説明

酸素燃焼システムの排ガス処理装置

【課題】排ガス循環部の配管の腐食を防止し、ミルにおいては配管内の微粉炭の流動性や燃焼性の低下を防止することである。
【解決手段】石炭を燃料とした酸素燃焼ボイラ1と、脱硝装置3と、空気予熱器4と、集塵装置5と、脱硫装置6と、二酸化炭素回収装置8とを酸素燃焼ボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置した排ガス処理部と、集塵装置5出口又は脱硫装置6出口の排ガスダクトから分岐して排ガスを空気予熱器4により予熱して酸素燃焼ボイラ1に戻す排ガス循環部とを設けた排ガス処理装置において、空気予熱器4と集塵装置5との間に集塵装置5入口のガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上にする熱回収用熱交換器13を設け、排ガス循環部の分岐部近傍にガス温度をSO3の酸露点以上にする再加熱用熱交換器13を設ける。集塵装置5入口のガス温度をSO3の酸露点以下にすることでSO3を凝縮させて集塵装置5で除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素燃焼システムの排ガス中の有害成分を除去する排ガス処理装置に係わり、特に集塵部で三酸化硫黄(SO3)を効率よく除去することで、排ガス循環部の配管やファンの腐食及び灰詰まり等を防止するのに適切な排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発電用ボイラの二酸化炭素(CO2)削減技術の一つとして、酸素燃焼方式が注目されている。酸素燃焼方式では、従来の方式(空気燃焼方式)と比べて排ガス組成が大きく異なるため、SO3の高濃度化による排ガス循環部の配管又はファンの腐食及び灰詰まり等の点を考慮しなければならず、酸素燃焼方式に適する排ガス処理装置の開発も重要な課題である。
【0003】
従来の酸素燃焼システムにおける排ガス処理装置の構成を図6に示す。図6の排ガス処理装置は、脱硫装置の上流側に排ガス循環部を設けた構成である。
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガス中の二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0004】
そして、更に集塵装置5の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1に戻す第一循環ライン9及び集塵装置5の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
ボイラ1は、ミル19から供給される石炭を酸素燃焼することにより、排ガスを生成する。このときに用いられる酸素は酸素製造装置10により製造、供給される。そして、酸素の供給は、酸素供給配管21から第一循環ライン9を介して、また酸素供給配管22からミル19への第二循環ライン20等を介して行われる。供給された酸素はA/H4で循環ガスと共に加熱される。
【0005】
また、脱硝装置3では、排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)が分解され、その後、A/H4で排ガス温度を200〜160℃に降下させた後に、集塵装置5で排ガス中の煤塵が除去される。集塵装置5により除塵された排ガスは流路が分岐することで脱硫装置6、第一循環ライン9、第二循環ライン20にそれぞれ供給される。
脱硫装置6では排ガス中の二酸化硫黄(SO2)が除去されて、その後CO2回収装置8で排ガス中のCO2が回収される。また、集塵装置5出口から第一循環ライン9を通った排ガスは、排ガス循環用ファン15により昇圧されて、ボイラ1に供給される。更に、集塵装置5出口から第二循環ライン20を通った排ガスは、排ガス循環用ファン18によって昇圧されて、A/H4で200℃まで再加熱された後、ミル19に供給される。ミル19では石炭が乾燥及び粉砕されて、石炭は供給されたガスと共にボイラ1に供給される。
【0006】
また、図7には、従来技術の酸素燃焼システムにおける排ガス処理装置の他の例を示す。図7に示す排ガス処理装置は、脱硫装置6の下流側に排ガス循環部を設けた構成である。
この排ガス処理装置も図6に示す排ガス処理装置と同様に、主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガス中の二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0007】
そして、更に脱硫装置6の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1へ戻す第一循環ライン9及び脱硫装置6の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
ボイラ1はミル19から供給される石炭を酸素燃焼することにより、排ガスを生成する。このときに用いられる酸素は酸素製造装置10により製造、供給される。そして、酸素の供給は、酸素供給配管21から第一循環ライン9を介して、また酸素供給配管22からミル19への第二循環ライン20等を介して行われる。供給された酸素はA/H4で循環ガスと共に加熱される。
【0008】
また、脱硝装置3では排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)が分解され、その後、A/H4で排ガス温度を200〜160℃に降下させた後、集塵装置5で排ガス中の煤塵が除去される。集塵装置5により除塵された排ガスは脱硫装置6に供給されることで排ガス中の二酸化硫黄(SO2)が除去される。
脱硫装置6により脱硫後の排ガスは流路が分岐することでCO2回収装置8、第一循環ライン9、第二循環ライン20にそれぞれ供給される。
【0009】
CO2回収装置8では排ガス中のCO2が回収される。また、脱硫装置6出口から第一循環ライン9を通った排ガスは、排ガス循環用ファン15により昇圧されてボイラ1に供給される。更に、脱硫装置6出口から第二循環ライン20を通った排ガスは、排ガス循環用ファン18によって昇圧されてA/H4で200℃まで再加熱された後、ミル19に供給される。ミル19では石炭が乾燥及び粉砕されて、石炭は供給されたガスと共にボイラ1に供給される。
【0010】
また、酸素燃焼方式として、下記特許文献3には、石炭を純酸素と二酸化炭素の混合ガスで燃焼させると共に、該燃焼によって発生した分の二酸化炭素と水分を除去した後に残存する二酸化炭素を還流して石炭の燃焼に使用する閉サイクルを構成した二酸化炭素回収型石炭火力発電システムが開示されている。石炭を純酸素と二酸化炭素の混合ガスで燃焼させることで、その結果ほぼ二酸化炭素のみが生成されて閉サイクルに使用されることで、酸素濃度を空気のそれと近似させて燃焼条件を維持すると共に、燃焼で生成した分の二酸化炭素が系外に抽出されてCO2分離装置なしに回収される。
【0011】
そして、具体例として、微粉炭ボイラにおいて微粉炭を純酸素と二酸化炭素の混合ガスで燃焼し、燃焼による排ガスを脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、凝縮器に通して、ほぼCO2のみとなったガスを回収し、そのガスの一部を燃焼用酸素の希釈用としてボイラに戻すシステムが開示されている。
