説明

酸性スクラビングシステムによる尿素造粒法及びその後のアンモニウム塩の尿素顆粒中への組み入れ

尿素造粒機1、造粒機スクラバーダスト段2、造粒機スクラバー酸段3、生成物冷却機5、生成物冷却機スクラバーダスト段4、及び蒸発ユニット6、凝縮器ユニット7を含む尿素造粒ユニットの排ガスからのダスト及びアンモニアを除去するためのいくつかの廃棄物の流れを含むスクラビングシステムを備えた尿素造粒方法。それにより、プロセス段階の第一のシーケンスを通って流れる新鮮な空気の第一の流れ8が尿素造粒機1中へ送られ、それによりダスト及びアンモニウムを含む空気9が造粒機1から抜き出されて造粒機スクラバーダスト段2中へ運ばれ、その後、造粒機スクラバー酸段3中へ送られ、該段ではアンモニアを含む空気12が、液22相で酸と接触し、そしてアンモニウム塩の生成によってアンモニアがその空気から浄化される。プロセス段階の第二のシーケンスを通って流れる新鮮な空気の第二の流れ15は、尿素造粒機1から抜き出された生成物を冷却するのに使用され、それにより該空気は加熱され、そしてその後生成物冷却機スクラバーダスト段4へ運ばれる。前記造粒機スクラバー酸段3から抜き出される清浄な排ガス13及び前記生成物冷却機スクラバーダスト段4から抜き出される清浄な排ガス18が、大気19中へ放出される。これによって、本質的に完全に閉じた系であり、かつ尿素合成から全体的に分離されたスクラビングシステムを通過し、それにより、造粒機スクラバー酸段3からのアンモニウム塩溶液流23が生成物冷却機スクラバーダスト段4へ供給され、それにより生成物冷却機5から出るダストを含む空気流17のアンモニアが除去され、及び生成物冷却機スクラバーダスト段4からの放出液24及び造粒機スクラバーダスト段2から放出された液11が蒸発ユニット6へ送られる。アンモニアを含む、蒸発ユニット6からの蒸気の流れ29が、凝縮機ユニット7中へ供給され、これは液状のプロセス凝縮物30を放出し、そして、前記液状のプロセス凝縮物30は、前記造粒機スクラバー酸段3中へ供給され、そして尿素及びアンモニウム塩を含む、蒸発ユニット6からの濃縮された液体の流れ28、及び合成ユニット27からの尿素溶融物26は、尿素造粒機1中へ別々に運ばれる。それにより、濃縮された液体の流れ28に含まれるアンモニウム塩は、造粒される尿素生成物中に組み入れられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素造粒法及び該方法を操作するのに適した装置に関する。本発明は、従来の尿素製造プロセスから一般に放出されている尿素造粒プラントから排出されるアンモニアを、排ガスをスクラビングし、そしてスクラバーブリードを回収し、そしてそれを上記の造粒プロセスに組み入れることによって低減する方法を一体化するものであり、該方法によりアンモニウム塩が完全に封じ込められる。
【背景技術】
【0002】
液状組成物から顆粒を製造する一般のプロセスは、米国特許第5,779,945号明細書(特許文献1)に記載されている。本発明の焦点は、異なる寸法を有する生成顆粒を処理し、そして分類することである。この明細書では、装置の排ガス流から固形分材料を分離するのにサイクロン又はスクラバーのような気/固分離装置が使用される。この排ガス流の高度な処理は、それ以上考慮されていない。
【0003】
米国特許第4,370,198号明細書(特許文献2)においては、造粒ユニットの排ガスがダスト分離サイクロンに送られ、その後、連続的な湿式スクラバーに送られ、両方ともその排ガス流を洗浄するのに寄与する。使用されるスクラビング液は、処理される溶液又は懸濁液の一部であり、そして湿式スクラバーを出るスクラビング液は造粒機ユニット中へ直接フィードバックされる。例示的に、この開示されたプロセスは塩化ナトリウム、尿素、サッカロース又は酸化鉄類のそれぞれの製造のために達成することができる。結果として、洗浄液は、処理される溶液又は懸濁液の一部であり、造粒機ユニット中へ直接送り戻される。このプロセスはダストスクラビングのためにしか達成することできず、アンモニアのスクラビングには適していない。
【0004】
水平交流スクラバーにおける湿式タイプの同時的な浄化及びダスト除去ガス処理のための装置及び方法の更なる例が欧州特許出願公開第0853971A1号(特許文献3)に開示されている。この発明は充填塔中の汚染物質及びダストの除去を行う。
【0005】
流動床を備えた尿素造粒機を出る尿素プラントで使用された空気には、尿素ダストに加えてアンモニアも含まれている。このアンモニア汚染物は、排ガスの流れが大気中へ排気できる前に排除する必要がある。
【0006】
