説明

酸素濃縮器

【課題】流量設定つまみの回転角を精度良く検出して、中間位置を確実に検知できる酸素濃縮器を提供すること。
【解決手段】ステップ200にて、酸素センサ99からの信号に基づいて、酸素濃縮ガスの濃度が異常であるか否かを判定する。ステップ210では、酸素の濃度値をメモリ109に記録する。ステップ220では、ポテンショメータ103からの信号に基づいて、回転角が中間位置であるか否かを判定する。つまり、回転角が各設定流量に対応した設定位置の範囲(上限と下限との間の判定範囲)から外れた中間位置であるか否かを判定する。ステップ230では、中間位置と判断されたので、前記濃度異常の判定結果と関連づけて中間位置であることを記録する。ステップ240では、中間位置であることを警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、酸素より窒素を優先的に吸着する吸着剤を用いて生成した高濃度の酸素(酸素濃縮ガス)を患者等に供給する酸素濃縮器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、呼吸器系疾患の最も効果的な治療法の一つとして、酸素吸入療法が知られている。この酸素吸入療法とは、酸素ガス或いは酸素濃縮ガスを患者に供給する方法であり、その供給源として、最近では、空気中から酸素濃縮ガスを直接分離できる酸素濃縮器が開発されている。
【0003】
かかる酸素濃縮器としては、例えば窒素又は酸素を選択吸着して得られる吸着剤を用いた吸着型酸素濃縮器が知られており、この吸着型酸素濃縮器としては、例えばコンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮器が使用されている。
【0004】
この種の酸素濃縮器においては、通常、マニュアルにて酸素濃縮ガスの流量を切り換えることができる流量設定器が使用されている。この流量設定器とは、流量設定つまみと連動するシャフトを回転させると、使用するオリフィスが切り換えられて流量が変更されるものである。
【0005】
前記流量設定器では、マニュアルにて切り換えられる流量の設定値(設定流量)を検知するために、流量設定つまみの回転角を電気信号に変換する必要があり、一般的には、流量設定つまみと同期して回転するポテンショメータによって電圧を分圧して電気信号に変換し、その電気信号に基づいて設定流量を検知している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−354630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポテンショメータには、通常、特性のバラツキがあるため、流量設定つまみの回転角を精度良く検出できないことがあった。
特に、流量設定つまみを操作した際に、流量設定つまみの回転角が設定流量に対応した設定位置からずれて、中間位置(隣接する設定位置の中間の位置)に設定されてしまったときには、所望の流量が得られない可能性がある。そのため、中間位置を精度良く検出できる技術が望まれていた。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、流量設定つまみの回転角を精度良く検出して、中間位置を確実に検知できる酸素濃縮器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
・前記課題を解決するためになされた本発明は、マニュアルにて回転操作される流量設定つまみと酸素濃縮ガスの各設定流量に対応した複数のオリフィスとを有し、前記流量設定つまみの回転に応じてオリフィスを切り換えて前記設定流量を切り換える流量設定器を備えた酸素濃縮器において、前記流量設定つまみの回転角度に応じた信号を出力するポテンショメータを備え、前記各設定流量はそれぞれ設定範囲を有するとともに、前記設定範囲に対応したポテンショメータの出力信号の判定範囲を記録する記録手段と、前記ポテンショメータの出力信号が前記判定範囲内に有るか範囲外にあるかを判定し、前記ポテンショメータの出力信号が前記判定範囲外にあると判定された場合には、前記各設定範囲を外れた中間位置にあると判定する中間位置検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、予め、流量設定つまみの回転操作によって得られたポテンショメータの出力信号に基づいて、各設定流量の各設定範囲(即ち各設定流量を決めるための流量設定つまみの回転範囲)に対応したポテンショメータの出力信号の判定範囲を設定しておく。そして、酸素濃縮器を使用する際には、ポテンショメータの出力信号が判定範囲内に有るか範囲外にあるかを判定し、ポテンショメータの出力信号が判定範囲外にあると判定された場合には、流量設定つまみの回転位置が中間位置にあると判定する。
