説明

酸無水物でグラフトされたポリオレフィンを含む組成物

無水マレイン酸でグラフトされたメタロセン線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)または無水マレイン酸でグラフトされたメタロセン極低密度ポリエチレン(mVLDPE)とアルケンまたはオレフィンポリマー組成物のブレンドから生じる組成物。得られた無水マレイン酸でグラフトされた高分子組成物はアルミニウムフィルムなどの金属フィルムによく接着する。本組成物は流動学的特性も有し、その特性によって本組成物は共押出プロセスにおいて用いるのに効果的とされる。無水マレイン酸でグラフトされたプロピレンポリマー組成物を調製する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトされたポリオレフィンを含む組成物、グラフトされたポリオレフィンを含む金属化組成物またはフィルム、グラフトされたポリオレフィンとエチレンコポリマーを含む組成物、金属化フィルムを製造する方法および食品包装材料などのそれらによる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムは、アルミニウムなどの金属の層を上に(例えば真空により)沈着させた熱可塑性フィルムである。金属化フィルムは、水分バリアおよびガスバリアとして食品包装産業において用いられている。金属化フィルムは、熱可塑性フィルム成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルまたはポリプロピレン(PP)を含むことが可能である。ポリエチレン(PE)も時には金属化される。しばしば、金属化フィルムは、多層構造の中でポリエチレン(PE)、配向ポリプロピレン(OPP)、配向PET(OPET)、紙およびペーパーボードなどの他の材料と組み合わされる。これらの他の材料は、例えば、アビューズ(abuse)層またはシーラント層として機能し得る。金属化フィルムは印刷のための剛性および表面も提供し得る。従って、熱可塑性組成物に接着された金属化フィルム層と他の基材とを含む多層構造を包装フィルムとして用いることが可能である。用途は粉末ドリンクミックスパウチなどの多くの乾燥食品包装および非包装用途を含む。アビューズ層および/または印刷層の例には、配向ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、配向またはキャストされた高密度ポリエチレン(HDPE)、紙、ペーパーボードおよび二軸配向ナイロンが挙げられる。シーラントフィルムの例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、イオノマー(すなわち、部分中和エチレン/酸コポリマー)、線状低密度PE(LLDPE)、および極低密度PE(VLDPE)が挙げられる。
【0003】
接着剤はフィルムの金属化表面を隣接層に接着させることが可能である。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)は接着剤層として用いられる。他の接着剤層には、エチレン酸コポリマーが挙げられる。例えば米国特許第6,165,610号明細書を参照すること。
【0004】
LDPEを用いる金属化フィルムへの基材の接着は、ポリエチレンの一部が酸化するように高い被覆温度(300〜330℃)で処理することにより実行することが可能である。LDPEの酸化は金属化表面への中程度の粘着力を提供する極性化学種を作り出す。
【0005】
PEフィルムを金属化フィルムに押出積層するためにLDPEを用いることに関わる問題は、金属化層ベースフィルムへの金属化層の粘着性力が経時的に「老化により低下する」ことである。例えば、金属化フィルムへのLDPEの粘着力は、初めはかつかつのみであるが、1週間〜数週間の期間で、密着強度は用途のためにもう機能しないレベルに低下することが多い。1つの説明は、老化がLDPEの二次結晶性に関連していることがある。積層プロセス中、LDPEは非常に迅速に冷却され、殆ど一次結晶化は起き得ない。経時的に、小さい「二次」結晶が生じる場合がある。PEが結晶化するにつれてPEは収縮する。収縮は結合に応力を加えるとともに剥離強度を下げ得る。真空蒸着金属化層とそのベースフィルムとの間の結合は構造の中で最も弱い結合である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より極性のポリマーは、より極性でない材料より容易に金属化フィルムに接着する。金属化フィルムによく接着する極性ポリマーは、非極性ポリマーによく接着しない場合がある。従って、金属化フィルムと非極性ポリマーの両方に接着することを可能にする特性のバランスを提供する繋ぎ層が望ましい。
【0007】
