説明

酸化物半導体電極、その作製方法およびこれを備えた色素増感太陽電池

【課題】 色素増感太陽電池の光電変換効率を飛躍的に向上させることのできる酸化物半導体電極、その作製方法及びこれを備えた色素増感太陽電池の提供。
【解決手段】 透明電極と、結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層の間に、下地層、該下地層の上に形成された中間層が介在している酸化物半導体電極であって、該下地層が25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)からなり、該層の厚みが50〜1000nmであり、該中間層が、平均粒径および格子定数の観点から前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)と実質同一の結晶性酸化物半導体粒子(A2)と、平均粒径および格子定数の観点から前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)と実質同一の結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物からなることを特徴とする酸化物半導体電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池に好適な酸化物半導体電極およびこれを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グレッツェルらによるアモルファスシリコン太陽電池に匹敵する性能を有する色素増感型太陽電池が報告されて以来、光電変換効率のより高い色素増感型太陽電池の研究が活発になされている。
【0003】
たとえば特許文献1においては、スプレー熱分解法(SPD法)による基板上への多孔質酸化チタン薄膜の製造において、原料溶液である酸化チタンゾル溶液中にチタン化合物を添加することで、酸化チタン微粒子間にネックを成長させ、もって短時間製膜による生産性の向上を確保するとともに、太陽電池の変換効率の向上を可能にするとの技術が開示されている。この文献においてはまた、基板上の透明電極(フッ素ドープ酸化スズ薄膜)と前記多孔質酸化チタン薄膜との間に有機チタン化合物を原料とした緻密な酸化チタンバッファー層を介在させることで、前記酸化スズ薄膜と酸化チタンゾル溶液とのなじみの悪さに起因する製膜の困難性を回避し、もって電解液と透明電極の接触による短絡およびそれに伴う開放電圧の低下の問題を解消するとしている。これは、該酸化チタンバッファー層が、透明電極と多孔質酸化チタン薄膜の双方になじみがよく、容易に接合を形成できるからであると説明している。
【0004】
また特許文献2においては、基板上の導電性表面と酸化チタン等の酸化物半導体膜との間に有機金属錯体や有機導電性物質等の接合プロモート膜を形成することによって、前記導電性表面と前記酸化物半導体膜との接合性を向上させ、もって高温を用いることなく作製できるとともに、エネルギー変換効率を格段と向上させることができるとする。
【0005】
しかし、いずれの文献も高温焼成において発生する導電性基板と酸化チタン等の多孔質酸化物半導体薄膜との間のナノメーター・オーダーでのクラックの発生を防止することに着目したものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−176130号公報
【特許文献2】特開2003−297443号公報
【非特許文献1】SAITO Y.,KAMBE S.,KITAMURA T.,WADA Y.,YANAGIDA S., Morphology control of mesoporous TiO2 nanocrystalline films for performance of dye sensitized solar cells, Solar Energy materials and Solar Cells, 2004, Vol.83, No.1, Page 1-13
【非特許文献2】斉藤野恭輝、柳田祥三 ナノテクノロジーによる酸化チタン太陽電池の高性能化と課題(2003)、粉体と工業、第35巻第4号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、色素増感太陽電池でn−型半導体として使用される酸化チタン等の酸化物半導体膜とガラス電極等の導電性基板間には、通常の作製方法においてはナノメーター・オーダーのクラックが発生していることを初めて発見し、色素増感太陽電池の低性能の原因の一つがこのクラックの発生にあると考えた。すなわち、従来法(透明導電性ガラス基板上に有機バインダーを含む水溶液に分散した酸化物半導体ナノ粒子を膜厚5ミクロン以上になるようにスキージ法等で塗布した後、450℃程度の温度で焼成する)で作製された酸化物半導体電極の断面を集束イオンビーム(FIB)加工観察装置により観測したところ、基板上の透明電極(フッ素ドープ酸化スズ薄膜)と多孔質酸化チタン薄膜との間に数10nmのクラックが観察された。また、種々の焼成温度において、クラックの発生を観察した結果、酸化物半導体材料を塗布後、焼成中にクラックが発生していることを見出した。このクラックの空間は、色素増感太陽電池で発生する電子密度では電子が飛び越えることは不可能であり、一部このクラックを架橋するような形態で連結している僅かな柱状連結部を通じてのみ、電子の伝達がなされていることが推測された。かかるクラックの発生を抑制することができれば、基板上の透明電極と多孔質酸化チタン薄膜との間の電子伝達を向上させ、光電変換効率を飛躍的に向上させることも可能である。
【0008】
