説明

酸生成用触媒系

本明細書に記載される本発明の様々な実施形態は、全体として少なくとも1つの酸化可能な置換基が対応する芳香族核の炭素原子に直接結合している芳香族化合物の固定床接触酸化による芳香族酸を生成する新規プロセスに関する。実施形態において、本発明の新規酸化プロセスは、a)酸化触媒を用いて、液相芳香族酸前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、b)完成生成物を分離するステップと、c)溶媒および酸化触媒をパージするステップと、d)溶媒の少なくとも一部分を酸化反応装置に場合によっては再循環させるステップと、e)酸化触媒の少なくとも一部分を回収するステップと、f)酸化触媒の少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと、(g)活性化された酸化触媒を酸化反応装置にフィードするステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景。メタ−キシレンおよびパラ−キシレンは、樹脂および様々な他の品目の生成において使用される精製または粗イソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/fA(またはCIPA/CTA))の生成において使用される価値ある化学中間体である。酸化ステップは、IPA/TAまたはCIPA/CTAの生成において共通のプロセスステップである。周知のように、芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸の生成プロセスは、普通連続または不連続プロセスで液相中、少なくとも1つの酸化可能な置換基が対応する芳香族核の炭素原子に直接結合している芳香族化合物を基質として使用して実施される。
【発明の概要】
【0002】
一般に、本発明の様々な実施形態は、前駆体を酸化するシステムおよびプロセスであって、
a)前駆体を酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
b)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと
を含むシステムおよびプロセスを含む。
【0003】
様々な実施形態は、酸を生成するシステムおよびプロセスを含み、前記プロセスは、
a)酸化触媒を用いて、液相芳香族酸前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
b)完成生成物を分離するステップと、
c)前記溶媒および前記酸化触媒をパージするステップと、
d)前記酸化触媒の少なくとも一部分を回収するステップと、
e)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと、
f)再活性化された酸化触媒を前記酸化反応装置にフィードするステップと
を含む。様々な実施形態において、ステップ(a)から(f)は、連続サイクルで行われ、または少なくとも1回繰り返される。
【0004】
特定の一実施形態において、再充填用触媒系が、少なくともメタ−キシレン、パラ−キシレン、およびエチルベンゼンを含むフィード流をイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む少なくとも1つの生成物流に転化するプロセスで使用され、前記プロセスは、
a.エチルベンゼンを前記フィード流から除去して、エチルベンゼン減少フィード流を生成するステップと、
b.前記エチルベンゼン減少フィード流からオルト−キシレンを除去して、オルト−キシレン減少フィード流を生成するステップと、
c.前記エチルベンゼン減少かつ前記オルト−キシレン減少フィード流を酸化させて、生成物流を生成するステップと、ここで、前記生成物流は、IPA/TAを0.5%〜約99.5%の間のIPAと約0.5%〜約99.5%の間のTAの割合で含む;
d.前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと
を含む。
【0005】
様々な別の実施形態は、少なくともメタ−キシレンおよびパラ−キシレンを含むフィード流からイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む生成物流を生成するシステムを開示し、前記システムは、
a.オルト−キシレン除去ゾーンと、
b.共酸化ゾーンと、
c.固体床触媒と、ここで、前記固体床触媒は前記酸化触媒を再生することができる;
を備え、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、メタ−キシレンより重い成分およびパラ−キシレンより重い成分を除去することができ、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、オルト−キシレン減少流を生成することができ、前記共酸化ゾーンは、メタ−キシレンとパラ−キシレンとを、粗イソフタル酸および粗テレフタル酸(C−IPA/C−TA)に酸化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の上記および他の利点および目的が達成される方式を詳細に理解できるように、添付の図面に例示されるその特定の実施形態を参照して、簡潔に上述された本発明をさらに具体的に説明する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態しか示しておらず、したがってその範囲を限定するものとみなすべきでないことを理解して、本発明を、添付図面の使用により具体的および詳細に説明する。
【図1】本発明のプロセスの実施形態を示す流れ図の図である。
【図2】反応の多数の中間体を示した、パラ−キシレンからテレフタル酸への酸化反応の図である。
【図3】担持触媒を調製し、酸化触媒を調製し、担持触媒を再生するプロセスを示す概括流れ図の実施形態の図である。
【図4】様々な不均一系触媒、および溶液の酢酸Co(II)から酢酸Co(III)への転化を示すチャートである。