熱可塑性フィルム基材への粘着力を助長するために用いられる化学プライマはコストを増し、溶媒ベース系に関わる環境問題を引き起こす場合がある。プライマを用いずに金属化フィルムをフィルムまたはポリマーに接着させるための組成物または方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は金属化可能なアルケンまたはオレフィンポリマー組成物を含む。本組成物は、ポリオレフィンと酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィン、酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマー、またはその両方を含むか、またはそれらから製造される。酸無水物は、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水コハク酸またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことが可能である。酸無水物のモノエステルは、無水マレイン酸のモノエステル、無水コハク酸のモノエステル、無水フマル酸のモノエステル、無水コハク酸のモノエステルまたはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことが可能である。酸無水物でグラフトされたエチレンポリマーは、約0.001〜約5%、または約0.01〜約4%または約0.1〜約4%で組成物中に存在することが可能であり、酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマーは約0.1〜約20%、約0.5〜約15%または約1〜約10%で組成物中に存在する。
【0009】
本発明は、組成物とアルミニウムフィルムなどの金属化フィルムとを含むか、またはそれらから製造されたフィルムも含む。
【0010】
本発明は、金属化フィルムを含む第1の層、上で開示された組成物を含む第2の層を含む包装フィルムも含む。
【0011】
本発明は、水分および酸素の透過に対して保護することが可能である食品包装材料も提供する。食品包装材料は、包装フィルムまたは金属化ポリオレフィン(例えばプロピレン)層とポリオレフィンを含む1層以上の層を含むことが可能であるか、またはそれらから本質的になることが可能である。ここで、金属化ポリオレフィン層は、ポリオレフィンおよび無水マレイン酸(またはそのモノエステル)でグラフトされたmLLDPE(メタロセン触媒型線状低密度PE)、無水マレイン酸(またはそのモノエステル)でグラフトされたmVLDPE(メタロセン触媒型極低密度PE)、無水マレイン酸(またはそのモノエステル)でグラフトされたLLDPE、VLDPE、ULDPE、エチレンコポリマーまたはそれらの2つ以上の組み合わせを含むか、あるいはそれらから製造される。包装材料は、好ましくは追加のポリプロピレンバリア層とヒートシール可能な層を有する。
【0012】
本発明は、無水マレイン酸でグラフトされたポリオレフィン組成物またはそのフィルムを製造するために用いることが可能である方法も含む。本方法は、ポリオレフィンに酸無水物をグラフトするために有効な条件下で、有機過酸化物の存在下でポリオレフィンと酸無水物を組み合わせることを含むか、またはポリオレフィンと酸無水物を組み合わせることから本質的になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
「金属化可能な」は金属に効果的に結合できることを意味する。酸無水物は、あらゆる酸無水物、そのモノエステルまたはそれらの組み合わせを含むことが可能である。酸無水物の例には、無水マレイン酸、無水マレイン酸のモノエステル、無水コハク酸、無水コハク酸のモノエステル、無水フマル酸、無水フマル酸のモノエステルまたはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0014】
ポリオレフィンは、オレフィンから誘導された反復単位を含むあらゆるポリマーを含むことが可能であり、ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびこれらのポリオレフィンのいずれかのコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンまたはそれらの2つ以上の組み合わせを含むコモノマーを含むことが可能である。
【0015】
例えば、ポリプロピレン(PP)ポリマーは、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーを含む。プロピレンのコポリマーは、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、2−ブテンおよび種々のペンテン異性体などの他のオレフィンとのコポリマー、好ましくはプロピレンとエチレンのコポリマーを含む。プロピレンのターポリマーは、プロピレンとエチレンと1種の他のオレフィンのコポリマーを含む。統計的コポリマーとしても知られているランダムコポリマーは、プロピレン対コモノマーのフィード比に対応する比で高分子鎖全体を通してプロピレンとコモノマーが無秩序に分配されるポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントおよび例えばプロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなる鎖セグメントから構成される。「ポリプロピレン」は上述したプロピレンを含むポリマーのいずれかまたは全部を意味する。PPは、チーグラーナッタ触媒系などの周知されたプロセスによって製造することが可能である。そのプロセスが周知されているので、その説明を簡略のためにここで省略する。
