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酸化チタン塗布液
説明

酸化チタン塗布液

【課題】グラビアコート法等の塗布速度の速いコート法に使用できる程度の流動性と速乾性を併せ持つ、経時的に安定な酸化チタン塗布液であって、塗布・乾燥することにより長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を形成することができる酸化チタン塗布液を提供する。
【解決手段】本発明の酸化チタン塗布液は、下記成分を少なくとも含有する。下記(C)キレート化剤としては、炭素数3〜6のジケトン、ジオール、トリオール、又はテトラオールが好ましい。
(A)酸化チタン粒子
(B)バインダー成分としてのペルオキソチタン酸
(C)キレート化剤
(D)水
(E)アルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により大気浄化、脱臭、浄水、抗菌、防汚効果等を発現する光触媒塗膜を形成可能な酸化チタン塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは紫外線を吸収すると強い酸化作用を発揮することができるため、近年、下記に例示されるような様々な用途に利用されている。
1、自動車の排気ガス等から排出される窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の環境汚染物質の除去による大気浄化
2、アンモニア、アセトアルデヒド、硫化水素、メチルメルカプタン等の悪臭物質の除去による脱臭
3、テトラクロロエチレンやトリハロメタン等の有機塩素化合物を分解除去することによる浄水
4、殺菌し、更にその死骸を分解することによる抗菌
5、油分を分解することにより、油分に砂や垢が付着して生じる汚れを防止する防汚
【0003】
酸化チタンは溶液に懸濁させた状態で(固定しない状態で)用いる場合と、基材に固定した状態で用いる場合がある。一般的に、その表面積の大きさが光触媒能に比例するため前者の方がより高い触媒活性を示すことができるが、実用性の観点から、後者が採用される場合が多い。後者を採用する場合、バインダー成分を使用して酸化チタンを基材に固定させる方法が一般的である。
【0004】
前記バインダー成分としては、酸化チタンにより分解されないペルオキソチタン酸を使用することが知られている(特許文献1)。ペルオキソチタン酸をバインダー成分として使用することにより、長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を形成することができる。
【0005】
また、光触媒塗膜の形成方法としては、酸化チタンとバインダー成分とを水分散して得られる分散液を塗布、乾燥する方法が知られている(引用文献2)。
【0006】
しかし、グラビアコート法で使用可能な程度の低粘度の分散液を、水のみを分散媒として調製すると、水の量が多くなりすぎ乾燥に時間がかかることが問題であった。そして、乾燥速度を向上する方法として、分散媒として水と共にエタノール等のアルコールを組み合わせて使用することにより水の量を低減する方法が挙げられるが、水とエタノール等のアルコールを組み合わせて使用すると、バインダー成分としてのペルオキソチタン酸がゲル化したり、分解して沈殿する等により、経時安定性が低下することが問題であった。すなわち、グラビアコート法等の塗布速度の速いコート法に使用できる程度の流動性と速乾性を併せ持ち、経時的に安定な分散液であって、塗布・乾燥することにより長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を形成することができる分散液は、未だ見いだされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−262481号公報
【特許文献2】特開2006−159028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、グラビアコート法等の塗布速度の速いコート法に使用できる程度の流動性と速乾性を併せ持つ、経時的に安定な酸化チタン塗布液であって、塗布・乾燥することにより長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を形成することができる酸化チタン塗布液を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記酸化チタン塗布液を使用して得られる長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、酸化チタン、バインダー成分としてのペルオキソチタン酸、水、及びアルコールを含有する分散液に、キレート化剤を添加すると、前記ペルオキソチタン酸がキレート化剤により安定化されて高分散性を維持することが可能となるため、経時的に安定、且つグラビアコート法等の塗布速度の速いコート法に使用できる程度の流動性と速乾性を併せ持つ分散液を形成することができること、前記分散液を塗布・乾燥することにより、長期間に亘って優れた接着性を発揮できる光触媒塗膜を形成することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記成分を少なくとも含有する酸化チタン塗布液を提供する。
(A)酸化チタン粒子
(B)バインダー成分としてのペルオキソチタン酸
(C)キレート化剤
(D)水
(E)アルコール
【0011】