【図5】コバルト(III)の反応パターンを示す図である。
【図6】触媒の合成の図である。
【図7】S結合を含まないジカルボン酸の図である。
【図8】オキソ−ルテニウムエチル/ブチルホスホナートシリカ(SiPORu=O)の合成の図である。
【図9】過酢酸/アセトアルデヒド/0 SiPORu=Oを使用することによるRuの酸化の図である。
【図10】新規Co(III)触媒の図である。
【図11】SiPOCo(III)の代替図である。
【図12】酢酸コバルト(II)溶液から酢酸コバルト(III)溶液への酸化の図である。
【図13】再生SiPOCo(III)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の定義および説明は、以下の説明においてはっきりとした明白な修正のない限り、あるいは意味の適用によってなんらかの解釈が無意味または本質的に無意味になる場合、以後のいずれの解釈においても支配的であることを意味および意図する。用語の解釈によって、無意味または本質的に無意味になる場合、定義はWebster’s Dictionary、3rd Editionから引用されるべきである。定義および/または解釈については、本明細書に具体的に記載されていない限り、または組み入れることが妥当性を維持するのに必要である場合でない限り、関連しているか否かにかかわらず他の特許出願、特許、または刊行物から組み入れるべきでない。
【0008】
本明細書では、エタン酸とも呼ばれる「酢酸」という用語は、酢にその酸味および刺激臭を付与する有機化合物を意味し、指す。その構造式は、CHCOOHとして表される。純粋で水を含まない酢酸(氷酢酸)は、無色液体であり、水を環境から引き付け(吸湿性)、16.7℃(62°F)未満で凝固して、無色結晶質固体となる。これは、弱酸である。というのは、標準温度および圧力で、完全に解離している強酸とは対照的に、解離した酸が水溶液中で解離していない形と平衡状態で存在するからである。酢酸は、構造的に単純なカルボン酸である。ソフトドリンク用ボトルで主に使用されるポリエチレンテレフタラート;主に写真フィルム用のセルロースアセタート;および木工用糊、ならびに合成繊維および布地用のポリビニルアセタートの生成において使用される化学試薬および工業用化学品である。家庭では、希酢酸がしばしばスケール除去剤で使用される。食品産業では、酢酸が、食品添加物コードE260でpH調整剤として使用される。
【0009】
本明細書では、「芳香族の」という用語は、不飽和結合の共役環、孤立電子対、または空軌道が、共役だけの安定化で予想されるはずのものより強い安定化を示すという化学特性である芳香族性を意味し、指す。芳香族性は、環式非局在化および共鳴の現われとも考えることができる。これは、通常、電子が互いに単結合と二重結合で交互に結合している環状の原子配列の周りを自由に循環するのでそのように考えられる。
【0010】
本明細書では、「脂肪族の」という用語は、直鎖、分枝鎖、または環(この場合、脂環式と呼ばれる)として一緒に結合することができる炭素原子を含む化合物を意味し、指す。これらは、単結合(アルカン)、二重結合(アルケン)、または三重結合(アルキン)で結合することができる。単純な脂肪族化合物はメタン(CH)である。脂肪族としては、脂肪酸やパラフィン炭化水素などのアルカン、アルケン(エチレンなど)、およびアルキン(アセチレンなど)が挙げられる。
【0011】
本明細書では、「流体」は、連続した無定形物質、例えば液体または気体であり、分子が互いに通り越して自由に移動し、その容器の形状を有する傾向がある。
【0012】
本明細書では、「混合キシレン」または「混合キシレン」という用語は、約20から約80重量%のメタ−キシレン、約10から約60重量%のパラ−キシレン、場合によっては約10から約60重量%のオルト−キシレン、および場合によっては約0.1から約30重量%のエチルベンゼンを含む炭化水素の芳香族流を意味し、指す。
【0013】
本明細書では、「酸化可能な置換基」という用語は、炭素原子が芳香族核に直接結合しており、酸化の結果として、カルボキシル基に転化する任意の置換基を意味し、指す。
【0014】
操作例または別段の指示のある場合を除いて、本明細書に使用される成分の量を表す数はすべて、いかなる場合でも「約」という用語で修飾されていると理解されるものとする。
【0015】
今回、驚くべきことに、再充填可能な担持触媒系を用いた芳香族または脂肪族化合物の酸化のための改良プロセスであって、化合物は、対応する芳香族環の炭素原子に直接結合している少なくとも1つの酸化可能な置換基を含み、芳香族化合物が分子状酸素および/または空気と反応する改良プロセスが見出された。様々な実施形態において、化合物は脂肪族である。様々な他の実施形態において、化合物は芳香族である。様々な実施形態において、改良プロセスを、10バールより低い絶対圧力および約50℃から約250℃の温度で行う。
【0016】
したがって、一般に、本発明の様々な実施形態は、新規酸化プロセスを含む。さらに詳細には、本発明の様々な実施形態は、全体としてa)酸化触媒を用いて、液相芳香族前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、b)完成生成物を分離するステップと、c)溶媒および酸化触媒をパージするステップと、d)溶媒の少なくとも一部分を酸化反応装置に場合によっては再循環させるステップと、e)酸化触媒の少なくとも一部分を回収するステップと、f)酸化触媒の少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと、再活性化された酸化触媒を酸化反応装置にフィードするステップとを含む。様々な実施形態において、ステップ(a)から(e)は、閉じたおよび連続サイクルで実施することができる。
【0017】