【0016】
例は、約1重量%〜約6重量%の間のエチレンモノマーの低いレベルを有するプロピレンとエチレンのコポリマーも含む。アルミニウムへのポリプロピレンの粘着力を改善する意図した効果をもたらす変性ポリプロピレン組成物の追加の例を表3で提示している。
【0017】
エチレンポリマーは、HDPE、LLDPE、VLDPE、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、LDPE、mLLDPE、mVLDPE、エチレンコポリマーまたはそれらの2つ以上の組み合わせであることが可能である。PEは、周知されたチーグラーナッタ触媒型重合(例えば、米国特許第4,076,698号明細書および米国特許第3,645,992号明細書参照)、メタロセン触媒型重合(例えば、米国特許第5,198,401号明細書および米国特許第5,405,922号明細書)を含む様々な方法によって、そしてラジカル重合によって調製することが可能である。ポリエチレンポリマーは、HDPE、LLDPE、極低密度ポリエチレンまたは超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)およびLDPEを含むことが可能である。ポリエチレンの密度は0.865g/cc〜0.970g/ccの範囲である。「ポリエチレン」は、上述したエチレンを含むポリマーのいずれかまたは全部を意味する。
【0018】
酸無水物でグラフトされたエチレンポリマーまたは酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマーは、当業者に知られているいかなる手段によっても製造することが可能である。例えば、グラフトは、二軸スクリュー押出機の中でラジカル開始剤と酸無水物またはそのモノエステルの両方の存在下でのポリオレフィンの溶融押出によってもたらすことが可能である。酸無水物(例えば無水マレイン酸)官能基が上にグラフトされている高分子主鎖は、LLDPE、VLDPE、mLLDPE、mVLDPEまたはそれらの2つ以上の組み合わせなどの上で開示したあらゆるポリオレフィンのどれかであることが可能である。
【0019】
酸無水物または酸無水物モノエステルは、約3.0重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上または約7重量%以上の酸無水物または酸無水物モノエステルの濃度に基づいて組成物中に存在することが可能である。
【0020】
金属の薄いフィルムに結合する金属化可能な組成物は、エチレンコポリマーから製造することが可能であるか、またはエチレンコポリマーを含むことが可能である。金属フィルムは、好ましくは真空蒸着アルミニウム層である。
【0021】
エチレンコポリマーは、エチレンと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の塩、(メタ)アクリレートまたはC1〜C8アルキル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸のエステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせから誘導されたポリマー単位(反復単位)を含むことが可能である。「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートまたはその両方を含むことが可能である。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸またはその両方を含むことが可能である。例えば、メチル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレートまたはメチルアクリレートのどちらも意味することが可能である。
【0022】
アルキルアクリレートの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが挙げられる。例えば、「エチレン/メチルアクリレート(EMA)は、エチレンとメチルアクリレート(MA)のコポリマーを意味する。「エチレン/エチルアクリレート(EEA)」は、エチレンとエチルアクリレート(EA)のコポリマーを意味する。「エチレン/ブチルアクリレート(EBA)」は、エチレンとブチルアクリレート(BA)のコポリマーを意味し、n−ブチルアクリレートとイソブチルアクリレートの両方およびそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0023】
