説明

酸化中のエステル化によるメタクリル酸メチルの製造方法

本発明は、メタクリル酸を製造するための方法であって、a)イソブチレンおよびtert−ブチルアルコールから選択される主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテルおよびホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物を供給する工程と、b)工程a)で供給された原料組成物を前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分とともに触媒反応域に供し、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸を含む酸化相を得る工程とを含む方法に関する。本発明は、また、メタクリル酸メチルを製造するための方法であって、c)b)で得られた酸化相の少なくとも一部をエステル化する工程をさらに含む方法、メタクリル酸を製造するための装置、メタクリル酸メチルを製造するための装置、該装置で実施される方法、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、少なくとも1つのメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含むポリマーを製造するための方法、少なくとも1つのメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エステルモノマーを含むポリマー、組成物を製造するための方法、組成物、化学製品、ならびに化学製品におけるメタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、ポリマーおよび/または組成物の少なくとも1つの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、メタクリル酸を製造するための方法、メタクリル酸メチルを製造するための方法、メタクリル酸を製造するための装置、メタクリル酸メチルを製造するための装置、該装置で実施される方法、該方法によって得られるメタクリル酸、該方法によって得られるメタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、少なくとも1つのメタクリル酸、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位を含むポリマーを製造するための方法、少なくとも1つのメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含むポリマー、少なくとも1つのメタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステルおよびポリマーを含む組成物を製造するための方法、組成物、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、ポリマーおよび/または組成物の少なくとも1つを含む化学製品、ならびに化学製品におけるメタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、ポリマーおよび/または組成物の少なくとも1つの使用に関する。
【0002】
メタクリル酸(MAA)およびポリメタクリル酸(PMAA)は、例えば、増粘剤、懸濁剤、凝集剤、樹脂および吸収性材料等に用途を有する重要な工業製品である。しかし、工業的に製造されるMAAの多くは、そのエステル、特にメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸メチル、ならびに特定の用途の特殊なエステルの製造に使用される。
【0003】
メタクリル酸メチル(MMA)は、価値ある工業製品であり、推定される現在の世界製造量は年間330万メートルトンである。それは、主に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)アクリルプラスチックの製造に使用される。PMMA材料は、高度な透明性、耐候安定性および耐引掻性を有するとともに、成形が容易であり、軽量であり、高度な破断強度を有する。それらは、なかでも、自動車および輸送システム、光学素子および通信装置、医療技術ならびに建築および照明の用途に使用される。
【0004】
他の重要な用途は、PVCの変質剤として使用されるメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)コポリマーなどのコポリマーの製造;水性塗料、例えばラテックス家庭用塗料などの塗料およびワニス;接着剤;ならびに最近、LCDコンピュータおよびTVスクリーンに光を均一に分散させるプレート、例えばフラットスクリーンおよびコンタクトレンズである。メタクリル酸メチルは、心臓の冠状動脈などの解剖臓器の防蝕注型の製造にも使用される。
【0005】
例えば、アルキルおよびアリールアルコール、ヒドロキシアルコール、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム誘導体およびアミノアルコール等の特殊なメタクリル酸エステル誘導体は、なかでも、例えば、コンタクトレンズ、塗料、薬物送達、活性物質の制御放出、接着剤、潤滑剤、流動改良剤、ポリマーブレンドの混和剤、結着剤、食品包装、ラッカー、および自動車製造のためのPVCフリーアンダーシール材に用途を有する。
【0006】
アクリロニトリルの加水分解、またはニッケルカルボニル錯体の存在下でのアセチレンと一酸化炭素とアルコールの反応に基づくものなどの、メタクリル酸メチルを製造するための様々な方法が当該技術分野で公知である。アセトンおよびシアン化水素を原料とするアセトンシアノヒドリン(ACH)法も適用される。これらの方法の短所は、ニッケルカルボニルおよびアセトンシアノヒドリンの毒性が極めて強いことである。好適な方法は、メタノールを用いたメタクリル酸のエステル化である。
【0007】
メタクリル酸の製造のための広く使用される工業的方法によれば、イソブチレンまたはTBAを好適な触媒上で酸化して、最初にメタクロレインとし、次いでさらにメタクリル酸にする。次いで、メタクロレインまたはメタクリル酸を、メタクロレインの場合はオキシエステル化反応で、メタノールによりエステル化して、所望のメタクリレートを形成する。この方法に使用されるイソブチレンは、しばしば、ジメチルエーテルおよびtert−ブチルアルコール(TBA)を含む副産物ならびに未反応MTBEとともに、イソブチレンおよびメタノールを与えるメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)の分割によって得られる。副産物とともに主にイソブチレンおよびエタノールを与えるエチルtert−ブチルエーテル(ETBE)の分割からイソブチレンを得ることもできる。低沸点イソブチレン部分における副産物の存在は、後のイソブチレンの反応、特にメタクリル酸への酸化において問題になることが例えばEP0068785A1から長いこと知られていた。したがって、一般には、イソブチレン部分を、メタクリル酸に酸化する前に、副産物ならびにメタノールまたはエタノールを除去することによって精製しなければならない。
【0008】
いわゆるオキシエステル化方法は、例えば、US4,060,545、US4,014,925、US3,925,463、US3,758,551、US5,670,702から公知であり、プロピレンまたはイソブチレンの酸化および酸化生成物のアクリレートまたはメタクリレートへのエステル化は、同じ反応器にて行われる。これらの文献には、イソブチレンを酸化する前のその精製の問題が記載されていない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術に伴う問題を少なくとも部分的に克服することであった。特に、メタクリル酸メチルの製造における毒性の強い化学物質の使用を回避することが目的であった。
【0010】
さらなる目的は、イソブチレンおよび/またはTBAなどのC4原料からメタクリル酸メチルを製造するためのより経済的かつ簡単な方法を提供することであった。
【0011】
本発明の特定の目的は、イソブチレンを酸化する前にそれに必要とされる精製労力を軽減することであった。
【0012】
上記問題の少なくとも1つの解決への貢献は、範疇を形成する請求項の主題によってなされる。範疇を形成する請求項に従属する下位請求項は、本発明による好適な実施形態を示す。
【0013】
イソブチレン原料に存在するMTBE、ジメチルエーテル、ホルムアルデヒドおよびメタノールなどの追加的な化合物が酸化反応に悪影響を与えるという予測に反して、驚いたことには、イソブチレンおよび/またはTBAのメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への酸化時における以上に挙げた副産物の少なくとも1つまたはメタノールの存在が、実際に、酸化中のメタクリル酸メチルの形成をもたらし得ることが判明した。
【0014】
上記目的の解決への貢献は、メタクリル酸を製造するための本発明による方法であって、
a)イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物を供給する工程と、
b)工程a)で得られた原料組成物を前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分とともに触媒反応域に供し、メタクリル酸メチルならびにメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つを含む酸化相を得る工程と
を含む方法によってなされる。
【0015】
上記目的の解決への貢献は、メタクリル酸メチルを製造するための本発明による方法であって、
a)イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物を供給する工程と、
b)工程a)で得られた原料組成物を前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分とともに触媒反応域に供し、メタクリル酸メチルならびにメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つを含む酸化相を得る工程と、
c)工程b)で得られた酸化相の少なくとも一部をエステル化する工程と
を含む方法によってなされる。
【0016】
本発明の好適な態様において、原料組成物は、好ましくは、イソブチレンおよび/またはTBA、ならびに共化合物としてのメタノールおよび/またはイソブチルエーテルおよび/またはホルムアルデヒド、より好ましくは、メタノールを含むイソブチレンおよび/またはTBAあるいはジメチルエーテルを含むイソブチレンおよび/またはTBA、好ましくはジメチルエーテルを含むイソブチレンを含む。これらのいずれかまたはすべてを、原料組成物に供給する前に、蒸留、抽出、クロマトグラフィー、洗浄または結晶化等の当業者に公知の好適な技術によって場合により精製することができる。
【0017】
TBAを原料組成物における原料化合物として含める場合は、これを商業的に入手することができ、イソブチレンおよび水、例えば、上記のイソブチレンの供給源から製造することができ、あるいはUS5424458、US5436376、US5274138、Ullmans encyclopedia,5thEdition,Vol.A4,p.492およびそれらに引用されている参考文献に記載されているヒドロペルオキシド化を介する酸化プロペンの製造から得ることができる。
