説明

酸素吸収性積層フィルムおよび包装容器

【課題】内容物を充填包装し、その包装体内に存在ないし発生する酸素を十分に捕捉し、その酸素捕集機能を発揮し、かつ臭味のない酸素吸収性積層フィルム等を提供する。
【解決手段】外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層、臭味バリア層およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルム、または、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層および臭味バリア性を有するヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムであって、前記酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる酸素吸収性の樹脂組成物からなり、前記臭味バリア層または臭味バリア性を有するヒートシール層は、メソポーラスシリカを0.01〜50質量%含有する樹脂からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の層が共押出されてなる酸素吸収性積層フィルム、前記酸素吸収性積層フィルムに基材樹脂層を積層した酸素吸収性積層体、更にガスバリア性フィルムを積層したガスバリア性酸素吸収性積層体、およびそれらを使用した包装容器に関し、更に詳しくは、酸素吸収層および臭味バリア層を含む共押出フィルムからなり、容器内の残存酸素を吸収すると共に臭味を防止した酸素吸収性積層フィルム等やそれらからなる包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化劣化が好ましくないとされる食品等の内容物が収容された包装体内の酸素を除去するために、内容物を酸素吸収剤の小袋と共にガスバリア容器内に収容・密閉する脱酸素包装方法等が知られている。しかしながら、内容物を電子レンジなどで加熱する場合には、予め酸素吸収剤を除去する必要があり、理想的には、容器をそのまま電子レンジに投入して内容物を加熱できることが望ましい。このため、酸素吸収層を積層した各種の酸素吸収性積層体が開発されている。
【0003】
例えば、酸素感応性製品を収納する容器として、外側セットと内側セットとからなり、前記外側セットは無機バリアー層を含み、前記内側セットは所定の酸素透過度を有する酸素捕捉層とヒートシール層とを含み、前記酸素捕捉層がポリアミドなどの被酸化性有機成分とコバルトなどの金属化合物とからなる包装用材料がある(特許文献1)。実施例には、外側セットとしてポリエチレンテレフタレートとアルミニウム箔とがポリウレタン系接着剤で接着された構成であり、内側セットがMXD6とコバルトとからなる層とヒートシール層とからなり、前記内側セットと外側セットとがポリウレタン系接着剤で接着されている包装用材料が開示されている。
【0004】
また、包装内部から包装外部に向けて、オレフィン系樹脂内面層/酸素バリアー性樹脂の第一の層/酸素吸収性樹脂層/環状オレフィン系共重合体層/酸素バリアー性樹脂の第二の層/オレフィン系樹脂外面層の積層構成を有することを特徴とする酸素吸収性包装体もある(特許文献2)。前記酸素吸収性樹脂層は、酸化性樹脂と遷移金属系触媒との樹脂組成物からなり、酸化性樹脂として、酸変性低密度ポリエチレンなどの、炭素側鎖を含み、且つ主鎖または側鎖にカルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基及びカルボニル基から成る群より選択された少なくとも1個の官能基を含む樹脂が開示されている。この酸化性樹脂は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基及びカルボニル基から成る群より選択された少なくとも1個の官能基を有しており、これらは何れも電子吸引性の基であって第三級炭素原子を活性化させ、および遷移金属触媒成分に対する吸着サイトとなるため、ラジカルの発生や酸素の付加における誘導期を短縮し、常態で樹脂の劣化を生じない少量の遷移金属触媒の存在下に酸素吸収力を発揮するとしている。実施例では、酸変性低密度ポリエチレンにコバルト濃度5000ppmで混練している。
【0005】
また、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、前記内層及び外層の間に酸素吸収層を有し、前記内層及び/又は外層の表面に無機膜層が設けられていることを特徴とするプラスチック多層容器もある(特許文献3)。熱可塑性樹脂と酸化触媒から成る酸素吸収層は、酸素を捕捉するとその樹脂が劣化してクラックを生じ、前記酸素吸収層上に無機膜層を設けると前記クラックが無機膜層に伝達し、ガスバリアー性の低下を招く点に鑑みてなされたものであり、上記構成によれば、炭酸ガスの透過防止及び樹脂中の残存酸素の捕捉を高度に行うことができる、という。
【0006】
さらに、少なくとも3層の共押出製膜化フィルムからなり、更に、上記の共押出製膜化フィルムの表面層を構成する第1層が、熱可塑性樹脂と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による白色樹脂層からなり、また、上記の共押出製膜化フィルムの中間層を構成する第2層が、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む樹脂組成物による酸素吸収性樹脂層からなり、更に、上記の共押出製膜化フィルムの裏面層を構成する第3層が、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物による透明ないし半透明の樹脂層からなることを特徴とする酸素吸収性多層積層フィルムもある(特許文献4)。酸素吸収性樹脂層としてラジカル発生剤、光増感剤を含むものであり、内容物を充填包装した後に包装用袋の内面に紫外光を照射し、次いで、開口部をヒートシールしてシール部を形成して密閉すると、紫外光は、酸素吸収性樹脂層に容易に到達し、これにより、該酸素吸収性樹脂層を構成する遷移金属触媒が酸化性樹脂に作用し、該酸化性樹脂が包装用袋内の酸素等を結合し、吸収する、という。
【0007】
また、酸素欠陥を有する酸化セリウムを使用した脱酸素剤もある(特許文献5)。鉄系脱酸素剤は反応の際に水分を必要とするため乾燥食品や電子部品などの水分を嫌うものを保存する場合にその性能を十分に発揮できず、金属探知機に反応し、電子レンジでの調理で高温になるなどの問題点に鑑みてなされたものであり、CeOx(ただしxは2未満の正数)で示される酸化セリウムは反応時に水分を必要とせず雰囲気中の酸素を吸収し、金属探知機にも反応せず、特に比表面積を0.6m2/g以下とすれば発火を抑制できる、という。前記酸化セリウムをガスバリア層とガス易透過層とではさんで積層体とした脱酸素機能フィルムも開示されている。
【0008】
また、酸素吸収性積層体を容器の蓋材として使用したものもある。例えば、基材フィルムの一方の面に、無機酸化物の蒸着膜、および、ガスバリア性塗布膜を設け、更に、該ガスバリア性塗布膜の上に、印刷模様層、および、ラミネート用接着剤層を順次に設け、次いで、該ラミネート用接着剤層を介してヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする無菌米飯充填包装容器用蓋材がある(特許文献6)。強度、耐熱性、防湿性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、透明性等に優れ、酸素や水蒸気等の透過を阻止しうる蓋材を使用した無菌包装米飯を製造し得る、というものである。常圧で無菌的に炊飯した御飯を、無菌の雰囲気の中で殺菌されたプラスチック製トレー等からなる包装容器の中に充填し、その開口部をプラスチック製蓋材等で密閉包装してなる無菌包装米飯の充填に使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2785405号公報
【特許文献2】特開2002−137347号公報
【特許文献3】特開2003−20023号公報
【特許文献4】特開2006−224399号公報
【特許文献5】特許4001614号
【特許文献6】特開2005−8160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最内層にヒートシール層を有する積層体は、それ自体を製袋することで包装容器として使用することができる。また、容器本体の蓋材などとしても使用することができる。例えば、無菌米飯充填包装容器は、電子レンジなどで加熱しうる利点があり、近年多用される容器である。このような蓋材として、たとえば特許文献6に記載されるヒートシール層を有する積層体がある。しかしながら、特許文献6に記載する無菌米飯充填包装容器用蓋材は、ガスバリア性を有するが、容器内部の酸素を除去することはできない。このため、より長期間の保存を目的として、酸素吸収性を付与できることが望まれる。
【0011】
一方、酸素吸収層を積層する包装用材料として上記特許文献1〜5があるが、特許文献1記載の包装用材料では、ガスバリア層としてアルミニウム箔をラミネート接着しており、アルミニウム箔を含むと電子レンジによる加熱が困難となる。また、特許文献2記載の酸素吸収性包装体は、本来、ブロー成形容器やチューブ容器を対象とするものである。したがって、ヒートシール層を有さず、無菌米飯充填包装容器用の蓋材として使用することはできない。同様に、特許文献3記載のプラスチック多層容器も容器を対象とするものであり、ヒートシール層が存在せず、蓋材として使用することができない。
【0012】
更に、特許文献4記載のフィルムは、酸素吸収性樹脂層としてラジカル発生剤、光増感剤を含むものであり、内容物を充填包装した後に包装用袋の内面に紫外光を照射する必要がある。
【0013】
また、特許文献5記載の脱酸素機能フィルムは、前記酸化セリウムからなる脱酸素層をガス易透過層とガスバリア層とで積層したものであるが、前記酸化セリウムからなる脱酸素層は酸素吸収性能に優れるが臭気があり、内容物の風味を変化させる場合がある。
【0014】
更に、多層フィルムは製袋によって包装容器として使用しうるものであり、加工適性を有する必要がある。
上記現状に鑑み、臭味がなく、酸素吸収性を有し、加熱調理器として電子レンジで加熱することができ、容器用包装材や蓋材などとして有用な酸素吸収性積層フィルムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、加工適性を有する酸素吸収性積層フィルムを提供することを目的とする。
また、このような酸素吸収性積層フィルムに更にガスバリア性などが確保された酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体を提供することを目的とする。
【0016】
更に、上記酸素吸収性積層フィルムや酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体からなる包装容器や蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、ポリアミドに遷移金属触媒を混練したものは酸素吸収性能を発揮し、かつ電子レンジによる加熱調理が可能であること、遷移金属触媒を含有する脱酸素層は、脱酸素反応の際に発生する副生成物によって臭気を有するが、メソポーラスシリカを配合した臭味バリア層を積層することで内容物の風味劣化を防止できること、酸素吸収層、臭味バリア層およびヒートシール層とを熱可塑性樹脂層と共に共押出製膜フィルムとすればラミネート接着剤を使用する際に発生する臭気を回避し、かつ効率的に酸素吸収性積層フィルムが製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち本発明は、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)、臭味バリア層(I)およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルム、または、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)および臭味バリア性を有するヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムであって、前記酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる酸素吸収性の樹脂組成物からなり、前記臭味バリア層または臭味バリア性を有するヒートシール層は、メソポーラスシリカを0.01〜50質量%含有する樹脂からなることを特徴とする酸素吸収性積層フィルムを提供するものである。
【0019】
また、前記メソポーラスシリカは、
(a)焼成後、X線回折パターンの少なくとも一つのピークが1.8nmより大きいd間隔を示し、6.7kPa(50トール)および25℃で物質100gあたり15gより大きいベンゼン吸着容量を有する無機質、多孔質、非層状の下記式(1)で示す組成の結晶相物質、
【0020】
【数1】