排ガスの流れからアンモニアを除去するのは周知の技術である。通常、排ガスの流れは酸性のスクラビング溶液で処理される。このスクラビング溶液は、硝酸又は硫酸のような酸を水に加えることによって容易に製造できる。アンモニアは化学的な吸収によってガスの流れから除去され、そして対応するアンモニウム塩に変換される。硝酸の使用により、硝酸アンモニウム(AN)が、そして硫酸の使用により硫酸アンモニウム(AS)がそれぞれ生成される。これらのアンモニウム塩含有溶液は、硫酸アンモニウム肥料又はNPK肥料の製造に使用でき、そのための技術は従来技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,779,945号明細書
【特許文献2】米国特許第4,370,198号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0853971A1号
【特許文献4】国際公開第03/099721号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July. August 2008, pages 39−41
【非特許文献2】Brochure Urea, [online], 12−2007, pages 1−24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
尿素プラントにおいては、アンモニウム塩はプロセス中では発生せず、現存の尿素設備では容易に処理できない。それ故、従来の尿素製造設備は、造粒プラントからのガス状のアンモニアを低減するためには、以下の選択肢しかない。
・希釈されたアンモニウム塩溶液を廃水の流れへ送り出すこと、
・希釈されたアンモニウム塩溶液を別のプラント、例えばNPKで利用できる濃度まで濃縮化すること、
・UAS(尿素/硫酸アンモニム)肥料を高い硫黄含有量で製造すること、
・UAN(尿素/硝酸アンモニウム)溶液を製造すること。
これらの代替的方法の全ては操作条件に対する多額の投資費用及び大規模な変更を要するか、又は生成物の組成及び特性の変更が強いられる。上記した選択肢の全ては、輸送及び取り扱い、並びに高価で多量のエネルギーを利用するための更なる設備を要する新たな生成物をもたらす結果となる。結果として、現今では、尿素設備は、深刻な環境問題を招くアンモニアを効率的に除去することなく操業されている。それ故、尿素設備からアンモニアを除去することは、解決を要するやりがいのある課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
代替的な解決法が、国際公開第03/099721号パンフレット(特許文献4)に記載されている。この発明は、アンモニア含有のガスの流れから、アンモニア含有ガスの流れの中のアンモニアを有機酸でアンモニア塩に変換することによって、アンモニア含有ガスの流れからアンモニアを除去し、その一方で、得られたアンモニウム塩を昇温下で過酸化物と接触させる方法に関する。それにより、アンモニウム塩は分解装置中でNH、CO及びHO含有混合物へと変換され、そして尿素合成ユニット中で容易に再処理できる。この過酸化物は一般のプロセスに対して追加的なものであり、そして他の望ましくない付属物に関連する場合がある。また、アンモニウム塩をNH、CO及びHOへ変換するためには、通常のプラントレイアウトに加えて別の分解装置が必要である。これを出るガスの流れは、造粒ユニット中では再処理できないが、尿素合成ユニット中へ再循環させる必要がある。
【0011】
アンモニアの放出を低減することが、M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July. August 2008, pages 39−41(非特許文献1)にも記載されている。その図1には、ダストと酸性スクラバーシステムの組み合わせが示されている。アンモニアは、酸性のスクラバーセクションに吸収され、そして硫酸アンモニウムに変換される。硫酸アンモニウム溶液は、蒸発セクションに戻る再循環流へ添加される。このユニット中で該溶液は尿素合成ユニットからの尿素溶融物と混合される。蒸発からの濃縮された液体の流れは、尿素造粒機中へ運ばれる。蒸発ユニットから出てくる凝縮物は、組み合わされたダスト/アンモニアスクラビングシステムの構成分として利用される。アンモニア転化技術(Ammonia Convert Technology)と呼ばれるこの技術により、排ガス中のアンモニアは、30mg/Nmまで低減できる。Brochure Urea, [online], 12−2007, pages 1−24(非特許文献2)に示されているような酸性スクラビングを用いない技術は、排ガス中のアンモニアを、約160mg/mの値までにしか低減せず、そしてこれは本明細書中で従来技術として更に参照される。
