酸化チタン及びその製造方法
【課題】粒子形状の崩れが少なく、しかも、所望の黒色度を有する低次酸化チタンを得る。
【解決手段】二酸化チタンをプロパン、エタン等の炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱して、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンを製造する。この方法では、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する酸化チタン、板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有する酸化チタン等が得られ、黒色顔料、赤外線吸収剤、導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤等に用いる。
【解決手段】二酸化チタンをプロパン、エタン等の炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱して、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンを製造する。この方法では、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する酸化チタン、板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有する酸化チタン等が得られ、黒色顔料、赤外線吸収剤、導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤等に用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン及びその製造方法に関する。また、その酸化チタンを含有する黒色顔料、導電剤、赤外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンはチタン−酸素を主成分とした化合物であり、白色顔料等に用いられる二酸化チタン(TiO2)のほかに、二酸化チタンに比べて酸素の割合が少ない化合物である一般にTiO2−xで表される低次酸化チタンも知られている。低次酸化チタンは黒色系の色彩、導電性を有することから、黒色顔料として樹脂、塗料、インキ、化粧料等に配合して、あるいは、導電性付与剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体等に配合して用いられている。また、低次酸化チタンは略球状等の粒子形状が一般的であるが、針状、板状などの特殊な形状を有する粒子も作製でき、その形状異方性を利用して黒色顔料、導電性付与剤のほかに、各種樹脂組成物、ゴム組成物の強度付与剤としても用いられる。
【0003】
低次酸化チタンは、例えば、二酸化チタンと金属チタン粉末との混合物を不活性ガス雰囲気中で800〜1200℃の温度に加熱して得られる(特許文献1参照)。また、高温度での加熱の際の形状のくずれを防止するために、針状あるいは板状二酸化チタンの表面に高密度シリカを被着した後、金属チタン粉末、ヒドラジン、メチルアミン、水素、一酸化炭素などの還元性物質で加熱還元すると、高密度シリカカプセルで内包した低次酸化チタンが得られる(特許文献2参照)。更に、特許文献1、2には二酸化チタンをアンモニアガス雰囲気下700〜1000℃程度の温度で加熱することを記載しており、このようにして得られた酸窒化チタンはチタン−酸素−窒素を主成分とし一般にTiNyOzで表され、チタンブラックとも称される化合物であり、低次酸化チタンと同様に黒色系の色彩、導電性等を有する。また、二酸化チタンをコーティングした板状基体をメタン、エタン、プロパン等の炭化水素の気流中で400〜1000℃で反応させると、二酸化チタンを部分的に還元し炭素を含有した板状顔料が得られる(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−92824号公報
【特許文献2】特許第3005319号公報
【特許文献3】特開平5−194875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低次酸化チタンのTiO2−xで表されるxの値、すなわち還元度によって青色系〜黒色系の色彩を呈するように変わるが、特許文献1、2に記載の金属チタン粉末を用いた還元では、固体の還元剤であるため還元度の均一性、微調整ができ難く、所望の特性に調整し難いという問題がある。また、還元度の均一性を確保するためには必要以上の金属チタン粉末を用いることになるが、還元反応後に酸化された金属チタン粉末が多く残存することになり、それを除去する手段が必要になるなどの問題もある。また、アンモニアガスの使用では黒色系の色彩を呈するものの窒素を含むTiNyOzで表される化合物となってTiO2とは異なる結晶構造に変化するため、原料の二酸化チタンの粒子形状が維持され難く、yの値すなわち窒化度を高めた場合には粒子形状が崩れ易いという問題があり、また、酸素に触れると酸化し易いという問題もある。一方、特許文献3には、炭化水素ガスの気流中で板状基体を反応させると、板状基体にコーティングした二酸化チタンが部分的に還元されて炭素を含有した板状顔料が得られるが、その色彩は銀灰色、淡灰色であって、所望の色彩を呈するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、還元度の均一性を図り、粒子形状の崩れが少なく、しかも、所望の黒色度を有する低次酸化チタンを得るべく検討を重ねた結果、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度で加熱すると、所望の還元反応が進み、粒子形状の崩れが少ない低次酸化チタンが得られることなどを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタン、(2)二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することを特徴とする酸化チタンの製造方法、(3)一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が8〜50の範囲である酸化チタンを含有する黒色顔料などである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸化チタンは、一般式TiO2−xで表されるxの値が0.05〜0.8の範囲となる低次酸化チタン粒子を含有しているものであって、還元度が比較的低いにもかかわらず、特定量の炭素元素を含有しているために十分な黒色度を有する。このため、カーボンブラック等の代替として黒色系顔料に用いることができ、樹脂、塗料、プラスチック、化粧料、紙等に配合したり、金属、プラスチック、紙等の板、シートの表面に塗膜を形成したり練り込んだりして用いることができる。
また、本発明の酸化チタンは可視光、赤外線の吸収が良いことから、赤外線吸収剤としても使用することができる。また、xの値が0.05〜0.8となる低次酸化チタン粒子と炭素元素を含有していることから導電性を有し、導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤としても用いることができる。更に、針状、板状等の形状を維持することができるため導電性付与剤、プラスチック補強剤等の強度付与剤などにも用いることができ、そのためより多くの用途に利用拡大が図れる。
また、本発明の酸化チタンの製造方法は、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱する方法であって、炭化水素ガスを用いることから還元度の均一性が確保でき、還元度の調整が容易であるため均質な酸化チタンが製造できる。しかも、原料の二酸化チタン粒子の形状を維持し易いため、種々の形状を有する酸化チタンを簡便、かつ、容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の酸化チタンは、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有した、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンである。本発明の酸化チタンは、例えばTi2O3、Ti3O5、Ti4O7などの低次酸化チタンを含むものであって、粒子の全部を低次酸化チタンで構成していても良く、あるいは、低次酸化チタンと二酸化チタンとの混合物又は混晶物で構成しても良く、好ましくは、粒子内部に二酸化チタンが存在し、粒子表面又はその近傍に低次酸化チタンが存在した状態で構成しても良いが、それらの成分組成を一般式TiO2−xで表した時にxの値が0.05〜0.8の範囲であることが重要である。xの値は二酸化チタンからの酸素の減少割合、すなわち還元度を示し、xの値が大きくなると還元が進み、酸素の割合が少なくなる。本発明ではxの値が0.05〜0.8の範囲であり、0.05よりも小さくなると黒色度や導電性等が十分でなくなり、また、0.8よりも大きいと還元が進み過ぎて、粒子形状が維持され難くなり、また、酸化安定性も懸念される。このため、好ましいxの範囲は0.1〜0.7であり、より好ましい範囲は0.15〜0.5である。xの値は、酸化チタンを大気中で熱分析(TG−DTA)を行ってその増加分を酸化に伴う酸素の増加量としてxの値を算出する。本発明の酸化チタンは、チタンと酸素を主成分としたものであって、チタン−酸素−窒素を主成分とした酸窒化チタン(チタンブラック)とは異なる。
