中にドープされたものを含む。具体的にはTi1−xの化学式で表すことができ、チタン原子に対する硫黄原子の含有量であるxは0.0001以上、好ましくは0.0005以上、より好ましくは0.001〜0.008である。また、硫黄原子は酸化チタン中に陽イオンとして含まれるものだけではなく、硫黄酸化物あるいは硫黄分子として酸化チタン粒子表面に吸着したものや、酸化チタンの結晶粒界に含有されるものを含む。最終的に酸化チタン光触媒に含有する硫黄成分は、硫黄原子として0.01質量%以上、好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.03〜1質量%である。また、平均粒径はSEM写真画像観察による1次粒子の粒径で5〜50nm、BET比表面積は100〜250m/gである。
【0034】
また、前記硫黄含有酸化チタン粉末は、可視光の光吸収特性に優れており、紫外可視拡散反射スペクトルを測定して、波長300〜350nmの吸光度の積分値を1として、通常、波長350〜400nmの吸光度の積分値が0.3〜0.9であり、且つ波長400〜500nmの吸光度の積分値が0.3〜0.9であり、好ましくは波長350〜400nmの吸光度の積分値が0.4〜0.8であり、且つ波長400〜500nmの吸光度の積分値が0.4〜0.8であり、さらに好ましくは、波長350〜400nmの吸光度の積分値が0.5〜0.7であり、且つ波長400〜500nmの吸光度の積分値が0.5〜0.75である。
【0035】
また、前記硫黄含有酸化チタン粉末は、酸化チタンがルチル型、アナターゼ型、あるいはルチル型およびアナターゼ型の混合結晶であって、かつ硫黄原子を含有するが、好ましくはルチル型およびアナターゼ型の混合結晶であり、酸化チタンのルチル化率は5〜99%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%である。前記硫黄含有酸化チタン粉末はルチル型とアナターゼ型の混合結晶であるが、この他に非晶質の酸化チタンを含んでいてもよい。
【0036】
ルチル化率の測定方法は、ASTM D 3720−84に従いX線回折パターンにおける、ルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Ia)を求め次式の算出式より求めることができる。
【0037】
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Ia)
式中、ピーク面積(Ir)及びピーク面積(Ia)は、X線回折スペクトルの該当回折線におけるベースラインから突出した部分の面積をいい、その算出方法は公知の方法で行えばよく、例えば、コンピュータ計算、近似三角形化などの手法により求められる。
【0038】
本発明において、硫黄含有酸化チタンの含有量は、その用途に応じて適宜調製すればよいが、得られる酸化チタンコーティング塗膜の透明度等を考慮すると、塗膜形成用組成物中、0.8〜20質量%、好ましくは1.0〜20質量%、であることが好ましい。硫黄含有酸化チタン粉末の濃度が0.8質量%未満では、光触媒性能を十分に発揮できない。一方硫黄含有酸化チタン粉末の濃度が20質量%を越えると、分散媒中の酸化チタンの分散性が低下する。
【0039】
本発明の塗膜形成用組成物で用いるオルガノシラン化合物は、塗膜の硬度を高めるために使用される。オルガノシラン化合物としては、オルガノシラン及びオルガノシラン化合物の加水分解物が挙げられる。オルガノシランとしては、アルキルアルコキシシラン、アルコキシシラン、またこれらのオリゴマーまたは重合物が用いられる。
【0040】
オルガノシラン化合物としては、例えば、下記一般式(1);
Si(OR4―x (1)
(式中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよく、Rは炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、xは0≦x≦3の整数である。)または一般式(2);
【0041】
【化1】

【0042】
(式中、RおよびRは炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基、水酸基または塩素原子、臭素原子およびフッ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、RとRは同一または異なってもよく、RおよびRは炭素数1から6のアルキル基であり、RとRは同一または異なり、mは繰返しの数であり2〜20である。)で表される化合物を例示することができる。
【0043】
具体的なオルガノシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン等を挙げることができ、テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等が好ましく、特にテトラエトキシシランが好ましい。オルガノシランの加水分解物としては、例えばpHを1〜4に調製した水溶媒中にオルガノシランを添加、攪拌して得られるものが使用できる。オルガノシランの加水分解物としては、テトラエトキシシランの加水分解物が好適である。