エチレンとアクリレートのコポリマーは周知されている。「エチレンアクリレートコポリマー」は、エチレンアクリル酸エステルコポリマーとも呼んでよい。それらのコポリマーは、2つの高圧ラジカルプロセス:チューブラープロセスまたはオートクレーブプロセスから製造することが可能である。この2つのプロセスから製造されたエチレンアクリレートコポリマーの相違は、例えば、「High Flexibility EMA made from high pressure tubular process」,Annual Technical Conference−Society of Plastics Engineers(2002),60th(Vol.2),1832−1836に記載されている。チューブラープロセスから製造されたエチレンアクリレートコポリマーは本発明において好ましい。
【0024】
エチレンコポリマーは、一酸化炭素、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルビニルエーテルまたはそれらの2つ以上の組み合わせなどのもう1種のコモノマーも含むことが可能である。
【0025】
エチレンコポリマーは、約15〜約40重量%または約18〜約35重量%のアクリレートコモノマーを含んでもよい。アクリレートコモノマーを増やすとゴム弾性特性を改善する場合があり、コポリマーの粘着性を増す場合がある。エチレンコポリマーは、ASTM D−1238、条件E(190℃、2160グラムの分銅)で測定して、約0.1〜約100g/10分、または約0.5〜約20g/10分のメルトインデックス(MI)を有してもよい。
【0026】
エチレンコポリマーは、エチレンと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステルまたはそれらの2つ以上の組み合わせなどの不飽和カルボン酸から誘導された反復単位を含む酸コポリマーも含む。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの組み合わせを意味する。例えば、「エチレン/メタクリル酸(EMAA)」は、エチレン(E)とメタクリル酸(MAA)のコポリマーを意味する。「エチレン/アクリル酸(EAA)」は、エチレンとアクリル酸(EAA)のコポリマーを意味する。2種以上のコモノマーの例も含まれる。例えば、「エチレン/イソブチルアクリレート/メタクリル酸(E/iBA/MAA)は、エチレン(E)、イソブチルアクリレート(iBA)およびメタクリル酸(MAA)のターポリマーを意味する。酸コポリマーは、酸あるいは二酸の無水物またはモノエステルから誘導された反復単位約1〜約25モル%を含むことが可能である。
【0027】
エチレン酸コポリマーに導入された(メタ)アクリル酸コモノマーは、全コポリマーの0.01または5重量%からほぼ40重量%に至るまで変わることが可能であるか、あるいは5〜30重量%または10〜25重量%のように遙かにより高いことが可能である。酸コポリマーは、C1〜C8アルキルアクリレートによるアルキル基を有するアルキルアクリレートの10重量%以下も含んでよい。
【0028】
あるいは、エチレンコポリマーに導入されたアルキル(メタ)アクリレートコモノマーまたは(メタ)アクリル酸コモノマーは、約0.01から約30重量%まで、1〜25重量%まで、あるいは1〜10重量%まで変わることが可能である。あるいは、n−ブチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸は、約6重量%以下、または約5重量%以下、または約4重量%以下、または約3重量%以下、または1重量%以下でさえも存在するポリマーに導入することが可能である。
【0029】
エチレン酸コポリマーおよびそれらの調製方法は、米国特許第3,264,272号明細書、米国特許第3,404,134号明細書、米国特許第3,355,319号明細書および米国特許第4,321,337号明細書で開示されたように技術上周知されている。本明細書における本発明において用いるために適する商用酸コポリマーは、商標Nucrel(登録商標)でのE.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE(DuPont)を含む種々の供給業者から入手できる。
【0030】
エチレン酸コポリマーは直接コポリマーまたはグラフトされたコポリマーであってもよい。「直接コポリマー」は、モノマーが既存ポリマー鎖上で重合されるグラフトされたコポリマーとは異なり同時に一緒にモノマーを重合することにより製造されたコポリマーである。直接酸コポリマーまたはグラフトされた酸コポリマーが金属イオンによる中和によってイオン化されたカルボン酸基約0.0001〜約90%を有する時、これらはイオンコポリマー、すなわち「イオノマー」と呼ばれ、それらは、架橋ポリマーの固体状態特性および非架橋熱硬化性ポリマーの溶融二次加工適性を有する。商用イオノマーはDuPont製のSurlyn(登録商標)イオノマーを含む。
【0031】
酸コポリマーまたはイオノマーは、好ましくは約5〜約50重量%、より好ましくは約10〜約30重量%、最も好ましくは約8〜約15重量%の範囲の量で存在する。酸コポリマーは、好ましくは約4〜約25重量%の酸、より好ましくは約8〜約15重量%の酸を含む。酸コポリマーは、0.1〜500グラム/10分、好ましくは1〜100グラム/10分、最も好ましくは1〜30グラム/10分のメルトインデックスを有してもよい。
