説明

酸化物原料の評価方法、酸化物原料および製造方法

【課題】還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料の還元性を判定して、還元性に優れた酸化物原料を提供する。
【解決手段】還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料において、Fe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在するFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、IFe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)}で定義される指標IFeが0.16以上であれば還元性良と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料に関するもので、特に、酸化物原料の還元性の評価方法、その評価方法に基づいて製造した酸化物原料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄系酸化物を原料として鉄を製造するには、鉄鉱石等の酸化鉄とコークスを高炉に装入し高炉にて還元する方法が主に用いられている。その際、鉄鉱石の多くは焼結鉱として高炉に装入される。焼結鉱は、鉄鉱石や石灰石等を混練し水分を添加して疑似粒子を作製する造粒過程の後、高温で加熱して塊成化する焼成過程を経て製造される。すなわち、まず、鉄鉱石粉や篩下粉、副原料(石灰石、蛇紋岩等)、粉コークス、無煙炭、返鉱等を配合し、擬似粒子を製造する。その後、擬似粒子を焼結機等の設備で通風しながら焼成して塊成化し焼結鉱を製造する。これにより高炉に装入する焼結鉱が製造される。
【0003】
焼成過程では、焼結原料は、燃料の燃焼熱により加熱され、その温度は、最高1400℃近くまで上昇する。通常、1200℃付近で、擬似粒子の付着粉部から初期融液(CaO−Fe2O3)が生成し始め、この後、温度が1200℃前後を超えて上昇すると、温度の上昇に伴い、初期融液が、焼結原料の中に浸透して行き、所要の鉱石成分を溶かし込み、より多くの融液が生成し、最終的には、焼結鉱の結合相を形成する。この結合相の量、拡がり程度、結合態様は、焼結鉱の還元性に大きく影響する。
【0004】
特許文献1には、鉄鉱石粉と副原料とに配合水を添加して混練し、次いで造粒を行った後、この造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法において、配合水が、鉄鉱石粉と反応して550〜900℃の範囲の融点を有する反応物を生成するアクマイト系化合物を含有する焼結鉱の製造方法が報告されている。
しかし、こうした配合水の調整だけでは、粉状の低品位の鉄鉱石粉を固めることが不十分となり製造上の問題が残る。
【0005】
従来、焼結鉱の還元性を評価する方法として、実際に焼結鉱を還元してみることにより評価する方法が広く用いられてきた。例えば、JIS M 8713で規定されるRI(Reduction Index)では、焼結鉱を還元雰囲気中(CO/N2=30/70vol.%)で900℃に180分間加熱した後に還元の到達率を調べる。
【0006】
しかし、JIS M 8713で規定されるRIは実際のプロセスを模擬した評価法であり、焼結鉱の還元性を決める材料学的特徴を明確にすることはできないという問題があった。
さらに、焼結鉱の原料である鉄鉱石の品質が劣化する等の問題のために、製造される焼結鉱の品質や特徴が近年では多様化しており、製造プロセスの最適化のためには、特定の産出地や品質が安定している場合に有効であった経験的知見の蓄積だけでは不十分である。多様化する材料に適応したプロセス最適化には、原料の材料学的特徴と還元性の関係を踏まえた、原料の活用が重要になる。
【0007】
近年、鉄の製造法として、上記した焼結鉱を作製して高炉で還元する製鉄プロセスばかりでなく、鉄鉱石を焼成する過程を経ない製鉄プロセスが採用されるようになった。これは、塊状の良質な鉄鉱石の産出量が低下し、粉状やAl,Si,Mg,水分等の成分を含んだ低品位の鉄鉱石の産出が増加したことによるものである。そして、このような粉状の低品位の鉄鉱石粉を固めたもの(以降ペレットと呼ぶ)を高炉で還元するプロセスが実施されている。
【0008】
この高炉還元プロセスにおいては、還元に用いられるペレットを構成する酸化物の存在形態が重要でありながら、酸化物の存在形態と材料学的特徴との関係あるいは還元性との関係を明らかにすることができず、ペレット製造の最適化を図る上で大きな問題となっていた。
【0009】
さらに、高炉による鉄鉱石の還元法とは異なる還元反応を利用したプロセスとして、鉄系酸化物を固めたペレットを水素等の還元性ガスを用いて還元する直接還元プロセスが注目されている。水素等の還元性ガスを用いる直接還元プロセスは、比較的短時間で還元プロセスが終了するのが特徴である。直接還元プロセスにおいても、原料となるペレットを構成する酸化物の存在形態が重要でありながら、酸化物の存在形態と材料学的特徴との関係あるいは還元性の関係を明らかにすることができず、ペレットの最適化を図る上で大きな問題となっていた。
