説明

酸性の水溶性高分子を含む粉末洗剤粒子及びその製造方法

本発明は、水不溶性成分であるゼオライト、シリカなどが実質的に排除された粉末洗剤粒子、その製造方法、及び洗剤成分として様々な有用な物性を持つ新規高分子に関する。本発明の粉末洗剤粒子は水不溶性成分が実質的に排除されて冷水でも溶解性と洗浄力に優れるだけでなく、洗濯後に残留物が残らず、製造及び保管中のケーキング現象が低減する。また、本発明の粉末洗剤粒子は液状成分を吸着するゼオライト、シリカなどが実質的に排除されたにもかかわらず、液状の界面活性剤を多量含むことができる。さらに、本発明による新たな酸性の水溶性高分子であるアクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットを含む共重合体は様々な物性から洗剤成分として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷水への溶解性に優れ、洗濯後に残留物が残らず、ケーキング現象が改善された水溶性粉末洗剤粒子、その製造方法、及び洗剤成分として有用な新規高分子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末洗剤は、マグネシウム及びカルシウムイオンを多量含む硬水中よりも軟水中の方が、洗浄効果が良好であるため、ゼオライト(zeolite)などの硬水軟化剤を通常含んでいる。
【0003】
従来、主に使われるゼオライトなどの硬水軟化剤は、水に不溶性であってすすぎの後にも衣類に残留するだけでなく、イオン封入に比較的長時間がかかるため硬水の軟化が比較的遅れ、それ故に洗濯時残留するカルシウムイオンがアルカリビルダーなどからイオン化されて出た炭酸イオンと結合して炭酸カルシウムを形成し、該炭酸カルシウムが洗濯機内の洗濯槽、加熱装置(heating coil)及び衣類に残留する問題点がある。これを改善するために粒度を微細化したゼオライトを使用しているものの、上記のような問題点は解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゼオライト、シリカなどの水不溶性成分を使用しなくても洗浄力に優れ、冷水への溶解性が良好であって、汚染源の再付着防止及び硬水軟化作用に優れた粉末洗剤粒子及びその簡単且つ効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、粉末洗剤の製造において水不溶性成分であるゼオライト、シリカなどが実質的に存在しなくてもケーキング現象がほとんどなく、液状洗剤成分を多量含むことができる水溶性粉末洗剤粒子及びこのような粒子の製造方法を提供することを他の目的とする。
【0006】
また、本発明は、洗剤成分として金属イオンの封入、汚染源の除去、水溶解性などにおいて有用な物性を持つ新規高分子、及びこのような高分子の洗剤成分としての用途を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は酸性の水溶性高分子0.1ないし15重量部と、アルカリビルダー10ないし70重量部とを混合して中和反応させることで形成された粉末洗剤粒子を提供し;望ましくは前記酸性の水溶性高分子が、カルボキシル基含有単量体ユニット、スルホン酸基含有単量体ユニット、及びリン酸基含有単量体ユニットからなる群より選択されたいずれか1つ以上のユニットを含む共重合体である粉末洗剤粒子;より望ましくは前記酸性の水溶性高分子がカルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン酸基含有単量体ユニットを含む共重合体である粉末洗剤粒子を提供する。
【0008】
また、本発明は、(S1)酸性の水溶性高分子、最も望ましくはカルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン酸基含有単量体ユニットを含む共重合体、及びアルカリビルダーを用意するステップと、(S2)前記酸性の水溶性高分子0.1ないし15重量部をアルカリビルダー10ないし70重量部とともに混合機に投入するステップと、(S3)前記混合機に投入されたステップ(S2)の成分を均一に混合するステップと、を含む、酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとの中和反応で発生する熱を用いて乾燥することを特徴とする粉末洗剤粒子の製造方法を提供する。
【0009】
本発明による粉末洗剤粒子の製造方法を使う場合、中和した後、向流式噴霧乾燥装置、スチーム噴射ミキサーなどの複雑且つ高価である装置を使用しないか又は使用程度を減らすことができ、製造工程が非常に簡単且つ経済的である。
【0010】
本発明によれば、粉末洗剤粒子は酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとの中和反応を用いて製造される。中和反応で発生する熱を用いて乾燥させると共に、中和反応を通じて粒子内部に形成されたガスが作る孔隙によって溶解性に優れた粉末洗剤が製造される原理に基づく。
【0011】
