説明

酸素富化機

【課題】機器の運転中は低騒音・低振動を確保しながら機器の運転状態や運転状態の変化を使用者に報知可能とする。
【解決手段】酸素富化手段2からの酸素富化空気を吐出部5より吐出させる吸引送風手段3と、前記吸引送風手段3の運転回転数Ntを制御可能な制御手段4と、前記吸引送風手段3の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段7とを備えた酸素富化機であって、前記制御手段4は運転動作を変更するときおよび/または所定時間経過毎におよび/または運転モードを変更するときおよび/または消費可能な電力源の電圧に応じて、前記吸引送風手段3の回転数Ntを変更設定可能な構成としてあり、吸引送風手段の運転音を変化させることができて使用者に酸素富化機の運転状態に関わる情報を報知可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素富化空気を使用者に供給する酸素富化機に関するものであり、更に詳細には運転状態を使用者に報知する報知技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来酸素富化機(酸素富化膜を用いた膜型酸素濃縮装置他)は肺気症や慢性気管支炎等の疾患治療用として使用されている。このような従来の酸素富化機は一日中更には睡眠中でも常に使用者のそばに置かれて運転使用されことが多いため、例えば運転時の騒音が35dBA以下にまで抑えられた製品も一般化している。運転時の騒音・振動発生の原因は酸素富化空気を吸引又は送風するために使用する電動送風機やポンプで構成されている吸引送風手段(空気ポンプ)であり、その運転振動音低減のための研究が種々なされてきている。
【0003】
例えば空気ポンプの振動の伝播を防ぐための手段としてはスプリングや防振ゴムによって空気ポンプを支える(浮かせる)手段をとり(例えば、特許文献1参照)、かつ二重の防音ボックスにより音を封じ込めるようにしている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0004】
ところで近年の研究によると酸素濃度30〜40%程度の酸素富化空気の吸引は予防医学的効果効能があることが証明されてきている。そして「通院するまでも無いがどうも調子が悪い」程度の症状の使用者が気軽に使える家庭用健康機器としてデザインされた酸素富化機(酸素富化膜を使用)が商品化されるようになってきた。家庭用健康機器としての酸素富化機の酸素富化空気吐出部は従来の疾患治療用の例えば鼻カニューラ等では無く、所謂マイク付ヘッドフォン的に頭部又はその近傍に装着して、ある程度自由に動き回っても邪魔にならないだけでなく装着感の良さ更には見栄の良さについても重要な設計要素となっている。そのような家庭用健康機器としての酸素富化機の使われかたは従来の疾患治療用酸素富化機と違って、例えば家事や仕事の合間や就寝前等に気分転換・集中力回復・リフレッシュすることを目的に所定の短時間だけ使われるようになってきている。その場合は従来の酸素富化機の低騒音・低振動であることだけでなく所定時間で運転が終了して時間の過ぎるのを忘れるといったことが無いようにタイマー運転機能付であることも要望されている(ついリラックスしてしまって時間の経過を忘れてしまったりするのを防止するため)。
【特許文献1】特開昭63−242901号公報
【特許文献2】特開昭60−200804号公報
【特許文献3】特開昭60−277816号公報
【特許文献4】特開昭59−274654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の家庭用健康機器としての酸素富化機においてはタイマー運転機能だけでは使い勝手に問題が発生してきている。例えば運転時の音や振動が小さいために運転が停止したことに気が付き難いこと、更には使用中にあまりにもリラックスしてしまって居眠りをしてしまった場合には、運転が終了していることに気が付かずにずそのまま時間が経過してしまっていて家事や仕事(業務)に差し障りが出ること等がある。