(式中、Mは1種以上のイオンであり、
nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、
qはMの重量モル平均原子価であり、
n/qはMのモル数またはモル分率である。)
または、
(b)直径が少なくとも1.3nmの均一な寸法の細孔の六方構造配列を有し、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質の上記記式(1)で示す組成の結晶相物質、
または、
(c)酸化物のモル比で下記表の組成を有する反応混合物を結晶化した結晶相物質を焼成処理したものである、上記酸素吸収性積層フィルムを提供するものである。
【0021】
【表1】

(但し、Mは1種またはそれ以上のイオンであり、eおよびfはそれぞれMおよびRの重量平均原子価であり、溶媒は炭素数1〜6のアルコール若しくはジオール、または水であり、Rは、物質の合成を助けるために使用される全有機物であって、
式:R1234+(但し、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4の少なくとも一つは炭素数6〜36のアリール基またはアルキル基であり、R1、R2、R3およびR4の残りのそれぞれは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)を有する有機誘導剤からなる全有機物である。)
また、上記酸素吸収性積層フィルムの前記熱可塑性樹脂層(I)の外側に、基材樹脂層を積層したことを特徴とする、酸素吸収性積層体を提供するものである。
【0022】
更に、前記酸素吸収性積層体の基材樹脂層の内側または外側に、ガスバリア性フィルムが積層されることを特徴とする、ガスバリア性酸素吸収性積層体を提供するものである。
さらに、上記酸素吸収性積層フィルム、上記酸素吸収性積層体、または上記ガスバリア性酸素吸収性積層体を製袋してなる、包装容器を提供するものである。
【0023】
加えて、本発明は、容器本体と蓋材とからなる容器であって、蓋材は、上記酸素吸収性積層フィルム、上記酸素吸収性積層体、または上記ガスバリア性酸素吸収性積層体であることを特徴とする、包装容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、酸素吸収層がポリアミドと遷移金属触媒とからなり、酸素吸収性に優れる。また、電子レンジなどによる内容物の加熱を行うことができる。
【0025】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、臭味バリア層が積層されるため、酸素吸収層の臭味が内容物に移行するのを防止でき、保存性に優れる。
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、共押出フィルムであるためラミネート接着剤による臭気の発生がなく、内容物の保存性に優れる。
【0026】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、最内層がヒートシール層であるため、それ自体を製袋して包装容器とすることができ、また蓋材として容器の一部として使用することができる。
【0027】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、更にガスバリア性フィルムなどを積層することができ、長期にわたる内容物の保持性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)(20)、酸素吸収層(10)、熱可塑性樹脂層(II)(20)、臭味バリア層(I)(30)およびヒートシール層(50)からなる。
【図2】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)(20)、酸素吸収層(10)、熱可塑性樹脂層(II)(20)および臭味バリア性を有するヒートシール層(40)からなる。
【図3】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)(20)、接着性樹脂層(70)、酸素吸収層(10)、接着性樹脂層(70)、熱可塑性樹脂層(II)(20)、臭味バリア層(I)(30)およびヒートシール層(50)からなる。
【図4】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)(20)、接着性樹脂層(70)、酸素吸収層(10)、接着性樹脂層(70)、熱可塑性樹脂層(II)(20)および臭味バリア性を有するヒートシール層(40)からなる。
【図5】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図3に示す酸素吸収性積層フィルムの最外層の熱可塑性樹脂層(I)(20)の外側に、更に臭味バリア層(II)(30)と熱可塑性樹脂層(III)(20)が積層された態様を示す図である。
【図6】本発明に係る酸素吸収性積層フィルムの層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図4に示す酸素吸収性積層フィルムの最外層の熱可塑性樹脂層(I)(20)の外側に、更に臭味バリア層(II)(30)と熱可塑性樹脂層(III)(20)が積層された態様を示す図である。
【図7】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図5に示す酸素吸収性積層フィルムの最外層に基材樹脂層(60)がラミネート接着剤(80)によって積層された態様を示す図である。
【図8】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図6に示す酸素吸収性積層フィルムの最外層に基材樹脂層(60)がラミネート接着剤(80)によって積層された態様を示す図である。
【図9】本発明に係るガスバリア性酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図7に示す酸素吸収性積層体の外側に、ガスバリア性フィルム(90)がラミネート接着剤(80)によって積層された態様を示す図である。
【図10】本発明に係るガスバリア性酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、図8に示す酸素吸収性積層体の外側に、ガスバリア性フィルム(90)がラミネート接着剤(80)によって積層された態様を示す図である。
【図11】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図12】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一は、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)、臭味バリア層(I)およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルム、または、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)および臭味バリア性を有するヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムであって、前記酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる酸素吸収性の樹脂組成物からなり、前記臭味バリア層または臭味バリア性を有するヒートシール層は、メソポーラスシリカを0.01〜50質量%含有する樹脂からなることを特徴とする酸素吸収性積層フィルムである。
【0030】
また、本発明の第二は、上記酸素吸収性積層フィルムの前記熱可塑性樹脂層(I)の外側に、基材樹脂層を積層したことを特徴とする、酸素吸収性積層体である。
また、本発明の第三は、上記酸素吸収性積層体の基材樹脂層の内側または外側に、ガスバリア性フィルムが積層されることを特徴とする、ガスバリア性酸素吸収性積層体である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
(1)酸素吸収性積層フィルム等の層構成
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、図1に示す層構成の共押出フィルムであり、熱可塑性樹脂層(I)(20)、酸素吸収層(10)、熱可塑性樹脂層(II)(20)、臭味バリア層(I)(30)およびヒートシール層(50)とからなる。なお、本発明において、熱可塑性樹脂層(I)と熱可塑性樹脂層(II)とは、同じものであっても異なっていてもよい。
【0032】
また、図2に示すように、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)(20)、酸素吸収層(10)、熱可塑性樹脂層(II)(20)および臭味バリア性を有するヒートシール層(40)がこの順に積層された共押出フィルムであってもよい。共押出フィルムであるからラミネート用接着剤を使用せずに4層が積層され、特にラミネート用接着剤に含まれる溶媒臭が問題となる収納物の包装容器として適切である。
【0033】
また、図3、図4に示すように、熱可塑性樹脂層(I)(20)と酸素吸収層(10)との間、および酸素吸収層(10)と熱可塑性樹脂層(II)(20)との間に、接着性樹脂層(70)を積層するものであってもよい。酸素吸収層(10)の両面に接着性樹脂層(70)を積層することで、熱可塑性樹脂層(I)や熱可塑性樹脂層(II)との接着性を向上させることができる。
【0034】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、図5、図6に示すように、図3、図4に示す最外層の熱可塑性樹脂層(I)(20)の外側に、更に臭味バリア層(II)(30)と熱可塑性樹脂層(III)(20)とが共押出によって積層されていてもよい。なお、本発明において、臭味バリア層(I)と臭味バリア層(II)とは、同じものであっても異なっていてもよい。本発明の酸素吸収性積層フィルムは、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)、臭味バリア層(I)およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルム、または、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)および臭味バリア性を有するヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムからなるが、前記熱可塑性樹脂層(I)の外側に、更に臭味バリア層(II)および熱可塑性樹脂層(III)が共押出によって積層することで、外部から侵入する臭気も遮断することができる。
【0035】
また、本発明の酸素吸収性積層フィルムは、図1〜図6に示す酸素吸収性積層フィルムの最外層にラミネート接着剤(80)を介して基材樹脂層(60)を積層し、例えば図7、図8に示す酸素吸収性積層体とすることもできる。基材樹脂層(60)を積層することで機械的強度を高め、耐突き刺し性などを確保することができる。
【0036】
更に、図9、図10に示すように、酸素吸収性積層体の外側に、ガスバリア性フィルム(90)を積層してガスバリア性酸素吸収性積層体とすることもできる。このようなガスバリア性フィルム(90)は、ラミネート用接着剤(80)を介して接着することができる。ガスバリア性フィルム(90)によってガスバリア性を確保することができる。
【0037】
また、図示しないが、前記ガスバリア性フィルム(90)の内側には、印刷層が形成されていてもよい。これにより内容表示の他、意匠を向上させることができ、更に高い遮光性が要求される場合には白ベタ印刷などを行うことができる。