前記(C)キレート化剤としては、炭素数3〜6のジケトン、ジオール、トリオール、又はテトラオールが好ましい。
【0012】
前記(E)アルコールの含有量は、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の20〜55重量%が好ましい。
【0013】
前記(D)水の含有量は、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の35〜80重量%が好ましい。
【0014】
本発明は、また、前記酸化チタン塗布液を塗布・乾燥して得られる光触媒塗膜を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る酸化チタン塗布液は、分散媒として水とエタノールを含有するため、グラビアコート法に対応可能な流動性を有しつつ、速乾性を発揮することができる。また、水とエタノールを含有しても保存安定性に優れ、ゲル化及び/又は分離することなく安定した分散状態を維持することができる。さらに、バインダー成分としてペルオキソチタン酸を使用するため、成膜性が高く、塗布、乾燥することにより、優れた接着性を有する塗膜を速やかに形成することができ、その上、酸化チタン粒子の光触媒作用によっても分解されることがないため、耐久性に優れ、長期に亘って、種々の被着体表面に酸化チタン粒子を固定することができる。また、本発明に係る酸化チタン塗布液を塗布・乾燥して得られた光触媒塗膜は、光の照射によって有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することが可能であり、抗菌防かび、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚等様々な用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例8で得られた酸化チタン塗布液(8)を塗布、乾燥して得られた光触媒塗膜(8)の光学顕微鏡写真(a)、と、比較例(2)で得られた酸化チタン塗布液(10)を塗布、乾燥して得られた光触媒塗膜(10)の光学顕微鏡写真(b)である。写真(a)、(b)のスケールは共に500.00μm/divである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[(A)酸化チタン粒子]
本発明の酸化チタン粒子としては、光触媒作用を有するものであればよく、例えば、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型酸化チタン粒子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ルチル型酸化チタン粒子を使用することが好ましい。
【0018】
前記ルチル型酸化チタン粒子は、例えば、チタン化合物を、構造制御剤としての親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)の存在下、水性媒体(例えば、水、又は水と水溶性有機溶媒との混合液)中で水熱処理[例えば、100〜200℃、3〜48時間(好ましくは6〜12時間)]することにより合成することができる。
【0019】
前記チタン化合物としては、3価のチタン化合物、4価のチタン化合物を挙げることができる。3価のチタン化合物としては、例えば、三塩化チタンや三臭化チタン等のトリハロゲン化チタン等を挙げることができる。本発明における3価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で三塩化チタン(TiCl3)が好ましい。
【0020】
また、本発明における4価のチタン化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
Ti(OR)t4-t (1)
(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。tは0〜3の整数を示す)
【0021】
Rにおける炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のC1-4脂肪族炭化水素基等を挙げることができる。
【0022】
Xにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0023】
このような4価のチタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OC49)Br3等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(OC492Cl2、Ti(OC252Br2等のジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(OC493Cl、Ti(OC253Br等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン等を挙げることができる。本発明における4価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタン(TiCl4)が好ましい。
【0024】
特に、前記チタン化合物として4価のチタン化合物を使用する場合は、構造制御剤としての親水性ポリマーを添加しなくとも、反応温度110〜220℃(好ましくは150℃〜220℃)、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中で2時間以上(好ましくは5〜15時間)水熱処理を施すことによりルチル型酸化チタン粒子を合成することができる。