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、機器の運転中は低騒音・低振動を確保しながら機器の運転状態や運転状態の変化を使用者に報知可能として、家事や仕事で忙しい合間でも安心して使用可能な使い勝手の良い酸素富化機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために鋭意努力した結果、本発明の酸素富化機は、酸素富化手段と、前記酸素富化手段からの酸素富化空気を吐出部より吐出させる吸引送風手段と、前記吸引送風手段の運転回転数Ntを制御可能な制御手段と、前記吸引送風手段の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段とを備えた酸素富化機であって、前記制御手段は運転動作を変更するときおよび/または所定時間経過毎におよび/または運転モードを変更するときおよび/または消費可能な電力源の電圧に応じて、前記吸引送風手段の回転数Ntを変更設定可能な構成としたものであり、吸引送風手段の運転音を変化させることができて使用者に酸素富化機の運転状態に関わる情報を報知可能である。すなわち本発明は、酸素富化機本体の運転騒音・振動の変化が従来の酸素富化機の課題であった「使用者へ如何に報知するか」を解決する手段として有効に使用可能であることを見出し本発明に至ったものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、機器運転中の低騒音・低振動を確保しながら価格アップにつながるような追加部品、例えばブザー等を使用すること無く機器の運転状態の変化や運転状況を使用者に確実に報知可能とすることができ、使い勝手の良い優れた酸素富化機を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、酸素富化手段と、前記酸素富化手段で生成される酸素富化空気を吸引して吐出部より使用者へ酸素富化空気を吐出供給する電動機及びポンプ手段によって構成される吸引送風手段と、前記吸引送風手段の運転回転数Ntを制御可能な制御手段と、前記吸引送風手段の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するとともに吸引送風手段を保持するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段を備えた酸素富化機であって、前記制御手段が運転動作を変更する(例えば運転開始や運転停止への移行時)ときおよび/または所定時間経過毎(例えば10分毎)におよび/または運転モードを変更する(例えば複数の運転モードを備えてそれらを変更切換する)ときおよび/または消費可能な電力源(例えば電池)の電圧変化に応じた制御等、制御手段は吸引送風手段の回転数Ntを変更して吸引送風手段の運転音を変化させて使用者に変化したことを報知可能としたものである。
【0010】
第2の発明は、酸素富化手段と、前記酸素富化手段で生成される酸素富化空気を吸引して吐出部より使用者へ酸素富化空気を吐出供給する電動機及びポンプ手段によって構成される吸引送風手段(空気ポンプ)と、前記吸引送風手段の運転回転数を制御可能な制御手段と、前記吸引送風手段の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するとともに引送風手段を保持するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段を備えた酸素富化機であって、制御手段は吸引送風手段の回転周波数Ftと前記防振手段の固有振動周波数Fsとの関係がFt>3・Fsとなるように吸引送風手段の回転数Ntを設定可能即ち、NtをFt>3・Fsの関係が成り立つよう設定可能としたものであり、防振構成手段の防振効果が確実に発揮できるようになる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明の酸素富化機において、制御手段は、吸引送風手段の運転開始時および/または運転停止時に第1所定時間だけFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定するもので、定常運転中はNtをFt>3・Fsの関係が成り立つよう設定することで防振構成手段の防振効果が確実に発揮できるようにすると共に、運転開始時や運転終了時にはNtをFt<3・Fsの関係が成り立つよう設定することで防振構成手段の防振効果を低減させて振動音が大きくなるようにして、振動音の変化で使用者に運転状態の変化即ち運転が開始したことや運転が終了したことを報知できる。
【0012】