【0044】
本発明の塗膜形成用組成物で用いる分散媒としては、特に制限されず、例えば水および有機溶媒であり、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類やケトン類が挙げられ、このうち、水が好ましい。分散媒は1種又は2種以上を混合して使用することができる。また、分散媒が水の場合、市販のペルオクソチタン酸水溶液はそのまま使用することもできる。
【0045】
本発明の塗膜形成用組成物において、オルガノシラン化合物の配合量は、塗膜形成用組成物中、質量基準で、酸化チタン濃度に対し、ペルオクソチタン酸との合計濃度で0.37〜2.2倍、かつペルオクソチタン酸との合計濃度の30%以上、99%以下である。ペルオクソチタン酸との合計濃度で0.37倍未満、ペルオクソチタン酸との合計濃度に対し30%未満であると塗膜の硬度が低くなる。一方、2.2倍を超えると、塗膜表面にクラックが入り、平滑性が損なわれる。
【0046】
本発明の塗膜形成用組成物において、ペルオクソチタン酸は、硫黄含有酸化チタン粉末の凝集を抑制し、分散性を向上させるため、また塗膜の硬度を高めるために使用される。ペルオクソチタン酸は、ペルオキシチタン酸又は過酸化チタンともいわれるもので、その構造はH4TiO5、Ti(OOH)(OH)3またはTiO3・2H2Oで表される。ペルオクソチタン酸は、通常、黄色、黄褐色または赤褐色の透明粘性水溶液(ゾル溶液)で取り扱われ、水溶液の場合、そのpHは5〜8でありほぼ中性領域にある。ペルオクソチタン酸は市販されているものを使用することができ、例えば「PTA−85」、「PTA−170」(いずれも(株)鯤コーポレーション製のペルオクソチタン酸水溶液)が挙げられる。また、公知の方法によって調製することも可能であり、例えば、四塩化チタン水溶液をアンモニア水で加水分解し、水酸化チタンを含むスラリーを生成し、これを洗浄した後、過酸化水素を加えてペルオキシチタン酸水溶液を得ることができる。ペルオクソチタン酸溶液の溶媒としては特に制限されないが、例えば水及びエタノール、メタノールなどのアルコール類が挙げられ、このうち、水が好ましい。ペルオクソチタン酸水溶液を使用する場合は、市販のペルオクソチタン酸水溶液をそのまま使用することができる。使用するペルオクソチタン酸溶液の濃度は、硫黄含有酸化チタン粉末の添加濃度、酸化チタン光触媒コーティング液の用途等によって適宜決定される。ペルオクソチタン酸は、その塩またはキレート剤との錯体を含む意味である。ペルオクソチタン酸塩としては、ペルオクソチタン酸アンモニウム、ペルオクソチタン酸ナトリウム、ペルオクソチタン酸カリウム、ペルオクソチタン酸マグネシウム、ペルオクソチタン酸カルシウムなどが挙げられる。また、キレート剤との錯体としては、上記ペルオクソチタン酸の塩と酒石酸、クエン酸などのキレート剤との錯体が挙げられ、具体的には、チタンペルオクソクエン酸アンモニウムなどである。
【0047】
本発明の塗膜形成用組成物中、該ペルオクソチタン酸とオルガノシラン化合物の合計濃度は0.6〜3.4質量%とすることが好ましい。また、該ペルオクソチタン酸とオルガノシラン化合物の質量比は、得られる塗膜の硬度、密着度、塗膜表面の平滑度等から、ペルオクソチタン酸:オルガノシラン化合物で1:99〜70:30、好ましくは3:97〜70:30である。
【0048】
本発明の塗膜形成用組成物は、任意成分として、適宜ペルオキシチタン酸以外の分散材を含んでいてもよい。分散材としては、ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノまたはジアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテルの1種または2種以上を使用することが好ましい。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、高分子ポリアクリル酸アミン塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等を挙げることができ、特にポリアクリル酸アンモニウム(例えば、「ポイズ532A」、「ポイズ2100」;花王(株)製)、高分子ポリアクリル酸アミン塩(例えば、「HIPLAAD ED214」;楠本化成(株)製)が好ましい。なお、分散材はペルオクソチタン酸と組み合わせて用いれば、更に硫黄含有酸化チタン粉末の分散性を向上することができる。分散材の配合量は適宜決定される。
【0049】
本発明の塗膜形成用組成物は、更に任意成分として、スルホン酸型化合物を含んでいてもよい。スルホン酸型化合物を配合させることにより、表面が疎水性の基板に対する密着性を改善することができる。スルホン酸型化合物としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。添加量は、塗膜形成用組成物中、0.04〜0.4質量%、好ましくは0.04〜0.2質量%である。添加量が少ないと濡れ性改善効果が得られない。一方、添加量が多いと光触媒性能へ悪影響を及ぼす。