【0010】
本発明の酸化チタンは、酸化チタン重量に対して炭素元素を0.01〜5重量%含有している。炭素元素はカーボン、アモルファスカーボン、炭化物あるいは炭化水素として酸化チタンの粒子表面あるいは粒子内部に存在しており、チタン原子と結合した状態であっても良く、酸化チタン粒子の表面に付着した状態であっても良い。好ましい形態としては、粒子内部に二酸化チタンが存在し、粒子表面又はその近傍に低次酸化チタンと炭素元素とが存在する状態である。また、炭素元素としては黒色度の点からカーボン、アモルファスカーボンが好ましい。炭素元素の含有量が前記の範囲であれば低次酸化チタン粒子の形状維持に効果があるので好ましく、0.01重量%より少ないと低次酸化チタン粒子の形状が崩れ易くなり、5重量%より多くなると黒色系顔料として使用する際に溶媒、樹脂等への分散性が悪くなる。このため、好ましい炭素含有量は0.05〜5.0重量%程度であり、より好ましい範囲は0.05〜4.0重量%程度であり、更に好ましい範囲は0.1〜3.0重量%程度である。一方、低次酸化チタン粒子の形状によって炭素含有量の好ましい範囲が異なる場合がある。具体的には、後述する板状形状、特に薄片状を有する低次酸化チタンにおいて、厚みに対する板状長さの比が40以上の場合は炭素含有量が比較的少なくて良く、0.01〜3.0重量%程度が好ましく、0.05〜2.0重量%程度がより好ましく、0.1〜1.0重量%程度が更に好ましい。針状形状を有する低次酸化チタンの炭素含有量は、軸比が7以上の場合は0.3〜5.0重量%程度が好ましく、0.5〜3.0重量%程度がより好ましく、0.8〜2.5重量%程度が更に好ましい。炭素含有量は、有機元素(CHN)分析装置により測定し算出する。
【0011】
また、本発明の酸化チタンは、黒色系の色彩を有しており、純粋な黒色のほかに青味がかった黒色、紫がかった黒色、赤味がかった黒色、茶色味がかった黒色、灰色味がかった黒色など黒色のほかに別の色彩を呈していても良い。酸化チタンの明度、色相は、試料1.5gをガラス製の丸セル(日本電色社製、部品No.1483)に入れ、セルの底から、色差計(日本電色社製Color Meter NW−1)で測色し、Lab表色系により求める。黒色度はLab表色系の明度指数L値で表され、L値が小さいほど黒色度が強いことを示し、本発明の酸化チタンにおいてはL値が5〜70の黒色度を有することができる。L値が70より大きいと黒色度が低く黒色系顔料として使用し難く、また、5より小さいと粒子形状が維持され難くなり、また、酸化安定性も懸念される。このため、好ましいL値の範囲は8〜50であり、より好ましい範囲は10〜35である。また、L値と同様にして求められるLab表色系のa値、b値は色相彩度を表す指数であり、a値が正側に大きくなるほど赤味が強く負側に大きくなるほど緑味が強いことを示し、b値が正側に大きくなるほど黄味が強く負側に大きくなるほど青味が強いことを示す。本発明の酸化チタンにおいては例えばa値が−8〜+6程度、b値が−10〜+8程度の色相を有することができる。
【0012】
本発明の酸化チタンは、粒子形状、粒子径等を適宜調整することができ、針状、板状、粒状、略球状、球状等の形状のものとすることができる。具体的には、針状形状を有する低次酸化チタンは針状、棒状、紡錘状、繊維状、柱状等と呼ばれる軸比(長軸長さ/短軸長さ)が2以上を有するものも包含し、長軸長さ、短軸長さ、軸比等は任意のものを用いることができるが、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmのものが種々の用途に用いられることから好ましく、長軸長さが0.7〜8μm、短軸長さが0.02〜0.8μm、軸比3以上のものがより好ましい。軸比については5以上が更に好ましく、7以上が最も好ましい。また、板状形状を有する低次酸化チタンは板状、薄片状等と呼ばれる厚みに対する板状長さの比が3以上を有するものを包含し、板状長さ、厚み等は任意のものを用いることができるが、板状長さが1〜50μmであると種々の用途に用いられることから好ましく、板状長さが2〜40μm、厚みに対する板状長さの比が4以上のものがより好ましい。厚みに対する板状長さの比については10以上がより好ましく、20以上がより好ましく、30以上が更に好ましく、40以上が最も好ましい。また、粒状、略球状、球状等の低次酸化チタンでは、0.02〜0.5μmの範囲であると優れた隠蔽性を有するため好ましく、0.02〜0.25μmの範囲がより好ましく、0.03〜0.2μmの範囲が更に好ましく、0.03〜0.1μmの範囲が最も好ましい。低次酸化チタンや原料の二酸化チタンの粒子径や形状は、電子顕微鏡写真により観察することができ、粒子径は100個測定の個数平均値で表す。長軸長さは100個の針状二酸化チタン粒子についての最長長さの個数平均値を、短軸長さは粒子の最短長さの個数平均値で規定し、板状長さは100個の板状二酸化チタン粒子についての(板片の最長長さ+板片の最短長さ)/2の値の個数平均値で規定し、厚みは100個の板片についての個数平均厚みで規定する。
【0013】
本発明の酸化チタンは黒色系の色彩を有するため元来可視光(波長400〜800nmの範囲)の吸収が大きく、しかも、波長800nm以上での赤外線の吸収も大きい。具体的には、分光光度計(日本分光社製V−570)を用いて酸化チタン粉末0.3gを円筒セル(直径16mm、日本分光社製PSH−001型)に詰めて可視光−赤外線の反射スペクトルを測定する(比較試料として硫酸バリウム粉末を使用)と、波長800〜2500nmの範囲の領域において反射率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下とすることができる。
【0014】
本発明の酸化チタンは、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することにより製造することができる。加熱温度が前記範囲より低いと還元が進み難く、また、炭素元素の含有量が少なくなるため、所望の酸化チタンが得られ難いので好ましくなく、前記範囲より高いと焼結が進み粒子形状の崩れが生じ易いので好ましくない。このため、好ましい加熱温度は730〜1150℃程度の範囲であり、750〜1100℃程度がより好ましく、800〜1100℃程度が最も好ましい。加熱時間は二酸化チタンや炭化水素ガスの量によって異なるため適宜設定することになるが、操業上0.5〜20時間程度が適当であり、1〜10時間程度が好ましい。また、加熱を行った後冷却し、その後更に加熱を繰り返し行っても良い。加熱装置は、流動層装置、ロータリーキルン、トンネルキルン、静置炉等の公知のものを用いることができ、特に、ロータリーキルンが好ましい。炭化水素ガスとしては、例えば、ブタン、プロパン、エタン、メタン等の炭化水素ガスあるいはオクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン等の揮発性炭化水素を気化したガスを用いることができ、これらの1種又は2種以上を混合して用いても良い。特に還元性の強いプロパン、エタン及びメタンから選ばれる少なくとも一種の炭化水素ガスが好ましい。また、炭化水素を主成分とする天然ガス、都市ガス、液化石油ガス等の混合ガスを用いても良い。更に、窒素、アルゴン等の不活性ガス又は水素等の還元性ガスで炭化水素ガスを希釈して用いることもできる。
【0015】
本発明で用いる二酸化チタンは、通常のルチル型(R型)、アナターゼ型(A型)等の二酸化チタンのほかに、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンなどの二酸化チタンを包含する化合物である。水和酸化チタン、含水酸化チタンは、例えば、イルミナイト鉱、チタンスラグ等のチタン含有鉱石を必要に応じて粉砕し、硫酸で溶解させながらチタン成分と硫酸とを反応させて、硫酸チタニル(TiOSO4)を生成させ、静置分級、濾過した後、硫酸チタニルを加熱加水分解して得られる。水酸化チタンは、硫酸チタニル、塩化チタンをアルカリで中和して得られる。また、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタン等を200℃以上の温度で焼成した二酸化チタンを用いても良い。二酸化チタンの粒子形状、粒子径等は、得られる低次酸化チタンの所望の粒子形状、粒子径等に応じて適宜選択することができ、針状、板状、粒状、略球状、球状等の形状のものを用いることができる。
【0016】
針状二酸化チタンは、公知技術の方法を用いて製造することができる。具体的には特公平6−24977号公報等に記載されている公知の方法を用いることができ、例えば針状二酸化チタン核晶の存在下、チタン化合物、アルカリ金属化合物及びオキシリン化合物を700〜1000℃の温度で焼成して、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する二酸化チタンを得ることができる。このような針状二酸化チタンとしては石原産業社製のFTL−100、FTL−200、FTL−300等の針状二酸化チタンを用いることができる。
【0017】