したがって、本発明は、このナノメーター・オーダーのクラックの発生を抑制することによって色素増感太陽電池の光電変換効率を飛躍的に向上させることのできる酸化物半導体電極およびその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかるクラックの発生を抑制するために、基板上の透明電極(フッ素ドープ酸化スズ薄膜など)と多孔質酸化チタン薄膜との間に下地層を設けることを検討したが、下地層のみでは、基板上の透明電極との間でのクラックの発生を抑制できたとしても、多孔質酸化チタン薄膜との間でのクラックの発生も同時に抑制することは困難であった。しかし、驚くべきことに、さらに特定の中間層を該下地層と該多孔質酸化チタン薄膜との間に用いることにより、各層の間でのクラックの発生を抑制できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の態様は、導電性表面を有する基板、該導電性表面の上に形成された下地層、該下地層の上に形成された中間層、および該中間層の上に形成され結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層、を有する酸化物半導体電極であって、以下の(1)、(2)、(3)および(4)の要件、すなわち、
(1)該下地層が、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)からなり、該層の厚みが50〜1000nmであること、
(2)該中間層が、結晶性酸化物半導体粒子(A2)と結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物からなること、
(3)該結晶性酸化物半導体粒子(A2)が以下のaおよびbの条件、すなわち、
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものであること、
並びに、
(4)該結晶性酸化物半導体粒子(B2)が以下のcおよびdの条件、すなわち、
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものであること、
の要件を充たすものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、前記第1の態様の酸化物半導体電極を有することを特徴とする色素増感太陽電池である。
【0012】
さらに、本発明の第3の態様は、導電性表面を有する基板、該導電性基板の上に形成された下地層、該下地層の上に形成された中間層、および該中間層の上に形成され結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層を有する酸化物半導体電極の作製方法であって、
(1)導電性表面を有する基板上に、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)またはその前駆体のペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して50〜1000nmの厚みの下地層を形成する工程、
(2)該下地層上に、結晶性酸化物半導体粒子(A2)と、結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物ペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して中間層を形成する工程であって、
該結晶性酸化物半導体粒子(A2)が以下のaおよびbの条件、すなわち、
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たし、かつ
該結晶性酸化物半導体粒子(B2)が以下のcおよびdの条件、すなわち、
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものである工程、
(3)該中間層上に前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)のペーストを塗布後、400〜550℃の温度で焼成して酸化物半導体層を形成する工程、
とを順に行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高温焼成中に酸化チタン等の酸化物半導体膜とガラス電極等の導電性基板間に発生するナノメーター・オーダーのクラックの発生を防止でき、もって色素増感太陽電池の光電変換効率を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(一)本発明の第1の態様について
本態様においては、導電性表面を有する基板と、結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層との間に、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)からなり、厚みが50〜1000nmである下地層と、該結晶性酸化物半導体粒子(A1)と平均粒径および格子定数の観点から実質同一の結晶性酸化物半導体粒子(A2)並びに該結晶性酸化物半導体粒子(B1)と平均粒径および格子定数の観点から実質同一の結晶性酸化物半導体粒子(B2)の混合物からなる中間層を介在させることで、各層間でのクラックの発生を抑制し、色素増感太陽電池に応用した場合に、光電変換効率を飛躍的に向上させることができる酸化物半導体電極を提供する。
【0015】
(i)ここで、導電性表面を有する基板とは、ガラス等の耐熱性の基板上に酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属酸化物薄膜、金、銀、白金等の金属薄膜、導電性高分子等の導電性薄膜などを形成したものをいう。これを色素増感太陽電池に応用し、アノード側から採光する場合、耐熱性、耐薬品性、透光性の観点から、好ましくはフッ素ドープ酸化スズ薄膜等の透明電極を用いることができる。
【0016】