【0018】
本発明による方法の好適な実施形態において、工程a)で供給される原料組成物は、メチルtert−ブチルエーテルまたはエチルtert−ブチルエーテル(ETBE)の分割によって得られる。MTBEは、イソブチレンの原料として広く使用され、MTBEの分割は、当該技術分野で周知である。ETBEの分割をMTBEと同様に達成することができる。したがって、MTBEまたはETBEの分割は、当業者に公知である任意の好適な手段によって行われ得る。好適な触媒および反応条件は、例えば、EP1149814A1、WO04/018393A1、WO04/052809A1;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A4,p.488;V.Fattore,M.Massi Mauri,G.Oriani,G.Paret,Hydrocarbon Processing,August 1981,p.101−106;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A16,p.543−550;A.Chauvel,G.Lefebvre,"Petrochemical Processes,Technical and Economic Characteristics",Vol.1,Editions Technip,Paris,1989,p.213 et seq.;US5,336,841、US4,570,026およびそれらに引用されている参考文献に記載されている。これらの参考文献の開示内容は、参考として本明細書で援用され、本発明の開示内容の一部を構成する。
【0019】
MTBE分割の2つの主要生成物は、イソブチレンおよびメタノールである。ETBE分割の2つの主要生成物は、イソブチレンおよびエタノールである。MTBE分割から得られる分割相にしばしば存在するさらなる成分は、なかでも、ジメチルエーテル、tert−ブチルアルコール、メチルsec−ブチルエーテル(MSBE)および未反応MTBEである。ETBE分割から得られる分割相に存在するさらなる成分は、ジエチルエーテル、tert−ブチルアルコール、エチルsec−ブチルエーテル(ESBE)および未反応ETBEである。
【0020】
本発明による方法の一態様において、分割相をさらに精製することなく原料組成物として直接供給することができる。本発明による方法の好適な態様において、原料組成物として使用する前に、MTBEまたはETBE分割反応から得られた分割相に少なくとも部分的な分離および/または精製の少なくとも1つを施す。好適な精製および分離方法は、例えば、EP1149814A1、WO04/018393A1、WO04/052809A1に記載されている。本発明による方法の特に好適な態様において、少なくとも1つの共化合物の少なくとも一部を、場合により精製された分割相から分離して、共化合物相、および分離された少なくとも1つの共化合物が欠乏した欠乏分割相を形成する。次いで、イソブチレンを主要成分として含む欠乏分割相を場合により精製し、原料組成物として供給することができる。好適な精製方法は、当業者に公知であり、好ましくは、蒸留、抽出、吸着、吸収、クロマトグラフィーまたは洗浄の少なくとも1つ、好ましくは蒸留および抽出の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1つの蒸留および少なくとも1つの抽出を含む。この方法工程において、メタノール、MTBE、エタノールおよびETBEの少なくとも1つをイソブチレン相から少なくとも部分的に分離するのが好適である。分離されたMTBEおよびETBEを場合により精製し、分割反応に少なくとも部分的にリサイクルすることができる。
【0021】
好ましくは、MTBE分割の場合は主要成分としてメタノールを含み、ETBE分割の場合は主要成分としてエタノールを含む、分離された共化合物は、好ましくは、工程c)でエステル化が施される少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分に対応する。
【0022】
工程b)において少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分を触媒反応域に供するのが好適である。少なくとも1つの共化合物のこの第1の部分は、好ましくは工程b)において、イソブチレンおよび/またはTBAの少なくとも1つの酸化生成物の少なくとも一部、好ましくはメタクロレインまたはメタクリル酸と好ましくは少なくとも部分的に反応して、メタクリル酸メチルを形成する。したがって、触媒反応域から出る酸化相は、好ましくは、主要生成物としてのメタクリル酸、ならびにメタクリル酸メチルの少なくとも一部を含む。
【0023】
本発明による方法では、工程b)において、原料組成物は、5ppm以上、好ましくは6ppm以上、好ましくは7ppm以上、好ましくは8ppm以上、より好ましくは9ppm以上、さらにより好ましくは10ppm以上の含有量の少なくとも1つの共化合物を少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分として含むのが好適である。原料組成物における共化合物の含有量の上限は、原料組成物に対して約50質量%である。
【0024】
本発明による方法では、工程b)において、原料組成物は、少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分を0.0005〜10質量%、好ましくは0.0008〜8質量%、より好ましくは0.001〜7質量%、さらにより好ましくは0.001〜6質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜4質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらにより好ましくは0.1〜2.7質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%の範囲で含むのが特に好適である。
【0025】
好ましくは、原料組成物に対して酸素の供給源が添加され、その供給源は、限定されず、過酸化物、分子酸素または酸素濃縮ガスもしくは酸素含有ガスなどの任意の好適な酸素(O2)の供給源であり得るため、経済的な理由により空気が酸素供給源として好適である。O2供給源は、ここでは、O2を含む、または放出する任意の化合物または組成物であると理解される。O2またはO2供給源として供給される分子酸素の量は、好ましくは約0.5〜約20モル、好ましくは、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して約1〜約10モルのO2、より好ましくは、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して約1〜約5モルのO2、より好ましくは、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して約1〜約3モルのO2、より好ましくは、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して約1〜約2モルのO2である。水および/または水蒸気を原料組成物に添加することもできる。水および/または水蒸気を原料組成物に添加する場合は、イソブチレンおよび/またはTBA1モル当たり約1〜約20モル、好ましくは約1〜約15モル、好ましくは約1〜約10モル、より好ましくは約1〜約8モルの水および/または水蒸気を原料組成物に添加するのが好適である。工程b)の開始時に、水および水蒸気を原料組成物に、TBAがそれに含まれる程度に含むのは好適でない。少なくとも1つの希釈剤を原料組成物に添加するのがさらに好適であり、その希釈剤は、無機もしくは有機溶媒またはガス、好ましくは、窒素、アルゴン、二酸化炭素から選択されるのが好ましい、反応条件下で不活性である少なくとも1つの希釈ガスを含むことができ、窒素ガスおよび/または二酸化炭素、好ましくは、燃焼ユニット、好ましくは触媒または熱的燃焼ユニットからリサイクルされた二酸化炭素が希釈ガスとして好適である。
【0026】
本発明による方法によれば、工程b)において、好ましくは原料組成物に酸化を施して、イソブチレンおよび/またはTBAの少なくとも1つの酸化生成物を得る。酸化は、好ましくは、触媒酸化、好ましくは気相触媒酸化である。気相触媒酸化の好適な反応条件は、例えば、約250℃〜約450℃、好ましくは約250℃〜約390℃の温度および約1気圧〜約5気圧の圧力である。空間速度は、約100〜約6000hr-1(NTP)、好ましくは約500〜約3000hr-1の範囲であり得る。イソブチレンなどC4原料のメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への酸化、例えば気相触媒酸化、ならびにその触媒は、文献において、例えば、US5,248,819、US5,231,226、US5,276,178、US6,596,901B1、US4,652,673、US6,498,270、US5,198,579、US5,583,084から周知である。
【0027】
イソブチレンおよび/またはTBAの少なくとも1つの酸化生成物は、イソブチレンおよび/またはTBAを主成分とする任意の酸素含有生成物、好ましくは、C4アルコール、C4アルデヒドまたはC4酸などの少なくとも1つのC4酸化生成物であってよく、メタクロレインおよび/またはメタクリル酸の少なくとも1つが好適な酸化生成物である。
【0028】
本発明による方法の好適な実施形態において、工程b)における酸化は、単一の酸化段階で生じる。本発明による方法が工程b)に単一の酸化段階を含む場合は、得られた酸化相は、主成分としてメタクリル酸を含むのが好適である。
【0029】
本発明による方法の別の好適な実施形態において、工程b)における酸化は、少なくとも2つの個別の酸化段階、好ましくは2つの個別の酸化段階で生じる。これらの少なくとも2つの酸化段階は、触媒反応域の同じ領域内での酸化段階であり、例えば、触媒反応域が1つ以上の反応器の形である場合は、第1の酸化段階が反応器の第1の酸化領域内であり、さらなる酸化段階が同じ反応器における第1の酸化領域の下流のさらなる酸化領域内であり、あるいは第1の酸化段階が第1の反応器内であり、さらなる酸化段階がさらなる反応器内であり得る。第1の酸化段階とさらなる酸化段階が異なる温度であること、そして好ましくは、第1の酸化段階とさらなる酸化段階が、第1の酸化段階およびさらなる酸化段階のいずれの温度とも異なる中間領域によって隔てられることが好適である。
【0030】
2つ以上の酸化段階を含む本発明による方法において、少なくとも1つの共化合物を第1の酸化段階における原料組成物および/または続く酸化段階における原料組成物に供給することができる。2段階酸化の場合は、例えば、少なくとも1つの共化合物を第1および/または第2の酸化段階における原料組成物に供給することができる。本発明による方法の好適な実施形態において、少なくとも1つの共化合物を2段階酸化の第2の酸化段階における原料組成物に供給する。
【0031】
