説明

酸化還元機能性アミノ酸のタンパク質への部位特異的組み入れ

組成物ならびに酸化還元機能性アミノ酸をタンパク質に組み入れる直交性tRNA、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ、およびtRNA/シンテターゼの直交性の対を含むタンパク質生合成機構の成分を産生させる方法を提供する。これらの直交性の対を使用して酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質を産生させる方法と共に、これらの直交性の対を同定する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年10月14日に出願された米国仮特許出願番号第60/511,532号(その開示内容は、すべての目的のために、その全体が本明細書において参考として援用される)の優先権および利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発による発明に対する権利に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から交付された政府助成金番号GM66494およびエネルギー省(Department of Energy)から交付された助成金DE−FG03−00ER45812によって行われた。政府は、本発明に対し一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は翻訳生化学の分野に属する。本発明は、酸化還元機能性アミノ酸をタンパク質に組み入れる直交性tRNA、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ、およびそれらの対を作製および使用するための組成物ならびに方法に関する。本発明はまた、そのような対および関連する組成物を使用して、細胞においてタンパク質を産生させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
20種の一般に遺伝子からコードされるアミノ酸のうち、システインのみが容易な酸化還元化学を経験し、その結果、広範な酵素触媒による酸化および還元反応に参加することができる(サードハー(Surdhar)およびアームストロング(Armstrong)(1987)J.Phys.Chem.、91:6532−6537;リヒト(Licht)ら(1996)Science271:477−481)。従って、ほとんどの生物学的酸化還元プロセスは、フラビン、ニコチンアミドおよび金属イオンなどの補因子を必要とする。まれに、チロシンの翻訳後修飾から誘導されるキノンおよびトリプトファン側鎖は、酸化還元補因子として使用される(スタッブ(Stubbe)およびファン・デル・ドンク(Van der Donk)(1998)Chem.Rev.、98:705−762)。例えば、ウシ血漿中銅アミンオキシダーゼは、第一級アミンおよび分子状酸素のそれぞれアルデヒドおよび過酸化水素への変換において、3,4,6−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン(TOPA)を使用する(ジェーンズ(Janes)ら(1990)Science248:981−987)。
【0005】
これらのアミノ酸誘導性酸化還元触媒は、ラジカル仲介性および酵素的反応の両方によって作製される(ロジャーズ(Rodgers)およびディーン(Dean)(2000)Int.J.Biochem.Cell Biol.、32:945−955)。
【0006】
明らかに、さらなる酸化還元機能性アミノ酸を、複雑な翻訳後機構よって作製するのではなく、遺伝子からコードする能力は、タンパク質における電子移動プロセスを研究しかつ操作する能力を顕著に増強する。本発明は、これらおよび他の必要性を満たし、ならびに以下の開示内容の再検討において明らかとなろう。
【非特許文献1】サードハー(Surdhar)およびアームストロング(Armstrong)(1987)J.Phys.Chem.、91:6532−6537
【非特許文献2】リヒト(Licht)ら(1996)Science271:477−481
【非特許文献3】スタッブ(Stubbe)およびファン・デル・ドンク(Van der Donk)(1998)Chem.Rev.、98:705−762
【非特許文献4】ジェーンズ(Janes)ら(1990)Science248:981−987
【非特許文献5】ロジャーズ(Rodgers)およびディーン(Dean)(2000)Int.J.Biochem.Cell Biol.、32:945−955
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セレクターコドン、例えば、終止コドン、ナンセンスコドン、4もしくはそれ以上の塩基のコドンなどに例えば、インビボで応答して、酸化還元機能性アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖に組み入れるための直交性成分を産生させる組成物および方法を提供する。例えば、本発明は、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)およびその対を提供する。これらの対は、酸化還元機能性アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖に組み入れるために使用することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含むことができ、ここで、O−RSは酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。所定の実施形態では、O−RSは配列番号1、またはその保存的変形を含んでなるアミノ酸配列を含んでなる。本発明の所定の実施形態では、O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。
【0009】
O−RSを含む組成物は、場合により、直交性tRNA(O−tRNA)をさらに含むことができ、ここで、O−tRNAはセレクターコドンを認識する。典型的に、本発明のO−tRNAは、同種のシンテターゼの存在下、セレクターコドンに対応し、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該配列によってコードされるO−tRNAと比較して、少なくとも約、例えば、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上の抑制効率を含む。1つの実施形態では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、O−RSを欠くO−tRNAの抑制効率より例えば、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍もしくはそれ以上高い。1つの態様では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)から誘導される直交性チロシルtRNAシンテターゼ対の抑制効率の少なくとも45%である。
【0010】
O−tRNAを含む組成物は、場合により細胞(例えば、大腸菌(E.coli)細胞などのような非真核細胞、もしくは真核細胞)、および/または翻訳系を含むことができる。
【0011】
翻訳系を含んでなる細胞(例えば、非真核細胞、または真核細胞)もまた本発明によって提供され、ここで、翻訳系は、直交性tRNA(O−tRNA);直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS);および酸化還元機能性アミノ酸を含む。典型的に、O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。O−tRNAは第1のセレクターコドンを認識し、O−RSは、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。1つの実施形態では、O−tRNAは、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ポリヌクレオチド配列もしくは相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。1つの実施形態では、O−RSは配列番号1、またはその保存的変形のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含んでなる。
【0012】
本発明の細胞は、場合により、さらなる異なるO−tRNA/O−RS対および第2の非天然アミノ酸をさらに含んでなることができ、例えば、ここで、このO−tRNAは第2のセレクターコドンを認識し、このO−RSは第2の非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。場合により、本発明の細胞は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を含み、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、酸化還元機能性アミノ酸、および目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を含む大腸菌(E.coli)細胞を含み、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。本発明の所定の実施形態では、O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。
【0014】
本発明の所定の実施形態では、本発明のO−tRNAは、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ポリヌクレオチド配列もしくは相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。本発明の所定の実施形態では、O−RSは配列番号1に記載のアミノ酸配列、またはその保存的変形を含んでなる。1つの実施形態では、O−RSまたはその一部は、配列番号1に記載のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0015】
本発明のO−tRNAおよび/またはO−RSは、様々な生物体(例えば、真核および/または非真核生物体)のいずれかから誘導することができる。
【0016】
ポリヌクレオチドもまた、本発明の特徴である。本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に記載のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含んでなる人工(例えば、人為的、および天然に存在しない)ポリヌクレオチドを含み、および/または上記のポリヌクレオチド配列に相補的であるかもしくは該配列をコードする。本発明のポリヌクレオチドはまた、高度にストリンジェントな条件下で、核酸の実質的に全体の長さにわたって、上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸を含む。本発明のポリヌクレオチドはまた、天然に存在するtRNAのポリヌクレオチドに、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一であるポリヌクレオチドを含む(但し、本発明のポリヌクレオチドは天然に存在するtRNA以外である)。上記のいずれかに、例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一である人工ポリヌクレオチドおよび/または上記のいずれかの保存的変形を含んでなるポリヌクレオチドもまた、本発明のポリヌクレオチドに含まれる。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターもまた、本発明の特徴である。例えば、本発明のベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、発現ベクター、および/または類似物を含むことができる。本発明のベクターを含んでなる細胞もまた、本発明の特徴である。
【0018】
O−tRNA/O−RS対の成分を産生する方法もまた、本発明の特徴である。これらの方法によって産生される成分もまた、本発明の特徴である。例えば、細胞に対して直交性である少なくとも1つのtRNA(O−tRNA)を産生させる方法は、変異tRNAのライブラリーを作製すること;変異tRNAのライブラリーの各メンバーのアンチコドンループを変異して、セレクターコドンの認識を可能にし、それによって、潜在的O−tRNAのライブラリーを提供し、第1の種の細胞の第1の集団をネガティブ選択に供することを含み、ここで、細胞は、潜在的O−tRNAのライブラリーのメンバーを含んでなる。ネガティブ選択は、細胞に対して内因性であるアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される潜在的O−tRNAのライブラリーのメンバーを含んでなる細胞を排除する。これは、第1の種の細胞に直交性であるtRNAのプールを提供し、それによって、少なくとも1つのO−tRNAを提供する。本発明の方法によって産生されるO−tRNAもまた提供される。
【0019】
所定の実施形態では、方法は、第1の種の細胞の第2の集団をポジティブ選択に供することをさらに含んでなり、ここで、細胞は、第1の種の細胞、同種のアミノアシルtRNAシンテターゼ、およびポジティブ選択マーカーに直交性であるtRNAのプールのメンバーを含んである。ポジティブ選択を使用して、同種のアミノアシルtRNAシンテターゼによってアミノアシル化され、ポジティブ選択マーカーの存在下で所望される応答を示し、それによって、O−tRNAを提供するtRNAのプールのメンバーを含んでなる細胞について、細胞が選択またはスクリーニングされる。所定の実施形態では、細胞の第2の集団は、ネガティブ選択によって排除されなかった細胞を含んでなる。
【0020】
O−tRNAと共に使用するための酸化還元機能性アミノ酸に対する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを同定するための方法もまた提供される。例えば、方法は、第1の種の細胞の集団を選択に供することであって、ここで、細胞はそれぞれ:1)複数のアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)のメンバー、(例えば、複数のRSは、変異RS、第1の種以外の種から誘導されるRSまたは変異RSおよび第1の種以外の種から誘導されるRSの両方を含むことができる);2)直交性tRNA(O−tRNA)(例えば、1つもしくはそれ以上の種由来);ならびに3)ポジティブ選択マーカーをコードし、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチド、を含んでなる。
【0021】
細胞(例えば、宿主細胞)は、複数のRSのメンバーを欠くかまたは減少した量の該メンバーを有する細胞と比較して、抑制効率の増強を示す細胞について選択またはスクリーニングされる。これらの選択された/スクリーニングされた細胞は、O−tRNAをアミノアシル化する活性なRSを含んでなる。方法によって同定される直交性アミノアシルtRNAシンテターゼもまた本発明の特徴である。
【0022】
細胞(例えば、大腸菌(E.coli)細胞などのような非真核細胞、または真核細胞)において、指定された位置に酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質を産生させる方法もまた、本発明の特徴である。例えば、方法は、適切な培地において、細胞を増殖させることを含み、ここで、細胞は、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなり、タンパク質をコードする核酸を含んでなり、酸化還元機能性アミノ酸を提供し、少なくとも1つのセレクターコドンにより核酸の翻訳中にタンパク質の指定された位置に酸化還元機能性アミノ酸を組み入れ、それによって、タンパク質を産生させる。細胞は:細胞において機能し、セレクターコドンを認識する直交性tRNA(O−tRNA);および酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)をさらに含んでなる。本方法によって産生されるタンパク質もまた本発明の特徴である。
【0023】
本発明はまた、タンパク質を含む組成物を提供し、ここで、タンパク質は、酸化還元機能性アミノ酸(例えば、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(phenyalanine)(DHP)、3,4,5−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、3−ニトロ−チロシン、4−ニトロ−フェニルアラニン、3−チオール−チロシン、および/または類似物)を含んでなる。所定の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質、診断用タンパク質、産業用酵素、またはその部分のアミノ酸配列に少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含んでなる。場合により、組成物は、薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる。
【0024】
定義
本発明について詳細に説明する前に、本発明は特定の生物学的システムに限定されず、もちろん変動することができることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、所定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないこともまた理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他を指令しない限り、複数形にも言及する。従って、例えば、「細胞」に対する言及は、2つもしくはそれ以上の細胞の組み合わせを含み;「細菌」に対する言及は、細菌の混合物を含む、などである。
【0025】
本明細書の本箇所および以降において規定されない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、本明細書に関する当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
直交性:本明細書において使用する用語「直交性」は、細胞もしくは翻訳系に内因性であるかまたは細胞の内因性成分と共に機能し得ない対応する成分と比較して減少した効率で細胞の内因性成分と共に機能する分子(例えば、直交性tRNA(O−tRNA)および/または直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS))に関する。tRNAおよびアミノアシルtRNAシンテターゼに関して、直交性は、内因性tRNAシンテターゼと共に機能する内因性tRNAと比較した内因性tRNAシンテターゼと共に機能する直交性tRNA、または内因性tRNAと共に機能する内因性tRNAシンテターゼと比較した内因性tRNAと共に機能する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼの不可能性あるいは減少した効率、例えば、20%未満の効率、10%未満の効率、5%未満の効率、もしくは1%未満の効率を指す。直交性分子は、細胞における機能的に正常な内因性の相補的分子を欠く。例えば、細胞における直交性tRNAは、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較する場合、減少したまたは正にゼロの効率で、細胞の任意の内因性RSによってアミノアシル化される。別の例では、直交性RSは、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較して、減少したまたは正にゼロの効率で目的の細胞において任意の内因性のtRNAをアミノアシル化する。第2の直交性分子は、第1の直交性分子と共に機能する細胞に導入することができる。例えば、直交性tRNA/RSの対は、コントロール、例えば、対応するtRNA/RS内因性対、または活性な直交性の対(例えば、チロシル直交性tRNA/RS対)の効率と比較して、所定の効率(例えば、45%の効率、50%の効率、60%の効率、70%の効率、75%の効率、80%の効率、90%の効率、95%の効率、または99%もしくはそれ以上の効率)で細胞において共に機能する導入された相補的成分を含む。
【0027】
直交性チロシルtRNA:本明細書において使用されるように、直交性チロシルtRNA(チロシル−O−tRNA)は、目的の翻訳系に対して直交性であるtRNAであって、ここで、tRNAは:(1)天然に存在するチロシルtRNAに同一または実質的に同一であるか、(2)天然もしくは人工的変異によって天然に存在するチロシルtRNAから誘導されるか、(3)(1)または(2)の野生型もしくは変異型チロシルtRNA配列を考慮する任意のプロセスによって誘導されるか、(4)野生型もしくは変異型チロシルtRNAに相同であるか;(5)表1におけるチロシルtRNAシンテターゼの置換物として称される任意の例示的tRNAに相同であるか、あるいは、(6)表1におけるチロシルtRNAシンテターゼの置換物として称される任意の例示的tRNAの保存的変異体である。チロシル−tRNAは、アミノ酸でチャージされているか、またはチャージされていない状態で存在することができる。「チロシル−O−tRNA」は、場合により、リジン以外のアミノ酸、例えば、アミノ酸ホモグルタミンで同種のシンテターゼによってチャージ(アミノアシル化)されることもまた、理解されるべきである。実際、本発明のチロシル−O−tRNAは、セレクターコドンに応答して、翻訳中に、任意のアミノ酸(天然であるかまたは人工的であるかにかかわらず)を成長中のポリペプチドに本質的に挿入するために有利に使用されることが理解されよう。
【0028】
直交性チロシルアミノ酸シンテターゼ:本明細書において使用されるように、直交性チロシルアミノ酸シンテターゼ(チロシル−O−RS)は、目的の翻訳系においてアミノ酸でチロシル−O−tRNAを優先的にアミノアシル化する酵素である。チロシル−O−RSがチロシル−O−tRNA上に充填するアミノ酸は、天然化または人工的であるかにかかわらず任意のアミノ酸であることができ、本明細書において限定されない。シンテターゼは、場合により、天然に存在するチロシルアミノ酸シンテターゼと同じもしくは相同であるか、または表1のチロシル−O−RSと称されるシンテターゼと同じもしくは相同である。例えば、チロシル−O−RSは、表1のチロシル−O−RSの保存的変異体であり得、および/または表1のチロシル−O−RSに対する配列において少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%もしくはそれ以上同一であり得る。
【0029】
同種の:用語「同種の」は、共に機能する成分、例えば、直交性tRNAおよび直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを指す。成分はまた、相補的であることが言及され得る。
【0030】
優先的にアミノアシル化する:用語「優先的にアミノアシル化する」は、O−RSが、天然に存在するtRNAまたはO−tRNAを作製するために使用される出発物質をアミノアシル化するO−RSと比較して、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する効率、例えば、70%の効率、75%の効率、85%の効率、90%の効率、95%の効率、または99%もしくはそれ以上の効率を指す。
【0031】
セレクターコドン:用語「セレクターコドン」は、翻訳プロセスにおいてO−tRNAによって認識され、内因性tRNAによって認識されないコドンを指す。O−tRNAアンチコドンループは、mRNA上のセレクターコドンを認識し、そのアミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸のような非天然アミノ酸を、ポリペプチドにおけるこの部位で組み入れる。セレクターコドンは、例えば、終止コドン、例えば、アンバー、オーカー、およびオパールコドンのようなナンセンスコドン;4もしくはそれ以上の塩基のコドン;レアコドン;天然もしくは非天然の塩基対および/または類似物から誘導されるコドンを含むことができる。
【0032】
サプレッサーtRNA:サプレッサーtRNAは、例えば、セレクターコドンに応答してポリペプチド鎖にアミノ酸を組み入れる機構を提供することによって、所定の翻訳系におけるメッセンジャーRNA(mRNA)の読み取りを変更するtRNAである。例えば、サプレッサーtRNAは、例えば、終止コドン、4塩基コドン、レアコドンなどを介して読み取ることができる。
【0033】
抑制活性:本明細書において使用する用語「抑制活性」は、一般に、リードスルーがなければ翻訳の終結または翻訳ミス(例えば、フレームシフト)を生じるであろうコドン(例えば、アンバーコドンまたは4もしくはそれ以上の塩基コドンであるセレクターコドン)の翻訳のリードスルーを可能にするtRNA(例えば、サプレッサーtRNA)の能力を指す。サプレッサーtRNAの抑制活性は、第2のサプレッサーtRNAと比較するか、またはコントロールシステム、例えば、O−RSを欠くコントロールシステムと比較して観察される翻訳リードスルー活性の百分率として表現することができる。
【0034】
本発明は、抑制活性を定量することができる多様な手段を提供する。目的のセレクターコドン(例えば、アンバーコドン)に対する特定のO−tRNAおよびORSの抑制パーセントは、目的の翻訳系で発現された試験マーカーをコードする核酸においてセレクターコドンを含む所定の発現される試験マーカー(例えば、LacZ)の活性の百分率を指し、ここで、目的の翻訳系はポジティブコントロールの構築物と比較して、O−RSおよびO−tRNA含み、ここで、ポジティブコントロールはO−tRNA、O−RSおよびセレクターコドンを欠く。従って、例えば、セレクターコドンを欠く活性なポジティブコントロールマーカー構築物が、所定の翻訳系において、問題のマーカーアッセイに関連する単位でXの観察された活性を有する場合、セレクターコドンを含んでなる試験構築物の抑制パーセントは、試験マーカー構築物がO−tRNAおよびO−RSをも含む翻訳系において発現される場合以外で、試験マーカー構築物が、ポジティブコントロールマーカーが発現された条件と本質的に同じ環境条件下で示すXの百分率である。典型的に、試験マーカーを発現する翻訳系はまた、O−RSおよびO−tRNAによって認識されるアミノ酸を含む。場合により、抑制パーセントの測定は、試験マーカーと、O−tRNA、O−RSならびに/あるいはO−tRNAおよび/またはO−RSによって認識される関連のアミノ酸を含まないシステムにおいて、試験マーカーと同じセレクターコドンを含む「バックグランド」または「ネガティブ」コントロールマーカー構築物との比較によって、精錬され得る。このネガティブコントロールは、目的の翻訳系におけるマーカー由来のバックグランドのシグナル効果を説明するために抑制パーセントの測定を正規化するのに有用である。