(ii)結晶性酸化物半導体粒子である前記のA1、B1、A2およびB2(以下、「結晶性酸化物半導体粒子」と総称する)としてはそれぞれ独立に、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される1種の化合物または2種以上の混合物が例示できるが、その中でも光電変換効率の観点から、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化スズからなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、特に酸化チタンが好ましい。また、クラック発生の抑止の観点から、A1とA2が同一の化学組成であることが好ましく、同様に、B1とB2も同一の化学組成であることが好ましい。たとえば、A1とA2、B2とB1、いずれも酸化チタンであることが好ましい。
【0017】
該結晶性酸化物半導体粒子は、クラック発生抑止の観点から、単結晶の方が好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で他の結晶系が少量混在した多結晶体や、非晶質体が少量混入したものでもよい。たとえば、酸化物半導体層のB1及び中間層のB2として好ましく用いられるDegussa社のP25は、基本的にアナターゼの結晶であるが、ルチルも少量混在している。また、多くの酸化チタンは完全なアナターゼの結晶ではなく、非晶質な部分も含んでいるが、これらも用いることができる。また、該結晶性酸化物半導体粒子が酸化チタンの場合、ルチル、アナタース、ブルッカイトの3種類の結晶系が知られているが、このうちアナタースまたはブルッカイト、特にアナタースが好ましい。
【0018】
(iii)該下地層は、結晶性酸化物半導体粒子(A1)からなり、前記導電性表面の上に形成される。結晶性であること、薄いこと、さらに微粒子の形態を用いることで、導電性表面と下地層の間のクラックの発生を抑止できる。前記A1の平均粒径は、クラック発生抑止の観点、隙間のない緻密な層を得ることにより電解液の浸入を防ぎ電圧を高める観点から、25nm以下であり、特に10〜20nmがより好ましく、さらに12〜18nmが好ましい。また、該下地層の厚みは、高温焼成時において自分自身が剥離することなく、またクラック発生抑止の観点から、50〜1000nmであり、特に100〜300nmが好ましい。ここで、平均粒径とは、本明細書全体を通して個数平均粒径をいい、FE−SEM等で測定できる。
【0019】
前記A1としては、たとえば、触媒化成製のHPW−18NR(アナタース型の結晶性酸化チタン)や、昭和電工社製のNTB−13(ブルッカイト型の結晶性酸化チタン)等を好適に用いることができる。
【0020】
(iv)該酸化物半導体層は、結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなり、後述の中間層の上に形成される。該B1は、その表面に有機色素をより多く吸着させるとともに、電解液の移動度の観点から多孔質であることが好ましく、その多孔度の指標となる酸化物半導体層の孔隙率[ガス吸着測定(窒素等温吸着法)で測定される]が40%以上であることが好ましい。ここで、酸化物半導体層の孔隙率は以下の式によって定義される。
孔隙率=ρV/(ρV+1)×100(%)
ρ:酸化チタンの理論密度(単結晶の密度g/cm
V:ガス吸着分析による単位重量当たりの細孔容積(cm/g)
【0021】
また、該B1の平均粒径は、色素吸着量の観点から、10〜30nmであることが好ましく、15〜25nmであることが特に好ましい。また、該酸化物半導体層の厚みは、電子の拡散長の観点から、5〜30μmが好ましく、8〜16μmが特に好ましい。さらに酸化物半導体層の孔隙率、平均粒子径、及び厚みを総合的に評価したラフネスファクター(投影面積に対する実効表面積の割合)が定義されており、以下の式で計算できるが、
ラフネスファクター=(酸化物半導体層の全表面積*1)/(酸化物半導体層の投影面積*2
*1 窒素等温吸着測定においてBET式により求める。
*2 実効面積である。
これが1000以上であることが好ましい。
【0022】
好ましいB1としては、たとえば、Degussa社製のP25(アナタース型の結晶性酸化チタン、少量のルチル型を含む)を好適に用いることができる。
【0023】
(v)該中間層は、前記結晶性酸化物半導体粒子(A2)および前記結晶性酸化物半導体粒子(B2)の混合物からなり、前記下地層の上に形成される。[A2]:[B2]の重量比率は、中間層と下地層の間、および中間層と酸化物半導体層の間にクラックが発生することを抑止する観点から、好ましくは1:4〜4:1、より好ましくは1:2〜2:1である。また、該中間層の厚みはクラック発生抑止の観点から、50〜2000nmが好ましく、50〜1000nmがより好ましく、100〜300nmが特に好ましい。
【0024】
かかる中間層は1層のみならず、複数の層として形成することもできる。かかる場合、該下地層により近い中間層については、該中間層中のA2の重量比率をより大きくし、逆に該酸化物半導体層により近い中間層については、該中間層中のB2の重量比率をより大きくすることが好ましい。
【0025】
(vi)該結晶性酸化物半導体粒子(A2)は以下のaおよびbの条件、すなわち、
a. 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
b. 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たす。該A2が上記aおよびbの条件を充たすことで、下地層と該中間層との間のクラックの発生の抑制に寄与する。
【0026】
該A2の平均粒径は、クラックの発生をより抑止する観点から、前記A1の平均粒径と実質同一であること、すなわち、前記A1の平均粒径の±10%以内、好ましくは±8%以内、特に好ましくは同一の平均粒径を有する。標準偏差等で代表される粒径分布も同等であることがより好ましい。