【0032】
イオノマーは、約1〜100g/10分または約0.5〜20g/10分のメルトインデックスを有してもよく、約4〜約25重量%または約8〜約15重量%の酸を有する酸コポリマーから誘導されてもよく、約20〜約70重量%の範囲の中和度を有してもよい。
【0033】
酸無水物でグラフトされたエチレンポリマーまたは酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマーは、約0.5〜約5重量%、約1〜約4重量%または約1〜約2重量%の範囲の酸無水物または酸無水物モノエステルの濃度で存在することが可能である。
【0034】
食品包装材料などの多層バリアフィルムは、金属化可能な層として上で開示した高分子組成物を含む層を含むことが可能である。例えば、層1は、アルミニウム、銅、銀、クロム、金、それらの2種以上の合金、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの真空蒸着金属によって製造してもよい薄い金属フィルムであることが可能である。この層は酸素および水分に対するバリアとして機能してもよい。層2は金属化可能な高分子層であることが可能である。この層は、ポリオレフィンと酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィンとを含む金属化可能な高分子組成物などの上で開示された金属化可能な高分子組成物を含むことが可能である。層2は約10〜約25μの厚さを有することが可能である。第3の層は層2に接着させることが可能であり、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含む。第3の層はバリアとして機能することが可能であり、約10〜約25μの厚さを有することが可能である。層4は層3に接着させることが可能である。第4の層16はヒートシール可能なポリオレフィン層であることが可能である。ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー、エラストマー、ポリプロピレン/ブテン−1コポリマー、ポリプロピレン/ポリエチレン/ブテン−1ターポリマー、ポリケトンまたはそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
1層以上の層は1種以上の添加剤も含有することも可能である。添加剤の例には、粘着防止剤、帯電防止剤、摩擦係数調節剤、加工助剤、着色剤および透明剤が挙げられる。これらは技術上周知された添加剤である。
【0036】
多層フィルムの露出層または最外層を表面処理して、印刷インキ、接着剤および塗料に対してフィルムを受理性にすることが可能である。これらの表面処理層は他のフィルムまたは表面上に後で貼合わせてもよい。表面処理は、コロナ放電処理または火炎処理などの技術上知られているいずれかの方法によって実施することが可能である。
【0037】
任意選択的に、塗料をフィルムの露出層または最外層の一方または両方に被着させて貼合わせを促進してもよい。塗料材料を塗布する前に、フィルムをプライマ層で表面処理してもよいか、または下塗してもよい。塗料の例には、アクリル塗料およびPVDC(ポリ塩化ビニリデン)塗料が挙げられる。ビニルアルコールポリマーも塗料組成物として用いてよい。適切なプライマ材料はポリ(エチレンイミン)およびエポキシプライマなどである。
【0038】
フィルムの外面は上述したように処理してフィルムの表面エネルギーを高めてもよく、従って、塗料層がフィルムに強く接着性であってもよく、よって塗料がフィルムから剥がれる可能性または塗料がフィルムから剥がされる可能性を減らすことを確実にしてもよい。この処理は、例えば、フィルム塩素化、すなわち、水性塩素へのフィルム表面の暴露;、クロム酸などの酸化剤による処理、ホットエアー処理または蒸気処理およびコロナ処理などの既知の技術を用いて実行することが可能である。コロナ処理は、距離を取った一対の電極の間にフィルムを通しつつ高電圧コロナ放電にフィルム表面をさらすことを含む。フィルム表面のコロナ処理後、次に、塗料組成物をフィルム表面に被着させる。
【0039】
処理表面または未処理表面は、適する接着剤、例えば、低密度ポリエチレン、エチレンメタクリレートコポリマーなどのホットメルト接着剤およびポリ塩化ビニリデンラテックスなどの水性接着剤などと合わせて貼合わせてもよい。
【実施例】
【0040】
好みの変性剤(表2)のペレットを好みのベース樹脂(表1)のペレットにブレンドし、異なるフィード材料を分流するために適切なブロックを備えた押出ダイを用いて、3種の異なる樹脂を押し出しできる少なくとも3つの押出機を備えたフィルムキャスティングラインの押出機にペレットブレンドを直接フィードすることにより、金属化可能なポリプロピレン組成物を得た。このように、2種の異なるポリプロピレン(PP)樹脂を表2に記載された23種の異なるPP変性剤により変性した。変性剤のレベルの増加への粘着力応答を示すために、PPベース樹脂を場合によって2つ以上の異なるレベルで変性した。