【0012】
また、従来の方式(空気燃焼方式)による排ガス処理装置としては、下記特許文献1及び特許文献2等に、空気予熱器と集塵装置の間に熱回収装置を設け、空気予熱器の上流側に炭酸カルシウムなどの中和剤を注入して排ガス中のSO3ガスと高温ガス雰囲気下で反応させてSO3ガスを除去し、熱回収装置により熱回収後、排ガスを集塵装置に通過させる構成が開示されている。熱回収装置を通過して温度が低下した排ガスが集塵装置に供給されることで、中和剤の電気抵抗値を低下させてダストが吸着されずに飛散する逆電離現象の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−833号公報
【特許文献2】特開2000−317260号公報
【特許文献3】特開平4−244504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
酸素燃焼方式による上記従来技術や特許文献3に記載の構成では、高濃度の硫黄(S)分を含む石炭を酸素燃焼した場合に、排ガス中のSO3濃度や水分濃度が高くなることについては配慮されておらず、したがって、排ガス循環部の配管やファン等が腐食するなどの問題があった。通常の空気燃焼の場合、例えば、石炭中のS分(硫黄含有率)が0.4〜2.7%(重量%)の石炭を燃焼すると、排ガス中のSO3濃度は12〜50ppm、水分濃度は8%程度である。しかし、酸素燃焼の場合はSO3濃度は60〜250ppm、水分濃度は30%と空気燃焼の場合に比べて、SO3濃度及び水分濃度共に高くなる。
【0015】
図8には、酸素燃焼時と空気燃焼時におけるSO3(無水硫酸)の酸露点を比較した図を示す。図8は排ガス温度(酸露点)とSO3濃度との関係を示している。
上述のように、酸素燃焼の場合は空気燃焼の場合に比べて水分濃度が高くなる。そして、図8に示すように、酸素燃焼時では、SO3の濃度が60〜250ppmとした場合に、SO3の酸露点は162〜178℃と高くなる。空気燃焼時では、SO3の濃度が12〜50ppmとした場合に、SO3の酸露点は130〜145℃である。したがって、空気燃焼時に対して酸素燃焼時は酸露点が高くなる。
【0016】
従来の空気燃焼技術におけるA/H出口温度条件では、A/H及びA/Hと集塵装置の間の配管でガス温度が酸素燃焼時におけるSO3の酸露点である180℃よりも低くなることがあり、SO3ミストが凝縮して灰が詰まるという問題が懸念されるため、A/H出口温度を酸露点以上にする必要がある。
また、循環ラインからの排ガスをミルへ供給する際にはA/Hにおいて循環ガスを再加熱し、ミル入口のガス温度を200℃にして供給するが、石炭の乾燥及び粉砕後のミルの出口ガス温度は約90℃に下がって酸露点以下となり、SO3ミストが発生する。したがって、SO3ミストが凝縮してミルケーシングや出口配管に付着すると、配管内が腐食するだけでなく、粉砕及び乾燥された石炭微粉(平均粒径50μm)を凝集させてしまう。凝縮した石炭微粉が配管内に堆積すると流動性の阻害や、燃焼性の悪化を招く。
【0017】
上記特許文献2及び特許文献3によれば、空気予熱器の上流側に炭酸カルシウムなどの中和剤を注入してSO3ガスと高温ガス雰囲気下で反応させることで、SO3ガスを除去する構成が開示されている。しかし、酸素燃焼時においては上述のように空気燃焼時と比較して排ガス中のSO3濃度が高くなり、石炭燃焼灰中のアルカリ成分だけではSO3を中和しきれず、空気燃焼時よりも配管が腐食する場合がある。
【0018】
本発明の課題は、排ガス循環部のSO3濃度及び水分濃度を低減し、排ガス循環部の配管などの腐食を防止することである。また、本発明の課題は、ミルにおいては腐食防止だけでなく、配管内の微粉炭の流動性や燃焼性の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、A/Hと集塵装置との間に熱回収用の熱交換器を設置し、集塵装置入口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上に設定し、更に、循環ライン上流側に再加熱用の熱交換器を設け、排ガス温度をSO3の酸露点以上に加熱することにより、達成される。
また、上記課題は、上記構成に加えて、熱回収用熱交換器の上流側の排ガス中にアルカリ性の添加剤を排ガス中のSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように供給することにより、達成される。
【0020】
更に、上記課題は、上記構成に加えて、循環ラインに設けた再加熱用熱交換器の上流側に水除去装置を設置して排ガス中の水分濃度を低減することによっても達成される。
また、上記課題は、上記構成による循環ラインの一部のガスをミルに供給することにより、達成される。
【0021】
具体的に本発明の課題は、次の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、石炭を燃料とした酸素燃焼ボイラから発生する排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する脱硝装置と、該脱硝装置出口の排ガスにより酸素燃焼ボイラの燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガス中の媒塵を回収する集塵装置と、該集塵装置出口の排ガス中の硫黄酸化物を脱硫処理する脱硫装置と、前記脱硫装置出口の排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置とを酸素燃焼ボイラの排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置した排ガス処理部と、前記集塵装置出口又は前記脱硫装置出口の前記排ガスダクトから分岐して、排ガスを前記空気予熱器により予熱して燃焼用空気として酸素燃焼ボイラに戻す循環ラインを有する排ガス循環部とを設けた排ガス処理装置において、空気予熱器と集塵装置との間の排ガスダクトに空気予熱器出口の排ガスから熱回収して集塵装置入口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上にするための熱回収用熱交換器を設け、更に、前記排ガス循環部の分岐部近傍の循環ラインに前記熱回収用熱交換器と熱交換することで排ガス温度をSO3の酸露点以上にするための再加熱用熱交換器を設けた酸素燃焼システムの排ガス処理装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、熱回収用熱交換器の上流側であって脱硝装置の入口又は出口の排ガスダクトに、排ガス中にアルカリ性の添加剤を供給するアルカリ性添加剤供給手段を設けた請求項1に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置である。
請求項3記載の発明は、脱硝装置の出口に排ガス中のSO3濃度を測定するSO3濃度測定手段を設け、前記アルカリ性添加剤供給手段に添加剤供給量を調整する添加剤供給量調整手段を設け、前記アルカリ性添加剤供給手段による添加剤供給量が前記SO3濃度測定手段により測定されるSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように前記添加剤供給量調整手段の制御を行う制御装置を設けた請求項2に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置である。