【0027】
該A2の格子定数は、前記A1の格子定数と実質同一であること、すなわち、前記A1の格子定数の±10%以内の範囲、より好ましくは±8%以内、特に好ましくは同一である。
【0028】
ここで、格子定数とは、結晶系の単位格子の辺に沿ってa、b、c軸をとり、各軸方向の単位格子の稜の長さをそれぞれa、b、cとし、bc、ca、ab軸がなす角をそれぞれα、β、γとすると、これらa、b、cおよびα、β、γの6つの値のことをいい、これら6つの各値において、該A2と前記A1が、実質的に同一であること、すなわち少なくともそれぞれ±10%以内の範囲にあることが必要であり、より好ましくは±8%以内の範囲、特に同一であることが好ましい。
【0029】
酸化チタンにはアナタース、ブルッカイト、ルチルの3種類の結晶系が知られているが、アナタース(低温型)、ルチル(高温型)は正方晶系[a=b≠c、α=β=γ=90°;a=b=5.36Å(アナタース)、4.59Å(ルチル);c=9.53Å(アナタース)、2.96Å(ルチル)]、ブルッカイトは斜方晶系(a≠b≠c、α=β=90°γ=120℃;a=9.15Å、b=5.44Å、c=5.14Å)に属するところ、該A2と、前記A1が、たとえば、ともにアナタース型の結晶性酸化チタンである場合、含まれる微量成分について大きな相違がない限り上記bの要件を満たす。なお、複数の結晶系が混在する場合には、複数の結晶系のうちの主成分同士を比較して、格子定数に関する上記bの条件を充たすかを確認する。
【0030】
また、前記A1と前記A2とは、同一材料が好ましく、さらには同一製法の同一材料を用いることが好ましい。すなわち、前記A2としても前記A1と同一のものを採用することが好ましい。
【0031】
(vii)結晶性酸化物半導体粒子(B2)は以下のcおよびdの条件、すなわち、
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たす。
【0032】
該B2が上記cおよびdの条件を充たすことで、酸化物半導体層と該中間層との間のクラックの発生の抑制に寄与できる。
【0033】
該B2の平均粒径は、クラックの発生をより抑止する観点から、前記B1の平均粒径と実質同一であること、すなわち、前記B1の平均粒径の±10%以内、好ましくは±8%以内、特に好ましくは同一の平均粒径を有する。標準偏差等で代表される粒径分布も同等であることがより好ましい。
【0034】
また、該B2の格子定数は、前記B1の格子定数と実質同一であること、すなわち、前記B1の格子定数の±10%以内、より好ましくは±8%以内の範囲、特に好ましくは同一の格子定数を有する。なお、複数の結晶系が混在する場合には、複数の結晶系のうちの主成分同士を比較して、格子定数に関する上記dの条件を充たすかを確認する。
【0035】
ここで、格子定数とは、前記(vi)における記載と同様である。前記B1とB2がともに結晶性酸化チタンである場合、双方ともにアナタースであることが、光電変換効率の観点から好ましい。
【0036】
前記B1とB2とは、同一材料が好ましく、さらには同一製法の同一材料を用いることが好ましい。すなわち、前記B2としても前記B1と同一のものを採用することが好ましい。
【0037】
(二)本発明の第2の態様について
本態様においては、前記(一)の本発明の第1の態様において説明した酸化物半導体電極を含む色素増感太陽電池を提供する。常法に従い、前記第1の態様の酸化物半導体電極の酸化物半導体層上にRu増感色素等の増感色素を吸着担持させ、対極と重ね合わせた後、各種イオンの添加剤や、レドックス剤としてヨウ素を含んだ有機溶媒やイオン性液体等を溶媒とする電解液、あるいは導電性高分子のようなP型ホール輸送層を電極間に充填して完成させることができる。なお、対極としては、導電性基板上に触媒として白金、炭素等の元素、あるいはPEDOT等の導電性高分子を薄く多孔質状に積層させたものを好適に用いることができる。
【0038】
(三)本発明の第3の態様について
本態様においては、前記(一)本発明の第1の態様において説明した酸化物半導体電極の製造方法を提供する。本態様の方法により、酸化物半導体ペースト塗布後の焼成の際に発生するクラックを効果的に抑制することができ、光電変換効率の大幅な向上が期待できる。
【0039】
本態様は以下の3つの工程を順に行なうことからなっている。
【0040】
工程(1)
導電性表面を有する基板上に、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)またはその前駆体のペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して、厚みが50〜1000nmである下地層を形成する工程。
【0041】
工程(2)
前記下地層上に、以下のaおよびbの条件を充たす結晶性酸化物半導体粒子(A2)と、以下のcおよびdの条件を充たす結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物ペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して中間層を形成する工程。
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること。
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること。
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること。
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること。
【0042】
工程(3)