【0050】
本発明の塗膜形成用組成物は、更に任意成分として、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムの1種以上を混合することができる。これにより、塗膜形成用組成物中の酸化チタンの分散性を向上させ、ゲル化を防止することができる。これらリン酸化合物の配合量は適宜決定される。
【0051】
本発明の塗膜形成用組成物は、特にペルオクソチタン酸を含有するものは、分散媒中、硫黄含有酸化チタン粉末の分散性に優れる。このため、例えば、常温静置下、少なくとも24時間までは凝集することはない。
【0052】
本発明の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を製造する方法としては、例えば硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物およびペルオクソチタン酸を、分散媒に分散して調製する方法が挙げられる。また、必要に応じてペルオクソチタン酸以外の分散剤やスルホン酸型化合物を配合することができ、また、必要に応じてリン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上を配合することもできる。特にpH1〜4、好ましくは2〜4に調整した分散媒中にオルガノシランを添加してオルガノシラン加水分解物溶液を得、これにペルオクソチタン酸水溶液を混合し、更に硫黄含有酸化チタン粉末の混合液を混合する方法が好ましい。
【0053】
以下にその一例を示す。先ず酸でpHを1〜4、好ましくは2〜4に調製した純水中に、テトラエトキシシランを添加し、スターラーで一昼夜攪拌し加水分解させテトラエトキシシラン加水分解物水溶液を作成する。酸としては、鉱酸あるいは有機酸で調整することができる。鉱酸としては塩酸、硫酸、硝酸、などが挙げられ、有機酸としては酢酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。これらのなかでも得られる光触媒活性に影響を及ぼさないものが好ましく、硝酸あるいはリン酸が好ましい。さらに、上記のテトラエトキシシラン加水分解物水溶液に、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムの1種以上を混合すれば、最終的に硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーと混合して塗膜形成用組成物を形成した際の酸化チタンの分散性向上やゲル化防止の効果を得ることができる。一方、硫黄含有酸化チタン粉末は分散媒に分散させ、硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーを得る。これにペルオクソチタン酸水溶液を所定の割合で混合し、ペルオクソチタン酸と硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーの混合水溶液を調製する。硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーとペルオクソチタン酸水溶液を分散する方法としては、特に制限されず、ホモジナイザー、ヘンシェルミキサー及びスーパミキサー等の高速撹拌、振とう、ビーズミル等の公知の手段を用いて分散することができる。また、分散する際は、ボールミルやジェットミル等により湿式粉砕処理することもできる。こうして得られたテトラエトキシシラン加水分解物の水溶液と、ペルオクソチタン酸と硫黄含有酸化チタンを含むスラリーを混合し、本発明の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を得ることができる。
【0054】
また、分散媒に硫黄含有酸化チタン粉末を分散させる際、適宜ペルオキシチタン酸以外の分散材を用いることもできる。分散材としては、上記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物で用いるものと同様のものが挙げられる。
【0055】
さらに、オルガノシラン化合物の分散液に、スルホン酸型化合物を添加することができる。これにより、基材の表面が疎水性の場合は、基板との密着性を改善することができる。スルホン酸型化合物およびその配合量としては、上記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物のものと同様である。スルホン酸型化合物は、アルカンスルホン酸が好ましい。スルホン酸型化合物を硫黄含有酸化チタン粉末の分散液に分散させて使用した場合、当該分散液中の硫黄含有酸化チタン粉末がうまく分散せず、好ましくない。
【0056】