2段階酸化を含む本発明による方法の態様では、第1の酸化段階において、O2の供給量は、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して好ましくは約0.5〜約10モル、好ましくは約1〜約5モル、より好ましくは約1〜約3モル、より好ましくは約1〜約2モルのO2であり、水および/または水蒸気の好適な量は、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して0〜約20モル、好ましくは0〜約10モル、より好ましくは0〜約5モルのH2Oの範囲であり、O2:イソブチレンおよび/またはTBA:水および/または水蒸気のモル比は、原料組成物におけるC4原料として主にTBAが供給される場合は2:1:0であるのが好適であり、原料組成物におけるC4原料として主にイソブチレンが供給される場合は2:1:1であるのが好適である。第2の酸化段階において、O2の供給量は、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して好ましくは約0.5〜約10モル、好ましくは約1〜約5モル、より好ましくは約1〜約3モルのO2であり、O2であり、水および/または水蒸気の好適な量は、1モルのイソブチレンおよび/またはTBAに対して約1〜約20モル、好ましくは約1〜約10モル、より好ましくは約2〜約8モルのH2Oの範囲であり、第2の酸化段階における好適なO2:イソブチレンおよび/またはTBA:水および/または水蒸気のモル比は、第1の酸化段階における原料組成物に供給されたイソブチレンおよび/またはTBAのモル数に対して、約2:1:2〜6の範囲、好ましくは約2:1:3〜5の範囲である。少なくとも1つの希釈剤をイソブチレン相に添加するのがさらに好適であり、その希釈剤は、無機もしくは有機溶媒またはガス、好ましくは、反応条件下で不活性であり、好ましくは窒素、アルゴンおよび二酸化炭素から選択される少なくとも1つの希釈ガスを含むことができ、窒素ガスおよび/または二酸化炭素、好ましくは、触媒または熱燃焼装置、好ましくは触媒燃焼装置からリサイクルされた二酸化炭素が希釈ガスとして好適である。
【0032】
本発明による方法が少なくとも2つの個別の酸化段階で行われる場合は、第1の酸化段階の主要生成物がメタクロレインであり、さらなる酸化段階の主要生成物がメタクリル酸であることが好適である。少なくとも1つの共化合物の存在は、少なくとも1つの共化合物の不在下でイソブチレンに対して同じ反応が実施された場合に見込まれるメタクリル酸の収率と比較して、メタクリル酸の収率を低下させる。しかし、この低下は、既に酸化中にメタクリル酸メチルが予想外に形成されることによって補償される。
【0033】
酸化相に存在するメタクリル酸メチルの量は、原料組成物に存在する共化合物の量および酸化条件下でのそのメタクリル酸メチルへの変換率に左右される。例えば、少なくとも1つの共化合物がメタノールであるときは、メタノールの半分未満がホルムアルデヒドに酸化され、メタノールの約50%までがメタクリル酸メチルと反応することが判明した。したがって、原料組成物における炭化水素に対して約2質量%の量のアルコールは、原料組成物において、酸化相における炭化水素に対して約1質量%のメタクリル酸メチルを含む酸化相をもたらす。ジメチルエーテルが共化合物として存在する場合も同様の変換率が得られる。
【0034】
一部のメタクリル酸メチルは第1の酸化段階で形成されるが、メタクリル酸メチルは、主にさらなる酸化段階、好ましくは第2の酸化段階で形成されるものと思われる。本発明による方法において、酸化相は、酸化相における炭化水素に対して、好ましくは少なくとも0.0005質量%、好ましくは少なくとも0.0008質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.05質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.3質量%、より好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.8質量%、さらにより好ましくは少なくとも1質量%、さらにより好ましくは1.5質量%、より好ましくは少なくとも1.2質量%、より好ましくは少なくとも1.5質量%、さらにより好ましくは少なくとも1.8質量%、より好ましくは少なくとも2質量%のメタクリル酸メチルを含む。
【0035】
好ましくは、酸化相に急冷および/または精製の少なくとも1つを施して、メタクリル酸、好ましくはメタクリル酸およびメタクリル酸メチルを単離し、メタクロレインなどの未反応の原料組成物化合物および/または触媒反応域における1つまたは複数の反応から生じた望ましくない副産物を除去する。例えば、アクリル酸およびメタクリル酸の急冷に関するその開示内容が本明細書で援用され、本開示内容の一部を構成する出願公開公報DE2136396、EP297445A2、EP297788A2、JP01193240、JP01242547、JP01006233、US2001/0007043A1、US6,596,901B1、US4,956,493、US4,618,709B1、US5,248,819に記載されている当業者に公知の任意の好適な急冷方法によって急冷を実施することができる。好適な急冷剤は、水、および例えば芳香族または脂肪族炭化水素、またはそれらの少なくとも2つの混合物などの有機溶媒であり、好適な有機溶媒は、ヘプタン、トルエンまたはキシレンのように、急冷条件下で比較的低い蒸気圧を有する。精製を蒸留、結晶化、抽出、吸収または析出、好ましくは結晶化などの当業者に公知の任意の好適な精製手段によって実施することができる。当該精製技術は、当該技術分野、例えば、JP01193240、JP01242547、JP01006233、DE10039025A1、US2003/0175159、DE10036881A1、EP297445A2、US6,596,901B1、US6,646,161B1、US5,248,819、US4,618,709B1およびそれらに引用されている参考文献において周知である。精製に関してこれらの開示内容を本明細書で明示的に引用し、それらは、本発明の開示内容の一部を構成する。
【0036】
急冷工程および/または精製工程において、メタクロレインを分離するのが好適である。分離されたメタクロレインを触媒反応域にリサイクルすることができ、触媒反応域が2つ以上の酸化段階を含む場合は、分離されたメタクロレインをさらなる酸化段階、好ましくは、2つの酸化段階を含む触媒反応域の第2の酸化段階にリサイクルするのが好ましい。このように、分離されたメタクロレインにさらに酸化を施すことによって、方法全体に効率を向上させ、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルの収率を増加させることができる。
【0037】
上記工程a)およびb)で製造されたメタクリル酸を少なくとも部分的に回収することができ、あるいはそれをさらなる反応または方法に誘導することができる。少なくとも1つの重合防止剤をメタクリル酸に添加するのが好ましい。少なくとも1つの方法工程、特に、高温で行われる任意の方法工程におけるメタクリル酸の処理は、好ましくは、重合防止剤の存在下で行われる。
【0038】
メタクリル酸メチルを製造するための本発明による方法において、急冷かつ/または精製することが一般的には任意であるが、場合によって必要である、少なくとも1つの酸化生成物を含む酸化相に、工程c)において、場合により、メタクリル酸および/またはメタクリル酸メチルの重合を防止するための重合防止剤の存在下でエステル化を施す。工程c)でエステル化を実施する手段は、特に限定されない。例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル化に関するその開示内容が本明細書で援用され、本開示内容の一部を構成するUS6,469,202、JP1249743、EP1254887A1、US4,748,268、US4,474,981、US4,956,493またはUS4,464,229に記載されているようにエステル化を実施することができる。例えば、以上に引用した文献に記載されているように、オキシエステル化も可能である。
【0039】
本発明の好適な態様によれば、前記少なくとも1つの共化合物の少なくともさらなる部分、好ましくは、それぞれ前記少なくとも1つの共成分に対して少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは95〜99質量%の範囲に工程c)でエステル化を施す。本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分を、少なくとも1つの共化合物を原料組成物に供給する前に、少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つの部分から分離することが可能である。本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分を、原料組成物を触媒反応域に供する前に原料組成物から分離することが可能である。次いで、少なくとも1つの共化合物の分離された少なくとも1つのさらなる部分を、例えば、工程c)におけるエステル化の前および/または最中に、場合により急冷かつ/または精製された酸化相と混合することによって再び供給し、場合により急冷かつ/または精製された酸化相と一緒にエステル化することができる。この態様は、少なくともメタノールが共化合物として存在する場合に特に好適である。少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分に、工程c)でエステル化を施す前に、精製を施すことができる。好適な精製技術は、当業者に公知であり、例えば、原料組成物における少なくとも1つの共化合物に関して以上に挙げた技術である。
【0040】
メタクリル酸メチルを製造するための本発明による方法において、工程C)で製造したエステル化相を場合により精製に供することにより、好ましくは、メタクリル酸メチルを未反応メタノールおよび/またはメタクリル酸ならびに他の不純物などの他のエステル化相成分から分離する。好適な精製方法は、当業者に公知であり、好ましくは、蒸留、結晶化、抽出、クロマトグラフィーまたは洗浄の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも1つの蒸留装置を含む。分離されたメタノールおよび/またはメタクリル酸を、場合により精製後に、他の反応工程、またはエステル化工程にリサイクル、または回収することができる。
【0041】
本発明のさらなる実施形態によれば、工程a)からc)のいずれかまたはすべてを少なくとも部分的に液相および/または気相で行うことが可能である。したがって、すべての工程を少なくとも部分的に液相で行うこと、すべての工程を少なくとも部分的に気相で行うこと、あるいは少なくとも1つの工程を少なくとも部分的に液相で行い、残りの1つまたは複数の工程を少なくとも部分的に気相で行うことが可能である。本発明の好適な態様において、工程a)およびb)が少なくとも部分的に気相で行われ、工程c)が少なくとも部分的に液相で行われ、あるいは工程a)、b)およびc)が少なくとも部分的に液相で行われる。本発明による方法によれば、少なくとも工程b)が少なくとも部分的に気相で行われるのが好適である。工程b)が少なくとも2つの酸化段階を含む場合は、少なくとも1つの酸化段階を少なくとも部分的に液相で行い、少なくとも1つの酸化段階を少なくとも部分的に気相で行うことが可能である。
【0042】
工程b)が少なくとも部分的に気相で行われる場合は、上記の急冷工程を、酸化相の精製の前に実施するのが好適である。
【0043】