また、本発明は金属イオンの封入効果、特にカルシウム、マグネシウムなどの金属イオンの封入効果に優れたアクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットを含む洗剤成分用新規共重合体、及びこのような共重合体を含む洗剤組成物を提供する。特に、本発明は、アクリル酸単量体ユニットと2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットとの重量比が95:5ないし80:20、より望ましくは95:5ないし90:10である新規共重合体を提供する。
【0012】
本発明は、前記新規共重合体を含む金属イオン封入剤組成物を提供し、より望ましくは前記金属イオンがカルシウムイオンであることを特徴とするカルシウムイオン封入剤組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は上記の新規共重合体を含む硬水軟化剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による化学式3の共重合体において、アクリル酸単量体ユニットと2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットとの重量比に応じたカルシウム結合能の変化を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による粉末洗剤粒子、その製造方法、及び洗剤成分として有用な新規共重合体についてより詳しく説明する。
【0016】
本発明のゼオライト、シリカなどの水不溶性成分が実質的に排除された粉末洗剤粒子は酸性の水溶性高分子を0.1ないし15重量部含む。
【0017】
なお、本明細書で使われるゼオライト、シリカなどの水不溶性成分が「実質的に排除される」または「実質的に存在しない」との意味は、粉末洗剤の製造においてゼオライト、シリカなどの水不溶性成分を全く使用しないか又は洗剤の総重量に対し10重量%以下、望ましくは5重量%以下、より望ましくは1重量%以下使用することを意味する。
【0018】
前記酸性の水溶性高分子としては、カルボキシル基含有単量体ユニット、スルホン酸基含有単量体ユニット、及びリン酸基含有単量体ユニットからなる群より選択されたいずれか1つ以上のユニットを含む単独重合体または共重合体を使用でき、前記共重合体としてはランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など多様な形態の共重合体を用いることができる。
【0019】
本発明において、前記共重合体は2種または3種の単量体が重合された二元共重合体または三元共重合体(terpolymer)を含む意味である。
【0020】
また、本発明の粉末洗剤粒子は2種以上の酸性の水溶性高分子を含むことができ、前記酸性の水溶性高分子を形成する単量体は1つの単量体にカルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基のうち2つ以上を同時に含むこともできる。
【0021】
さらに、本発明は前記酸性の水溶性高分子がカルボキシル基含有単量体ユニット、スルホン酸基含有単量体ユニット、及びリン酸基含有単量体ユニットからなる群より選択された相異なる2種以上のユニットを含む共重合体である場合、洗浄力、ケーキング防止効果などにおいてより望ましいということに基づく。特に、前記酸性の水溶性高分子がカルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン酸基含有単量体ユニットを含む共重合体である場合、粉末洗剤が冷水にも速く溶解して洗浄力が向上し、ケーキング防止においても単独重合体に比べてさらに効果的である。
【0022】
より具体的に、本発明による酸性の水溶性高分子は下記化学式1または化学式2に示された単量体ユニットを含む重合体、より具体的には単独重合体または共重合体であり得るが、これに限定されることはない。
【0023】
(化学式1)
【化1】

化学式1において、Rはそれぞれ独立的にカルボキシル基、スルホン酸基(SO)、リン酸基(PO)、ホスホン酸基(PO)またはそれらの塩の形態である。
【0024】
(化学式2)
【化2】

【化3】

【化4】

【0025】
具体例として、このような酸性の水溶性高分子としてはα‐ヒドロキシ酸重合体、テトラメチレン‐1,2‐ジカルボン酸重合体、4‐メトキシテトラメチレン‐1,2‐ジカルボン酸重合体、スチレンスルホン酸重合体、スチレンリン酸重合体、スチレン重合体、またはこれらの組合せを使うことができ、その他にα‐ヒドロキシ酸、テトラメチレン‐1,2‐ジカルボン酸、4‐メトキシテトラメチレン‐1,2‐ジカルボン酸、スチレンスルホン酸、スチレンリン酸、及びスチレンからなる群より選択された2種以上の単量体ユニットを含む共重合体またはこれらの組合せを使うことができる。
【0026】
このような重合体は、スルホン酸、カルボン酸などが酸性の形態で重合体の測鎖に連結されており、塩基性物質と反応して中和されながら重合体塩を形成し、ゼオライトを含まなくても粒子を形成することができる。また、高分子の形態で水分が消失する場合、その高分子の物理的特性によって形態が保持されるので、中和反応で発生したガスによって生じた孔隙がそのまま保持され得る。
【0027】