前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を用いて本発明の光触媒用塗膜を形成するが、この塗膜は、該組成物を基材表面に塗布し、乾燥して形成する。このときの塗布の方法は公知の方法でよく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法などが挙げられる。次いで、塗布した後乾燥して酸化チタン膜を形成するが、本発明では、特別な加熱処理を施さなくとも常温〜100℃未満で乾燥すれば、強固でかつ光触媒活性の高い塗膜が形成される。また、100℃〜500℃の範囲で加熱処理することによっても、より強固な塗膜を形成することができる。また塗膜の厚さは光触媒活性が発現しうる程度でかつ塗膜の強度が確保し得る程度であれば特に制限はないが、通常0.1〜10μm、好ましくは0.5〜2μmである。
【0057】
本発明の光触媒用塗膜組成物が塗布される基材としては、ステンレス、炭素鋼、アルミ、チタンなどの金属、ガラス、コンクリート、アスファルト、スレート、石材、木材、繊維、プラスティックなどの有機材料、紙などの酸性領域において耐蝕性のない材料及び耐熱性のない材料を含むあらゆる材料が利用できる。また、表面が疎水処理された基材でもかまわない。疎水処理には、例えば、シリコーン系の撥水処理剤によるコーティングなどがある。
【0058】
本発明の酸化チタン光触媒塗布用塗膜組成物は、光触媒として活性の高い硫黄含有酸化チタンを含有しており、またオルガノシラン化合物、好適には更にペルオクソチタン酸を含有しているため、ガラス、タイル、鏡、金属、レンズ等にコーティングすると、光触媒活性が高いことに加え、硬度、密着度の高い光触媒塗膜が得られる。また、本発明の酸化チタン光触媒塗布用塗膜組成物は、可視光領域での吸収特性に優れた光触媒塗膜が得られるため、紫外光の光源がなくても、太陽光や室内における蛍光灯による光源で十分に光触媒活性が再現する。また、得られる光触媒塗膜の硬度、密着度に優れるため、コーティングを施した基材を加工しても光触媒塗膜が破壊されることがない点で非常に有利であり、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明器具の汚れ防止等を目的とした光触媒塗料として広く適応することができる。
【0059】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0060】
実施例で得られた硫黄含有酸化チタン光触媒の評価は以下のように実施した。
(1)硫黄含有酸化チタン光触媒中の硫黄含有量の測定
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を付帯した電界放出型走査型電子顕微鏡(Field Emission-SEM:FE-SEM)(日立電子走査顕微鏡S−4700)にて酸化チタン中の硫黄原子の定量分析を行なった。
【0061】
(2)ルチル化率の測定
ASTM D 3720−84に従いX線回折パターンにおける、ルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Ia)を求め前述の算出式より求めた。なお、X線回折測定条件は下記の通りである。
【0062】
(X線回折測定条件)
回折装置 RAD−1C(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流40kV、30mA
スリット DS−SS:1度、RS:0.15mm
モノクロメータグラファイト
測定間隔 0.002度
計数方法 定時計数法
(4)イソプロピルアルコール(IPA)の分解性能
10mlの攪拌機付きのガラス製フラスコに、初期濃度50mmol/リットルのイソプロピルアルコールのアセトニトリル溶液5mlを充填し、これに硫黄含有酸化チタン光触媒粉末を0.1g装入し、攪拌しながら410nm以下の波長の光をフィルターによりカットした光源を照射して、1時間、2時間および5時間後にイソプロピルアルコールのアセトニトリル溶液を少量採取し、それぞれガスクロマトグラフィーにてイソプロピルアルコールの濃度を測定した。分解性能は各時間における濃度を初期濃度に対する比率(%)で示した。
【0063】
(5)メチレンブルー(MB)の分解性能
150mlの攪拌機付きのガラス製フラスコに、初期濃度50μmol/リットルのメチレンブルー水溶液100mlを充填し、これに硫黄含有酸化チタン光触媒粉末を0.2g装入し、塩酸でpHを3に調整し遮光して12時間以上攪拌しながら放置し、メチレンブルー水溶液を少量採取し、分光光度計にてメチレンブルーの濃度を測定して、このときの濃度を所期濃度とした。その後、攪拌しながら410nm以下の波長の光をフィルターによりカットした光源を照射して、1時間、2時間および5時間後にメチレンブルー水溶液を少量採取し、それぞれ分光光度計にてメチレンブルーの濃度を測定した。分解性能は各時間における濃度を初期濃度に対する比率(%)で示した。
【0064】
参考例1
(硫黄含有酸化チタン粉末の製造)