【0025】
本発明における酸化チタン粒子の比表面積としては、例えば20〜100m2/g、好ましくは40〜90m2/g、特に好ましくは50〜85m2/gである。酸化チタン粒子の比表面積が上記範囲を下回ると、反応物質の吸着能力が低下して光触媒能が低下する傾向があり、一方、酸化チタン粒子の比表面積が上記範囲を上回ると、励起電子とホールの分離性が低下し、光触媒能が低下する傾向がある。
【0026】
また、本発明においては、遷移金属イオンを担持した酸化チタン粒子(遷移金属イオン担持酸化チタン粒子)を使用してもよい。遷移金属イオン担持酸化チタン粒子は、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲に応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光源下でも高い触媒活性を発揮することができる。
【0027】
更に、前記遷移金属イオンは、酸化チタン粒子の露出結晶面における酸化反応面又は還元反応面のうち一方の面(特に、酸化反応面)に選択的に担持されていることが、酸化反応と還元反応の反応場を空間的により大きく引き離すことができ、それにより励起電子とホールの分離性を高め、励起電子とホールの再結合及び逆反応の進行を極めて低いレベルにまで抑制することができ、より高い光触媒活性を発揮することができる点で好ましい。
【0028】
遷移金属イオンとしては、可視光領域に吸収スペクトルを有し、励起状態で伝導帯に電子を注入することができるものであればよく、例えば、周期表第3〜第11族元素イオン、なかでも周期表第8〜第11族元素イオンが好ましく、特に、三価の鉄イオン(Fe3+)が好ましい。鉄イオンの酸化チタン粒子への担持においては、三価の鉄イオン(Fe3+)は吸着しやすく、二価の鉄イオン(Fe2+)は吸着しにくい特性を有するため、その特性を利用することにより容易に面選択性を付与することができるからである。
【0029】
遷移金属イオンの酸化チタン粒子への担持は、酸化チタン粒子に遷移金属イオンを含浸する含浸法により行うことができる。
【0030】
含浸は、具体的には、酸化チタン粒子を水溶液中に分散して浸漬し、撹拌しながら、遷移金属イオンを添加することにより行うことができ、例えば、遷移金属イオンとして三価の鉄イオン(Fe3+)を使用する場合は、鉄化合物(例えば、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等)を添加することにより行うことができる。
【0031】
遷移金属イオンの添加量としては、例えば、酸化チタン粒子に対して0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。遷移金属イオンの添加量が上記範囲を下回ると、酸化チタン粒子表面における遷移金属イオンの担持量が低下し、光触媒活性が低下する傾向があり、一方、遷移金属イオンの添加量が上記範囲を上回ると、注入電子の逆電子移動等により励起電子が有効に作用せず、光触媒活性が低下する傾向がある。浸漬時間としては、例えば、30分から24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0032】
酸化チタン粒子に遷移金属イオンを含浸する際には、励起光を照射することが好ましい。励起光を照射すると、酸化チタン粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起し、価電子帯にホール、伝導帯に励起電子が生成し、これらは粒子表面へ拡散し、各露出結晶面の特性に従って励起電子とホールとが分離されて酸化反応面と還元反応面とを形成する。この状態で遷移金属イオンとして、例えば三価の鉄イオンの含浸を行うと、三価の鉄イオン(Fe3+)は酸化反応面には吸着するが、還元反応面では三価の鉄イオン(Fe3+)は二価の鉄イオン(Fe2+)に還元され、二価の鉄イオン(Fe2+)は吸着しにくい特性を有するため、溶液中に溶出し、結果として酸化反応面にのみ鉄イオン(Fe3+)が担持された金属イオン担持酸化チタン粒子を得ることができる。
【0033】
励起光の照射方法としては、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することができればよく、例えば、紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射手段としては、例えば、中・高圧水銀灯、UVレーザー、UV−LED、ブラックライト等の紫外線を効率よく生成する光源を使用した紫外線露光装置等を使用することができる。励起光の照射量としては、例えば、0.1〜300mW/cm2、好ましくは1〜5mW/cm2である。
【0034】
さらに、本発明においては、含浸の際に犠牲剤を添加してもよい。犠牲剤を添加することにより、酸化チタン粒子表面において、特定の露出結晶面により高い選択率で遷移金属イオンを担持させることができる。犠牲剤としては、それ自体が電子を放出しやすい有機化合物を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸等のカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン等を挙げることができる。
【0035】
犠牲剤の添加量としては、適宜調整することができ、例えば、酸化チタン溶液の0.5〜5.0vol%、好ましくは1.0〜2.0vol%である。犠牲剤は過剰量を使用してもよい。