【0038】
(2)酸素吸収層
本発明の酸素吸収性積層フィルムを構成する酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる。
【0039】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6−6、ホモポリマーの例としてポリ−m−キシリレンアジパミド、ポリ−m−キシリレンセバカミドおよびポリ−m−キシリレンスペラミド、コポリマーの例としてm−キシリレン/p−キシリレンアジパミドコポリマー、m−キシリレン/p−キシリレンピペラミドコポリマー、m−キシリレン/p−キシリレンアゼラミドコポリマーが挙げられる。脂肪族ジアミンの例として、ヘキサメチレンジアミン、環状ジアミンの例として、ピペラジン、芳香族ジアミンの例として、p−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン、芳香族ジカルボン酸の例として、テレフタル酸が挙げられる。
【0040】
その他、べンジルアミン、3−メチルベンジルアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、N,N'−ジメチルメタキシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルメタキシリレンジアミン、N,N'−ジメチルパラキシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルパラメタキシリレンジアミン、N,N'−ジエチルメタキシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルメタキシリレンジアミン、N,N'−ジエチルパラキシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルパラキシリレンジアミン、1,3,5−トリス(アミノメチル)ベンゼン、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと有機カルボン酸、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、トール油脂肪酸などのモノカルボン酸およびアジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸などのジカルボン酸との塩およびアミド、エポキシ樹脂硬化剤として広く用いられているメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンとホルムアルデヒド及びフェノ−ルとの反応によって得られるマンニッヒ塩基、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンとアクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのビニル化合物との付加体、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンとエポキシ化合物、例えばビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF系エポキ樹脂、ブチルグリシジルエーテルなどとの付加体、及びこれら硬化剤により硬化されたエポキシ樹脂硬化物、テトラグリシジルメタキシリレンジアミンで代表されるアミノ基含有エポキシ化合物、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジジイソシアネートで代表されるイソシアネート化合物とそれぞれから誘導されるポリウレタン等を例示することができるがこれらのものを複数配合して使用することもできる。ポリアミドは、密度が1.14〜1.22であることが好ましい。
【0041】
また、遷移金属触媒としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Sn、Cu又はその混合物から選択される遷移金属を使用することができる。
遷移金属としては、Co、Cu、Feまたはその混合物から選択される組成物、また、周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族、クロム等の第VI族、マンガン等の第VII族を好適に使用することができる。なお、上記の遷移金属の低価数の無機酸塩あるいは有機酸塩あるいは錯塩の形で使用する場合、無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンのオキシ酸塩、ケイ酸塩等がある。また、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等がある。
【0042】
具体例としては、酢酸、プロピオン酸塩、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3、5、5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マ−ガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
【0043】
本発明において、遷移金属触媒としては、具体的には、コバルトネオデカノエ−ト、コバルト2−エチルヘキサノエ−ト、コバルトオレエ−トおよびコバルトステアレ−トを使用することが好ましい。
【0044】
ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒との配合割合は、上記ポリアミド系樹脂100質量部に対し遷移金属触媒が、0.001〜10質量部である。遷移金属触媒が0.001質量部未満であると、触媒作用が低くなり、酸化反応が進行しない等の理由から好ましくなく、また、10質量部を超えると、触媒量が多すぎることで、酸化反応は進むものの、他の副反応等が発生すること、あるいは、コスト的に上昇すること等の理由から好ましくないものである。
【0045】
本発明において、上記酸素吸収層の膜厚としては、10〜30μm、より好ましくは、12〜20μmが望ましい。
(3)臭味バリア層
本発明の酸素吸収性積層フィルムに使用される臭味バリア層は、メソポーラスシリカを0.01〜50質量%含有する樹脂からなる。
【0046】
(i)樹脂
前記メソポーラスシリカを配合する樹脂としては、広く、熱可塑性樹脂を使用することができる。共押出による製造が容易だからである。このような熱可塑性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を例示することができる。
【0047】
(ii)メソポーラスシリカ
本発明で使用するメソポーラスシリカとは、細孔直径が2〜50nmの細孔を有するシリカ多孔体である。一般に、多孔体は、細孔に他の分子を吸着し、クラッキングやハイドロクラッキングを行うことができ、脱臭用吸着剤、触媒、酵素用担体、香料・生理活性物質の担体その他に使用することができるが、特に、細孔直径が2〜50nmであれば、従来のゼオライトに比べて細孔直径が大きく、ゼオライトでは吸着できなかった大分子も吸着することができる。
【0048】
本発明で使用する細孔直径が2〜50nmのメソポーラスシリカとしては、例えば、細孔直径が2〜50nmの蜂の巣状のシリカからなるハニカム状メソポーラスシリカ多孔体などを好適に使用することができる。なお、細孔の垂直断面の最大寸法を細孔の寸法とし、例えば六方構造の場合には、対向する二つの面の間隔が細孔の最大寸法となる。
【0049】
本発明で使用するメソポーラスシリカは、2〜50nmの細孔直径を有するものを広く使用することができ、その比表面積は、300〜1300m2/gのものを好適に使用することができる。この範囲であれば、特に、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる酸素吸収層の臭気の除去性に優れるからである。
【0050】
本発明で使用するメソポーラスシリカとしては、例えば、界面活性剤のミセルを鋳型として合成される細孔直径が2〜50nmのハニカム状メソポーラスシリカ多孔体を好適に使用することができる。例えば、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルホスホニウム、塩化オクタデシルトリメチルホスホニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、水酸化デシルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウムおよび水酸化ジメチルジドデシルアンモニウムなどの界面活性剤溶液に極限粒子径が0.02μmの沈降水和シリカを添加すると、前記界面活性剤の外周にシリカが蜂の巣状に結合する。このようにして得た結晶相物質を焼成処理すれば、界面活性剤が除去されたメソポーラスシリカとなる。使用する界面活性剤を適宜選択することで、蜂の巣状に形成される細孔直径を選択することができる。
【0051】
本発明で使用するメソポーラスシリカは、市販品であってもよい。例えば、太陽化学社製のメソポーラスシリカ、商品名「TMPS−1.5」、「TMPS−2.7」、「TMPS−4」などを好適に使用することができる。
【0052】
なお、本発明で使用するメソポーラスシリカは、更に、白金やパラジウムなどの貴金属、あるいはこれらの混合物を含むものであってもよい。そのような成分は、共結晶化によって組成中に存在することができる。
【0053】
本発明で使用するメソポーラスシリカとしては、例えば以下の(a)、(b)の結晶相物質からなるものであってもよい。すなわち、
(a) 焼成後、X線回折パターンの少なくとも一つのピークが1.8nmより大きいd間隔を示し、6.7kPa(50トール)および25℃で物質100gあたり15gより大きいベンゼン吸着容量を有する無機質、多孔質、非層状の下記式(1)で示す組成の結晶相物質、
【0054】
【数2】

(式中、Mは1種以上のイオンであり、
nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、
qはMの重量モル平均原子価であり、
n/qはMのモル数またはモル分率である。)
または、
(b) 直径が少なくとも1.3nmの均一な寸法の細孔の六方構造配列を有し、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質の上記式(1)で示す組成の結晶相物質である。
【0055】
上記結晶相物質は、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質の上記記式(1)で示す組成の結晶相物質であるから、大きな分子寸法を有する有機化合物、具体的には、置換または非置換の多環式芳香族成分を有する芳香族炭化水素、かさばったナフテン化合物、またはかさばった立体配置を有する高度置換化合物、例えば、分子寸法1.3nm以上のものの転化や触媒に有用に使用することができる。
【0056】
なお、上記結晶相物質の細孔の寸法は、厳密な結晶学的寸法ではなく、収着測定により決定した有効細孔寸法である。細孔の寸法を決定するのに好ましい方法は、従来公知のアルゴンの物理収着を使用するものである。すなわち、定温で試料上の相対圧力を変化させて試料が吸着したアルゴンの質量を測定し、吸着等温線をプロットする。等温線の勾配の急激な変化に対応する点は細孔への充填を示し、公知の数学的関係に適用して細孔の寸法を決定することができる。また、直径が6.0nm以上の細孔構造においては、下記式(2)で示すケルビン式を適用することができる。
【0057】
【数3】