酸性の水溶性高分子は、高分子の0.1%(w/w)水溶液のpHが1ないし3であることが望ましい。また、上記のように、中和反応で生成されたガスが抜けた孔隙がそのまま保持されるためには、酸性の水溶性高分子は一定大きさ以上の平均分子量を持つことが望ましい。すなわち、平均分子量が3、000ないし60、000である酸性の水溶性高分子を使った場合、粉末洗剤の製造がさらに容易であった。酸性の水溶性高分子が10、000ないし40、000の平均分子量を持つ場合、粉末洗剤粒子の製造が最も容易であった。
【0028】
また、前記酸性の水溶性高分子がカルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン基含有単量体ユニットを含む共重合体である場合、カルボキシル基とスルホン基は単量体の比率で99:1ないし50:50であり、望ましくは95:5ないし50:50であり、さらに望ましくは95:5ないし80:20であり、最も望ましくは95:5ないし90:10である。スルホン基の比率が低い場合には溶解を促進する効果がわずかであるという問題点があり、スルホン基の比率が高い場合には全体ポリマーの色相が濃い茶色になる恐れがある。
【0029】
さらに、本発明は前記酸性の水溶性高分子の1つである、アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体が洗剤成分として非常に有用であるということに基づく。このような共重合体は金属イオンの封入、汚染源の除去、汚染源の再付着防止、水溶解性、粉末洗剤粒子への加工性、他の洗剤成分と混合するときの相安定性などにおいて他の酸性の水溶性高分子に比べて非常に優れる。
【0030】
特に本発明の共重合体は、金属イオンの封入効果、特にカルシウム、マグネシウムなどの金属イオンの封入効果が他の酸性の水溶性高分子に比べて非常に優れる。一般の水にはカルシウム及びマグネシウム二価イオンが多量存在しており、洗浄力の減少を防止するためにはこれらを封入しなければならないということを考慮すると、本発明による新規共重合体は洗剤成分として非常に有用であり得る。また、本発明の共重合体は本発明による酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとの中和反応で発生する熱を用いて乾燥し、粉末洗剤粒子の製造に非常に有用である。
【0031】
例えば、前記アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体は、CaCOを用いたカルシウム結合能(Calcium Binding Capasity)の評価[サンプル2gを蒸留水100mlに溶解させて2%のNaCOを10ml投入、0.1N‐NaOHでpH 11に調節した後、4.4%のCa(AC)O溶液で滴定する。終点は不透明な濁度出現が持続する時点(強い撹拌にも溶解されない)]で、アクリル酸単一共重合体、またはアクリル酸単量体ユニット及びスチレンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体に比べて、約2.1倍または約1.6倍の金属イオン封入力を示した。また、本発明の共重合体は5℃の水を用いた溶解時間の評価で、アクリル酸単一共重合体、またはアクリル酸単量体ユニット及びスチレンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体に比べてはるかに速く溶解された。
【0032】
洗剤成分としての様々な物性を考慮すると、前記アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体において、アクリル酸単量体(A)と2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体(B)の重量比(A:B)は95:5ないし80:20が望ましく、95:5ないし90:10がさらに望ましい。また、前記高分子の平均分子量は2、000ないし100、000であることが洗剤成分をもって最適の効果を発揮する側面から望ましく、3、000ないし5、000または10、000ないし30、000または50、000ないし90、000であることがさらに望ましい。
【0033】
より具体的には、図1に示されたように、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットの重量比が高くなるほどカルシウム結合能が増加したが、アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットの重量比が95:5ないし80:20の場合が望ましかった。該重量比より2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットの重量比が高くなる場合には、製造コストに対するカルシウム結合能の増加程度が低くて非経済的であり、該重量比より2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットの重量比が低くなる場合にはカルシウム結合能が多少足りなかった。
【0034】
また、本発明によるアクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体は、KSM0011方法によって50%の水溶液で測定するとそのpHが0.1ないし3であり、KSM3825方法(#B Viscometer RVT(#3/50))によって25℃で測定するとその粘度が300ないし2000cPであって、前述したような粉末洗剤を製造するための洗剤成分として有用である。