【0012】
M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July. August 2008, pages 39−41(非特許文献1)に記載されているアンモニア転化技術は、それでもなおいくつかの欠点を含んでいる。第一に、この系における水の均衡が臨界的なパラメータであることである。もしこの均衡が乱されると、尿素合成は、硫酸アンモニウムか、あるいはそれに代わって、処理する必要のある多量の廃水で汚染される。さらに、蒸発ユニット中での、酸性溶液と濃縮された尿素溶融物との混合は、造粒に悪影響を及ぼす。更に、この技術は硫酸アンモニウムで汚染された多量の凝縮物を生じさせることに関与しており、これは、ダスト及び酸性スクラビング技術を含む、種々のスクラバーに配送する必要がある。また、この技術で得られた排ガス中に残存するアンモニア濃厚物は、最新の尿素造粒プラントにとっては未だ十分なものでも、満足するものでもない。
【0013】
それ故、本発明の目的は、尿素造粒プロセスによって生じた排ガスの現存するスクラビング技術を、副生成物又は廃棄物の流れが生成することなく、統合し、かつ、最適化する方法を提供することである。この方法は、上述したような従来技術に関連する問題を防止するべきである。特に、合成ユニットからの尿素溶融物の汚染は排除されるべきである。この方法は追加の高価な設備のいずれも使用すべきではない。さらに、この方法は、過酸化物のような使用物質を不経済な量(expensive quantities)で使用すべきでない。全体で、この方法は、通常のアンモニアスクラビングプロセスによって生じるアンモニウム塩を使用することを見出すことによる、従来技術に共通する尿素造粒法よりも環境に優しいものであるべきである。本発明の目的は、そうような方法を操作するのに適した装置を提供することでもある。
【0014】
これは、尿素造粒機1、造粒機スクラバーダスト段2、造粒機スクラバー酸段3、生成物冷却機5、生成物冷却機スクラバーダスト段4、蒸発ユニット6、及び凝縮機ユニット7を含む尿素造粒ユニットの排ガスからのダスト及びアンモニアを除去するためのいくつかの廃棄物の流れ(waste streams)を含む、スクラビングシステムを備える尿素造粒法によって達成される。それにより、プロセス段階の第一のシーケンスを通過する新鮮な空気8の第一の流れが尿素造粒機1中へ送られ、それによりダスト及びアンモニアを含む空気9が造粒機1から抜き出されて、そして造粒機スクラバーダスト段2中へ運ばれ、その後、造粒機スクラバー酸段3へと運ばれ、そこでアンモニアを含む空気12が、液22相中で酸と接触し、そしてアンモニアが、その空気から、アンモニウム塩の生成により浄化される。プロセス段階の第二のシーケンスを通過する新鮮な空気15の第二の流れは、尿素造粒機1から抜き出される生成物を冷却するのに使用され、それにより、該冷却は、生成物冷却機5中で遂行され、それにより、該空気は加熱され、そしてその後、生成物冷却機スクラバーダスト段4へ運ばれる。造粒機スクラバー酸段3から出る清浄な排ガス13及び生成物冷却機スクラバーダスト段4から出る清浄な排ガス18は大気19中へ放出される。これによって、スクラビングシステムを通過し、これはそれ自体が廃棄物の流れの完全に閉じたシステムである。この方法において、造粒機スクラバー酸段3からのアンモニウム塩溶液流23は、その生成物冷却機スクラバーダスト段4中へ供給され、それにより、生成物冷却機5を出るダストを含む空気流17が除去され、そして生成物冷却機スクラバーダスト段4から放出される液体24、及び造粒機スクラバーダスト段2から放出される液体11は蒸発ユニット6へ送られる。アンモニアを含む、蒸発ユニット6からの蒸気の流れ29は、凝縮機ユニット7中へ供給され、該ユニット7は液状のプロセス凝縮物30を放出し、そしてその液状のプロセス凝縮物30は造粒機スクラバー酸段3中へ供給され、そして、尿素及びアンモニウム塩を含む、蒸発ユニット6からの濃厚な液体の流れ28及び合成ユニット27からの尿素溶融物26は、尿素造粒機1中へ、別々に運ばれる。それにより、濃厚化液体の流れ28中に含まれるアンモニウム塩は、造粒された尿素生成物中に組み込まれる。
【0015】
この結果、スクラビングシステムそれ自体は完全に閉じたシステムとなり、そしてそれにより、全体的に尿素合成から切り離される。それにより、尿素溶融物の汚染が回避される。
【0016】