また、板状二酸化チタンは、公知技術の方法を用いて製造することができる。例えばWO99/11574パンフレットに記載の方法を最適に用いて、板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有するものを得ることができる。具体的には、(1)チタン酸セシウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸カリウムマグネシウムなどの層状チタン酸金属塩を合成し、次いで、得られた層状チタン酸金属塩を水溶媒に懸濁した後、塩酸、硫酸、硝酸などの酸を添加し、金属イオンを抽出して層状チタン酸とし、次いで、層状チタン酸を400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(2)前記の(1)の方法で製造した層状チタン酸を水溶媒に懸濁した後、アミン化合物、アンモニウム化合物などの塩基性化合物を添加し、層間を膨潤させた後に400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(3)前記の(2)の方法で層間を膨潤させたチタン酸を振とうなどにより、層間を剥離して、シート状のチタン酸化合物を得、次いで、乾燥し、400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(4)前記の(3)の方法で得たシート状の二酸化チタンの懸濁液を噴霧乾燥して、シート状チタン酸化合物を貼り合わせた中空状微粉末を得、次いで、乾式粉砕と400℃程度以上の温度で焼成を行って板状二酸化チタンとする方法、(5)前記の(3)の方法で得たシート状の二酸化チタンの懸濁液を凍結乾燥して、シート状チタン酸化合物を貼り合わせた多孔質ゲルを得、次いで、乾式粉砕と400℃程度以上の温度で焼成を行って板状二酸化チタンとする方法などを用いることができる。
【0018】
二酸化チタンとしては、還元の際に、水が存在すると還元が進み難くなるので、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンより水分の少ない二酸化チタンを使用する方が好ましく、ルチル型よりアナターゼ型の二酸化チタンの方が還元され易いためより好ましい。このため、二酸化チタンの調製の際に原料を400℃以上の温度で焼成したもの、あるいは、水和酸化チタン、含水酸化チタン又は水酸化チタンを空気又は酸素含有ガスの雰囲気下あるいは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で400℃以上の温度で予め焼成したものを用いると粒子形状の崩れをより防止できるため好ましく、700〜1000℃程度の温度がより好ましい。このような二酸化チタンとしては石原産業社製のFTL−100、FTL−200、FTL−300等の針状二酸化チタン、石原産業社製のNSTB−1等の板状二酸化チタンを用いることができる。
【0019】
二酸化チタンを製造した後は、必要に応じて公知の方法により、乾式粉砕を行っても良く、あるいはスラリー化した後、湿式粉砕、脱水、乾燥し、乾式粉砕しても良い。また、粒子形状の崩れを防止するなどの目的で、二酸化チタンの表面に無機化合物、有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆しても良い。無機化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物等が挙げられ、また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。二酸化チタンの表面に無機化合物や有機化合物を被覆する場合は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、例えば二酸化チタンの乾式粉砕の際、スラリー化した際あるいは湿式粉砕した際に行うことができる。
【0020】
このようにして、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンを製造でき、また、低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素を付着したものを製造でき、加熱条件等を適宜調整することにより、二酸化チタンの粒子表面に低次酸化チタンと炭素元素とを存在させることができる。酸化チタンを製造した後は、必要に応じて公知の方法により、乾式粉砕を行っても良く、あるいはスラリー化した後、湿式粉砕、脱水、乾燥し、乾式粉砕しても良い。乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルベライザー等の摩砕粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機を用いることができる。湿式粉砕には縦型サンドミル、横型サンドミル等を用いることができる。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等を用いることができる。
【0021】
本発明の酸化チタンの粒子表面には、樹脂バインダーとの親和性、塗料保管中の経時安定性を向上させたり、生産性を改良するなどの目的で、無機化合物、有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆しても良い。無機化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物等が挙げられ、これらを1種被覆することも、2種以上の被覆を積層したり、2種以上の無機化合物を混合して被覆したりして、組合せて用いることもできる。これらの無機化合物が酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種であれば、更に好ましい。また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、(1)多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリプロパノールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。(2)アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。(3)有機ケイ素化合物としては、(a)ポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、両末端アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、両末端エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等)、(b)オルガノシラン類(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシランなどのアルキルシラン類、フェニルトリエトキシシランなどのフェニルシラン類、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのフルオロシラン類等の非反応性シラン類、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等)が挙げられる。(4)高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸等が、それらの金属塩としてはマグネシウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。(5)有機金属化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロフォスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのチタニウム系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレートなどのジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらは1種被覆することも、2種以上を組合せて被覆することもできる。被覆量は適宜設定できるが、酸化チタンに対し0.01〜30重量%程度の範囲であるのが好ましく、0.05〜10重量%程度の範囲がより好ましく、0.1〜5重量%程度の範囲が更に好ましい。酸化チタンの表面に無機化合物や有機化合物を被覆する場合は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、例えば酸化チタンの乾式粉砕の際、スラリー化した際あるいは湿式粉砕した際に行うことができる。湿式法で表面処理を行う場合、処理前又は処理中に酸化チタンを湿式粉砕することが好ましい。また、湿式法による表面処理は、水系、溶剤系のどちらでも実施することができるが、水系の方が、環境面、費用面、設備面で好ましい。但し、水系で処理する場合、特に湿式粉砕を行う場合は、水そのものあるいは水中の溶存酸素の影響で、低次酸化チタンが僅かに酸化されるので、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、酒石酸、ぶどう糖、次亜燐酸ナトリウム、N−N−ジエチルグリシンナトリウムなどの還元剤共存下で湿式粉砕するのが好ましい。
【0022】