【0035】
抑制効率は、当該分野において公知の任意の多くのアッセイによって決定することができる。例えば、β−ガラクトシダーゼレポーターアッセイを使用することができ、例えば、誘導体化lacZプラスミド(ここで、構築物はlacZ核酸配列においてセレクターコドンnを有する)は、本発明のO−tRNAを含んでなるプラスミドと共に、適切な生物体由来の細胞(例えば、直交性成分を使用することができる生物体)に導入される。同種のシンテターゼを(発現される場合に同種のシンテターゼをコードするポリペプチドまたはポリヌクレオチドのいずれかとして)導入することができる。細胞を、培地において、所望される密度、例えば、約0.5のOD600まで増殖させ、例えば、BetaFluorTMβ−ガラクトシダーゼアッセイキット(Novagen)を使用して、β−ガラクトシダーゼアッセイを実施する。抑制パーセントは、比較可能なコントロール、例えば、誘導体化lacZ構築物から観察される値に関連するサンプルに対する活性の百分率として算出することができ、ここで、構築物は、セレクターコドン以外の所望される位置で対応するセンスコドンを有する。
【0036】
翻訳系:用語「翻訳系」は、アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖(タンパク質)に組み入れる成分を指す。翻訳系の成分は、例えば、リボソーム、tRNA、シンテターゼ、mRNAなどを含むことができる。本発明のO−tRNAおよび/またはO−RSは、例えば、非真核細胞、例えば、(大腸菌(E.coli)のような)細菌、あるいは真核細胞、例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、真菌細胞、昆虫細胞、および/または類似物におけるインビトロもしくはインビボでの翻訳系に添加するかあるいは部分であることができる。
【0037】
非天然アミノ酸:本発明において使用する用語「非天然アミノ酸」は、任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、および/あるいは20種の一般的な天然に存在するアミノ酸の1つではないか、またはセレノシステインもしくはピロリシンである酸化還元機能性アミノ酸のようなアミノ酸アナログを指す。
【0038】
から誘導される:本明細書において使用する用語「から誘導される」は、指定された分子もしくは生物体、または指定された分子もしくは生物体由来の情報を使用して単離あるいは作製される成分を指す。
【0039】
ポジティブ選択またはスクリーニングマーカー:本明細書において使用する用語「ポジティブ選択またはスクリーニングマーカー」は、存在する、例えば、発現される、活性化されるなどの場合、形質を伴わない細胞から、形質を含んでなる細胞、例えば、ポジティブ選択マーカーを伴う細胞の同定をもたらすマーカーを指す。
【0040】
ネガティブ選択またはスクリーニングマーカー:本明細書において使用する用語「ネガティブ選択またはスクリーニングマーカー」は、存在する、例えば、発現される、活性化されるなどの場合、(例えば、特性または形質を有する細胞と比較して)選択された特性または形質を含まない細胞の同定を可能にするマーカーを指す。
【0041】
レポーター:本明細書において使用する用語「レポーター」は、目的のシステムの標的成分を同定および/または選択するために使用することができる成分を指す。例えば、レポーターは、タンパク質、例えば、抗生物質耐性または感受性を付与する酵素(例えば、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)など)、蛍光スクリーニングマーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質(例えば、(GFP)、YFP、EGFP、RFPなど)、発光マーカー(例えば、ホタルルシフェラーゼタンパク質)、親和性に基づくスクリーニングマーカー、またはlacZ、β−gal/lacZ(β−ガラクトシダーゼ)、Adh(アルコールデヒドロゲナーゼ)、his3、ura3、leu2、lys2などのようなポジティブもしくはネガティブ選択マーカー遺伝子を含むことができる。
【0042】
真核生物:本明細書において使用する「真核生物」は、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類など)、繊毛虫、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物、藻類など)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物などのような系統発生学的ドメインの真核生物(Eucarya)に属する生物体である。
【0043】
非真核生物:本明細書において使用する用語「非真核生物」は、非真核生物体を指す。例えば、非真核生物体は、真正細菌(Eubacteria)(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)など)の系統発生学的ドメイン、または古細菌(Archaea)(例えば、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)(Mj)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(Mm)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(Mt)、メタノコッカス・マルパリディス(Methanococcus maripaludis)、メタノピルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)、 ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム(Halobacterium)種NRC−1のようなハロバクテリウム(Halobacterium)、アーケグロバス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)(Af)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pf)、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)(Ph)、パイロバクラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、パイロコッカス・アビシイ(Pyrococcus abyssi)、スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)(Ss)、スルフォロバス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)、アエウロピラム・ペルニックス(Aeuropyrum pernix)(Ap)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)など)の系統発生学的ドメインに属することができる。
【0044】
保存的変異体:翻訳成分に関して本明細書において使用する用語「保存的変異体」は、翻訳成分、例えば、保存的変異体が例えば、対照O−tRNAもしくはO−RSと比較して配列において変異を有するO−tRNAもしくはO−RSに類似である塩基成分と同様に機能的に実行する保存的変異体O−tRNAまたは保存的変異体O−RSを指す。例えば、O−RSは、非天然アミノ酸、例えば、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)のような酸化還元機能性アミノ酸で相補的O−tRNAまたは保存的変異体O−tRNAをアミノアシル化するが、O−tRNAおよび保存的変異体O−tRNAは同じ配列を有さない。保存的変異体は、保存的変異体が対応するO−tRNAまたはO−RSに相補的であるかぎり、例えば、配列中に、1つの変形、2つの変形、3つの変形、4つの変形、または5つもしくはそれ以上の変形を有することができる。
【0045】
選択またはスクリーニング因子:本明細書において使用する用語「選択またはスクリーニング因子」は、存在する場合、集団からの所定の成分の選択/スクリーニングを可能にする因子を指す。例えば、選択またはスクリーニング因子は、例えば、栄養物、抗生物質、光の波長、抗体、発現されたポリヌクレオチドなどであることができるが、これらに限定されない。選択因子は、例えば、濃度、強度などによって変動することができる。
【0046】
に応答して:本明細書において使用する用語「に応答して」は、本発明のtRNAがセレクターコドンを認識し、tRNAに結合する酸化還元機能性アミノ酸の成長中のポリペプチド鎖への組み入れを仲介するプロセスを指す。
【0047】
コードする:本明細書において使用する用語「コードする」は、ポリマー性巨大分子または配列ストリングにおける情報を使用して、第1の分子または配列ストリングとは異なる第2の分子または配列ストリングの産生を指令する任意のプロセスを指す。本明細書において使用する用語は広範に使用され、様々なアプリケーションを有することができる。1つの態様では、用語「コードする」は、半保存的DNA複製のプロセスを説明し、ここで、二本鎖DNA分子の一方の鎖は、DNA依存性DNAポリメラーゼによって新たに合成される相補的姉妹分体(sister strand)をコードするテンプレートとして使用される。
【0048】
別の態様では、用語「コードする」は、1つの分子における情報を使用して、第1の分子とは異なる化学的性質を有する第2の分子の産生を指令する任意のプロセスを指す。例えば、DNA分子は、(例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ酵素を組み入れる転写のプロセスによって)RNA分子をコードすることができる。また、RNA分子は、翻訳のプロセスにおけるように、ポリペプチドをコードすることができる。翻訳のプロセスを説明するために使用される場合、用語「コードする」はまた、アミノ酸をコードする3連コドンにまで及ぶ。いくつかの態様において、RNA分子は、例えば、RNA依存性DNAポリメラーゼを組み入れる逆転写のプロセスによって、DNA分子をコードすることができる。別の態様では、DNA分子は、ポリペプチドをコードすることができ、ここで、その場合において使用されるように「コードする」は、転写および翻訳のプロセスの両方を組み入れることが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
インビボで遺伝子暗号に酸化還元機能性アミノ酸のようなさらなる合成アミノ酸を追加するためには、翻訳機構において効率的に機能することができるが、問題の翻訳系に対して「直交性」であるアミノアシルtRNAシンテターゼおよびtRNAの新たな直交性の対が必要であり、これは、それが、翻訳系に対して内因性のシンテターゼおよびtRNAとは独立して機能することを意味する。オーソロガスな対の所望される特徴は、特定の新たなコドン、例えば、任意の内因性tRNAによってデコードされないセレクターコドンのみをデコードまたは認識するtRNA、および特定の酸化還元機能性アミノ酸のみでその同種のtRNAを優先的にアミノアシル化(またはチャージ)するアミノアシルtRNAシンテターゼを含む。O−tRNAはまた、典型的に、内因性シンテターゼによってアミノアシル化されない。例えば、大腸菌(E.coli)では、直交性の対は、内因性tRNA(例えば、大腸菌(E.coli)では40種が存在する)のいずれかと交差反応しないアミノアシルtRNAシンテターゼ、および内因性シンテターゼ(例えば、大腸菌(E.coli)では21種が存在する)のいずれかによってアミノアシル化されない直交性tRNAを含む。
【0050】
本発明は、さらなる直交性tRNA−アミノアシル−tRNAシンテターゼの対、例えば、酸化還元機能性アミノ酸を組み入れるために使用することができるO−tRNA/O−RSの対を同定および産生させるための組成物ならびに方法を提供する。本発明のO−tRNAは、例えば、インビボで、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質への酸化還元機能性アミノ酸の組み入れを仲介することが可能である。O−tRNAのアンチコドンループは、mRNA上のセレクターコドンを認識し、ポリペプチドにおけるこの部位でそのアミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸を組み入れる。本発明の直交性アミノアシルtRNAシンテターゼは、特定の酸化還元機能性アミノ酸のみでそのO−tRNAを優先的にアミノアシル化(またはチャージ)する。
【0051】
例えば、キノンに対して二電子酸化を経験することができる酸化還元機能性アミノ酸3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)は、セレクターコドン、例えば、TAGコドンに応答して、生物体、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(大腸菌(E.coli))のタンパク質に選択的かつ効率的に組み入れられている。図1を参照のこと。DHPは、タンパク質内において電子化学的に酸化され得る。酸化還元機能性アミノ酸を部位特異的にタンパク質に組み入れる能力は、タンパク質における電子移動の研究を容易にすることができ、ならびに新規の特性を伴う酸化還元タンパク質の操作を可能にする。図4を参照のこと。例えば、酸化還元機能性タンパク質の発現は、研究ならびにタンパク質における電子移動経路を変更する能力を容易にし、酵素の触媒機能を変更し、小さな分子および生体分子などでタンパク質を架橋することができる。
【0052】
直交性tRNA/直交性アミノアシルtRNAシンテターゼおよびそれらの対
1つもしくはそれ以上の非天然アミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸を含むタンパク質を作製するのに適切である翻訳系については、国際公開第2002/086075号パンフレット、表題「METHODS AND COMPOSITION FOR THE PRODUCTION OF ORTHOGANOL tRNA−AMINOACYLtRNA SYNTHETASE PAIRS」および国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS」に記載されている。さらに、2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書を参照のこと。これらの出願のうちそれぞれが、本明細書においてその全体が参考として援用される。そのような翻訳系は、一般に、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、および酸化還元機能性アミノ酸を含む細胞(例えば、非真核細胞、または真核細胞)を含んでなり、ここで、O−RSは、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する。本発明の直交性の対は、O−tRNA、例えば、サプレッサーtRNA、フレームシフトtRNAなど、およびO−RSの対を含む。個々の成分もまた、本発明において提供される。
【0053】
O−tRNAは、セレクターコドンを認識し、同種のシンテターゼの存在下、セレクターコドンに対応し、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該配列によってコードされるO−tRNAと比較して、少なくとも約、例えば、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上の抑制効率を含む。O−RSは、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する。細胞は、成分を使用し、例えば、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を介して、酸化還元機能性アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖に組み入れ、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。本発明の所定の実施形態では、大腸菌(E.coli)細胞のような細胞は、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、酸化還元機能性アミノ酸;および目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を含み、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。翻訳系はまた、インビトロ系であり得る。
【0054】
1つの実施形態では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、O−RSを欠くO−tRNAの抑制効率より、約、例えば、5倍、10倍、15倍、20倍、または25倍もしくはそれ以上高い。1つの態様では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)から誘導される直交性チロシルtRNAシンテターゼ対の抑制効率の少なくとも約、例えば、35%、40%、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上である。
【0055】
本発明は、場合により、細胞において、1を超える非天然アミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸および別の非天然アミノ酸の組み入れを可能にする複数のO−tRNA/O−RS対を含む。例えば、細胞は、さらなる異なるO−tRNA/O−RS対および第2の非天然アミノ酸をさらに含むことができ、ここで、このさらなるO−tRNAは第2のセレクターコドンを認識し、このさらなるO−RSは第2の非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。例えば、O−tRNA/O−RSの対(ここで、O−tRNAは、例えば、アンバーセレクターコドンを認識する)を含む細胞は、第2の直交性の対、例えば、ロイシル、リジル、グルタミルなど(ここで、第2のO−tRNAは、異なるセレクターコドン、例えば、オパール、4塩基などを認識する)をさらに含んでなることができる。
【0056】
O−tRNAおよび/またはO−RSは、天然に存在することができるかもしくは例えば、様々な生物体からtRNAのライブラリーおよび/またはRSのライブラリーを作製する天然に存在するtRNAおよび/またはRSの変異によって誘導することができる。例えば、直交性tRNA/アミノアシルtRNAシンテターゼの対を生成するための1つのストラテジーは、例えば、宿主細胞以外の供給源、または複数の供給源由来の(宿主細胞に対して)異種のtRNA/シンテターゼの対を宿主細胞に輸送することに関与する。異種のシンテターゼ候補の特性には、例えば、それが任意の宿主細胞tRNAをチャージしないことが含まれ、異種のtRNA候補の特性には、例えば、それが任意の宿主細胞シンテターゼによってアミノアシル化されないことが含まれる。さらに、異種のtRNAは、すべての宿主細胞シンテターゼに対して直交性である。
【0057】
直交性の対を作製するための第2のストラテジーは、O−tRNAまたはO−RSをスクリーニングおよび/または選択する変異ライブラリーを作製することに関与する。これらのストラテジーもまた組み合わせることができる。
【0058】
直交性tRNA(O−tRNA)
直交性tRNA(O−tRNA)は、例えば、インビボまたはインビトロで、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質への酸化還元機能性アミノ酸の組み入れを仲介する。所定の実施形態では、本発明のO−tRNAは、同種のシンテターゼの存在下、セレクターコドンに対応し、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該配列によってコードされるO−tRNAと比較して、少なくとも約、例えば、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上の抑制効率を含む。
【0059】
抑制効率は、当該分野において公知の任意の多くのアッセイによって決定することができる。例えば、β−ガラクトシダーゼレポーターアッセイを使用することができ、例えば、誘導体化lacZプラスミド(ここで、構築物はlacZ核酸配列においてセレクターコドンnを有する)は、本発明のO−tRNAを含んでなるプラスミドと共に、適切な生物体由来の細胞(例えば、直交性成分を使用することができる生物体)に導入される。同種のシンテターゼを(発現される場合に同種のシンテターゼをコードするポリペプチドまたはポリヌクレオチドのいずれかとして)導入することができる。細胞を、培地において、所望される密度、例えば、約0.5のOD600まで増殖させ、例えば、BetaFluorTMβ−ガラクトシダーゼアッセイキット(Novagen)を使用して、β−ガラクトシダーゼアッセイを実施する。抑制パーセントは、比較可能なコントロール、例えば、誘導体化lacZ構築物から観察される値に関連するサンプルに対する活性の百分率として算出することができ、ここで、構築物は、セレクターコドン以外の所望される位置で対応するセンスコドンを有する。
【0060】
本発明のO−tRNAの例には配列番号2がある。本明細書では、例示的なO−tRNAおよびO−RS分子の配列については表1ならびに実施例2を参照のこと。また、本明細書における表題「核酸およびポリペプチド配列ならびに変異体(Nucleic Acid and Polypeptide Sequence and Variants)」のセクションも参照のこと。tRNA分子では、チミン(T)はウラシル(U)に置き換えられる。塩基に対するさらなる修飾も存在することができる。本発明はまた、O−tRNAの保存的変形も含む。例えば、O−tRNAの保存的変形は、配列番号2のO−tRNAと同様に機能し、tRNAのL型構造を維持するが、同じ配列を有さない(そして野生型tRNA分子以外である)該分子を含む。また、本明細書における表題「核酸およびポリペプチド配列ならびに変異体」のセクションも参照のこと。
【0061】
O−tRNAを含んでなる組成物は、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)をさらに含むことができ、ここで、O−RSは、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。所定の実施形態では、O−tRNAを含む組成物は、翻訳系(例えば、インビトロまたはインビボ)をさらに含むことができる。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸であって、ここで、ポリヌクレオチドがO−tRNAによって認識されるセレクターコドン、またはこれらの1つもしくはそれ以上の組み合わせを含んでなる上記核酸もまた、細胞に存在することができる。また、本明細書における表題「直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(Orthogonal aminoacyl−tRNA synthetases)」のセクションも参照のこと。
【0062】
直交性tRNA(O−tRNA)を産生させる方法もまた、本発明の特徴である。方法によって産生されるO−tRNAもまた本発明の特徴である。本発明の所定の実施形態では、O−tRNAは変異のライブラリーを作製することによって産生させることができる。変異tRNAのライブラリーは、当該分野において公知の多様な変異技術を使用して作製することができる。例えば、変異tRNAは、部位特異的変異、ランダム点変異、相同組換え、DNAシャフリングもしくは他の再帰的変異方法(recursive mutagenesis methods)、キメラの構築またはそれらの任意の組み合わせによって作製することができる。
【0063】
さらなる変異を、特定の位置、例えば、非保存的位置、または保存的位置、無作為化された位置、あるいはtRNAの所望されるループもしくは領域、例えば、アンチコドンループ、アクセプターステム、Dアームもしくはループ、可変ループ、TψCアームもしくはループ、tRNA分子の他の領域、またはその組み合わせにおける両方の組み合わせにおいて、導入することができる。典型的に、tRNAにおける変異は、セレクターコドンの認識を可能にするために、変異tRNAのライブラリーの各メンバーのアンチコドンループを変異することを含む。方法は、O−tRNAの末端にさらなる配列(CCA)を付加することをさらに含むことができる。典型的に、O−tRNAは、出発物質、例えば、複数のtRNA配列と比較して、所望される生物体に対する直交性の改善を有する一方、所望されるRSに対するその親和性を保存する。
【0064】
方法は、場合により、tRNAおよび/またはアミノアシルtRNAシンテターゼの配列の相同性を解析して、O−tRNA、O−RSおよび/または特定の生物体に対して直交性であるようであるその対の潜在的候補を決定することを含む。当該分野において公知であり、本明細書において説明するコンピュータプログラムは、解析、例えば、BLASTのために使用することができ、パイルアップ(pileup)プログラムを使用することができる。1つの例では、原核生物である大腸菌(E.coli)において使用するための潜在的な直交性翻訳コンポーネントを選択するために、原核生物体に対して異例の相同性を示さないシンテターゼおよび/またはtRNAが選択される。
【0065】
典型的にO−tRNAは、例えば、ネガティブ選択、第1の種の細胞の集団に供することによって得られ、ここで、細胞は、複数の潜在的なO−tRNAのメンバーを含んでなる。ネガティブ選択は、細胞に対して内因性であるアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される潜在的O−tRNAのライブラリーのメンバーを含んでなる細胞を排除する。これは、第1の種の細胞に対して直交性であるtRNAのプールを提供する。
【0066】
所定の実施形態では、ネガティブ選択において、セレクターコドンは、ネガティブ選択マーカー、例えば、抗生物質耐性を付与する酵素、例えば、β−ラクタマーゼ、検出可能な産物を付与する酵素、例えば、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、例えば、(例えば、機能的バルナーゼをなお産生する)バルナーゼのような毒性産物などをコードするポリヌクレオチドに対し、非必須位置において導入される。スクリーニング/選択は、場合により、選択因子(例えば、アンピシリンのような抗生物質)の存在下で細胞の集団を増殖させることによって行われる。1つの実施形態では、選択因子の濃度は変動される。