工程b)において酸化が2つの個別の酸化段階で生じる本発明による方法の実施形態において、酸化段階の一方または双方を気相または液相酸化段階とすることが可能である。一方の酸化段階を気相酸化段階とし、他方の酸化段階を液相酸化段階とすることも可能である。本発明による方法の好適な態様において、第1および第2の酸化段階が気相酸化段階である。本発明による方法の別の好適な態様において、第1の酸化段階が気相酸化段階であり、第2の酸化段階が液相酸化段階である。工程c)のエステル化は、液相エステル化であるのが好適である。第2の酸化段階が液相酸化段階である場合は、この第2の酸化段階を工程c)と統合して、統合液相酸化−エステル化段階とすることも可能である。
【0044】
酸化が少なくとも2つの個別の酸化段階で生じる本発明による方法の実施形態において、急冷工程を少なくとも2つの個別の酸化段階の少なくとも2つの間で行うことが可能である。この急冷工程は、好ましくは、メタクロレインの単離を可能にする急冷工程である。この実施形態は、第2の酸化段階またはさらなる酸化段階が液相酸化段階である場合、あるいは第2の酸化段階またはさらなる酸化段階を工程c)と統合して、統合液相酸化−エステル化段階とする場合に特に好適であり得る。この種の急冷を当業者に公知の任意の好適な方法で実施することができる。好適な方法は、例えば、DE3441207A1およびJP60087241に記載されている。
【0045】
工程c)が気相で行われる場合は、共化合物としてジメチルエーテルが好適である。工程c)が液相で行われる場合は、共化合物としてメタノールが好適である。
【0046】
本発明による方法において、上記のように工程c)でエステル化が施される前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分は、少なくとも1つの共化合物の少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも92質量%、より好ましくは少なくとも93、94、95または96質量%、さらにより好ましくは少なくとも97質量%、さらにより好ましくは少なくとも97.5質量%、より好ましくは少なくとも98質量%であるのが好適である。したがって、例えば、原料組成物をMTBEの分割から得る場合は、分割で製造されたメタノールの少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも92質量%、より好ましくは少なくとも93、94、95または96質量%、さらにより好ましくは少なくとも97質量%、さらにより好ましくは少なくとも97.5質量%、より好ましくは少なくとも98質量%を分割相から分離し、場合により精製し、工程c)でエステル化するのが好適である。
【0047】
本発明の基礎をなす目的の解決への貢献は、また、メタクリル酸を製造するための装置であって、
i)ii)と流体連通する、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物供給手段と、
ii)iii)と流体連通する、原料組成物をメタクリル酸メチルに少なくとも部分的に変換するための触媒反応域と、
iii)任意の少なくとも1つの第1の精製ユニットと、
v)任意の、少なくとも供給手段に流体連通して接続された導管ユニットと
を含む装置によってなされる。
【0048】
本発明の基礎をなす目的の解決への貢献は、また、メタクリル酸を製造するための装置であって、
i)ii)と流体連通する、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物供給手段と、
ii)iii)と流体連通する、原料組成物をメタクリル酸メチルに少なくとも部分的に変換するための触媒反応域と、
iii)iv)と流体接続する任意の少なくとも1つの第1の精製ユニットと、
iv)エステル化ユニットと、
v)任意の、少なくとも供給手段およびエステル化ユニットに流体連通して接続された導管ユニットと
を含む装置によってなされる。
【0049】
供給手段は、原料組成物を祝梅反応域に供給するのに好適な任意の手段、例えば、リザーバ、パイプ、ラインまたはチューブ等であり得る。供給手段は、好ましくは、温度および/または圧力の上昇および/または低下に対して、好ましくは、少なくとも好適な酸化反応のための上記の温度および圧力に対して耐性を有するべきである。良好な耐熱性および/または耐圧性は、装置内で生じる1つ以上の反応が気相反応である場合に特に好適である。また、供給手段は、好ましくは、原料組成物の成分のいずれとも、そして本発明による方法に関して以上に言及されているように、原料組成物に添加され得る酸素または酸素等価物、水および/または水蒸気、希釈剤などのさらなる組成物とも反応しない。気体の相または組成物を供給することを意図する任意の供給手段は、好ましくは、供給される気体の露点温度を超える温度に維持される。例えば、供給手段を加熱または断熱することによって、これを達成することができる。
【0050】
本発明による装置の好適な実施形態において、供給手段は、好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルまたはエチルtert−ブチルエーテル分割ユニットと流体連通する。「流体連通」という用語は、ここでは、液体、気体、蒸気、超臨界流体または任意の他の流体の少なくとも1つであり得る流体が、任意の手段によって変換および/または輸送され得る、好ましくは、供給手段から分割ユニットへ、または分割ユニットから供給手段へ流れることができるように、供給手段が分割ユニットと接続されることを意味するものと理解される。MTBEおよびETBEのための分割ユニットは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A4,p.488;V.Fattore,M.Massi Mauri,G.Oriani,G.Paret,Hydrocarbon Processing,August 1981,p.101−106;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A16,p.543−550;A.Chauvel,G.Lefebvre,"Petrochemical Processes,Technical and Economic Characteristics",Vol.1,Editions Technip,Paris,1989,p.213 et seq.;US5,336,841、US4,570,026およびそれらに引用されている参考文献に記載されているように、当該技術分野で周知であり、当業者の一般的な知識の一部を構成する。
【0051】
本発明による装置において、触媒反応域は、好ましくは、少なくとも1つの酸化ユニットを含む。少なくとも1つの酸化ユニットは、好ましくは少なくとも1つの酸化触媒を含む、イソブチレンおよび/またはTBAをメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つに酸化するのに好適な少なくとも1つの酸化ユニットであるのが好ましい。少なくとも1つの酸化ユニットは、例えば、チューブおよびシェル反応器などのマルチチューブ反応器、プレート反応器または流動床反応器であり得るが、マルチチューブ反応器、好ましくは酸化触媒が充填されたマルチチューブ反応器が好適である。当該反応器は、例えば、MAN DWE GmbH、Deggendorfer Werft(ドイツ)、または石川島播磨重工業(2007年7月1日より株式会社IHI)から商業的に入手可能であり、当業者の一般的知識の一部を構成する。
【0052】
本発明による装置の好適な実施形態において、触媒反応域は、1つの酸化領域、好ましくは1つの酸化ユニット、好ましくは1つの酸化反応器を含むのが好適であり、この酸化領域は、少なくとも1つの触媒、好ましくはイソブチレンおよびTBAの少なくとも1つをメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つ、好ましくはメタクリル酸に酸化することが可能な触媒を含むのが好適である。
【0053】
本発明による装置の別の好適な実施形態において、触媒反応域、好ましくは少なくとも1つの酸化ユニットは、少なくとも第1の酸化領域およびさらなる酸化領域、好ましくは第1の酸化領域および第2の酸化領域を含む。第1の酸化領域およびさらなる酸化領域、好ましくは第1の酸化領域および第2の酸化領域は、単一の反応器における異なる酸化領域であり得るか、またはそれらは、それぞれの個別の反応器にそれぞれ存在することができ、すべての反応器が互いに流体連通する。触媒反応域が1つの反応器の形である実施形態において、第1の酸化段階が、好ましくは、反応器における第1の酸化領域にあり、次いでさらなる酸化段階が、同じ反応器における第1の酸化領域の下流のさらなる酸化領域にある。好適な態様において、反応器は上記のマルチチューブ反応器である。この場合、少なくとも1つの酸化触媒、好ましくは少なくとも2つの酸化触媒は、好ましくは、第1の酸化段階が少なくとも1つの上流触媒層で生じ、さらなる酸化段階がその下流の少なくとも1つのさらなる触媒層で生じるように、好ましくは層状に供給されるのが好適である。同じチューブにおける触媒層は、互いに直に隣接し得る。少なくとも1つの触媒層を、少なくとも1つの中間領域、例えば、少なくとも1つの混合領域または少なくとも1つの移行領域、例えば、少なくとも1つの特定数のチューブを有する領域と異なる数のチューブを有する領域との間の移行領域によって、あるいは例えば、反応条件下で不活性である充填材または懸濁剤の層によって、少なくとも1つの他の触媒層から隔てることも可能である。第1の酸化およびさらなる酸化が気相で生じる方法において、第1の酸化領域およびさらなる酸化領域が個別の反応器に存在する場合は、すべての反応器がマルチチューブ反応器であるのが好適である。一方、少なくとも1つの反応器が液相反応器、例えば液相オキシエステル化反応器である場合は、この反応器は、好ましくは、マルチチューブ反応器でない。
【0054】
第1の酸化領域と1つまたは複数のさらなる酸化領域が異なる温度であるのがさらに好適である。第1の酸化領域とさらなる酸化領域が、特に互いに異なる温度の場合、第1の酸化段階およびさらなる酸化段階のいずれの温度とも異なる温度の中間領域によって隔てられるのがさらに好適である。
【0055】
本発明による装置が、上記のように、第1の酸化反応器および少なくとも1つのさらなる酸化反応器を含む場合は、第1の酸化反応器の後であって、少なくとも1つのさらなる酸化反応器の前に、好ましくは第1の酸化反応器と第2の酸化反応器との間に急冷ユニットを設けることが可能である。この急冷ユニットは、好ましくは、メタクロレインを単離するように機能する。第1の酸化反応器が気相反応器であり、少なくとも1つのさらなる反応器が液相反応器である場合は、第1の酸化反応器と少なくとも1つのさらなる酸化反応器との間の急冷ユニットが好適である。該装置での使用に好適な急冷ユニットは、好ましくは、例えば、急冷方法工程に関して以上に引用した参考文献に記載されているものである。
【0056】