本発明の酸化チタンは、黒色顔料として、赤外線吸収剤としてあるいは導電剤等として、塗料、インキやフィルム等のプラスチック成形物などの樹脂に配合すると、その優れた遮蔽性能(遮光性能)、黒色性能あるいは導電性能を利用した樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物には、本発明の酸化チタンを任意の量、好ましくは20重量%以上を配合し、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、さらに各種の添加剤を配合しても良い。塗料やインキとする場合であれば、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合する。塗膜形成材料としては例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネートなどの無機系成分を用いることができ、インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂、塩素化プロピレン樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを用いることができ特に制限はないが、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。また、プラスチックス成形物であれば、プラスチックス、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の酸化チタンとともに練り込み、フィルム状などの任意の形状に成形する。プラスチックスとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0024】
実施例1
針状二酸化チタン(石原産業社製FTL−100、長軸長さが1.7μm、短軸長さが0.13μm、軸比13のルチル型二酸化チタンである)を内径7.5cmの石英管に装入し、900℃に加熱した後、プロパンガス5ミリリットル/分と窒素ガス3リットル/分の混合ガスを流し、900℃の温度を2時間保持して、本発明の酸化チタン(試料A)を得た。
【0025】
実施例2
実施例1において、1000℃で加熱すること以外は実施例1と同様にして、本発明の酸化チタン(試料B)を得た。
【0026】
実施例3
板状二酸化チタン(石原産業社製NSTB−1、板状長さが15μm、厚み0.2μm、厚みに対する板状長さの比が75。アナターゼ型二酸化チタンに一部ルチル型二酸化チタンが混合したもの)を内径7.5cmの石英管に装入し、1100℃に加熱した後、プロパンガス20ミリリットル/分と窒素ガス3リットル/分の混合ガスを流し、1100℃の温度を1時間保持して、本発明の酸化チタン(試料C)を得た。
【0027】
比較例1
実施例1において、1000℃に加熱した後、水素と窒素の混合ガス(水素75容積%、窒素25容積%)2リットル/分を流し、1000℃の温度を5時間保持して、酸化チタン(試料D)を得た。
【0028】
比較例2
実施例1において用いた二酸化チタン(FTL−100)を比較試料Eとした。
【0029】
比較例3
実施例5において用いた二酸化チタン(NSTB−1)を比較試料Fとした。
【0030】
実施例及び比較例で得た試料A〜Fの組成、特性を表1に示す。また、試料A〜Fの粉末X線回折パターンを図1〜6に示し、試料A、C、D〜Fの電子顕微鏡写真を図7〜11に示し、下記条件によるレーザーラマン分光法の試料A、B、Eのラマンスペクトルを図12〜14に示し、更に、試料A、Bについて、可視光−赤外線の反射率を測定した結果を図15に示す。これらの結果から、本発明の酸化チタンは黒色であって、原料の二酸化チタンの粒子形状を維持していることがわかる。また、試料A〜Eの粉末X線回折の結果からルチル型二酸化チタン、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7などの低次酸化チタンのピークが確認でき、一方、ラマンスペクトルの結果から、試料の表面にはアモルファスカーボンが生成していることが確認できたため、低次酸化チタンの粒子表面に炭素元素が存在することがわかった。また、本発明の酸化チタンは可視光、赤外線の反射率が低いことがわかった。
【0031】
レーザーラマン分光法
(1)装置:T-64000(堀場Jobin Yvon)
(2)条件:
測定モード:マクロラマン
ビーム径:100μm
光源:Ar+レーザー/514.5nm
レーザーパワー:10mW
回折格子:Spectrograph 600gr/mm
分散:Single 21A/mm
スリット:100μm
検出器:CCD(Jobin Yvon 1024×256)
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の酸化チタンは、黒色顔料あるいは赤外線吸収剤として樹脂、プラスチック、塗料、インキ、化粧料、紙等に配合して用いられる。また、可視光、赤外線を遮光する光学部材として、例えばガラス、レンズ、フィルム等に配合して用いることもできる。また、本発明の酸化チタンは導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体、印画紙等に配合して用いられる。更に、針状、板状等の形状を維持することができるためプラスチック補強剤等の強度付与剤などにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1で得られた試料Aの粉末X線回折パターンである。
【図2】実施例2で得られた試料Bの粉末X線回折パターンである。
【図3】実施例3で得られた試料Cの粉末X線回折パターンである。
【図4】比較例1で得られた試料Dの粉末X線回折パターンである。
【図5】比較例2で得られた試料Eの粉末X線回折パターンである。
【図6】比較例3で得られた試料Fの粉末X線回折パターンである。
【図7】実施例1で得られた試料Aの電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例3で得られた試料Cの電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例1で得られた試料Dの電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例2で得られた試料Eの電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例3で得られた試料Fの電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例1で得られた試料Aのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図13】実施例2で得られた試料Bのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図14】比較例2で得られた試料Eのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図15】実施例1で得られた試料Aの可視光−赤外線反射スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例2で得られた試料Bの可視光−赤外線反射スペクトルを示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン及びその製造方法に関する。また、その酸化チタンを含有する黒色顔料、導電剤、赤外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンはチタン−酸素を主成分とした化合物であり、白色顔料等に用いられる二酸化チタン(TiO2)のほかに、二酸化チタンに比べて酸素の割合が少ない化合物である一般にTiO2−xで表される低次酸化チタンも知られている。低次酸化チタンは黒色系の色彩、導電性を有することから、黒色顔料として樹脂、塗料、インキ、化粧料等に配合して、あるいは、導電性付与剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体等に配合して用いられている。また、低次酸化チタンは略球状等の粒子形状が一般的であるが、針状、板状などの特殊な形状を有する粒子も作製でき、その形状異方性を利用して黒色顔料、導電性付与剤のほかに、各種樹脂組成物、ゴム組成物の強度付与剤としても用いられる。
【0003】
低次酸化チタンは、例えば、二酸化チタンと金属チタン粉末との混合物を不活性ガス雰囲気中で800〜1200℃の温度に加熱して得られる(特許文献1参照)。また、高温度での加熱の際の形状のくずれを防止するために、針状あるいは板状二酸化チタンの表面に高密度シリカを被着した後、金属チタン粉末、ヒドラジン、メチルアミン、水素、一酸化炭素などの還元性物質で加熱還元すると、高密度シリカカプセルで内包した低次酸化チタンが得られる(特許文献2参照)。更に、特許文献1、2には二酸化チタンをアンモニアガス雰囲気下700〜1000℃程度の温度で加熱することを記載しており、このようにして得られた酸窒化チタンはチタン−酸素−窒素を主成分とし一般にTiNyOzで表され、チタンブラックとも称される化合物であり、低次酸化チタンと同様に黒色系の色彩、導電性等を有する。また、二酸化チタンをコーティングした板状基体をメタン、エタン、プロパン等の炭化水素の気流中で400〜1000℃で反応させると、二酸化チタンを部分的に還元し炭素を含有した板状顔料が得られる(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−92824号公報