第4の発明は、第2又は第3の発明の酸素富化機において、吸引送風手段を電動機がインバータモータでありポンプ手段がシングルヘッドのピストン方式ポンプ(シングルピストンポンプ)で構成するものである。シングルピストンポンプは高真空度・高流量を小型・軽量で実現可能で有ると共にその運転時の振動が比較的大きいため、回転数Ntを変化させると振動音もより明確に変化するため、使用者に運転状態の変化即ち運転が開始したことや運転が終了したことをさらに確実に報知できるようになる。
【0013】
第5の発明は、第2〜4の発明の酸素富化機において、充電可能な二次電池を機器の電力源として運転中に、二次電池の電圧が第1所定電圧(例えば予め設定されている電池の放電終止電圧)以下になるとFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定する(又はそのような回転数になる場合も含む)ことで振動を増加させ、電池容量残が無くなりつつあることを使用者に明確に報知するものである。
【0014】
第6の発明は、第2〜5の発明の酸素富化機において、制御手段はFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定することで酸素富化機本体および/または防振手段を振動させ、その振動に伴う振動音を発生させて使用者に運転状態や運転状態の変化等を明確に報知可能とするものである。
【0015】
第7の発明は、第2〜6の発明の酸素富化機において、制御手段は、吸引送風手段の回転数Ntを第2所定時間Ft<3・Fsとなるよう設定すると共に第3所定時間Ft>3・Fsと設定し更に前記第2所定時間と前記第3所定時間を所定周期毎に切換えながら運転するもので、例えば第2所定時間を1秒・第3所定時間を9分59秒・所定周期を10分と設定すれば、10分毎に運転・振動音を1秒間だけ明確に変化させることができるため、使用者へ使用開始から10分間毎に10分経過したことを報知可能となる
第8の発明は、第3〜7の発明の酸素富化機において、制御手段は、吸引送風手段の運転開始時の第4所定時間および運転停止時の第5所定時間にはFt<3・Fsとなるよう前記吸引送風手段の回転数Ntを設定するのもであり、例えば第4所定時間を3秒・第5所定時間を1分に設定してタイマー運転開始した場合等、運転開始から3秒間だけ運転振動音を大きくして運転開始操作が確実にできたことを報知すると共に運転時間終了間近の1分間では再び運転振動音を大きくしてもう直ぐ運転が終了することを報知できる。
【0016】
第9の発明は、第3〜8の発明の酸素富化機において、制御手段で駆動され使用者に報知可能な表示手段(例えばLED)を更に備えて制御手段は吸引送風手段の回転数NtをFt<3・Fsとなるよう設定すると共に表示手段の表示内容を変更することで、使用者が振動音によって運転状態が変化したことを感じた表示手段を見ればどのように運転状態が変化したのかを確認することができる。
【0017】
第10の発明は、第3〜9の発明の酸素富化機において、制御手段がFt>3・Fsと設定する吸引送風手段(空気ポンプ)の回転数Ntは、約1900〜2400rpm好ましくは約2000〜2200rpmとするものである。小型の空気ポンプの吸気・排気の切換用バルブにはEPDMやFPM等の柔軟性に優れたシート材を加工して使用されるが、柔軟性が有るが故に高速での切換にはその追従性に限界が有る。回転数Ntを約1900〜2400rpm好ましくは約2000〜2200rpmとして使用すると、バルブ特性を確保しつつ空気ポンプの性能を最も発揮することができると共に運転音・振動をも低減できるため、Ft<3・Fsなる関係に回転数Ntを下げた時には、使用者に振動音によって運転状態が変化したことをより確実に報知可能となる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明する。
【0020】
図1において、1は酸素富化機の本体で、その内部には通常空気から酸素濃度の高い所謂酸素富化空気を発生する酸素富化手段2を設けている。本実施の形態の酸素富化手段2は酸素富化膜と呼ばれる有機高分子の平膜で構成され、膜を通過する分子の速度の差を利用するもので、通常空気中の窒素に比べ酸素をよく通す性質を利用して酸素富化空気を得るものである。通常の空気において酸素が占める割合は約21%(窒素約79%)であるが、本実施の形態における酸素富化手段2を通過後の酸素富化空気においては、酸素が占める割合が約30%(窒素約70%)となるものである。