前記中間層上に前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)のペーストを塗布後、400〜550℃の温度で焼成して酸化物半導体層を形成する工程。
【0043】
(i)塗布方法およびペーストについて
上記各工程に用いられるA1若しくはその前駆体(第一工程)、A2とB2の混合物(第二工程)、またはB1(第三工程)(以下、「結晶性酸化物半導体粒子等」と略記する)の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等を挙げることができるが、操作の簡便さの観点からはスピンコート法、スプレー法、ディッピング法が、量産化の観点からはスクリーン印刷法によるのが好ましい。
【0044】
また、上記結晶性酸化物半導体粒子等のペーストとは、上記結晶性酸化物半導体等を、ゾルまたはスラリーの形態で得たものであり、使用される溶媒としては、水、有機溶媒、またはそれらの混合液を挙げることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ピリジン等の塩基性溶媒などから選ばれる1種または2種以上の溶媒が挙げられる。これらの中でも特に水、エタノール等が密着性の観点から好ましい。また、これら溶媒中の上記酸化物半導体粒子等の含有量は、塗布後の厚みの観点から、例えばスピンコート法の場合、10〜30重量%であることが好ましい。前記ペーストにはその他、硝酸、アセチルアセトン等の分散助剤、ポリエチレングリコール等の粘度調整剤を添加することもできる。pHは分散の観点から、1〜4の範囲にあることが好ましい。
【0045】
(ii)第一工程(下地層の形成)について
第一工程においては、導電性表面を有する基板上に、平均粒径25nm以下の結晶性酸化物半導体粒子(A1)またはその前駆体のペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成することによって、膜厚が50〜1000nmの下地層を形成する。
【0046】
焼成温度については、80〜550℃の温度を用いるが、粒子間のネッキングの観点から、FTOガラス等の耐熱性基板の場合、より好ましくは450〜500℃である。もっとも、この条件は基板の耐熱性により異なる。
【0047】
前記A1としては、平均粒径25nm以下、より好ましくは平均粒径10〜25nmの市販の酸化物半導体粒子を用いることができる。たとえば昭和電工製のNTBシリーズ(粒子径20nm以下、分散媒は水・アルコール)や触媒化成工業のHPWシリーズ(粒子径20nm以下、分散媒は水)であれば、すでにスラリーの形態になっているため、そのまま用いてスピンコートを行うことができる。そして、これらの市販スラリー品、たとえば昭和電工製のNTBシリーズ等では各種の濃度のものが市販されているため、膜厚が最終的に50〜1000nm、好ましくは100〜300nmとなるようにスピンコートの回数を調整すればよい。また、粉末の形態で市販されているものとして、石原産業製のST−01(平均粒径7nm)、テイカ製のAM−100(平均粒径6nm)、昭和タイタニウム製のスーパータイタニアF−6(平均粒径約15nm)、日本エアロジル製のP90(平均粒径約15nm)等、多数のものが知られており、これら市販粉末品については、15〜30重量%となるように水−アルコール系溶媒で分散させ、スピンコート法等により膜厚が50〜1000nmになるように塗布すればよい。
【0048】
さらに、第一工程においては、上記A1の代わりに、その前駆体を用いることができる。該前駆体としては、焼成中に対応する結晶性酸化物半導体に変換される金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられ、密着性向上の観点からは、特にTi(OPr)、TiClが好ましい。これら前駆体は、450℃以上の温度での焼成によりアナタース型の結晶となる。通常、この工程にしたがって生成する結晶性酸化物半導体粒子の平均粒径は25nm以下となる。例えば0.2MのTi(OPr)溶液を数回スピンコートし、450℃で焼成すると、平均粒径20nm以下の結晶性酸化チタン粒子(アナタース型)が膜厚50〜1000nmの厚みで塗布できる。
【0049】
(iii)第二工程(中間層の形成)について
第二工程においては、前記下地層上に、以下のaおよびbの条件を充たす結晶性酸化物半導体粒子(A2)と、以下のcおよびdの条件を充たす結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物ペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して中間層を形成する。
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること。
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること。
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること。
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること。
【0050】
該A2として前記A1と平均粒径および格子定数の点で実質同一のもの、および該B2として前記B1と平均粒径および格子定数の点で実質同一のものが使用される。ここで、平均粒径および格子定数の点で実質同一とは、それぞれ上記aおよびb、またはcおよびdの条件を充たすものをいう。より好ましくは、上記aおよびb、またはcおよびdにおいて、「±10%以内」を「±8%以内」に置き換えた条件を充たすこと、特に好ましくは、平均粒径および格子定数ともに同一であることである。
【0051】
格子定数が、前記A1またはB1の「±10%以内」に入る該A2または該B2の具体例としては、化学組成・製法ともに互いに同一のものを用いるのが最も好ましい。