【0011】
従って、ポテンショメータに特性のバラツキがある場合でも、設定流量を判定するための判定範囲を正確に設定でき、よって、この判定範囲を利用して精度良く中間位置を検出することができる。
【0012】
・本発明においては、前記各設定流量における前記流量設定つまみの回転方向における遊びの上限と下限とを前記設定範囲とし、前記ポテンショメータの出力信号の判定範囲を設定してもよい。
【0013】
このように、流量設定つまみの回転方向の遊びを考慮することにより、ポテンショメータの特性の違いなどの機器の個体差を吸収できるので、適切な判定範囲を設定できるという効果がある。
【0014】
・本発明においては、前記酸素濃縮ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、前記濃度検出手段からの信号に基づいて、前記酸素濃縮ガスの濃度の異常を検出する濃度異常検出手段と、を備え、前記濃度異常検出手段によって、前記酸素濃縮ガスの濃度が異常であることが検出された場合には、その濃度を記録し、前記中間位置検出手段によって、前記流量設定つまみの回転位置が中間位置にあることが検出された場合には、その中間位置を記録してもよい。
【0015】
ここでは、濃度異常の場合にはその濃度を記録するとともに、中間位置である場合には中間位置であることを記録するので、濃度異常と中間位置との関係を容易に把握することができる。つまり、濃度異常がある場合に中間位置であったときには、その濃度異常が中間位置であることに起因する可能性高いので、装置の異常の原因の解明を容易に行うことができる。
【0016】
なお、流量設定つまみが中間位置にある場合には、意図した流量以上又は流量以下になる可能性があり、流量が増加した場合は酸素濃度が低下する可能性がある。
・本発明においては、前記酸素濃縮ガスの流量を検出する流量検出手段と、前記流量検出手段からの信号に基づいて、前記酸素濃縮ガスの流量が前記設定流量と異なることを検出する流量異常検出手段と、を備え、前記中間位置検出手段によって、前記流量設定つまみの回転位置が中間位置にあることが検出された場合には、その中間位置を記録し、前記流量異常検出手段によって、前記酸素濃縮ガスの流量が前記流量設定つまみによって設定された設定流量と異なることが検出された場合には、その流量を記録してもよい。
【0017】
ここでは、中間位置である場合には中間位置であることを記録するとともに、流量異常の場合にはその流量を記録するので、中間位置と流量異常との関係を容易に把握することができる。つまり、流量異常がある場合に中間位置であったときには、その流量異常が中間位置であることに起因する可能性高いので、装置の異常の原因の解明を容易に行うことができる。
【0018】
・本発明においては、前記流量設定つまみの回転位置が、前記中間位置にあると判定された場合には、その旨を報知してもよい。
これにより、流量設定つまみの回転位置が設定流量から外れた適正な位置でない中間位置にある場合には、その旨を使用者に警告することができるので、使用者は誤った設定流量のまま使い続けることがなく、極めて利便性が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の酸素濃縮器の外観を示す説明図である。
【図2】実施例1の酸素濃縮器の操作パネルを示す説明図である。
【図3】実施例1の酸素濃縮器の基本構成を示す説明図である。
【図4】実施例1の酸素濃縮器の電子制御装置の電気的構成を示す説明図である。
【図5】(a)流量設定器の概略構成図、(b)流路切換板の平面図、(c)停止機構の説明図である。
【図6】設定流量とポテンショメータの出力との関係を示す説明図である。
【図7】流量設定つまみの回転角と判定範囲との関係を示す説明図である。
【図8】設定流量の下限と上限とを記録するための作業の手順を示すフローチャートである。
【図9】(a)ポテンショメータの出力を読み出す装置を示す説明図、(b)設定流量の下限と上限とを記録するための作業に用いる装置を示す説明図である。
【図10】実施例1の電子制御装置にて行われる処理を示すフローチャートである。
【図11】実施例2の電子制御装置にて行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の最良の形態の例(実施例)について説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例では、空気中から窒素吸着剤(以下吸着剤と記す)を用いて窒素を吸着して除去することにより酸素を濃縮し、この高濃度の酸素を含む酸素濃縮ガスを患者に対して供給する圧力変動吸着型の医療用酸素濃縮器(以下酸素濃縮器と記す)を例に挙げる。