【0021】
3は酸素富化手段2で生成される酸素富化空気をチューブ6を経て吐出部5から吐出させるための吸引送風手段で、制御手段4で駆動制御される。吸引送風手段3は酸素富化手段2の酸素富化膜ユニットの空気通過圧損に対抗して酸素富化空気の流量を稼ぐために、運転時の圧力が高いポンプを用いている。9は二次電池で、本実施の形態の酸素富化機本体1内で消費する全ての電力を供給する。8は表示手段で、前記制御手段4により駆動され、酸素富化機の運転状態を表示する。この表示手段8は複数の例えばLEDで構成している。7は防振構成手段で、その詳細の構成を図2に示す。
【0022】
図2において、10は吸引送風手段3の動力源である電動機で、制御手段4でその回転数を制御可能なインバータモータである。11はポンプ手段で、電動機10により回転駆動されることで酸素富化手段2から酸素富化空気を吸引すると共にチューブ6を経て吐出部5へ送風する。このポンプ手段11はシングルヘッドのピストン方式のポンプ(以降シングルピストンポンプと呼ぶ)で構成してあり、電動機10と組み合わせることで吸引送風手段3(以降空気ポンプ3と呼ぶ)を構成する。シングルピストンポンプは小型・軽量でありながら高真空度・高流量を容易に実現可能で有ると共にその運転時の振動が比較的大きいため、回転数Ntを変化させると振動音がより明確に変化する。
【0023】
ところでこの手の小型の空気ポンプの吸気・排気の切換用バルブにはEPDMやFPM等の柔軟性に優れたシート材を加工して使用されるが、柔軟性が有るが故に高速での切換にはその追従性に限界が有る。更にピストンを駆動するコンロッド部分にはピストン運動方向に発生する加速度によってポンプ手段11が振動するのを低減するために所謂カウンターウェイトを装備する。このカウンターウェイトの重量や取り付け角度はポンプ手段11の回転数に絡めて決定されるため、所謂定格回転数なるものを決定してその回転数で最良のバランスが取れるように決定される。
【0024】
本実施の形態の吸引送風手段3では上記の内容を勘案し、回転数Ntを約1900〜2400rpm好ましくは約2000〜2200rpmとして使用するとバルブ特性を確保しつつ振動も低減できるよう調整されたものとしている。12は防振バネで、吸引送風手段3の運転に伴う振動が本体1に伝播して騒音・振動を発生するのを防止するためのものであり、本実施の形態では4つの防振バネ(コイルバネ)を使用し、吸引送風手段3とベース材13(板金)とを締結している。吸引送風手段3を4つの防振バネ12を用いてベース材13に振動可能に取り付けることで、本実施の形態では固有振動周波数Fsを略10Hzとする防振構成手段7を構成している。またベース材13は本体1に固定収納されていることは言うまでも無い(図示せず)。
【0025】
ところで固有振動周波数Fsは4つの防振バネ12から算出されるバネ定数と4つの防振バネ12が支える吸引送風手段3の重量とから算出可能であり種々の文献等からも容易に説明可能でありここでの詳細説明は割愛する。
【0026】
図3は本実施の形態の酸素富化機の全容を示す概観図で表示手段8は本体1の天面に配置され使用者が容易に目視確認できるようにしている。
【0027】
更に本実施の形態の本酸素富化機を使用者が使用している様子を図4に示す。吐出部5(以降マウス5と呼ぶ)が使用者の鼻元に配置されるよう使用者の頭部他近傍に固定可能な所謂ヘッドセット様の固定器具を装着している様子が理解できるであろう。この手のヘッドセットは家庭用酸素富化機のデザイン・使い勝手に絡む重要な要素の1つになっている。
【0028】
以上のように構成された酸素富化機の特性を図5、図6を用いて説明する。
【0029】
図5は本実施の形態の空気ポンプ3の回転数Ntと防振構成手段7の振動加速度Gとの関係を示す特性グラフである。ここで振動加速度G(dB)なる値は、機器が振動すると機器内部の構成部品や機器の配置される床面等へ伝播する等して振動音が発生する度合いを定量的に評価する方法として一般的に使用されるものであり、振動加速度Gを測定するための機器も数多く開発・発売されている。
【0030】
前述したように本実施の形態の防振構成手段7の固有振動周波数Fsは約10Hzで設計しているため、Ntが約600rpm、即ち空気ポンプ3の回転周波数が600rpm/60秒=10Hzと成る時に共振状態になり、その振動は測定困難であるくらいに異常な振動になり、図5の特性グラフで大きな振動加速度G1と成っているものである。振動加速度Gは、Ntが大きくなるにつれて特性グラフに示すよう略対数的に小さくなり、ある程度以上のNt(特性グラフのNt3以上)からはNtの上昇に伴うGの低減度合いが所謂飽和状態になる。