【0010】
例えば、特許文献2には、鋼の製造原料を得る方法として、炭素質還元剤と酸化鉄含有物質を含む原料を還元溶融して得られる粒状金属鉄であって、Fe含有量が94質量%以上、C含有量が1.0〜4.5質量%であり、粒径が1〜30mmである粒状金属鉄の発明が記載されている。しかし、炭素質還元剤と酸化鉄含有物質を含む原料成分の良好な存在形態を規定するものではなく、実際の製造の上で問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−328145号公報
【特許文献2】特開2002−339009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、還元プロセスにより鉄を生成するための酸化物原料の評価方法を確立して、還元性に優れた酸化物原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、焼結鉱および鉄系酸化物を固めたペレットを構成する相の構造とその還元特性に関して検討した結果、Fe原子の周りの他の原子の存在比率が重要であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0014】
本発明の酸化物原料の評価方法は、還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料の評価方法であって、前記酸化物原料が、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物からなる酸化物系材料から構成されるものであり、前記酸化物系材料におけるFe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、下記の式(1)で定義される指標IFeにより酸化物原料の還元性を評価することを特徴とする。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
ここで、Σx (NX) は、前記X原子に含まれる元素すべてについて、その原子の存在数NXの和を表す。
また、本発明の酸化物原料の評価方法は、前記指標IFeが0.16以上であれば還元性が良と判定すること特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の還元性に優れた酸化物原料は、還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料であって、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物からなる酸化物系材料から構成されるものであり、
前記酸化物材料におけるFe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、式(1)で定義される指標IFeが、0.16以上であること特徴とする。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
ここで、Σx (NX) は、前記X原子に含まれる元素すべてについて、その原子の存在数NXの和を表す。
【0016】
さらにまた、本発明の酸化物原料の製造方法は、還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料の製造方法であって、該酸化物原料を、焼結および粉末固化プロセスで製造する方法において、酸化物原料の製造に用いる粉状あるいは粒状の原料について、溶液中で篩分けする方法により得られた粒度分布のうち、粒径が18μm以下の微粒子の質量割合が35質量%以下である原料を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の酸化物原料の評価方法により、還元プロセスにより鉄を生成するための酸化物原料として用いる酸化物として好適なものを提供できる。また、本発明により提供される酸化物は、化学組成等の従来の評価法で評価できなかった高い還元性を有する。また、本発明により提供される製造方法は、より環境的負荷を低減して、良質の酸化物原料を提供することができる。
この通り、本発明は、原料の劣質化・多様化、対環境や高効率化に対応した焼結鉱の開発に有効な評価法であり、工業的意義が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】酸化物原料の指標IFeと還元速度の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
直接還元プロセスにおける鉄の還元は、鉄と結合した酸素原子が還元性のガスと反応することによって起こる。そのため、酸素原子と還元性のガスとの反応性が鉄の還元性を決める。すなわち、Fe原子の周りにCaやOが存在すると、還元反応の進行が遅くなると考えられる。Fe2O3,CaFe2O4,Ca2Fe9O13を含むCa−Fe−O系酸化物を例として説明するが、本発明はこれらの相だけに限定されるものではなく、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mgのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物から構成される酸化物系材料に適用できる。