【0067】
例えば、サプレッサーtRNAの活性を測定するために、ネガティブ選択マーカー、例えば、β−ラクタマーゼの遺伝子(bla)をコードするポリヌクレオチドに導入されたセレクターコドン、例えば、ナンセンスまたはフレームシフト変異のインビボ抑制に基づく選択システムが使用される。例えば、所定の位置でセレクターコドンを伴うポリヌクレオチド変異体、例えば、bla変異体が構築される。細胞、例えば、細菌をこれらのポリヌクレオチドで形質転換する。内因性大腸菌(E.coli)シンテターゼによって効率的にチャージされ得ない直交性tRNAの場合、抗生物質耐性、例えば、アンピシリン耐性は、プラスミドを伴わずに形質転換された細菌の耐性にほぼ同じかまたはそれ未満であるべきである。tRNAが直交性でない場合、またはtRNAをチャージすることが可能な異種シンテターゼがシステムにおいて同時発現される場合、より高いレベルの抗生物質(例えば、アンピシリン)耐性が観察される。プラスミドを伴わずに形質転換された細胞に対してほぼ等価な抗生物質濃度を伴うLB寒天プレート上で増殖し得ない細胞、例えば、細菌を選択する。
【0068】
毒性産物(例えば、リボヌクレアーゼまたはバルナーゼ)の場合、複数の潜在的tRNAのメンバーが内因性宿主、例えば、大腸菌(Escherichia coli)のシンテターゼによってアミノアシル化される(即ち、それが宿主、例えば、大腸菌(Escherichia coli)のシンテターゼに対して直交性でない)場合、セレクターコドンが抑制され、産生される毒性ポリヌクレオチド産物は細胞死をもたらす。直交性tRNAまたは非機能的tRNAを所有する細胞は生き残る。
【0069】
1つの実施形態では、所望される生物体に対して直交性であるtRNAのプールは、次いで、セレクターコドンが例えば、β−ラクタマーゼ遺伝子のような薬物耐性遺伝子によってコードされるポジティブ選択マーカーにおいて置き換えられるポジティブ選択に供される。ポジティブ選択は、細胞に対して直交性であるtRNAのプールのメンバーをコードするかまたは該メンバーを含んでなるポリヌクレオチド、ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、および同種のRSをコードするポリヌクレオチドを含んでなる細胞に対して行われる。所定の実施形態では、細胞の第2の集団は、ネガティブ選択によって排除されなかった細胞を含んでなる。ポリヌクレオチドは細胞において発現され、細胞は、選択因子、例えば、アンピシリンの存在下で増殖される。次いで、tRNAを、同時発現される同種のシンテターゼによってアミノアシル化され、このセレクターコドンに応答してアミノ酸を挿入するそれらの能力について選択する。典型的に、これらの細胞は、非機能的tRNA、または目的のシンテターゼによって効率的には認識され得ないtRNAを所有する細胞と比較して、抑制効率の増強を示す。非機能的tRNAまたは目的のシンテターゼによって効率的には認識されないtRNAを所有する細胞は、抗生物質に対して感受性である。従って、(i)内因性宿主(例えば、大腸菌(Escherichia coli))のシンテターゼの基質ではない;(ii)目的のシンテターゼによってアミノアシル化することができる;および(iii)翻訳において機能的であるtRNAは、両方の選択に生存する。
【0070】
上記の方法における選択、例えば、ポジティブ選択、ネガティブ選択またはポジティブおよびネガティブ選択の両方のストリンジェンシーは、場合により、選択ストリンジェンシーを変動することを含む。例えば、バルナーゼは極端に毒性なタンパク質であるため、ネガティブ選択のストリンジェンシーは、異なる数のセレクターコドンをバルナーゼ遺伝子に導入することによって、および/または誘導性プロモーターを使用することによって、制御することができる。別の例では、選択またはスクリーニング因子の濃度は変動する(例えば、アンピシリン濃度)。本発明の1つの態様では、所望される活性は早期のラウンド中に低くあり得るため、ストリンジェンシーは変動される。従って、早期のラウンドではより低いストリンジェント選択基準が適用され、選択のより以降のラウンドでは、より高いストリンジェント基準が適用される。所定の実施形態では、ネガティブ選択、ポジティブ選択またはネガティブおよびポジティブ選択の両方は、複数回反復することができる。複数の異なるネガティブ選択マーカー、ポジティブ選択マーカーまたはネガティブおよびポジティブ選択マーカーの両方を使用することができる。所定の実施形態では、ポジティブおよびネガティブ選択マーカーは同じであり得る。
【0071】
選択/スクリーニングの他のタイプは、直交性翻訳コンポーネント、例えば、酸化還元機能性アミノ酸を利用したO−tRNA、O−RS、およびO−tRNA/O−RSの対を産生させるために、本発明において使用することができる。例えば、ネガティブ選択マーカー、ポジティブ選択マーカーまたはポジティブおよびネガティブ選択マーカーの両方は、蛍光を発するか、もしくは適切な反応物の存在下で発光反応を触媒するマーカーを含むことができる。別の実施形態では、マーカーの産生は、蛍光標識細胞分取(FACS)または発光によって検出される。場合により、マーカーは、親和性に基づくスクリーニングマーカーを含む。フランシスコ,J.A.(Francisco,J.A.)ら、(1993年)Production and fluorescence−activated cell sorting of Escherichia coli expressing a functional antibody fragment on the external surface.、Proc Natl Acad Sci USA.90:10444−8を参照のこと。
【0072】
組換え直交性tRNAを産生させるためのさらなる方法については、例えば、国際特許出願国際公開第2002/086075号パンフレット、表題「Methods and compositions for the production of orthogonal tRNA−aminoacyltRNA synthetase pairs」;ならびに米国特許出願第60/479,931号明細書、および同第60/496,548号明細書、表題「EXPANDING THE EUKARYOTIC GENETIC CODE」において見出すことができる。また、フォスター(Forster)ら、(2003年)Programming peptidomimetic synthetases by translating genetic codes designed de novo、PNAS100(11):6353−6357;およびフェング(Feng)ら、(2003年)、Expanding tRNA recognition of a tRNA synthetase by a single amino acid change、PNAS100(10):5676−5681も参照のこと。
【0073】
直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)
本発明のO−RSは、インビトロまたはインビボにおいて、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。本発明のO−RSは、O−RSを含むポリペプチドによって、および/またはO−RSもしくはその一部をコードするポリヌクレオチドによって、翻訳系、例えば、細胞に提供され得る。例えば、O−RSは配列番号1に記載のアミノ酸配列、またはその保存的変形を含んでなる。別の実施形態では、O−RS、またはその一部は、配列番号1を含んでなるアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。本明細書では、例えば、例示的なO−RS分子の配列については表1ならびに実施例2を参照のこと。また、本明細書における表題「核酸およびポリペプチド配列ならびに変異体」のセクションも参照のこと。
【0074】
O−tRNAと共に使用するための直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、例えば、O−RSを同定するための方法もまた、本発明の特徴である。例えば、方法は、第1の種の細胞の集団を選択、例えば、ポジティブ選択に供することであって、ここで、細胞は個々に:1)複数のアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)のメンバー、(例えば、複数のRSは、変異RS、第1の種以外の種から誘導されるRSまたは変異RSおよび第1の種以外の種から誘導されるRSの両方を含むことができる);2)直交性tRNA(O−tRNA)(例えば、1つもしくはそれ以上の種由来);ならびに3)(例えば、ポジティブ)選択マーカーをコードし、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチド、を含んでなる。細胞は、複数のRSのメンバーを欠くかまたは減少した量の該メンバーを伴う細胞と比較して、抑制効率の増強を示す細胞について選択またはスクリーニングされる。抑制効率は、当該分野において公知の技術によって、および本明細書に記載のように測定することができる。抑制効率の増強を有する細胞は、O−tRNAをアミノアシル化する活性なRSを含んでなる。第1の種由来のtRNAの第1の組の活性なRSによるアミノアシル化(インビトロまたはインビボ)のレベルを、第2の種由来のtRNAの第2の組の活性なRSによるアミノアシル化(インビトロまたはインビボ)のレベルと比較する。アミノアシル化のレベルは、検出可能な物質(例えば、標識されたアミノ酸または非天然アミノ酸、例えば、DHPのような酸化還元機能性アミノ酸)によって測定することができる。第1の組のtRNAと比較して、第2の組のtRNAをより効率的にアミノアシル化する活性なRSを典型的に選択し、それによって、O−tRNAと共に使用するための効率的な(最適化された)直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを提供する。方法によって同定されるO−RSもまた本発明の特徴である。
【0075】
多くのアッセイのいずれも、アミノアシル化を決定するために使用することができる。これらのアッセイは、インビトロまたはインビボで達成することができる。例えば、インビトロアミノアシル化アッセイについては、例えば、ホベン(Hoben)およびソル(Soll)(1985年)Methods Enzymol.113:55−59に記載されている。アミノアシル化はまた、直交性翻訳成分と共にレポーターを使用し、タンパク質をコードする少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチドを発現する細胞においてレポーターを検出することによって、測定することができる。また、国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS」;および2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書も参照のこと。
【0076】
O−RSは、所望される非天然アミノ酸、例えば、DHPのような酸化還元機能性アミノ酸だけではなく、一般的な20種のアミノ酸のいずれもがO−tRNAにチャージされるように、シンテターゼの基質特異性を変更するために操作することができる。非天然アミノ酸に対する基質特異性を伴う直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを作製するための方法は、シンテターゼの異なるドメインなどを組み合わせ、選択プロセスを適用することによって、例えば、シンテターゼにおける活性部位、シンテターゼにおける編集機構部位、異なる部位でシンテターゼを変異することを含む。ポジティブ選択の組み合わせ、それに続くネガティブ選択に基づくストラテジーが使用される。ポジティブ選択では、ポジティブマーカーの非必須位置に導入されるセレクターコドンの抑制は、細胞が、ポジティブ選択による抑圧下で生存することを可能にする。従って、天然および非天然の両方のアミノ酸の存在下では、生存体は、天然または非天然アミノ酸のいずれかで直交性サプレッサーtRNAをチャージする活性なシンテターゼをコードする。ネガティブ選択では、ネガティブマーカーの非必須位置に導入されるセレクターコドンの抑制により、天然アミノ酸特異性を伴うシンテターゼが取り出される。ネガティブおよびポジティブ選択の生存体は、非天然アミノ酸のみで直交性サプレッサーtRNAをアミノアシル化(チャージ)するシンテターゼをコードする。次いで、これらのシンテターゼを、さらなる変異、例えば、DNAシャフリングまたは他の再帰的変異(recursive mutagenesis)方法に供することができる。
【0077】
変異O−RSのライブラリーは、当該分野において公知の多様な変異技術を使用して作製することができる。例えば、変異RSは、部位特異的変異、ランダム点変異、相同組換え、DNAシャフリングもしくは他の再帰的変異(recursive mutagenesis)方法、キメラの構築またはそれらの任意の組み合わせによって作製することができる。例えば、変異RSのライブラリーは、2もしくはそれ以上の他の、例えば、より小さな、多様性がより低い「サブ−ライブラリー」から生成することができる。RSのキメラライブラリーもまた、本発明に含まれる。場合により、天然の多様性を含んでなるライブラリー(例えば、米国特許第6,238,884号明細書、ショート(Short)ら;米国特許第5,756,316号明細書、シャレンベルガー(Schallenberger)ら;米国特許第5,783,431号明細書、ペターソン(Petersen)ら;米国特許第5,824,485号明細書、トンプソン(Thompson)ら;米国特許第5,958,672号明細書、ショート(Short)らを参照のこと)のような多様な生物体(例えば、真正細菌または古細菌のような微生物)由来のtRNAシンテターゼのライブラリーを構築し、直交性の対についてスクリーニングすることについて留意すべきである。
【0078】
一旦、シンテターゼをポジティブおよびネガティブ選択/スクリーニングストラテジーに供すると、次いで、これらのシンテターゼをさらなる変異に供することができる。例えば、O−RSをコードする核酸を単離することができ;(例えば、ランダム変異、部位特異的変異、組換えまたはそれらの任意の組み合わせによって)変異したO−RSをコードするポリヌクレオチドの組を核酸から作製することができ;そして、非天然アミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する変異O−RSが得られるまで、これらの個々の工程またはこれらの工程の組み合わせを反復することができる。本発明の1つの態様では、複数回、例えば、少なくとも2回、工程が反復される。
【0079】
選択/スクリーニングストリンジェンシーのさらなるレベルもまた、O−tRNA、O−RS、またはそれらの対を産生させるための本発明の方法において使用することができる。選択またはスクリーニングストリンジェンシーは、O−RSを産生させるための方法の1つまたは両方の工程に対し変動させることができる。これは、例えば、使用される選択/スクリーニング因子の量を変動することなどを含み得る。ポジティブおよび/またはネガティブ選択のさらなるラウンドもまた、実施することができる。選択またはスクリーニングすることはまた、1つもしくはそれ以上のアミノ酸の透過性の変化、翻訳効率の変化、翻訳精度の変化などを含んでなることができる。典型的に、1つもしくはそれ以上の変化は、タンパク質を産生するために直交性tRNA−tRNAシンテターゼの対を使用する生物体における1つもしくはそれ以上の遺伝子の変異に基づく。
【0080】
O−RS産生させること、およびシンテターゼの基質特異性を変更することについてのさらなる一般的な詳細事項については、国際公開第2002/086075号パンフレット、表題「Methods and compositions for the production of orthogonal tRNA−aminoacyltRNA synthetase pairs」;および2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書において見出すことができる。
【0081】
供給源および宿主生物体
本発明の翻訳コンポーネントは、非真核生物体から誘導することができる。例えば、直交性O−tRNAは、非真核生物体(もしくは生物体の組み合わせ)、例えば、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム(Halobacterium)種NRC−1のようなハロバクテリウム(Halobacterium)、アーケグロバス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス・フリオース(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)、アエウロピラム・ペルニックス(Aeuropyrum pernix)、メタノコッカス・マルパリディス(Methanococcus maripaludis)、メタノピルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(Mm)、パイロバクラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、パイロコッカス・アビシイ(Pyrococcus abyssi)、スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)(Ss)、スルフォロバス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)などのような古細菌、または大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermphilus)などのような真正細菌から誘導することができる一方、直交性O−RSは、非真核生物体(もしくは生物体の組み合わせ)、例えば、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム(Halobacterium)種NRC−1のようなハロバクテリウム(Halobacterium)、アーケグロバス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス・フリオース(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)、アエウロピラム・ペルニックス(Aeuropyrum pernix)、メタノコッカス・マルパリディス(Methanococcus maripaludis)、メタノピルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、パイロバクラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、パイロコッカス・アビシイ(Pyrococcus abyssi)、スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)、スルフォロバス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)などのような古細菌、または大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermphilus)などのような真正細菌から誘導することができる。1つの実施形態では、真核生物供給源、例えば、植物、藻類、原生生物、真菌、酵母、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、節足動物など)などをO−tRNAおよびO−RSの供給源として使用することができる。
【0082】
O−tRNA/O−RSの対の個々の成分は、同じ生物体または異なる生物体から誘導することができる。1つの実施形態では、O−tRNA/O−RSの対は、同じ生物体由来である。あるいは、O−tRNA/O−RSの対のO−tRNAおよびO−RSは、異なる生物体由来である。
【0083】
O−tRNA、O−RSまたはO−tRNA/O−RSの対は、インビボもしくはインビトロで選択またはスクリーニングし、および/あるいは細胞、例えば、非真核細胞、もしくは真核細胞において使用して、酸化還元機能性アミノ酸を伴うポリペプチドを産生させることができる。非真核細胞は、様々な供給源、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermphilus)などの真正細菌、またはメタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム(Halobacterium)種NRC−1のようなハロバクテリウム(Halobacterium)、アーケグロバス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス・フリオース(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)、アエウロピラム・ペルニックス(Aeuropyrum pernix)、メタノコッカス・マルパリディス(Methanococcus maripaludis)、メタノピルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(Mm)、パイロバクラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、パイロコッカス・アビシイ(Pyrococcus abyssi)、スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)(Ss)、スルフォロバス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)などのような古細菌由来であり得る。真核細胞は、様々な供給源、例えば、植物(例えば、単子葉植物、または双子葉植物のような複合植物)、藻類、原生生物、真菌、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、節足動物など)など由来であり得る。本発明の翻訳コンポーネントを伴う細胞の組成物もまた、本発明の特徴である。
【0084】
また、別の種において使用するために、1つの種においてO−tRNAおよび/またはO−RSをスクリーニングすることについては、2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書を参照のこと。
【0085】
セレクターコドン
本発明のセレクターコドンは、タンパク質生合成機構の遺伝子コドンフレームワークにまで及ぶ。例えば、セレクターコドンは、例えば、独特な3塩基コドン、終止コドンのようなナンセンスコドン、例えば、アンバーコドン(UAG)、またはオパールコドン(UGA)、非天然のコドン、少なくとも4塩基コドン、レアコドンなどを含む。多くのセレクターコドン(例えば、1もしくはそれ以上、2もしくはそれ以上、3を超えるなど)を、所望される遺伝子に導入することができる。異なるセレクターコドンを使用することによって、これらの異なるセレクターコドンを使用する複数の酸化還元機能性アミノ酸、例えば、非天然アミノ酸の同時部位特異的組み入れを可能にする複数の直交性tRNA/シンテターゼの対を使用することができる。
【0086】
1つの実施形態では、方法は、細胞におけるインビボでの酸化還元機能性アミノ酸の組み入れのための終止コドンであるセレクターコドンの使用に関与する。例えば、終止コドンを認識して、酸化還元機能性アミノ酸を伴いO−RSによってアミノアシル化されるO−tRNAが産生される。このO−tRNAは、天然に存在する宿主のアミノアシルtRNAシンテターゼには認識されない。従来の部位特異的変異を使用して、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの目的の部位に終止コドンを導入することができる。例えば、セイヤーズJ.R.(Sayers,J.R.)ら(1988年)、5’,3’Exonuclease in phosphorothioate−based oligonucleotide−directed mutagenesis、Nucleic Acids Res、791−802を参照のこと。O−RS、O−tRNAおよび目的のポリペプチドをコードする核酸を、例えば、インビボで組み合わせる場合、終止コドンに応答して酸化還元機能性アミノ酸が組み入れられ、指定された位置に酸化還元機能性アミノ酸を含有するポリペプチドが与えられる。本発明の1つの実施形態では、セレクターコドンとして使用される終止コドンは、アンバーコドン、UAG、および/またはオパールコドン、UGAである。1つの例では、UAGおよびUGAの両方がセレクターコドンとして使用される遺伝子暗号は、22種のアミノ酸をコードすることができる一方、最も豊富にある終結シグナルであるオーカーナンセンスコドン、UAAを保存する。
【0087】
酸化還元機能性アミノ酸のインビボでの組み入れは、宿主細胞の有意な擾乱を伴わずに行うことができる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)のような非真核細胞では、UAGコドンに関する抑制効率は、O−tRNA、例えば、アンバーサプレッサーtRNAと、放出因子1(RF1)(UAGコドンに結合し、リボソームから成長中のペプチドの放出を開始する)との間の競合に依存するため、抑制効率は、例えば、O−tRNA、例えば、サプレッサーtRNAの発現レベルを増加するかまたはRF1欠損株を使用するかのいずれかによって、調節することができる。真核細胞では、UAGコドンに関する抑制効率は、O−tRNA、例えば、アンバーサプレッサーtRNAと、真核生物の放出因子(例えば、eRF)(終止コドンに結合し、リボソームから成長中のペプチドの放出を開始する)との間の競合に依存するため、抑制効率は、例えば、O−tRNA、例えば、サプレッサーtRNAの発現レベルを増加することによって、調節することができる。さらに、さらなる化合物、例えば、ジチオスレイトール(DTT)のような還元剤も存在することができる。
【0088】
酸化還元機能性アミノ酸は、レアコドンによってもコードされ得る。例えば、インビトロタンパク質合成反応におけるアルギニン濃度が減少する場合、稀なアルギニンコドン、AGGは、アラニンでアシル化された合成tRNAによるAlaの挿入に効率的であることが立証されている。例えば、マ(Ma)ら、Biochemistry、32:7939(1993年)を参照のこと。この場合、合成tRNAは、大腸菌(Escherichia coli)においてより少数の主として存在する天然に存在するtRNAArgと競合する。さらに、いくつかの生物体は、すべての3連コドンを使用するわけではない。マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)の割り当てられていないコドンAGAは、インビトロ転写/翻訳抽出物におけるアミノ酸の挿入に利用されている。例えば、コワル(Kowal)およびオリバー(Oliver)、Nucl.Acid.Res.、25:4685(1997年)を参照のこと。本発明の成分を作製して、インビボでこれらのレアコドンを使用することができる。