【0041】

(1):ChissoのFW4BM、プロピレン、エチレンおよびブテンのターポリマー
(2):Dowの6D81、プロピレンとエチレンのコポリマー
【0042】

【0043】
(1):ポリプロピレンホモポリマー
(2):プロピレンとエチレンのコポリマー
(3):ENGAGE(登録商標)8180、エチレンとオクテンのコポリマー
(4):ENGAGE(登録商標)8180、DuPont Dow Elastomersから得られるエチレンとオクテンのコポリマー
(5):ENGAGE(登録商標)8411、DuPont Dow Elastomersから得られるエチレンとオクテンのコポリマー
(6):Dowの6D20、プロピレンとエチレンのコポリマー
(7):Surlyn(登録商標)RX1014は、10.5重量%のアクリル酸(AA)および15.5重量%のn−ブチルアクリレートから誘導された単位を含むイオノマーである。
(8):Surlyn(登録商標)RX1018は、6.2重量%のアクリル酸(AA)および28.0重量%のn−ブチルアクリレートから誘導された単位を含むイオノマーである。
(9):Elvaloy(登録商標)4924は、DuPont製のエチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素のターポリマーである。
(10):Elvaloy(登録商標)HF441は、DuPont製のエチレン/n−ブチルアクリレートおよび一酸化炭素のターポリマーである。
(11):Bynel(登録商標)2002は、エチレン/エチルアクリレート/アクリル酸のターポリマーである。
(12):Lotader2210は、AtoFina製のエチレン/ブチルアクリレート(6%)および無水マレイン酸(2.6%)のターポリマーである。
(13):Lotader3410は、AtoFina製のエチレン/ブチルアクリレート(18%)および無水マレイン酸(3%)のターポリマーである。
(14):LOTANDER TX8030は、AtoFina製のエチレン/ブチルアクリレート(12.5%)および無水マレイン酸(2.5%)のターポリマーである。
(15):Lotader AX8840は、AtoFina製のエチレン/グリシジルメタクリレート(8%)コポリマーである。
(16):Orevac9314は、AtoFina製のエチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸のターポリマーである。
(17):FUSABOND(登録商標)EP1021は、エチレンとMAME(無水マレイン酸モノエステル、9.5%)のコポリマーである。
(18):FUSABOND(登録商標)A EB560Dは、EP1021とElvaloy(登録商標)AC3427のブレンドである。
(19):Lotader4210は、AtoFina製のエチレン/ブチルアクリレート(6%)/無水マレイン酸(3.8%)のターポリマーである。
(20):グラフトされた無水マレイン酸%の含有率
【0044】
3層構造の中で金属化可能なPP層として用いられる変性PPの組成は、「Top層」の下の欄で表3に記載されている。
【0045】

【0046】

【0047】
(a):この欄はフィルム構造を指定している。
(b):トップ層ポリマー含有率(括弧内は重量%)は、フィルムF1(100)、F2〜F3(80)、F4〜F13(84)、F14およびF17〜24(92.5)、F13(90)、F15(90)、F25〜F34およびF39(90)、F35(94)、F36(78)、F37(95.6)、F38(92.9)、F40(96.8)、F41(94.9)、F42(92.8)、F43(98.3)、F44(97.3)、F45(96.2)、F46(94.9)、F47(91.6)、F48(86.6)、F49(81.1)、F50(97.9)、F51(96.6)、F52(95.3)、F53(94.9)およびF54(84)であった。変性剤は残りを構成した(100%まで)。この欄はベース樹脂を指定している。
(c):この欄は変性剤組成物を指定している。
(d):VM−cPPフィルム(3層PPベースフィルム、トップ層は変性PPから製造、コア層は5D98ホモ−PPから製造、底層は6D20coPPから製造)
【0048】
コア層としてDowの5D98ホモ−PPおよび裏地層としてDowの7C06衝撃変性PPまたはDowの6D20coPPを用いる3層フィルムにおいて、8インチ(約20cm)の共押出キャスティングラインを用いて各変性PP組成物を共押出した。各フィルム構造を約41〜45ダイン/cmまで最初にコロナ処理し、その後、アルミニウム(厚さ約200nmの層)で金属化した。DuPontから入手できるエチレン酸コポリマーであったNucrel(登録商標)フィルムにアルミニウムトップ層をダブルバーヒートシーラーを用いてヒートシール後に沈着アルミニウムへの金属化可能層の粘着力を評価した。幅1インチ(2.54cm)の細片をヒートシールされた基材から切り抜き、剥離を手で開始し、アルミニウム/変性−PP界面での剥離強度をInstronによって測定した。すべての金属化3層PPフィルム構造内の粘着力性能を表3に示している。各金属化3層PPフィルム構造の性能を、g/in剥離力における剥離強度下で表3に記載している。完全機能性剥離強度のために「許容できる」最小値は、既存の商用フィルムを基準にして130g/inである。