【特許文献2】特許第3005319号公報
【特許文献3】特開平5−194875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低次酸化チタンのTiO2−xで表されるxの値、すなわち還元度によって青色系〜黒色系の色彩を呈するように変わるが、特許文献1、2に記載の金属チタン粉末を用いた還元では、固体の還元剤であるため還元度の均一性、微調整ができ難く、所望の特性に調整し難いという問題がある。また、還元度の均一性を確保するためには必要以上の金属チタン粉末を用いることになるが、還元反応後に酸化された金属チタン粉末が多く残存することになり、それを除去する手段が必要になるなどの問題もある。また、アンモニアガスの使用では黒色系の色彩を呈するものの窒素を含むTiNyOzで表される化合物となってTiO2とは異なる結晶構造に変化するため、原料の二酸化チタンの粒子形状が維持され難く、yの値すなわち窒化度を高めた場合には粒子形状が崩れ易いという問題があり、また、酸素に触れると酸化し易いという問題もある。一方、特許文献3には、炭化水素ガスの気流中で板状基体を反応させると、板状基体にコーティングした二酸化チタンが部分的に還元されて炭素を含有した板状顔料が得られるが、その色彩は銀灰色、淡灰色であって、所望の色彩を呈するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、還元度の均一性を図り、粒子形状の崩れが少なく、しかも、所望の黒色度を有する低次酸化チタンを得るべく検討を重ねた結果、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度で加熱すると、所望の還元反応が進み、粒子形状の崩れが少ない低次酸化チタンが得られることなどを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタン、(2)二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することを特徴とする酸化チタンの製造方法、(3)一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が8〜50の範囲である酸化チタンを含有する黒色顔料などである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸化チタンは、一般式TiO2−xで表されるxの値が0.05〜0.8の範囲となる低次酸化チタン粒子を含有しているものであって、還元度が比較的低いにもかかわらず、特定量の炭素元素を含有しているために十分な黒色度を有する。このため、カーボンブラック等の代替として黒色系顔料に用いることができ、樹脂、塗料、プラスチック、化粧料、紙等に配合したり、金属、プラスチック、紙等の板、シートの表面に塗膜を形成したり練り込んだりして用いることができる。
また、本発明の酸化チタンは可視光、赤外線の吸収が良いことから、赤外線吸収剤としても使用することができる。また、xの値が0.05〜0.8となる低次酸化チタン粒子と炭素元素を含有していることから導電性を有し、導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤としても用いることができる。更に、針状、板状等の形状を維持することができるため導電性付与剤、プラスチック補強剤等の強度付与剤などにも用いることができ、そのためより多くの用途に利用拡大が図れる。
また、本発明の酸化チタンの製造方法は、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱する方法であって、炭化水素ガスを用いることから還元度の均一性が確保でき、還元度の調整が容易であるため均質な酸化チタンが製造できる。しかも、原料の二酸化チタン粒子の形状を維持し易いため、種々の形状を有する酸化チタンを簡便、かつ、容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の酸化チタンは、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有した、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンである。本発明の酸化チタンは、例えばTi2O3、Ti3O5、Ti4O7などの低次酸化チタンを含むものであって、粒子の全部を低次酸化チタンで構成していても良く、あるいは、低次酸化チタンと二酸化チタンとの混合物又は混晶物で構成しても良く、好ましくは、粒子内部に二酸化チタンが存在し、粒子表面又はその近傍に低次酸化チタンが存在した状態で構成しても良いが、それらの成分組成を一般式TiO2−xで表した時にxの値が0.05〜0.8の範囲であることが重要である。xの値は二酸化チタンからの酸素の減少割合、すなわち還元度を示し、xの値が大きくなると還元が進み、酸素の割合が少なくなる。本発明ではxの値が0.05〜0.8の範囲であり、0.05よりも小さくなると黒色度や導電性等が十分でなくなり、また、0.8よりも大きいと還元が進み過ぎて、粒子形状が維持され難くなり、また、酸化安定性も懸念される。このため、好ましいxの範囲は0.1〜0.7であり、より好ましい範囲は0.15〜0.5である。xの値は、酸化チタンを大気中で熱分析(TG−DTA)を行ってその増加分を酸化に伴う酸素の増加量としてxの値を算出する。本発明の酸化チタンは、チタンと酸素を主成分としたものであって、チタン−酸素−窒素を主成分とした酸窒化チタン(チタンブラック)とは異なる。
【0010】
本発明の酸化チタンは、酸化チタン重量に対して炭素元素を0.01〜5重量%含有している。炭素元素はカーボン、アモルファスカーボン、炭化物あるいは炭化水素として酸化チタンの粒子表面あるいは粒子内部に存在しており、チタン原子と結合した状態であっても良く、酸化チタン粒子の表面に付着した状態であっても良い。好ましい形態としては、粒子内部に二酸化チタンが存在し、粒子表面又はその近傍に低次酸化チタンと炭素元素とが存在する状態である。また、炭素元素としては黒色度の点からカーボン、アモルファスカーボンが好ましい。炭素元素の含有量が前記の範囲であれば低次酸化チタン粒子の形状維持に効果があるので好ましく、0.01重量%より少ないと低次酸化チタン粒子の形状が崩れ易くなり、5重量%より多くなると黒色系顔料として使用する際に溶媒、樹脂等への分散性が悪くなる。このため、好ましい炭素含有量は0.05〜5.0重量%程度であり、より好ましい範囲は0.05〜4.0重量%程度であり、更に好ましい範囲は0.1〜3.0重量%程度である。一方、低次酸化チタン粒子の形状によって炭素含有量の好ましい範囲が異なる場合がある。具体的には、後述する板状形状、特に薄片状を有する低次酸化チタンにおいて、厚みに対する板状長さの比が40以上の場合は炭素含有量が比較的少なくて良く、0.01〜3.0重量%程度が好ましく、0.05〜2.0重量%程度がより好ましく、0.1〜1.0重量%程度が更に好ましい。針状形状を有する低次酸化チタンの炭素含有量は、軸比が7以上の場合は0.3〜5.0重量%程度が好ましく、0.5〜3.0重量%程度がより好ましく、0.8〜2.5重量%程度が更に好ましい。炭素含有量は、有機元素(CHN)分析装置により測定し算出する。
【0011】
また、本発明の酸化チタンは、黒色系の色彩を有しており、純粋な黒色のほかに青味がかった黒色、紫がかった黒色、赤味がかった黒色、茶色味がかった黒色、灰色味がかった黒色など黒色のほかに別の色彩を呈していても良い。酸化チタンの明度、色相は、試料1.5gをガラス製の丸セル(日本電色社製、部品No.1483)に入れ、セルの底から、色差計(日本電色社製Color Meter NW−1)で測色し、Lab表色系により求める。黒色度はLab表色系の明度指数L値で表され、L値が小さいほど黒色度が強いことを示し、本発明の酸化チタンにおいてはL値が5〜70の黒色度を有することができる。L値が70より大きいと黒色度が低く黒色系顔料として使用し難く、また、5より小さいと粒子形状が維持され難くなり、また、酸化安定性も懸念される。このため、好ましいL値の範囲は8〜50であり、より好ましい範囲は10〜35である。また、L値と同様にして求められるLab表色系のa値、b値は色相彩度を表す指数であり、a値が正側に大きくなるほど赤味が強く負側に大きくなるほど緑味が強いことを示し、b値が正側に大きくなるほど黄味が強く負側に大きくなるほど青味が強いことを示す。本発明の酸化チタンにおいては例えばa値が−8〜+6程度、b値が−10〜+8程度の色相を有することができる。
【0012】