【0089】
セレクターコドンはまた、伸長されたコドン、例えば、4、5、6塩基もしくはそれ以上のコドンのような4塩基もしくはそれ以上のコドンを含んでなることができる。4塩基コドンの例として、例えば、AGGA、CUAG、UAGA、CCCUなどが挙げられる。5塩基コドンの例として、例えば、AGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACU、UAGGCなどが挙げられる。本発明の方法は、フレームシフト抑制に基づく伸長されたコドンを使用することを含む。4塩基もしくはそれ以上のコドンは、例えば、酸化還元機能性アミノ酸のような1個もしくは複数個の非天然アミノ酸を同じタンパク質に挿入することができる。他の実施形態では、例えば、少なくとも4塩基コドン、少なくとも5塩基コドン、または少なくとも6塩基コドンもしくはそれ以上でアンチコドンループをデコードすることができる。256通りの可能な4塩基コドンが存在するため、4塩基もしくはそれ以上のコドンを使用して、複数の非天然アミノ酸を、同じ細胞においてコードすることができる。また、アンダーソン(Anderson)ら、(2002年)Exploring the Limits of Codon and Anticodon Size、Chemistry and Biology、9:237−244;およびマキエリー(Magliery)、(2001年)Expanding the Genetic Code:Selection of Efficient Suppressors of Four−base Codons and Identification of “Shifty” Four−base Codons with a Library Approach in Escherichia coli、J.Mol.Biol.307:755−769も参照のこと。
【0090】
例えば、4塩基コドンは、インビトロ生合成方法を使用して、非天然アミノ酸がタンパク質に組み入れられている。例えば、マ(Ma)ら、(1993年)Biochemistry、32:7939;およびホーサカ(Hohsaka)ら、(1999年)J.Am.Chem.Soc.、121:34を参照のこと。CGGGおよびAGGUは、2種の化学的にアシル化したフレームシフトサプレッサーtRNAによって、インビトロでストレプトアビジンに2−ナフチルアラニンおよびリジンのNBD誘導体を同時に組み入れるために使用した。例えば、ホーサカ(Hohsaka)ら、(1999年)J.Am.Chem.Soc.、121:12194を参照のこと。インビボでの研究において、ムーア(Moore)らは、NCUAアンチコドンを伴うtRNALeu誘導体がUAGNコドン(NはU、A、G、またはCであり得る)を抑制する能力について調べ、4連のUAGAを、UCUAアンチコドンを伴うtRNALeuによって、13〜26%の効率で、0または−1フレームでのデコーディングをほとんど伴うことなく、デコードすることができることを見出した。ムーア(Moore)ら、(2000年)J.Mol.Biol.、298:195を参照のこと。1つの実施形態では、レアコドンまたはナンセンスコドンに基づいて伸長されたコドンを本発明において使用することができ、ミスセンスのリードスルーおよび他の所望されていない部位でのフレームシフト抑制を減少することができる。
【0091】
所定のシステムについて、セレクターコドンはまた、天然の3塩基コドンの1つを含むことができ、ここで、内因性システムは、天然の塩基コドンを使用しない(または稀に使用する)。例えば、これは、天然の3塩基コドンを認識するtRNAを欠いているシステム、および/または3塩基コドンがレアコドンであるシステムを含む。
【0092】
セレクターコドンは、場合により、非天然の塩基対を含む。これらの非天然の塩基対は、現存の遺伝子暗号文字にまでさらに及ぶ。塩基対が新たに1つ加わると、3連コドンの数は64から125に増加する。第3の塩基対の特性には、安定かつ選択的塩基対形成、ポリメラーゼによる高い精度を伴うDNAへの効率的な酵素的組込み、および初期の非天然塩基対の合成語の効率的な継続されたプライマー伸長が含まれる。方法および組成物に適応することができる非天然塩基対に関する記載として、例えば、ヒラオ(Hirao)ら、(2002年)An unnatural base pair for incorporating amino acid analogues into protein、Nature Biotechnology、20:177−182が挙げられる。また、フー,Y.(Wu,Y.)ら、(2002年)J.Am.Chem.Soc.124:14626−14630を参照のこと。他の関連の刊行物については下記に列挙する。
【0093】
インビボでの取り扱いについて、非天然のヌクレオシドは膜透過性であり、リン酸化されて、対応する三リン酸を形成する。さらに、増加した遺伝子情報は安定であり、細胞の酵素によって破壊されない。ベンナー(Benner)らによる先の取り組みでは、標準的ワトソン−クリック(Watson−Crick)対とは異なる水素結合パターンが利用されたが、その最も顕著な例はイソ−C:イソ−G対である。例えば、スウィトサー(Switzer)ら、(1989年)J.Am.Chem.Soc.、111:8322;およびピッチリリ(Piccirilli)ら、(1990年)Nature、343:33;クール(Kool)、(2000年)Curr.Opin.Chem.Biol.、4:602を参照のこと。これらの塩基は、一般に、天然の塩基とある程度のミスペアを形成し、酵素による複製ができない。クール(Kool)らは、塩基間の疎水性パッキングの相互作用は水素結合を置き換えて、塩基対の形成を駆動することができることを実証した。クール(Kool)、(2000年)Curr.Opin.Chem.Biol.、4:602;ならびにガキアン(Guckian)およびクール(Kool)、(1998年)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、36、2825を参照のこと。上記のすべての要件を満たす非天然の塩基対を開発するための努力において、シュルツ(Schultz)、ロメスベルグ(Romesberg)らは、一連の非天然疎水性塩基を系統的に合成し、研究した。PICS:PICS自己対は、天然の塩基対よりも安定であることが見出されており、大腸菌(Escherichia coli)のDNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)フラグメント(KF)によって効率的にDNAに組み入れることができる。例えば、マックミン(McMinn)ら、(1999年)J.Am.Chem.Soc.、121:11586;およびオガワ(Ogawa)ら、(2000年)J.Am.Chem.Soc.、122:3274を参照のこと。3MN:3MN自己対は、KFによって、生物学的機能に対して十分な効率かつ選択性で合成することができる。例えば、オガワ(Ogawa)ら、(2000年)J.Am.Chem.Soc.、122:8803を参照のこと。しかし、両方の塩基とも、さらなる複製に対してチェーンターミネーターとして作用する。最近、PICS自己対を複製するために使用することができる変異DNAポリメラーゼが展開してきている。さらに、7AI自己対を複製することができる。例えば、タエ(Tae)ら、(2001年)J.Am.Chem.Soc.、123:7439を参照のこと。Cu(II)への結合時に安定な対を形成する新規のメタロ塩基対(metallobase pair)、Dipic:Pyも開発されている。例えば、メガーズ(Meggers)ら、(2000年)J.Am.Chem.Soc.、122:10714を参照のこと。伸長されたコドンおよび非天然コドンは、天然コドンに対して本質的に直交性であるため、本発明の方法は、この特性を利用して、それらに対する直交性tRNAを作製することができる。
【0094】
翻訳バイパスシステムを使用して、所望されるポリペプチドに酸化還元機能性アミノ酸を組み入れることもできる。翻訳バイパスシステムでは、大きな配列が遺伝子に挿入されるが、タンパク質には翻訳されない。配列は、リボソームが配列を飛び越して、挿入物より下流から翻訳を再開するように誘導するための指示としての役割を果たす構造を含有する。
【0095】
非天然アミノ酸
本明細書において使用する非天然アミノ酸とは、任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、あるいはセレノシステインおよび/またはピロリジン以外のアミノ酸アナログならびに以下の20種の遺伝子コードされるα−アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを指す。α−アミノ酸の一般構造を式Iに例示する。
【化1】

【0096】
非天然アミノ酸は、典型的に、式I[式中、R基は20種の天然アミノ酸において使用される基以外の任意の置換基である]を有する任意の構造である。20種の天然アミノ酸の構造については、例えば、Biochemistry、L.ストライヤー(L.Stryer)、第3版、1988年、Freeman and Company、ニューヨークを参照のこと。本発明の非天然アミノ酸は、上記の20種のα−アミノ酸以外の天然に存在する化合物であり得ることに留意すること。
【0097】
本発明の非天然アミノ酸は、典型的に、天然アミノ酸とは側鎖が異なるため、非天然アミノ酸は、それらが天然に存在するタンパク質において形成されるのと同じ様式で、他のアミノ酸(例えば、天然または非天然)とアミド結合を形成する。しかし、非天然アミノ酸は、それらを天然アミノ酸と区別する側鎖の基を有する。
【0098】
分子の内外の電子および/またはプロトン伝達を可能にする部分を含んでなる酸化還元機能性アミノ酸、例えば、非天然アミノ酸をタンパク質に組み入れる能力を有することは、非天然アミノ酸をタンパク質に組み入れる点において特に興味深い。例えば、酸化還元機能性アミノ酸では、式IのRは、例えば、ケト−、アジド−、ヒドロキシル−、ハロ−(例えば、ヨード−)、ニトロ−、チオール−、セレノ−、スルホニル−、ヘテロ環、アルデヒド(aldelhyde)、チオ酸(thioacid)などまたはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。本発明の酸化還元機能性アミノ酸の例として、例えば、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(phenyalanine)(DHP)、3,4,6−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、3,4,5−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、3−ニトロ−チロシン、4−ニトロ−フェニルアラニン、3−チオール−チロシンなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、図1も参照のこと。
【0099】
他の非天然アミノ酸では、例えば、式IのRは、場合により、アルキル−、アリール−、アシル−、ヒドラジン、シアノ−、ハロ−、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、エノン、イミン、エステル、ヒドロキシルアミン、アミンなど、またはそれらの任意の組み合わせを含んでなる。目的の他の非天然アミノ酸として、光活性化型架橋を含んでなるアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合性アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規の官能基を伴うアミノ酸、他の分子と共有または非共有的に相互作用するアミノ酸、光ケージされた(photocaged)および/または光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチンアナログ含有アミノ酸、ケト含有アミノ酸、グリコシル化アミノ酸、アミノ酸側鎖に付着した多糖部分、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含んでなるアミノ酸、重原子置換されたアミノ酸、化学的に切断可能または光切断可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比較して伸長された側鎖を伴うアミノ酸(例えば、ポリエーテルまたは長鎖炭化水素、例えば、約5を超える、約10を超える炭素など)、炭素結合型糖を含有するアミノ酸、アミノチオ酸(amino thioacid)を含有するアミノ酸、および1つもしくはそれ以上毒性部分を含有するアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
新規の側鎖を含有する非天然アミノ酸に加えて、非天然アミノ酸はまた、場合により、例えば、式IIおよびIIIの構造によって例示されるように、修飾された骨格構造を含んでなる。
【化2】


式中、Zは、典型的に、OH、NH、SH、NH−R’、またはS−R’を含んでなり;XおよびYは同じもしくは異なり得、典型的に、SまたはOを含んでなり、RおよびR’は場合により同じもしくは異なり、典型的に、式Iを有する非天然アミノ酸について上記のR基の構成要素の同じリストならびに水素から選択される。例えば、本発明の非天然アミノ酸は、場合により、式IIおよびIIIによって例示されるアミノまたはカルボキシル基における置換基を含んでなる。このタイプの非天然アミノ酸として、例えば、一般的な20種の天然アミノ酸に対応する側鎖または非天然の側鎖を伴うα−ヒドロキシ酸、α−チオ酸(α−thioacids)、α−アミノチオカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、α−炭素での置換基は、場合により、D−グルタミン酸、D−アラニン、D−メチル−O−チロシン、アミノ酪酸などのようなL、D、またはα−α−2置換アミノ酸を含む。他の構造代替物は、環状アミノ酸、例えば、プロリンアナログならびに3、4、6、7、8、および9員環プロリンアナログ、βおよびγアミノ酸例えば、置換β−アラニンおよびγ−アミノ酪酸を含む。
【0101】
例えば、多くの非天然アミノ酸は、チロシン、グルタミン、フェニルアラニンなどのような天然アミノ酸に基づく。チロシンアナログとして、パラ−置換チロシン、オルト−置換チロシン、およびメタ置換チロシンが挙げられ、ここで、置換チロシンは、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C〜C20直鎖または分岐炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含んでなる。さらに、多置換アリール環もまた考慮される。本発明のグルタミンアナログとして、α−ヒドロキシ誘導体、γ−置換誘導体、環式誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。フェニルアラニンアナログの例として、パラ−置換フェニルアラニン、オルト−置換フェニルアラニン(phenyalanines)、およびメタ−置換フェニルアラニンが挙げられるがこれらに限定されず、ここで、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、ニトロ、チオール基、またはケト基などを含んでなる。非天然アミノ酸の特定の例として、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(phenyalanine)(DHP)、3,4,6−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、3,4,5−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、4−ニトロ−フェニルアラニン、p−アセチル−L−フェニルアラニン、p−プロパルギルオキシフェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、3−ニトロ−チロシン、3−チオール−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨードーフェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、およびイソプロピル−L−フェニルアラニンなどが挙げられるが、これらに限定されない。様々な非天然アミノ酸の構造は、例えば、本明細書の図1および国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「In vivo incorporation of unnatural amino acids」の図16、17、18、19、26、および29に提供される。
【0102】
非天然アミノ酸の化学合成
上記の多くの非天然アミノ酸は、例えば、Sigma(米国)またはAldrich(Milwaukee、ウィスコンシン州、米国)から市販されている。市販されていないアミノ酸は、場合により、多様な刊行物において提供されているように、または当業者に公知の標準的な方法を使用して、合成される。有機合成技術については、例えば、Organic Chemistry、フェッセンドン(Fessendon)およびフェッセンドン(Fessendon)、(1982年、第2版、Willard Grant Press、Bostonマサチューセッツ州);Advanced Organic Chemistry、マーチ(March)(第3版、1985年、Wiley and Sons、ニューヨーク);ならびにAdvanced Organic Chemistry、ケアリー(Carey)およびサンドベルク(Sundberg)(第3版、AおよびB部、1990年、Plenum Press、ニューヨーク)を参照のこと。非天然アミノ酸の合成について説明するさらなる刊行物として、例えば、国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「In vivo incorporation of Unnatural Amino Acids」;マトウカス(Matsoukas)ら、(1995年)J.Med.Chem.、38、4660−4669;キング,F.E.(King,F.E.)およびキッド,D.A.A.(Kidd,D.A.A.)(1949年)A New Synthesis of Glutamine and of γ−Dipeptides of Glutamic Acid from Phthylated Intermediates、J.Chem.Soc.、3315−3319;フリードマン,O.M.(Friedman,O.M.)およびチャタージ,R.(Chatterrji,R.)(1959年)Synthesis of Derivatives of Glutamine as Model Substrates for Anti−Tumor Agents、J.Am.Chem.Soc.81、3750−3752;クレイグ,J.C.(Craig,J.C.)ら(1988年)Absolute Configuration of the Enantiomers of 7−Chloro−4 [[4−(diethylamino)−1−methylbutyl]amino]quinoline (Chloroquine)、J.Org.Chem.53、1167−1170;アゾウレイ,M.(Azoulay,M.)、ヴィルモント,M.(Vilmont,M.)およびフラッピア,F.(Frappier,F.)(1991年)Glutamine analogues as Potential Antimalarials、Eur.J.Med.Chem.26、201−5;コシネン,A.M.P.(Koskinen,A.M.P.)およびラポポート,H.(Rapoport,H.)(1989年)Synthesis of 4−Substituted Prolines as Conformationally Constrained Amino Acid Analogues、J.Org.Chem.54、1859−1866;クリスティ,B.D.(Christie,B.D.)およびラポポート,H.(Rapoport,H.)(1985年)Synthesis of Optically Pure Pipecolates from L−Asparagine.Application to the Total Synthesis of (+)−Apovincamine through Amino Acid Decarbonylation and Iminium Ion Cyclization、J.Org.Chem.1989:1859−1866;バートン(Barton)ら、(1987)Synthesis of Novel α−Amino−Acids and Derivatives Using Radical Chemistry:Synthesis of L−and D−α−Amino−Adipic Acids,L−α−aminopimelic Acid and Appropriate Unsaturated Derivatives、Tetrahedron Lett.43:4297−4308;ならびにサバシング(Subasinghe)ら、(1992年)Quisqualic acid analogues:synthesis of beta−heterocyclic 2−aminopropanoic acid derivatives and their activity at a novel quisqualate−sensitized site、J.Med.Chem.35:4602−7が挙げられる。また、2003年12月22日に出願された国際出願番号PCT/US03/41346号明細書、表題「Protein Arrays」も参照のこと。
【0103】
非天然アミノ酸の細胞取り込み
細胞による非天然アミノ酸の取り込みは、例えば、タンパク質への組み入れのために非天然アミノ酸を設計し、選択する場合に典型的に考えられる1つの問題点である。例えば、α−アミノ酸の高い電荷密度は、これらの化合物が細胞透過性ではない可能性があることを示唆する。天然アミノ酸は、しばしば、様々な程度のアミノ酸特異性を示すタンパク質に基づく輸送システムのコレクションを介して、細胞に取り込まれる。存在するならば、どの非天然アミノ酸が細胞に取り込まれるかを評価する迅速なスクリーニングを行うことができる。例えば、2003年12月22日に出願された国際出願番号PCT/US03/41346号明細書、表題「Protein Arrays」;ならびにリュウ(Liu)およびシュルツ(Schultz)(1999年)Progress toward the evolution of an organism with an expanded genetic code、PNAS96:4780−4785の毒性アッセイを参照のこと。多様なアッセイで容易に取り込みが分析されるが、細胞取り込み経路に従う非天然アミノ酸を設計することの別法は、インビボでアミノ酸を作製するための生合成経路を提供することである。
【0104】
非天然アミノ酸の生合成
アミノ酸および他の化合物の産生のために、細胞には既に多くの生合成経路が存在する。特定の非天然アミノ酸ための生合成方法は天然には存在し得ない一方、例えば、細胞において、本発明はそのような方法を提供する。例えば、非天然アミノ酸のための生合成経路は、場合により、新しい酵素を添加するかまたは存在している宿主細胞経路を修飾することによって、宿主細胞において作製される。さらなる新しい酵素は、場合により、天然に存在する酵素であるか、または人工的に展開された酵素である。例えば、(国際公開第2002/085923号パンフレット、上掲の実施例において提示されている)p−アミノフェニルアラニンの生合成は、他の生物体由来の既知の酵素の組み合わせの添加に依存する。これらの酵素の遺伝子は、遺伝子を含んでなるプラスミドで細胞を形質転換することによって、細胞に導入することができる。遺伝子は、細胞において発現される場合、所望される化合物を合成するための酵素経路を提供する。場合により添加される酵素のタイプの例を、下記の実施例に提供する。さらなる酵素配列は、例えば、GenBankにおいて見出される。人工的に展開された酵素もまた、場合により、同じ様式で細胞に添加される。この様式では、細胞の機構および細胞の資源を操作して、非天然アミノ酸を産生させる。
【0105】