【0022】
a)まず、本実施例の酸素濃縮器の外観について説明する。
図1に示す様に、酸素濃縮器1は、略直方体形状の筐体3の正面の上部に、酸素濃縮器1の操作やその動作の表示を行う操作パネル5が設けられ、その下方には、酸素濃縮ガスの加湿を行う加湿器7が配置されている。
【0023】
図2に示す様に、操作パネル5には、酸素濃縮器1の運転/停止を行うための電源スイッチ11と、正常運転時に点灯する運転ランプ13と、異常発生時に点灯/点滅する異常ランプ15と、酸素濃縮ガスの流量の設定値をマニュアルにて切り換える流量設定つまみ17と、設定された流量値を示す流量表示器19と、酸素濃縮器1の使用開始からの積算時間を表示する外部積算時間表示器21と、酸素濃縮ガスの濃度の状態を点灯/点滅により表示する酸素濃度ランプ23と、加湿器7の異常を点灯して表示する加湿器漏れランプ25と、カニューラ(図示せず)の折れの異常を点灯して表示するカニューラ折れランプ29と、酸素濃縮ガスの流れの状態を表示する流れ表示ランプ31とが設けられている。
【0024】
このうち、流量表示器19は、正常時は流量を示す数字を表示し、異常発生時(例えば流量設定つまみ17の位置が適切でない場合等)には全てのLEDが点滅するものである。また、外部積算時間表示器21は、正常時は積算時間を示す数字を表示し、異常発生時(例えば流量設定つまみ17の位置が適切でない場合等)には、異常の内容や異常に対する対処方法等を表示するものである。そして、上述した異常ランプ15や流量表示器19や外部積算時間表示器21等の光学機器は、表示装置33(図3参照)として一体に構成されている。
【0025】
なお、流量設定つまみ17には、その回転位置(従って設定流量)を示す指示ライン35が設けられ、流量設定つまみ17の周囲には、3L(リットル)器であれば0〜3L/分までの、5L器であれば0〜5L/分までの設定流量が表示されている。
【0026】
b)次に、本実施例の酸素濃縮器1の内部構成について説明する。
図3に示す様に、筐体3内には、空気取入口41及び防塵フィルタ43を介して周囲の空気が導入され、導入された空気は、吸気フィルタ45及び吸気マフラ47を介してコンプレッサ49に吸入される。
【0027】
コンプレッサ49は、モータ51の回転により、吸入空気を圧縮して高圧空気を生成し、生成された高圧空気は、チェック弁53、55、供給弁(第1供給弁57、第2供給弁59)を介して、一対の吸着筒(第1吸着筒61、第2吸着筒63)に供給される。
【0028】
供給弁57、59から吸着筒61、63に至る高圧空気の供給経路には、それぞれ排気弁(第1排気弁65、第2排気弁67)が接続されており、排気弁65、67の開弁時には、各吸着筒61、63を大気に開放できる。
【0029】
吸着筒61、63には、空気中の窒素を優先的に吸着して酸素を分離するゼオライト系の吸着剤が充填されている。そして、排気弁65、67が閉弁状態にあるとき、チェック弁53、55及び供給弁57、59を介して、コンプレッサ49から高圧空気が供給されると、その空気中から窒素を吸着して酸素濃縮ガスを生成し、酸素濃縮ガスをチェック弁79、81を介して製品タンク83側に送出する。
【0030】
なお、吸着筒61、63からチェック弁79、81に至る酸素濃縮ガスの吐出経路には、両吸着筒61、63の吐出側を連通する連通路85が設けられ、その連通路85には、オリフィス87、89を介して電磁弁からなるパージ弁91が設けられている。
【0031】
また、製品タンク83の下流側には、酸素濃縮ガスの圧力を調節する圧力調節器93が設けられ、圧力調整器93で調圧された酸素濃縮ガスは、流量設定器95によって流量が設定された後に、加湿器7まで送られ、加湿器7にて加湿された後、排出口97を介して、外部に排出される。
【0032】
更に、酸素濃縮ガスの排出経路には、酸素濃縮ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ99と、酸素濃縮ガスの流量を検出する流量センサ101が設けられている。
なお、本発明における酸素濃度検出手段として前記酸素センサ99を使用でき、流量検出手段として前記流量センサ101を使用できる。
ここで、前記流量設定器95は、後述する様に、マニュアルにて操作される流量設定つまみ17によって作動し、流量設定つまみ17の操作角(回転角)に応じて酸素濃縮ガスの流路を切り換えて流量を調節する装置であり、この流量設定器95には、流量設定つまみ17の回転角を検出する回転角センサであるポテンショメータ103が配置されている。