【0036】
上記方法により得られた金属イオン担持酸化チタン粒子は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0037】
[(B)バインダー成分]
バインダー成分とは、上記酸化チタン粒子を被着体に固定する働きを有するものである。本発明においては、バインダー成分としてペルオキソチタン酸を使用することを特徴とする。ペルオキソチタン酸は、単独で又は他のバインダー成分(例えば、ケイ素系化合物、フッ素系樹脂等)と組み合わせて使用することができる。ペルオキソチタン酸は、成膜性が高く、塗布、乾燥することにより、優れた接着性を有する塗膜を速やかに形成することができ、その上、酸化チタン粒子の光触媒作用によっても分解されることがないため、耐久性に優れ、長期に亘って、被着体表面に酸化チタン粒子を固定することができる。
【0038】
ペルオキソチタン酸は、例えば、塩基性物質(例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等)の存在下で、TiCl4等のチタン化合物の水溶液に過酸化水素水を添加することにより合成することができる。
【0039】
ペルオキソチタン酸は、下記式(2)で表される二核錯体であると考えられる。
Ti25(OH)x(2-x) (2)
(式中、xは1〜6の整数を示す)
【0040】
[(C)キレート化剤]
キレート化剤としては、チタンへ配位する部位と、疎水性を示す部位とを有する化合物であることが好ましく、該キレート化剤が上記バインダー成分であるペルオキソチタン酸に配位して得られたキレート化合物は、水とアルコールの両方に対し親和性を有することが好ましい。
【0041】
本発明におけるキレート化剤としては、例えば、炭素数3〜6のジケトン、ジオール、トリオール、テトラオールから選択される1種以上の化合物を使用することが、他の添加剤、溶剤等の組成に応じて相溶性を適宜調整可能な点で好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記炭素数3〜6のジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン等を挙げることができる。
【0043】
前記炭素数3〜6のジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール等のジアルカノール;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のN−置換又は無置換ジアルカノールアミン等を挙げることができる。
【0044】
前記炭素数3〜6のトリオールとしては、例えば、グリセロール等のトリアルカノール;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン誘導体等のN−置換又は無置換トリアルカノールアミン等を挙げることができる。
【0045】
前記炭素数3〜6のテトラオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール等のテトラアルカノール等を挙げることができる。
【0046】
本発明においては、なかでも、キレート化剤として、炭素数3〜6のトリオール又はテトラオールを使用することが好ましく、特に、トリエタノールアミン等のN−置換又は無置換トリアルカノールアミン、又はペンタエリスリトール等のテトラアルカノールを使用することが、より一層優れた分散安定性を有する酸化チタン塗布液を得ることができる点で好ましい。
【0047】
[(D)水]
水としては、特に限定されることが無く、例えば、蒸留水、精製水、工業用精製水、脱イオン水等を使用することができる。
【0048】
[(E)アルコール]
アルコールとしては、水への溶解性に優れ、且つ、揮発性に優れるアルコールを使用することが好ましい。本発明においては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3(好ましくは1〜2、特に好ましくは1)の1価アルコールが好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
[酸化チタン塗布液]
本発明の酸化チタン塗布液は、下記成分を少なくとも含有する。
(A)酸化チタン粒子
(B)バインダー成分としてのペルオキソチタン酸
(C)キレート化剤
(D)水
(E)アルコール
【0050】
酸化チタン塗布液の調製方法としては、上記成分(A)〜(E)を混合することができれば特に限定されることがなく、例えば、上記成分(A)〜(D)を混合し、その後に成分(E)を添加する方法や、上記成分(C)と(E)とを予め混合し、得られた混合液を、上記成分(A)、(B)、(D)を混合した中に添加する方法等が挙げられる。
【0051】
上記成分(A)の配合量としては、例えば、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の1.0〜10.0重量%、好ましくは1.0〜6.0重量%、特に好ましくは2.0〜5.0重量%である。成分(A)の配合量が上記範囲を下回ると、光触媒作用を十分に発揮することが困難となる傾向がある。一方、成分(A)の配合量が上記範囲を上回ると、酸化チタン塗布液の粘度が高くなりすぎ、グラビアコート法による塗布が困難となる傾向がある。
【0052】