攪拌器を具備した容量1000ミリリッターの丸底フラスコにチタン濃度4質量%の四塩化チタン水溶液297g挿入し、次いで60℃に加熱した。次いで反応系のpHが7.4に維持させるようにアンモニア水を瞬時に添加して中和し、60℃で1時間保持し、メタチタン酸の固形物を得た。得られた固形物を濾過し純水で洗浄し、これに100mlの純水に溶解させたチオ尿素9.7gを添加し30分攪拌した。その後、固形物を60℃で乾燥して、ボールミルにて粉砕して酸化チタン粉末とチオ尿素の混合物を得た。この混合物をアルミナ製のルツボに蓋をしない状態で充填しこれを焼成炉に装入し、水素を3容量%混合した空気中にて400℃で3時間焼成した。その後ボールミルにて粉砕して、純水で洗浄した後、60℃で乾燥して淡黄色の酸化チタン光触媒を得た。得られた酸化チタン光触媒中の硫黄含有量を測定したところ0.25質量%、ルチル化率は10%、比表面積は180m/gであった。この硫黄含有酸化チタン光触媒は、可視光領域での光触媒作用を有し、また、表1に示すように、IPAやMBなどの有機物の分解性能に優れている。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1〜実施例13および比較例1〜比較例10
(酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法)
硝酸でpH3に調製した水溶液中にテトラエトキシシランを添加し、スターラーで一昼夜攪拌し加水分解を行い、テトラエトキシシラン加水分解物水溶液を作成した。一方、純水に対して、参考例1で得られた硫黄含有酸化チタン粉末を所定の割合で添加し、分散させ、硫黄含有酸化チタン粉末の水スラリーを作成した。この水スラリーに、ペルオクソチタン酸水溶液を所定の割合で添加後、ボールミル、ビーズミルで処理を行い、ペルオクソチタン酸と硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーの混合水溶液を作成した。ボールミルの運転条件はメディア径10mmφ、回転数60rpm、粉砕時間16時間、ビーズミルの運転条件は、メディア径0.03〜0.1mmφ、周速6〜8m/秒、運転時間2時間で行った。この混合水溶液に、上記テトラエトキシシラン加水分解物水溶液を添加して攪拌し、硫黄含有酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物(コーティング液)を作成した。なお、コーティング液中の硫黄含有酸化チタン粉末濃度、ペルオクソチタン酸とテトラエトキシシランの合計濃度(以下、固形分濃度)、ペルオクソチタン酸とテトラエトキシシランの混合比は、表2に示すように調製した。なお、実施例1〜実施例13、比較例1〜比較例10で得られたコーティング液は、室温、24時間の静置下において、凝集が認められず、分散性に優れたものであった。
【0067】
(酸化チタン光触媒塗膜の形成および評価)
実施例および比較例において、酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物に親水性の表面を有するスライドガラスをディップし、その後24時間常温乾燥して得られた酸化チタン光触媒塗膜を形成した。酸化チタン光触媒塗膜の評価はその硬度と密着度を測定することによって行った。硬度と密着度は、以下のように測定した。その結果を表3〜表9に示す。
【0068】
(6)鉛筆硬度試験
JIS−K5400(手かき法)に準拠して鉛筆硬度試験を行い、塗膜の破れを目視で評価した。○は傷無し、△は若干の傷、×は明らかな傷を示す。
(7)密着強度試験
JIS−K5400(テープ剥離試験)準拠して密着強度試験を行った。光触媒塗膜を塗布したスライドガラスにカッターナイフで碁盤目状(10×10=100マス)に切り傷をつけ、セロハンテープを付着させてから、セロハンテープを塗面に対して直角に保ち瞬間的に引き剥がし、傷の状態を目視で観察し、評価点数(0〜10)を付けた。評価点数もJIS−K5400(テープ剥離試験)準拠した。例えば、10はまったく剥がれないこと、8は切り傷の交点にわずかな剥がれがあって正方形の一目一目には剥がれが無く、欠損部の面積は全長方形面積の5%以内、2は切り傷による剥がれの幅が広く、欠損部の面積は全長方形面積の35〜65%以内、0は剥がれの面積が全長方形の65%以上を示す。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
酸化チタン濃度を変更した表3、表4より、同じ固形分濃度、組成であっても、酸化チタン濃度により鉛筆硬度は異なる。酸化チタン濃度が高いほど、塗膜の鉛筆硬度が低くなる。同じ酸化チタン濃度(1.6質量%)で固形分濃度を変化させた結果を表5〜9に示す。テトラエトキシシラン濃度が0である比較例1、比較例5では、鉛筆硬度の良好な塗膜を得ることができなかった。また、テトラエトキシシラン濃度が高くなるに従い、鉛筆硬度が高くなることがわかる。なお、テトラエトキシシラン濃度4.0質量%の比較例10の場合、鉛筆硬度、密着度は良好なものの、得られる塗膜にクラックが生じた。