【0035】
本発明によるアクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体の望ましい例は下記化学式3として表すことができ、このような共重合体は本発明が属した分野で周知されたアクリル酸の一般的な重合方式であるラジカル重合方式を用いて製造することができる。このとき、洗濯洗剤への適用を容易にするためには粘度を調節するが、従来はIPA(isopropyl alcohol)のような有機溶剤を用いて粘度を調節する場合に異臭の問題があった。しかし、本発明では有機溶剤を使わずに重合温度を調節して粘度を調節することで異臭問題を解決することができる。
【0036】
(化学式3)
【化5】

【0037】
したがって、本発明は前記アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットからなる共重合体を含むことを特徴とする洗剤組成物を提供し、望ましくはこのような洗剤組成物の水不溶性成分が組成物の総重量対比5重量%以下である。
【0038】
また、本発明は前記新規共重合体を含む金属イオン封入剤組成物、特にカルシウムイオン封入剤組成物を提供する。
【0039】
また、本発明は本発明による前記共重合体の有用な物性を用いる前記新規共重合体を含む硬水軟化剤組成物を提供する。
【0040】
さらに、本発明の粉末洗剤粒子は前記酸性の水溶性高分子と中和反応する物質としてアルカリビルダーを10ないし70重量部含む。本発明の目的を考慮すると、アルカリビルダーとしては水溶性アルカリビルダーが望ましく、このような水溶性アルカリビルダーとしては炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、重炭酸ナトリウム(重曹)、硫酸ナトリウム(芒硝)、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、及びこれらの混合物を使うことができる。
【0041】
本明細書において使われる「水溶性」は、次のような測定方法で測定したときの水不溶性物質の残量率が0.5重量%以下である場合を意味する。水溶性の測定方法は以下のようである。評価しようとする試料3.5gを300mlのビーカーに投入し、該ビーカーに蒸留水150mlを入れる。次いで、ビーカーを密封して70℃で3時間湯煎する。その後、ビーカーを機械的撹拌機で約1時間撹拌する。重さを量った濾過紙を用いて濾過を行い、濾紙上の残留物を100℃で乾燥し、その重さを測定する。このとき、濾過紙の孔径は0.45umである。その後、濾過紙に残った水不溶性物質の重さを試料重さ対比%として計算する。
【0042】
通常、粉末洗剤に使われるアルカリビルダーは適切に組み合わせることで粉末洗剤のpHが高くなることを防止できるので、高温で洗濯するときに発生し得る衣類移染を防止する役割を果たし、本発明ではその他に酸性の水溶性高分子と中和反応を起こす役割も果たす。特に、アルカリビルダーの含量によって形成される粉末洗剤粒子の密度に差が生じることがあるので、これらの含量を適切に調節して粉末洗剤の密度を調節することができる。すなわち、酸性物質としての前述したような酸性の水溶性高分子とアルカリ性物質としてのアルカリビルダーとの中和反応で生成される水分及び二酸化炭素などのガスによって孔隙が形成され、これら孔隙が調節できるため、多様な密度の粉末洗剤粒子を製造することができる。
【0043】
1種のアルカリビルダーでなく混合物を使う場合において、重炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの含量の高くなるほど密度が高くなる傾向があるので、これらの含量を適切に調節して適用すべきである。また、使われるアルカリビルダーの種類と含量は、タンパク質汚染源の除去力(pHが低いほどタンパク質汚染の除去効果が高い)、無機汚染源の除去力などの粉末洗剤の効能と粒子製造能(炭酸ナトリウムが粒子製造に容易である)などの製造容易性を考慮して選択される。特に、重炭酸ナトリウムはpH調節剤として使われて洗濯水のpH緩衝の役割も果たせる一方、比重が高くて弱アルカリ性であるため、本発明の中和反応の誘導能は他のアルカリビルダーより低い。
【0044】
また、本発明の粉末洗剤粒子は選択的に有機酸を1ないし30重量部含むこともできる。このような有機酸は前述した酸性の水溶性高分子の酸性強度を補う役割を果たす。中和反応において酸性物質として働いて孔隙を誘発し粉末洗剤の密度を低める役割を果たすだけでなく、洗浄力を向上する役割も果たせる。通常使われる固体相または液体相の有機酸が全て使用可能であるが、カルボン酸の誘導体であるクエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸などの固体相有機酸がさらに望ましい。有機酸を選択するときは、低密度粉末洗剤粒子の製造容易性だけでなく、使用時の匂いのような製品性も考慮すべきである。
【0045】
本発明の有機酸は、前述した中和反応の効率性を考慮してその粒度が0.01ないし2mmであることが望ましい。
【0046】
また、本発明の粉末洗剤粒子は陰イオン性界面活性剤を1ないし30重量部さらに含むことができる。陰イオン性界面活性剤は洗浄、すなわち洗剤本来の役割を果たすだけでなく、本発明の粉末洗剤粒子では前述した酸性の水溶性高分子(すなわち酸性の水溶性高分子及び有機酸)とともに酸性物質として働いて粉末洗剤に孔隙を誘発する役割、及び粒子化を形成する役割も果たせる。