プロセス段階の第二のシーケンスに含まれる生成物冷却機スクラバーダスト段4中のスクラビング液の塩濃度は、35〜60重量%である。
【0017】
本発明の更なる選択肢とは、尿素溶融物26、及び尿素及びアンモニウム塩を含む濃縮された液体の流れ28の、尿素造粒機1のための濃度に関連し、これは95〜99.8重量%の範囲内に維持される。好ましくは、96〜97.5重量%の範囲内に維持される。
【0018】
更なる実施形態は、酸22が硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、乳酸及びシュウ酸からなる群から選択されるものである。当然のことながら、非揮発性であればその他の酸も使用できる。好ましくは、容易に入手可能であることから硫酸が使用され、さらに、高度に要求される肥料要素であると考えられる硫黄を供給する。
【0019】
プロセス段階の第一のシーケンスに含まれる造粒機スクラバー酸段3における反応液中のアンモニア塩の濃度は、<10重量%に維持され、好ましくは、6〜8重量%の範囲内に維持される。それにより、プロセス段階の第一のシーケンスに含まれる造粒機スクラバー酸段3中の液体の流れのpHは、2〜6の範囲内に維持され、好ましくは3.5〜5.0の範囲内に維持され、そして最も好ましくは、4.0〜4.5の範囲内に維持される。
【0020】
プロセス段階の第一のシーケンスに含まれる造粒機スクラバーダスト段2中の反応液の尿素濃度は35〜60重量%の範囲内に維持される。プロセス段階の第一のシーケンス中に含まれる造粒機スクラバーダスト段2中の液体の尿素濃度を45〜55重量%の範囲内に維持するのが好ましい。
【0021】
さらに、蒸発ユニット6の出口におけるアンモニウム塩の濃度は重量百分率で12重量%未満に維持され、そして9〜11重量%の範囲内に維持されるのが好ましい。
【0022】
任意に、蒸発ユニット6中へ供給される混合物は、尿素溶融物31の一部と混合される。
【0023】
更に、大気19中へ放出される清浄な排ガスの混合物は、10〜25mg/Nmの範囲内のNH濃度を示し、そして好ましくは、NHは<15mg/Nmの濃度を示す。
【0024】
尿素造粒機の排ガスからダスト及びアンモニアを除去するためのいくつかの廃棄物の流れを含むスクラビングシステムを用いた尿素造粒法は、装置の第一のシーケンスを形成する、尿素造粒機1、造粒機スクラバーダスト段2、及び造粒機スクラバー酸段3を含む装置中で遂行される。また、装置の第二のシーケンスを形成する、生成物冷却機5及び生成物冷却機スクラバーダスト段4、及び蒸発ユニット6、凝縮機ユニット7、尿素造粒機に新鮮な空気8を供給する手段、尿素造粒機1からダスト及びアンモニアを含む空気9を抜き出し、かつ、造粒機スクラバーダスト段2中へ運ぶ手段、造粒機スクラバーダスト段2から造粒機スクラバー酸段3中へ空気12を抜き出す手段、生成物冷却機5に新鮮な空気15を供給する手段、生成物冷却機5から生成物冷却機スクラバーダスト段4へ、使用された空気17を運ぶ手段、生成物冷却機スクラバーダスト段4から清浄な空気18を放出させ、かつ、装置の第一のシーケンス中に含まれる造粒機スクラバー酸段3からの清浄な空気13を大気19中へ放出させる手段、プロセス水21及び酸22を、造粒機スクラバー酸段3へ運ぶ手段、生成水10を造粒機スクラバーダスト段2へ運ぶ手段、尿素造粒機1から生成物冷却機5へ尿素顆粒14を運ぶ手段が包含される。それにより、スクラビングシステムの装置類は、廃棄物の流れの完全に閉じた系が構築されるようなやり方で連結され、造粒機スクラバー酸段3から生成物冷却機スクラバーダスト段4へ液体の流れ23を運ぶ手段、及び生成物冷却機スクラバーダスト段4からの液体の流れ24及び造粒機スクラバーダスト段2からの液体の流れ11を、蒸発ユニット6へ運ぶ手段、蒸発ユニット6の蒸気29を凝縮機ユニット7へ運ぶ手段、凝縮機ユニット7からのプロセス凝縮物30を造粒機スクラバー酸段3へ運ぶ手段、及び尿素溶融物26及び尿素及びアンモニウム塩を含む濃縮された液体の流れ28を、それぞれ別々に尿素造粒機1中へ運ぶ手段を含む。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、装置が、装置の第二のシーケンス中に含まれる生成物冷却機スクラバーダスト段4からの液体の流れ24を、装置の第一のシーケンス中に含まれる造粒機スクラバーダスト段2からの液体の流れ11と混合する手段、その混合物へ尿素溶融物31を供給する手段、及び蒸発機6中へその混合物を供給する手段を含むものである。
【0026】
装置のさらなるオプションとは、蒸発ユニット6へ尿素溶融物を供給する手段を含むものである。
【0027】