(式中、γは吸着質の表面張力であり、Vは吸着質のモル体積、θは接触角(通常は実用上の理由により0とする)、Rは気体定数、Tは絶対温度、rkは毛管凝縮(細孔)の半径、P/P0は相対圧力(物理吸着等温式から)である。)
上記ケルビン式は、細孔構造における吸着を毛管凝縮現象として取り扱い、吸着が起こる圧力を表面張力と吸着質(ここではアルゴン)の接触角とにより細孔直径に関係付けたものである。ケルビン式が基にする原理は、直径が5から100nmの範囲の細孔において有効である。ケルビン式を適切に適用できない細孔壁部の吸着質の表面層の効果を修正して細孔直径を正確に測定するため、細孔寸法の測定に使用されるケルビン式の特別の適用として、ドリモアおよびヒール(D.Dollimore and G.R.Heal)の「ジェイ・アプライド・ケム(J.Applied Chem.)、14巻、108頁、1964年」を適用する。ドリモアとヒールの方法は脱着等温線に適用するために導出されたものであるが、単にデータを逆に入れることにより吸着等温線にも良好に適用することができる。
【0058】
本発明で使用する結晶相物質は、高い収着容量、および極端に大きな細孔の開口を含み、細孔の垂直断面の最大寸法を細孔の寸法とする。六方構造の場合には、対向する二つの面の間隔が細孔の最大寸法となる。なお、結晶相物質とは、焼成後、例えばX線、電子、中性子回折による回折パターンが少なくとも一つのピークを与えるのに十分な規則性を有する物質とする。本発明で使用する結晶相物質は、電子回折および透過電子顕微鏡で容易に観察しうる開口したチャンネルがほぼ六方構造配列をとるものを好ましく使用することができる。特に、物質の試料を適切な向きに置いた透過電子顕微鏡写真は、大きなチャンネルの六方構造配列を示し、対応する電子回折パターンは回折極大値を有するほぼ六方構造の配列を与えるものである。電子回折パターンのd100間隔は、六方構造格子のhk0投影の隣接する点の間隔であり、電子顕微鏡で観察されるチャンネル間の繰り返し距離a0は、下記式(3)で関係付けられる。
【0059】
【数4】

この電子回折パターンで観察されるこのd100間隔は、物質のX線回折パターンにおける低角度ピークのd間隔に相当する。このパターンは、独特の100、110、200、210等の反射である六方構造のhk0部分集合とこれの対称の関係にある反射とで表示することができる。ここで、チャンネルの六方構造(ヘキサゴナル)配列とは、数学的に完全なヘキサゴナル対称のみでなく、物質中のほとんどのチャンネルが最も近い六つのチャンネルによって実質的に等距離で取り囲まれていることを意味する。なお、上記結晶相物質の細孔の寸法は、1.3〜20nmのメソポーラス範囲であり、電子回折および透過電子顕微鏡で容易に観察しうる開口したチャンネルがほぼ六方構造配列の結晶相物質を焼成処理したものである。
【0060】
本発明で使用する結晶相物質は、極度に低い角度領域に数個の明確な極大値を有する六方構造のX線回折パターンを与えるものであるが、X線回折パターンの低角度領域においてただ1つの明確なピークを有するものであってもよい。
【0061】
本発明で使用する結晶性物質は、その焼成された形態において、物質の電子回折パターンのd100値に対応するd間隔が約1.8nm(CuKα線で4.909度の2θ)より大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示すものである。また、d間隔が約1nm(CuKα線で8.842度の2θ)よりも大きい位置に少なくとも2つのピークを有し、少なくとも1つのピークは、d間隔が1.8nmよりも大きい位置にあり、最強のピークの約20%よりも大きい相対強度でd間隔が1nmよりも小さい位置にピークが存在しないX線回折パターンを示すものであることが好ましい。さらに好ましくは、最強のピークの約10%よりも大きい相対強度で1nmよりも小さいd間隔の位置にピークを持たないものである。好ましい六方構造配列において、X線パターンの少なくとも1つのピークは、物質の電子回折パターンのd100値に対応するd間隔を有する。
【0062】
なお、本願明細書において、X線回折データは、θ−θ結晶構造、CuKα線、およびエネルギー分散型X線検出器を使用するシンターグ・ピー・エー・ディー・エックス自動回折装置によるものとする。入射X線および回折X線の両方のビームをダブルスリットの入射および回折コリメーション系でコリメーションする。使用したスリットのサイズは、X線管源から始めて、それぞれ0.5、1.0、0.3、そして0.2mmである。異なるスリット系によるとピーク強度が異なる。
【0063】
なお、回折データは、2θを0.04度ずつ10秒毎の計数時間で段階的にスキャンして記録した(θはブラッグ(Bragg)角)。層間間隔dはnm単位で計算し、バックグラウンドを差し引いたラインの相対強度I/I0(I0は最強ラインの100分の1の強度)はプロファイル・フィッティング・ルーチンを使用して導き、強度は、ローレンツ効果および分極効果のため補正をしていない。なお、相対強度は、vs(非常に強い)を75〜100で、s(強い)を50〜74で、m(中位)を25〜49で、w(弱い)を0〜24で表わす。
【0064】
シングルラインとして掲載してある回折データは、実験用の高分解能や結晶学上の交換等のような特定の条件において分解できるかまたは部分的に分解できるように見える多くの重なりあったラインからなると解すべきである。一般に、結晶学上の変化は構造上の実質的な変化を伴わずに、単位格子パラメーターの軽度の変化および/または結晶の対称性の変化を含み得る。相対強度の変化を含むこれらの軽度の効果は、カチオン含量、骨格構造、細孔の充填の状態および程度、熱および/または水熱履歴、そして粒子寸法/形の影響、構造の不規則性、またはX線回折の従来技術で知られるその他の要因によるピークの幅/形状の変動における差異の結果として生じうる。
【0065】
本発明で使用する結晶相物質は、6.7kPa(50トール)および25℃で結晶100gあたり約15gより大きい平衡ベンゼン吸着容量を示す。平衡ベンゼン吸着容量は、付随する不純物による細孔の封鎖がないことを示す試料について測定する。水は、例えば熱処理等の脱水方法で除去することができる。シリカ等の無機非晶質物質や有機物は酸や塩基或いは他の化学薬剤および/または物理的方法(例えば、焼成)で除去することができるので、本発明の物質に不有益な影響を及ぼさずに、障害物を除去することができる。
【0066】
本発明で使用するメソポーラスシリカを構成する結晶相物質は、酸化物のモル比で表して下記表に示す組成を有する反応混合物を結晶化させて得られる結晶相物質を焼成処理したものであってもよい。
【0067】
【表2】

上記組成において、Mは1種またはそれ以上のイオンであり、eおよびfはそれぞれMおよびRの重量平均原子価であり、溶媒は炭素数1〜6のアルコール若しくはジオール、または水であり、Rは、物質の合成を助けるために使用される全有機物であって、
式:R1234+(但し、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4の少なくとも一つは−C613、−C1021、−C1633および−C1837等炭素数6〜36のアリール基またはアルキル基であり、R1、R2、R3およびR4の残りのそれぞれは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)を有する有機誘導剤からなる全有機物である。
【0068】
前記Rとしては、セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルホスホニウム、オクタデシルトリメチルホスホニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、セチルピリジニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムおよびジメチルジドデシルアンモニウム化合物などを好適に使用することができる。これらを有機誘導剤と称する。
【0069】
また、前記Rで示される有機誘導剤に加えて、
式:R1234+(但し、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)を有する付加的有機誘導剤を併用してもよい。このような付加的有機誘導剤としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウム化合物などがある。
【0070】
前記式(1)の組成を示す結晶性物質は、合成したままの形態において、無水物を基にして、下記式(4)で示される組成を有する。
【0071】
【数5】

(式中、Mは1種以上のイオンであり、
nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、
qはMの重量モル平均原子価であり、
Rは、イオンとしてMに含まれず、物質の合成において助けるために使用される全有機物、rはRの係数、即ち、Rのモル数またはモル分率である。)
MとRの成分は結晶化の際にそれらが存在する結果として物質に取り込まれており、容易に除去することができ、またはMについては、後結晶化法などにより交換することができる。例えば、合成したままの形態の物質の元のM、例えば、ナトリウムまたは塩素のイオンは、イオン交換によって他のイオンに交換する。好ましい交換イオンは、金属イオン、水素イオン、水素前駆体、例えば、アンモニウムイオン、およびこれらの混合物である。特に好ましいイオンは、炭化水素転化反応のために触媒活性を仕立てるものである。これは、元素周期表のIA族(例えば、K)、IIA族(例えば、Ca)、VIIA族(例えば、Mn)、VIIIA族(例えば、Ni)、IB族(例えば、Cu)、IIB族(例えば、Zn)、IIIB族(例えば、In)、IVB族(例えば、Sn)およびVIIB族(例えば、F)の金属、希土類金属、および水素、ならびにこれらの混合物を包含する。
【0072】
上記式で定義する組成を有する物質は、下記組成の反応混合物を使用して調製すことができる。
【0073】
【表3】