本発明による装置において、装置が、第1の酸化領域およびさらなる酸化領域を含む場合は、第1の酸化領域は第1の酸化触媒を含み、さらなる酸化領域はさらなる酸化触媒を含み、さらなる酸化領域は、好ましくは第2の酸化領域であり、さらなる酸化触媒は、好ましくは第2の酸化触媒であるのが好適である。第1の酸化触媒は、好ましくは、イソブチレンをメタクロレインに酸化するための触媒であり、さらなる酸化触媒、好ましくは第2の酸化触媒は、好ましくは、メタクロレインをメタクリル酸に酸化するための触媒である。第1の触媒およびさらなる触媒は、特に限定されず、好ましくは、酸化に好適な固体触媒、好ましくは混合金属酸化物触媒である。当該触媒は、例えば、その酸化触媒に関する開示内容が参考として本明細書で援用され、本発明の開示内容の一部を構成するJP58059934、JP55045617、EP、EP0456837A1、WO2001/098247A2、EP0630879A1、US2002/0198406A1、EP911313、US5,602,280、EP145469、US5,218,146、US4,365,087、US5,077,434、US5,231,226またはUS2003/0004374A1、US6,498,270B1、US5,198,579、EP1595600A1、EP1052016A2、US5,583,084およびそれらに引用されている参考文献に記載されているように、当該技術分野で周知である。第1の酸化触媒およびさらなる酸化触媒が含まれる場合は、それらは、好ましくは、上記の少なくとも1つの酸化領域に配置される。
【0057】
本発明の装置の好適な態様において、少なくとも1つのO2供給源の少なくとも1つの供給手段、好ましくは空気の少なくとも1つの供給手段、ならびに水および/または水蒸気の少なくとも1つの供給手段は、触媒反応域および供給手段の少なくとも1つと流体連通する。本発明によれば、少なくとも1つのO2供給源の少なくとも1つの供給手段ならびに水および/または水蒸気の少なくとも1つの供給手段は、それぞれ少なくとも1つのO2供給源ならびに水および/または水蒸気を触媒反応域に直接供給するのが好適である。触媒反応域が少なくとも第1の酸化領域およびさらなる酸化領域を含む場合は、該装置は、好ましくは、酸化領域毎に少なくとも1つのO2供給源の少なくとも1つの供給手段ならびに水および/または水蒸気の少なくとも1つの供給手段を含む。該装置は、窒素、アルゴンおよび/または二酸化炭素、好ましくは窒素または二酸化炭素、好ましくは、触媒燃焼ユニット(CCU)または熱的燃焼ユニット(TCU)からの、好ましくは、触媒燃焼ユニットからの二酸化炭素含有リサイクルガスなどの希釈剤の供給手段をさらに含むことができる。
【0058】
本発明による装置は、場合により、触媒反応域の下流にある少なくとも1つの第1の精製ユニットを含む。メタクリル酸メチルを製造するための装置において、少なくとも1つの第1の精製ユニットは、エステル化ユニットの上流にあり、好ましくは、触媒反応域およびエステル化ユニットの間に、それらと流体連通してある。少なくとも1つの第2の精製ユニットは、好ましくは、メタクリル酸の精製、好ましくは水および/またはテレフタル酸(TPA)からのメタクリル酸の分離に好適であり、好ましくは、蒸留器、晶析装置、抽出器、洗浄装置およびカラムの少なくとも1つを含む。少なくとも1つの第1の精製ユニットは、少なくとも1つの晶析装置を含むのが特に好適である。少なくとも1つの第1の精製ユニットは、2つ以上の精製段階を含むことが可能である。未反応のメタクロレインをここで分離し、望まれる場合は、さらなる反応のために触媒反応域に戻すことができる。好適な精製ユニットは、メタクリル酸の精製のための方法工程に関して以上に引用した参考文献に記載されている。
【0059】
本発明による装置の好適な実施形態において、少なくとも1つの急冷ユニットが、触媒反応域と精製ユニットの間に、それらと流体連通して含められる。触媒反応域から出る酸化相に存在するメタクリル酸を急冷ユニットで凝縮させて、主な酸化生成物としてメタクリル酸を含む溶液を形成するのが好適である。未反応のメタクロレインを急冷ユニットにおいて分離し、望まれる場合は、さらなる反応のために触媒反応域に戻すこともできる。本発明による装置での使用に好適な急冷ユニットは、例えば、急冷方法工程および中間急冷工程に関して以上に引用した参考文献に記載されている。
【0060】
エステル化ユニットは、特に限定されず、メタクリル酸メチルを形成するためのエステル化に好適な任意のユニットであり得る。それは、好ましくは液相エステル化に好適である。エステル化ユニットは、好ましくは、固体触媒または液体触媒などの不均質または均質触媒であってよく、好ましくは、US6,469,202、JP1249743、EP1254887A1に記載されているもの、またはAmberlyst(登録商標)(Rohm and Haas Corp.)、Dowex(登録商標)(Dow Corp.)もしくはLewertit(登録商標)(Lanxess AG)の商品名で商業的に入手可能であるものなどの酸性イオン交換樹脂、あるいは硫酸、H2SO4などの、エステル化を触媒することが可能な酸であるエステル化触媒を含む。
【0061】
導管ユニットは、好ましくは、少なくとも供給手段およびエステル化ユニットと流体連通する。MTBEまたはETBE分割器が装置に含まれる場合は、導管ユニットは、また、好ましくは、MTBEまたはETBE分割器に、好ましくはMTBEまたはETBE分割器と供給手段との間、ならびにMTBEまたはETBE分割器とエステル化ユニットとの間に接続される。
【0062】
本発明による装置の好適な態様において、導管ユニットは、少なくとも1つの共化合物の少なくとも一部を分離する手段を含む。当該手段は、例えば、蒸留器、カラム、抽出器、栓、パイプ、バルブ、調節器、相分離器、または当業者に公知であり、液体から液体を、気体および/または蒸気から液体を、あるいは気体および/または蒸気から気体および/または蒸気を分離するのに好適と思われる任意の他の手段であり得る。
【0063】
本発明による装置は、好ましくは、分割ユニットと触媒反応域の間、または導管ユニットと供給手段の間、またはMTBEもしくはETBE分割器と導管ユニットとの間に、かつ好ましくはその少なくとも2つと流体連通させて、分割ユニットの排出物からのイソブチレン相の分離および/または精製のための少なくとも1つの分離および/または精製ユニットを含む。分離および/または精製ユニットは、抽出器、晶析装置、カラム、蒸留装置、精留装置、膜、透析蒸発装置、吸着ユニット、吸収ユニットおよび洗浄装置の少なくとも1つであり得る。
【0064】
該装置は、少なくとも1つの第3の精製ユニットを導管ユニットとエステル化ユニットの間にさらに含むことができる。1つまたは複数の第3の精製ユニットは、好ましくは、少なくとも1つの共化合物、好ましくはメタノールのための少なくとも1つの精製ユニットである。好適な精製ユニットは、当業者に公知であり、好ましくは、少なくとも1つの蒸留装置、晶析装置、抽出器、カラムまたは洗浄装置、より好ましくは少なくとも1つの蒸留装置を含む。メタノール精製ユニットの例は、EP1254887A1に記載されている。
【0065】
該装置は、メタクリル酸メチルを精製するための少なくとも1つの第4の精製ユニットをエステル化ユニットの下流にさらに含むことができる。好適な精製ユニットは、当業者に公知であり、好ましくは、少なくとも1つの蒸留装置、晶析装置、抽出器、カラムまたは洗浄装置、より好ましくは少なくとも1つの蒸留装置を含む。少なくとも1つの第4の精製ユニットは、メタクリル酸メチルの少なくとも部分的な精製、および副産物、例えば、エステル化から生じる不純物、未反応メタノールおよび/またはメタクリル酸の少なくとも部分的な分離を可能にすべきである。未反応試薬を、場合により精製を施した後に、エステル化反応にリサイクルすることができる。
【0066】
本発明は、また、前記方法が本発明による装置で実施される、メタクリル酸の製造のための本発明による方法に関する。
【0067】
本発明は、また、本発明による方法によって得られるメタクリル酸に関する。
【0068】
本発明は、また、方法が本発明による装置で実施される、メタクリル酸メチルの製造のための本発明による方法に関する。
【0069】
本発明は、また、本発明による方法によって得られるメタクリル酸メチルに関する。
【0070】
本発明は、また、式
[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nおよびmは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数を表し、
Rは、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状炭化水素、および直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状ヘテロ原子含有炭化水素、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、他の窒素および/または酸素含有残基、グリコール、ジオール、トリオール、ビスフェノール、脂肪酸残基からなる群から選択され、Rは、好ましくは、ブチル、特にn−ブチル、イソブチル、ヒドロキシエチル、好ましくは2−ヒドロキシエチル、およびヒドロキシプロピル、好ましくは2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピル、エチル、2−エチルヘキシル、イソデシル、シクロヘキシル、イソボルニル、ベンジル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、ステアリル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、2−tert−ブチルアミノエチル、エチルトリグリコール、テトラヒドロフルフリル、ブチルジグリコール、メトキシポリエチレングリコール−350、メトキシポリエチレングリコール500、メトキシポリエチレングリコール750、メトキシポリエチレングリコール1000、メトキシポリエチレングリコール2000、メトキシポリエチレングリコール5000、アリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ジウレタン、エトキシ化ビスフェノールA、10個の酸化エチレン単位を有するエトキシ化ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、場合により例えば25個の酸化エチレン単位を有するエトキシ化C16〜C18脂肪アルコール、2−トリメチルアンモニウムエチルを表す]のメタクリル酸エステルを製造するための方法であって、
α1 本発明に記載の方法によりメタクリル酸を製造する工程、または
α2 本発明に記載の方法によりメタクリル酸メチルを製造する工程、および
α3 工程α1で得られたメタクリル酸または工程α2で得られたメタクリル酸メチルと式R(OH)mのアルコールとを反応させる工程を含む方法に関する。
【0071】
メタクリル酸エステル誘導体を、工程α3において、当業者に公知の方法、例えばエステル交換によってメタクリル酸メチルから製造することができる。あるいは、工程α3において、本発明によるメタクリル酸をそれぞれのアルコールでエステル交換することによってこれらの誘導体を製造することができる。ヒドロキシエステル誘導体のさらなる可能な製造において、本発明によるメタクリル酸を、開環反応で、対応する酸素含有環、例えば、エポキシド、特に酸化エチレンまたは酸化プロピレンと反応させる。
【0072】
本発明は、また、式