【0023】
請求項4記載の発明は、前記排ガス循環部の分岐部近傍であって再加熱用熱交換器の上流側に排ガス中の水分を除去するための水除去装置を設けた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置である。
請求項5記載の発明は、前記酸素燃焼ボイラに石炭を供給するミルを設け、前記排ガス循環部の再加熱用熱交換器よりも下流側の排ガスを前記ミルに供給するミル供給排ガスラインを設けた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置である。
【0024】
(作用)
本発明によれば、A/Hと集塵装置との間に熱回収用熱交換器を設け、集塵装置入り口の排ガス温度をSO3の酸露点以下の温度とすることで、排ガス中のSO3が凝縮して灰に付着する。上記従来技術では、A/H及びA/Hと集塵装置の間の配管でガス温度が160℃になるため、SO3の酸露点である162〜178℃よりも低いことからSO3ミストが凝縮して灰が詰まる問題があったが、本発明によれば、集塵装置入り口の排ガス温度を水露点の温度(70〜80℃)以上で酸露点(162〜178℃)以下とすることで、熱回収用熱交換器より上流側のA/Hや配管内で灰が詰まることを防止できる。なお、水露点(酸素燃焼時、約70〜80℃)以下では水が生成するため、灰と一緒に固まり熱回収用熱交換器又は集塵装置が閉塞してしまうため、水露点の温度(70〜80℃)以上とする。
【0025】
灰に付着したSO3は、灰中のアルカリ成分と反応して塩を形成する。そして、灰に付着したSO3は集塵装置で灰と共に系外に排出されることになる。そのため、集塵装置よりも下流側の排ガス中、すなわち、排ガス循環部の排ガス中のSO3は微量(例えば、1ppm以下)となるため、排ガス循環部の配管及びファンなどの腐食を低減できる。なお、熱回収用熱交換器や集塵装置の配管にSO3が付着しても、アルカリ性の灰があれば中和されるため、配管の腐食を防止できる。灰中のアルカリ性成分が不足した場合は配管が腐食しやすくなるため、後述するようにアルカリ性の添加剤を供給する必要がある。
【0026】
また、循環ライン上流側に再加熱用熱交換器を設置し、上記熱回収用熱交換器で回収した熱を利用して排ガスを加熱することで、排ガスの温度を酸露点以上にすることができる。したがって、排ガス循環部の配管及びファンにおけるSO3の凝縮を防止することができ、排ガス循環部の配管及びファンの腐食を大幅に低減できる。
更に、集塵装置の上流側にアルカリ性の添加剤を供給することで、排ガス中のSO3が灰中のアルカリ成分と反応し、灰中の成分が酸性側になることを防止して、すなわち灰中の成分がアルカリ性を維持することで、集塵装置の下流側の配管や集塵装置の腐食を防止することができる。また、酸素燃焼の場合は空気燃焼の場合に比べて水分濃度が高くなるが、循環ラインに設けた再加熱用熱交換器の上流側に水除去装置を設置すると、水除去装置によって排ガス中の水分濃度が低減するため、排ガス循環部の配管、ファン及びミルにおけるSO3の凝集の防止効果を高めることができる。
【0027】
具体的に、請求項1記載の発明によれば、集塵装置入口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上にすることで、排ガス中のSO3を凝縮させて灰に付着したSO3を集塵装置で除去すると共に、排ガス循環部の循環ラインに設けた再加熱用熱交換器により排ガス温度をSO3の酸露点以上に加熱することで、排ガス循環部の配管のSO3の凝縮を防止することができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、熱回収用熱交換器の上流側であって脱硝装置の入口又は出口の排ガス中にアルカリ性の添加剤を供給することで、排ガス中のSO3が灰中のアルカリ成分と反応し、灰中の成分が酸性側になることを防止できる。
【0028】
また、請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の作用に加えて、SO3濃度と当量で反応する濃度以上になるようにアルカリ性の添加剤を供給することで、確実に灰中の成分をアルカリ性に維持することができる。
そして、再加熱用熱交換器によって排ガスを再加熱する際に、排ガス中に水分が多いと、水の潜熱によって排ガス温度を酸露点以上に再加熱する効率が悪くなる。
しかし、請求項4記載の発明によれば、上記請求項1から3に記載のいずれか一項の発明の作用に加えて、水除去装置によって排ガス中の水分を除去することにより、再加熱用熱交換器の再加熱効率を向上させることができる。
【0029】
更に、請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から4に記載のいずれか一項の発明の作用に加えて、集塵装置によってほとんどのSO3が除去された排ガスが更に再加熱用熱交換器によって酸露点以上に再加熱されてからミルに供給されるので、ミル内やミルの出口配管にSO3が凝縮することもない。なお、一度酸露点以下の温度に下げたガスを再加熱した場合(例えば200℃)、排ガス中のSO3は少ないので、ミル内でSO3の凝集は殆ど起こらない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、熱回収用熱交換器により排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上とすることで、排ガス中のSO3を灰と共に高効率で除去できる。また、熱回収用熱交換器により回収した熱は再加熱用熱交換器で排ガス循環部を再加熱するため、排ガス循環部の配管などの低温腐食を防止できる。また、アルカリ性の添加剤を脱硝装置出口のガス中のSO3濃度と当量で反応する濃度以上で添加することで、熱回収用熱交換器やその配管、集塵装置などの腐食を防止できる。
【0031】
また、再加熱用熱交換器の上流側に水除去装置を設けてガス中の水分濃度を低減することで、SO3の酸露点が低下するため、排ガス循環部の配管などの低温腐食を防止する効果がある。また、ミルにはSO3濃度の低減した排ガス循環部の一部のガスを供給するため、ミルの腐食防止やミルの出口配管内の微粉炭の流動性、燃焼性の低下を防止することができる。
【0032】
具体的に、請求項1記載の発明によれば、集塵装置入口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上にすることで、排ガス中のSO3を灰と共に高効率で除去できる。そして、排ガス循環部の再加熱用熱交換器により排ガス温度をSO3の酸露点以上に加熱することで排ガス循環部の配管の腐食を防止することができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、集塵装置の上流側にアルカリ性の添加剤を供給することで、灰中の成分が酸性側になることを防止できる。
【0033】
また、請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、熱回収用熱交換器やその配管、集塵装置などの腐食防止効果を高めることができる。