酸化触媒の例示的非限定的な実施形態および/または開示は、米国特許第6,355,835号;米国特許第6,160,170号;米国特許第6,670,502号;米国特許第6,521,786号;米国特許第6,761,860号;米国特許第6,565,754号;および米国特許第6,833,472号に開示され、それらの内容は、本明細書にそれらの全体が呈示されているように参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明のプロセス条件は、大幅に異なっていてよい。様々な実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約50.0℃から約250℃で行う。代替実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約75.0℃から約200℃の温度で行う。代替実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約100℃から約150℃の温度で行う。
【0019】
酸化剤は、一般に好ましくは不活性ガスで希釈された分子状気体酸素である。実用性という明白な理由で、(分子状酸素で場合によっては濃縮された)空気が、この目的に最もよく使用される気体混合物である。酸化反応は、普通、溶媒として、普通含水率2から15%の有機酸、好ましくは酢酸の水溶液を使用して実施される。
【0020】
様々な実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約0.5バールから約10バールの圧力で行う。代替実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約1バールから約8バールの圧力で行う。代替実施形態において、本発明の新規プロセスまたはシステムを約2バールから約5バールの圧力で行う。
【0021】
本発明の様々な実施形態の酸化反応用溶媒は、普通C1〜C6脂肪族酸またはその混合物を含む。実施形態において、溶媒は少なくとも一部分、酢酸である。代替実施形態において、酸化用溶媒は少なくとも一部分、ギ酸である。一般に、本発明の実施形態で、任意の脂肪族酸が機能する。酸化用溶媒中の酸の典型的な濃度
【0022】
酸化可能な芳香族前駆体は、普通トルエン、p−キシレン、m−キシレン、メシチレン、および2,6−ジメチル−ナフタレンからなる群から選択される。しかし、一般に、任意の芳香族化合物/前駆体を選択することができる。
【0023】
様々な酸化触媒を本発明の実施形態で使用することができる。様々な実施形態において、触媒複合体は、一般に1つまたは複数の金属を普通反応溶媒に可溶な塩の形で含む。典型的には、適切な活性化剤を使用して、触媒を用いた酸化反応を促進する。金属は、触媒作用の最中にその酸化数が低下するものであり、本明細書に記載の固体床触媒を使用して、原子価数を上げ、金属の触媒効果を保持する。
【0024】
反応に添加されたものはいずれも、反応から除去しなければならないので、原子価を上げるための活性化剤の添加は回避される。
【0025】
本発明の触媒の様々な実施形態は、普通VIII族、VIIB族、およびIVB族に属する金属から選択される。様々な実施形態に適切な金属としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ネオジム、ガドリニウム、トリウム、ジルコニウムまたはハフニウム、コバルト、白金、パラジウム、および/またはルテニウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
適切な活性化剤としては、アセチル類、アルデヒド類、ケトン類、臭素、酢酸ジルコニウム、および/または同様なものが挙げられる。
【0027】
固体触媒床を使用して、使用済み触媒または原子価が低下した触媒を再生する。様々な実施形態において、固体触媒床をシリカ基材または他の適切な基材に担持させる。
【0028】
したがって、本発明の様々な実施形態は、一般に酸化触媒を再生するシステムおよび/またはプロセスを提供する。本発明の様々な実施形態は、種々の石油化学プロセスと共に使用することができる。本発明の実施形態は、イソフタル酸および/またはテレフタル酸(IPA/TA)を含む生成物流を生成するプロセスのための酸化触媒など、酸を生成するシステムおよび/またはプロセスと共に使用することができる。
【0029】
一般に、本明細書に開示される酸化触媒プロセスまたはシステムを用いてIPA/TAを含む生成物流を生成するプロセスのためのフィード流は、約1重量%から約40重量%のエチルベンゼン、約20重量%から約80重量%のメタ−キシレン、約5重量%から約30重量%のオルト−キシレン、および約0.5重量%から約40重量%のパラ−キシレンを含む。代替案において、炭化水素フィード流は、約1重量%から約20重量%のエチルベンゼン、約50重量%から約65重量%のメタ−キシレン、約20重量%から約30重量%のオルト−キシレン、および約0.5重量%から約5重量%のパラ−キシレンを含む。代替案において、炭化水素フィード流は、約0.1重量%から約50重量%のエチルベンゼン、約0.1重量%から約99.9重量%のメタ−キシレン、約0.1重量%から約99.9重量%のオルト−キシレン、および約0.1重量%から約99.9重量%のパラ−キシレンを含む。代替実施形態において、フィード流は、約20%のエチルベンゼン、約20%のオルト−キシレン、約40%のメタ−キシレン、および約20%のパラ−キシレンを含む混合キシレンフィード流を含む。
【0030】
ここで、図1を参照して、概括したプロセスステップを示す基本の流れ図の実施形態を開示する。一般に、本発明の様々な実施形態は、
酸化反応装置20中、溶媒および少なくとも部分再活性化触媒を含む酸化触媒の存在下で、液相芳香族前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
酸化生成物を酸化反応装置20から抜き取る(25)ステップと、
完成生成物を酸化生成物から分離する(30)ステップと、ここで、完成生成物減少酸化生成物が生成される;
完成生成物減少酸化生成物を抜き取る(35)ステップと、
溶媒の少なくとも一部分を酸化反応装置20に場合によっては再循環させる(37)ステップと、
完成生成物減少酸化生成物流、および場合によっては溶媒減少流39から、酸化触媒の少なくとも一部分を回収する(40)ステップと、
