説明

醸造酒蒸留残渣を原料にした飲料とその製造方法

【課題】 微生物の発酵により醸造酒蒸留残渣特有のフレーバを抑制し、発酵による爽やかな呈味性を有し、かつ有機酸に富んだ、醸造酒蒸留残渣を原料とする飲料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させてなる発酵飲料、並びに、醸造酒蒸留残渣を固液分離して得られた液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醸造酒蒸留残渣を原料にした飲料とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼酎は麹を用いて調製した醪を酵母で発酵させ、これを蒸留して得られる蒸留酒である。この焼酎製造工程において、発酵した醪から蒸留によりエチルアルコールや香気成分を取り出した後の蒸留釜に残ったものが焼酎蒸留残渣(焼酎粕)であり、醪を蒸留した後に発生するアルコールや有機酸を含む酸性の液状残渣である。
この焼酎蒸留残渣は、焼酎蒸留後に30万kl以上発生し、その処理としては海洋投棄50%、肥料としての農業分野での利用19%、家畜飼料19%、その他焼却処分等12%となっており、生産される焼酎蒸留残渣の50%以上が廃棄処分となっている。
【0003】
一方、この焼酎蒸留残渣には、クエン酸などの有機酸、必須アミノ酸、ポリフェノールなどが多く含まれており、その機能性について着目されている。沖縄地方で生産されている泡盛の製造工程で得られる醪粕から製造される「もろみ酢」等は、既に機能性飲料として一般市場で飲用されている。
焼酎蒸留残渣についても、機能性食品としての利用や、有効成分の抽出などが研究されているが、この焼酎蒸留残渣は特有のフレーバを有し、そのまま飲料として用いるには嗜好性が低いものである。
【0004】
この焼酎蒸留残渣独特のフレーバをマスキングしながら、飲みやすくした飲料についてはこれまでも検討されており、例えば、甘しょ焼酎蒸留残渣中の食物繊維をセルラーゼで処理することにより得られた、ミネラル分やクエン酸及びポリフェノールを豊富に含む食品及び飲料(特許文献1)などがある。
また、醸造酒蒸留残渣特有のフレーバをマスキングするために、蒸留残渣に甘味料を添加した後、蒸留残渣の繊維分を破砕することを特徴とした飲料(特許文献2)、蒸留残渣に糖類、有機酸(クエン酸、アスコルビン酸)、酸味料などを添加し、炭酸ガスを添加した(または発酵により炭酸ガス付けした)飲料(特許文献3〜5)などがある。
【0005】
しかしながら、これまで提案された飲料は、醸造酒蒸留残渣特有のフレーバをマスキングするために酸味や糖度を調整したにすぎず、飲料の処方レベルを超えるものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−121221号公報
【特許文献2】特開平11−137222号公報
【特許文献3】特開昭50−49469号公報
【特許文献4】特開昭55−34013号公報
【特許文献5】特開昭59−25676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微生物の発酵により醸造酒蒸留残渣特有のフレーバを抑制し、発酵による爽やかな呈味性を有し、かつ有機酸に富んだ、醸造酒蒸留残渣を原料とする飲料およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、醸造酒蒸留残渣(焼酎蒸留残渣)より固液分離して得られる液体に、乳成分(脱脂粉乳)や果汁、野菜汁を添加後、乳酸菌及び/又は酵母を添加、発酵させることにより、醸造酒蒸留残渣特有のフレーバが抑制され、発酵による爽やかな呈味性を有し、かつ有機酸に富んだ飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記に関するものである。
(1) 醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させてなる発酵飲料。
(2) 醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸発酵させた後、酵母により発酵させてなる発酵飲料。
(3) 醸造酒蒸留残渣が焼酎蒸留残渣である(1)又は(2)に記載の発酵飲料。
(4) 醸造酒蒸留残渣が、液体麹を用いた醸造酒の製造工程で得られたものである(1)〜(3)のいずれかに記載の発酵飲料。