【0052】
なお、第二工程に用いられる前記A2とB2の混合物としては、[A2]:[B2]の重量比率として、中間層と下地層の間、および中間層と酸化物半導体層の間にクラックが発生することを抑止する観点から、好ましくは1:4〜4:1、より好ましくは1:2〜2:1である。
【0053】
該中間層の厚みはクラック発生抑止の観点から50〜2000nmが好ましく、50〜1000nmがより好ましく、100〜300nmが特に好ましい。
【0054】
また、第二工程における焼成温度としては、80〜550℃の温度を用いるが、粒子間のネッキングの観点から、FTOガラス等の耐熱性基板の場合、より好ましくは450〜500℃である。もっとも、この条件は基板の耐熱性により異なる。
【0055】
(iv)第三工程(酸化物半導体層の形成)について
第三工程においては、該中間層上に、好ましくは10〜30nm、より好ましくは15〜25nmの平均粒径の前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)のペーストを塗布後、400〜550℃の温度で焼成して酸化物半導体層を形成する。
【0056】
酸化物半導体層の形成には、任意の公知の方法を用いることができる。
【0057】
該酸化物半導体層は孔隙率が40%以上であることが好ましいが、孔隙率が40%以上の酸化物半導体層を形成する方法としては、該B1として、複数の球形粒子が凝集して2次粒子を形成したもの(3次元的な数珠繋ぎ構造)やチューブ状のもの等の構造を有する
市販品等を用いるか、または該B1がそのようなものでなくても、相当量(粒子径に依存するものの、たとえば酸化物半導体粒子の重量に対して40重量%以上)のバインダーを含むペーストを用いて中間層を作製することにより、所定の孔隙率を有する酸化物半導体層を作製できる。
【0058】
たとえば、石原産業製のST21(平均粒径20nm)、テイカ製のAM600(平均粒径30nm)、昭和タイタニウム製スーパータイタニウムF−5(平均粒径約20nm)、日本エアロジル製のP25(平均粒径約25nm)等の市販の酸化チタン・ナノ粒子を入手し、該酸化チタンにアセチルアセトン等の分散助剤を加え、所定量の水を添加しながらペイントシェーカー等の攪拌機で混合した後、相当量のバインダー[ポリエチレングリコールやTriton X100(オクチルフェノキシエトキシレート、平均重合度9.5)等のポリエチレングリコールモノエーテルといったグリコール類添加剤等]を加えスラリーとする。該スラリーを用いてスキージ法による塗布・焼成することで、孔隙率60%程度の酸化物半導体材料(B1)からなる酸化物半導体層(膜厚10μm程度)を得ることができる(非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0059】
あるいは、Ti(OPr)溶液を弱い酸性条件で加水分解したものを、80℃程度で攪拌熟成させ、その後、240℃程度で半日、オートクレーブ処理する方法によって得られる酸化チタン(Solaronix社より市販もされている)をスキージ法により2〜3回重ね塗りした後、焼成してもよい。
【0060】
また、第三工程においては、バインダーの焼成や粒子間結合の促進の観点から、特に400〜550℃、より好ましくは450〜500℃の焼成温度を用いる。
【0061】
また、第三工程では、作製する酸化物半導体層の厚みは好ましくは5〜30μm、より好ましくは8〜16μmであるが、一般的には他の2層よりも大きいことから、第一工程や第二工程のようなスピンコート法、スプレー法、ディッピング法を所定の厚みになるように繰り返し塗布するか、より粘性を高めてスキージ法やスクリーン印刷法により一度で塗布することもできる。
【0062】
以下に本発明の具体的な実施例を挙げて、さらに詳細に本発明を説明する。
【実施例1】
【0063】
(1)チタニア粒子分散液の準備
18nmの平均粒径、アナタース型の結晶性を有するチタニア粒子分散液(触媒化成製、HPW−18NR)を準備し、これをそのまま粒子分散液Aとした。
【0064】
他方、チタニア粒子であるP25(Degussa社製、平均粒径25nm)に分散助剤としてアセチルアセトンを添加して水中に分散させた後、界面活性剤としてTriton−X100を添加し、水中に分散させてチタニア濃度が40重量%になるように別の分散液を調製した。このようにして得られた粒子分散液を粒子分散液Bとした。
【0065】
(2)導電性表面を有する基板上への下地層の形成
下地層のペーストとして前記粒子分散液Aを用い、これをスピンコート法(1000rpm、15秒)によって導電性基板[日本板硝子製フッ素ドープSnO(FTO)ガラス]上に約300nm程度の厚さに塗布する。その後、これを電気炉にて450℃で30分間焼成し、処理導電性基板1を得た。
【0066】
(3)中間層の形成
まず、前記粒子分散液Aと粒子分散液Bの混合物を準備する。チタニア粒子を重量で等量混合させるため、前記粒子分散液Aと前記粒子分散液Bとを体積比2:1で混合した。さらに混合を促進させるため、超音波洗浄器で10分間攪拌混合した。それを前記処理導電性基板1上に数滴滴下し、スピンコート法(1000rpm、15秒)によって約600nm程度の厚さに塗布した。その後、電気炉にて450℃で30分間焼成することで、下地層の上に中間層を堆積させた処理導電性基板2を得た。
【0067】
(4)酸化物半導体電極E1の形成
前記粒子分散液Bを用いて、スキージ法により、前記処理導電性基板2上に形成された中間層上に、膜厚10μmになるように粒子分散液Bを塗布し、その後、電気炉にて、450℃で30分間焼成した。これにより本発明の酸化物半導体電極E1(該酸化物半導体層の孔隙率49%)を得た。
【0068】
(比較例1)
実施例において、中間層の形成ステップを省略することで、下地層はあるが、中間層のない酸化物半導体電極E2を作製した。