【0020】
Fe2O3,CaFe2O4,Ca2Fe9O13各相の結晶構造の特徴は、FeおよびCaの周りにOが配位したユニットが配列した構造となっており、各相の構造の違いは、ユニットの配列の仕方にある。すなわち、あるFe原子について、Fe原子からの距離とともに、存在する原子の種類が大きく異なるのである。例えば、標準試料であるCaFe2O4については、その結晶構造が報告されている(Acta Crystallographica,(1957),Vol.10,p.332−337)ので、その報告を元にFe原子について、第一〜第四近接相当の原子のFe原子からの距離を計算した結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、CaFe2O4中のFe原子の状態は、第一近接相当の距離d=0.192〜0.193nmに存在するのはすべてO原子であり、第二近接相当の距離d=0.312〜0.378nmに存在するのはCa原子とFe原子でありそれらの原子が混在していることが判る。
【0023】
鉄の還元は、鉄と結合した第一近接相当の酸素原子が、還元性のガスと反応することによって起こる。そのため、第一近接相当の酸素原子と還元性のガスとの反応性が鉄の還元性を決める。
第一近接相当の酸素原子と還元性のガスとの反応性を決めるものは、第一近接相当の酸素原子の周りの環境であり、具体的には、第二近接相当の原子の存在である。そして、第二近接相当の距離に存在するCa原子とFe原子の比率が、鉄の還元性に大きく影響する。
【0024】
Ca原子とFe原子の比率は、Fe及びO、Caを含有する酸化物の構造に大きく依存するので、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mgのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物についても、その還元性は、酸素原子の周りの環境構造、即ち、第一近接、第二近接、第三近接、相当の位置に存在する原子の種類と数に依存すると、発明者は考えるに至った。第四近接以遠の原子については、距離が離れており、原子構造の相関が低く、影響は小さくなると考えられる。
【0025】
Fe2O3,CaFe2O4,Ca2Fe9O13を含む種々の成分系のCa−Fe−O系酸化物を、焼結、ペレットで作製し、その還元速度を評価した。還元速度は、20vol.%H2−80vol.%He気流中で試料を750℃に一定時間加熱し、還元されたFeの比率をX線吸収率から求めた。
【0026】
還元速度を決める構造学的な因子を詳細に検討した結果、Fe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在するFe原子、Ca原子、O原子の存在数をそれぞれNFe、NCa、NO、として、Fe原子の存在数比率=NFe /(NFe+NCa+NO) が、還元速度と良い相関を示すことを見出した。即ち、Fe原子の存在数比率が高い相程良い還元性を示した。
【0027】
以上の知見の下に、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mgのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物から構成される酸化物系材料での検討を行った。その結果達成した本発明は、以下の通りである。
【0028】
本実施形態では、還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料であって、前記原料が、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物からなる酸化物系材料から構成されるものであり、前記酸化物材料におけるFe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、以下の式(1)で定義される、前記酸化物中の結晶学的特徴を評価するための指標IFeが、0.16以上であれば還元性が良と判断されるので、この値以上であればよい。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
ここで、Σx (NX) は、前記X原子に含まれる元素すべてについて、その原子の存在数NXの和を表す。
【0029】
Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物から構成される酸化物系材料では、Fe原子及びX(=Ca,Mg,Si,Al)原子の周りにO(酸素)が配位したユニットが配列した構造となっている。