[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nおよびRは、以上に定義されている通りである]のメタクリル酸エステルに関する。好適なメタクリル酸エステルは、メタクリル酸アルキル、特に、メタクリル酸ブチル、特にメタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエステル誘導体、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチル、好ましくはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびメタクリル酸ヒドロキシプロピル、好ましくはメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、および特殊なメタクリル酸エステル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸2−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸エチルトリグリコール、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ブチルジグリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール−350、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール500、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール750、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール1000、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール2000、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール5000、メタクリル酸アリル、エトキシ化(場合により例えば25モルのEOを有する)C16〜C18脂肪アルコールのメタクリル酸エステル、2−トリメチルアンモニウムメタクリル酸エチル塩化物、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール200、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール400、ジメタクリル酸1,3−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸グリセロール、ジメタクリル酸ジウレタン、ジメタクリル酸エトキシ化ビスフェノールA、ジメタクリル酸エトキシ化(場合により例えば10のEOを有する)ビスフェノールA、トリメタクリル酸トリメチロールプロパンである。
【0073】
本発明は、さらに、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、および式
[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nおよびRは、以上に定義されている通りである]のメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーを製造するための方法であって、
A1.本発明の方法によりメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび少なくとも1つのメタクリル酸エステルの少なくとも1つを製造する工程、
A2.
A2a.工程A1で得られたメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび少なくとも1つのメタクリル酸エステルの少なくとも1つ、および
A2b.場合により、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび少なくとも1つのメタクリル酸エステルの少なくとも1つと共重合可能な少なくとも1つのコモノマーを重合する工程を含む方法に関する。
【0074】
重合は、特に限定されず、例えば、US5,292,797、US4,562,234、US5,773,505、US5,612,417、US4,952455、US4,948,668、US4,239,671に記載されているように、当業者に公知であり、好適と思われる任意の方法によって実施され得る。好適な重合方法は、重合条件下でラジカルに分解する開始剤によって開始されるラジカル重合であり、重合は、好ましくは、溶液または乳化重合、好ましくは水溶液重合である。
【0075】
メタクリル酸メチルと共重合が可能であるコモノマーの例は、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピルまたはアクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルまたはメタクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルおよび他のメタクリル酸エステル、ならびに酢酸ビニルなどの酢酸エステル、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルである。少なくとも1つのコモノマーは、最も好ましくは、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、アクリル酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーである。
【0076】
重合は、1つ以上の架橋剤の存在下でも生じ得る。本発明による好適な架橋剤は、少なくとも2つのエチレン不飽和基を1分子内に有する化合物、縮合反応、付加反応または開環反応でモノマーの官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を有する化合物、少なくとも1つのエチレン不飽和基、および縮合反応、付加反応または開環反応でモノマーの官能基と反応することができる少なくとも1つの基を有する化合物、あるいは多価金属カチオンである。
【0077】
本発明は、また、本発明による方法により得られるポリマー、あるいは本発明によるメタクリル酸モノマーまたは本発明による方法によって得られるメタクリル酸モノマー、本発明によるメタクリル酸メチルモノマーまたは本発明による方法によって得られるメタクリル酸メチルモノマー、本発明によるメタクリル酸エステルまたは本発明による方法によって得られるメタクリル酸エステル、ならびに場合によりコモノマーなどの他の成分および場合により架橋剤から選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーに関する。
【0078】
本発明は、また、本発明によるメタクリル酸、本発明によるメタクリル酸メチル、本発明によるメタクリル酸エステルの少なくとも1つ、ならびにメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーから選択される少なくとも第1の成分を含む組成物を製造するための方法であって、
B1.本発明によるメタクリル酸、本発明によるメタクリル酸メチル、本発明によるメタクリル酸エステル、ならびにメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含む本発明によるポリマーから選択される少なくとも1つの第1の成分を供給する工程、
B2.B1で供給された少なくとも1つの第1の成分と少なくとも1つのさらなる成分とを混合する工程とを含む方法に関する。
【0079】
少なくとも1つのさらなる成分は、好ましくは、例えば置換または非置換ポリスチレン、ポリ−n−ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、多糖類、シリカおよびナノ材料から選択される天然または合成有機または無機ポリマーから選択される少なくとも1つの成分である。
【0080】
本発明は、また、本発明によるメタクリル酸、本発明によるメタクリル酸メチル、本発明によるメタクリル酸エステル、ならびにメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位、および少なくとも1つのさらなる成分を含む本発明によるポリマー、または本発明による方法により得られるポリマーから選択される少なくとも1つの第1の成分を含む組成物に関する。
【0081】
本発明による組成物において、少なくとも1つのさらなる成分は、好ましくは、組成物を製造するための方法に関して以上に記載されている少なくとも1つの成分である。
【0082】
本発明は、また、本発明によるメタクリル酸、本発明によるメタクリル酸メチル、本発明によるメタクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む本発明によるポリマーもしくはコポリマー、ならびに本発明による組成物の少なくとも1つを含む成形品、成形材料、フィルム、シート、粒質物、複合体、発泡体、繊維、潤滑剤、接着剤、増粘剤、懸濁剤、凝集剤、樹脂、プラスチック、塗料、コンタクトレンズ、建築材料、吸収材、医薬品、活性物質の制御放出のための材料、発泡体、繊維、潤滑剤、粉末または粒子などの化学製品に関する。
【0083】
本発明は、また、成形品、成形材料、フィルム、シート、粒質物、複合体、接着剤、増粘剤、懸濁剤、凝集剤、樹脂、プラスチック、塗料、コンタクトレンズ、建築材料、吸収材、医薬品、活性物質の制御放出のための材料、発泡体、繊維、潤滑剤、粉末、粒子などの化学製品における、本発明によるメタクリル酸、本発明によるメタクリル酸メチル、本発明によるメタクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む本発明によるポリマーもしくはコポリマー、ならびに本発明による組成物の少なくとも1つの使用に関する。
【0084】
次に、非限定的な図面および実施例を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明による装置1の好適な実施形態を概略的に示す図である。
【0086】