【0069】
(比較例2)
実施例において、下地層の形成ステップ及び中間層の形成ステップを省略することで、中間層も下地層もない酸化物半導体電極E3を作製した。
【0070】
(比較例3〜5)
比較例1において各層の焼成温度をすべて350℃で行って酸化物半導体電極E4を(比較例3)、同様に各層の焼成温度をすべて150℃で行って酸化物半導体電極E5を(比較例4)、同様に焼成温度をすべて室温に置き換えて酸化物半導体電極E6を(比較例5)、それぞれ作製した。
【0071】
(試験例1)
上記により得られたそれぞれの酸化物半導体電極E1〜E6の断面を集束イオンビーム(FIB)加工観察装置により観測したところ、図2〜8のFE−SEM画像を得ることができた。ここで、図2、3は実施例の電極E1、図4は比較例1の電極E2(下地層はあるが、中間層のない電極)、図5は比較例2の電極E3(下地層も中間層もない電極、焼成温度450℃)、図6は比較例3の電極E4(焼成温度を350℃に下げた電極E2に対応)、図7は比較例4の電極E5(焼成温度を150℃に下げた電極E2に対応)、図8は比較例5の電極E6(焼成温度を室温に置き換えた電極E2に対応)の断面のFE−SEM画像である。
【0072】
図2〜5により、本発明品電極E1には層間のクラックの発生がみられないのに対して、比較品電極E2およびE3にはクラックの発生がみられることがわかる。
【0073】
また、図8から図6及び図4を順に観察することにより、本願で抑制することを課題としたクラックの発生が、高温焼成の過程で生じていることが示された。
【0074】
(試験例2)
上記のようにして作製した酸化物半導体電極の酸化物半導体層上に以下のようにして有機色素膜を形成させた。
【0075】
すなわち、Ru色素であるシス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)−ルテニウム(II)(Solaronix社製)をアセトニトリルとt−ブタノールの混合液に0.3mMの濃度になるように溶解し、色素溶液として調製した。前記調製例により作製した酸化物半導体電極E1〜E3のそれぞれを、予め120℃で20分間加熱し、次いでデシケーター中でしばらく放冷させた後、該色素溶液に浸漬し、そのまま暗所で一晩放置し色素吸着させた。
【0076】
次いで、以下のようにして、色素増感太陽電池を作製した。
【0077】
すなわち、色素を吸着させた酸化物半導体電極E1〜E3と白金が所持された対極とを重ね合わせ、クリップで固定し、電極間に電解液[LiI 0.1M,DMPImI(=1,2−ジメチル−3−イミダゾリニウムヨウ化物) 0.3M,tBP(=4−tert−ブチルピリジン) 0.5M,I 0.05M,溶媒MAN(=メトキシアセトニトリル)]を挿入し、開放型のセルを作製した。
【0078】
このようにして得られたそれぞれの色素増感型太陽電池につき、以下の条件で光電変換効率を測定した。
【0079】
すなわち、ソーラーシュミレーター(山下電装社製)により、AM(エアマス、大気質量) 1.5、100mW/cmの擬似太陽光を照射し、短絡電流密度、開放電圧、曲線因子(FF)を測定し、光電変換効率を下記の計算式に基づいて算出した。
(式1)
光電変換効率=(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)
その結果、以下の表1のような光電変換効率の結果が得られた。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例のE1は、比較例であるE2およびE3に比較して、光電変換効率が格段と向上していることがわかる。
【0082】
中間層はないが下地層を設けた比較例1では、両層とも設けていない比較例2に比較して、開放電圧は向上するものの、短絡電流密度の向上はわずかであるのに対して、両層とも設けている実施例では、両層とも設けていない比較例2に比較して、短絡電流密度および開放電圧のいずれも向上している。これは酸化チタンの剥離抑制に起因するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の酸化物半導体電極の酸化物半導体層上に有機色素膜を形成させ、色素増感太陽電池用の電極として用いることにより、光電変換効率の格段に向上した色素増感太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の酸化物半導体電極の断面図の概略である。
【図2】本発明(実施例)の酸化物半導体電極E1の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【図3】本発明(実施例)の酸化物半導体電極E1の断面のFE−SEM画像。左図倍率2万倍、右図倍率5万倍、
【図4】比較例1の酸化物半導体電極E2の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【図5】比較例2の酸化物半導体電極E3の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【図6】比較例1において焼成温度を350℃に置き換えて得られた比較例3の酸化物半導体電極E4の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【図7】比較例1において焼成温度を150℃に置き換えて得られた比較例4の酸化物半導体電極E5の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【図8】比較例1において焼成温度を室温に置き換えて得られた比較例5の酸化物半導体電極E6の断面のFE−SEM画像。左上図倍率5千倍、右上図倍率5万倍、左下図倍率10万倍、右下図倍率10万倍
【符号の説明】
【0085】
2 基板
4 透明電極
6 下地層
8 中間層