【0031】
図5の特性グラフから本実施の形態の防振構成手段7を用いた場合、空気ポンプ3はNt3以上(1800rpm以上)の回転数で運転することが望ましいことが判る。更に言えばNt4以上(2000rpm以上)又更にNt5以上(2400rpm以上)の回転数が望ましいが、上述したように小型・軽量・低価格なシングルピストンのポンプ空気ポンプを使用する場合にはその上限回転数に限界がある。種々研究を重ねてきた結果、定格回転数としては約2000〜2200rpmに設定することが最も望ましく、本実施の形態では定格回転数を2000rpm、その時の加速度振動値をG4とすることで使い勝手(騒音や振動低減)を確保している。
【0032】
ここでNtをNt2(1500rpm)とすると防振構成手段7の防振効果が僅かに低下して振動加速度がG2に上がるが、この時の振動音は種々研究することで使用者の聴感に心地よく訴えるよう調整可能であり、Nt2を使用者への報知時の運転回転数と使用しており以下にその効果的使用の実施例を説明する。
【0033】
ところで、以上の説明から判るように本実施の形態では、定格回転数を2000rpmとすることでFt(33Hz=2000rpm/60秒)>3・Fs(10Hz)とし、
使用者報知(後に詳細説明)のための回転数を1500rpmとすることでFt(25Hz=1500rpm/60秒)>3・Fs(10Hz)としている。
【0034】
以上のような構成要素による酸素富化機を使用者が使用した場合の運転動作について更に図6を用いて詳細に説明する。
【0035】
使用者がヘッドセットを図4のように装着して操作手段(図示せず)からTt時間で運転終了する所謂タイマー運転(本実施の形態では30分とする)を開始するよう操作すると、制御手段4は二次電池9の電力を用いて表示手段8に30分の運転設定がされた旨表示する(詳細図示せず)と共に空気ポンプ3を運転駆動する。本実施の形態における表示手段は運転残り時間を10分・20分・30分と表示可能な3つのLEDで構成している(図示せず)。
【0036】
空気ポンプ3は酸素富化手段2で生成される酸素富化空気を吸引すると共にチューブ6に送風してチューブ6の先端に配設されたマウス5から使用者の鼻元に酸素富化空気を吐出する。
【0037】
ここで制御手段4は運転開始直後のT1時間だけ前記空気ポンプをNt2(1500rpm)で運転してから定格運転回転数Nt4(2000rpm)に変更して運転継続する。ここでT1は約0.5秒とすると良い。酸素富化機の空気ポンプ3をNt2なる回転数で運転すると、防振構成手段7の特性から本体1はG2(dB)なる振動加速度で振動することで振動及び振動に伴う音を発する。これは使用者が明確に聞き取れる「音」として認識可能で、使用者は機器が正常に運転開始出来たことを確認できる。またNt4なる回転数での運転されると防振構成手段7の特性グラフからから本体1の振動加速度はG4となる。これは定常運転時の振動・振動音の低減のために鋭意検討することで可能となった例えば40(dBA)以下の低騒音値を実現して家庭用酸素富化機としての特徴・品位を決定するものである。
【0038】
運転開始からT12(10分)が経過すると、制御手段4は再び空気ポンプ3の回転数をT2時間だけNt2に変更運転してから再び定格運転回転数Nt4に変更して運転継続する。ここでT2は約0.5〜1秒とすると良い。同時に表示手段8の運転残り時間LEDが20分であるように変更する。この回転数変化による振動と音の変化更には表示手段8の表示によって使用者は使用開始してから10分が経過したことが分かる。
【0039】
運転開始からT13(20分)が経過すると、制御手段4は再び空気ポンプ3の回転数をT2時間だけNt2に変更運転してから再び定格運転回転数Nt4に変更して運転継続する。同時に表示手段8の運転残り時間LEDが10分であるように変更する。この回転数変化による振動と音の変化更には表示手段8の表示によって使用者は使用開始してから20分が経過したことが分かる。
【0040】