鉄の還元では、鉄原子と結合した酸素原子が、還元性のガスと反応することによって生じる。そのため、Fe原子の周り酸素原子と還元性のガスとの反応性が、還元性を決める。すなわち、Fe原子の周りのO原子のさらに外側に、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子やO原子が存在すると還元反応の進行が遅くなると考えられる。
したがって、Fe原子の周りに存在するFe原子とFe以外の原子の存在比率が重要である。そのため、上記の式 (1)で定義される指標IFeの範囲を0.16以上に限定した材料を製造することにより、還元性に優れた材料となる。
【0030】
ここで、酸化物材料の指標IFeを定義する範囲を、Fe原子からの距離dを0.067nm超0.46nm未満の範囲に限定する理由を述べる。
結晶中のFe原子の大きさはその価数により異なり、Fe(II)は半径が約0.082nm、Fe(III)は約0.067nmである。よって、Fe原子からの距離dが0.067nm以下の領域には、他の原子が存在できない。そこで、Fe原子からの距離dを0.067nm超とした。
【0031】
また、酸化物の還元反応の進行し易さを決めるのは、Fe原子の周りの第一近接相当の酸素原子、第二近接相当のX(=Ca,Mg,Si,Al)原子、第三近接相当の酸素原子、である。これは、鉄から酸素を引き抜く際に近傍にあるX(=Ca,Mg,Si,Al)原子とその周りにある酸素原子が関与するからである。
Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物では、Fe原子の周りの第三近接相当の酸素が存在するのは、ほとんどの場合、Fe原子からの距離dが0.46nm未満の範囲である。場合によっては、この範囲が0.46nmよりも0.02nm程度増減する場合があるが、その場合には、結晶構造の特徴に応じて、第三近接相当の酸素が存在する範囲を変えれば良い。
【0032】
次に、酸化物材料の指標IFeの範囲を0.16以上に限定する理由を述べる。
Fe原子の周りの酸素原子と還元性のガスとの反応性が還元性を決めるため、Fe原子の周りのO原子のさらに外側に、Fe原子以外のX(=Ca,Mg,Si,Al)原子やO原子が存在すると、即ち、指標IFeの値が小さくなると還元反応の進行が遅くなる。実験の結果、指標IFeの範囲が0.16未満では、単純な酸化物に較べて還元速度が1/2以下に急激に低下することが判明したため、指標IFeの範囲を0.16以上の範囲に限定した。
【0033】
次に、指標IFeの範囲が0.16以上である酸化物原料を製造する方法について述べる。
鉄鉱石粉や石灰石等を原料にして造粒過程、焼成過程を経て製造される焼結鉱の場合、1200℃付近で、擬似粒子の付着粉部から初期融液(CaO−Fe2O3)が生成し始め、この後、さらに温度が上昇すると、温度上昇に伴い、初期融液が、焼結原料の中に浸透して行き、所要の鉱石成分を溶かし込み、より多くの融液を生成し、最終的には、焼結鉱の結合相を形成する。この結合相中の指標IFeを制御することにより、焼結鉱原料全体の指標IFeを制御することができる。
【0034】
すなわち、結鉱原料全体の指標IFeは、核粒子であるFe2O3の指標IFeおよびFe3O4の指標IFeと、上記結合相の指標IFeの平均で求められるので、結合相の割合が大きい場合には、結合相の指標IFeが小さくならないような条件で、焼結反応により作製する。つまり、CaOとFe2O3間の拡散が進行して指標IFeの大きな融液相が生成する反応を適切な範囲内に制御すれば良い。例えば、1200℃超の温度域にある時間を、30秒〜2分程度の範囲内に制御すれば良い。
【0035】
Fe2O3の粒子表面に微細なFe2O3が付着していたり、CaOの粒子が微細である、等の物理的形状の理由から拡散が進行されやすい原料を用いる場合には、1200℃超の温度域にある時間を、通常の場合より5%〜30%程度短縮することが望ましい。
工業的には、製造に用いる酸化物原料は天然で産出されたままの状態に近い鉱石を粉砕したものを用いることが多いので、粒子原料の状態、例えば、粒子表面の凹凸形状等や、石灰石や珪石等に天然に不可避的に含まれる他の酸化物等の割合に応じて最適となる加熱温度や時間が異なるので、実際に用いる原料を粉砕し、配合比率で混合した粉末を用いて加熱条件の事前検討を行うのが望ましい。
【0036】
事前検討の例として、粉末試料を1200℃にて60秒加熱し、試料の指標IFeを評価する。試料の指標IFeが0.16以上であれば、1200℃にて60秒加熱が処理条件として適当である。試料の指標IFeが0.16未満であれば、加熱時間を30秒にして、再度、指標IFeが0.16以上であるか確認する。再び指標IFeが0.16未満であれば、加熱温度を1150℃にして、三度、指標IFeが0.16以上であるか確認する等の方法で、事前検討を行えば良い。
【0037】
さらに指標IFeをより高めた焼結鉱を作製するには、鉄鉱石粉や石灰石等を原料にして造粒する際に、溶液中で篩分けする方法により得られた粒度分布のうち、粒径が18 μm以下の微粒子の質量割合が35質量%以下になるようにすればさらによい。これは、粒径が18 μm以下の粒子は、互いに凝集したり、より大きな核粒子に付着したりする状態になりやすいため、これらの量を35質量%以下にすることにより、プロセス製造時に高温に加熱された際の、Fa原子とCa原子の相互拡散を一定程度抑制されるため、指標IFeが高くなるからである。