上記成分(B)の配合量としては、例えば、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%、特に好ましくは0.1〜1.0重量%である。成分(B)の配合量が上記範囲を下回ると、酸化チタン粒子の被着体に対する接着保持性、被着体の劣化防止性が低下する傾向がある。一方、成分(B)の配合量が上記範囲を上回ると、酸化チタン塗布液の粘度が高くなりすぎ、グラビアコート法による塗布が困難となる傾向がある。
【0053】
上記成分(C)の配合量としては、例えば、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%、特に好ましくは0.1〜1.0重量%である。成分(C)の配合量が上記範囲を下回ると、ペルオキソチタン酸の分散性の保持が困難となる傾向があり、酸化チタン塗布液の粘度上昇や、分離等を防止することが困難となる傾向がある。一方、成分(C)の配合量が上記範囲を上回ると、ペルオキソチタン酸の分散性の保持が困難となる傾向がある。
【0054】
上記成分(D)の配合量としては、例えば、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の35〜80重量%、好ましくは40〜75重量%、特に好ましくは45〜75重量%である。成分(D)の配合量が上記範囲を下回ると、酸化チタン塗布液の粘度が高くなりすぎ、グラビアコート法による塗布が困難となる傾向がある。一方、成分(D)の配合量が上記範囲を上回ると、速乾性が得られにくくなる傾向がある。
【0055】
上記成分(E)の配合量としては、例えば、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の20〜55重量%、好ましくは20〜50重量%である。成分(E)の配合量が上記範囲を下回ると、速乾性が得られにくくなる傾向がある。一方、成分(E)の配合量が上記範囲を上回ると、酸化チタン塗布液の粘度が高くなりすぎ、グラビアコート法による塗布が困難となる傾向がある。
【0056】
酸化チタン塗布液中における成分(B)と成分(C)の配合割合としては、成分(B)1重量部に対して成分(C)を例えば、0.3〜4.0重量部、好ましくは、0.5〜3.5重量部、特に好ましくは0.75〜3.00重量部である。成分(C)の配合量が上記範囲を上回ると、酸化チタン粒子の被着体に対する接着保持性が低下する傾向があり、一方、成分(C)の配合量が上記範囲を下回ると、成分(B)の分散性の保持が困難となる傾向があり、酸化チタン塗布液の粘度上昇や、分離等を防止することが困難となる傾向がある。
【0057】
更にまた、酸化チタン塗布液中における成分(D)と成分(E)の配合割合としては、成分(D)1重量部に対して成分(E)を例えば0.25〜1.50重量部、好ましくは、0.25〜1.25重量部、特に好ましくは0.33〜1.00重量部である。成分(E)の配合量が上記範囲を上回ると、保存安定性が低下する傾向があり、一方、成分(E)の配合量が上記範囲を下回ると、速乾性が得られにくくなる傾向がある。
【0058】
本発明に係る酸化チタン塗布液には、上記成分(A)〜(E)以外にも、他の成分として通常光触媒塗膜形成用酸化チタン塗布液に配合される化合物を必要に応じて適宜配合することができる。他の成分としては、例えば、塗布助剤、乾燥速度調整剤、粘度調整剤、ぬれ性調整剤等を挙げることができる。他の成分の配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲内であればよく、酸化チタン塗布液全量(100重量%)に対して、例えば10重量%以下(好ましくは、0.01〜10重量%)である。
【0059】
本発明に係る酸化チタン塗布液は、十分な流動性を有しつつ速乾性を発揮することが可能であり、グラビアコート法に使用する場合、例えば、粘度を10〜80cP(好ましくは20〜50cP)に調整することが好ましい。
【0060】
[光触媒塗膜]
本発明の光触媒塗膜は、上記酸化チタン塗布液を塗布・乾燥して得られ、例えば、下記工程を経て製造される。
工程1:上記成分(A)〜(E)を少なくとも含有する酸化チタン塗布液を調製する工程
工程2:酸化チタン塗布液を、被着体表面に塗布し、乾燥する工程
【0061】
酸化チタン塗布液の塗布量としては、特に制限されることが無く、例えば、酸化チタン粒子の含有量が0.5g/m2以上(例えば、0.5〜5.0g/m2、好ましくは0.5〜3.0g/m2)である。酸化チタン塗布液の塗布量が上記範囲を下回ると、光触媒能が低下する傾向がある。
【0062】
被着体への酸化チタン塗布液の塗布手段としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法等、特に制限されることがない。被着体表面に塗布した後は、乾燥(分散媒を蒸発)させることよって、速やかに塗膜を形成することができる。乾燥方法としては、室温で乾燥させてもよく、加熱して乾燥させてもよい。本発明の酸化チタン塗布液は、速乾性を有しつつ、流動性を付与することができるため、特にグラビアコート法等の塗布速度が速い手段により、光触媒塗膜を優れた精度で効率よく製造する用途に好適に使用することができる。
【0063】
酸化チタン塗布液は、例えば、被着体表面に直接塗布してもよく、被着体表面に予めバインダー成分(例えば、ペルオキソチタン酸等)を含むコーティング剤を塗布することにより下塗り層を設け、その上に酸化チタン塗布液を塗布してもよい。下塗り層を設けた場合、被着体と光触媒塗膜とが下塗り層により完全に隔てられるため、被着体として有機素材から成る基材を使用しても、光触媒作用が完全にブロックされ、被着体を損傷から保護することができる。被着体表面に下塗り層を設ける場合、その厚みとしては、例えば、0.1〜1.0μm、好ましくは、0.2〜0.5μmである。