【0047】
陰イオン性界面活性剤としては、通常の洗濯洗剤組成物に使われる陰イオン性界面活性剤を使うことができる。陰イオン性界面活性剤としては、具体的にはラウリルベンゼンスルホン酸、α‐オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエトキシレート硫酸ナトリウム(sodium lauryl ethoxylated sulfate)、及びこれらの混合物などが挙げられる。望ましくは、陰イオン性界面活性剤として物性が良好であって低密度化に優れるラウリルベンゼンスルホン酸を使うことができる。粉末洗剤粒子の所望の密度に応じて含有する含量を前述した範囲内で適切に調節することができる。
【0048】
また、本発明の粉末洗剤粒子は非イオン性界面活性剤を1ないし30重量部さらに含むこともできる。通常使われる非イオン性界面活性剤は液状であるので、それらの全体含量が密度に大きい影響を及ぼす。含量が高い場合には製造容易性が悪化し、含量が低い場合には洗浄力が低減するため、上記のように1ないし30重量部を含むことが望ましい。本発明の粉末洗剤粒子は多くの孔隙を持っているので、液状の非イオン性界面活性剤を相当量含むことができる。
【0049】
すなわち、本発明の粉末洗剤粒子は液状成分を吸着するゼオライト、シリカなどが実質的に排除されたにもかかわらず、液状の非イオン性界面活性剤を多量含むことができる。したがって、本発明は従来知られた粉末洗剤とは違って水不溶性成分が実質的に排除され、非イオン性界面活性剤の含量が1重量%以上、望ましくは5重量%以上である粉末洗剤粒子を提供することができる。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、通常の洗濯洗剤組成物に使われる非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ココナツジエタノールアミド、脂肪酸アルカノールアミン、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、メチルポリエチレンアルキルエーテル、糖エーテル(sugar ether)などがある。
【0051】
また、本発明の粉末洗剤粒子は、本発明の目的を阻害しない限度内でその他様々な添加剤を0.3ないし10重量部さらに含むこともできる。その他の添加剤としては、タンパク質汚染を除去するためのタンパク質分解酵素(プロテアーゼなど)、脂質汚染を除去するための脂質分解酵素(リパーゼなど)、飲食物汚染を除去するための炭水化物分解酵素(アミラーゼなど)、綿繊維の糸くずを除去するためのセルロース分解酵素(セルラーゼなど)、ビフェニル系、スチルベン(stilbene)系などの蛍光染料、及び繊維から染み出る染料が他の繊維に付着することを防止するか又は脱離された汚染が再付着することを防止する移染防止剤などの成分をさらに含むこともできる。
【0052】
タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、炭水化物分解酵素、及びセルロース分解酵素はそれぞれ0.01ないし1重量部含有されることが望ましく、蛍光染料は0.1ないし1重量部含有されることが望ましく、移染防止剤は0.5ないし5重量部含有されることが望ましい。
【0053】
また、本発明は(S1)酸性の水溶性高分子及びアルカリビルダーを用意するステップと、(S2)前記酸性の水溶性高分子0.1ないし15重量部をアルカリビルダー10ないし70重量部とともに混合機に投入するステップと、(S3)前記混合機に投入されたステップ(S2)の成分を均一に混合するステップと、を含む、酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとの中和反応で発生する熱を用いて乾燥することを特徴とする粉末洗剤粒子の製造方法を提供する。
【0054】
本発明によれば、前述した含量比で投入された酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとが混合機で均一に混合されるとき、酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとが中和反応を起して粉末洗剤粒子が製造される。生成された水分は中和反応で発生する熱によって自然乾燥される。前述した陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤成分が洗剤の用途及び機能に応じて添加されることは勿論である。
【0055】
以上のように、本発明の製造方法は従来の粉末洗剤粒子の製造方法とは違って、粉末を乾燥するための加熱段階が要らないか又は加熱過程をかなり減らすことができて非常に簡単且つ経済的であるだけでなく、このような製造方法によって製造された粉末洗剤粒子は水不溶性成分が実質的に排除されて冷水でも溶解性と洗浄力に優れ、洗濯後に残留物が残らず、製造及び保管中のケーキング現象が低減する。
【実施例】
【0056】
以下、本発明をより具体的に説明するために実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0057】