(5) 発酵前に、醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体に対して、乳成分、果汁及び野菜汁のいずれか1種類以上が、前者:後者=1:9〜9:1(容量比)の比率にて添加されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の発酵飲料。
(6) pHが3.0〜5.5である(1)〜(5)のいずれかに記載の発酵飲料。
【0010】
(7) 醸造酒蒸留残渣を固液分離して得られた液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法。
(8) 醸造酒蒸留残渣より、振動篩、遠心分離及び濾過よりなる群から選ばれた少なくとも1種類以上の手段によって固液分離して得られた液体に、乳成分、果汁及び野菜汁のいずれか1種類以上を混合し、乳酸菌及び/又は酵母により20〜45℃にて4〜48時間発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法。
(9) 醸造酒蒸留残渣が焼酎蒸留残渣である(8)に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、醸造酒蒸留残渣特有のフレーバが少なく、発酵による爽やかな呈味性を有し、かつ有機酸に富んだ飲料を製造できる。
また、本発明によれば、醸造酒製造工程において生産される大量の蒸留残渣の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1記載の本発明は、醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させてなる発酵飲料である。
【0013】
本発明における醸造酒蒸留残渣とは、発酵飲料の原料となりうるものであれば特に限定されないが、例えば麦焼酎、米焼酎、芋焼酎、ソバ焼酎、泡盛、ウィスキー等を製造する際に生産される蒸留残渣(蒸留粕)を挙げることができ、特に、請求項3に記載のように、焼酎製造工程において得られる焼酎蒸留残渣が好ましい。
【0014】
一例として、一般的な焼酎の製造方法により説明すると、まず、掛け原料に水、麹及び酵母を添加して仕込みを行い、発酵させることにより醪を得る。次に、常圧蒸留法や減圧蒸留法等によってエチルアルコール及び香気成分を蒸留し、焼酎を製造する。
この蒸留工程で留出せずに蒸留釜に残った液状の残渣が、焼酎蒸留残渣である。
なお、本発明において、醸造酒蒸留残渣を得る方法は特に限定されないが、蒸留工程後に常圧蒸留釜あるいは減圧蒸留釜に残留したものを回収する方法等がある。
【0015】
上記の醸造酒製造工程において、醪発酵に用いられる麹としては、蒸煮した原料に麹菌を増殖させた固体麹が一般的であるが、請求項4に記載のように、麹菌を適当な液体培地で増殖させた液体麹であってもよい。
液体麹は固体麹と比較して、蒸留残渣からの固液分離が容易であり、より清澄度の高い液体を得ることができる。
なお、上記の麹に用いる麹菌としては、Aspergillus oryzae等の黄麹菌、A. kawachii等の白麹菌、A. awamoriやA. niger等の黒麹菌などが挙げられるが、特に限定されない。
【0016】
本発明においては、次いで、得られた醸造酒蒸留残渣(焼酎蒸留残渣)より固液分離して液体を得る。この固液分離処理によって、醸造酒蒸留残渣中に含まれる穀皮や酵母、麹菌の菌糸等の固形物を除去することができる。
固液分離のための手段としては、醸造酒蒸留残渣(焼酎蒸留残渣)中の固形物が物理的に除去できれば特に限定されないが、例えば振動篩や遠心分離、濾過等が挙げられる。
これらの中でも、振動篩及び遠心分離は、組み合わせて使用しても、遠心分離のみを使用しても良い。振動篩や遠心分離により固液分離した後、更に清澄性を高めるために濾過を行っても良い。
固液分離する際の醸造酒蒸留残渣の温度は、4〜95℃、好ましくは20℃〜50℃とする。
【0017】
本発明の固液分離に用いることができる振動篩としては、20メッシュ以上、好ましくは60メッシュ以上の篩が挙げられる。
遠心分離によって固液分離する場合は、イーストセパレーター等の遠心分離機で1,000G以上、好ましくは3,000G以上で行う。
また、濾過の方法としては珪藻土濾過、MF膜濾過等が挙げられるが、濾過後の液が官能的に清澄であれば良く、特に限定されない。
なお、上記の固液分離処理においては、醸造酒蒸留残渣中の固形物が完全に除去される必要は無く、最終的な発酵飲料が飲用できる程度に清澄になれば良い。
【0018】
上述の如く醸造酒蒸留残渣(焼酎蒸留残渣)より固液分離して得られる液体(以下、「上清」ということもある。)は、次の発酵工程にそのまま用いても良いが、必要に応じて殺菌処理を行うこともできる。