【0038】
粉状の低品位の鉄鉱石粉を固めたペレットを酸化物原料とする場合、酸化物原料を構成するFe2O3,Fe3O4,FeOOH等のFe−O−H系酸化物と、それ以外の酸化物、例えば、Si,Al,Mgのひとつ以上を含む酸化物との混合割合を制御する。すなわち、ペレット全体の指標IFeは、Fe2O3,Fe3O4,FeOOH等のFe−O−H系化合物と、それ以外の酸化物の平均で求められるので、Fe−O−H系酸化物以外の酸化物の割合が大きい場合には、その酸化物の指標IFeが大きくならないような混合比で作製する。そのためには、ペレットを作製する原料の各成分の指標IFeを上記した方法で求め、ペレット全体の指標IFeが0.16以上であるように原料の混合範囲を決めれば良い。
【0039】
作製されるペレット強度を上げるためには、例えば800〜1000℃の温度域で1〜100分の時間範囲で、組成に応じて最適となる加熱温度や時間で加熱すれば良い。例えば、本試験と同様の原料配合比率で混合した粉末を、1000℃,100分で加熱する。その試料の指標IFeが0.16以上であれば、この条件で本試験を実施する。指標IFeが0.16未満であれば、加熱時間を75分にして、再度、指標IFeが0.16以上であるか確認する。再び指標IFeが0.16未満であれば、加熱温度を950℃にして、三度、指標IFeが0.16以上であるか確認する。このように、加熱時間、加熱温度を調整して指標IFeが0.16以上となるようにした条件にて、ペレット状の酸化物原料を作製すれば良い。
【0040】
さらに指標IFeをより高めたペレットを作製するには、ペレットを構成するFe−O−H系酸化物と、それ以外の酸化物を混合する際に、溶液中で篩分けする方法により得られた粒度分布のうち、粒径が18μm以下の微粒子の質量割合が、35質量%以下になるようにすればさらによい。ここでいう溶液とは、水もしくは分散剤を添加した水溶液をいう。
酸化物の粒度を測定する際、乾式で行うと、凝集した粒が分別できない問題がある。そのため、還元時の反応性を決める粒度分布を測定するためには、溶液中での篩分けすることが必要となる。
【0041】
このようにして測定された粒径が18μm以下の微粒子の質量割合が、35質量%以下になるようにすればさらによい。粒径が18μm以下の粒子は、互いに凝集したり、より大きな核粒子に付着したりする状態になりやすいため、粒径が18μm以下の粒子の量を35質量%以下にすることにより、還元時に高温に加熱された際の、Fa原子とCa原子の相互拡散を一定程度抑制されるため、指標IFeが高くなるからである。
【0042】
上記の反応の詳細な条件を決めるには、代表的な材料の指標IFeを事前に評価して、製造条件を最適化するのが望ましい。そこで、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物から構成される酸化物系材料の指標IFeを求める代表的な方法を以下に述べる。
【0043】
材料の指標IFeを事前に評価するには、酸化物材料中に含有される各酸化物相の結晶構造の種類と量を決定し、それぞれの酸化物相の指標IFeを比率に応じて足し合わせることにより、材料全体の指標IFeを評価すればよい。
なお、ここでいう「酸化物相の結晶構造を決定する」とは、酸化物相を構成する原子の配列について、最低限、Fe原子とO原子およびCa原子の互いの原子相関に関する情報を求めることを意味する。
ここで、Ca,Si,Mg,AlのうちCaのみを選択するのは、これらの元素の中で、Caが、酸化物中、最も安定な陽イオンを形成する能力が高いからであり、つまり、Fe原子の第二近接相当位置に存在すると、Fe原子の還元性に最も影響を与えるからである。
【0044】
(指標IFeの第1の決定方法)
指標IFeの決定は、具体的な方法として、酸化物材料を構成する複数の酸化物相をX線、電子線、中性子、イオンの散乱等の現象を定量的に解析することにより行う。例として、酸化物材料を構成する複数の酸化物相を構成する複数の相を、X線回折法により測定し、それぞれの相の結晶構造を決定することにより、指標IFeを求める方法を例に挙げて、以下に述べる。
【0045】
X線回折法を用いると、材料中の原子の配列が評価でき、結晶の空間群と単位胞における構成原子の位置とを決定できる(例えば、菊田著「X線回折・散乱技術」(東京大学出版会,1992)の1章を参照)。以下、具体的な方法を述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。酸化物材料から採取した試料について、X線ディフラクトメーターによる粉末回折図形の測定を行う。その結果から、酸化物材料を構成する複数の酸化物相の結晶構造を決定する。
【0046】
酸化物相の結晶構造の決定は、結晶データベースの構造データや過去の報告例を参考にしながら構築した結晶モデルに基づいて回折図形を計算し、実測された回折図形と、結晶モデルに基づく回折図形との差異が小さくなるように結晶モデルを変化させることにより行う。本実施形態では、コンピュータ(情報処理装置)が、パラメータフィッティングにより、酸化物相の結晶構造を決定するようにしている。