【0033】
c)次に、酸素濃縮器1を制御する電子制御装置について説明する。
図4に示す様に、本実施例では、電子制御装置105は、周知のマイクロコンピュータ(マイコン)107や、各種のデータを記録するメモリ(例えばEEPROM)109を備え、その入力部111には、電源スイッチ11、酸素センサ99、流量センサ101、ポテンショメータ103などが接続されている。
【0034】
また、マイコン107の出力部113には、装置の状態を報知する手段として、ブザー(又はスピーカ)115、運転ランプ13、異常ランプ15、流量表示器19、外部積算時間表示器21、酸素濃度ランプ23、加湿器漏れランプ25、カニューラ折れランプ29、流れ表示ランプ31が接続されている。更に、出力部113には、モータ51、供給弁57、59、排気弁65、67、パージ弁91等が接続されている。
【0035】
なお、装置の異常を報知するために、後述する様に、ブザー(又はスピーカ)115、異常ランプ15、流量表示器19、外部積算時間表示器21などが使用される。
d)次に、本実施例の要部である流量設定器95について、3L器を例として、更に詳細に説明する。
【0036】
・まず、流量設定器95の構成について説明する。
前記図2に示す様に、流量設定器95は、流量設定つまみ17を右回転させることによって、その回転角30度毎に、酸素濃縮ガスの流量を、0L/分、0.25L/分、0.5L/分、0.75L/分、1L/分、1.25L/分、1.5L/分、1.75L/分、2L/分、2.5L/分、3L/分の11の設定値(設定流量)に切り換え可能な装置である。
【0037】
この流量設定器95は、図5(a)に示す様に、流量設定つまみ17が取り付けられる第1シャフト121と、第1シャフト121の回転によって酸素濃縮ガスの流路を切り換える流路切換部123と、第1シャフト121に取り付けられた第1ギア125と、第1ギア125と噛み合って回転する第2ギア127と、第2ギア127の第2シャフト129と、第2シャフト129の回転角(従って流量設定つまみ17の回転角)に応じた電気信号を出力する前記ポテンショメータ103とを備えている。
【0038】
また、流路切換部123の内部には、図5(b)に示す様に、流路切換板131が配置されている。この流路切換板131は、設定流量に対応した各回転角に応じて、各設定流量に対応した複数のオリフィス133が環状に配置されたものである。従って、流量設定つまみ17が回されると、流路切換板131が回転して、選択された設定流量に対応したオリフィス133のみが酸素濃縮ガスの流路と連通するので、設定流量に対応した酸素濃縮ガスが供給可能となる。
【0039】
なお、使用者が流量設定つまみ17を操作する際に、流量設定つまみ17を各設定流量に対応した30度毎に容易に止めることができるように、図5(c)に拡大して示す様な停止機構135が、流路切換部123内に設けられている。
【0040】
この停止機構135とは、第1シャフト121に取り付けられた回転板137に、半径方向に沿ってバネ139及びボール141が配置されるとともに、回転板137の外周側(流路切換部123の内壁143)に、30度毎に凹部145が設けられたものである。従って、流量設定つまみ17が30度回転する毎に、ボール141が凹部145に嵌り込んで、流量設定つまみ17を一時的に固定することができ、その際に、クリック感が得られる。
【0041】
・次に、流量設定つまみ17の回転角を検出する構成について説明する。
本実施例では、流量設定つまみ17の回転角30度毎に、設定流量が決められており、電子制御装置105のメモリ109には、図6に示す様に、設定流量と流量設定つまみ17の回転角(目標値)とポテンショメータ103の出力値との関係が記録されている。なお、この記録されている出力値とは、ポテンショメータ103の出力電圧がA/D変換されたデジタル値であり、例えば出力電圧が0.625Vのとき128、1.25Vのとき256等の様に、出力電圧に対応(比例)した値である。
【0042】
つまり、流量設定つまみ17を回転させると、設定流量が予め決められた順番で徐々に変化し、その設定流量は流量表示器19に表示されるが、現在どの設定流量にあるかどうかは、ポテンショメータ103の出力に応じて判断される。すなわち、ポテンショメータ103の出力と回転角との間には対応関係があるので、ポテンショメータ103の出力から回転角(従って設定流量)を判断する。
【0043】
そして、この判定をするために、メモリ109には、前記図6に示すデータ、即ち、設定No.と、設定流量と、回転角と、(設定流量に対応した回転角の範囲(判定範囲)を設定するための)ポテンショメータ103の上限及び下限とが記録されている。