回収された触媒を再循環させる(45)ステップと、
再充填用固体触媒床10の上の酸化触媒の少なくとも一部分を再活性化する(10)ステップと、
再活性化された酸化触媒を酸化反応装置20にフィードする(7)ステップと
を含む。場合によっては、追加の触媒を添加して、損失および/または崩壊した触媒を埋め合わせることができる。触媒の若干量が触媒回収中に損失するものと予想される。
【0031】
溶媒の触媒回収ユニットからの再循環、または使用済み触媒の貯蔵および/もしくは再活性化された触媒の貯蔵、および/または同様なものなど、様々な他の操作の配列が存在し、当業者であれば理解されるであろう。
【0032】
一般に、いずれの溶媒も、当業者であれば理解されるように本発明の様々な実施形態で機能する。酸化で使用される溶媒の非排他的な一覧には、酢酸、水、他の酸、および/または同様なものが含まれる。同様に、一般に、酸化に有用な触媒はすべて、本発明の様々な実施形態で使用することができる。触媒の非排他的な一覧には、コバルト、マンガン、臭素、フッ素、および/または同様なものが含まれる。
【0033】
酸化プロセスの後に、得られた流は、濾過装置や乾燥装置などで除去されるべき触媒および溶媒を含有するものである。得られた流から触媒を分離し、再循環および再充填、または廃棄することができる。回収された溶媒は、再循環または廃棄物として放出させることができる。様々な乾燥装置および/または濾過装置が、分離および/または乾燥を行うことができる。この時点で、得られた流は、C−TAおよびC−IPAを含む粗製または未精製生成物流を含む。
【0034】
したがって、本発明の再充填用触媒床を利用した、酸を生成する様々なプロセスが本明細書に開示され、前記プロセスは、
a)酸化触媒を用いて、液相芳香族酸前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
b)完成生成物を分離するステップと、
c)前記溶媒および前記酸化触媒をパージするステップと、
d)前記酸化触媒の少なくとも一部分を回収するステップと、
e)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと、
f)再活性化された酸化触媒を前記酸化反応装置にフィードするステップと
を含む。
【0035】
少なくともメタ−キシレン、パラ−キシレン、およびエチルベンゼンを含むフィード流をイソフタル酸およびテレフタル酸を含む少なくとも1つの生成物流(IPA/TA)に転化するプロセスが本明細書にさらに開示され、前記プロセスは、
a)エチルベンゼンを前記フィード流から除去して、エチルベンゼン減少フィード流を生成するステップと、
b)前記エチルベンゼン減少フィード流からオルト−キシレンを除去して、オルト−キシレン減少フィード流を生成するステップと、
c)前記エチルベンゼン減少かつ前記オルト−キシレン減少フィード流を酸化させて、生成物流を生成するステップと、ここで、前記生成物流は、IPA/TAを0.5%〜約99.5%の間のIPAと約0.5%〜約99.5%の間のTAの割合で含む;
d)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと
を含む。
【0036】
様々な実施形態において、酸混合物が、本明細書に記載されるプロセスに従って生成される。
【0037】
本発明の再充填用触媒床を利用した、少なくともメタ−キシレンおよびパラ−キシレンを含むフィード流からイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む生成物流を生成するシステムも本明細書に開示され、前記システムは、
a.オルト−キシレン除去ゾーンと、
b.共酸化ゾーンと、
c.固体床触媒と、ここで、前記固体床触媒は前記酸化触媒を再生することができる;
を備え、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、メタ−キシレンより重い成分およびパラ−キシレンより重い成分を除去することができ、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、オルト−キシレン減少流を生成することができ、前記共酸化ゾーンは、メタ−キシレンとパラ−キシレンとを、粗イソフタル酸および粗テレフタル酸(C−IPA/C−TA)に酸化することができる。
【0038】
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形で実施することができる。記載された実施形態は、すべての点で例示にすぎず、限定するものではないとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入る特許請求の範囲への変更はすべて、それらの範囲内に包含されるものとする。さらに、本明細書に記載された発行された文献、特許、および出願はすべて、それらの全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
供給原料
一般に、エチルベンゼンおよびキシレンを含有する芳香族C混合物を、本発明のプロセスへのフィードとして使用することができる。一般に、フィード流は、約1重量%から約25重量%のエチルベンゼン、約20重量%から約80重量%のメタ−キシレン、約5重量%から約30重量%のオルト−キシレン、および約0.5重量%から約20重量%のパラ−キシレンを含む。代替案として、炭化水素フィード流は、約1重量%から約20重量%のエチルベンゼン、約50重量%から約65重量%のメタ−キシレン、約20重量%から約30重量%のオルト−キシレン、および約0.5重量%から約5重量%のパラキシレンを含む。代替実施形態において、フィード流は、約20%のエチルベンゼン、約20%のオルト−キシレン、約40%のメタ−キシレン、および約20%のパラ−キシレンを含む混合キシレンフィード流を含む。
【0040】
プロセス条件
本発明に従って、上記の供給原料を、酸化を起こすのに適切な転化条件下で触媒系と接触させることができる。これらの転化条件の例としては、約100℃から約200℃の温度、0psigから約300psigの圧力が挙げられる。これらの転化条件に代替するものとしては、約150℃から約175℃の温度、約50psigから約100psigの圧力を挙げることができる。