主要成分としてのイソブチレン、TBAおよびメタクロレインの少なくとも1つ、ならびに共化合物としてのメタノール、エタノール、ジメチルエーテル、MTBE、ETBEおよびホルムアルデヒドの少なくとも1つを含む気体の原料組成物を、供給手段2によって分割ユニット7から触媒反応域3に供給する。気体の原料組成物を、導管ユニット6を介して誘導することができ、あるいは原料組成物の所望の組成に応じて、バイパス31によって導管ユニット6を気体の原料組成物によりバイパスさせることができる。導管ユニット6は、触媒反応域3に向かう原料組成物の流れを調節し、原料組成物の組成を調節する役割を果たす。好適な実施形態において、これは、メタノール、ジメチルエーテルおよびホルムアルデヒドの少なくとも1つの一部を分離手段14によって分離することによって行われる。装置1は、それぞれの共化合物および/またはイソブチレンおよび/または原料組成物のための1つ以上の予備精製ユニット18を含むことができる。原料組成物を、供給手段2を介して、触媒反応域3の第1の酸化領域9に誘導する。各酸化領域9、10にそれぞれ空気供給手段22、水蒸気供給手段23および希釈剤供給手段30によって空気、水蒸気および希釈剤を供給する。希釈剤供給手段30に、場合により燃焼ユニット34を介して、急冷ユニット15および/または精製ユニット4からの希釈剤リサイクル流33によって希釈剤を場合により供給する(リサイクル流33および燃焼ユニット34は、理解しやすいように不図示とする)。第1の酸化領域9の、第1の酸化触媒12(不図示)を含む第1の酸化ユニット8aにおいて、気体の原料組成物に触媒気相酸化を施して、第1の気体の酸化相における主要酸化生成物としてメタクロレインを形成する。次いで、第1の酸化相は、任意の急冷領域32を介して、触媒酸化域3の第2の酸化領域10aに流れる。第2の酸化領域10aは、第2の酸化ユニット8bに第2の酸化触媒13a(不図示)を含む。第2の酸化ユニット8bにおいて、第1の酸化相に第2の触媒気相酸化を施して、第2の気体の酸化相における主要酸化生成物として主にメタクリル酸を形成する。酸化領域9および10aの一方または双方に少量の酸化生成物としてメタクリル酸メチルも形成される。次いで、第2の気体の酸化相を急冷ユニット15に誘導し、そこでメタクリル酸を急冷剤で凝縮させて、メタクリル酸および不純物を含む急冷相を形成する。未反応メタクロレインを急冷された第2の酸化相から分離し、メタクロレインリサイクル導管24を介して第2の酸化領域10aにリサイクルすることができる。次いで、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび不純物を含む急冷相を精製ユニット4に誘導し、そこでメタクリル酸およびメタクリル酸メチルを急冷剤および不純物から少なくとも部分的に分離する。精製ユニット4は、メタクリル酸の所望の純度に応じて、1つ以上の精製段階4a、4b等(不図示)を含むことができる。メタクロレインを精製ユニット4から分離し、メタクロレインリサイクル導管24を介してリサイクルすることもできる。エステル化されることを意図しない精製メタクリル酸を、排出口25を介して精製ユニット4から回収することができる。メタクリル酸メチルに変換されるメタクリル酸をエステル化ユニット5に誘導する。エステル化ユニット5は、エステル化触媒16を含む。メタノールをメタノール供給手段17によってエステル化ユニット5に供給し、メタノール精製ユニット19をエステル化ユニット5の上流に配置することができる。メタノールを、場合によりメタノール精製ユニット19を介して、分割ユニットがMTBEのための分割ユニットであれば分割ユニット7から、導管ユニット6から、または異なるメタノール供給源(不図示)から供給することができる。エステル化ユニット5において、メタクリル酸およびメタノールをエステル化触媒16(不図示)でエステル化して、主要エステル化生成物としてのメタクリル酸メチルを、不純物および未反応の出発材料とともに含むエステル化相を形成する。エステル化ユニット5から、エステル化相を精製ユニット20に誘導することができ、そこでメタクリル酸メチルを反応組成物および不純物から分離する。精製ユニット20は、メタクリル酸メチルの所望の純度に応じて、1つ以上の精製段階20a、20b等を含むことができる。メタクリル酸メチルを、排出口26を介して精製ユニット20から回収する。エステル化相に存在する未反応のメタノールおよび/またはメタクリル酸を精製ユニット20で分離し、それぞれメタクリル酸排出口28およびメタノール排出口29を介して精製ユニット20から除去することができる。メタノールおよびメタクリル酸の一方または双方を、場合によりそれぞれメタノール精製ユニット19およびメタクリル酸精製ユニット4を介してエステル化ユニット5にリサイクルすることができ、あるいは一方または双方を排出させることができる。
【0087】
2段階酸化域として図1に示される触媒反応域3を1段階酸化域と見なすこともできる。この実施形態において、精製されたイソブチレン相を、酸化領域9を含む触媒反応域3に誘導する。酸化領域9において、メタクロレインを形成し、メタクリル酸に連続的に変換する。
【0088】
実施例
実施例1〜3
原料組成物を、第1表に記載の組成で製造する。
【0089】
【表1】

【0090】
2、H2Oおよび希釈ガスを、第2表に示されるモル比で原料組成物に添加する。
【0091】
【表2】

【0092】
次いで、得られた組成物を第1の酸化反応器に供し、そこでEP0807465A1の実施例15の方法に従って、かつその条件下でIBENをメタクロレインに酸化した。
【0093】
次いで、この第1の酸化から得られた第1の酸化相に対してO2、H2Oおよび希釈ガスを、第1の酸化反応器に供された原料組成物におけるIBENのモル数に基づいて第3表に記載のモル量で添加した。
【0094】
【表3】

【0095】
次いで、この原料を第2の酸化反応器に供した。この第2の反応器において、EP1325780A1の実施例1の方法に従って、かつその条件下でメタクロレインをメタクリル酸に酸化した。
【0096】
第1の酸化反応器に導入されたイソブチレンのモル数に基づいて、第4表によりメタクリル酸メチルとともにメタクリル酸の収率を得た。収率を対照(実施例1、原料組成物にメタノールが存在しない)の収率に基づく相対的収率として示す。
【0097】
【表4】

【0098】
したがって、収率は、実施例2および3ではそれぞれ2.2%および3.4%だけ対照と比較して向上している。
【0099】
実施例4
原料組成物が97.6モル%のイソブチレンおよび2.4モル%のジメチルエーテルの組成を有する点を除いては、実施例2および3と同じ手順に従った。収率を比較し、相対的収率を導くために、ジメチルエーテルを用いない個別の対照も実施した。
【0100】
1.032の相対的収率、すなわち(相対的収率が1.00の)対照と比較して3.2%の向上を得た。
【0101】
実施例5:メタクリル酸メチルの製造
Amberlyst(登録商標)(Rohm&Haas Corp.)を酸性イオン交換樹脂として使用する点を除いてはEP1254887A1に記載されているように、酸性イオン交換樹脂が充填された固定床反応器における液相反応で1.2モルの工業用メタノールとの反応によって、実施例3で得られたメタクリル酸の1モルをメタクリル酸メチルに変換した。メタクリル酸のメタクリル酸メチルへの変換率は、メタクリル酸に対して45%であった。
【0102】
実施例6:メタクリル酸n−ブチルの製造
上記実施例5で得られたメタクリル酸メチルのエステル交換によりDE10301007A1の実施例2の方法に従ってメタクリル酸n−ブチルを製造した。
【符号の説明】
【0103】
1 装置、 2 供給手段、 3 触媒反応域、 4 第1の精製ユニット、 4a 第1の精製段階、 4b さらなる精製段階、 5 エステル化ユニット、 6 導管ユニット、 7 分割ユニット、 8 酸化ユニット、 8a 第1の酸化ユニット、 8b 第2の酸化ユニット、 9 第1の酸化領域、 10 さらなる酸化領域、 10a 第2の酸化領域、 12 第1の酸化触媒、 13 さらなる酸化触媒、 13a 第2の酸化触媒、 14 少なくとも1つの共化合物の少なくとも一部の分離手段、 15 急冷ユニット、 16 エステル化触媒、 17 メタノール供給手段、 18 予備精製ユニット、 19 メタノール精製ユニット、 20 メタクリル酸メチル精製ユニット、 22 空気供給手段、 23 水供給手段、 24 メタクロレインリサイクル導管、 25 メタクリル酸排出口、 26 メタクリル酸メチル排出口、 28 メタクリル酸排出口、 29 メタノール排出口、 30 希釈剤供給手段、 31 バイパス、 32 急冷領域、 33 希釈剤リサイクル流、 34 燃焼ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸を製造するための方法であって、
a)イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物を供給する工程と、
b)工程a)で得られた原料組成物を前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分とともに触媒反応域に供し、メタクリル酸メチルならびにメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つを含む酸化相を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
メタクリル酸メチルを製造するための方法であって、
a)イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物を供給する工程と、
b)工程a)で得られた原料組成物を前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも第1の部分とともに触媒反応域に供し、メタクリル酸メチルならびにメタクロレインおよびメタクリル酸の少なくとも1つを含む酸化相を得る工程と、
c)工程b)で得られた酸化相の少なくとも一部をエステル化する工程と
を含む方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの共化合物の少なくともさらなる部分に工程c)でエステル化を施す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも工程b)が少なくとも部分的に気相で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)で供給された原料組成物をメチルtert−ブチルエーテルまたはエチルtert−ブチルエーテルの分割によって得る、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、原料組成物が、5ppm以上、好ましくは10ppm以上の含有量の少なくとも1つの共化合物を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、原料組成物が、少なくとも1つの共化合物を、原料組成物における主要化合物および共化合物の全質量に対して、0.0005〜10質量%、好ましくは0.0008〜8質量%、より好ましくは0.001〜7質量%、さらにより好ましくは0.001〜6質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜4質量%の範囲で含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、原料組成物に酸化を施して、イソブチレンの少なくとも1つの酸化生成物を得る、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸化は、少なくとも2つの個別の酸化段階で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の酸化段階の主生成物がメタクロレインであり、さらなる酸化段階の主生成物がメタクリル酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酸化相が、酸化相における炭化水素に対して、少なくとも0.0005質量%、好ましくは少なくとも0.0008質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.05質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.3質量%、より好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.8質量%、さらにより好ましくは少なくとも1質量%、さらにより好ましくは1.5質量%、より好ましくは少なくとも1.2質量%、より好ましくは少なくとも1.5質量%、さらにより好ましくは少なくとも1.8質量%、より好ましくは少なくとも2質量%のメタクリル酸メチルを含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの共化合物の少なくとも1つのさらなる部分が、少なくとも1つの共化合物の少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも92質量%、より好ましくは少なくとも93、94、95または96質量%、さらにより好ましくは少なくとも97質量%、さらにより好ましくは少なくとも97.5質量%、より好ましくは少なくとも98質量%である、請求項3から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