以下において、例を使って本発明をより詳細に説明する。図1は、装置の第一のシーケンスを形成する、流動床を備えた尿素造粒機1、造粒機スクラバーダスト段2、及び造粒機スクラバー酸段3、及び生成物冷却機5、及び装置の第二のシーケンスを形成する生成物冷却スクラバーダスト段4、蒸発ユニット6、凝縮機ユニット7、及び主なプロセスの流れを備えた、尿素造粒機のブロック図を示している。
【0028】
尿素造粒機1は、蒸発機6から抜き出された尿素及びアンモニウム塩28を含む濃厚化した液体の流れ、並びに尿素溶融物26が互いに別々に供給される。尿素造粒機1中では、新鮮な空気流8で流動化され、そして冷却される流動床中で尿素顆粒が形成される。ダスト及びアンモニアを含む空気流9が抜き出される。これは、最初に、装置の第一の流れに含まれる造粒機スクラバーダスト段2中で洗浄され、そこで尿素ダストが除去される。プロセス水10の流れは造粒機スクラバーダスト段2に添加され、そしてブリード流11が、蒸発ユニット6へ送られる。それにより、そのスクラバー中で水が蒸発することによって空気が冷却される。ほとんどダストを含まないが、アンモニアを含む空気流12が、装置の第一のシーケンス中に含まれる造粒機スクラバー酸段3中で洗浄され、そこでアンモニアが除去され、そして清浄な排ガス流13を抜き出すことができる。
【0029】
生成した尿素顆粒14は、生成物冷却機5へ運ばれ、そこで、新鮮な空気流15が最終生成物16を冷却する。ダストを含む空気流17は、装置の第二のシーケンス中に含まれる生成物冷却機スクラバーダスト段4へ運ばれ、そこで、ダストが洗浄される一方で、そのスクラバー中で水が蒸発することによって空気が冷却される。生成物冷却機スクラバーダスト段4を出る清浄な空気流18は、清浄な排ガス流13と混合され、そして大気19へ放出される。
【0030】
装置の第一のシーケンス中に含まれる造粒機スクラバー酸段3のためのスクラビング溶液は、プロセス水21及び酸流22及びプロセス凝縮物30を含む。造粒機スクラバー酸段3中において、酸溶液はアンモニアと反応してアンモニウム塩溶液流23生成し、それが装置の第二のシーケンス中に含まれる生成物冷却機スクラバーダスト段4へ運ばれ、それにより、プロセス段階の第二のシーケンス中に含まれる生成物冷却機5を出るダストを含む空気の流れ17のアンモニアが除去される。この溶液は、ダストを含む空気流17からの尿素ダストを含んでいる。
【0031】
プロセス段階の第二のシーケンス中に含まれる生成物冷却機スクラバーダスト段から得られた液体の流れ24は、造粒機スクラバーダスト段2からのブリード流11と組み合わされ、そして得られた混合物25は、蒸発ユニット6へ運ばれ、そこで濃縮される。蒸発ユニット6からの濃縮された液体の流れ28は、尿素造粒機1へ供給されて、生成されたアンモニウム塩を造粒プロセス中へ組み入れる。尿素溶融物31の一部は、濃縮された液体の流れ28の尿素濃度及び硫酸アンモニウム濃度を正しい範囲内に維持するために、蒸発ユニット6に添加することができるが、その尿素溶融物31の流量は、最小限に低減するのが好ましい。蒸発ユニット6から抜き出される蒸気29は凝縮機ユニット7へ運ばれ、そこで外部冷却水によって冷却される。凝縮の間に生じたプロセス凝縮物30は造粒機スクラバー酸段3中へ送られる。例えば、好ましい実施形態として、水平型のクロスフロースクラバーが使用される。
【0032】
従って、廃棄物の流れの閉鎖された循環が形成され、そして全ての廃棄物の流れが再循環される。さらに、生じたアンモニウム塩は、尿素造粒プロセスに組み入れられる。また、外部のプロセス水の消費は、最小限に低減される。全体として、この組み合わせはその環境への適合性によって特徴付けられる。
【0033】
M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July. August 2008, pages 39−41(非特許文献1)中に開示されているアンモニア転化技術とは対照的に、本発明の技術は、尿素合成ユニット27で生成する尿素溶融物の汚染を、閉じたスクラビング系を構築することによって回避するものである。これは、蒸発ユニット6からの濃縮された液体の流れ28及び尿素溶融物26を、別個の手段で造粒機1へ運搬することによって達成される。流れ31を介して、規定されたそして制御可能な量の尿素溶融物だけが合成ユニット27から蒸発ユニット6へ供給される。
【0034】
例1において、表は、従来技術の尿素造粒プロセスにおけるアンモニアに関するいくつかの典型的な形態を示している:
【0035】