10 酸化物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する基板、該導電性表面の上に形成された下地層、該下地層の上に形成された中間層、および該中間層の上に形成された結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層を有する酸化物半導体電極であって、以下の(1)、(2)、(3)および(4)の要件、すなわち、
(1)該下地層が、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)からなり、該層の厚みが50〜1000nmであること、
(2)該中間層が、結晶性酸化物半導体粒子(A2)と結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物からなること、
(3)該結晶性酸化物半導体粒子(A2)が以下のaおよびbの条件、すなわち、
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものであること、
並びに、
(4)該結晶性酸化物半導体粒子(B2)が以下のcおよびdの条件、すなわち、
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものであること、
の要件を充たすものであることを特徴とする酸化物半導体電極。
【請求項2】
前記結晶性酸化物半導体粒子(A2)として前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)と同一のものを採用し、かつ、前記結晶性酸化物半導体粒子(B2)として前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)と同一のものを採用することを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体電極。
【請求項3】
前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径が10〜30nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物半導体電極。
【請求項4】
前記中間層の厚みが50〜2000nmであり、前記酸化物半導体層の厚みが5〜30μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体電極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物半導体電極を有することを特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項6】
導電性表面を有する基板、該導電性基板の上に形成された下地層、該下地層の上に形成された中間層、および該中間層の上に形成され結晶性酸化物半導体粒子(B1)からなる酸化物半導体層を有する酸化物半導体電極の作製方法であって、
(1)導電性表面を有する基板上に、25nm以下の平均粒径を有する結晶性酸化物半導体粒子(A1)またはその前駆体のペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して50〜1000nmの厚みの下地層を形成する工程、
(2)該下地層上に、結晶性酸化物半導体粒子(A2)と、結晶性酸化物半導体粒子(B2)との混合物ペーストを塗布後、80〜550℃の温度で焼成して中間層を形成する工程であって、
該結晶性酸化物半導体粒子(A2)が以下のaおよびbの条件、すなわち、
a 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
b 前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たし、かつ
該結晶性酸化物半導体粒子(B2)が以下のcおよびdの条件、すなわち、
c 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径の±10%以内の範囲の平均粒径を有すること、および
d 前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の格子定数の±10%以内の範囲の格子定数を有すること、
の条件を充たすものである工程、
(3)該中間層上に前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)を塗布後、400〜550℃の温度で焼成して酸化物半導体層を形成する工程、
とを順に行なうことを特徴とする酸化物半導体電極の作製方法。
【請求項7】
前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)の平均粒径が10〜30nmであることを特徴とする請求項6に記載の酸化物半導体電極の作製方法。
【請求項8】
前記結晶性酸化物半導体粒子(A2)として、前記結晶性酸化物半導体粒子(A1)と同一のものを採用し、かつ、前記結晶性酸化物半導体粒子(B2)として、前記結晶性酸化物半導体粒子(B1)と同一のものを採用することを特徴とする請求項6または7に記載の酸化物半導体電極の作製方法。
【請求項9】
前記中間層の厚みが50〜2000nmであり、前記酸化物半導体層の厚みが5〜30μmであることを特徴とする請求項6〜8に記載の酸化物半導体電極の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−48579(P2007−48579A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231394(P2005−231394)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】