すなわち、コンピュータは、経験的にユーザが求めた構造モデルの各パラメータの初期値を入力して記憶しておく。その後、コンピュータに焼結鉱に含有される酸化物相を構成する複数の相のX線回折図形を入力すると、コンピュータは、構造モデルの各パラメータの初期値に基づくX線回折図形を、各パラメータを加減して、入力したX線回折図形にフィッティングさせ、それらのX線図形が一致したときの構造モデルの各パラメータに基づいて、酸化物相の結晶構造を導出する。
【0047】
以上のようにして原料酸化物に含有される酸化物相の結晶構造が決定したら、その結晶構造において、1つのFe原子に着目し、そのFe原子からの距離dが0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、次式(1)によって表されるIFeを指標として算出する。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
【0048】
そして、酸化物相内に存在するすべてのFe原子について指標IFeを求め、平均を取る。複数の酸化物相が存在する場合には、複数の酸化物相の1つひとつの酸化物相について酸化物相に含まれる全てのFe原子について求めた指標IFeの平均を取って各酸化物相の指標IFeとし、各酸化物相の指標IFeに各酸化物相のモル分率を掛けて足し合わせることにより、複数の酸化物相全体の指標IFeとして求めればよい。本実施形態では、コンピュータが、このような演算処理を行うようにしている。
【0049】
(指標IFeの第2の決定方法)
次に、指標IFeを具体的に決定する他の方法として、酸化物原料に含有される酸化物相中のFe原子の周りの動径分布関数を、XAFS法により決定することにより求める方法を以下に述べる。
XAFS(X-ray Absorption Fine-structures:X線吸収微細構造)法は、X線吸収スペクトル法の一つである。X線のエネルギーを増加させながら材料の吸収率を測定すると、X線のエネルギーの増加に対応して材料の吸収率は減少するが、特定のX線のエネルギー(吸収端エネルギー)において、その吸収率が急激に増加する。X線の吸収によって発生した光電子の一部が、複数の原子による散乱と干渉とによって、X線の吸収量に対する構造情報として反映される。つまり、特定原子の吸収端エネルギー近傍のX線の吸収量をモニタすれば、その原子の周りの原子配置(動径分布関数)に関する情報が得られる(例えば、宇田川康夫編「X線吸収微細構造」(学会出版センター,1993)を参照)。
以下、具体的な方法を述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
まず、焼結鉱から採取した試料にFeの吸収端エネルギー近傍のエネルギーのX線を照射し透過させる。透過前後のX線の強度を測定し、その比率から試料によるX線の吸収の程度を測定する。この測定を、X線のエネルギーを変えて行う。得られたX線吸収スペクトル(XAFSスペクトル)について、バックグランドを除去した振動成分(XAFS振動)を求め、その距離に関するフーリエ変換から、Fe原子の周りの動径分布関数を求める。X線のエネルギーは、X線の波長の逆数に比例しており、このXAFS振動をフーリエ変換することにより、Fe原子に近接する原子との相関が求まるのである。本実施形態では、X線吸収スペクトルが入力されると、コンピュータが、このような演算処理を行うようにしている。
【0051】
動径分布関数のそれぞれのピークは、Fe,O,Ca,Mg,Si,Alの存在比率(配位数)に相当するものである。そこで、動径分布関数のなかで、Fe原子からの距離dが0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在するFe原子、O原子、およびX(=Ca,Mg,Si,Al)原子に対応するピークの比率から、この範囲に存在するFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、次式(1)によって定義されるIFeを指標として算出する。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
【0052】
Fe,O,Ca,Mg,Si,Alに対応するピークが一部重なる際には、距離および配位数を仮定した結晶構造モデルにより、対応するピークを計算し、実測と一致したときの結晶構造モデルの距離および配位数を求めればよい。
【0053】
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
【0054】
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
Fe,Ca,Mg,Si,Al,Oが表2の実施例1の試料No.1,2,3,5,6,12,13の化学組成の欄に示す比率になるように、Fe2O3、CaO、MgO、SiO2、Al2O3、の粉末状の市販の試薬を混合し、数%の水分を加え、造粒した。