次に運転開始からT14(運転開始から30分未満の時間)の時間が経過したとき、図6で二次電池9の電圧が運転継続困難な電圧Veまで低下している。制御手段4は二次電池9の電圧を監視したおり、電池電圧がVeになったことを検知すると、空気ポンプ3の回転数をNt2に変更してT4時間運転する。図6のグラフから明らかなようにこのT4の時間は運転開始からの累積運転時間がTt時間(30分)経過するまでの時間となる。この時のNt2なる回転数の意味合いはNtで空気ポンプ3を運転駆動することで振動と音によって使用者に二次電池電圧が運転継続困難な電圧まで低下したことを報知するだけでなく、回転数を低くすること即ち空気ポンプ3の消費電力を低減して使用者が最初に設定したTt(30分)時間まで酸素富化運転を継続可能とする効果も奏すものである。
【0041】
そのようにして、本実施例の酸素富化機は運転開始からTt時間経過した後停止する。
【0042】
ところでT4時間が余り長くなると、二次電池9が過放電になりその耐久性に影響が出ることが危惧されるため、Veなる電圧値の設定は二次電池の所謂終止電圧より高めに設定されるものであることは言うまでもない。
【0043】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態による酸素富化機は、運転動作を変更するときに表示手段8の表示と共に価格アップにつながるブザーなどを追加配置することなく音で使用者に報知できること、更に所定時間経過毎にその経過した情報をも視覚と聴覚に報知してうっかりして居眠りしてしまっていても認識可能とできること、又更に複数の運転モードで運転可能な酸素富化機においてはその運転モードが切り替わることを明確に報知して正常運転継続していることを容易に認識できること、又更には電池を電力源として運転中に例えば電池残量に絡む電圧を観測しいて運転継続が困難となる電池電圧まで低下したときまたは低下することが予想される時にはその旨使用者の視覚と聴覚に報知できるため、機器を使用実感や安心感をもって使用可能な優れた酸素富化機を価格アップすることなく提供可能とできるものである。
【0044】
ところで、本実施の形態では機器の消費可能な電力源を二次電池9としたが、商用電源を電力源とした場合には電池電圧変化による運転時間を意識することなく空気ポンプ3の回転数を設定可能となるため、本実施の形態で電池電圧がVeになった時に変更した空気ポンプ3の回転数の変化を、運転終了前の所定の時間だけを考えて設定すればよく、例えばT4は約1分に設定すると良い。
【0045】
尚本実施の形態では、制御手段4は空気ポンプ3の回転数をNt2とNt4に限定して記載しているが、運転時の振動騒音の比較的少ないNt3からNt5の間で任意に設定することで、空気ポンプ3の回転運転音を変化させるだけでも目的とする効果を奏するだけでなく、比較的静かな部屋等で使用する場合等は酸素富化機使用中の全体騒音低減に有利になることは言うまでも無い。特に防振構成手段7を安価に構成して例えば酸素富化機の運転時の騒音が40〜45dBA程度になるよう設計されたものにおいては、運転時が比較的明確に認識できることから、その効果も容易に理解できよう。
【0046】
更に本実施の形態では、制御手段4は空気ポンプ3の回転数のNt2とNt4間の移行を瞬時に切換制御しているが、回転数の移行は緩やかに変化させても目的とする効果を奏することは言うまでも無い。
【0047】
又更に本実施の形態では、制御手段4は空気ポンプ3の回転数の定格回転数を基準にして低めの回転数に変化させることで報知するようにしているが、定格回転数より高い回転数に変更することによる運転音の変化で報知することも有効である。
【0048】
本発明に記載したように、防振構成手段7の固有振動数Fsと空気ポンプ3の回転数Ntからなる回転周波数Ftとの大きさの関係を意識することで、今後の酸素富化機の設計で運転音や振動低減を検討するときに極めて有用になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように本発明による酸素富化機は、運転時の騒音・振動を低減しつつ運転状態の変化を使用者に確実に報知可能であることから、家庭用のみならず例えば業務時間に支障を来たす心配をすること無くなく使用できるため、企業へも積極的に導入可能となり今後酸素富化空気吸引効果をより多くの機会・場所・施設等で利用可能にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態における酸素富化機の制御ブロック図
【図2】同実施の形態における防振構成手段の概観図