更に、請求項4記載の発明によれば、上記請求項1から3に記載のいずれか一項の発明の効果に加えて、水除去装置によって排ガス中の水分を除去することにより、再加熱用熱交換器の再加熱効率を向上させて、排ガス循環部の配管の低温腐食を防止できる。
【0034】
更に、請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から4に記載のいずれか一項の発明の効果に加えて、SO3がほとんど除去された排ガスがミルに供給されるので、ミルの腐食防止やミルの出口配管内の微粉炭の流動性、燃焼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1の排ガス処理装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2の排ガス処理装置の全体構成図である。
【図3】本発明の実施例3の排ガス処理装置の全体構成図である。
【図4】本発明の実施例4の排ガス処理装置の全体構成図である。
【図5】本発明の実施例5の排ガス処理装置の全体構成図である。
【図6】従来技術の脱硫装置の上流側に排ガス循環部を設けた排ガス処理装置の全体構成図である。
【図7】従来技術の脱硫装置の下流側に排ガス循環部を設けた排ガス処理装置の全体構成図である。
【図8】酸素燃焼時と空気燃焼時のSO3の酸露点を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の排ガス処理装置の実施例を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0037】
本発明の実施例1を図面と共に説明する。図1は脱硫装置6の上流側に第一循環ライン9及び第二循環ライン20を設けた排ガス処理装置の全体構成を示したものである。
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガスから熱を回収するための熱回収用熱交換器13、熱回収用熱交換器13の出口排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガスの一部のガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガス中の二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置(例えば、CO2ガスを圧縮して液化させて分離する装置)8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0038】
更に、集塵装置5の出口排ガスの一部のガスを再加熱するための再加熱用熱交換器14と、再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1に戻す第一循環ライン9及び再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン(ミル供給排ガスライン)20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置(例えば、空気中の酸素を分離する装置)10などからなる排ガス循環部が設けられている。
【0039】
ボイラ1はミル19から供給される石炭を酸素燃焼することにより、排ガスを生成する。このときに用いられる酸素は酸素製造装置10により製造、供給される。そして、酸素の供給は、酸素供給配管21から第一循環ライン9を介して、また酸素供給配管22からミル19への第二循環ライン(ミル供給排ガスライン)20等を介して行われる。供給された酸素はA/H4で循環ガスと共に加熱される。
また、脱硝装置3では排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)が分解され、その後、A/H4において、排ガス温度はSO3の酸露点以上の温度まで低下する。例えば、脱硝装置3の出口の排ガスは380℃から200〜160℃ぐらいまで低下する。ここで、酸露点以上の温度とするのは熱回収用熱交換器13よりも上流側でSO3を凝縮させないようにするためである。
【0040】
さらに熱回収用熱交換器13では排ガス温度がSO3の酸露点以下で且つ水露点以上の温度に低下、調整される。図8の縦軸で示すSO3濃度と横軸で示すガス温度(酸露点)から酸素燃焼時の酸露点は推測できる。空気燃焼時の水露点は約50〜55℃、酸素燃焼時の水露点は約70〜80℃である。
なお、SO3の酸露点は、図8に示すように排ガス中のSO3濃度と水分量に依存するが、通常使用される硫黄含有率が0.4〜2.7%(重量%)の石炭を燃焼すると、酸素燃焼の場合のSO3の酸露点は162〜178℃程度であるため、排ガス温度を少なくとも162〜178℃以下にすることで、排ガス中のSO3を凝縮させて硫酸ミスト(H2SO4)とすることができる。
【0041】
A/H4は、例えば、回転再生式の熱交換器を用いる。伝熱エレメントの材質は、例えば高温側はSPCC(冷間圧延鋼板)、低温側はエナメルを用いる。そして、A/H4の出口には排ガス温度計25が設置されており、排ガス温度計25の測定値が制御装置30に入力される。
【0042】
また、熱回収用熱交換器13と後述する再加熱用熱交換器14の伝熱管は、熱媒循環管路12によって連通され、図示しない熱媒ポンプにより熱回収用熱交換器13と再加熱用熱交換器14との間に熱媒が循環されるようになっている。また、熱回収用熱交換器13の出口には出口排ガス温度を測定する排ガス温度計27が設置されており、排ガス温度計27の測定値が制御装置30に入力される。熱媒ポンプの熱媒循環量は制御装置30により制御され、熱回収用熱交換器13の出口排ガス温度が酸露点以下で且つ水露点以上となるように調整される。熱媒としては、例えば水が使用される。
【0043】
なお、熱媒流量による排ガス温度の制御は、図示していないが、前記熱媒を冷却する手段、前記熱媒を加熱する手段及び前記熱回収用熱交換器13に通流する熱媒管路の入口と出口を短絡するバイパス管を設置し、該バイパス管内の熱媒流量を調整する手段のいずれか一つ以上を用いることによっても可能である。なお、前記熱媒流量による排ガス温度の制御は他の実施例にも共通する。
【0044】
そして、装置や各配管等の腐食防止用のアルカリ性の添加剤は、集塵装置5の上流側のA/H4の入口または熱回収用熱交換器13の入口(A/H4の出口)で供給される。また、脱硝装置3の入口又は出口でアルカリ性の添加剤を供給しても良い。アルカリ性の添加剤の供給量は、供給配管11に設けた弁11aなどで容易に調整できる。また、アルカリ性の添加剤の供給方法に特に制限はないが、固体粉末や水溶液での供給が可能であり、スプレ式ノズル等により添加剤を排ガス煙道(排ガスダクト)中に噴霧することで、簡便に行うことができる。
【0045】
そして、例えばアルカリ性の添加剤として、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が添加される。炭酸ナトリウム(Na2CO3)が添加されることで、下記式(1)に示すようにSO3の濃度は減少する。
SO3+ Na2CO3→ Na2SO4+CO2 (1)
【0046】