【0044】
特に、前記流量設定つまみ17には、上述した停止機構135などの機械的な構成に起因する遊びがあるので、本実施例では、ポテンショメータ103の出力値として、図7に示す様に、各設定流量毎に遊びの上限と下限とを記録している。つまり、ポテンショメータ103の出力値が、ある設定流量に対応した上限と下限との間にある場合に、その設定流量と判断するので、設定流量を判定するための判定範囲が設定してある。
【0045】
ここで、上限とは、凹部145にボール141が嵌り込んで流量設定つまみ17が一時停止している場合において、流量設定つまみ17を右方向(B方向)に回転させた場合の遊びの限度であり、下限とは、流量設定つまみ17を左方向(A方向)に回転させた場合の遊びの限度である。
【0046】
つまり、各設定流量毎に上限と下限との間に挟まれた設定流量の範囲(図7の斜線の判定範囲)が決められているので、ポテンショメータ103の出力が、ある判定範囲にある場合に、その設定流量であると判断するのである。
【0047】
一方、ポテンショメータ103の出力が各判定範囲(従って各設定位置)に無い場合、即ち各設定位置の間にある場合には、流量設定つまみ17の回転角が、正しい設定位置に無い(即ち各設定位置の中間の中間位置にある)と判断することができる。
【0048】
従って、本実施例では、使用者が流量設定つまみ17を所望の設定流量に合わせるように回転させた場合に、ポテンショメータ103の出力がいずれかの判定範囲内であるときには、その設定流量を流量表示器19に表示する。それとともに、流路切換板131が回転して設定流量に対応したオリフィス133が、ガスの流路を開くようにセットされるので、このオリフィス133により設定流量の酸素濃縮ガスが供給される。
【0049】
一方、ポテンショメータ103の出力から、中間位置が検出された場合には、流量設定つまみ17が正しい設定流量の位置にセットされていないとして、その旨や対策を外部積算時間表示器21に表示したり、異常ランプ15や流量表示器19の点滅、ブザー113等で報知する。
【0050】
e)次に、メモリ109に設定流量とポテンショメータ103の出力とを対応させて記録させる手順について説明する。
この手順は、製造工程にて、予め設定流量(図6の設定No.)に対応したポテンショメータ103の出力の上限及び下限を、作業者がマニュアルにてメモリ109に記録するものである。なお、メモリ109には、既に、図6に示す様に、設定No.、設定流量、回転角のデータが、関係づけて記録されている。
【0051】
図8のフローチャートに示す様に、まず、設定流量No.(=設定No.)が0に関する作業から開始する(ステップ100)。
そして、設定流量No.が10を超えた場合は、全ての作業工程が完了したとして、作業を終了し、そうで無い場合は以下の作業を行う(ステップ110)。
【0052】
まず、設定流量No.が最初の0の場合には、流量設定つまみ17を図7のB方向に回して、B方向における遊びの範囲(端部)を確認し、その際のポテンショメータ103の出力を判定範囲の上限値として得るようにする(ステップ120)。具体的には、図9(a)に示す様に、ポテンショメータ103の出力端子に測定機器(例えばマイコン)151を接続し、ポテンショメータ103の出力(電圧値)をデジタル(数値)で読み取る。
【0053】
そして、この読み取った上限の数値を、図9(b)に示す様に、周知の書込機器(例えばマイコンと、スイッチ又はリモコンボタン)153を用いて、電子制御装置105のメモリ109に、設定流量No.に対応づけて書き込む(ステップ130)。
【0054】
次に、流量設定つまみ17を図7のA方向に回して、A方向における遊びの範囲を確認し、その際のポテンショメータ103の出力を判定範囲の下限値として得る(ステップ140)。
【0055】
次に、この読み取った下限の数値を、電子制御装置105のメモリ109に、設定流量No.に対応づけて書き込む(ステップ150)。
そして、次の設定流量No.に対して、同様な作業を継続し(ステップ160)、全て設定流量No.に関するデータの書き込みが完了すると、この作業を終了する。
【0056】
f)次に、電子制御装置105により行われる中間位置の検出等の処理について説明する。
図10のフローチャートに示す様に、酸素濃縮器1の電源がONされると、ステップ200にて、酸素センサ99からの信号に基づいて、酸素濃縮ガスの濃度が異常であるか(所定の正常の範囲を外れているか)否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ210に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0057】