【0041】
本発明の様々な実施形態は、酸の生成において使用することができるものであり、酸を、次いでポリエステルポリマーなどのポリマーに転化することができる。ポリエステルポリマーは、ボトル、フィルム、繊維、または射出成形品が含まれるが、これらに限定されない様々な品目の生成において使用される。
【0042】
さらに別の実施形態において、少なくともメタ−キシレンおよびパラ−キシレンを含むフィード流をイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む少なくとも1つの生成物流に転化するプロセスと共に使用することができる本発明の再充填用触媒系が開示され、プロセスは、ステップを含む。
【実施例】
【0043】
一例としてパラ−キシレンを使用すると、酸化反応は図2に示すいくつかのステップを経由する。キシレンの酸化におけるCo3+とCo2+の有効性を構成するために、酸化の早期段階に焦点を合わせることが決定された。HPLCは、早期段階の酸化をモニターする理想的な分析方法である。反応の進行につれて、HPLCトレースで出発物のパラ−キシレンおよびメタ−キシレンが消失(保持時間3.2分で追跡)し、新しいピークが出現および消失するのを観察することによって、反応進行を測定した。図示する酸化生成物中間体は、2.6分、2.4分、および1.9分に出現する。TAはHPLCトレース(1.9分および1.5分)で出現することが知られている。
【0044】
酢酸Co(II)を酢酸Co(III)に転化する方法
a)過酢酸を使用したCoの酸化
Co(III)を含む溶液を、手順に従って以下の通り調製した。酢酸コバルト(II)四水和物(1当量)を酢酸に溶解して、淡紅色溶液を得た。混合物を撹拌しながら、過酢酸溶液(酢酸/水中40%、1当量)を滴下した。結果として起こる発熱反応によって、溶液の色が緑色に変化するで明らかなようにコバルト(III)を生成する。この溶液は、分解することなく室温で貯蔵することができる。あるいは、溶媒は蒸発することができ、緑色固体は室温で貯蔵すると安定である。6週間放置したとき、酢酸Co(III)触媒に顕著な変化は認められなかった。
【0045】
酢酸Co(III)溶液の生成は、変色によって、またHPLCによっても明らかになる。Co溶液の0.369分のトレースが完全に消失して、Co溶液の新しいピークが0.262分に出現した。
【0046】
HPLC:Agilent Technologies 1100シリーズ。Phenomenex C18カラム(50×4.60mm、3mm)。方法:90%H(0.1%ギ酸)−10%アセトニトリル(0.1%ギ酸)から10%H(0.1%ギ酸)−90%アセトニトリル(0.1%ギ酸)。流速:2.6mL/分。時間:5分。注入量:20pL。UV検出器(254nm)。
【0047】
いくつかの他の酸化体も、過酢酸の代わりに機能するものと想定される。一般に、任意の酸化体を使用することができる。実施形態において、酸化体は、ペルオキソ官能基を有する不均一系触媒である。本明細書では、「ペルオキソ」または「ペルオキシ」は、接尾語において、酸素原子の−O−O−基による置換を示す。
【0048】
酢酸CO(II)および酢酸CO(111)を使用したキシレンの酸化
米国特許第6,670,502号に開示され報告された反応手順は、キシレンを酸化する目的で使用し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。キシレンの酸化を迅速に開始させるのに十分な濃度のコバルト(III)が存在すべきであることが発見された。
【0049】
反応装置への全投入量に対する反応混合物中のCo濃度が約7000ppmに対応する、酢酸中の酢酸コバルト(II)および酢酸ジルコニウム触媒系を使用したメタ−キシレンとパラ−キシレンの混合物の酸化反応を調査した。反応混合物を100℃で加熱したが、キシレンの混合物が他の反応中間体(2.6分および2.4分)に転化し始めるまでに長い誘導期間(>6時間)があることが明らかになった。反応混合物の色が淡紅色/紫色から緑褐色に変化して初めて、反応は始まるということが観察された。長時間反応後に、出発物のキシレン(HPLCトレース:3.2分)は消費されたが、反応は完了しなかった。
【0050】
アセトアルデヒドをプロモーターとして、酢酸コバルト(II)と共に使用すると、酸化が起こる。濃度約3750ppmのCoを使用し、反応混合物を50〜60℃で加熱した。淡紅色から緑色溶液への変色を観察するためには、約15分間の誘導期間が必要とされた。3時間後、HPLCトレースで保持時間2.6分の中間体への転化率は80%であることがわかった。しかし、保持時間2.3分の中間体に完全に転化するためには、はるかに長い反応時間が必要であり、TAは48時間後に至るまで得られなかった。
【0051】
酢酸コバルト(II)、酢酸マンガン、および臭化カリウムを含む触媒系を用いると、5時間というより長い誘導時間および不完全な酸化が観察された。
【0052】
空気中プロモーターを使用することなく、酢酸コバルト(III)だけを使用し、酢酸を溶媒として使用して、120℃で実施された実験では、緑色溶液が約1時間後に淡紅色−紫色になることで示唆されるように、上記のプロモーターを使用した酢酸コバルト(II)の場合よりはるかに速い酸化が行われ、キシレンが急速に消費される。Co(II)を使用した同一の反応条件では、早期段階の酸化の前に長い誘導期間があった。
【0053】
キシレンの酸化後に、コバルト(III)触媒系を再利用可能にするために、反応条件および試薬は、コバルト(II)をコバルト(III)に再び酸化し戻すために十分でなければならないということが必要であるとわかった。図5は、コバルト(III)の反応パターンを示す。いくつかの文献の手順に従って、パラ−およびメタ−キシレンからテレフタル酸への酸化反応が試みられた。
【0054】
一例としてパラ−キシレンを使用すると、酸化反応は図2に示すいくつかのステップを経由する。