本発明の酸化チタンは、粒子形状、粒子径等を適宜調整することができ、針状、板状、粒状、略球状、球状等の形状のものとすることができる。具体的には、針状形状を有する低次酸化チタンは針状、棒状、紡錘状、繊維状、柱状等と呼ばれる軸比(長軸長さ/短軸長さ)が2以上を有するものも包含し、長軸長さ、短軸長さ、軸比等は任意のものを用いることができるが、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmのものが種々の用途に用いられることから好ましく、長軸長さが0.7〜8μm、短軸長さが0.02〜0.8μm、軸比3以上のものがより好ましい。軸比については5以上が更に好ましく、7以上が最も好ましい。また、板状形状を有する低次酸化チタンは板状、薄片状等と呼ばれる厚みに対する板状長さの比が3以上を有するものを包含し、板状長さ、厚み等は任意のものを用いることができるが、板状長さが1〜50μmであると種々の用途に用いられることから好ましく、板状長さが2〜40μm、厚みに対する板状長さの比が4以上のものがより好ましい。厚みに対する板状長さの比については10以上がより好ましく、20以上がより好ましく、30以上が更に好ましく、40以上が最も好ましい。また、粒状、略球状、球状等の低次酸化チタンでは、0.02〜0.5μmの範囲であると優れた隠蔽性を有するため好ましく、0.02〜0.25μmの範囲がより好ましく、0.03〜0.2μmの範囲が更に好ましく、0.03〜0.1μmの範囲が最も好ましい。低次酸化チタンや原料の二酸化チタンの粒子径や形状は、電子顕微鏡写真により観察することができ、粒子径は100個測定の個数平均値で表す。長軸長さは100個の針状二酸化チタン粒子についての最長長さの個数平均値を、短軸長さは粒子の最短長さの個数平均値で規定し、板状長さは100個の板状二酸化チタン粒子についての(板片の最長長さ+板片の最短長さ)/2の値の個数平均値で規定し、厚みは100個の板片についての個数平均厚みで規定する。
【0013】
本発明の酸化チタンは黒色系の色彩を有するため元来可視光(波長400〜800nmの範囲)の吸収が大きく、しかも、波長800nm以上での赤外線の吸収も大きい。具体的には、分光光度計(日本分光社製V−570)を用いて酸化チタン粉末0.3gを円筒セル(直径16mm、日本分光社製PSH−001型)に詰めて可視光−赤外線の反射スペクトルを測定する(比較試料として硫酸バリウム粉末を使用)と、波長800〜2500nmの範囲の領域において反射率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下とすることができる。
【0014】
本発明の酸化チタンは、二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することにより製造することができる。加熱温度が前記範囲より低いと還元が進み難く、また、炭素元素の含有量が少なくなるため、所望の酸化チタンが得られ難いので好ましくなく、前記範囲より高いと焼結が進み粒子形状の崩れが生じ易いので好ましくない。このため、好ましい加熱温度は730〜1150℃程度の範囲であり、750〜1100℃程度がより好ましく、800〜1100℃程度が最も好ましい。加熱時間は二酸化チタンや炭化水素ガスの量によって異なるため適宜設定することになるが、操業上0.5〜20時間程度が適当であり、1〜10時間程度が好ましい。また、加熱を行った後冷却し、その後更に加熱を繰り返し行っても良い。加熱装置は、流動層装置、ロータリーキルン、トンネルキルン、静置炉等の公知のものを用いることができ、特に、ロータリーキルンが好ましい。炭化水素ガスとしては、例えば、ブタン、プロパン、エタン、メタン等の炭化水素ガスあるいはオクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン等の揮発性炭化水素を気化したガスを用いることができ、これらの1種又は2種以上を混合して用いても良い。特に還元性の強いプロパン、エタン及びメタンから選ばれる少なくとも一種の炭化水素ガスが好ましい。また、炭化水素を主成分とする天然ガス、都市ガス、液化石油ガス等の混合ガスを用いても良い。更に、窒素、アルゴン等の不活性ガス又は水素等の還元性ガスで炭化水素ガスを希釈して用いることもできる。
【0015】
本発明で用いる二酸化チタンは、通常のルチル型(R型)、アナターゼ型(A型)等の二酸化チタンのほかに、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンなどの二酸化チタンを包含する化合物である。水和酸化チタン、含水酸化チタンは、例えば、イルミナイト鉱、チタンスラグ等のチタン含有鉱石を必要に応じて粉砕し、硫酸で溶解させながらチタン成分と硫酸とを反応させて、硫酸チタニル(TiOSO4)を生成させ、静置分級、濾過した後、硫酸チタニルを加熱加水分解して得られる。水酸化チタンは、硫酸チタニル、塩化チタンをアルカリで中和して得られる。また、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタン等を200℃以上の温度で焼成した二酸化チタンを用いても良い。二酸化チタンの粒子形状、粒子径等は、得られる低次酸化チタンの所望の粒子形状、粒子径等に応じて適宜選択することができ、針状、板状、粒状、略球状、球状等の形状のものを用いることができる。
【0016】
針状二酸化チタンは、公知技術の方法を用いて製造することができる。具体的には特公平6−24977号公報等に記載されている公知の方法を用いることができ、例えば針状二酸化チタン核晶の存在下、チタン化合物、アルカリ金属化合物及びオキシリン化合物を700〜1000℃の温度で焼成して、長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する二酸化チタンを得ることができる。このような針状二酸化チタンとしては石原産業社製のFTL−100、FTL−200、FTL−300等の針状二酸化チタンを用いることができる。
【0017】
また、板状二酸化チタンは、公知技術の方法を用いて製造することができる。例えばWO99/11574パンフレットに記載の方法を最適に用いて、板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有するものを得ることができる。具体的には、(1)チタン酸セシウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸カリウムマグネシウムなどの層状チタン酸金属塩を合成し、次いで、得られた層状チタン酸金属塩を水溶媒に懸濁した後、塩酸、硫酸、硝酸などの酸を添加し、金属イオンを抽出して層状チタン酸とし、次いで、層状チタン酸を400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(2)前記の(1)の方法で製造した層状チタン酸を水溶媒に懸濁した後、アミン化合物、アンモニウム化合物などの塩基性化合物を添加し、層間を膨潤させた後に400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(3)前記の(2)の方法で層間を膨潤させたチタン酸を振とうなどにより、層間を剥離して、シート状のチタン酸化合物を得、次いで、乾燥し、400℃程度以上の温度で焼成して板状二酸化チタンとする方法、(4)前記の(3)の方法で得たシート状の二酸化チタンの懸濁液を噴霧乾燥して、シート状チタン酸化合物を貼り合わせた中空状微粉末を得、次いで、乾式粉砕と400℃程度以上の温度で焼成を行って板状二酸化チタンとする方法、(5)前記の(3)の方法で得たシート状の二酸化チタンの懸濁液を凍結乾燥して、シート状チタン酸化合物を貼り合わせた多孔質ゲルを得、次いで、乾式粉砕と400℃程度以上の温度で焼成を行って板状二酸化チタンとする方法などを用いることができる。
【0018】
二酸化チタンとしては、還元の際に、水が存在すると還元が進み難くなるので、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンより水分の少ない二酸化チタンを使用する方が好ましく、ルチル型よりアナターゼ型の二酸化チタンの方が還元され易いためより好ましい。このため、二酸化チタンの調製の際に原料を400℃以上の温度で焼成したもの、あるいは、水和酸化チタン、含水酸化チタン又は水酸化チタンを空気又は酸素含有ガスの雰囲気下あるいは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で400℃以上の温度で予め焼成したものを用いると粒子形状の崩れをより防止できるため好ましく、700〜1000℃程度の温度がより好ましい。このような二酸化チタンとしては石原産業社製のFTL−100、FTL−200、FTL−300等の針状二酸化チタン、石原産業社製のNSTB−1等の板状二酸化チタンを用いることができる。
【0019】
二酸化チタンを製造した後は、必要に応じて公知の方法により、乾式粉砕を行っても良く、あるいはスラリー化した後、湿式粉砕、脱水、乾燥し、乾式粉砕しても良い。また、粒子形状の崩れを防止するなどの目的で、二酸化チタンの表面に無機化合物、有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆しても良い。無機化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物等が挙げられ、また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。二酸化チタンの表面に無機化合物や有機化合物を被覆する場合は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、例えば二酸化チタンの乾式粉砕の際、スラリー化した際あるいは湿式粉砕した際に行うことができる。
【0020】