ステップ210では、酸素の濃度値をメモリ109に記録する。
続くステップ220では、ポテンショメータ103からの信号に基づいて、回転角が中間位置であるか否かを判定する。つまり、前記図7に示す様に、回転角が各設定流量に対応した設定位置の範囲(設定範囲;従って上限と下限との間の判定範囲)から外れた中間位置であるか否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ230に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0058】
ステップ230では、中間位置と判断されたので、前記濃度異常の判定結果と関連づけて中間位置であることを記録する。つまり、今回の濃度異常の際に、中間位置であったことを記録する。
【0059】
続くステップ240では、中間位置であることを警告し、一旦本処理を終了する。
具体的には、異常ランプ15及び流量表示器19を点滅するとともに、外部積算時間表示器21にて、流量設定つまみ17が中間位置であることを表示し、更に、ブザー115で報知しても良い。また、音声で中間位置であることを報知してもよい。
【0060】
g)この様に、本実施例では、予め流量設定つまみ17を回転させて、各設定流量における流量設定つまみ17の遊びの範囲を確認し、各設定流量とそのときのポテンショメータ103の出力の範囲(即ち設定流量に対応した上限と下限との間の判定範囲)とを対応させて記録している。
【0061】
そして、実際に酸素濃縮器1を使用する際に、流量設定つまみ17が操作された場合には、ポテンショメータ103の出力が前記判定範囲内であるか(即ち設定位置を示す設定範囲内か)否か(即ち中間位置か)を判定している。
【0062】
従って、ポテンショメータ103の特性にばらつきがあっても、常に、精度良く中間位置を検出できるという効果を奏する。
また、本実施例では、酸素濃度ガスの濃度に異常がある場合に、中間位置の判定を行って、その判定結果を記録しているので、濃度異常と中間位置との関係が分かり、装置の異常等の原因を容易に見つけ出すことができる。
【0063】
なお、本実施例では、遊びの上限と下限とに応じて判定範囲を決めたが、例えば遊びの上限と下限の中間値を求め、その中間値から±の所定範囲(所定角度)内を、判定範囲としてもよい。
【実施例2】
【0064】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例は、中間位置の検出等の処理に特徴があるので、この処理について説明する。
図11のフローチャートに示す様に、酸素濃縮器1の電源がONされると、ステップ300にて、酸素濃縮ガスの濃度が異常であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ310に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0065】
ステップ310では、酸素の濃度値をメモリ109に記録する。
続くステップ320では、流量設定つまみ17の回転角が中間位置であるか否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ350に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
【0066】
ステップ330では、流量設定つまみ17の回転角がある判定範囲内にあるが、ここでは、流量センサ101からの信号に基づいて、実際の流量が前記回転角に対応した設定流量であるか否かを判定する。なお、この判定の際には、判定する流量に幅(正常範囲)を持たせ、実際の流量がこの正常範囲内の場合には流量が正常であると判定し、正常範囲外の場合には異常と判定する。ここで、肯定判断されるとステップ340に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0067】
ステップ340では、中間位置の判定結果と関連づけて(異常な)流量値を記録し、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ350では、中間位置と判断されたので、前記濃度異常の判定結果と関連づけて中間位置であることを記録する。
【0068】
続くステップ360では、流量設定つまみ17の回転角が中間位置にあるが、ここでは、流量センサ101からの信号に基づいて、実際の流量が前記回転角に対応した設定流量であるか否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ370に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0069】