【0055】
キシレンからテレフタル酸への酸化
一例としてパラ−キシレンを使用すると、酸化反応は図2に示すいくつかのステップを経由する。
【0056】
酢酸Co(III)の様々な濃度および反応
酸化反応を実施するために混合物中に存在する様々な量の酢酸Co(III)を含む研究が行われた。反応をHPLCで7時間まで1時間ごとに追跡した。異なる4つの濃度(16000ppm、11000ppm、6000ppm、および1800ppm)のCoを調査した。Co量が多い(16000ppmおよび11000ppm)ほど、得られる転化が最速になる(淡青色および茶色の曲線を参照のこと。1時間反応した後の転化率約70〜80%)。しかし、その後の6時間については、混合物の色は緑色から濃紫色、最後には淡紅色に変化したが、転化率は一定のままであることが観察された。両方の場合において、生成された主な化合物は中間体1に相当し、中間体2は10%未満であった。一方、混合物中に存在するCo量が最少である(6000ppmおよび1800ppm)場合、酸化反応は、最初はより遅かったが、反応時間が長くなるにつれて、転化率が上昇した(橙色および濃青色の曲線、転化率約50%から転化率約80〜90%に上昇)。反応混合物は両方とも、数時間緑色のままであり、その後濃茶色/紫色(6000ppm)および濃青色/茶色(1800ppm)に変化した。6000ppmの酢酸Co(III)を利用すると、キシレンは中間体2および3により速く転化したが、1800ppmの溶液の場合は、キシレンはやはり主に中間体1に転化した。
【0057】
不均一系触媒の調製
過酢酸は、緑色の酢酸Co(III)溶液を合成するために適切な酸化体であることが決定した。したがって、「ペルオキソ」官能基を有する種々の不均一系触媒は、過酢酸を模倣することによって、溶液を酢酸Co(II)から酢酸Co(III)に酸化することができるはずである。
【0058】
シリカ担持ペルオキシカルボン酸の調製は、当技術分野で公知である。一般に、カルボン酸シリカをメタンスルホン酸および過酸化水素で処理して、アルケンのエポキシ化に使用することができる−COOHシリカを生成することができる。タンスルホン酸および過酸化水素を使用して、担持過酸を調製できることも報告されている。
【0059】
本実施例において、異なる2つの出発物シリカ(コハク酸およびカルボン酸)から、異なる3つの方法論に従って6つの不均一系触媒(Car1、Suc1、Car2、Suc2、Car3、Suc3)を調製する。これらの不均一系触媒はすべて、無色である。
【0060】
図6に示すように、これらの不均一系触媒は、硫黄官能基を介してシリカに結合している既存のモノまたはジカルボン酸から合成される。S結合を含むことなくジカルボン酸からなる代替の不均一系触媒も合成された(図7)。3つの新規不均一系触媒が得られた(Per1、Per2、およびPer3)。
【0061】
オキソ−ルテニウム触媒は周知の酸化体であり、したがって2つの新規Ru=O不均一系触媒が、異なる2つの方法論に従って調製された。不均一系Ru(V)触媒を使用して、不均一系Ru(III)触媒に還元することによって酢酸Co(II)溶液を酸化する。したがって、図8に示すように、オキソ−ルテニウムエチル/ブチルホスホナートシリカ(SiPORu=O)を合成して、黒色シリカを得た。
【0062】
あるいは、過酢酸/アセトアルデヒド/Oを使用することによるRuの酸化も報告されている。以下に示すように、これらの一般反応条件に従って、SiPORu=Oを調製して、濃茶色シリカを得た(図9)。
【0063】
両方の場合において、不均一系Ruを不均一系Ruに脱酸素化することが可能であると想定される。
【0064】
新規Co(III)触媒も調製した(図10、SiPOCo(III))。この不均一系触媒は、固定化Co(III)を溶液状態のCo(II)と交換する能力を有することがある。
【0065】
酢酸Co(II)を過酢酸と反応させることによって、酢酸Co(III)を調製した。次いで、その緑色固体をホスホン酸ナトリウム塩シリカに固定化した。乾燥した後に濃緑青色シリカになる緑色シリカが得られた。
【0066】
あるいは、SiPOCo(III)は、酢酸Co(II)をシリカに固定化して、紫色シリカSiPOCo(II)を生成し、過酢酸を用いた反応時にSiPOCo(III)に酸化することによって調製することができる(図11)。
【0067】
酸化試験反応
これらの合成された新規不均一系触媒、および既存する他の2つの不均一系触媒SiPOVOとSiPOMn(両方とも、PhosphonicS Ltd.、114 Milton park、Abingdon、OXON、OX14 4SA、U.K.から入手可能)を、酢酸コバルト(II)溶液から酢酸コバルト(III)溶液への酸化において試験した。この反応は、図12に示すように目視(淡紅色から緑色に変化)およびHPLCで追跡することができる。
【0068】
酸化試験反応条件は次の通りであった。1%の酢酸を含む12mlのCo(OAc)水溶液(淡紅色溶液、1mL)に、予め作製した過剰量の不均一系触媒(約10当量)を添加する。この試験反応は、最初に室温で実施した。
【0069】
HPLC: Agilent Technologies 1100シリーズ。Phenomenex C18カラム(50×4.60mm、3mm)。方法:90%H(0.1%ギ酸)−10%アセトニトリル(0.1%ギ酸)から10%H(0.1%ギ酸)−90%アセトニトリル(0.1%ギ酸)。流速:2.6mL/分。時間:5分。注入量:20μL。検出器(254nm)。
【0070】
1)コバルトUH)エチル/ブチルホスホナートシリカ
予め生成された緑色SiPOCo(III)は、室温で淡紅色溶液のCo(OAc)をCo3+約66%、Co2+34%の溶液に直ちに転化する。溶液の色は緑色に変化し、シリカは茶色がかった色になった。これは、溶液状態のCo(II)と固定化Co(III)の金属交換反応によるものであり、したがって固定化Coと固定化Coの混合物(茶色がかった色)が生成される。図13に示すSiPOCo(III)を再生する方法は、(以前に行われたように)過酢酸の添加を経るものである。