なお、アルカリ性の添加剤としては炭酸ナトリウムの他にも、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)などが用いられるがこの限りではない。
【0047】
そして、脱硝装置3出口には排ガス中のSO3濃度を測定するためのSO3濃度測定計24を設け、アルカリ性の添加剤の供給量はSO3濃度測定計24による測定値に基づき制御装置30の指令により制御され、供給配管11に設けた弁11aが調整される。このアルカリ性の添加剤の供給量を制御する制御装置30は、熱回収器13の出口排ガス温度を制御する熱媒ポンプの熱媒循環量を決める制御装置30と別に設けても良いし、図1に示すように兼用しても良い。この事項は他の実施例にも共通する。
集塵装置5では、煤塵やアルカリ性の添加剤と反応した塩と共にSO3が除去される。集塵装置5により除塵された排ガスは流路が分岐することで脱硫装置6、第一循環ライン9、第二循環ライン20にそれぞれ供給される。
【0048】
集塵装置5により除塵された排ガスの一部は脱硫装置6に供給されることで排ガス中の二酸化硫黄(SO2)が除去されて、その後CO2回収装置8で排ガス中のCO2が回収される。また、集塵装置5出口の脱硫装置6に供給されないガスは再加熱用熱交換器14により再加熱されて、一部のガスは第一循環ライン9を通り、排ガス循環用ファン15により昇圧後、A/H4により更に約350℃まで加熱された後、ボイラ1に供給される。また、再加熱用熱交換器14を通過した残りのガスは、第二循環ライン20を通り、排ガス循環用ファン18により昇圧されてA/H4で200℃まで再加熱された後、ミル19に供給される。ミル19では石炭が乾燥及び粉砕されて、石炭は供給されたガスと共にボイラ1に供給される。
【0049】
再加熱用熱交換器14の出口には排ガス温度計29が設けられており、再加熱用熱交換器14では、前記熱回収用熱交換器13から熱媒循環管路12を経由して循環供給される熱媒により排ガスが加熱される。そして、排ガスの温度を酸露点以上に調整する。
【0050】
本実施例によれば、集塵装置5の上流側に熱回収用熱交換器13を設け、熱回収用熱交換器13により集塵装置5入り口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上とすることで、排ガス中のSO3が凝縮して灰に付着し、灰に付着したSO3は集塵装置5で灰と共に系外に排出される。
したがって、集塵装置5よりも下流側の排ガス中、すなわち、排ガス循環部の排ガス中のSO3は微量(例えば1ppm以下)となるため、第一循環ライン9や第二循環ライン20、第一循環ライン9に設置された排ガス循環用ファン15や第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18などの腐食を防止することができる。
また、脱硫装置6に供給されるSO3の量を低減できると共に、CO2回収装置8内の腐食も防止できる。
【0051】
更に、集塵装置5の上流側にアルカリ性の添加剤を供給することで、排ガス中のSO3が灰中のアルカリ成分と反応し、灰中の成分が酸性側になることを防止して、すなわち灰中の成分がアルカリ性を維持することで、集塵装置5の下流側の配管や集塵装置5の腐食を防止することができる。その場合に、アルカリ性の添加剤を脱硝装置3出口のガス中のSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように供給することで、熱回収用熱交換器13やその配管、集塵装置5などの腐食を防止できる効果が高まる。
【0052】
そして、ミル19にはこのように低濃度(1ppm以下)のSO3が供給されるため、ミル19やミル19の出口配管の腐食防止やミル19の出口配管内の微粉炭の流動性、燃焼性の低下を防止することができる。なお、一度酸露点以下の温度に下げたガスを再加熱した場合(例えば200℃)、排ガス中のSO3は少ないので、ミル19内でSO3の凝集は殆ど起こらない。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2の排ガス処理装置の全体構成を図2に示す。図2の排ガス処理装置は、図1(実施例1)の排ガス処理装置とは、再加熱用熱交換器14の上流側に水除去装置17を設置した点で異なる。
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガスから熱を回収するための熱回収用熱交換器13、熱回収用熱交換器13の出口排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガスの一部のガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガス中の二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0054】
更に、集塵装置5の出口排ガスの一部のガスから水分を低減させるための水除去装置17と、水除去装置17の出口排ガスを再加熱するための再加熱用熱交換器14と、再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1に戻す第一循環ライン9及び再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
これら排ガス処理部及び排ガス循環部の基本構成、作用効果等は水除去装置17を設置した点を除いて図1に示す排ガス処理装置と同様である。
【0055】
図1の排ガス処理装置では、酸素燃焼時の排ガス中の水分濃度は30〜40重量%(酸素で石炭を燃焼し、排ガスを循環させた場合の計算値、実験値である)まで濃縮されるが、例えば、水除去装置17により排ガス中の水分濃度が10重量%以下となるような温度に排ガス温度を調整することで、更に、第一循環ライン9や第二循環ライン20、第一循環ライン9に設置された排ガス循環用ファン15や第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18などの腐食を防止する効果が高まる。また、集塵装置5と脱硫装置6との間に水除去装置17を設けると、脱硫装置6に供給されるSO3の量を低減できると共に、CO2回収装置8内の腐食も防止できる。水除去装置17では、排ガスを冷却して水を凝縮して水を除去する。例えば、酸素燃焼時に排ガス温度を約48℃まで下げれば水分濃度は約10重量%になる。
【0056】
酸素燃焼の場合は空気燃焼の場合に比べて水分濃度が高くなり、再加熱用熱交換器14によって排ガスを再加熱する際に、排ガス中に水分が多いと、水の潜熱によって排ガス温度を酸露点以上に再加熱する効率が悪くなる。
しかし、本実施例によれば、排ガス循環部における再加熱用熱交換器14の上流側に水除去装置17を設置することで、排ガス中の水分濃度が低減するため、再加熱用熱交換器14の再加熱効率を向上させることができる。そして、排ガス中の水分濃度を低減することで、SO3の酸露点が低下するため、排ガス循環部の第一循環ライン9や第二循環ライン20、第一循環ライン9に設置された排ガス循環用ファン15や第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18及びミル19におけるSO3の凝集の防止効果を高め、低温腐食を防止できる。
【実施例3】
【0057】