実際、インビトロまたはインビボでの非天然アミノ酸の産生のための生合成経路における使用、または存在する経路の展開のために新規の酵素を産生させるため、様々な方法のいずれかを使用することができる。酵素および他の生合成経路成分を展開する多くの利用可能な方法を本発明に適用して、非天然アミノ酸を産生させる(または、実際には、新たな基質特異性もしくは目的の他の活性を有するためにシンテターゼを展開する)ことができる。例えば、インビトロもしくはインビボでの非天然アミノ酸の産生(あるいは新たなシンテターゼの産生)のための新規の酵素および/またはそのような酵素の経路を開発するために、場合により、DNAシャフリングが使用される。例えば、ステマー(Stemmer)(1994年)、Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling、Nature370(4):389−391;およびステマー(Stemmer)、(1994年)、DNA shuffling by random fragmentation and reassembly:In vitro recombination for molecular evolution、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、91:10747−10751を参照のこと。関連するアプローチは、関連(例えば、相同)遺伝子のファミリーをシャッフルして、所望される特徴を伴う酵素を迅速に展開する。そのような「ファミリー遺伝子シャフリング」方法の例は、クラメリ(Crameri)ら(1998)「DNA shuffling of a family of genes from diverse species accelerates directed evolution」Nature、391(6664):288−291において見出される。新たな酵素(生合成経路の成分またはシンテターゼのいずれでも)は、例えば、オスターメイヤー(Ostermeier)ら(1999年)「A combinatorial approach to hybrid enzymes independent of DNA homology」Nature Biotech17:1205に記載のように、「ハイブリッド酵素の創製のためのインクリメンタルな短縮(incremental truncation for the creation of hybrid enzymes)」(「ITCHY」)として公知のDNA組換え手順を使用して、作製することもできる。このアプローチを使用して、酵素のライブラリーまたは1つもしくはそれ以上のインビトロもしくはインビボ組換え方法のための基質として役割を果たすことができる他の経路の変異体を作製することができる。また、オスターメイヤー(Ostermeier)ら(1999年)「Combinatorial Protein Engineering by Incremental Truncation」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:3562−67、およびオスターメイヤー(Ostermeier)ら(1999年)、「Incremental Truncation as a Strategy in the Engineering of Novel Biocatalysts」、Biological and Medicinal Chemistry、7:2139−44も参照のこと。別のアプローチでは、指数アンサンブル変異(exponential ensemble mutagenesis)を使用して、例えば、非天然アミノ酸(または新たなシンテターゼ)を産生させることに関する生合成反応を触媒する能力について選択される酵素のライブラリーまたは他の経路の変異体を生成する。このアプローチでは、各変更された位置で、機能的タンパク質をもたらすアミノ酸を同定すると同時に、目的の配列における小グループの残基を無作為化する。非天然アミノ酸(または新たなシンテターゼ)の産生のための新たな酵素を産生させるために、本発明に適用することができるそのような手順の例は、デレグレイブ(Delegrave)およびユーバン(Youvan)(1993)Biotechnology Research11:1548−1552において見出される。さらに別のアプローチでは、酵素および/または経路成分操作のための混成(doped)もしくは縮重オリゴヌクレオチドを使用するランダムまたはセミランダム変異を、例えば、アーキン(Arkin)およびユーバン(Youvan)(1992年)「Optimizing nucleotide mixtures to encode specific subsets of amino acids for semi−random mutagenesis」Biotechnology10:297−300;またはライドハール−オルソン(Reidhaar−Olson)ら(1991)「Random mutagenesis of protein sequences using oligonucleotide cassettes」Methods Enzymol.208:564−86の一般的な変異方法を例えば使用することによって、使用することができる。ポリヌクレオチドを使用して再集成する、しばしば、「非確率的(non−stochastic)」変異と呼ばれるなお別のアプローチおよび部位集中変異(site−saturation mutagenesis)を使用して、酵素および/または経路成分を産生させることができ、次いで、1つもしくはそれ以上のシンテターゼもしくは(例えば、インビボでの非天然アミノ酸の産生のための)生合成経路機能を実施する能力についてスクリーニングすることができる。例えば、ショート(Short)「Non−Stochastic Generation of Genetic Vaccines and Enzymes」国際公開第00/46344号パンフレットを参照のこと。
【0106】
そのような変異方法の別法は、生物体のゲノム全体を組換え、得られる子孫を特定の経路の機能について選択すること(しばしば、「全ゲノムシャフリング」と称される)に関与する。このアプローチは、例えば、ゲノム組換えおよび非天然アミノ酸(もしくはその中間体)を産生する能力に対する生物体(例えば、大腸菌(E.coli)または他の細胞)の選択によって、本発明に適用することができる。例えば、以下の刊行物において教示される方法は、細胞において現存するおよび/または新しい経路の展開のための経路の設計に適用し、非天然アミノ酸をインビボで産生させることができる:パトナイック(Patnaik)ら(2002年)「Genome shuffling of lactobacillus for improved acid tolerance」Nature Biotechnology、20(7):707−712;ならびにチャン(Zhang)ら(2002年)「Genome shuffling leads to rapid phenotypic improvement in bacteria」Nature、2月7日415(6872):644−646。
【0107】
生物体および代謝経路の操作、例えば、所望される化合物の産生に関する他の技術もまた利用可能であり、非天然アミノ酸の産生にも適用することができる。有用な経路操作アプローチについて教示している刊行物の例として:ナカムラ(Nakamura)およびホワイト(White)(2003年)「Metabolic engineering for the microbial production of 1,3 propanediol」Curr.Opin.Biotechnol.14(5):454−9;ベリー(Berry)ら(2002年)「Application of Metabolic Engineering to improve both the production and use of Biotech Indigo」J.Industrial Microbiology and Biotechnology28:127−133;バンタ(Banta)ら(2002年)「Optimizing an artificial metabolic pathway:Engineering the cofactor specificity of Corynebacterium 2,5−diketo−D−gluconic acid reductase for use in vitamin C biosynthesis」Biochemistry、41(20)、6226−36;セリボノバ(Selivonova)ら(2001年)「Rapid Evolution of Novel Traits in Microorganisms」Applied and Environmental Microbiology,67:3645、ならびにその他が挙げられる。
【0108】
使用する方法にかかわらず、典型的に、本発明の操作された生合成経路によって産生される非天然アミノ酸は、効率的なタンパク質生合成に十分な濃度、例えば、天然の細胞量であるが、他の細胞中アミノ酸の濃度に有意な影響を及ぼさず、または細胞の資源を消耗しない程度の量で産生される。この様式でインビボで産生される典型的な濃度は、約10mM〜約0.05mMである。一旦、細胞が特定の経路に所望される酵素を産生するように操作され、非天然アミノ酸が作製されると、場合により、インビボでの選択を使用して、リボソームタンパク質合成および細胞増殖に対して非天然アミノ酸の産生をさらに最適化する。
【0109】
3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)を組み入れるための直交性成分
本発明は、セレクターコドン、例えば、終止コドン、ナンセンスコドン、4もしくはそれ以上の塩基のコドンなどに例えば、インビボで応答して、酸化還元機能性アミノ酸、例えば、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)を成長中のポリペプチド鎖に組み入れるための直交性成分を産生させる組成物および方法を提供する。例えば、本発明は、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)およびその対を提供する。これらの対を使用して、DHPを成長中のポリペプチド鎖に組み入れることができる。
【0110】
本発明の組成物は直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含み、ここで、O−RSはDHPでO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。所定の実施形態では、O−RSは配列番号:1、またはその保存的変形を含んでなるアミノ酸配列を含んでなる。本発明の所定の実施形態では、O−RSは、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化し、ここで、O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率を有する。
【0111】
O−RSを含む組成物は、場合により、直交性tRNA(O−tRNA)をさらに含むことができ、ここで、O−tRNAはセレクターコドンを認識する。典型的に、本発明のO−tRNAは、同種のシンテターゼの存在下、セレクターコドンに対応し、本明細書の配列表および実施例に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該配列によってコードされるO−tRNAと比較して、少なくとも約、例えば、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上の抑制効率を含む。1つの実施形態では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、O−RSを欠くO−tRNAの抑制効率より例えば、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍もしくはそれ以上高い。1つの態様では、O−RSおよびO−tRNAの合同の抑制効率は、メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)から誘導される直交性チロシルtRNAシンテターゼ対の抑制効率の少なくとも45%である。
【0112】
O−tRNAを含む組成物は、場合により細胞(例えば、大腸菌(E.coli)細胞などのような非真核細胞、もしくは真核細胞)、および/または翻訳系を含むことができる。
【0113】
翻訳系を含んでなる細胞(例えば、非真核細胞、または真核細胞)もまた本発明によって提供され、ここで、翻訳系は、直交性tRNA(O−tRNA);直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS);および酸化還元機能性アミノ酸、例えば、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)を含む。典型的に、O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。O−tRNAは第1のセレクターコドンを認識し、O−RSは、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。1つの実施形態では、O−tRNAは、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ポリヌクレオチド配列もしくは相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。1つの実施形態では、O−RSは配列番号1、またはその保存的変形のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含んでなる。
【0114】
本発明の細胞は、さらなる異なるO−tRNA/O−RS対および第2の非天然アミノ酸をさらに含んでなり、例えば、ここで、このO−tRNAは第2のセレクターコドンを認識し、このO−RSは第2の非天然アミノ酸によってO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。場合により、本発明の細胞は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を含み、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。
【0115】
所定の実施形態では、本発明の細胞は、直交性tRNA(O−tRNA)、直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、酸化還元機能性アミノ酸、および目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸を含む大腸菌(E.coli)細胞を含み、ここで、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる。本発明の所定の実施形態では、O−RSは、本明細書において列挙した任意のO−RS配列のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する。
【0116】
本発明の所定の実施形態では、本発明のO−tRNAは、本明細書の配列表または実施例に記載のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ポリヌクレオチド配列もしくは相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。本発明の特定の実施形態では、O−RSは配列表に記載のアミノ酸配列、またはその保存的変形を含んでなる。1つの実施形態では、O−RSまたはその一部は、本明細書の配列表または実施例に記載のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0117】
本発明のO−tRNAおよび/またはO−RSは、様々な生物体(例えば、真核および/または非真核生物体)のいずれかから誘導することができる。
【0118】
ポリヌクレオチドもまた、本発明の特徴である。本発明のポリヌクレオチドは、本明細書の配列表に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる人工(例えば、人為的、および天然に存在しない)ポリヌクレオチドを含み、および/または該ポリヌクレオチド配列に相補的である。本発明のポリヌクレオチドはまた、高度にストリンジェントな条件下で、核酸の実質的に全体の長さにわたって、上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸を含むことができる。本発明のポリヌクレオチドはまた、天然に存在するtRNAまたは対応するコーディング核酸に、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一であるポリヌクレオチドを含み(但し、本発明のポリヌクレオチドは天然に存在するtRNAまたは対応するコーディング核酸以外である)、ここで、tRNAは、セレクターコドン、例えば、4塩基コドンを認識する。上記のいずれかに、例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一である人工ポリヌクレオチドおよび/または上記のいずれかの保存的変形を含んでなるポリヌクレオチドもまた、本発明のポリヌクレオチドに含まれる。
【0119】
本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターもまた、本発明の特徴である。例えば、本発明のベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、発現ベクター、および/または類似物を含むことができる。本発明のベクターを含んでなる細胞もまた、本発明の特徴である。
【0120】
O−tRNA/O−RS対の成分を産生する方法もまた、本発明の特徴である。これらの方法によって産生される成分もまた、本発明の特徴である。例えば、細胞に対して直交性である少なくとも1つのtRNA(O−tRNA)を産生させる方法は、変異tRNAのライブラリーを作製すること;変異tRNAのライブラリーの各メンバーのアンチコドンループを変異して、セレクターコドンの認識を可能にし、それによって、潜在的O−tRNAのライブラリーを提供し、第1の種の細胞の第1の集団をネガティブ選択に供することを含み、ここで、細胞は、潜在的O−tRNAのライブラリーのメンバーを含んでなる。ネガティブ選択は、細胞に対して内因性であるアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される潜在的O−tRNAのライブラリーのメンバーを含んでなる細胞を排除する。これは、第1の種の細胞に直交性であるtRNAのプールを提供し、それによって、少なくとも1つのO−tRNAを提供する。本発明の方法によって産生されるO−tRNAもまた提供される。
【0121】
所定の実施形態では、方法は、第1の種の細胞の第2の集団をポジティブ選択に供与することをさらに含んでなり、ここで、細胞は、第1の種の細胞、同種のアミノアシルtRNAシンテターゼ、およびポジティブ選択マーカーに直交性であるtRNAのプールのメンバーを含んである。ポジティブ選択を使用して、同種のアミノアシルtRNAシンテターゼによってアミノアシル化され、ポジティブ選択マーカーの存在下で所望される応答を示し、それによって、O−tRNAを提供するtRNAのプールのメンバーを含んでなる細胞について、細胞が選択またはスクリーニングされる。所定の実施形態では、細胞の第2の集団は、ネガティブ選択によって排除されなかった細胞を含んでなる。
【0122】
酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAをチャージする直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを同定するための方法もまた提供される。例えば、方法は、第1の種の細胞の集団を選択に供することであって、ここで、細胞はそれぞれ:1)複数のアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)のメンバー、(例えば、複数のRSは、変異RS、第1の種以外の種から誘導されるRS、または変異RSおよび第1の種以外の種から誘導されるRSの両方を含むことができる);2)直交性tRNA(O−tRNA)(例えば、1つもしくはそれ以上の種由来);ならびに3)ポジティブ選択マーカーをコードし、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチド、を含んでなる。
【0123】
細胞(例えば、宿主細胞)は、複数のRSのメンバーを欠くかまたは減少した量の該メンバーを有する細胞と比較して、抑制効率の増強を示す細胞について選択またはスクリーニングされる。これらの選択された/スクリーニングされた細胞は、O−tRNAをアミノアシル化する活性なRSを含んでなる。方法によって同定される直交性アミノアシルtRNAシンテターゼもまた本発明の特徴である。
【0124】
細胞(例えば、大腸菌(E.coli)細胞などのような非真核細胞、または真核細胞)において、指定された位置に3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)を伴うタンパク質を産生させる方法もまた、本発明の特徴である。例えば、方法は、適切な培地において、細胞を増殖させることを含み、ここで、細胞は、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなり、タンパク質をコードする核酸を含んでなり、DHPを提供し、少なくとも1つのセレクターコドンにより核酸の翻訳中にタンパク質の指定された位置にDHPを組み入れ、それによって、タンパク質を産生させる。細胞は:細胞において機能し、セレクターコドンを認識する直交性tRNA(O−tRNA);およびDHPでO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)をさらに含んでなる。本方法によって産生されるタンパク質もまた本発明の特徴である。
【0125】
本発明はまた、タンパク質を含む組成物を提供し、ここで、タンパク質は、例えば、DHPを含んでなる。所定の実施形態では、タンパク質は、既知のタンパク質、例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質、産業用酵素、またはその部分のアミノ酸配列に少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含んでなる。場合により、組成物は、薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる。
【0126】
核酸およびポリペプチド配列ならびに変異体
上記および下記において説明するように、本発明は、例えば、O−tRNAおよびO−RSをコードする核酸ポリヌクレオチド配列、ならびにポリペプチドアミノ酸配列、例えば、O−RS、ならびに例えば、前記配列を含んでなる組成物、システムおよび方法を提供する。前記配列、例えば、O−tRNAおよびO−RSアミノ酸ならびにヌクレオチド配列の例は、本明細書において開示されている(表1、例えば、配列番号1〜3を参照のこと)。しかし、当業者であれば、本発明が、例えば、実施例および配列表におけるような本明細書において開示された該配列に限定されないことを理解するであろう。当業者であれば、本発明はまた、例えば、本明細書に記載の機能を伴う、例えば、O−tRNAまたはO−RSをコードする多くのおよび関連のない配列を提供することを理解するであろう。
【0127】
本発明は、ポリペプチド(O−RS)およびポリヌクレオチド、例えば、O−tRNA、O−RSをコードするポリヌクレオチドまたはその部分、アミノアシルtRNAシンテターゼクローンを単離するために使用されるオリゴヌクレオチドなどを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを伴う本発明の目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする該ポリヌクレオチドを含む。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;そのポリヌクレオチド配列に相補的であるかまたはコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドはまた、配列番号1を含んでなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドはまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。同様に、核酸の実質的に全長にわたって、高度にストリンジェントな条件下で上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズする(かつ天然のポリヌクレオチド以外である)人工核酸は、本発明のポリヌクレオチドである。1つの実施形態では、組成物は、本発明のポリペプチドおよび賦形剤(例えば、緩衝液、水、薬学的に許容可能な賦形剤など)を含む。本発明はまた、本発明のポリペプチドと特異的に免疫反応する抗体または抗血清を提供する。人工ポリヌクレオチドは、人為的であり、天然に存在しないポリヌクレオチドである。
【0128】
本発明のポリヌクレオチドはまた、天然に存在するtRNAのポリヌクレオチドに、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一である(但し、天然に存在するtRNA以外である)人工ポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドはまた、天然に存在するtRNAのポリヌクレオチドに、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくはそれ以上同一である人工ポリヌクレオチドを含む。
【0129】
所定の実施形態では、ベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなど)は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。1つの実施形態では、ベクターは発現ベクターである。別の実施形態では、発現ベクターは、本発明の1つもしくはそれ以上のポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターを含む。別の実施形態では、細胞は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを含んでなる。
【0130】
当業者であれば、開示された配列の多くの変異体が本発明に含まれることを理解するであろう。例えば、機能的に同一な配列を生じる開示された配列の保存的変形は、本発明に含まれる。核酸ポリヌクレオチド配列の変異体であって、少なくとも1つの開示された配列にハイブリダイズする上記変異体は、本発明に含まれると考えられる。例えば、標準的な配列比較技術によって決定されるような本明細書において開示される配列の独特なサブ配列もまた、本発明に含まれる。
【0131】
保存的変形
遺伝子暗号の縮重のため、「サイレント置換」(即ち、コードされるポリペプチドの変更を生じない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードするすべての核酸配列に包含される特徴である。同様に、アミノ酸配列の1個または数個のアミノ酸が高度に類似の特性を伴う異なるアミノ酸で置換される「保存的アミノ酸置換」もまた、開示された構築物に高度に類似であるとして容易に同定される。開示された各配列のそのような保存的変形は、本発明の特徴である。
【0132】
特定の核酸配列の「保存的変形」は、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする該核酸を指し、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一な配列を指す。当業者であれば、コードされた配列における単一のアミノ酸またはアミノ酸の小さな百分率(典型的に、5%未満、より典型的には、4%、2%もしくは1%未満)を変更、付加または欠失する個々の置換、欠失または付加は、「保存的に修飾された変形」であって、ここで、変異はアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換を生じることを認識するであろう。従って、本発明の列挙されたポリペプチド配列の「保存的変形」は、同じ保存的置換グループの保存的酸化還元機能性アミノ酸によるポリペプチド配列のアミノ酸の小さな百分率、典型的に、5%未満、より典型的には2%もしくは1%未満の置換を含む。最終的に、非機能的配列の付加のような核酸分子のコードされる活性を変更しない配列の付加は、基本的な核酸の保存的変形である。