上流の蒸発セクションで形成された平衡の結果であるため、造粒ユニットへの供給物中の500〜600重量ppmというアンモニア量が多かれ少なかれ不可避である。約90ppmのアンモニアが、尿素溶液ライン中でのビウレット形成を介して添加されるため、全部で約590〜690ppmが造粒機へ入る。このアンモニアの約50ppmが最終生成物中に含まれ、それによって、残部は、造粒ユニットからの空気の流れと共にスタックを介して造粒プラントを出る。これは、Brochure Urea, [online], 12−2007, pages 1−24(非特許文献2)に記載された従来技術の約130〜160mg/Nmの最終濃度という結果をもたらす。M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July.August 2008, pages 39−41(非特許文献1)中で説明されているように、アンモニア転化技術と呼ばれる、組み合わされたスタックにおいて、約30mg/Nmの最終濃度が見出されるが、一方、本明細書記載の本発明の技術によれば、10mg/Nmのアンモニア濃度がもたらされる。従って、この技術を用いることによって大幅な向上が達成できる。
【0036】
【表1】

【0037】
例2は、本発明をベースに形成されたアンモニア転化技術の有利で経済的な局面を、M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July.August 2008, pages 39−41(非特許文献1)に記載されたいわゆるアンモニア転化技術、及びBrochure Urea, [online], 12−2007, pages 1−24(非特許文献2)に示された従来技術と比較して示している:
計算のために、アンモニアの価格、約300US$/mt、尿素の価格、約250US$/mt、そして硫酸の価格、約20US$/mtが予測される。
【0038】
【表2】

【0039】
アンモニア年間損失800mt/年は、従来技術の通常の尿素造粒プラントにおいて、一年で合計で240,000US$のマイナスを意味する。
【0040】
【表3】

【0041】
アンモニア転化技術を用いることによって、約640mt/年の回収が可能であり、これは、約192,000US$の価値である。約2,500mt/年の硫酸アンモニウムが、従来技術の計算について使っているのと同じ容量を有するプラントで製造される。追加の尿素生産量は約2,500mt/年であり、これは、一年で約625,000US$の利益をもたらす。そのような、1,900mt/年のプロセス硫酸消費量の経費を考慮すると、これは、一年で約38,000US$の経費として計上され、全体で年間約587,000US$の節約にとどまる。
【0042】
【表4】

【0043】
本発明を用いることにより、約740mt/年のアンモニアの回収が可能となり、これは、約222,000US$に値する。従来技術についての計算を用いると、同じ生産能力を有するプラントでは約2,900mt/年の硫酸アンモニウムが生成される。追加の尿素生産量は、約2,900mt/年となり、一年で約725,000US$の利益がもたらされる。そのようなプロセスの2,200mt/年という硫酸の消費量の経費を考慮すると、これは、一年で約44,000US$の経費として計上され、全体で年間約681,000US$の節約にとどまる。
【0044】
【表5】

【0045】
従って、本発明の技術によれば、M Potthoff, Nitrogen + Syngas, [online], July.August 2008, pages 39−41(非特許文献1)に記載されるようなアンモニア転化技術と比較して、一年で約94,000US$の節約がもたらされる。この効果は、アンモニア転化技術と比較して、400mt/aの追加的な尿素生産量を計上する、アンモニアの回収量の増加量に起因している。
【0046】
かくして、低濃度のアンモニウム塩及び高濃度の尿素を含む溶液が生成される。これらの少量のアンモニウム塩の添加による生成物の仕様及び品質に対する著しい変化はない。尿素生成物のN含有量は、約46%N超にとどまり、その結果、生成物は典型的な尿素肥料となる。
【0047】
提案される方法の利点は次のとおりである:
・環境への著しく低いアンモニア放出量。
・アンモニアの損失を低減し、そしてそれにより肥料生産量を増大させることによって費用効果が達成される。
・現存する尿素造粒プラント中でアンモニウム塩を生成させるのに、簡単なやり方が用いられる。
・合成物の再循環、又は排水システムへの排出のない閉じたループシステムであり、それにより、硫酸アンモニウムによる汚染が回避される。