【0064】
本発明の光触媒塗膜の被着体としては、特に限定されることがなく、各種プラスチック材料[例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等]、ゴム材料(例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等)、金属材料(例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等)、紙質材料(例えば、紙、紙類似物質等)、木質材料(例えば、木材、MDF等の木質ボード、合板等)、繊維材料(例えば、不織布、織布等)、革材料、無機材料(例えば、石、コンクリート等)、ガラス材料、磁器材料等の各種の素材を挙げることができる。
【0065】
上記方法により形成された光触媒塗膜は、光触媒として酸化チタン粒子を有するため、極めて高い光触媒作用を発揮することができ、光の照射によって有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することが可能である。そのため、抗菌防かび、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚等様々な用途に使用することができる。さらに、被着体表面に対する接着性及び耐久性に優れるため、優れた光触媒能を長期に亘って発揮することができる。
【0066】
また、特に光触媒として遷移金属イオン担持酸化チタン粒子を使用する場合は、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲に応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、高い触媒活性を発揮することができるため、室内等の低照度環境でも高いガス分解性能や抗菌作用を示し、室内の壁紙や家具をはじめ家庭内や病院、学校等の公共施設内での環境浄化、家電製品の高機能化等、広範囲への応用が可能である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0068】
実施例1
40重量%酸化チタン水スラリー液(ルチル型酸化チタン含有量:0.7g、商品名「STR−100N」、堺化学工業(株)製)1.7gと1重量%ペルオキソチタン酸水溶液(ペルオキソチタン酸含有量:0.06g、商品名「ティオスカイコート」、(株)ティオテクノ製)5.9g、水 0.4gを添加し、液が均一になるまで撹拌した。
ここに、キレート化剤としてトリエタノールアミン(和光純薬工業(株)製)0.2gを添加し、液が均一になるまで撹拌後、エタノール 8.0gを撹拌しながら添加し、酸化チタン塗布液(1)を得た。
【0069】
実施例2〜8、比較例1、2
各成分の配合量を下記表に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、酸化チタン塗布液(2)〜(10)を得た。
【0070】
実施例及び比較例で得られた酸化チタン塗布液(1)〜(10)について、22℃、60%RH条件下で1週間静置した後、液の様子を目視で観察し、下記基準に従って評価した。
<評価基準>
分離することなく均一:○
ゲル化、又は分離:×
【0071】
【表1】

【0072】
また、実施例8で得られた酸化チタン塗布液(8)と、比較例(2)で得られた酸化チタン塗布液(10)について、それぞれ、基材としてのPETフィルムの表面に、ワイヤーバーを使用して1.0g/m2塗布し、80℃で乾燥することにより光触媒塗膜(8)、及び光触媒塗膜(10)を得た。
得られた光触媒塗膜を光学顕微鏡を使用して観察したところ、光触媒塗膜(8)は、均質であったが、光触媒塗膜(10)は不均質であり膜質が悪かった(図1参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を少なくとも含有する酸化チタン塗布液。
(A)酸化チタン粒子
(B)バインダー成分としてのペルオキソチタン酸
(C)キレート化剤
(D)水
(E)アルコール
【請求項2】
(C)キレート化剤が、炭素数3〜6のジケトン、ジオール、トリオール、又はテトラオールである請求項1に記載の酸化チタン塗布液。
【請求項3】
(E)アルコールの含有量が、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の20〜55重量%である請求項1又は2に記載の酸化チタン塗布液。
【請求項4】
(D)水の含有量が、酸化チタン塗布液全量(100重量%)の35〜80重量%である請求項1〜3の何れかの項に記載の酸化チタン塗布液。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの項に記載の酸化チタン塗布液を塗布・乾燥して得られる光触媒塗膜。

【図1】
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【公開番号】特開2013−104035(P2013−104035A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250311(P2011−250311)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】