殺菌処理方法としては、加熱殺菌などが挙げられるが、特に限定されない。
【0019】
また、請求項5に記載のように、乳成分、果汁、野菜などの副原料を上清に添加し、発酵することによって、醸造酒蒸留残渣に特有の風味を改善することができる。乳成分、果汁、野菜汁は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0020】
本発明における乳成分としては、牛乳、全乳粉、もしくは、脱脂粉乳を固形分が5〜20%、好ましくは固形分が8〜12%(いずれもw/v)になるように調整した水溶液(以下、「脱脂粉乳液」ということもある。)等が挙げられる。
【0021】
本発明における果汁としては、果実から搾汁したストレート果汁、濃縮果汁、透明果汁、混濁果汁、ピューレなど、いずれの形態のものも用いることが可能である。
また、果汁の種類もオレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、カシス、ストロベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ライチ、アプリコット、梅、チェリー、キウイフルーツ、パッションフルーツ、パイナップル、ピーチ、マンゴー、ナシ、ブドウ(巨峰)、メロン、リンゴ、バナナなど適宜用いることができ、複数種類の果汁を混合してもよい。
【0022】
本発明における野菜汁としては、野菜から得られた搾汁や、その濾液など、いずれの形態のものも用いることが可能である。
野菜の種類としては、トマト、ニンジン、ホウレン草、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、レタス、パセリ、クレソン、ケール、大豆、ビート、赤ピーマン、カボチャ、小松菜等を用いることができる。
【0023】
なお、上記した副原料には、砂糖などの甘味料等を適宜添加することもできる。
これらの副原料は、上清と混合する前に予め殺菌処理を行っても良い。殺菌処理方法としては、加熱殺菌などが挙げられるが、特に限定されない。
【0024】
副原料の上清に対する混合比率(容量比)は、請求項5に記載したように、上清:副原料=1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2とする。このとき、混合後のpHが3.0〜10.0、好ましくは4.0〜8.0となるように混合比率を調整する。なお、pHを上記範囲とするためにpH調整剤を使用しても良い。pH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リン酸、重曹など、食品に用いることのできるものを使用することができる。
【0025】
請求項1記載の本発明においては、次に、上記の如く得られた上清を乳酸菌及び/又は酵母により発酵させる。
本発明に用いられる乳酸菌としては、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトカッコス属(Lactococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)などの乳酸菌を用いることができ、これら乳酸菌に替えて市販のヨーグルトスターターを用いてもよい。
【0026】
また、本発明において用いる酵母としては、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ウイスキー酵母などが挙げられ、サッカロミセス属(Saccaromyces)の酵母や、醤油酵母であるチゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)、馬乳酒酵母であるクルベロマイセス属(Kluyveromyces)の酵母、カンジダ属(Candida)酵母、ハンゼヌラ属(Hansenula)酵母、Brettanomyces属酵母、Kloeckera属酵母、Zygosaccharomyces属酵母等も用いることができる。
なお、上記の酵母は全て市販されており、簡単に入手できる。
【0027】
本発明においては、乳酸菌もしくは酵母を単独で、あるいは、これら両方を用いて発酵させる。
乳酸菌と酵母両方を用いる場合は、これらを同時に用いて発酵させても良いが、請求項2記載のように、乳酸発酵させた後に酵母により発酵させるのが好ましい。乳酸発酵終了後、乳酸菌の除去又は殺菌は行っても行わなくてもよく、続けて酵母を添加することができる。