上記Rで示される有機誘導剤としては、前記した有機誘導剤であるセチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルホスホニウム、オクタデシルトリメチルホスホニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、セチルピリジニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムおよびジメチルジドデシルアンモニウム等の化合物などを好適に使用することができ、これらは水酸化物、ハロゲン化物、シリケートされる。これにより、有機誘導剤であるセチルトリメチルアンモニウムを水酸化して得られる水酸化セチルトリメチルアンモニウムや、ミリスチルトリメチルアンモニウムを臭素化して得られる臭化ミリスチルトリメチルアンモニウムなどは界面活性剤となり、溶媒中でミセルを形成し、これによって所望する超大孔物質の核を形成し、成長させるテンプレートとなる。
【0074】
反応混合物中には、更に、前記有機誘導剤の他、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウム化合物などの付加的有機誘導剤を含むことが好ましい。なお、前記有機誘導剤と付加的有機誘導剤のモル比は、100/1〜0.01/1であることが好ましい。付加的有機誘導剤が存在する場合、反応混合物中のR2/fO/(SiO2)のモル比は0.1〜2.0であることが好ましく、0.12〜1.0が最も好ましい。
【0075】
更に、結晶相物質の細孔寸法を変化させるために、更に有機補助剤を含むことができる。この有機補助剤は、(1)炭素数5〜20の芳香族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換および炭素数1〜14のアルキル置換誘導体、(2)炭素数5〜20の環状および多環状脂肪族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換および炭素数1〜14アルキル置換誘導体、(3)炭素数3〜16の直鎖状および分枝状脂肪族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換誘導体のいずれかを使用することができる。なお、このような有機補助剤のハロゲン置換基としては、臭素が好ましい。
【0076】
炭素数1〜14アルキル置換基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基およびそれらの組合せ等の直鎖または分枝状脂肪族鎖であってよい。この有機補助剤には、例えばp−キシレン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンおよびトリイソプロピルベンゼンを含む。
【0077】
反応混合物中に有機補助剤を含む場合、有機補助剤/SiO2のモル比は0.05〜20、好ましくは0.1〜10であり、有機補助剤/有機誘導剤のモル比は0.02〜100、好ましくは0.05〜35である。
【0078】
また、ケイ素源として、例えば4級アンモニウムシリケートのような有機シリケートを少なくとも部分的に使用することが好ましい。この例としてテトラメチルアンモニウムシリケートおよびテトラエチルオルトシリケート等があるが、これらに限らない。
【0079】
上記結晶性物質を製造するには、必要な結晶を形成するまでの間、一般には5分間から14日間、更に好ましくは1〜300時間、上述の反応混合物を温度25〜250℃、好ましくは50〜175℃および好ましくはpH9〜14に保持する。これにより結晶化固体を得ることができる。
【0080】
ついで、結晶化固体に含まれる使用した有機成分の一部分または全部を除去する。
前記結晶化固体は、特にその金属、水素およびアンモニウム形態において、焼成処理して使用する。この焼成処理としては、一般に、400〜750℃の温度で、1分以上で20時間以下、好ましくは1〜10時間である。減圧条件下でもよいが、常圧で、空気、窒素、アンモニアなどが存在してもよい。
【0081】
上記によって結晶相物質を得るには、例えば有機誘導剤として水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液を使用し、これにテトラメチルアンモニウムシリケート溶液を混合し、次いで沈降水和シリカ(遊離水約6質量%、水和結合水約4.5質量%含有、極限粒子径0.02μm)を添加し、95℃の蒸気箱内に一晩放置することで、結晶相物質を得ることができる。これを室温で乾燥した後に、窒素中で540℃で1時間焼成し、ついで空気中で6時間焼成する。焼成生成物は、表面積が475m2/gで、平衡吸着容量(g/100g)は、H2O8.3、シクロヘキサン22.9、n−ヘキサン18.2、ベンゼン21.5であった。この焼成生成物のX線回折パターンでは、10Å(1.0nm)単位のd間隔が8.842゜の2θ(CuKα線)に対応し、18Å(1.8nm)単位が4.908゜に対応し、d間隔3.78±0.2nmに非常に強い相対強度線、2.16±0.1および1.92±0.1nmに弱い相対強度線を含む。透過電子顕微鏡(TEM)が、均一な細孔の六方構造配列の像と約3.9nmのd100値で六方構造の電子回折パターンを示し、平均細孔直径は3.22nmである。
【0082】
また、例えば有機誘導剤として水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液を使用し、付加的有機誘導剤として水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を併用し、これに沈降水和シリカ(遊離水約6質量%、水和結合水約4.5質量%含有、極限粒子径0.02μm)を添加し、150℃の蒸気箱内に一晩放置することで、結晶相物質を得ることができる。これを室温で乾燥した後に、窒素中で540℃で1時間焼成し、ついで空気中で6時間焼成する。焼成生成物は、表面積が993m2/gであり、平衡吸着容量(g/100g)は、H2O7.1、シクロヘキサン47.2、n−ヘキサン36.2、ベンゼン49.5であった。この焼成生成物のX線回折パターンは、d間隔3.93±0.2nmに非常に強い相対強度線、2.22±0.1および1.94±0.1nmに弱い相対強度線を含む。
この結晶性物質の平均細孔直径は、3.54nmである。
【0083】
本発明で使用する結晶相物質は、水素化/脱水素機能を行う場合に、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、または白金もしくはパラジウムなどの貴金属、あるいはこれらの混合物のような水素化成分とともに組み合わせて触媒成分として使用することができる。そのような成分は、共結晶化によって組成中にあり得、IIIB族元素、例えばアルミニウムがその中に含浸されたまたはそれと物理的に混合された構造にある程度で組成中に交換され得る。そのような成分は、そのままそれに含浸でき、例えば、プラチナの場合には、プラチナ金属含有イオンを含有する溶液でシリケートを処理すればよい。従って、この目的のための好適なプラチナ化合物は、塩化白金酸、塩化第一白金、および白金アミン錯体を包含する種々の化合物を包含する。
【0084】
更に、本発明で使用する結晶性物質は、有機化合物転化プロセスにおいて触媒成分としてまたは吸着剤として使用した場合に、少なくとも部分的に脱水されていることが好ましい。これは、空気または窒素などの雰囲気下で、常圧、減圧または加圧下で、200〜595℃の温度で、30分〜48時間にわたって加熱することによって行える。脱水は、単に物質を真空雰囲気下に配置することによって室温で行えるが、充分な量の脱水を行うには長時間を要する。
【0085】
(iii)メソポーラスシリカの配合比
本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、メソポーラスシリカは、樹脂に0.01〜50質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.01質量%を下回ると臭味の除去効果が十分でない場合がある。また、本発明の酸素吸収性積層フィルムは、共押出フィルムであり、ドライラミネート接着剤を使用せずに積層できる点に特徴がある。メソポーラスシリカの含有量が50質量%を超えると、製膜製が低下する場合がある。
【0086】
本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、臭味バリア層の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
(iv)臭味バリア性を有するヒートシール層
本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、前記臭味バリア層をそのまま臭味バリア性を有するヒートシール層として使用することができる。臭味バリア層を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であり、ヒートシール性を有する。このため、前記臭味バリア層をそのまま臭味バリア性を有するヒートシール層として使用し、ヒートシール層の積層を回避することができる。
【0087】
本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、臭味バリア性を有するヒートシール層は厚さは、5〜60μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
(4)接着性樹脂層
接着性樹脂としては、酸素吸収層(10)の両面に積層され、前記熱可塑性樹脂層(I)、熱可塑性樹脂層(II)と酸素吸収層(10)とを接着する樹脂層である。酸素吸収層がポリアミド系樹脂を主体とするものであるから、本発明で使用する接着性樹脂としては、ポリアミドに密着しうるものを好適に使用することができる。具体的にはオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(マルチサイト触媒を使用して重合したポリマー、LLDPE)、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)使用して重合したエチレンーα・オレフィン共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂、その他等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。上記接着性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、本発明の酸素吸収性積層体を構成するヒートシール層と同質である。したがって、上記接着剤樹脂によって熱可塑性樹脂層と酸素吸収層とを接着することができる。
【0088】
本発明では、接着性樹脂層を構成する樹脂は、密度が0.88〜0.92であることが好ましい。その理由は、加工適性、接着性が向上するためである。接着剤樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三菱化学社製、商品名「モディックM545」や「モディックAP P555」、三井化学社製、商品名「アドマー QF570」などがある。
【0089】
このような接着性樹脂層は、厚さ3〜15μm、好ましくは5〜10μmである。
(5)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0090】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。特に、シングルサイト系メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系ランダム共重合体が好適である。具体的には、プロピレンとエチレン、あるいは、プロピレンと1−オクテンとのブロックまたはランダムコポリマーからなるポリプロピレン系ランダム共重合体である。接着性に優れるからである。ヒートシール層を構成する樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、0.2〜4.0g/minであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0である。0.2g/minを下回ると、加工適性の点で不利である。一方、4.0g/minを超えると、加工適性の点で不利である。なお、本発明において、メルトフローレイト(MFR)とは、JIS K6921に準拠した手法から測定したものであり、また、密度は、JIS K7112に準拠した手法から測定したものである。
【0091】
上記のヒートシール層は、厚さ5〜60μm、好ましくは10〜30μmが望ましい。
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、2層以上の多層であってもよい。
【0092】
また、ヒートシール層を顔料や染料を含有する着色層と含まない層とに分離し、前記着色層として、例えば、白色顔料や染料を混練して遮光性に優れる白色樹脂層などとすることができる。
【0093】
本発明において白色樹脂層などの着色層を構成する白色系着色剤としては、白色系の各種の無機系ないし有機系の染料、顔料等の着色剤の1種ないし2種以上の混合物を使用することが望ましいものである。具体的には、例えば具体的には、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、その他等の白色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。これらは、包装容器の美粧性を損なうことなく、太陽や蛍光灯等の透過を阻止ないし遮断し、包装袋内に充填包装した内容物の分解ないし変質、褪色、その他等の光劣化を防止することができる。着色層において、着色料の配合量は、ヒートシール層を構成する樹脂に対し、0.1〜30質量、好ましくは、0.5〜20質量%である。
【0094】
本発明では、上記白色染料または白色顔料に限定されず、他の色彩の顔料や染料を使用して着色層を形成することができる。
このような着色層を形成する場合には、着色層の厚さは厚さ5〜60μm、好ましくは10〜40μmであることが望ましい。この範囲であれば目的の着色による効果を得る事ができる。
【0095】
また、このような着色層を形成した場合には、最内層に着色層がないヒートシール層を形成する。顔料や染料として無機チタンなどを混練するとヒートシール性が低下するが、最内層に顔料や染料を含まない層を形成することで、ヒートシール性を確保することができる。この際の顔料や染料を含まない層の厚さは、5〜30μm、好ましくは5〜30μmである。この範囲で十分なヒートシール性を確保することができる。
【0096】
(6)熱可塑性樹脂層
本発明の酸素吸収性積層フィルムでは、上記した酸素吸収層や臭味バリア層を積層するに際して熱可塑性樹脂層が積層される。
【0097】
熱可塑性樹脂層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、上記したヒートシール層を構成する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂などを使用することができる。
【0098】
また、本発明では、酸素吸収層としてポリアミド系樹脂を主体とするものであるため、熱可塑性樹脂層としては、ポリアミドに密着しうるものを好適に使用すれば、前記した接着性樹脂層(70)を積層することなく、密着性を確保することができる。具体的にはオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(マルチサイト触媒を使用して重合したポリマー、LLDPE)、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)使用して重合したエチレンーα・オレフィン共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂、その他等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。上記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、本発明の酸素吸収性積層フィルムを構成するヒートシール層と同質である。したがって、上記熱可塑性樹脂によって酸素吸収層やヒートシール層を接着することができる。
【0099】
上記したポリアミドなどに密着性に優れる熱可塑性樹脂層を構成する樹脂は、密度が0.88〜0.92であることが好ましい。その理由は、加工適性、接着性が向上するためである。このような熱可塑性樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三菱化学社製、商品名「モディックM545」や「モディックAP P555」、三井化学社製、商品名「アドマー QF570」などがある。
【0100】
なお、本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、上記熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層とが共通する場合がある。この場合、酸素吸収層(10)より外側の層を熱可塑性樹脂層(I)(20)とし、前記熱可塑性樹脂層(I)(20)に加えて酸素吸収層(10)に直接接触する層が存在する場合に、これを接着性樹脂層(10)とする。