固形分濃度(ペルオクソチタン酸とテトラエトキシシランの合計濃度)が低く、かつテトラエトキシシラン濃度が低い比較例2、比較例3、比較例6、比較例7では、鉛筆硬度H以上の塗膜が得られなかった。したがって、固形分濃度と酸化チタン濃度比を0.6質量%/1.6質量%=0.375(実施例5)〜3.4質量%/1.6質量%=2.13(実施例14)で、固形分濃度中のテトラエトキシシラン濃度を30質量%以上に調製した場合、鉛筆硬度がH以上で且つ表面平滑性に優れる良好な塗膜を得ることができる。なお、ペルオクソチタン酸濃度が0である比較例4、比較例8、比較例9の場合、鉛筆硬度、密着度は良好であるもの、他の実施例と比較して表面の平滑性が劣った。したがって、ペルオクソチタン酸:テトラエトキシシランの質量比が10:90〜70:30の場合は鉛筆硬度、密着度とも良好な塗膜を得ることができる。
【0078】
実施例14〜実施例18および参考例2
(酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法)
硝酸でpH3に調製した水溶液中にテトラエトキシシランを添加し、スターラーで一昼夜攪拌し加水分解を行い、その後、アルカンスルホン酸ナトリウム(商品名「親水促進剤」;(クラリアントジャパン(株)製))を加え、テトラエトキシシラン加水分解物水溶液を作成した。一方、純水に対して、参考例1で得られた硫黄含有酸化チタン粉末を所定の割合で添加し、分散させ、硫黄含有酸化チタン粉末の水スラリーを作成した。この水スラリーに、ペルオクソチタン酸水溶液、ポリアクリル酸アンモニウム(商品名「ポイズ2100」;(花王(株)製))を所定の割合で添加後、ボールミル、ビーズミルで処理を行い、ペルオクソチタン酸、ポリアクリル酸アンモニウムおよび硫黄含有酸化チタン粉末含有スラリーの混合水溶液を作成した。ボールミル、ビーズミルの運転条件は、上記の実施例と同様である。この混合水溶液に、上記テトラエトキシシラン加水分解物水溶液を添加して攪拌し、硫黄含有酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物(コーティング液)を作成した。なお、参考例2、実施例13〜実施例18で得られたコーティング液は、室温、24時間の静置下において、凝集が認められず、分散性に優れたものであった。
【0079】
コーティング液中の硫黄含有酸化チタン粉末濃度は1.3質量%、ペルオクソチタン酸とテトラエトキシシランの濃度は1.5質量%(混合比は3対97)、ポリアクリル酸アンモニウムの添加量は0.05質量%となるように調製した。塗膜形成組成物中のアルカンスルホン酸ナトリウムの濃度を0質量%(参考例2)、0.04質量%(実施例14)、0.08質量%(実施例15)、0.12質量%(実施例16)、0.16質量%(実施例17)、0.20質量%(実施例18)と変化させた。
(酸化チタン光触媒塗膜の形成および評価)
実施例14〜実施例18および参考例2の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物は、疎水性の表面を有する基板をディップし、その後24時間常温乾燥し、酸化チタン光触媒塗膜を形成した。この疎水性の表面を有する基板は、主成分がメチルトリメトキシシランである信越化学工業(株)製のアルコキシオリゴマー(製品名KR400)にアクリル樹脂板をディップし、常温で24時間乾燥し作製した。酸化チタン光触媒塗膜の評価は、その硬度と密着度を測定することによって行った。硬度と密着度の測定は、上記実施例と同様である。その結果を表10に示す。なお、参考例2の鉛筆硬度は3B、密着度0であった。一方、上記実施例の親水性の表面を有するスライドガラスをディップした場合の鉛筆硬度は6H、密着度10であった。表10に結果を示す。表10からわかるように、アルカンスルホン酸を添加することにより、疎水性の基材上においても良好な塗膜を得ることができる。
【0080】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸および分散媒を含有し、オルガノシラン化合物の配合量が、質量基準で、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物中の酸化チタン濃度に対し、ペルオクソチタン酸との合計濃度で0.37〜2.2倍であり、かつペルオクソチタン酸との合計濃度の30%以上、99%以下であることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項2】
前記硫黄含有酸化チタン粉末は、塩化チタン水溶液を加水分解またはアルカリで中和して固形物を得、この何れかの段階において硫黄または含硫黄化合物を混合させ、次いで硫黄または含硫黄化合物を含む固形物を焼成して得られるものであることを特徴とする請求項1記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項3】