メタクリル酸を製造するための装置(1)であって、
i)ii)と流体連通する、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物供給手段(2)と、
ii)iii)と流体連通する、原料組成物をメタクリル酸メチルに少なくとも部分的に変換するための触媒反応域(3)と、
iii)任意の少なくとも1つの第1の精製ユニット(4)と
を含む装置(1)。
【請求項14】
メタクリル酸メチルを製造するための装置(1)であって、
i)ii)と流体連通する、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメタクロレインから選択される少なくとも1つの主要化合物と、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテルおよびホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1つの共化合物とを含む原料組成物供給手段(2)と、
ii)iii)と流体連通する、原料組成物をメタクリル酸メチルに少なくとも部分的に変換するための触媒反応域(3)と、
iii)iv)と流体連通する任意の少なくとも1つの第1の精製ユニット(4)と、
iv)エステル化ユニット(5)と、
v)少なくとも供給手段(2)およびエステル化ユニット(5)と流体連通する任意の導管ユニット(6)と
を含む装置(1)。
【請求項15】
供給手段(2)が、メチルtert−ブチルエーテルまたはエチルtert−ブチルエーテルのための分割ユニット(7)と流体連通する、請求項13または請求項14に記載の装置(1)。
【請求項16】
触媒反応域(3)が、少なくとも1つの酸化ユニット(8)を含む、請求項13から15までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
少なくとも1つの酸化ユニット(8)が、少なくとも1つの触媒の少なくとも1つの触媒層を含む、請求項16に記載の装置(1)。
【請求項18】
触媒反応域(3)が、少なくとも第1の酸化領域(9)およびさらなる酸化領域(10)を含む、請求項13から17までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
第1の酸化領域(9)が第1の酸化触媒を含み、さらなる酸化領域(10)がさらなる酸化触媒を含む、請求項18に記載の装置(1)。
【請求項20】
導管ユニット(6)が、少なくとも1つの共化合物の少なくとも一部を分離する手段(14)を含む、請求項13から19までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項21】
前記方法が、請求項13および15から18までのいずれか一項に記載の装置(1)で実施される、請求項1および4から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、請求項14から18までのいずれか一項に記載の装置(1)で実施される、請求項2から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1および4から12または21までのいずれか一項に記載の方法によって得られる、メタクリル酸。
【請求項24】
請求項2から12または22までのいずれか一項に記載の方法によって得られる、メタクリル酸メチル。
【請求項25】

[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nおよびmは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数を表し、
Rは、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状炭化水素、および直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状ヘテロ原子含有炭化水素からなる群から選択される]のメタクリル酸エステルを製造するための方法であって、
α1 請求項1および4から12または21までのいずれか一項に記載の方法によりメタクリル酸を製造する工程、または
α2 請求項2から12または22までのいずれか一項に記載の方法によりメタクリル酸メチルを製造する工程、および
α3 工程α1で得られたメタクリル酸または工程α2で得られたメタクリル酸メチルと式R(OH)mのアルコールとを反応させる工程を含む方法。
【請求項26】

[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数を表し、
Rは、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状炭化水素、および直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状ヘテロ原子含有炭化水素からなる群から選択される]のメタクリル酸エステル、または請求項25に記載の方法により得られるメタクリル酸エステル。
【請求項27】
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、または式
[CH2=C(CH3)C(=O)O]n−R
[式中、
nは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数を表し、
Rは、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状炭化水素、および直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族または芳香族環または直鎖状ヘテロ原子含有炭化水素からなる群から選択される]のメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーを製造するための方法であって、
A1.請求項1および4から12または21までのいずれか一項に記載の方法によるメタクリル酸、請求項2から12または22までのいずれか一項に記載の方法によるメタクリル酸メチルおよび請求項25に記載の方法による少なくとも1つのメタクリル酸エステルの少なくとも1つを製造する工程、
A2.
A2a.工程A1で得られたメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび少なくとも1つのメタクリル酸エステルの少なくとも1つ、および
A2b.場合により、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも1つと共重合可能な少なくとも1つのコモノマーを重合する工程を含む、方法。
【請求項28】
少なくとも1つのコモノマーが、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、アクリル酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項27または28に記載の方法により得られるポリマー、または請求項23に記載のメタクリル酸、請求項24に記載のメタクリル酸メチルおよび請求項26に記載のメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマー。
【請求項30】
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、少なくとも1つのメタクリル酸エステル、ならびにメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーから選択される少なくとも第1の成分を含む組成物を製造するための方法であって、
B1.請求項23に記載のメタクリル酸、請求項24に記載のメタクリル酸メチル、請求項26に記載のメタクリル酸エステル、および請求項29に記載のポリマーから選択される少なくとも1つの第1の成分を供給する工程、
B2.B1で供給された少なくとも1つの第1の成分と少なくとも1つのさらなる成分とを混合する工程とを含む方法。
【請求項31】
少なくとも1つのさらなる成分が、置換または非置換ポリスチレン、ポリ−n−ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、多糖類、シリカおよびナノ材料から選択される少なくとも1つの成分である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
請求項23に記載のメタクリル酸、請求項24に記載のメタクリル酸メチル、請求項26に記載のメタクリル酸エステル、請求項29に記載のポリマーから選択される少なくとも1つの第1の成分、または請求項31または32に記載の方法により得られる組成物。
【請求項33】
少なくとも1つのさらなる成分が、置換または非置換ポリスチレン、ポリ−n−ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、多糖類、シリカおよびナノ材料から選択される少なくとも1つの成分である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
請求項23に記載のメタクリル酸、請求項24に記載のメタクリル酸メチル、請求項26に記載のメタクリル酸エステル、請求項29に記載のポリマーあるいは請求項32また33に記載の組成物の少なくとも1つを含む成形品、成形材料、フィルム、シート、粒質物、複合体、接着剤、増粘剤、懸濁剤、凝集剤、樹脂、プラスチック、塗料、コンタクトレンズ、建築材料、吸収材、医薬品、活性物質の制御放出のための材料、発泡体、繊維、潤滑剤、粉末または粒子から選択される、化学製品。
【請求項35】
成形品、成形材料、フィルム、シート、粒質物、複合体、接着剤、増粘剤、懸濁剤、凝集剤、樹脂、プラスチック、塗料、コンタクトレンズ、建築材料、吸収材、医薬品、活性物質の制御放出のための材料、発泡体、繊維、潤滑剤、粉末、粒子から選択される化学製品における、請求項23に記載のメタクリル酸、請求項24に記載のメタクリル酸メチル、請求項26に記載のメタクリル酸エステル、請求項29に記載のポリマーおよび/または請求項32もしくは33に記載の組成物の少なくとも1つの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−528079(P2010−528079A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509756(P2010−509756)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052225
【国際公開番号】WO2008/145417
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】