【0101】
また、熱可塑性樹脂層は、これに顔料や染料を添加して、着色層とすることもできる。
なお、本発明の酸素吸収性積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層が複数積層される場合には、いずれも同一であっても異なってもよい。
【0102】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、最内層がヒートシール層(50)または臭味バリア性を有するヒートシール層(40)であり、これらはいずれも熱可塑性樹脂である。最外層に熱可塑性樹脂層(I)(20)を積層することで、最内層と最外層とが共通するため、得られる酸素吸収性積層フィルムのカールを防止することができる。酸素吸収性積層フィルムをそのまま包装用材料として使用する場合や、酸素吸収性積層フィルムに更に他のフィルムを積層する場合に、酸素吸収性積層フィルムの扁平が維持されない場合には加工中にひだや耳折れが発生し、安定した生産が困難となる。本発明では、酸素吸収性積層フィルムの最外層に熱可塑性樹脂層(I)(20)を設けることで安定した加工を行うことができる。
【0103】
このような熱可塑性樹脂層は、厚さ3〜15μm、好ましくは5〜20μmである。
(7)基材樹脂層
本発明では、前記酸素吸収性積層フィルムに更に基材樹脂層を積層して、酸素吸収性積層体とすることができる。このような基材樹脂層は、共押出で積層してもよいが、基材樹脂フィルムをラミネート用接着剤を介して積層するものであってもよい。酸素吸収層の内側に臭味バリア層が積層されるため、ラミネート用接着剤による臭気の内容物への移行を効率的に防止しうるからである。
【0104】
基材樹脂層としては、ポリアミド系樹脂またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂を使用する。
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。ポリアミド系樹脂は、密度が比重1.14〜1.22g/m3であることが好ましい。その理由は、押出し特性などの加工適性に優れるからである。
【0105】
また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートを好適に使用することができる。ポリエステル系樹脂は、比重1.00〜1.41g/m3であることが好ましい。その理由は、押出適性に優れるからである。
【0106】
本発明において、上記基材樹脂層の膜厚としては、5〜25μm、より好ましくは、5〜15μmが望ましい。
なお、上記基材樹脂層の製膜化に際して、例えば、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0107】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0108】
(8)ガスバリア性フィルム
本発明では、酸素や水蒸気の透過を阻止しうる各種のガスバリア性フィルムを積層することができる。
【0109】
(a) ポリビニルアルコール
本発明では、ガスバリア性フィルムとして、ポリビニルアルコールを好適に使用することができる。ポリビニルアルコールからなるガスバリア性フィルムの厚さに制限はないが、好ましくは15〜25μmである。
【0110】
一方、ポリビニルアルコールは単層フィルムとして使用することができるが、水溶性高分子であるため、耐水性に優れる基材フィルムにポリビニルアルコールからなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、耐水性を確保することができる。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0111】
(b) エチレン・ビニルアルコール共重合体
本発明では、ガスバリア性フィルムとして、エチレン・ビニルアルコール共重合体も好適に使用することができる。エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア性フィルムの厚さに制限はないが、好ましくは10〜30μmである。
【0112】
一方、エチレン・ビニルアルコール共重合体は単層フィルムとして使用することができるが、基材フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、機械的特性など基材フィルムに応じた各種の特性を向上させることができる。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0113】
(c) ガスバリア性積層フィルム
本発明で使用するガスバリア性フィルムとして、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性積層フィルムを使用することもできる。ガスバリア性塗布膜をポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが相互に化学的に反応して強固な三次元網目状複合ポリマー層を形成しており、前記蒸着膜とが相乗的に作用し、酸素、水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性に優れ、耐熱水性にも優れる。
【0114】
(i)基材フィルム
ガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルムとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂を使用することができる。特に、ポリエステル系樹脂、またはポリアミド系樹脂を好適に使用することができる。基材フィルムの膜厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmである。
【0115】
(ii)表面処理
本発明において、上記の基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成するが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって前記蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0116】
(iii)有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜
本発明における蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0117】
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の蒸着膜を形成することができる。
【0118】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0119】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図11を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図11中、符号235は真空ポンプを表す。
【0120】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0121】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、蒸着膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0122】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0123】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。本発明では、上記蒸着膜として、有機珪酸化合物を含有する蒸着膜であることが好ましい。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0124】
更に、本発明では、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜において、上記の化合物の含有量が蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0125】
本発明において、上記の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0126】
本発明において、上記蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0127】
本発明では、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜として、蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した蒸着膜を構成することもできる。
【0128】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0129】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。
【0130】
具体的には、有機珪素化合物、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による蒸着膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図12を参照して説明する。
【0131】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等を蒸着してなる蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、前記蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の蒸着膜を形成し、次いで、その上に蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる前記蒸着膜を形成してもよい。
【0132】
金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0133】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、前記蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜は、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した蒸着膜を構成することもできる。
【0134】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の前記蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
上記の異種の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を設け、次いで、該蒸着膜の上に、物理気相成長法による金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を構成することもできる。
【0135】
(iv)ガスバリア性塗布膜
本発明で使用するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
【0136】
また、前記ガスバリア性組成物を上記基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜180℃、かつ、上記基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
【0137】
上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
【0138】
上記一般式R1nM(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
【0139】
上記一般式R1nM(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
【0140】
上記一般式R1nM(OR2m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1nM(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。
【0141】
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0142】
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0143】
本発明では、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
【0144】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
【0145】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
【0146】
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0147】
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
【0148】
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0149】
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
【0150】
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
【0151】
前記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0152】
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0153】
本発明で使用するガスバリア性組成物は、前記一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。上記ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0154】
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
【0155】
また、ゾルゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
【0156】
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾルゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
【0157】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
【0158】
更に、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
【0159】
本発明において、ガスバリア性積層フィルムは、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
【0160】
次いで、基材フィルム上の前記蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
【0161】
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルムを20℃〜180℃、かつ基材フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、前記蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成したバリア性フィルムを製造することができる。
【0162】
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したバリア性フィルムを製造することができる。
【0163】
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、バリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
【0164】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムの製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾルゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
【0165】
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
【0166】
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
【0167】
【化1】

このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾルゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
【0168】
【化2】

【0169】
【化3】

【0170】
【化4】

【0171】
【化5】

【0172】
【化6】

上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、基材フィルム上の前記蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム上の前記蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
【0173】
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム、または、基材フィルム上の有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム、または前記蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
【0174】
なお、本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。更に、この水酸基によって熱可塑性樹脂層と化学的に結合し、強固な積層構造を形成することができる。
【0175】
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0176】
このようなガスバリア性積層フィルムは、厚さ12〜30μmである。
(9)印刷層
本発明では、酸素吸収性積層フィルムを構成するいずれかの層に印刷層を形成してもよく、好ましくはガスバリア性フィルムに印刷層を形成することである。裏印刷によれば印刷層を保護することができる。
【0177】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0178】
印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
(10)ラミネート用接着剤
上記において、基材樹脂層やガスバリア性フィルムを積層するためにラミネート用接着剤を使用することができる。ラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2一エチルへキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンーブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤を使用することができる。
【0179】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
【0180】
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10.0g/m2(乾爆状態)位が望ましい。
【0181】
(11)酸素吸収性積層フィルムの製造方法
本発明の共押出フィルムからなる酸素吸収性積層フィルムは、上記熱可塑性樹脂層、酸素吸収層、臭味バリア層、ヒートシール層、接着性樹脂層を構成する樹脂を調製し、それらを、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を使用して共押出成形することで、熱可塑性樹脂層、接着性樹脂層、酸素吸収層、接着性樹脂層、熱可塑性樹脂層、臭味バリア層、ヒートシール層の順に積層された7層の共押出製膜化フィルムからなる酸素吸収性積層フィルムを製造することができる。
【0182】
また、上記熱可塑性樹脂層、酸素吸収層、臭味バリア性を有するヒートシール層を構成する樹脂、接着性樹脂層を調製し、それらを、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を使用して共押出成形することで、熱可塑性樹脂層、接着性樹脂層、酸素吸収層、接着性樹脂層、熱可塑性樹脂層、臭味バリア性を有するヒートシール層を構成する樹脂層の順に積層された6層の共押出製膜化フィルムからなる酸素吸収性積層フィルムを製造することができる。
【0183】
更に本発明では、定法に従って、上記酸素吸収性積層フィルムに、ラミネート接着剤を介して基材樹脂層や、ガスバリア性フィルムを積層し、基材樹脂層の積層により機械的強度を向上させることができ、ガスバリア性フィルムの積層によって酸素透過度や水蒸気透過度を低減することができる。なお、上記酸素吸収性積層フィルムに基材樹脂層を積層したものを酸素吸収性積層体と称し、更にガスバリア性フィルムを積層したものをガスバリア性酸素吸収性積層体と称する。
【0184】
(12)包装容器の製造方法
本発明の包装容器は、上記酸素吸収性積層フィルムや酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体を製袋して製造することができる。袋体は、上記酸素吸収性積層フィルム、酸素吸収性積層体またはガスバリア性酸素吸収性積層体を使用し、そのヒートシール層の面を対向して重ね合わせ、しかる後、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することができる。その製袋方法としては、上記のような本発明に係る酸素吸収性積層フィルムを、折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明に係る包装用容器を製造することができる。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。
【0185】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0186】
本発明では、上記袋体の開口部から、例えば、内容物を充填し、しかる後、その容器内の空気を脱気して減圧状態にしながら真空包装すれば、特に包装用容器内に残存する酸素などによる酸化を効率的に防止することができる。
【0187】
(13)用途
本発明に係る酸素吸収性積層フィルム、酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体は、強度等を有して耐久性に優れ、かつ防湿性、ヒートシール性、耐突き刺し性、透明性等にも優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、その内容物の充填包装適性、保存適性等を有する。
【0188】
本発明の酸素吸収性積層フィルム、酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体は、上記のように製袋し、包装容器として使用することができる。また、容器本体と蓋材とからなる包装容器の蓋材などとしても使用することができる。容器本体が、ポリプロピレン製の碗型または舟形容器であり、その開口部のフリンジを介して上記酸素吸収性積層フィルムや酸素吸収性積層体、ガスバリア性酸素吸収性積層体を蓋材として、内容物収納後に蓋材をヒートシールして、包装容器とすることができる。内容物として、例えば無菌米飯などがある。本発明の包装容器に無菌米飯を収納すれば、容器内の酸素が酸素吸収性層によって吸収除去され、ガスバリア性フィルムによって酸素や水蒸気の透過を防止することができ、内容物の保存性に優れる。
【0189】
本発明の酸素吸収性積層フィルムは、前記共押出フィルムが膜厚5〜25μmの基材樹脂層、膜厚3〜15μmの接着剤樹脂層、膜厚10〜30μmの酸素吸収層、膜厚3〜15μmの接着剤樹脂層、膜厚5〜50μmの臭味バリア層、膜厚5〜60μmのヒートシール層とからなり、酸素吸収層を中心として略対称的な厚さである。更に基材樹脂層としてポリアミドやポリエチレンテレフタレートを積層することで積層体のカールを抑制することができる。このため、更にポリアミドフィルムやガスバリア性フィルムを積層する際にも積層が容易で加工適性に優れる。
【0190】
また、共押出フィルムを構成する熱可塑性樹脂層は、ポリアミド系樹脂との接着性に優れるポリオレフィン系樹脂であるため、ポリアミドを主成分とする酸素吸収層や基材樹脂層との接着性に優れ、かつ同質であるためヒートシール層との接着性にも優れる。このため、デラミなどの発生を防止し、長期に亘り保存が期待される保存食品用の包装容器として特に好適である。
【実施例】
【0191】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
まず、下記の(イ)〜(ヘ)の樹脂組成物を、4種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に4種7層からなる総厚60μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0192】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ヘ) 第六層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−1.5」、平均細孔直径1.8nm、比表面積1019.0m2/g、細孔容積0.373cm3/g、嵩比重0.281g/cm3、平均粒子径3.2μm、吸油量201ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)を使用した。
【0193】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0194】
この酸素吸収性積層フィルムに、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0195】
(実施例2)
実施例1と同様にして、下記(イ)〜(ホ)の樹脂を、4種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に4種7層からなる総厚60μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0196】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ヘ) 第六層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−4」、平均細孔直径4.2nm、比表面積1159.0m2/g、細孔容積1.020cm3/g、嵩比重0.184g/cm3、平均粒子径11.0μm、吸油量595ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)を使用した。
【0197】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0198】
この酸素吸収性積層フィルムに、実施例1と同様にして、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0199】
(実施例3)
実施例1と同様にして、下記(イ)〜(ホ)の樹脂を、4種6層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に4種6層からなる総厚55μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0200】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ヘ) 第六層(臭味バリア性を有するヒートシール層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−4」、平均細孔直径4.2nm、比表面積1159.0m2/g、細孔容積1.020cm3/g、嵩比重0.184g/cm3、平均粒子径11.0μm、吸油量595ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂を使用した。
【0201】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μmとした。
【0202】
この酸素吸収性積層フィルムに、実施例1と同様にして、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0203】
(実施例4)
下記(イ)〜(ト)の樹脂を、4種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に4種7層からなる総厚75μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0204】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−4」、平均細孔直径4.2nm、比表面積1159.0m2/g、細孔容積1.020cm3/g、嵩比重0.184g/cm3、平均粒子径11.0μm、吸油量595ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ハ) 第三層(熱可塑性樹脂層)として三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ニ) 第四層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)として三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ヘ) 第六層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−4」、平均細孔直径4.2nm、比表面積1159.0m2/g、細孔容積1.020cm3/g、嵩比重0.184g/cm3、平均粒子径11.0μm、吸油量595ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)を使用した。
【0205】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が20μm、(ハ)による第三層が5μm、(ニ)による第四層が15μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0206】
この酸素吸収性積層フィルムに、実施例1と同様にして、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0207】
(実施例5)
まず、下記の(イ)〜(ヘ)の樹脂組成物を、5種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に5種7層からなる総厚75μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0208】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディックM545」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に顔料として酸化チタン60%を含有する乳白マスターバッチ30%を混練した樹脂、
(ヘ) 第六層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−1.5」、平均細孔直径1.8nm、比表面積1019.0m2/g、細孔容積0.373cm3/g、嵩比重0.281g/cm3、平均粒子径3.2μm、吸油量201ml/100g)をポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)を使用した。
【0209】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が20μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0210】
この酸素吸収性積層フィルムに、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0211】
(実施例6)
まず、下記の(イ)〜(ヘ)の樹脂組成物を、4種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に4種7層からなる総厚60μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0212】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名「PF380A」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディック AP P555」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディック AP P555」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名「PF380A」)、
(ヘ) 第六層(臭味バリア層)として、メソポーラスシリカ(太陽化学社製、商品名「TMPS−1.5」、平均細孔直径1.8nm、比表面積1019.0m2/g、細孔容積0.373cm3/g、嵩比重0.281g/cm3、平均粒子径3.2μm、吸油量201ml/100g)をポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名「PF380A」)に対して1質量%添加した混練樹脂、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名「PF380A」)を使用した。
【0213】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0214】
この酸素吸収性積層フィルムに、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となるガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0215】
(比較例1)
実施例1と同様にして、下記(イ)〜(ト)の樹脂を、3種7層のTダイ共押出製膜機を用い設定温度260℃でそれぞれ共押出して製膜化して、片面にコロナ処理を実施した後に3種7層からなる総厚60μmの酸素吸収性積層フィルムを製造した。
【0216】
(イ) 第一層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ロ) 第二層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディック
M545」、
(ハ) 第三層(酸素吸収層)として、ポリメタキシリレンアジパミド100.0質量部に遷移金属触媒としてコバルト2−エチルヘキサノエート0.04質量部を混練した組成物、
(二) 第四層(接着性樹脂層)として、三菱化学株式会社製、商品名「モディック
M545」、
(ホ) 第五層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ヘ) 第六層(熱可塑性樹脂層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)、
(ト) 第七層(ヒートシール層)としてポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名「SP4020」)を使用した。
【0217】
上記酸素吸収性積層フィルムは、(イ)による第一層が5μm、(ロ)による第二層が5μm、(ハ)による第三層が15μm、(ニ)による第四層が5μm、(ホ)による第五層が5μm、(ヘ)による第六層が20μm、(ト)による第七層が5μmとした。
【0218】
この比較酸素吸収性積層フィルムに、実施例1と同様にして、厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製、商品名「N−1202」)とガスバリア製フィルム(大日本印刷社製、商品名「IB−PET−PUB」)をドライラミネーションによって貼り合わせ、ガスバリア性フィルムが最外層となる比較ガスバリア性酸素吸収性積層体を得た。
【0219】
(実施例5)
実施例1〜4で製造したガスバリア性酸素吸収性積層体を130mm×170mmの大きさに2枚切り取り、ヒートシール層を最内層として重ね、充填口を残して他をシール幅10mmで四方をシールして包装袋を製造した。
【0220】
この包装袋に、前記充填口から空気100mlを充填後、充填口をヒートシールして密封して包装体を得た。
この包装体を60℃で1週間保存し、臭気の有無を官能評価した。結果を表1に示す。
【0221】
(比較例2)
比較例1で得た比較ガスバリア性酸素吸収性積層体を使用した以外は実施例5と同様に操作して、比較包装体を得た。実施例5と同様にして臭気の有無を官能評価した。結果を表4に示す。
【0222】
【表4】