・流動床造粒による尿素造粒プラントからの排ガス流からアンモニアを除去するのに、証明された、そして低費用の技術的方法が使用される。
・回収されたアンモニアが生成物中に含まれているため、尿素の生産量が増大し、それによって著しい経済効果がもたらされる。
・典型的な尿素肥料グレードの製品が製造される。
【符号の説明】
【0048】
1 尿素造粒機
2 造粒機スクラバーダスト段
3 造粒機スクラバー酸段
4 生成物冷却機スクラバーダスト段
5 生成物冷却機
6 蒸発ユニット
7 凝縮機ユニット
8 新鮮な空気の流れ
9 ダスト及びアンモニアを含む空気の流れ
10 生成水の流れ
11 液体の流れ
12 アンモニアを含む空気の流れ
13 清浄な排ガスの流れ
14 尿素顆粒
15 新鮮な空気の流れ
16 最終生成物
17 ダストを含む空気の流れ
18 清浄な空気の流れ
19 大気
20 酸性供給
21 プロセス水
22 酸性の流れ
23 アンモニウム塩溶液の流れ
24 液体の流れ
25 結果として得られる混合物
26 尿素溶融物
27 合成ユニットからの尿素溶融物
28 濃縮した液体の流れ
29 蒸気
30 プロセス凝縮物
31 尿素溶融物の一部
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
・尿素造粒機1、
・造粒機スクラバーダスト段2、
・造粒機スクラバー酸段3、
・生成物冷却機5、
・生成物冷却機スクラバーダスト段4、及び
・蒸発ユニット6、
・凝縮器ユニット7、
を含む尿素造粒ユニットの排ガスからダスト及びアンモニアを除去するためのいくつかの廃棄物の流れを含むスクラビングシステムを有する尿素造粒方法であり、その際、
・プロセス段階の第一のシーケンスを通って流れる新鮮な空気8の第一の流れが、該尿素造粒機1中へ送られ、その際、
・ダスト及びアンモニアを含む空気9は、該造粒機1から抜き出され、そして造粒機スクラバーダスト段2中へ運ばれ、その後、造粒機スクラバー酸段3へ運ばれ、該段でアンモニアを含む空気12が液22相中の酸と接触し、そしてアンモニアは、アンモニウム塩の生成によってその空気から除去され、
・プロセス段階の第二のシーケンスを流れる新鮮な空気15の第二の流れが、該尿素造粒機1から抜き出される生成物を冷却するのに使用され、その際、
・前記冷却は、生成物冷却機5中で行われ、
・それにより、前記空気は加熱され、そしてその後、生成物冷却機スクラバーダスト段4へ運ばれ、
・前記造粒機スクラバー酸段3から抜き出される清浄な排ガス13及び前記生成物冷却機スクラバーダスト段4から抜き出される清浄な排ガス18が、大気19中へ放出される方法であって、
前記スクラビングシステムが、本質的に完全に閉じた系であり、
その際、
・造粒機スクラバー酸段3からのアンモニウム塩溶液流23が、前記生成物冷却機スクラバーダスト段4中へ供給され、その際、生成物冷却機5を出るダストを含む空気流17のアンモニウムが除去されて、そして、
・前記生成物冷却機スクラバーダスト段4からの放出液24及び前記造粒機スクラバーダスト段2からの放出液11が、蒸発ユニット6へ送られ、
・アンモニアを含む、該蒸発ユニット6からの蒸気の流れ29が、凝縮機ユニット7中へ供給され、該凝縮機ユニット7が液状のプロセス凝縮物30を放出し、そして、前記液状のプロセス凝縮物30は、前記造粒機スクラバー酸段3中へ供給され、そして
・前記蒸発ユニット6からの、尿素及びアンモニウム塩を含む濃縮された液体の流れ28及び合成ユニット27からの尿素溶融物26が、別々に前記尿素造粒機1中へ運ばれることを特徴とする、尿素を造粒する方法。
【請求項2】
前記尿素造粒機のための、前記尿素溶融物26及び尿素及びアンモニウム塩を含む濃縮された液体の流れ28の濃度が、95〜99.8重量%、好ましくは96〜97.5重量%の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸流22の酸が、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、酪酸及びシュウ酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス段階の前記第一のシーケンス中に含まれる前記造粒機スクラバー酸段3中の前記液体の流れの前記アンモニウム塩の濃度が、<10重量%に維持され、好ましくは6〜8重量%の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