本発明の実施例3の排ガス処理装置の全体構成を図3に示す。図3の排ガス処理装置は、図1(実施例1)の排ガス処理装置とは、第一循環ライン9及び第二循環ライン20を脱硫装置6の下流側に設置した点で異なる。
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガスから熱を回収するための熱回収用熱交換器13、熱回収用熱交換器13の出口排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガスの一部のガスから二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0058】
更に、脱硫装置6の出口排ガスの一部のガスを再加熱するための再加熱用熱交換器14と、再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1に戻す第一循環ライン9及び再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
【0059】
ボイラ1はミル19から供給される石炭を酸素燃焼することにより、排ガスを生成する。このときに用いられる酸素は酸素製造装置10により製造、供給される。そして、酸素の供給は、酸素供給配管21から第一循環ライン9を介して、また酸素供給配管22からミル19への第二循環ライン20等を介して行われる。供給された酸素はA/H4で循環ガスと共に加熱される。
また、脱硝装置3では排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)が分解され、その後、A/H4において、排ガス温度はSO3の酸露点以上の温度まで低下する。A/H4の出口には排ガス温度計25が設置されており、排ガス温度計25の測定値が制御装置30に入力される。
【0060】
さらに熱回収用熱交換器13では排ガス温度がSO3の酸露点以下で且つ水露点以上の温度に低下、調整される。実施例1と同様に、図8の縦軸で示すSO3濃度と横軸で示すガス温度(酸露点)から酸素燃焼時の酸露点は推測できる。空気燃焼時の水露点は約50〜55℃、酸素燃焼時の水露点は約70〜80℃である。
なお、SO3の酸露点は、図8に示すように排ガス中のSO3濃度と水分量に依存するが、通常使用される硫黄含有率が0.4〜2.7%(重量%)の石炭を燃焼すると、酸素燃焼の場合のSO3の酸露点は162〜178℃程度であるため、排ガス温度を少なくとも162〜178℃以下にすることで、排ガス中のSO3を凝縮させて硫酸ミスト(H2SO4)とすることができる。
【0061】
熱回収用熱交換器13と再加熱用熱交換器14の伝熱管は、熱媒循環管路12によって連通され、図示しない熱媒ポンプにより熱回収用熱交換器13と再加熱用熱交換器14との間に熱媒が循環されるようになっている。
そして、熱回収用熱交換器13の出口には出口排ガス温度を測定する排ガス温度計27が設置されており、排ガス温度計27の測定値が制御装置30に入力される。熱媒ポンプの熱媒循環量は制御装置30により制御され、熱回収用熱交換器13の出口排ガス温度が酸露点以下で且つ水露点以上となるように調整される。熱媒としては、例えば水が使用される。
【0062】
そして、装置や各配管等の腐食防止用のアルカリ性の添加剤は、集塵装置5の上流側のA/H4の入口または熱回収用熱交換器13の入口(A/H4の出口)で供給される。また、脱硝装置3の入口又は出口でアルカリ性の添加剤を供給しても良い。アルカリ性の添加剤の供給量は、供給配管11に設けた弁11aなどで容易に調整できる。そして、脱硝装置3出口には排ガス中のSO3濃度を測定するためのSO3濃度測定計24を設け、アルカリ性の添加剤の供給量はSO3濃度測定計24による測定値に基づき制御装置30の指令により制御され、供給配管11に設けた弁11aが調整される。集塵装置5では、煤塵やアルカリ性の添加剤と反応した塩と共にSOが除去される。集塵装置5により除塵された排ガスは脱硫装置6に供給されることで排ガス中の二酸化硫黄(SO2)が除去される。
【0063】
また、脱硫装置6により脱硫後の排ガスは流路が分岐することでCO2回収装置8、第一循環ライン9、第二循環ライン20にそれぞれ供給される。そして、CO2回収装置8では排ガス中のCO2が回収される。
また、脱硫装置6出口のCO2回収装置8に供給されないガスは再加熱用熱交換器14により再加熱されて、一部のガスは第一循環ライン9を通り、排ガス循環用ファン15により昇圧後、A/H4により更に約350℃まで加熱された後、ボイラ1に供給される。また、再加熱用熱交換器14を通過した残りのガスは、第二循環ライン20を通り、排ガス循環用ファン18により昇圧されてA/H4で200℃まで再加熱された後、ミル19に供給される。ミル19では石炭が乾燥及び粉砕されて、石炭は供給されたガスと共にボイラ1に供給される。
【0064】
再加熱用熱交換器14の出口には排ガス温度計29が設けられており、再加熱用熱交換器14では、前記熱回収用熱交換器13から熱媒循環管路12を経由して循環供給される熱媒により排ガスが加熱される。そして、排ガスの温度を酸露点以上に調整する。
これら排ガス処理部及び排ガス循環部の基本構成、作用効果等は、第一循環ライン9及び第二循環ライン20などの排ガス循環部を集塵装置5の出口からではなく、脱硫装置6の出口から設けた点を除いて図1に示す排ガス処理装置と同様である。
【0065】
すなわち、集塵装置5の上流側に設けた熱回収用熱交換器13により集塵装置5入り口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上とすることで、排ガス中のSO3が凝縮して灰に付着し、灰に付着したSO3は集塵装置5で灰と共に系外に排出される。
したがって、集塵装置5よりも下流側の排ガス中、すなわち、排ガス循環部の排ガス中のSO3は微量(例えば、1ppm以下)となるため、第一循環ライン9や第二循環ライン20、第一循環ライン9に設置された排ガス循環用ファン15や第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18などの腐食を防止することができる。また、脱硫装置6に供給されるSO3の量を低減できると共に、CO2回収装置8内の腐食も防止できる。
【0066】
更に、集塵装置5の上流側にアルカリ性の添加剤を供給することで、排ガス中のSO3が灰中のアルカリ成分と反応し、灰中の成分が酸性側になることを防止して、すなわち灰中の成分がアルカリ性を維持することで、集塵装置5の下流側の配管や集塵装置5の腐食を防止することができる。その場合に、アルカリ性の添加剤を脱硝装置3出口のガス中のSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように供給することで、熱回収用熱交換器13やその配管、集塵装置5などの腐食を防止できる効果が高まる。
【0067】
そして、ミル19にはこのように低濃度(1ppm以下)のSO3が供給されるため、ミル19やミル19の出口配管の腐食防止やミル19の出口配管内の微粉炭の流動性、燃焼性の低下を防止することができる。なお、一度酸露点以下の温度に下げたガスを再加熱した場合(例えば200℃)、排ガス中のSO3は少ないので、ミル19内でSO3の凝集は殆ど起こらない。
【0068】