【0133】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該分野において周知であり、ここで、1つのアミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、芳香族側鎖もしくは正に荷電した側鎖)を有する別のアミノ酸残基に代わって置換され、従って、ポリペプチド分子の機能的特性を実質的に変更しない。以下は、類似の化学的特性の天然アミノ酸を含有する例示的群について説明しており、ここで、群内の置換基が「保存的置換」である。
【0134】
【表1】

【0135】
核酸ハイブリダイゼーション
比較ハイブリダイゼーションを使用して、本発明の核酸の保存的変形を含む配列番号2のような本発明の核酸を同定することができ、この比較ハイブリダイゼーション方法は本発明の核酸を区別する好適な方法である。さらに、高(high)、超高(ultra−high)および超超高(ultra−ultra high)ストリンジェンシー条件下で、配列番号2で表される核酸にハイブリダイズする標的核酸は本発明の特徴である。そのような核酸の例は、所定の核酸配列と比較して、1個もしくは数個のサイレントまたは保存的核酸置換基を伴う核酸を含む。
【0136】
試験核酸が、完全一致の相補的標的に対する場合の少なくとも1/2倍良好に、即ち、完全一致のプローブが、不一致の標的核酸のいずれかに対するハイブリダイゼーションについて観察されるシグナル対ノイズ比の少なくとも約5×〜10×の高さであるシグナル対ノイズ比で完全一致の相補的標的に結合する条件下における標的へのプローブのハイブリダイゼーションの少なくとも1/2の高さでのシグナル対ノイズ比でハイブリダイズする場合、該試験核酸は、プローブ核酸に特異的にハイブリダイズすると言われる。
【0137】
核酸が典型的に溶液中で会合する場合、核酸は「ハイブリダイズ」する。核酸は、水素結合、溶媒排除、塩基スタッキングなどのような様々な良好に特徴付けられた物理化学的力により、ハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な指針については、ティッセン(Tijssen)(1993年)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、第2章、パートI、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」(エルゼビア、N.Y.(Elsevier,New York))、ならびに、アウスベル(Ausubel)、上掲において見出される。ヘイムズ(Hames)およびヒギンス(Higgins)(1995年)Gene Probes 1、IRL Press at Oxford University Press、オックスフォード、英国、(ヘイムズ(Hames)およびヒギンス(Higgins)1)ならびにヘイムズ(Hames)およびヒギンス(Higgins)(1995年)Gene Probes 2、IRL Press at Oxford University Press、オックスフォード、英国(ヘイムズ(Hames)およびヒギンス(Higgins)2)は、オリゴヌクレオチドを含むDNAおよびRNAの合成、標識化、検出および定量化に関する詳細について提供する。
【0138】
サザンまたはノーザンブロットにおけるフィルター上の100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃で、1mgのヘパリンを伴う50%ホルマリンであり、ハイブリダイゼーションは1晩行われる。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2×SSC洗浄である(SSC緩衝液に関する説明については、サンブルック(Sambrook)、上掲を参照のこと)。しばしば、高ストリンジェンシー洗浄は、バックグランドプローブのシグナルを取り除くために、低ストリンジェンシー洗浄によって置き換えられる。例示的な低ストリンジェンシー洗浄は、40℃で15分間の2×SSCである。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて関連のないプローブについて観察されるシグナル対ノイズ比の5×(もしくはそれ以上)高いシグナル対ノイズ比であれば、特異的ハイブリダイゼーションの検出であることが示される。
【0139】
サザンおよびノーザンハイブリダイゼーションのような核酸ハイブリダイゼーション実験に関する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、異なる環境パラメータ下で異なる。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な指針は、ティッセン(Tijssen)(1993年)、上掲ならびにヘイムズ(Hames)およびヒギンス(Higgins)1および2において見出される。ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、任意の試験核酸について、経験的に容易に決定することができる。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を決定することにおいては、基準の選択された組が一致するまで、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、(例えば、ハイブリダイゼーションあるいは洗浄において、温度を上昇すること、塩濃度を減少すること、界面活性剤の濃度を増加することおよび/またはホルマリンのような有機溶媒の濃度を増加することによって)緩徐に増加される。例えば、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件では、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、プローブが、不一致の標的に対するプローブのハイブリダイゼーションについて観察されるシグナル対ノイズ比の少なくとも5×であるシグナル対ノイズ比で、完全一致の相補的標的に結合するまで、緩徐に増加される。
【0140】
「極めてストリンジェントな」条件は、特定のプローブの融点(T)に等しくなるように選択される。Tは、(規定されたイオン強度およびpH下で)試験配列の50%が完全一致のプローブにハイブリダイズする温度である。本発明の目的のために、一般に、「高度にストリンジェントな」ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特異的配列に対するTより約5℃低くあるように選択される。
【0141】
「超高ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、完全一致の相補的標的核酸に対するプローブの結合に対するシグナル対ノイズ比が不一致の標的核酸のいずれかに対するハイブリダイゼーションについて観察されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10×の高さであるまで、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよび洗浄条件が増加される条件である。完全一致の相補的標的核酸の少なくとも1/2のシグナル対ノイズ比で、そのような条件下でプローブにハイブリダイズする標的核酸は、超高ストリンジェンシー条件下でプローブに結合すると言われる。
【0142】
同様に、さらにより高いレベルのストリンジェンシーは、関連ハイブリダイゼーションアッセイのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を緩徐に増加することによって、決定することができる。例えば、完全一致の相補的標的核酸に対するプローブの結合に対するシグナル対ノイズ比が不一致の標的核酸のいずれかに対するハイブリダイゼーションについて観察されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10×、20×、50×、100×、または500×もしくはそれ以上高くなるまで、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよび洗浄条件が増加されるストリンジェンシー。完全一致の相補的標的核酸の少なくとも1/2のシグナル対ノイズ比で、そのような条件下でプローブにハイブリダイズする標的核酸は、超超高ストリンジェンシー条件下でプローブに結合すると言われる。
【0143】
ストリンジェントな条件下で相互にハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。このことは、例えば、核酸のコピーが、遺伝子暗号によって可能になる最大コドン縮重を使用して作製される場合に生じる。
【0144】
独特なサブ配列
1つの態様では、本発明は、本明細書において開示されるO−tRNAおよびO−RS配列から選択される核酸において独特なサブ配列を含んでなる核酸を提供する。独特なサブ配列は、任意の既知のO−tRNAまたはO−RS核酸配列に対応する核酸と比較して独特である。アラインメントは、例えば、デフォルトパラメータに設定されたBLASTを使用して、実施することができる。任意の独特なサブ配列は、例えば、本発明の核酸を同定するためのプローブとして有用である。
【0145】
同様に、本発明は、本明細書において開示されるO−RSの配列から選択されるポリペプチドにおいて独特なサブ配列を含んでなるポリペプチドを含む。ここで、独特なサブ配列は、任意の既知のポリペプチド配列に対応するポリペプチドと比較して独特である。
【0146】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、O−RSの配列から選択されるポリペプチドにおいて独特なサブ配列をコードする独特なコーディングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする標的核酸を提供し、ここで、独特なサブ配列は、コントロールポリペプチド(例えば、変異によって、本発明のシンテターゼが誘導される親配列)のいずれかに対応するポリペプチドと比較して独特である。独特な配列は、上記のようにして決定される。
【0147】
配列の比較、同定、および相同性
2つもしくはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列に関する用語「同一」または「同一性」パーセントは、同じであるか、あるいは下記の配列比較アルゴリズムのうちの1つ(もしくは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)を使用するかまたは目視検査によって測定されるように、最大の対応について比較され、整列される場合、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定された百分率を有する2つもしくはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。
【0148】
2つの核酸またはポリペプチド(例えば、O−tRNAもしくはO−RSをコードするDNA、またはO−RSのアミノ酸配列)に関する語句「実質的に同一な」は、配列比較アルゴリズムを使用するかまたは目視検査によって測定されるように、最大の対応について比較され、整列される場合、少なくとも約60%、約80%、約90〜95%、約98%、約99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つもしくはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。そのような「実質的に同一な」配列は、典型的に、実際の先祖を参照せずに「相同」であるとみなされる。好ましくは、「実質的同一性」は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、より好ましくは、少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は、少なくとも約150残基にわたって、または比較しようとする2つの配列の全長にわたって実質的に同一である。
【0149】
タンパク質および/またはタンパク質配列は、それらが共通の先祖タンパク質あるいはタンパク質配列から(天然もしくは人工的に)誘導される場合、「相同」である。同様に、核酸および/または核酸配列は、共通の先祖の核酸あるいは核酸配列から(天然もしくは人工的に)誘導される場合、相同である。例えば、任意の天然に存在する核酸を、任意の利用可能な変異方法によって修飾し、1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを含むようにすることができる。発現される場合、この変異された核酸は、1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸、例えば、非天然アミノ酸を含んでなるポリペプチドをコードする。変異プロセスは、もちろん、1つもしくはそれ以上の標準的なコドンをさらに変更することができ、それによって、得られる変異タンパク質においても1つもしくはそれ以上の標準的なアミノ酸が変化する。相同性は、2つもしくはそれ以上の核酸またはタンパク質(あるいはその配列)間の配列類似性から一般的に推論される。相同性を確立するのに有用である配列間の類似性の正確な百分率は、問題の核酸およびタンパク質によって変動するが、相同性を確立ためには、25%もの低い配列類似性が日常的に使用される。より高いレベルの配列類似性、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%もしくはそれ以上を使用しても、相同性を確立することができる。配列類似性を百分率を決定するための方法(例えば、デフォルトパラメータを使用するBLASTPおよびBLASTN)については、本明細書において記載されており、一般に利用可能である。
【0150】
配列比較および相同性決定については、典型的に、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列は、コンピュータに入力され、必要であればサブ配列候補が設計され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが標示される。次いで、配列比較アルゴリズムは、標示されたプログラムパラメータに基づく参照配列に対し、試験配列について、配列同一性パーセントを算出する。
【0151】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman)、Adv.Appl.Math.2:482(1981年)の局所相同アルゴリズムによって、ニードルマン(Needleman)およびウンシュ(Wunsch)、J.Mol.Biol.48:443(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、ピアソン(Pearson)およびリプマン(Lipman)、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988年)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer GroupにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、575 Science Dr.、マディソン、ウィスコンシン州)のコンピュータ化された実行によって、または目視検査(一般に、アウスベル(Ausubel)ら、下記を参照のこと)によって行うことができる。
【0152】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに適切であるアルゴリズムの1つの例は、アウスベル(Altschul)ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990年)に記載のBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して、公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列において同じ長さの単語で整列する場合、いくつかのポジティブに評価された閾値スコアTに一致するかまたは満足する問い合わせ配列において長さWの短い単語を同定することによって、高スコア配列対(HSP)を最初に同定することに関与する。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(アルトシュール(Altschul)ら、上掲)。これらの初期隣接ワードのヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして作用する。次いで、ワードのヒットは、累積アラインメントスコアを増加し得る限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列のために、パラメータM(一致する残基の対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(一致する残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して、算出する。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを使用して、累積スコアを算出する。各方向におけるワードのヒットの延長は、次の場合停止される:累積アラインメントスコアが、その最大限に達成された値から量Xだけ低下する場合;1つもしくはそれ以上のネガティブスコアリング残基アラインメントの蓄積のため累積スコアが0もしくはそれ以下になる場合;またはいずれかの配列の末端に達する場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(ヘニコフ(Henikoff)およびヘニコフ(Henikoff)(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915を参照のこと)。
【0153】
配列同一性パーセントを算出することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析を実施する(例えば、カーリン(Karlin)およびアルトシュール(Altschul)(1993年)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA90:5873−5787(1993年)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の表示を提供する最も小さな確率(P(N))である。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小の全確率が約0.1未満、好ましくは、約0.01未満、および最も好ましくは、約0.001未満である場合、参照配列により類似であるとみなされる。
【0154】
変異および他の分子生物学技術
本発明のならびに本発明において使用されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、分子生物学的技術を使用して、操作することができる。分子生物学的技術について説明している一般的なテキストとして、バーガー(Berger)およびキンメル(Kimmel)、Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology、第152巻、Academic Press,Inc.、San Diego、カリフォルニア州(バーガー(Berger));サンブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、2001年(「サンブルック(Sambrook)」)ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.アウスベル(F.M.Ausubel)ら、編、Current Protocols、Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons, Inc.の合弁会社、(2003年中に補充された)(「アウスベル(Ausubel)」)が挙げられる。これらのテキストは、変異、ベクター、プロモーターならびに例えば、酸化還元機能性アミノ酸(例えば、DHP)、直交性tRNA、直交性シンテターゼ、およびそれらの対を含むタンパク質の産生のためのセレクターコドンを含む遺伝子の作製に関連する他の多くの関連トピックの使用について記載している。
【0155】
例えば、tRNA分子を変異するため、tRNAのライブラリーを生成するため、シンテターゼのライブラリーを生成するため、酸化還元機能性アミノ酸をコードするセレクターコドンを目的のタンパク質またはポリペプチドに挿入するために、多様な対応の変異が本発明において使用される。それらは、部位特異的、ランダム点変異、相同組換え、DNAシャフリングまたは他の再帰的変異(recursive mutagenesis)方法、キメラ構築、ウラシル含有テンプレートを使用する変異、オリゴヌクレオチド特異的変異、ホスホロチオエート修飾DNA変異、ギャップ二重鎖DNAを使用する変異など、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。さらなる適切な方法として、ポイントミスマッチ修飾、修飾欠損宿主株を使用する変異、制限−選択および制限−精製、欠失変異、総遺伝子合成による変異、二本鎖切断修復などが挙げられる。例えば、キメラ構築物に関与する変異もまた、本発明に含まれる。1つの実施形態では、変異は、天然に存在する分子または変更もしくは変異された天然に存在する分子の既知の情報、例えば、配列、配列比較、物理的特性、結晶構造などによって誘導することができる。
【0156】
宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド、あるいは本発明のポリヌクレオチド、例えば、クローニングベクターもしくは発現ベクターあり得る本発明のベクターを含む構築物で遺伝子操作(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)される。例えば、直交性tRNA、直交性tRNAシンテターゼ、および誘導体化しようとするタンパク質のコーディング領域を、所望される宿主細胞において機能的である遺伝子発現コントロールエレメントに操作可能に連結する。典型的なベクターは、転写および翻訳ターミネーター、転写および翻訳開始配列、ならびに特定の標的核酸の発現に有用なプロモーターを含有する。ベクターは、場合により、少なくとも1つの非依存的ターミネーター配列、真核生物、もしくは原核生物、または両方(例えば、シャトルベクター)においてカセットの複製を可能にする配列ならびに原核生物および真核生物系の両方に対する選択マーカーを含有する遺伝子発現カセットを含んでなる。ベクターは、原核生物、真核生物、あるいは好ましくは両方における複製および/または組込みに適切である。ギルマン(Giliman)およびスミス(Smith)、Gene8:81(1979年);ロバーツ(Roberts)ら、Nature,328:731(1987年);シュナイダー,B.(Schneider,B.)ら、Protein Expr.Purif.6435:10(1995);アウスベル(Ausubel)、サンブルック(Sambrook)、ベーガー(Berger)(すべて上掲)を参照のこと。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、またはコンジュゲートされたポリヌクレオチドの形態であることができる。ベクターは、エレクトロポレーション(フロム(From)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA82、5824(1985年)、ウイルスベクターによる感染、小さなビーズもしくは粒子のマトリックス内、または表面上のいずれかに核酸を伴う小粒子による高速衝撃貫通(クライン(Klein)ら、Nature、327、70−73(1987))などを含む標準的な方法によって、細胞および/または微生物に導入される。
【0157】
クローニングに有用な細菌およびバクテリオファージのカタログは、例えば、ATCC、例えば、ATCCによって出版されたThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1996年)ゲルナ(Gherna)ら(編)によって、提供される。配列決定、クローニングならびに分子生物学および基礎をなす理論的考察のためのさらなる基本的な手順についてもまた、サンブルック(Sambrook)(上掲)、アウスベル(Ausubel)(上掲)、およびワトソン(Watson)ら(1992年)Recombinant DNA、第2版、Scientific American Books、ニューヨーク州において見出される。さらに、本質的に任意の核酸(および事実上任意の標識核酸、標準的または非標準的にかかわらず)は、Midland Certified Reagent Company(Midland,Tex mcrc.com)、The Great American Gene Company(Ramona、カリフォルニア州、genco.comにおいてワールドワイドウェブ上で利用可能)、ExpressGen Inc.(Chicago、イリノイ州、expressgen.comにおいてワールドワイドウェブ上で利用可能)、Operon Technologies Inc.(Alameda、カリフォルニア州)およびその他多くのような任意の様々な商業的供給源から特別にまたは標準的に注文することができる。
【0158】
操作された宿主細胞は、例えば、スクリーニング工程、プロモーターを活性化することまたは形質転換体を選択することのような活動に適切なように修飾された従来の栄養培地において培養することができる。これらの細胞は、場合により、トランスジェニック生物体へ培養することができる。例えば、細胞単離および培養(例えば、以後の核酸単離のため)のための他の有用な参考文献として、フレッシュネイ(Freshney)(1994年)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique、第3版、Wiley−Liss、ニューヨーク州および該文献に引用された参考文献;ペイネ(Payne)ら(1992年)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems、John Wiley & Sons,Inc.、New York、ニューヨーク州;ガンボルグ(Gamborg)およびフィリップス(Phillips)(編)(1995年)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual、Springer−Verlag(Berlin Heidelberg、ニューヨーク州)ならびにアトラス(Atlas)およびパークス(Parks)(編)The Handbook of Microbiological Media(1993年)CRC Press、Boca Raton、フロリダ州が挙げられる。