プロセス段階の前記第一のシーケンス中に含まれる前記造粒機スクラバー酸段3中の前記液体の流れのpHが、2〜6の範囲内に維持され、好ましくは3.5〜5.0の範囲内に維持され、より好ましくは4.0〜4.5の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記造粒機ダスト段2中の液の尿素濃度が35〜60重量%の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記造粒機ダスト段2中の液の尿素濃度が45〜55重量%の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸発ユニット6の出口におけるアンモニウム塩濃度が、12重量%未満に維持され、そして好ましくは9〜11重量%の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記蒸発ユニット6中へ供給される混合物が、尿素溶融物31の一部と混合されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
大気19中へ放出される清浄な排ガスの混合物が、10〜25mg/Nmの範囲内のNH濃度、そして好ましくは<15mg/NmであるNH濃度を示すことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を操作するのに適した、尿素造粒機の排ガスからのダスト及びアンモニアの除去のためのいくつかの廃棄物の流れを含むスクラビングシステムを備えた尿素造粒装置であり、
装置の第一のシーケンスを形成する、
・尿素造粒機1
・造粒機スクラバーダスト段2、及び
・造粒機スクラバー酸段3、及び、
装置の第二のシーケンスを形成する、
・生成物冷却機5、及び、
・生成物冷却機スクラバーダスト段4、
・蒸発ユニット6、
・凝縮機ユニット7、及び、
・前記尿素造粒機に新鮮な空気8を供給する手段、
・前記尿素造粒機からダスト及びアンモニアを含む空気9を抜き出し、そして造粒機スクラバーダスト段2中へ運ぶ手段、
・前記造粒機スクラバーダスト段2から造粒機スクラバー酸段3中へ空気12を抜き出す手段、
・前記生成物冷却機5に新鮮な空気15を供給する手段、
・前記生成物冷却機5から前記生成物冷却機スクラバーダスト段4へ使用された空気17を運ぶ手段、
・前記生成物冷却機スクラバーダスト段4からの浄化された空気18、及び装置の前記第一のシーケンス中に含まれる、前記造粒機スクラバー酸段3からの浄化された空気13を、大気19中へ放出する手段、
・プロセス水21及び酸22を前記造粒機スクラバー酸段3へ運ぶ手段、
・プロセス水10を前記造粒機スクラバーダスト段2へ運ぶ手段、
・前記尿素造粒機1から前記生成物冷却機5へ尿素顆粒14を運ぶ手段、
を含む装置であって、
前記スクラビングシステムの装置が、廃棄物の流れの完全に閉じた系を構築するような方法で接続され、
・前記造粒機スクラバー酸段3から前記生成物冷却機スクラバーダスト段4へ液体の流れ23を運ぶ手段、及び、
・前記生成物冷却機スクラバーダスト段4からの液体の流れ24及び前記造粒機スクラバーダスト段2からの液体の流れ11を、前記蒸発ユニット6へ運ぶ手段、
・前記蒸発ユニット6の蒸気29を凝縮機ユニット7へ運ぶ手段、
・前記凝縮機ユニット7からのプロセス凝縮物30を、前記造粒スクラバー酸段3へ運ぶ手段、及び、
・尿素溶融物26を運ぶ手段、及び尿素及びアンモニウム塩を含む濃厚化された液体の流れ28を前記尿素造粒機1中へそれぞれ別々に運ぶ手段、
を含むことを特徴とする、尿素造粒装置。
【請求項12】
・前記生成物冷却機スクラバーダスト段4からの前記液体の流れ24を、前記造粒機スクラバーダスト段2からの液体の流れ11と混合する手段、及び
・尿素溶融物31をその混合物へ供給する手段、及び、
・その混合物を前記蒸発ユニット6中へ供給する手段、
を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
尿素溶融物の一部を前記蒸発ユニット6へ運ぶ手段を含む、請求項11又は12に記載の装置。

【公表番号】特表2012−509833(P2012−509833A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537866(P2011−537866)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007953
【国際公開番号】WO2010/060535
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510300544)ウーデ・フェルティリツァー・テヒノロギー・ベスローテン・フェンノートシャップ (2)
【Fターム(参考)】