【図3】同実施の形態における酸素富化機の外観図
【図4】同実施の形態における酸素富化機の使用状態例を示す外観図
【図5】同実施の形態における防振構成手段の振動に関わる特性グラフ
【図6】同実施の形態における酸素富化機の運転動作例を示すグラフ
【符号の説明】
【0051】
1 本体
2 酸素富化手段
3 吸引送風手段(空気ポンプ)
4 制御手段
5 吐出部(マウス)
6 チューブ
7 防振構成手段
8 表示手段(LED)
9 二次電池
10 電動機(インバータモータ)
11 ポンプ手段
12 防振バネ
13 バース材(板金)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化手段と、前記酸素富化手段からの酸素富化空気を吐出部より吐出させる吸引送風手段と、前記吸引送風手段の運転回転数Ntを制御可能な制御手段と、前記吸引送風手段の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段とを備えた酸素富化機であって、前記制御手段は運転動作を変更するときおよび/または所定時間経過毎におよび/または運転モードを変更するときおよび/または消費可能な電力源の電圧に応じて、前記吸引送風手段の回転数Ntを変更設定可能な構成とした酸素富化機。
【請求項2】
酸素富化手段と、前記酸素富化手段からの酸素富化空気を吐出部より吐出させる吸引送風手段と、前記吸引送風手段の運転回転数Ntを制御可能な制御手段と、前記吸引送風手段の運転動作または回転動作によって発生する振動を吸収・制振するバネおよび/またはゴム弾性体から成る防振構成手段とを備えた酸素富化機であって、前記制御手段は吸引送風手段の回転周波数Ftと前記防振手段の固有振動周波数Fsとの関係がFt>3・Fsとなるように前記吸引送風手段の回転数Ntを設定可能な構成とした酸素富化機。
【請求項3】
制御手段は、吸引送風手段の運転開始時および/または運転停止時に第1所定時間だけFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定する構成とした請求項2記載の酸素富化機。
【請求項4】
吸引送風手段は、電動機がインバータモータでありポンプ手段がシングルヘッドのピストン方式ポンプで構成されている請求項2又は3記載の酸素富化機。
【請求項5】
機器の消費可能な電力源は充電可能な二次電池であり、制御手段は前記二次電池の電圧が第1所定電圧以下になるとFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定する構成とした請求項2〜4のいずれか1項記載の酸素富化機。
【請求項6】
制御手段はFt<3・Fsとなるよう吸引送風手段の回転数Ntを設定することで酸素富化機本体および/または防振手段を振動させ、前記振動および/または前記振動によって発生する振動音を発生させる構成とした請求項2〜5のいずれか1項記載の酸素富化機。
【請求項7】
制御手段は、吸引送風手段の回転数Ntを第2所定時間Ft<3・Fsとなるよう設定すると共に第3所定時間Ft>3・Fsと設定し更に前記第2所定時間と前記第3所定時間を所定周期毎に切換えながら運転させる構成とした請求項2〜6のいずれか1項記載の酸素富化機。
【請求項8】
制御手段は、吸引送風手段の運転開始時の第4所定時間および運転停止時の第5所定時間にはFt<3・Fsとなるよう前記吸引送風手段の回転数Ntを設定する構成とした請求項3〜7のいずれか1項記載の酸素富化機。
【請求項9】
制御手段で駆動され使用者に報知可能な表示手段を備え、制御手段は吸引送風手段の回転数NtをFt<3・Fsとなるよう設定すると共に前記表示手段の表示内容を変更する構成とした請求項3〜8のいずれか1項記載の酸素富化機。
【請求項10】
制御手段がFt>3・Fsと設定する吸引送風手段の回転数Ntは、約1900〜2400rpm好ましくは約2000〜2200rpmである請求項3〜9記載の酸素富化機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−131430(P2006−131430A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318965(P2004−318965)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】