【0159】
目的のタンパク質およびポリペプチド
酸化還元機能性アミノ酸の1つの利点は、それらを使用して、タンパク質における電子移動プロセスを操作することができることである。他の利点として、酸化還元機能性タンパク質の発現は、研究ならびにタンパク質における電子移動経路を変更する能力を容易にし、酵素の触媒機能を変更し、小さな分子および生体分子などでタンパク質を架橋することができることが挙げられるが、これに限定されない。少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を伴う目的のタンパク質またはポリペプチドは、本発明の特徴である。本発明はまた、本発明の組成物および方法を使用して産生される少なくとも酸化還元機能性アミノ酸を伴うポリペプチドまたはタンパク質を含む。賦形剤(例えば、薬学的に許容可能な賦形剤)もまた、タンパク質と共に存在することができる。場合により、本発明のタンパク質は、翻訳後修飾を含む。
【0160】
細胞において、指定された位置で酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質を産生させる方法もまた、本発明の特徴である。例えば、方法は、適切な培地において、細胞を増殖させることであって、ここで、細胞は、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなり、タンパク質をコードする核酸を含んでなる;および酸化還元機能性アミノ酸を提供することを含み;ここで、細胞は:細胞において機能し、セレクターコドンを認識する直交性tRNA(O−tRNA);および酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)をさらに含んでなる。所定の実施形態では、O−tRNAは、同種のシンテターゼの存在下、セレクターコドンに対応し、配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該配列によってコードされるO−tRNAと比較して、少なくとも約、例えば、45%、50%、60%、75%、80%、または90%もしくはそれ以上の抑制効率を含んでなる。本方法によって産生されるタンパク質もまた本発明の特徴である。
【0161】
本発明はまた、タンパク質を含む組成物を提供し、ここで、タンパク質は、酸化還元機能性アミノ酸を含んでなる。所定の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質、診断用タンパク質、産業用酵素、またはその部分のアミノ酸配列に少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含んでなる。
【0162】
本発明の組成物および本発明の方法によって作製される組成物は、場合により、細胞に存在する。O−tRNA/O−RSの対または本発明の個々の成分を、タンパク質に組み入れられる酸化還元機能性アミノ酸を生じる宿主系の翻訳機構において、使用することができる。2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書、表題「Expanding the Eukaryotic Genetic Code」;および国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS」は、このプロセスについて説明しており、本明細書において参考として援用される。例えば、O−tRNA/O−RSの対が宿主、例えば、大腸菌(Escherichia coli)に導入される場合、対は、セレクターコドンに応答して、外部から増殖培地に添加することができるDHPのような酸化還元機能性アミノ酸、例えば、チロシンまたはフェニルアラニンアミノ酸の誘導体のような合成アミノ酸のタンパク質へのインビボ組み入れをもたらす。場合により、本発明の組成物は、インビトロ翻訳系、またはインビボ系において存在することができる。
【0163】
本発明の細胞は、多量な有用な量で非天然アミノ酸を含んでなるタンパク質を合成する能力を提供する。1つの態様では、組成物は、場合により、酸化還元機能性アミノ酸を含んでなる例えば、少なくとも10マイクログラム、少なくとも50マイクログラム、少なくとも75マイクログラム、少なくとも100マイクログラム、少なくとも200マイクログラム、少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラムもしくはそれ以上、またはインビボタンパク質産生方法(組換えタンパク質産生および精製に関する詳細は、本明細書において提供される)に達成させることができる量のタンパク質を含む。別の態様では、タンパク質は、場合により、(例えば、約1nL〜約100Lのいずれかの容積で)例えば、細胞溶解物中、緩衝液、薬学的緩衝液、あるいは他の液体懸濁物において、例えば、1リットルあたり少なくとも10マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも50マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも75マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも100マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも200マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも250マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも500マイクログラムのタンパク質、1リットルあたり少なくとも1ミリグラムのタンパク質、または少なくとも1リットルあたり10ミリグラムもしくはそれ以上のタンパク質の濃度で、組成物中に存在する。少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を含む細胞におけるタンパク質の大量産生(例えば、他の方法、例えば、インビトロ翻訳で典型的に可能な量を超える)は、本発明の特徴である。
【0164】
酸化還元機能性アミノ酸の組み入れは、例えば、タンパク質構造および/または機能の変化を調整する、例えば、サイズ、酸性度、求核性、水素結合、疎水性、プロテアーゼ標的部位のアクセス可能性(例えば、タンパク質アレイのための)部分への標的化を変更するなどのために行うことができる。酸化還元機能性アミノ酸を含むタンパク質は、増強されたまたはさらにまったく新たな触媒もしくは物理特性を有することができる。例えば、以下の特性が、場合により、酸化還元機能性アミノ酸のタンパク質の封入によって修飾される:毒性、生体分布、構造特性、分光特性、化学および/または物理特性、触媒能、半減期(例えば、血清中半減期)、(例えば、共有もしくは非共有的に)他の分子と反応する能力など。少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を含むタンパク質を含む組成物は、例えば、新規の治療薬、診断薬、触媒酵素、産業用酵素、結合性タンパク質(例えば、抗体)、ならびに例えば、タンパク質構造および機能の研究に有用である。例えば、ドアティー(Dougherty)、(2000年)Unnatural Amino Acids as Probes of Protein Structure and Function、Current Opinion in Chemical Biology、4:645−652を参照のこと。
【0165】
本発明の1つの態様では、組成物は、少なくとも1、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10もしくはそれ以上の非天然アミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸および/または他の非天然アミノ酸を伴う少なくとも1つタンパク質を含む。非天然アミノ酸は、同じであるかまたは異なることができ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10もしくはそれ以上の非天然アミノ酸を含んでなるタンパク質において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10もしくはそれ以上の部位が存在し得る。別の態様では、組成物は、少なくとも1つを伴うタンパク質を含むが、タンパク質に存在する特定のアミノ酸のうち全体未満が酸化還元機能性アミノ酸で置換される。1を超える非天然アミノ酸を伴う所定のタンパク質では、非天然アミノ酸は、同一であるかまたは異なることができる(例えば、タンパク質は、2もしくはそれ以上の異なるタイプの非天然アミノ酸を含みことができるか、または2つの同じ非天然アミノ酸を含むことができる)。2を超える非天然アミノ酸を伴う所定のタンパク質では、非天然アミノ酸は、同じであるか、異なるか、または少なくとも1つの異なる非天然アミノ酸を伴う同じ種類の複数の非天然アミノ酸の組み合わせであることができる。
【0166】
酸化還元機能性アミノ酸(および例えば、1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを含む任意の対応するコーディング核酸)を含む本質的に任意のタンパク質(またはその部分)は、本明細書に記載の組成物および方法を使用して、産生させることができる。数十万の既知のタンパク質(このうちのいくつかは、例えば、関連の翻訳系において1つもしくはそれ以上の適切なセレクターコドンを含むように任意の利用可能な変異方法を調整することによって、1つもしくはそれ以上の非天然アミノ酸を含むように修飾させることができる)を同定することは試みられていない。既知のタンパク質の共通配列のレパートリーとして、GenBank、EMBL、DDBJおよびNCBIが挙げられる。他のレパートリーもまた、インターネットを検索することによって容易に同定することができる。
【0167】
典型的に、タンパク質は、任意の利用可能なタンパク質(例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質、産業用酵素、またはその部分など)に、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%もしくはそれ以上同一であり、それらは、1つもしくはそれ以上の非天然アミノ酸を含んでなる。1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸を含んでなるように修飾することができる治療用、診断用、および他のタンパク質の例は、2004年4月16日に出願された国際出願番号PCT/US2004/011786号明細書、表題「Expanding the Eukaryotic Genetic Code」;および国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS」において見出すことができるが、これらに限定されない。1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸を含んでなるように修飾することができる治療用、診断用、および他のタンパク質の例として、例えば、α−1アンチトリプシン、アンギオスタチン、抗溶血因子、抗体(抗体に関するさらなる詳細については、下記に見出される)、アポリポタンパク質、アポタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン(例えば、T39765、NAP−2、ENA−78、Gro−a、Gro−b、Gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG)、カルシトニン、CCケモカイン(例えば、単球遊走因子−1、単球遊走因子−2、単球遊走因子−3、単球炎症性タンパク質−1α、単球炎症性タンパク質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262)、CD40リガンド、C−kitリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体インヒビター、補体受容体1、サイトカイン(例えば、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα/MGSA、GROβ、GROγ、MIP−1α、MIP−1δ、MCP−1)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(「EPO」)、剥脱性毒素AおよびB、因子IX、因子VII、因子VIII、因子X、線維芽細胞増殖因子(FGF)、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、グルコセレブロシダーゼ、ドナドトロピン、増殖因子、ヘッジホッグタンパク質(例えば、ソニック、インディアン、デザート)、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、インターフェロン(例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12など)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球阻害因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成タンパク質、甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱性毒素A、B、およびC、レラキシン、レニン、SCF、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体(IL−1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15)、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、超抗原、即ち、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン(SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、毒素性ショック症候群毒素(TSST−1)、サイモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、血管内皮増殖因子(VEGEF)、ウロキナーゼならびにその他多数が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
本明細書において記載の酸化還元機能性アミノ酸のインビボ組み入れのための組成物および方法を使用して作製することができるタンパク質の1つのクラスは、転写調節因子またはその一部を含む。転写調節因子の例として細胞の増殖、分化、調節などを調節する遺伝子および転写調節タンパク質が挙げられる。転写調節因子は、原核生物、ウイルス、ならびに真菌、植物、酵母、昆虫、および哺乳動物を含む動物を含む真核生物において見出され、広範な治療標的を提供する。発現および転写活性化因子は、多くの機構、例えば、受容体に結合し、シグナル伝達カスケードを刺激し、転写因子の発現を調節し、プロモーターおよびエンハンサーに結合し、プロモーターおよびエンハンサーに結合するタンパク質に結合し、DNAを巻き戻し、プレ−mRNAをスプライスし、RNAをポリアデニル化し、RNAを分解することによって、転写を調節することが理解される。
【0169】
本発明のタンパク質の1つのクラス(例えば、1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質)として、発現活性化因子、例えば、サイトカイン、炎症性分子、増殖因子、それらの受容体、および癌遺伝子産物、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−8など)、インターフェロン、FGF、IGF−I、IGF−II、FGF、PDGF、TNF、TGF−α、TGF−β、EGF、KGF、SCF/c−Kit、CD40L/CD40、VLA−4/VCAM−1、ICAM−1/LFA−1、ならびにヒアルリン/CD44;シグナル伝達分子および対応する癌遺伝子産物、例えば、Mos、Ras、Raf、ならびにMet;ならびに転写活性化因子および抑制因子、例えば、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、およびステロイドホルモン受容体、例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アルドステロン、LDL受容体リガンドおよびコルチコステロンに対する受容体が挙げられる。
【0170】
少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を伴う酵素(例えば、産業用酵素)またはその部分もまた、本発明によって提供される。酵素の例として、例えば、アミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、デオキシゲナーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ(例えば、p450)、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、スブチリシン、トランスアミナーゼ、およびヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
これらのタンパク質の多くは、市販されており(例えば、Sigma BioSciences 2002年カタログおよび価格表を参照のこと)、対応するタンパク質配列および遺伝子ならびに典型的にその多くの変異体は、周知であり得る(例えば、GenBankを参照のこと)。それらのいずれも、本発明に従う1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸の挿入によって修飾し、例えば、1つもしくはそれ以上の目的の治療、診断または酵素特性についてタンパク質を変更することができる。治療関連特性の例として、血清中半減期、保存半減期、安定性、免疫原性、治療活性、検出可能性(例えば、非天然アミノ酸、例えば、酸化還元機能性アミノ酸におけるレポーター基(例えば、標識もしくは標識結合部位)の封入による)、LD50の減少または他の副作用、胃管系を介して身体に進入する能力(例えば、経口アベイラビリティ)などが挙げられる。診断特性の例として、保存半減期、安定性、診断活性、検出可能性などが挙げられる。関連酵素特性の例として、保存半減期、安定性、酵素活性、産生能などが挙げられる。
【0172】
他の様々なタンパク質もまた、本発明の1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸を含むために、修飾することができる。例えば、本発明は、1つもしくはそれ以上のワクチンタンパク質における1つもしくはそれ以上の天然アミノ酸を、例えば、感染性真菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)種;細菌、特に、病原性細菌のモデルとして役割を果たす大腸菌(E.coli)、ならびにブドウ球菌(Staphylococci)(例えば、アウレウス(aureus))、または連鎖球菌(Streptococci)(例えば、ニューモニエ(pneumoniae))のような医学的に重要な細菌;胞子虫(sporozoa)(例えば、マラリア原虫(Plasmodia))、根足虫(rhizopods)(例えば、エントアメーバ(Entamoeba))および鞭毛虫(トリパノソーマ(trypanosoma)、リ−シュマニア(Leishmania)、トリコモナス(Trichomonas)、ジアルジア(Giardia)など)のような原生動物;(+)RNAウイルス(例として、ポックスウイルス(Poxviruses)、例えば、ワクシニア(vaccinia);ピコルナウイルス(Picornaviruses)、例えば、ポリオ(polio);トガウイルス(Togaviruses)、例えば、風疹(rubella);フラビウイルス(Flaviviruses)、例えば、HCV;およびコロナウイルス(Coronaviruses)が挙げられる)、(−)RNAウイルス(例えば、ラブドウイルス(Rhabdoviruses)、例えば、VSV;パラミクソウイルス(Paramyxovimses)、例えば、RSV;オルトミクスウイルス(Orthomyxovimses)、例えば、インフルエンザ;ブニアウイルス(Bunyaviruses);およびアレナウイルス(Arenaviruses))、dsDNAウイルス(例えば、レオウイルス(Reoviruses))、RNAからDNAへのウイルス、即ち、レトロウイルス(Retroviruses)、例えば、HIVおよびHTLV、ならびにB型肝炎のような所定のDNAからRNAへのウイルスのようなウイルス由来のタンパク質における酸化還元機能性アミノ酸で置換することを含むことができる。
【0173】
昆虫耐性タンパク質(例えば、Cryタンパク質)、デンプンおよび脂質産生酵素、植物および昆虫毒素、毒素耐性タンパク質、マイコトキシン(Mycotoxin)解毒タンパク質、植物成長酵素(例えば、リブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、「ルビスコ(RUBISCO)」)、リポオキシゲナーゼ(LOX)、およびホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシラーゼのような農業関連タンパク質もまた、酸化還元機能性アミノ酸修飾に適切な標的である。
【0174】
所定の実施形態では、本発明の方法および/または組成物における目的のタンパク質もしくはポリペプチド(またはその部分)は、核酸によってコードされる。典型的に、核酸は、少なくとも1個のセレクターコドン、少なくとも2個のセレクターコドン、少なくとも3個のセレクターコドン、少なくとも4個のセレクターコドン、少なくとも5個のセレクターコドン、少なくとも6個のセレクターコドン、少なくとも7個のセレクターコドン、少なくとも8個のセレクターコドン、少なくとも9個のセレクターコドン、10個もしくはそれ以上のセレクターコドンを含んでなる。
【0175】
目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を、当業者に周知であり、本明細書の「変異および他の分子生物学技術」に記載の方法を使用して変異し、酸化還元機能性アミノ酸の組み入れのために、例えば、1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを含めるようにすることができる。例えば、目的のタンパク質のための核酸を変異して、1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを含み、1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸の挿入を提供するようにする。本発明は、そのような任意の変異体、例えば、変異、例えば、少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を含む任意のタンパク質のバージョンを含む。同様に、本発明はまた、対応する核酸、即ち、1つもしくはそれ以上の酸化還元機能性アミノ酸をコードする1つもしくはそれ以上のセレクターコドンを伴う任意の核酸を含む。
【0176】
酸化還元機能性アミノ酸を含むタンパク質を作製するために、宿主細胞および直交性tRNA/RS対を介して酸化還元機能性アミノ酸のインビボ組み入れに適応される生物体を使用することができる。宿主細胞は、直交性tRNAを発現する1つもしくはそれ以上のベクター、直交性tRNAシンテターゼ、および誘導体化しようとするタンパク質をコードするベクターで遺伝子操作(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)される。これらの成分のそれぞれは、同じベクター上にあることができるか、またはそれぞれが個別のベクター上にあることができるか、または2つの成分が1つのベクター上にあり、第3の成分が第2のベクター上にあることができる。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、またはコンジュゲートされたポリヌクレオチドの形態であることができる。
【0177】
免疫活性によるポリペプチドの規定
本発明のポリペプチドは、様々な新たなポリペプチド配列(例えば、ここで、翻訳系において合成されるタンパク質の場合、または例えば、新規のシンテターゼ、標準的なアミノ酸の新規な配列の場合に、酸化還元機能性アミノ酸を含んでなる)を提供するため、ポリペプチドはまた、例えば、免疫学的アッセイにおいて認識することができる新たな構造的特徴を提供する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗血清ならびにそのような抗血清により結合されるポリペプチドの作製は、本発明の特徴である。本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチド、または 分析物(抗原)に特異的に結合し、認識するそのフラグメントを含むが、これらに限定されない。例として、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、および一本鎖抗体などが挙げられる。Fabフラグメントおよびファージディスプレイを含む発現ライブラリーによって産生されるフラグメントを含む免疫グロブリンのフラグメントもまた、本明細書において使用する用語「抗体」に含まれる。抗体の構造および用語については、例えば、ポール(Paul)、Fundamental Immunology、第4版、1999年、Raven Press、ニューヨーク州を参照のこと。
【0178】
イムノアッセイにおいて使用するための抗血清を産生させるために、本明細書に記載のように、1つもしくはそれ以上の免疫原性ポリペプチドを産生させ、精製した。例えば、組換えタンパク質は、組換え細胞において産生させることができる。(マウスの事実上の遺伝子同一性により、結果はより良好に再現可能であるため、本アッセイにおいて使用される)近交系マウスを、フロイントのアジュバントのような標準的なアジュバントと組み合わせた免疫原性タンパク質、および標準的なマウス免疫プロトコルにより免疫する(抗体作製、イムノアッセイ形式および特異的免疫活性を決定するために使用することができる条件に関する標準的な説明については、例えば、ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)(1988)Antibodies,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、ニューヨーク州を参照のこと)。タンパク質、抗体、抗血清などに関するさらなる詳細については、米国特許出願第60/479,931号明細書、同第60/463,869号明細書、および同第60/496,548号明細書、表題「Expanding the Eukaryotic Genetic Code」;国際公開第2002/085923号パンフレット、表題「IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS」;2003年1月16日に出願された特許出願、表題「Glycoprotein synthesis」、米国特許出願第60/441,450号明細書;ならびに2002年12月22に出願された特許出願、表題「Protein Arrays」、代理人整理番号P1001US00において見出すことができる。