前記オルガノシラン化合物が、オルガノシランまたはオルガノシランの加水分解物である請求項1または2に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項4】
前記オルガノシランが、テトラエトキシシランである請求項3に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項5】
前記硫黄含有酸化チタン粉末の配合量が、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物中、0.8〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項6】
更に、アルカンスルホン酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項7】
硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸、アルカンスルホン酸塩および分散媒を含有し、前記アルカンスルホン酸塩の含有量が、前記酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物中、0.04〜0.4質量%であることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項8】
更に、ポリアクリル酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項9】
更に、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムの1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項10】
硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物およびペルオクソチタン酸を、分散媒に分散して、請求項1記載の組成物を得ることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項11】
更に、アルカンスルホン酸塩を、分散媒に分散することを特徴とする請求項10記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項12】
硫黄含有酸化チタン粉末、オルガノシラン化合物、ペルオクソチタン酸及びアルカンスルホン酸塩を、分散媒に分散して、請求項7記載の組成物を得ることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項13】
更に、ポリアクリル酸塩を、分散媒に分散することを特徴とする請求項11又は12記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項14】
オルガノシランまたはその加水分解物を分散媒に混合した水溶液と、ペルオクソチタン酸を含む硫黄含有酸化チタン粉末を分散させたスラリーを混合して、請求項1記載の組成物を得ることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項15】
オルガノシランまたはその加水分解物およびアルカンスルホン酸塩を分散媒に混合した水溶液と、ペルオクソチタン酸を含む硫黄含有酸化チタン粉末を分散させたスラリーを混合して、請求項7記載の組成物を得ることを特徴とする酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項16】
前記オルガノシランの加水分解物は、オルガノシランをpH1〜4に調整した水溶媒中に添加して加水分解したものであることを特徴とする請求項14または15記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項17】
前記オルガノシランまたはその加水分解物を分散媒に混合した水溶液は、更にアルカンスルホン酸塩を含有することを特徴とする請求項14に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布し、乾燥して得られる光触媒用塗膜。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布し、乾燥して得られる光触媒用塗布物。
【請求項20】
請求項6または7に記載の酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を疎水性の表面を有する基材に塗布し、乾燥して得られる光触媒用塗布物。

【公開番号】特開2006−312730(P2006−312730A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103875(P2006−103875)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】