事前検討に基づく加熱条件の検討の結果、試料No.1,2,12は1200℃で60秒、試料No.3,5,6は1200℃で30秒、試料No.13は1150℃で30秒の条件でそれぞれ加熱することにより酸化物原料を作製した。これらの加熱条件は、粒子状の酸化物原料の状態、例えば、粒子表面の凹凸形状等で異なるので、化学組成で絶対的に決まるものではない。
このように、加熱温度、加熱時間を調整して、加熱することにより酸化物原料を作製した。
【0056】
作製した酸化物原料について還元速度を測定した。還元速度は、作製した酸化物原料を100μm以下に粉砕した試料を、20vol.%H2−80vol.%He気流中で750℃に数分〜数10分間(好ましくは、5〜20分間)加熱した後、試料中に含まれるFeの質量%(=WFe@試料)と、Fe2O3を同条件で加熱した後、Fe2O3に含まれるFeの質量%(=WFe@Fe2O3)をそれぞれ測定し、測定されたこれらの比率:還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3により求める。得られた還元速度を表2の実施例1の欄に示す。
【0057】
また、作製した酸化物原料を粉砕して、X線回折法を用いて結晶構造を求め、指標IFeを決定した。Cu Kα線を線源としてX線ディフラクトメーターにより、2θ=5〜120°(π/36〜2π/3rad)、Δ2θ=0.04°(π/4500rad)、各ステップの保持時間=10秒、の条件で測定を実施した。
【0058】
構成相の結晶構造の決定のためには、結晶データベースの構造データや過去の報告例を参考にしながら構築した結晶モデルに基づいて回折図形を計算し、実測された回折図形と、結晶モデルに基づく回折図形との差異が小さくなるように結晶モデルを変化させることにより実施した。
【0059】
これにより、試料に含有される酸化物相の結晶構造が決定したら、その結晶構造において、Fe原子からの距離dが0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、NFe /{NFe+NO+Σx (NX)}の値を指標IFeとして求めた。得られた指標IFeを表2の実施例1の欄に示す。
【0060】
得られた指標IFeと還元速度の相関を求め図1の実施例1として示す。指標IFeが高ければ還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3の値も高い。そして、指標IFeはいずれも0.16以上であり、還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3は0.67以上である。
【0061】
(実施例2)
Fe,Ca,Mg,Si,Al,Oが表2の実施例2の試料No.7,8,9,11,14,15の化学組成の欄に示す比率になるように、Fe2O3、SiO2、CaO、SiO2、MgO、Al2O3の粉末状の市販の試薬を混合し、数〜10%の水分を加え、必要に応じて界面活性剤を添加して、直径10mm厚さ3mmのペレットを作製した。
事前評価に基づく処理条件の検討の結果、試料No.8,14は1000℃,100分、試料No.7,15は1200℃,30秒、試料No.9,11は950℃,75分で加熱することにより、No.14は加熱処理なしで、酸化物原料を作製した。
作製した酸化物原料(ペレット)の還元速度を実施例1と同様にして測定した。得られた還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3を表2の実施例2の欄に示す。
【0062】
次に、得られたペレットを粉砕して、その結晶構造をX線透過型のXAFS法により決定した。放射光X線を線源として、X線をSi結晶で分光することによりエネルギーを選択したX線を試料に照射し、透過前後のX線の強度をイオンチャンバーで測定し、吸収率の変化からXAFSスペクトルを得た。
得られたXAFSスペクトルについて、バックグランドを除去した振動成分を求め、その距離に関するフーリエ変換から、Fe原子の周りの動径分布関数を求めた。動径分布関数のそれぞれのピークは、Fe,O,Ca,Mg,Si,Alの各原子の存在比率(配位数)に相当するものである。
【0063】
各元素に対応するピークについて、距離および配位数を仮定した結晶構造モデルによりピークを計算し、実測と一致したときの結晶構造モデルの距離および配位数を採用した。そして、動径分布関数のなかで、Fe原子からの距離rが0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在するFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、同様に指標IFeを求めた。得られた指標IFeを表2の実施例2の欄に示す。
【0064】
得られた指標IFeと還元速度の相関を求め図1の実施例2として示す。指標IFeはが高ければ還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3も高い。そして、指標IFeはいずれも0.16以上であり、還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3は0.75以上である。