【0049】
フィルムF1、F2およびF3は、無水マレイン酸でグラフトされたPPを用いるトップPP層の変性の影響を例示している。それは、目標粘着力を満たすために不適切であった。コロナ処理が粘着力を強化したことも非常に早期に確立された。そして表3に示したすべての実施例に関して、金属化の前に3層PPフィルムをコロナ処理した。
【0050】
表3に提示した粘着力は、130g/inの最小粘着力目標を満たしたか、越した幾つかのフィルム構造およびそうできなかった幾つかのフィルム構造を含んでいた。まとめると、これらの実施例は、アルミニウムへの変性PPの良好な粘着力をもたらした変性剤およびもたらさなかった変性剤のタイプの点で以下を開示している。
【0051】
有効な変性剤:
MAH−g−mVLDPE(M3〜M6、M19、M20)、M4〜MF11、MF36〜MF44。
E/MAMEコポリマー(M21)、MF46〜MF48。
E/MAMEコポリマー+ELVALOY(登録商標)AC(M22)、MF49〜MF51およびE/nBA/MAHターポリマー(M23)、MF52〜MF55。
【0052】
有効でない変性剤
coPP/mVLDPEco−MAHグラフト(M7)、MF12、MF13、MF16、MF17。
E/nBA/AAターポリマー(M8、M9)、MF18、MF19、MF27、MF28。
E/VA/COターポリマー(M10)、MF20、MF29。
E/nBA/COターポリマー(M11)、MF21、MF30。
E/MA/AAターポリマー(M12、M13)、MF22、MF23。
E/nBA/MAHターポリマー(M14、M15)、MF24、MF25、MF31、MF32、MAH3.0%以下、nBA6%超。
E/EA/MAHターポリマー(M16)、MF26、MF33。
E/GAコポリマー(M17)、MF34。および
E/VA/MAHターポリマー(M18)、MF35。
【0053】
金属化高分子組成物の調製
4インチ×4インチ(約11cm×11cm)の寸法の正方形フィルムクーポンを真空金属化チャンバー内で処理した。真空系を2×10-5トルにポンプで下げ、アルミニウムを加熱して5Å/秒の速度で200オングストロームの厚さに表面フィルム上に沈着させた。沈着したアルミニウム層の厚さは、前もって確立した相関を用いて表面抵抗または光透過のいずれかによって決定した。両方は当業者に周知された方法である。
【0054】
多層金属化高分子フィルムの調製
粘着力性能評価用のフィルムは、3樹脂フィードと合わせて実験するために構成された3つの押出機、幅8インチのKillionキャストロール装置およびCloeren8インチ(5ベーン)キャストフィルムダイを備えたパイロット規模の共押出ライン上にキャスティングした。
ダイ構成:AABBCセレクタープラグ
A:直径1 3/4インチのNRM一軸スクリュー押出機、内層のために選択された材料をフィードする。
B:直径1.0インチのDAVIS標準一軸スクリュー、コア層として選択された材料をフィードする。
C:直径1 1/4インチのWayne一軸スクリュー押出機、変性PP組成物をフィードする。
全ライン速度:20fpm(9.1メートル/分)
全フィルム厚さ:3ミル(約0.008cm)
用いた温度を以下の表4で示している。
【0055】

【0056】

【0057】
3層キャストフィルムを後でコロナ処理した。ライン速度100ft/分(45.5mpm)で41ダイン/cm2の最終表面エネルギーを得るためにコロナ処理パラメータを設定した。
【0058】
用いた粘着力試験
以下の方法を用いて、高分子金属化可能層の真空蒸着アルミニウムフィルムへの粘着力を測定した。幅2×1インチ(5.1×2.54)の別個に加熱されたシール用バーを有するSencorp Systemsヒートシーラーを用いて、アルミニウム層上で真空金属化クーポンをNucrel(登録商標)903フィルムに最初にヒートシールした。Nucrel(登録商標)フィルムを0.5秒の保圧時間にわたって40psi/135℃(1psi=0.275MPa)下でシールした。剥離を変性PP/アルミニウム界面で開始し、その後、12インチ/分(305cm/分)の顎速度で、周囲条件下でInstronメカニカルテスターを用いて剥離力を測定した。