【0071】
下記など、触媒を酸化する方法論はいろいろ存在する。
【0072】
1)過酢酸を用いてCo(OAc)を酸化して、緑色固体Co(OAc)を生成し、次いでエチル|ブチルホスホナートシリカのナトリウム塩を使用して固定化して、緑色シリカのSiPOCo(III)を生成する。
【0073】
2)Co(OAc)をエチル|ブチルホスホナートシリカのナトリウム塩(SiPOCo(II)、紫色シリカ)に固定化し、このシリカを緑色シリカのSiPOCo(III)に酸化する。
【0074】
反応装置にSiPOCo(II)を充填することができ、次いで過酢酸の溶液が、固定床をSiPOCo(III)に酸化して、酢酸Co(II)の溶液から酢酸Co(III)への転化用の活性不均一系触媒を生成する第2の手順を使用することに決定した(図3)。
【0075】
初期の研究では、過酸化水素50%と酢酸の混合物および触媒量の硫酸を紫色固定化Co(II)触媒に添加し、淡緑色シリカが得られた。得られた不均一系触媒を使用して、溶液をCo(II)からCo(III)に転化した。この結果は、これらのステップについてそれぞれ、将来の段階において最適化が必要とされるが有用であった。
【0076】
2)不均一系触媒の残部の試験
前述したように合成された不均一系触媒の残部も、溶液の酢酸Co(II)から酢酸Co(III)への転化において試験した。どの場合にも、淡紅色酢酸Co(II)溶液をシリカに添加するときに、迅速な変色およびいくらかの泡立ちが観察された。これらの変色を図4に要約する。溶液を添加したときのシリカの即時の変色は永久的ではなく、場合によっては数分後に変化することが観察された。
【0077】
触媒
触媒の形および粒径は、本発明にとってクリティカルではなく、例えば使用する反応システムのタイプに応じて異なることがある。本発明において触媒の形状の非限定的な例としては、押出またはスプレー乾燥など、通常の方法を使用して形成されたボール、ペブル、球体、押出物、チャネルモノリス、ハニカムモノリス、微小球体、ペレット、またはローブ、トリローブ、クアドラローブ、ピル、ケーキ、ハニカム、粉末、顆粒などの構造形状が挙げられる。
【0078】
一般に、触媒は、溶媒および芳香族カルボン酸前駆体(単数または複数)を含む反応媒体に可溶性であってもよく、あるいは不均一系触媒を使用することができる。触媒は、均一系であろうと不均一系であろうと、典型的には1つまたは複数の重金属化合物、例えばコバルトおよび/またはマンガン化合物を含み、水素化プロモーターを場合によっては含むことができる。実施形態において、触媒はパラジウムである。
【0079】
触媒が不均一系の形である場合、連続的に流動する反応媒体と触媒との接触が確実になるように、触媒を反応ゾーン内に適切に配置することができる。この場合には、流動断面を過度に制限することなく、このような接触が確実になるように、触媒を適切に担持および/または反応ゾーン内に拘束してもよい。例えば、不均一系触媒を静止要素(例えば、透かし構造を形成する要素)に被覆もしくはその他の方法で塗布、または統合することができ、静止要素は、反応媒体がそれを越えて流動するように反応ゾーン内に位置している。このような静止要素はさらに、反応物質が反応ゾーンを通過するとき反応物質の混合を増強するように働くことができる。あるいは、触媒は、移動性ペレット、粒子、微細化された形、金属スポンジの形などの形態とすることができ、必要なら、操作中に、反応ゾーンを通って流動する反応媒体中に触媒ペレットなどが懸濁または浸漬されるように触媒を反応ゾーンに限定する手段が設けられている。これらの方式のいずれかで不均一系触媒を使用すると、明瞭に画定されたゾーンに触媒作用を限定することができ、その結果、反応媒体がゾーンを横切ると、それ以上の水素化は低減した速度で行われ、または顕著に抑制され得るという利点が与えられる。
【0080】
水素化触媒用の担体は、水素化反応に対して触媒活性がより低く、さらには不活性とすることができる。担体は多孔質とすることができ、表面上の細孔の面積を含めて、表面積が、典型的には少なくとも15m/gから500m/g、例えば50m/gから200m/gであり、約80m/gmから約150m/gの表面積が好ましい。触媒担体材料は、一般的な条件下で、実質的に耐食性および実質的に耐酸化性であるべきである。酸化触媒の担体成分は、単一材料または複合体材料とすることができ、後者を使用して、例えば所望の化学または物理諸特性を触媒に付与する。実施形態において、触媒担体材料は二酸化ジルコニウムを含む。代替実施形態において、担体は炭素である。一般に、いずれの触媒も本発明の様々な実施形態で機能する。
【0081】
プロセス
次に、図6を参照して、本発明のプロセスを行うシステムの実施形態は、酸の生成プロセスで使用することができるので開示する。一般に、メタ−キシレンおよびパラ−キシレンのフィードを含むフィード流201を酸化装置200にフィードする。この例示的実施形態において、エチルベンゼンに加えてトルエン、およびオルト−キシレンなどのより重い成分はすでに除去および/または最小限にされていると考えられる。酸化装置200には、溶媒および触媒の少なくとも一方が入れてあり、含酸素ガスまたは空気を流202としてフィードする。フィードは、キシレンからそれぞれの酸性の形への酸化、すなわちパラ−キシレンからTAおよびメタ−キシレンからIPAへの酸化を起こすのに十分な時間、酸化装置200中に滞留する。
【0082】
酸化装置200の上部部分からのオーバーヘッドガスまたはオフガスは、流202として除去することができ、オフガスは、冷却器208および他のユニットに通して処理することができ、その結果、環境制御型方式によるものではないオフガスの放出が減少またはなくなる。
【0083】
酸化した後、酸化されたフィード流201、触媒、および溶媒を含む流205を、流205として除去する。濾過装置210など、分離装置を使用して、流205から触媒および/または溶媒を除去し、流215を生じる。回収された触媒は、回収ユニット220に集められ、酸化装置200への流221として再処理される。
【0084】