なお、乳酸菌および酵母の添加量は、好ましい発酵飲料が製造されるように適宜設定すれば良く、特に限定されない。
【0028】
本発明における乳酸菌の発酵条件は、pHは3.0〜10.0、好ましくは4.0〜8.0とし、温度は20〜45℃、好ましくは25〜42℃で、時間は4〜120時間、好ましくは6〜24時間とする。
また、本発明における酵母の発酵条件は、pHは3.0〜10.0、好ましくは3.5〜8.0とし、温度は5〜45℃、好ましくは25〜40℃で、時間は4〜120時間、好ましくは6〜24時間とする。
なお、発酵工程中、攪拌はしてもしなくてもよい。
発酵終了後の発酵液のpHは、請求項6に記載したように、希釈により、或いはクエン酸、乳酸、リン酸、重曹などのpH調整剤により、3.0〜5.5に調整する。
【0029】
上記発酵終了後に得られた発酵液は、必要に応じて殺菌処理等の後処理を行い、本発明の発酵飲料とすることができる。
また、発酵飲料の外観品質を向上させるため、固液分離を行っても良い。固液分離の方法としては、イーストセパレーター等による遠心分離や、珪藻土濾過、限外濾過膜等を用いる方法等があるが、特に限定されない。
さらに、本発明の発酵飲料には、必要に応じて甘味料、増粘剤、抗酸化剤など、飲料に通常用いられる食品添加物を用いることもできる。
【0030】
上記のようにしてなる本発明の発酵飲料は、醸造酒蒸留残渣特有のクセのあるフレーバが少なく、発酵により爽やかな呈味が付与されているため飲みやすい。
【0031】
請求項7記載の本発明は、醸造酒蒸留残渣を固液分離して得られた液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法である。
また、請求項8記載の本発明は、醸造酒蒸留残渣より、振動篩、遠心分離及び濾過よりなる群から選ばれた手段によって固液分離して得られた液体に、乳成分、果汁及び野菜汁のいずれか1種類以上を混合し、乳酸菌及び/又は酵母により20〜45℃にて4〜48時間発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法である。
請求項8記載の本発明における醸造酒蒸留残渣とは、請求項1における説明中において記載したように、発酵飲料の原料となりうるものであれば特に限定されないが、例えば麦焼酎、米焼酎、芋焼酎、ソバ焼酎、泡盛、ウィスキー等を製造する際に生産される蒸留残渣(蒸留粕)を挙げることができ、特に、焼酎製造工程において得られる焼酎蒸留残渣が好ましい。
上記した本発明の発酵飲料の製造方法は、前記した通りである。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1(焼酎蒸留残渣上清の調製)
液体培地に麹菌[アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)]を増殖させた液体麹を用いて、通常の麦焼酎の製造方法により得られた焼酎もろみを、減圧蒸留法にて蒸留し、蒸留釜内に残った焼酎蒸留残渣を得た。この焼酎蒸留残渣を200メッシュの振動篩で篩過後、遠心分離機を用い3,000Gにて遠心分離することにより固形物を除去し、焼酎蒸留残渣上清を得た。
【0033】
実施例1(脱脂粉乳液混合液の乳酸発酵)
製造例1で得られた焼酎蒸留残渣上清に対し、105℃、1分間の殺菌を行った。
一方、脱脂粉乳(よつば乳業)濃度10%(w/v)、砂糖(日新製糖)濃度2%(w/v)になるように調整した水溶液(脱脂粉乳液)を作成し、105℃、1分間の殺菌を行った。
殺菌後の焼酎蒸留残渣上清と脱脂粉乳液を無菌的に、焼酎蒸留残渣上清:脱脂粉乳液=2:1の比率(容量比)になるように混合し、市販ヨーグルトスターター(ローディア社製EZAL MY105)を0.016〜0.05w/v%添加し、42℃にて8時間静置状態で発酵させた。
【0034】
発酵前の焼酎蒸留残渣上清(製造例1)と脱脂粉乳液との混合物の、発酵終了後の発酵液について、それぞれ分析した結果を表1に示す。
なお、発酵終了後の発酵液は、遠心分離機を用い3,000Gにて遠心分離して得た上清を、ポアサイズ0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、清澄な液として分析を行った。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示した結果から明らかなように、発酵によりpHは低下し、クエン酸、乳酸等の有機酸及びγ-アミノ酪酸(GABA)が増加した。
【0037】