(実施例7)
実施例1で製造したガスバリア性酸素吸収性積層体を130mm×170mmの大きさに2枚切り取り、ヒートシール層を最内層として重ね、充填口を残して他をシール幅10mmで四方をシールして包装袋を製造した。
【0223】
前記包装袋に2%酸素(98%は窒素)を100cc封入し、経時で包装袋内部の酸素濃度を測定した。結果を表5に示す。なお、酸素透過性の測定は以下によった。
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN)〕にて測定した。なお、酸素透過度の単位は、〔cc/m2/day・23℃・90%RH〕である。
【0224】
実施例1で製造した共押出フィルムからなる酸素吸収性積層体は、乳白色で美観性に優れていた。また、光線遮断性に優れ、紫外線(波長320nm以下)の透過率が最大3%以下であり油脂の酸化に起因する紫外線をほとんど透過させず、極めて良好であった。
【0225】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、包装製品中のヘッドスペース等に存在する酸素、あるいは、内容物中に含まれている酸素あるいは発生する酸素等を結合し吸収するという酸素捕集機能を奏し、その結果、包装製品の外から透過してくる酸素は、バリア性基材フィルムでその透過を阻止する機能と相まって、内容物の品質、鮮度、その他等を、例えば、充填包装したときのその状態をほぼそのままあるいはそれ以上の状態で維持し、更に、酸素吸収時に発生する臭味を臭味バリア層によって除去することができ、その包装製品を長期間貯蔵、保管、展示等においても、内容物の色、味、匂い等の品質の変化は、ほとんど認められず、内容物の品質、鮮度、その他等を極めて良好に保護することができるものであり、種々の形態からなる包装製品に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0227】
10・・・酸素吸収層、
20・・・熱可塑性樹脂層、
30・・・臭味バリア層(I)、臭味バリア性(II)、
40・・・臭味バリア性を有するヒートシール層、
50・・・ヒートシール層、
60・・・基材樹脂層、
70・・・接着性樹脂層、
80・・・ラミネート接着剤層、
90・・・ガスバリア性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)、臭味バリア層(I)およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルム、
または、外層から内層に向かって熱可塑性樹脂層(I)、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層(II)および臭味バリア性を有するヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムであって、
前記酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂と遷移金属触媒とからなる酸素吸収性の樹脂組成物からなり、
前記臭味バリア層または臭味バリア性を有するヒートシール層は、メソポーラスシリカを0.01〜50質量%含有する樹脂からなることを特徴とする酸素吸収性積層フィルム。
【請求項2】
前記メソポーラスシリカは、
焼成後、X線回折パターンの少なくとも一つのピークが1.8nmより大きいd間隔を示し、6.7kPa(50トール)および25℃で物質100gあたり15gより大きいベンゼン吸着容量を有する無機質、多孔質、非層状の下記式(1)で示す組成の結晶相物質、
【数1】

(式中、Mは1種以上のイオンであり、
nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、
qはMの重量モル平均原子価であり、
n/qはMのモル数またはモル分率である。)
または、
直径が少なくとも1.3nmの均一な寸法の細孔の六方構造配列を有し、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質の上記記式(1)で示す組成の結晶相物質、
または、
酸化物のモル比で表して下記組成を有する反応混合物を結晶化した結晶相物質を焼成処理したものである、請求項1記載の酸素吸収性積層フィルム。
【表1】

(但し、Mは1種またはそれ以上のイオンであり、eおよびfはそれぞれMおよびRの重量平均原子価であり、溶媒は炭素数1〜6のアルコール若しくはジオール、または水であり、Rは、物質の合成を助けるために使用される全有機物であって、
式:R1234+(但し、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4の少なくとも一つは炭素数6〜36のアリール基またはアルキル基であり、R1、R2、R3およびR4の残りのそれぞれは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)を有する有機誘導剤からなる全有機物である。)
【請求項3】
前記酸素吸収層は、ポリアミド系樹脂に前記遷移金属触媒を300〜500質量ppm含有するものである、請求項1または2記載の酸素吸収性積層フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂層(I)の外側に、更に臭味バリア層(II)および熱可塑性樹脂層(III)が共押出によって積層されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素吸収性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の酸素吸収性積層フィルムの前記熱可塑性樹脂層(I)の外側に、基材樹脂層を積層したことを特徴とする、酸素吸収性積層体。
【請求項6】
前記基材樹脂層は、ポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項5記載の酸素吸収性積層体。
【請求項7】
請求項6記載の酸素吸収性積層体の基材樹脂層の内側または外側に、ガスバリア性フィルムが積層されることを特徴とする、ガスバリア性酸素吸収性積層体。
【請求項8】
請求項1〜4記載の酸素吸収性積層フィルム、請求項5または6記載の酸素吸収性積層体、または請求項7のガスバリア性酸素吸収性積層体を製袋してなる、包装容器。
【請求項9】
容器本体と蓋材とからなる容器であって、
蓋材は、請求項1〜4記載の酸素吸収性積層フィルム、請求項5または6記載の酸素吸収性積層体、または請求項7のガスバリア性酸素吸収性積層体であることを特徴とする、包装容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−93282(P2011−93282A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252214(P2009−252214)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】