結果をlb.ft/インチで報告した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィン、酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマー、またはその両方を含むか、またはそれらから製造された組成物であって、前記酸無水物が好ましくは無水マレイン酸、無水フマル酸、無水コハク酸またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み、前記酸無水物モノエステルが好ましくは無水マレイン酸のモノエステル、無水コハク酸のモノエステル、無水フマル酸のモノエステル、無水コハク酸のモノエステルまたはそれらの2つ以上の組み合わせを含み、前記エチレンポリマーがメタロセン触媒型線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒型極低密度ポリエチレン、エチレンコポリマーまたはそれらの2つ以上の組み合わせであり、前記酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィンが約0.001〜約5%、または約0.01〜約4%または約0.1〜約4%で前記組成物中に存在し、前記酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマーが約0.1〜約20%、約0.5〜約15%または約1〜約10%で前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンと、好ましくは無水マレイン酸でグラフトされたエチレンポリマーである酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィンを含むか、またはそれらからから製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンと、好ましくは無水マレイン酸でグラフトされたエチレンポリマーである酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンポリマーを含むか、またはそれらからから製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エチレンとアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、またはその両方から誘導された反復単位を好ましくは含むエチレンコポリマーを更に含み、前記エチレンコポリマーが、請求項1で特徴付けられたのと同じであるとともに好ましくは無水マレイン酸メチルエステルである酸無水物または酸無水物モノエステルから誘導された反復単位を任意選択的に含んでもよい、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレンコポリマーが、エチレンとエチルアクリレートのコポリマー、エチレン、n−ブチルアクリレートおよび無水マレイン酸のコポリマー、またはそれらの組み合わせである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記酸無水物または酸無水物モノエステルが約3重量%以上、または約4重量%以上あるいは約6重量%以上で前記グラフトされたエチレンポリマー中に存在し、前記アルキル(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸が約6重量%以下、または4重量%以下あるいは4重量%以下で前記組成物中に存在し、前記酸無水物でグラフトされた第2のポリオレフィンまたは前記酸無水物モノエステルでグラフトされたエチレンコポリマーが約0.5〜約5重量%、または約1〜約4重量%あるいは約1〜約2重量%で前記組成物中に存在する、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の組成物および金属化フィルムを含むか、またはそれらから製造される、フィルム。
【請求項8】
前記フィルムが多層フィルムであり、前記金属化フィルムが第1の層であり、前記組成物を含むフィルムまたは前記組成物から製造されたフィルムが第2の層であり、前記フィルムが好ましくは食品包装材料であり、前記食品包装材料が追加のポリプロピレンバリア層、ヒートシール可能な層またはその両方を任意選択的に含んでもよい、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
金属化フィルムに対する第1のフィルムの粘着力を調節するための組成物の使用であって、第1のフィルムが、請求項1、2、3、4、5または6で特徴付けられた組成物を含むか、または前記組成物から製造される使用。
【請求項10】
酸無水物または酸無水物モノエステルをポリオレフィンにグラフトするために有効な条件下で、有機過酸化物の存在下でポリオレフィンを酸無水物、酸無水物モノエステルまたはそれらの組み合わせと組み合わせることを含む、方法。

【公表番号】特表2008−545051(P2008−545051A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519712(P2008−519712)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/026094
【国際公開番号】WO2007/005905
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】