このようにして、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンを製造でき、また、低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素を付着したものを製造でき、加熱条件等を適宜調整することにより、二酸化チタンの粒子表面に低次酸化チタンと炭素元素とを存在させることができる。酸化チタンを製造した後は、必要に応じて公知の方法により、乾式粉砕を行っても良く、あるいはスラリー化した後、湿式粉砕、脱水、乾燥し、乾式粉砕しても良い。乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルベライザー等の摩砕粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機を用いることができる。湿式粉砕には縦型サンドミル、横型サンドミル等を用いることができる。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等を用いることができる。
【0021】
本発明の酸化チタンの粒子表面には、樹脂バインダーとの親和性、塗料保管中の経時安定性を向上させたり、生産性を改良するなどの目的で、無機化合物、有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆しても良い。無機化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物等が挙げられ、これらを1種被覆することも、2種以上の被覆を積層したり、2種以上の無機化合物を混合して被覆したりして、組合せて用いることもできる。これらの無機化合物が酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種であれば、更に好ましい。また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、(1)多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリプロパノールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。(2)アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。(3)有機ケイ素化合物としては、(a)ポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、両末端アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、両末端エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等)、(b)オルガノシラン類(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシランなどのアルキルシラン類、フェニルトリエトキシシランなどのフェニルシラン類、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのフルオロシラン類等の非反応性シラン類、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等)が挙げられる。(4)高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸等が、それらの金属塩としてはマグネシウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。(5)有機金属化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロフォスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのチタニウム系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレートなどのジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらは1種被覆することも、2種以上を組合せて被覆することもできる。被覆量は適宜設定できるが、酸化チタンに対し0.01〜30重量%程度の範囲であるのが好ましく、0.05〜10重量%程度の範囲がより好ましく、0.1〜5重量%程度の範囲が更に好ましい。酸化チタンの表面に無機化合物や有機化合物を被覆する場合は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、例えば酸化チタンの乾式粉砕の際、スラリー化した際あるいは湿式粉砕した際に行うことができる。湿式法で表面処理を行う場合、処理前又は処理中に酸化チタンを湿式粉砕することが好ましい。また、湿式法による表面処理は、水系、溶剤系のどちらでも実施することができるが、水系の方が、環境面、費用面、設備面で好ましい。但し、水系で処理する場合、特に湿式粉砕を行う場合は、水そのものあるいは水中の溶存酸素の影響で、低次酸化チタンが僅かに酸化されるので、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、酒石酸、ぶどう糖、次亜燐酸ナトリウム、N−N−ジエチルグリシンナトリウムなどの還元剤共存下で湿式粉砕するのが好ましい。
【0022】
本発明の酸化チタンは、黒色顔料として、赤外線吸収剤としてあるいは導電剤等として、塗料、インキやフィルム等のプラスチック成形物などの樹脂に配合すると、その優れた遮蔽性能(遮光性能)、黒色性能あるいは導電性能を利用した樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物には、本発明の酸化チタンを任意の量、好ましくは20重量%以上を配合し、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、さらに各種の添加剤を配合しても良い。塗料やインキとする場合であれば、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合する。塗膜形成材料としては例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネートなどの無機系成分を用いることができ、インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂、塩素化プロピレン樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを用いることができ特に制限はないが、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。また、プラスチックス成形物であれば、プラスチックス、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の酸化チタンとともに練り込み、フィルム状などの任意の形状に成形する。プラスチックスとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0024】
実施例1
針状二酸化チタン(石原産業社製FTL−100、長軸長さが1.7μm、短軸長さが0.13μm、軸比13のルチル型二酸化チタンである)を内径7.5cmの石英管に装入し、900℃に加熱した後、プロパンガス5ミリリットル/分と窒素ガス3リットル/分の混合ガスを流し、900℃の温度を2時間保持して、本発明の酸化チタン(試料A)を得た。
【0025】
実施例2
実施例1において、1000℃で加熱すること以外は実施例1と同様にして、本発明の酸化チタン(試料B)を得た。
【0026】
実施例3
板状二酸化チタン(石原産業社製NSTB−1、板状長さが15μm、厚み0.2μm、厚みに対する板状長さの比が75。アナターゼ型二酸化チタンに一部ルチル型二酸化チタンが混合したもの)を内径7.5cmの石英管に装入し、1100℃に加熱した後、プロパンガス20ミリリットル/分と窒素ガス3リットル/分の混合ガスを流し、1100℃の温度を1時間保持して、本発明の酸化チタン(試料C)を得た。
【0027】
比較例1
実施例1において、1000℃に加熱した後、水素と窒素の混合ガス(水素75容積%、窒素25容積%)2リットル/分を流し、1000℃の温度を5時間保持して、酸化チタン(試料D)を得た。
【0028】
比較例2
実施例1において用いた二酸化チタン(FTL−100)を比較試料Eとした。
【0029】
比較例3
実施例5において用いた二酸化チタン(NSTB−1)を比較試料Fとした。
【0030】
実施例及び比較例で得た試料A〜Fの組成、特性を表1に示す。また、試料A〜Fの粉末X線回折パターンを図1〜6に示し、試料A、C、D〜Fの電子顕微鏡写真を図7〜11に示し、下記条件によるレーザーラマン分光法の試料A、B、Eのラマンスペクトルを図12〜14に示し、更に、試料A、Bについて、可視光−赤外線の反射率を測定した結果を図15に示す。これらの結果から、本発明の酸化チタンは黒色であって、原料の二酸化チタンの粒子形状を維持していることがわかる。また、試料A〜Eの粉末X線回折の結果からルチル型二酸化チタン、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7などの低次酸化チタンのピークが確認でき、一方、ラマンスペクトルの結果から、試料の表面にはアモルファスカーボンが生成していることが確認できたため、低次酸化チタンの粒子表面に炭素元素が存在することがわかった。また、本発明の酸化チタンは可視光、赤外線の反射率が低いことがわかった。