【0179】
O−tRNAおよびO−RSならびにO−tRNA/O−RSの対の使用
本発明の組成物および本発明の方法によって作製される組成物は、場合により、細胞に存在する。O−tRNA/O−RSの対または本発明の個々の成分を、タンパク質に組み入れられる酸化還元機能性アミノ酸を生じる宿主系の翻訳機構において、使用することができる。対応する特許出願「In vivo Incorporation of Unnatural Amino Acids」、国際公開第2002/085923号パンフレット、シュルツ(Schultz)らは、このプロセスについて説明しており、本明細書において参考として援用される。例えば、O−tRNA/O−RSの対が宿主、例えば、大腸菌(Escherichia coli)に導入される場合、対は、セレクターコドン、例えば、アンバーナンセンスコドンに応答して、外部から増殖培地に添加することができる酸化還元機能性アミノ酸のタンパク質、例えば、ミオグロビンまたは治療用タンパク質へのインビボ組み入れをもたらす。場合により、本発明の組成物は、インビトロ翻訳系、またはインビボ系において存在することができる。酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質は、治療用タンパク質として使用することができ、酵素の触媒機能および/またはタンパク質の電子移動経路を変更する、小さな分子および/または生体分子でタンパク質を架橋する、タンパク質の構造、他のタンパク質との相互作用、タンパク質における電子移動プロセスなどに関する研究を容易にするために使用することができる。
【0180】
キット
キットもまた、本発明の特徴である。例えば、細胞において、少なくとも1つの酸化還元機能性アミノ酸を含んでなるタンパク質を産生させるためのキットが提供され、ここで、キットは、O−tRNAをコードするポリヌクレオチド配列、および/またはO−tRNA、ならびに/あるいはO−RSをコードするポリヌクレオチド配列、および/またはO−RSを含有する容器を含む。1つの実施形態では、キットは、酸化還元機能性アミノ酸をさらに含む。別の実施形態では、キットは、タンパク質を産生させるための指示物質をさらに含んでなる。
【実施例1】
【0181】
以下の実施例は、例示のために付与されるものであって、特許請求の範囲を制限するものではない。当業者であれば、特許請求の範囲から逸脱することなく、あまり重要ではないパラメータを変更することができることを理解するであろう。
【0182】
実施例1:酸化還元機能性アミノ酸のタンパク質への部位特異的組み入れ
最近、大腸菌(E.coli)および酵母において、直交性tRNA−アミノアシルtRNAシンテターゼの対を使用して、多くの非天然アミノ酸をタンパク質に選択的に組み入れることができることが報告されている(ワング(Wang)ら(2001年)Science292:498−500;チャン(Zhang)ら(2003年)Biochemistry42:6735−6746;チン(Chin)ら(2003)Science301:964−967)。これらの直交性の対は、宿主細胞の翻訳機構の内因性成分とは交差反応しないが、所望される非天然アミノ酸を認識し、アンバーナンセンスコドン、TAGに応答して、タンパク質に組み入れる(ワング(Wang)ら(2000年)J.Am.Chem.Soc.、122:5010−5011;ワング(Wang)およびシュルツ(Schultz)(2001年)Chem.Biol.、8:883−890)。大腸菌(E.coli)において3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP;図1における化合物1を参照のこと)を遺伝的にコードさせるために、直交性メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)tRNA−シンテターゼ(MjTyrRS;図5および表1において提供される、およびまた、配列番号4においてアミノ酸配列が提供され、配列番号5においてヌクレオチド配列が提供される)の特異性を、シンテターゼがDHPで変異チロシンtRNAアンバーサプレッサー(mutRNACUATyr)をアミノアシル化し、一般の20種のアミノ酸のいずれでもアミノアシル化しないように変更した。これらの変異シンテターゼを、2種の変異MjTyrRSライブラリーから選択した(ワング(Wang)ら(2001)Science292:498−500;チャン(Zhang)ら(2002)Angew.Chem.Int.Ed.、41:2840−2842)。バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の相同性TyrRSの結晶構造の解析に基づく第1のライブラリー(ブリック(Brick)ら(1989)J.Mol.Biol.、208:83−98)では、チロシンのアリール環のパラ位の6.5Å内に存在するMjTyrRSの活性部位の5残基(Tyr32、Glu107、Asp158、Ile159、およびLeu162)を無作為に変異した(プラスミドpBK−lib上でコードされる)。第2のライブラリーでは、チロシンアリール環のメタ位の6.9Å内の6塩基(Tyr32、Ala67、His70、Gln155、Asp158、Ala167)を無作為に変異した(プラスミドpBK−lib−m上でコードされる)。
【0183】
TyrRSが特異的にDHPを組み入れ、他のいずれの天然アミノ酸も組み入れないようにTyrRSの特異性を変更するために、いくらかのラウンドのポジティブおよびネガティブ選択からなる遺伝子選択を適用した。ポジティブ選択では、変異TyrRSの両方のライブラリーを、クロラムフェニコール(chloroamphenicol)アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子(pRep(2)/YC)における非必須位置(Asp112)に導入されたアンバーコドンの抑制に基づく選択スキームに供した。変異TyrRSライブラリー、mutRNACUATyr遺伝子、アンバー変異CAT遺伝子で形質転換した細胞を、DHPの酸化を回避するための嫌気条件下、1mM DHPおよび70μg/mlクロラムフェニコールを含有する最小培地において増殖させた。生存細胞は、DHPまたは内因性アミノ酸のいずれかでmutRNACUATyrをアミノアシル化する変異TyrRSを含有する。次に、ネガティブ選択を適用して、毒性のバルナーゼ遺伝子(pLWJ17B3)の非必須位置(Gln2、Asp44、Gly55)に導入した3個のアンバーコドンの抑制に基づく天然アミノ酸をチャージする変異TyrRSを取り出した。先のポジティブ選択由来の変異TyrRS、mutRNACUATyr、およびアンバー変異バルナーゼ遺伝子を所有する細胞を、DHPの非存在下、ルーリア−ベルタニ(Luria−Bertani)(LB)培地において増殖させた。これらの条件下、内因性アミノ酸に対する特異性を伴う変異TyrRSをコードする細胞は、全長バルナーゼを産生し、死滅する。DHPに対する特異性を伴う変異TyrRSを含有するそれらの細胞のみが生存することができる。2ラウンドのネガティブ選択と交代して行われた3ラウンドのポジティブ選択後、高濃度のクロラムフェニコール(chloroamphenicol)(90mg/L)での生存が、DHP、選択された変異TyrRS遺伝子(DHPRS)、mutRNACUATyr、およびAsp112TAG CAT遺伝子の存在に依存するクローンを展開した。しかし、DHPの非存在下では、同じ細胞が、20mg/Lクロラムフェニコール(chloroamphenicol)においてしか生存しなかった。この結果は、選択されたDHPRS酵素が、天然アミノ酸よりもDHPにより高い特異性を有することを示唆する。配列決定により、選択されたDHPRSにおいて以下の変異が示された:Tyr32→Leu、Ala67→Ser、His70→Asn、Ala167→Gln。図6および表1にDHPRSシンテターゼを示す。また、アミノ酸配列を配列番号1に提供し、ヌクレオチド配列を配列番号3に提供する。
【0184】
選択されたクローンpDHPRSを使用して、DHP組み入れの精度および効率を測定するために、本発明者らは、C末端ヘキサヒスチジンタグ変異マッコウクジラミオグロビン(Mb;チン(Chin)ら(2002年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、99:11020−11024を参照のこと)の表面暴露された第4の残基におけるアンバーコドンに応答するDHPを組み入れた。増殖培地としてGMML(ロイシンを伴うグリセロール最小培地)を使用し、タンパク質への組み入れ前のDHPの酸化を防止するための還元条件(100μMジチオスレイトール(DTT))下で、DHP(DHPMb)を含有する全長ミオグロビンを発現させた。変異タンパク質の収量は約1mg/リットルであった(同じ条件下での野生型Mb(wtMb)の収量は検出不能である)。DHPの非存在下では、全長Mbはまったく発現されず;DTTの非存在下では、ほとんどの細胞が酸化型キノンの毒性のために死滅した(図1の化合物3を参照のこと)。全長DHPMbを、コバルトIMAC樹脂(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)を使用して精製した。DHPの存在および非存在下において発現された変異タンパク質の精製されたサンプルを、銀染色、およびゲルのウエスタンブロッティングのために、SDS−PAGEゲル上に充填した。抗His6タグ抗体を使用すると、DHPRSまたはmutRNACUATyrのいずれかの非存在下では全長Mbは発現されなかった(図2Aに示す)。四重極−四重極飛行時間型(quadrupole−quadrupole time−of−flight)(QqTOF)質量分析器を具備したエレクトロスプレーイオン化(Electronspray−ionization)(ESI)を使用して、タンパク質の分子量を測定した。図2Bは、18,448.5ダルトンの質量を伴うDHPMbのESI−QqTOF質量スペクトルを示す。これは、Mbを含有するDHPに対して算出された18447.2ダルトンの質量から70p.p.m.内である(隣接するピークは、測定技術により、コントロール実験に従って、生じた酸素、または酸素およびプロトンの消失による18,432.3ダルトンの質量を示す)。
【0185】
DHPMbを含有する溶液に裸金電極を浸漬した場合、酸化型ハイドロキノンの酸化還元波を観察することができるかどうかを、サイクリックボルタンメトリーを使用して決定した。図3Aは、wtMBを含有する溶液および嫌気条件下のDHPMbの不可逆的なボルタンメトリック応答を示す(バート(Bard)およびホークナー(Faulkner)、Electrochemical Methods;John W.Wiley&Sons,Inc.:ニューヨーク州、1980年;213−248頁、429−487頁および675−698頁)。wtMbFe(III)を起源とする還元ピーク電位をE=−320mVで観察すると、変異タンパク質の還元ピーク電位は、より負電位側のE=−400mVにシフトする。このシフトは、DHPの非存在下におけるよりも相当低い電位でのFe(III)の還元を容易にし得るDHPの存在によるものである。不可逆的な観察されたボルタモグラムは、遅い電子移動速度によるものであり、これは、電子の電極への制限されたアクセス可能性から誘導されるようである。図3Bは、100μMのDHP、wtMbおよびDHPMbを含有する溶液のボルタンメトリック応答を示す。DHPの酸化を起源とする電流は、変異型Mbの存在下または遊離DHPの溶液においてのみ、それぞれE=580mVおよびE=385mVで出現する。これらの結果は、Fe(III)−ヘム基の還元電位に対するMb中DHPの存在の有意な影響が存在し、その逆もまた同様であることを明らかに示す。
【0186】
本明細書において提供される説明は、生物体、例えば、大腸菌(E.coli)において、酸化還元機能性アミノ酸、例えば、DHPを、効率的かつ選択的にタンパク質に組み入れることができることを実証する。これらのアミノ酸は、タンパク質内において電子化学的に酸化され得る。酸化還元機能性アミノ酸を部位特異的にタンパク質に組み入れる能力は、タンパク質における電子移動の研究を容易にすることができ、ならびに新規の特性を伴う酸化還元タンパク質の操作を可能にする。モデルタンパク質、例えば、Mbおよび他のタンパク質における多様な部位への酸化還元機能性アミノ酸、例えば、DHPの部位特異的組み入れを使用して、このタンパク質およびその他における電子移動経路を研究することができる(マヨ(Mayo)ら(1986年)Science233:948−952;グレイ(Gray)およびマルストーム(Malmstrom)(1989年)Biochemistry28:7499−7505)。
【0187】
実施例2:酸化還元機能性アミノ酸の組み入れのための例示的O−RSおよびO−tRNA
例示的O−tRNAは、配列番号2を含んでなる(表1を参照のこと)。O−RSの例には、配列番号1(表1を参照のこと)および図6において提供されるアミノ酸配列が含まれる。O−RSまたはその部分をコードするポリヌクレオチドの例には、配列番号1を含んでなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが含まれる。例えば、図6および配列番号3において提供されるポリヌクレオチドは、例示的O−RSをコードする。
【0188】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示目的のみであり、それに照らして行われる多様な修飾や変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。
【0189】
上記において本発明について、明確および理解を目的として若干詳細に説明してきたが、本開示を読んだ当業者にとっては、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における多様な変更を行うことができることが明らかであろう。例えば、上記のすべての技術および装置は、多様な組み合わせで使用することができる。本出願において引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、および/または他の書面は、各個々の刊行物、特許、特許出願、および/または他の書面が、あたかもすべての目的について参考として援用されることが個々示唆されているが如く、同じ程度に、すべての目的について、それらの全体が参考として援用される。
【0190】
【表2−1】

【表2−2】

【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】容易にDHP−キノン3に酸化されるDHP−セミキノンラジカル2への3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP;構造1)の酸化的生成の略図を提供する。
【図2】Mb遺伝子における4位のアンバーコドンに対する応答としてのマッコウクジラミオグロビンのDHP依存的発現の例示を提供する。図2Aは、銀染色したゲルおよびウエスタンブロットを提供する。図2BはDHPMbのESI−QqTOF質量スペクトル分析を提供する。
【図3】サイクリックボルタモグラムを提供する。図3Aは、wtMbおよびDHPMbにおけるヘム基のサイクリックボルタモグラムを提供する。図3Bは、100μM DHP、wtMbまたはDHPMbを含有する異なる溶液に対するDHPのサイクリックボルタモグラムを提供する。すべてのボルタモグラムは、0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中、アルゴン下;スキャン速度:1Vs−1対SCEで記録した。
【図4】タンパク質内における電気化学的なDHPの酸化の例示を提供する。
【図5】メタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)チロシルtRNAシンテターゼ(MjTyrRS)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【図6】次のアミノ酸変化:Tyr32→Leu、Ala67→Ser、His70→Asn、Ala167→Glnを有するメタノコッカス・ヤナスキイ(Methanococcus jannaschii)チロシルtRNAシンテターゼ(MjTyrRS)に基づく、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DHP)−tRNAシンテターゼ(DHPRS)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。変化したアミノ酸および対応する3連コドン(野生型配列に関連する)を囲み内に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含んでなる組成物であって、O−RSは酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、組成物。
【請求項2】
O−RSは配列番号1、またはその保存的変形を含んでなるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
O−RSはメタノコッカス・ヤナスキイ(Methonococcus jannaschii)から誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
細胞を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
細胞は大腸菌(E.coli)細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
翻訳系を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
翻訳系を含んでなる細胞であって、翻訳系は、
直交性tRNA(O−tRNA);
直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS);および、
酸化還元機能性アミノ酸;
を含んでなり、
O−tRNAは第1のセレクターコドンを認識し、O−RSは、第1の酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、細胞。
【請求項9】
O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
O−tRNAは配列番号2に記載のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補的ポリヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ポリヌクレオチド配列もしくは相補的ポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつO−RSは配列番号1、またはその保存的変形を含んでなるアミノ酸配列を含んでなる、請求項8に記載の細胞。
【請求項11】
細胞はさらなる異なるO−tRNA/O−RS対および非天然アミノ酸をさらに含んでなり、O−tRNAは第2のセレクターコドンを認識し、O−RSは第2の非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、請求項8に記載の細胞。
【請求項12】
細胞は非真核細胞である、請求項8に記載の細胞。
【請求項13】
非真核細胞は大腸菌(E.coli)細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸をさらに含んでなり、ポリヌクレオチドは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる、請求項8に記載の細胞。
【請求項15】
直交性tRNA(O−tRNA);
直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)であって、酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS);
酸化還元機能性アミノ酸;および、
目的のポリペプチドをコードする核酸であって、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでなる核酸、
を含んでなる、大腸菌(E.coli)細胞。
【請求項16】
O−RSは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの効率のうち少なくとも50%の効率でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する、請求項15に記載の大腸菌(E.coli)細胞。
【請求項17】
配列番号1を含んでなる人工ポリペプチド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリペプチドをコードする人工ポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリヌクレオチドを含んでなるかまたはコードするベクター。
【請求項20】
ベクターはプラスミド、コスミド、ファージ、またはウイルスを含んでなる、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
ベクターは発現ベクターである、請求項19に記載のベクター。
【請求項22】
請求項19に記載のベクターを含んでなる細胞。
【請求項23】
酸化還元アミノ酸を利用する、O−tRNAと共に使用するための直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを同定するための方法であって、該方法は、
第1の種の細胞の集団を選択に供すること;ならびに
酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する活性RSを選択し、それによって、O−tRNAと共に使用するための直交性アミノアシルtRNAシンテターゼを提供すること、
を含んでなり、
ここで、細胞はそれぞれ、
1)複数のアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)のメンバー;
2)1つもしくはそれ以上の種から誘導される直交性tRNA(O−tRNA);および
3)選択マーカーをコードし、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなるポリヌクレオチド;
を含んでなり、
ここで、複数のRSのメンバーを欠くかまたは減少した量の該メンバーを含んでなる細胞と比較して、抑制効率が増強される細胞は、O−tRNAをアミノアシル化する活性RSを含んでなる、方法。
【請求項24】
選択はポジティブ選択を含んでなり、選択マーカーはポジティブ選択マーカーを含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
複数のRSは、変異RS、第1の種以外の1つもしくはそれ以上の種から誘導されるRSまたは変異RSおよび第1の種以外の種から誘導されるRSの両方を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法によって同定される直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ。
【請求項27】
細胞において、指定された位置に酸化還元機能性アミノ酸を伴うタンパク質を産生させる方法であって、該方法は、
適切な培地において細胞を増殖させることであって、ここで、細胞は、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでなり、タンパク質をコードする核酸を含んでなること;
酸化還元機能性アミノ酸を提供すること;ならびに
少なくとも1つのセレクターコドンを伴う核酸の翻訳中にタンパク質の指定された位置に酸化還元機能性アミノ酸を組み入れ、それによって、タンパク質を産生させること、
を含んでなり、
ここで、細胞は:
細胞において機能し、セレクターコドンを認識する直交性tRNA(O−tRNA);および
酸化還元機能性アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)、
をさらに含んでなる、方法。
【請求項28】
O−RSは、配列番号1を含んでなるアミノ酸配列を含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞は非真核細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
非真核細胞は大腸菌(E.coli)細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
タンパク質を含んでなる組成物であって、タンパク質は酸化還元機能性アミノ酸を含んでなる、組成物。
【請求項32】
酸化還元機能性アミノ酸は、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(phenyalanine)(DHP)、3,4,5−トリヒドロキシ−L−フェニルアラニン、3−ニトロ−チロシン、4−ニトロ−フェニルアラニン、および3−チオール−チロシンからなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
タンパク質は、野生型の治療用タンパク質、診断用タンパク質、産業用酵素、またはその部分のアミノ酸配列に少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
組成物は薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる、請求項31に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−508034(P2007−508034A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535350(P2006−535350)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/034089
【国際公開番号】WO2005/038002
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】