【0065】
(比較例1)
Fe,Ca,Mg,Si,Al,Oが表2の比較例1の試料No.4の化学組成の欄に示す比率になるように、Fe2O3、SiO2、CaO、SiO2、MgO、Al2O3の粉末状の試薬試料を混合し、数%の水分を加え、造粒した。1400℃で5分加熱して酸化物原料を作製した。実施例1と同様の方法で指標IFeを求めた。指標IFeは0.16未満であった。得られた指標IFeを表2の比較例1の欄に示す。また、実施例1と同様に還元速度を測定した。得られた還元速度を表2の比較例2の欄に示す。得られた指標IFeと還元速度の相関を求め図1の比較例として示す。指標IFeは0.136であり、還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3は0.40である。
【0066】
(比較例2)
Fe,Ca,Mg,Si,Al,Oが表2の比較例2の試料No.10の化学組成の欄に示す比率になるように、Fe2O3、SiO2、CaO、SiO2、MgO、Al2O3の粉末状の試薬試料を混合し、数〜10%の水分を加え、必要に応じて界面活性剤を添加して、直径10mm厚さ3mmのペレットを作製した。1400℃で5分加熱して酸化物原料を作製した。実施例2と同様の方法で指標IFeを求めた。指標IFeは0.16未満であった。得られた指標IFeを表2の比較例2の欄に示す。また、実施例2と同様に還元速度を測定した。得られた還元速度を表2の比較例2の欄に示す。得られた指標IFeと還元速度の相関を求め図1の比較例として示す。指標IFeは0.110であり、還元速度Rreduction = WFe@試料/WFe@Fe2O3は0.35である。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例および比較例の結果から、酸化物組成中のCaの比率が多いものは、製造時の熱処理条件を、比較的、低温・短時間の条件で行い、酸化物組成中のCaの比率が多いものは、製造時の熱処理条件を、比較的、高温・長時間の条件で行うことにより、製造される酸化物の構造が最適化されて、還元性の良い材料が製造できることが分かる。これは、酸化物の還元反応の進行し易さを決めるのは、Fe原子の周りの第一近接相当の酸素原子が反応するし易さであり、それは、第二近接相当の位置に存在する元素の種類であるという、本発明の考え方が適切であることを示している。
【0069】
以上、実施例および比較例の結果から、本実施例の効果が明らかに示された。即ち、指標IFeと還元速度の相関を調べると明白である。実施例で得られた材料は、高い還元速度を示す。それに対して、比較例で得られた材料は、低い還元速度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料の評価方法であって、
前記酸化物原料が、Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物からなる酸化物系材料から構成されるものであり、
前記酸化物系材料におけるFe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、下記の式(1)で定義される指標IFeにより酸化物原料の還元性を評価することを特徴とする酸化物原料の評価方法。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
ここで、Σx (NX) は、前記X原子に含まれる元素すべてについて、その原子の存在数NXの和を表す。
【請求項2】
前記指標IFeが0.16以上であれば還元性が良と判定すること特徴とする請求項1に記載の酸化物原料の評価方法。
【請求項3】
還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料であって、
Fe及びOを含有し、さらに、Ca,Si,Mg,Alのうち少なくとも1種類以上を含有する酸化物からなる酸化物系材料から構成されるものであり、
前記酸化物材料におけるFe原子からの距離が0.067nm超0.46nm未満の範囲に存在する他のFe原子、O原子、X(=Ca,Mg,Si,Al)原子の存在数をそれぞれNFe、NO、NXとして、式(1)で定義される指標IFeが、0.16以上であること特徴とする還元性に優れた酸化物原料。
Fe = NFe /{NFe+NO+Σx (NX)} ・・・(1)
ここで、Σx (NX) は、前記X原子に含まれる元素すべてについて、その原子の存在数NXの和を表す。
【請求項4】
請求項3に記載の還元プロセスにより鉄を製造するための酸化物原料の製造方法であって、該酸化物原料を、焼結および粉末固化プロセスで製造する方法において、
酸化物原料の製造に用いる粉状あるいは粒状の原料について、溶液中で篩分けする方法により得られた粒度分布のうち、粒径が18μm以下の微粒子の質量割合が35質量%以下である原料を用いることを特徴とする酸化物原料の製造方法。

【図1】
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