酸性の水溶性高分子の製造及び評価
アクリル酸単量体ユニットと2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットを9:1の重量比で混合し、過硫酸塩系開始剤を使って水中で重合させてランダム共重合体を製造した。このように製造された重合体は分子量が6、000ないし15、000であり、その他の物性を評価した結果は以下の表1に示した。該高分子を後述する実施例で用いた。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1‐2及び比較例1‐2の粉末洗剤組成物の製造
下記表2に記載された成分と含量に従って原料を高速混合機を用いて単純混合し、実施例及び比較例の粉末洗剤組成物を製造した。具体的には、添加剤以外の原料成分を混合して顆粒状の粉末を製造した後、添加剤を混合する通常の方法で製造した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2において、蛍光染料はTinopal CBS−X(Ciba Special Chem. FMC.)であり、タンパク質分解酵素はSavinase 12.0T(ノボザイムズ社)であり、セルロース分解酵素はCarezyme 900T(ノボザイムズ社 )であり、炭水化物分解酵素はTermamyl 120T(ノボザイムズ社 )である。
【0062】
ケーキング形成の評価
上記の実施例及び比較例で製造した粉末洗剤組成物がケーキング発生に及ぼす影響を判断基準に従って目視で観察判定した。判定結果を下記表3に示した。
【0063】
[判断基準]
優秀:洗剤粒子が固まる現象が全くなく、粒子流動性に優れる。
普通:洗剤粒子が固まる現象は全くないが、少し湿っぽい。
不十分:少し湿っぽく、所々に小さく固まる現象が生じる。
不良:湿っぽくて粒子が固まる。
【0064】
【表3】

【0065】
表3から分かるように、実施例と比較例のケーキング発生には有意な差異があることが分かり、酸性の水溶性高分子としてアクリル酸と2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸との共重合体を用いた実施例2がアクリル酸重合体を用いた実施例1より粒子の製造状態が良好であった。また、実施例1と2ともに水不溶性成分であるゼオライトを添加しなかったにもかかわらず、比較例に比べてケーキング形成防止能に優れた。上記の結果から分かるように、本発明で開示する成分と含量を持つ組成物の場合には中和反応によってゼオライトを添加しなくても優れた粒子の製造が可能であることを確認した。
【0066】
洗浄力の評価
洗剤の基本能力である洗浄力を評価した。洗浄力の評価は同じ条件の洗濯機を使って評価し、一般水道水を使った。洗濯時の温度は一般家庭で使う条件と同様に冷水を使った。洗浄力評価のために使った汚染布は日本洗濯科学協会で製造した人工湿式汚染布を使い、5×5cmサイズの汚染布を20枚使って統計的な方法で比較評価した。これら汚染布の白色度を表す値であるWB値を洗濯前及び洗濯後に色差計を用いて測定した。上記の実施例及び比較例で製造したそれぞれの粉末洗剤粒子30gを洗濯機に入れ、実際の綿シャツに汚染布を付着して評価した。洗濯機の標準コースで洗濯した後、脱水した汚染布を恒温恒湿室(25℃、20%RH)に1日間乾燥させた後、アイロンをかけて同一色差計でWB値を測定した。下記数式1で表されるクベルカムンク(Kubelka−Munk)式に代入して洗浄力を計算し、その結果を下記表4に示した。
【0067】
【数1】

【0068】
式1において、Rは汚染布の表面反射率であり、Rは汚染除去後の綿布の表面反射率であり、Rは白色綿布の表面反射率である。
【0069】
【表4】

【0070】
表4から分かるように、実施例1と2で製造した粉末洗剤粒子は比較例1と2で製造した粉末洗剤組成物に比べて洗浄力が高く、このことは酸性の水溶性高分子による汚染再付着防止機能と硬水軟化効果による洗浄力向上に起因すると考えられる。また、本発明の粉末洗剤粒子は水不溶性成分が排除され、全ての粉末洗剤粒子が溶けて洗剤残留物が残らない。これは洗浄力向上に効果的に作用する。しかし、従来の比較例1と2は洗剤粒子が完全に溶解されないので、実施例と比べて洗浄力が低いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
このように、本発明による粉末洗剤粒子はケーキング防止能力に優れ、洗浄力が良好であって、水不溶性成分をほとんど含まないため溶解性に優れて洗濯後に残留物が残らない。また、本発明の粉末洗剤粒子は液状成分を吸着するゼオライト、シリカなどが実質的に排除されたにもかかわらず、液状の界面活性剤を多量含むことができる。本発明の新規酸性の水溶性高分子は様々な特性から洗剤成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の水溶性高分子0.1ないし15重量部と、アルカリビルダー10ないし70重量部とを混合して、中和反応させることで形成された粉末洗剤粒子。
【請求項2】
前記酸性の水溶性高分子は、カルボキシル基含有単量体ユニット、スルホン酸基含有単量体ユニット、及びリン酸基含有単量体ユニットからなる群より選択されたいずれか1つ以上のユニットを含む重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項3】