また、ボイラ1内は高温(例えば、1200℃程度)であるため、排ガス中のSO2がSO3になることは無いが、排ガス温度が800℃以下に下がると、その一部がSO3に転換する。図3に示す排ガス処理装置では、集塵装置5の出口排ガスが全て脱硫装置6に供給されるため、脱硫装置6によりボイラ1出口の排ガスの全量を処理することになる。したがって、図1の排ガス処理装置と比較して、脱硫装置6にかかる負荷が大きくなるが、第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給されるSO2ガスの濃度を低減できるため、排ガス循環部を通過する排ガス中のSO2濃度の高濃度化を防止できる。
このように、図3に示す排ガス処理装置は、排ガス中のSO2を除去することでSO3の発生を抑制できるため、図1の排ガス処理装置よりも、さらに排ガス処理システム全体の機器や配管の腐食を防止することができる。
【実施例4】
【0069】
本発明の実施例4の排ガス処理装置の全体構成を図4に示す。図4の排ガス処理装置は、図2(実施例2)の排ガス処理装置とは、第一循環ライン9及び第二循環ライン20を脱硫装置6の下流側に設置した点で異なる。また、図4の排ガス処理装置は、図3(実施例3)の排ガス処理装置とは、再加熱用熱交換器14の上流側に水除去装置17を設置した点で異なる。
【0070】
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガスから熱を回収するための熱回収用熱交換器13、熱回収用熱交換器13の出口排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガスの一部のガスから二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0071】
更に、脱硫装置6の出口排ガスの一部のガスから水分を低減させるための水除去装置17と、水除去装置17の出口排ガスを再加熱するための再加熱用熱交換器14と、再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてボイラ1に戻す第一循環ライン9及び再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
これら排ガス処理部及び排ガス循環部の基本構成、作用効果等は水除去装置17を設置した点を除いて図3に示す排ガス処理装置と同様である。
【0072】
図3の排ガス処理装置では、再加熱用熱交換器14によって脱硫装置6から飛散した吸収液も含めて再加熱しなければならない。しかし、水の潜熱が大きいことから、排ガス温度を酸露点以上に再加熱するには熱効率が悪い。したがって、再加熱用熱交換器14の上流側で水除去装置17を用いて排ガス中の水分を除去することにより、再加熱用熱交換器14の再加熱効率を向上させることができる。
また、排ガス中の水分濃度を低減することで、SO3の酸露点が低下するため、排ガス循環部の第一循環ライン9や第二循環ライン20、第一循環ライン9に設置された排ガス循環用ファン15や第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18及びミル19におけるSO3の凝集の防止効果を高め、低温腐食を防止する効果が向上する。
【実施例5】
【0073】
本発明の実施例5の排ガス処理装置の全体構成を図5に示す。図5の排ガス処理装置は、図1の排ガス処理装置の第一循環ライン9をボイラ1の出口に設け、第一循環ライン9に集塵装置23を設置した場合の排ガス処理装置の全体構成を示したものである。
【0074】
この排ガス処理装置は主にボイラ1の排ガスダクトの上流側から下流側にかけて、燃料である石炭を粉砕するミル19、ミル19により粉砕された石炭を供給するボイラ1、ボイラ1から発生する排ガス中の窒素酸化物を処理するための脱硝装置3、脱硝装置3の出口排ガスによりボイラ1で使用される燃焼用空気を加熱する空気予熱器(A/H)4、A/H4から排出される排ガスから熱を回収するための熱回収用熱交換器13、熱回収用熱交換器13の出口排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置5、集塵装置5の出口排ガスの一部のガス中の硫黄酸化物を処理するための脱硫装置6、脱硫装置6の出口排ガス中の二酸化炭素を回収するためのCO2回収装置8等が順次配置された排ガス処理部で構成されている。
【0075】
更に、ボイラ1の出口から再びボイラ1に戻す第一循環ライン9と、第一循環ライン9の排ガス中の煤塵等を除去するための集塵装置23と、集塵装置5の出口排ガスの一部のガスを再加熱するための再加熱用熱交換器14と、再加熱用熱交換器14の出口排ガスを空気予熱器4を経由させてミル19に戻す第二循環ライン20と、これら第一循環ライン9及び第二循環ライン20に供給する酸素を製造するための酸素製造装置10などからなる排ガス循環部が設けられている。
【0076】
ボイラ1はミル19から供給される石炭を酸素燃焼することにより、排ガスを生成する。そして、本実施例によれば、ボイラ1出口の排ガスを一部、第一循環ライン9から集塵装置23へ供給し、排ガス中の煤塵等を除塵する。集塵装置23に供給される排ガス温度は200℃以上と比較的高いため、例えば、集塵装置23がバグフィルタであれば、セラミック製や金属製の濾布を用いる等の耐熱対策が必要である。
そして、第一循環ライン9には、酸素製造装置10により製造される酸素が供給される。
【0077】
第一循環ライン9の集塵装置23に供給されないボイラ1出口の排ガスは脱硝装置3に供給されて排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)が分解され、その後、A/H4において、排ガス温度はSO3の酸露点以上の温度まで低下する。さらに熱回収用熱交換器13では排ガス温度がSO3の酸露点以下で且つ水露点以上の温度に低下、調整される。実施例1と同様に、図8の縦軸で示すSO3濃度と横軸で示すガス温度(酸露点)から酸素燃焼時の酸露点は推測できる。空気燃焼時の水露点は約50〜55℃、酸素燃焼時の水露点は約70〜80℃である。
【0078】
なお、SO3の酸露点は、図8に示すように排ガス中のSO3濃度と水分量に依存するが、通常使用される硫黄含有率が0.4〜2.7%(重量%)の石炭を燃焼すると、酸素燃焼の場合のSOの酸露点は162〜178℃程度であるため、排ガス温度を少なくとも162〜178℃以下にすることで、排ガス中のSO3を凝縮させて硫酸ミスト(H2SO4)とすることができる。
【0079】
また、装置や各配管等の腐食防止用のアルカリ性の添加剤は、集塵装置5の上流側のA/H4の入口または熱回収用熱交換器13の入口(A/H4の出口)で供給される。また、脱硝装置3の入口又は出口でアルカリ性の添加剤を供給しても良い。アルカリ性の添加剤の供給量はSO3濃度測定計24による測定値に基づき制御装置30の指令により制御され、供給配管11に設けた弁11aが調整される。熱回収用熱交換器13出口の排ガスは集塵装置5に供給されて、集塵装置5では、煤塵やアルカリ性の添加剤と反応した塩と共にSO3が除去される。集塵装置5により除塵された排ガスの一部は脱硫装置6に供給されることで排ガス中の二酸化硫黄(SO2)が除去されて、その後CO2回収装置8で排ガス中のCO2が回収される。
【0080】