次いで、流215を乾燥装置230で乾燥して、残留水分および/または溶媒をなくす。次いで、乾燥粗TAおよびIPA(粗生成物)を流235として抜き取り、貯蔵槽240に入れる。
【0085】
精製されたTAおよびIPAが望まれるとき、粗生成物を流245として抜き取り、溶解装置250にフィードし、当技術分野でよく用いられる様々な溶媒、熱、および/または圧力を使用して、粗生成物の溶解をもたらすことができる。
【0086】
粗酸を流255として水素化反応装置260にフィードし、不純物を水素と反応させ、生成した生成物を酸から分離することができる。次いで、得られた流265を一連の晶析装置270中で結晶化させ、次いで流275として分離装置280にフィードする。次いで、流285を乾燥装置290で乾燥し、純粋なテレフタル酸およびイソフタル酸の混合物を流295として抜き取る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸を生成するプロセスであって、
a)酸化触媒を用いて、液相芳香族酸前駆体を気体酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
b)完成生成物を分離するステップと、
c)前記溶媒および前記酸化触媒をパージするステップと、
d)前記酸化触媒の少なくとも一部分を回収するステップと、
e)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと、
f)再活性化された酸化触媒を前記酸化反応装置にフィードするステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
ステップ(a)から(f)を少なくとも1回繰り返す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(a)から(f)が連続サイクルで行われる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記溶媒の少なくとも一部分を前記酸化反応装置に再循環させるステップをさらに含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記再充填用固体触媒床が、VIII族、VIIB族、およびIVB族に属する少なくとも1つの金属を含む触媒を備える、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
少なくともメタ−キシレン、パラ−キシレン、およびエチルベンゼンを含むフィード流をイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む少なくとも1つの生成物流に転化するプロセスであって、
a.エチルベンゼンを前記フィード流から除去して、エチルベンゼン減少フィード流を生成するステップと、
b.前記エチルベンゼン減少フィード流からオルト−キシレンを除去して、オルト−キシレン減少フィード流を生成するステップと、
c.前記エチルベンゼン減少かつ前記オルト−キシレン減少フィード流を酸化させて、生成物流を生成するステップと、ここで、前記生成物流は、IPA/TAを0.5%〜約99.5%のIPAと約0.5%〜約99.5%のTAの割合で含む;
d.前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと
を含むプロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスに従って生成される酸混合物。
【請求項8】
パラ−キシレンまたはメタ−キシレンの一方を、前記エチルベンゼン減少かつ前記オルト−キシレン減少フィード流に添加するステップをさらに含む、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップ(d)が連続サイクルで行われる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくともメタ−キシレンおよびパラ−キシレンを含むフィード流からイソフタル酸およびテレフタル酸(IPA/TA)を含む生成物流を生成するシステムであって、
a.オルト−キシレン除去ゾーンと、
b.共酸化ゾーンと、
c.固体床触媒と、ここで、前記固体床触媒は前記酸化触媒を再生することができる;
を備え、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、メタ−キシレンより重い成分およびパラ−キシレンより重い成分を除去することができ、前記オルト−キシレン除去ゾーンは、オルト−キシレン減少流を生成することができ、前記共酸化ゾーンは、メタ−キシレンとパラ−キシレンの両方を、粗イソフタル酸および粗テレフタル酸(C−IPA/C−TA)に酸化することができるシステム。
【請求項11】
酸を生成するプロセスであって、
a)芳香族酸前駆体を酸素供給源の存在下で接触酸化するステップと、
b)前記酸化触媒の前記少なくとも一部分を再充填用固体触媒床の上に再充填するステップと
を含むプロセス。
【請求項12】
ステップ(a)から(b)を少なくとも1回繰り返す、請求項1から6または8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記再充填用固体触媒床が、VIII族、VIIB族、およびIVB族に属する少なくとも1つの金属を含む触媒を備える、請求項1から6または8のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−521010(P2011−521010A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511759(P2011−511759)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045199
【国際公開番号】WO2009/143531
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508338809)ジーティーシー テクノロジー エルピー (4)
【Fターム(参考)】