【0031】
レーザーラマン分光法
(1)装置:T-64000(堀場Jobin Yvon)
(2)条件:
測定モード:マクロラマン
ビーム径:100μm
光源:Ar+レーザー/514.5nm
レーザーパワー:10mW
回折格子:Spectrograph 600gr/mm
分散:Single 21A/mm
スリット:100μm
検出器:CCD(Jobin Yvon 1024×256)
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の酸化チタンは、黒色顔料あるいは赤外線吸収剤として樹脂、プラスチック、塗料、インキ、化粧料、紙等に配合して用いられる。また、可視光、赤外線を遮光する光学部材として、例えばガラス、レンズ、フィルム等に配合して用いることもできる。また、本発明の酸化チタンは導電剤、電荷調整剤、トナー外添剤、電磁遮蔽剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体、印画紙等に配合して用いられる。更に、針状、板状等の形状を維持することができるためプラスチック補強剤等の強度付与剤などにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1で得られた試料Aの粉末X線回折パターンである。
【図2】実施例2で得られた試料Bの粉末X線回折パターンである。
【図3】実施例3で得られた試料Cの粉末X線回折パターンである。
【図4】比較例1で得られた試料Dの粉末X線回折パターンである。
【図5】比較例2で得られた試料Eの粉末X線回折パターンである。
【図6】比較例3で得られた試料Fの粉末X線回折パターンである。
【図7】実施例1で得られた試料Aの電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例3で得られた試料Cの電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例1で得られた試料Dの電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例2で得られた試料Eの電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例3で得られた試料Fの電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例1で得られた試料Aのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図13】実施例2で得られた試料Bのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図14】比較例2で得られた試料Eのレーザーラマン分光法によるラマンスペクトルである。
【図15】実施例1で得られた試料Aの可視光−赤外線反射スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例2で得られた試料Bの可視光−赤外線反射スペクトルを示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタン。
【請求項2】
前記の低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素が存在する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項3】
長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項4】
板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項5】
二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することを特徴とする、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱して、低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素を存在させることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項8】
板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上である板状形状を有する二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項9】
プロパン、エタン及びメタンから選ばれる少なくとも一種の炭化水素ガスを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項10】
二酸化チタンの調製の際に400℃以上の温度で焼成した二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項11】
一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が8〜50の範囲である酸化チタンを含有する黒色顔料。
【請求項12】
前記の低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素が存在する請求項11に記載の酸化チタンを含有する黒色顔料。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化チタンを含有する導電剤。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化チタンを含有する赤外線吸収剤。
【請求項1】
一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタン。
【請求項2】
前記の低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素が存在する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項3】
長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項4】
板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上の板状形状を有する請求項1に記載の酸化チタン。
【請求項5】
二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱することを特徴とする、一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が5〜70の範囲である酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
二酸化チタンを炭化水素ガス雰囲気中で700〜1200℃の温度に加熱して、低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素を存在させることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
長軸長さが0.5〜10μm、短軸長さが0.02〜1μmの針状形状を有する二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項8】
板状長さが1〜50μm、厚みに対する板状長さの比が3以上である板状形状を有する二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項9】
プロパン、エタン及びメタンから選ばれる少なくとも一種の炭化水素ガスを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項10】
二酸化チタンの調製の際に400℃以上の温度で焼成した二酸化チタンを用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項11】
一般式TiO2−xで表され、xの値が0.05〜0.8の範囲である低次酸化チタン粒子に、炭素元素を0.01〜5重量%含有する、明度L値が8〜50の範囲である酸化チタンを含有する黒色顔料。
【請求項12】
前記の低次酸化チタン粒子の表面に炭素元素が存在する請求項11に記載の酸化チタンを含有する黒色顔料。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化チタンを含有する導電剤。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化チタンを含有する赤外線吸収剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−150240(P2008−150240A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339140(P2006−339140)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】
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