また、集塵装置5出口の脱硫装置6に供給されないガスは再加熱用熱交換器14により再加熱されて、第二循環ライン20を通り、排ガス循環用ファン18により昇圧されてA/H4で200℃まで再加熱された後、ミル19に供給される。ミル19では石炭が乾燥及び粉砕されて、石炭は供給されたガスと共にボイラ1に供給される。
【0081】
再加熱用熱交換器14の出口には排ガス温度計29が設けられており、再加熱用熱交換器14では、前記熱回収用熱交換器13から熱媒循環管路12を経由して循環供給される熱媒により排ガスが加熱される。そして、排ガスの温度を酸露点以上に調整する。
本実施例によれば、ボイラ1出口の排ガスの一部を再びボイラ1に戻すため、脱硝装置3や集塵装置5に供給される排ガスの量は排ガス処理装置のシステム全体のガス量の1/3程度となる。したがって、図1の排ガス処理装置よりも、脱硝装置3や集塵装置5の小型化を図ることができ、排ガス処理装置自体のコンパクト化が達成される。
【0082】
そして、集塵装置5の上流側に設けた熱回収用熱交換器13により集塵装置5入り口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上とすることで、排ガス中のSO3が凝縮して灰に付着し、灰に付着したSO3は集塵装置5で灰と共に系外に排出される。
したがって、集塵装置5よりも下流側の排ガス中のSO3は微量(例えば、1ppm以下)となるため、第二循環ライン20、第二循環ライン20に設置された排ガス循環用ファン18などの腐食を防止することができる。また、脱硫装置6に供給されるSO3の量を低減できると共に、CO2回収装置8内の腐食も防止できる。
【0083】
更に、集塵装置5の上流側にアルカリ性の添加剤を供給することで、排ガス中のSO3が灰中のアルカリ成分と反応し、灰中の成分が酸性側になることを防止して、すなわち灰中の成分がアルカリ性を維持することで、集塵装置5の下流側の配管や集塵装置5の腐食を防止することができる。その場合に、アルカリ性の添加剤を脱硝装置3出口のガス中のSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように供給することで、熱回収用熱交換器13やその配管、集塵装置5などの腐食を防止できる効果が高まる。
【0084】
そして、ミル19にはこのように低濃度(1ppm以下)のSO3が供給されるため、ミル19やミル19の出口配管の腐食防止やミル19の出口配管内の微粉炭の流動性、燃焼性の低下を防止することができる。
なお、図3及び図4に示すように、第二循環ライン20を脱硫装置6の下流側に設置しても良く、また、水除去装置17を再加熱用熱交換器14の上流側に設けても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、酸素燃焼システムにおける排煙処理装置の集塵部で三酸化硫黄(SO)を効率よく除去することができるが、酸素燃焼システムに限らず通常の空気燃焼システムにおいても三酸化硫黄を効率よく除去する技術として、利用可能性がある
【符号の説明】
【0086】
1 ボイラ 3 脱硝装置
4 空気予熱器(A/H)
5 集塵装置 6 湿式排煙脱硫装置
8 CO2回収装置 9 第一循環ライン
10 酸素製造装置
11 アルカリ性添加剤供給配管
11a 添加剤供給量調整弁
12 熱媒循環管路 13 熱回収用熱交換器
14 再加熱用熱交換器
15、18 排ガス循環用ファン
17 水除去装置 19 ミル
20 第二循環ライン(ミル供給排ガスライン)
21、22 酸素供給配管
23 集塵装置 24 SO3濃度計
25、27、29 排ガス温度計
30 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃料とした酸素燃焼ボイラから発生する排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する脱硝装置と、該脱硝装置出口の排ガスにより酸素燃焼ボイラの燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガス中の媒塵を回収する集塵装置と、該集塵装置出口の排ガス中の硫黄酸化物を脱硫処理する脱硫装置と、前記脱硫装置出口の排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置とを酸素燃焼ボイラの排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置した排ガス処理部と、
前記集塵装置出口又は前記脱硫装置出口の前記排ガスダクトから分岐して、排ガスを前記空気予熱器により予熱して燃焼用空気として酸素燃焼ボイラに戻す循環ラインを有する排ガス循環部と
を設けた排ガス処理装置において、
空気予熱器と集塵装置との間の排ガスダクトに空気予熱器出口の排ガスから熱回収して集塵装置入口の排ガス温度をSO3の酸露点以下で且つ水露点以上にするための熱回収用熱交換器を設け、更に、前記排ガス循環部の分岐部近傍の循環ラインに前記熱回収用熱交換器と熱交換することで排ガス温度をSO3の酸露点以上にするための再加熱用熱交換器を設けたことを特徴とする酸素燃焼システムの排ガス処理装置。
【請求項2】
熱回収用熱交換器の上流側であって脱硝装置の入口又は出口の排ガスダクトに、排ガス中にアルカリ性の添加剤を供給するアルカリ性添加剤供給手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置。
【請求項3】
脱硝装置の出口に排ガス中のSO3濃度を測定するSO3濃度測定手段を設け、
前記アルカリ性添加剤供給手段に添加剤供給量を調整する添加剤供給量調整手段を設け、
前記アルカリ性添加剤供給手段による添加剤供給量が前記SO3濃度測定手段により測定されるSO3濃度と当量で反応する濃度以上になるように前記添加剤供給量調整手段の制御を行う制御装置を設けたことを特徴とする請求項2に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置。
【請求項4】
前記排ガス循環部の分岐部近傍であって再加熱用熱交換器の上流側に排ガス中の水分を除去するための水除去装置を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置。
【請求項5】
前記酸素燃焼ボイラに石炭を供給するミルを設け、前記排ガス循環部の再加熱用熱交換器よりも下流側の排ガスを前記ミルに供給するミル供給排ガスラインを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸素燃焼システムの排ガス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−110480(P2011−110480A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267914(P2009−267914)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、戦略的石炭ガス化・燃焼技術開発(STEP CCT)石炭利用プロセスにおける微量成分の環境への影響低減手法の開発高度除去技術に関する委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】