ステップ370では、中間位置の判定結果と関連づけて(異常な)流量値を記録する。
続くステップ380では、中間位置であることを警告し、一旦本処理を終了する。
本実施例では、中間位置の判定の後に、流量異常の判定を行っている。従って、中間位置と流量異常との関係が分かるので、装置に異常が生じた場合には、その異常の原因を容易に把握することができる。例えば中間位置にある場合に流量異常が生じたときには、中間位置によって流量異常が発生した可能性が高いことが分かる。一方、中間位置に無い場合に流量異常が発生した場合には、中間位置とは異なる原因で流量異常が発生したことが分かる。
【0070】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば中間位置を警告する方法として、流量表示器のLEDの点滅以外に、LEDを消灯する方法が考えられる。或いは、流量表示器のLED表示を、通常とは異なる例えば「― ― ―」等の表示に変更してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…酸素濃縮器
5…操作パネル
15…異常ランプ
17…流量設定つまみ
19…流量表示器
95…流量設定器
99…酸素センサ
101…流量センサ
103…ポテンショメータ
133…オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュアルにて回転操作される流量設定つまみと酸素濃縮ガスの各設定流量に対応した複数のオリフィスとを有し、前記流量設定つまみの回転に応じてオリフィスを切り換えて前記設定流量を切り換える流量設定器を備えた酸素濃縮器において、
前記流量設定つまみの回転角度に応じた信号を出力するポテンショメータを備え、
前記各設定流量はそれぞれ設定範囲を有するとともに、前記設定範囲に対応したポテンショメータの出力信号の判定範囲を記録する記録手段と、
前記ポテンショメータの出力信号が前記判定範囲内に有るか範囲外にあるかを判定し、前記ポテンショメータの出力信号が前記判定範囲外にあると判定された場合には、前記各設定範囲を外れた中間位置にあると判定する中間位置検出手段と、
を備えたことを特徴とする酸素濃縮器。
【請求項2】
前記各設定流量における前記流量設定つまみの回転方向における遊びの上限と下限とを前記設定範囲とし、前記ポテンショメータの出力信号の判定範囲を設定したことを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮器。
【請求項3】
前記酸素濃縮ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段からの信号に基づいて、前記酸素濃縮ガスの濃度の異常を検出する濃度異常検出手段と、
を備え、
前記濃度異常検出手段によって、前記酸素濃縮ガスの濃度が異常であることが検出された場合には、その濃度を記録し、
前記中間位置検出手段によって、前記流量設定つまみの回転位置が中間位置にあることが検出された場合には、その中間位置を記録することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃縮器。
【請求項4】
前記酸素濃縮ガスの流量を検出する流量検出手段と、
前記流量検出手段からの信号に基づいて、前記酸素濃縮ガスの流量が前記設定流量と異なることを検出する流量異常検出手段と、
を備え、
前記中間位置検出手段によって、前記流量設定つまみの回転位置が中間位置にあることが検出された場合には、その中間位置を記録し、
前記流量異常検出手段によって、前記酸素濃縮ガスの流量が前記流量設定つまみによって設定された設定流量と異なることが検出された場合には、その流量を記録することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸素濃縮器。
【請求項5】
前記流量設定つまみの回転位置が、前記中間位置にあると判定された場合には、その旨を報知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸素濃縮器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−4962(P2011−4962A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151224(P2009−151224)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】