また、発酵前の焼酎蒸留残渣上清(製造例1)と脱脂粉乳液との混合物を対照に、上記で得られた発酵終了後の発酵液について、官能評価を行った。焼酎残渣臭さ、エグ味、飲みやすさ、爽やかさ、マイルドの5項目につき、表2に示す評価基準に基づいた専門パネリスト5人の官能評価平均値を図1に示す。
図1に示した結果から明らかなように、発酵により焼酎残渣臭さ、エグ味が弱くなり、飲みやすさ、爽やかさ、マイルド感が向上した。
【0038】
【表2】

【0039】
実施例3(ニンジン汁混合液の乳酸菌、酵母による発酵)
Brix10に調整したニンジン汁と、製造例1で調製した焼酎蒸留残渣上清とを、各々105℃、1分間加熱殺菌した後、ニンジン汁:焼酎蒸留残渣上清=7:3の比率(容量比)で混合し、ブレンド液とした。
このブレンド液100mlに市販ヨーグルトスタータ乳酸菌(ローディア社製EZAL MY105)を0.016g添加し、30℃で24時間静置培養し乳酸発酵液とした。
次に、この乳酸発酵液に市販パン酵母(日清製粉社)を0.015g添加し、さらに30℃で8時間発酵させたものを混合発酵液とした。
また、上記ブレンド液に市販パン酵母(日清製粉社)を0.015g添加し、30℃で24時間静置培養し酵母発酵液とした。
【0040】
ブレンド液または各発酵液について、専門パネル5名による官能評価を行った結果を表3に示す。
表3に示したように、ブレンド液は焼酎蒸留残渣の香りが強く飲みにくいという意見があったが、発酵させることによりその香りが低減され、飲みやすくなることが確認された。即ち、乳酸発酵によりさわやかな酸味が、酵母発酵によりよい香りが付与され、蒸留残渣の味や香りをマスクする事が確認された。
【0041】
【表3】

(+++強い、++やや強い、+感じる、±やや感じる、−感じない)
【0042】
実施例4(モモ果汁混合液の乳酸発酵)
Brix10に調整したモモ果汁と、製造例1で得られた焼酎蒸留残渣上清とを、各々105℃、1分間加熱殺菌した後、モモ果汁:焼酎蒸留残渣上清=7:3の比率(容量比)で混合し、ブレンド液とした。
このブレンド液100mlに酵母Kluyveromyces lactisを1白金耳接種し、30℃で24時間振とう培養を行い発酵液とした。
ブレンド液と発酵液を専門パネル5名により官能評価した結果を表4に示す。
その結果、発酵により、甘酸っぱく香りのよい飲みやすい飲料ができることが分かった。
【0043】
【表4】

(+++強い、++やや強い、+感じる、±やや感じる、−感じない)
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1における官能評価結果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させてなる発酵飲料。
【請求項2】
醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体を、乳酸発酵させた後、酵母により発酵させてなる発酵飲料。
【請求項3】
醸造酒蒸留残渣が焼酎蒸留残渣である請求項1又は2に記載の発酵飲料。
【請求項4】
醸造酒蒸留残渣が、液体麹を用いた醸造酒の製造工程で得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の発酵飲料。
【請求項5】
発酵前に、醸造酒蒸留残渣より固液分離して得られる液体に対して、乳成分、果汁及び野菜汁のいずれか1種類以上が、前者:後者=1:9〜9:1(容量比)の比率にて添加されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の発酵飲料。
【請求項6】
pHが3.0〜5.5である請求項1〜5のいずれかに記載の発酵飲料。
【請求項7】
醸造酒蒸留残渣を固液分離して得られた液体を、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法。
【請求項8】
醸造酒蒸留残渣より、振動篩、遠心分離及び濾過よりなる群から選ばれた少なくとも1種類の手段によって固液分離して得られた液体に、乳成分、果汁及び野菜汁のいずれか1種類以上を混合し、乳酸菌及び/又は酵母により20〜45℃にて4〜48時間発酵させることを特徴とする発酵飲料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−252239(P2007−252239A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78311(P2006−78311)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】