前記酸性の水溶性高分子は、カルボキシル基含有単量体ユニット、スルホン酸基含有単量体ユニット、及びリン酸基含有単量体ユニットからなる群より選択された相異なる2種以上のユニットを含む共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項4】
前記酸性の水溶性高分子はカルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン酸基含有単量体ユニットを含む共重合体であることを特徴とする、請求項3に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項5】
前記アルカリビルダーは、水溶性アルカリビルダーであることを特徴とする、請求項1に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項6】
前記アルカリビルダーは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムからなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項7】
前記粒子は、陰イオン性界面活性剤を1ないし30重量部さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項8】
前記陰イオン性界面活性剤は、ラウリルベンゼンスルホン酸、α‐オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、及びラウリルエトキシレート硫酸ナトリウムからなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項7に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項9】
前記粒子は、非イオン性界面活性剤を1ないし30重量部さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項10】
前記粉末洗剤は、水不溶性成分が洗剤総重量対比5重量%以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のうちいずれか1項に記載の粉末洗剤粒子。
【請求項11】
(S1)酸性の水溶性高分子及びアルカリビルダーを用意するステップと、
(S2)前記酸性の水溶性高分子0.1ないし15重量部を、アルカリビルダー10ないし70重量部とともに混合機に投入するステップと、
(S3)前記混合機に投入されたステップ(S2)の成分を均一に混合するステップと、を含む、酸性の水溶性高分子とアルカリビルダーとの中和反応で発生する熱を用いて乾燥することを特徴とする、粉末洗剤粒子の製造方法。
【請求項12】
前記酸性の水溶性高分子は、カルボキシル基含有単量体ユニット及びスルホン酸基含有単量体ユニットを含む共重合体であることを特徴とする請求項11に記載の粉末洗剤粒子の製造方法。
【請求項13】
アクリル酸単量体ユニット及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットを含み、下記化学式3として表されることを特徴とする洗剤成分として有用な共重合体。
(化学式3)
【化1】

【請求項14】
前記アクリル酸単量体ユニットと2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸単量体ユニットとの重量比が95:5ないし80:20であり、共重合体のpHが50%の水溶液で測定したとき0.1ないし3であり、25℃で測定したときその粘度が300ないし2000cPであることを特徴とする請求項13に記載の共重合体。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の共重合体を含むことを特徴とする洗剤組成物。
【請求項16】
前記組成物は、水不溶性成分が組成物の総重量対比5重量%以下であることを特徴とする請求項15に記載の洗剤組成物。
【請求項17】
請求項13または請求項14に記載の共重合体を含むことを特徴とする金属イオン封入剤組成物。
【請求項18】
前記金属イオンはカルシウムイオンであることを特徴とする請求項17に記載の金属イオン封入剤組成物。
【請求項19】
請求項13または請求項14に記載の共重合体を含むことを特徴とする硬水軟化剤組成物。


【図1】
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【公表番号】特表2010−519377(P2010−519377A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550786(P2009−550786)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006083
【国際公開番号】WO2008/102945
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(501343972)エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド (8)
【Fターム(参考)】