説明

重合体の製造方法

【課題】 ビニル(メタ)アクリレート及び/又はアリル(メタ)アクリレートに由来するビニルエステル基及び/又はアリルエステル基からなる2官能性不飽和基を高い含有率で有し、分子間架橋がなくて、良好な熱可塑性、熱溶融成形性を有し、種々の有機溶媒に易溶性の熱可塑性重合体、並びに当該熱可塑性重合体を簡単に且つ低コストで製造する方法の提供。
【解決手段】 ビニル(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを10質量%以上の割合で含有する不飽和単量体を、ルイス酸の存在下でラジカル重合して前記の熱可塑性重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルエステル基および/またはアリルエステル基よりなる不飽和基を側鎖に有する重合体の製造方法および当該製造方法により得られる重合体に関する。より詳細には、本発明は、多数のビニルエステル基および/またはアリルエステル基を側鎖基として有しているにも拘わらず、分子間での架橋が生じておらず、熱可塑性、熱溶融性で且つ種々の有機溶媒に易溶性で、取り扱い性や成形性などに優れる重合体を、円滑に且つ安価に製造する方法、および当該方法により得られる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に不飽和基や不飽和結合を有する重合体は、その不飽和基や不飽和結合に基づく反応性、重合性、架橋・硬化性などの特性を利用して、接着剤、塗料、各種処理剤、成形材料などの種々の用途に用いられている。しかしながら、分子中に不飽和基や不飽和結合を有する重合体は、重合体の製造時に分子間で架橋して、粘度の増加、ゲル化、溶媒への不溶化などを生じて成形加工、処理加工、後変性処理などを行なうことが困難になり易い。
【0003】
分子中に不飽和基を有する重合体の製法としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル100重量部に対して、アリル(メタ)アクリレート0.3〜3重量部および他のビニル系モノマー200〜1000重量部を用いて、界面活性剤の存在下に、ラジカル重合開始剤を用いて水中で乳化重合を行なって、分子中にアリルエステル基を有する重合体を含む合成樹脂エマルジヨンを製造する方法が知られている(特許文献1を参照)。しかし、この方法による場合は、アリル(メタ)アクリレートの使用割合(共重合割合)が、(メタ)アクリロニトリルと他のビニル系モノマーの合計に対して0.03〜1重量%と極めて少ないため、得られる重合体は、不飽和基であるアリルエステル基を僅かしか有していない。この方法において、アリル(メタ)アクリレートの使用割合を多くすると、架橋反応などが生じて、造膜性の低下、凝集物の生成などが生じてしまう。
【0004】
また、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレートなどの2官能性(メタ)アクリル化合物を、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として用いてトルエン中でラジカル重合して、ビニル基またはアリル基を側鎖として有する重合体を製造したことが報告されている(非特許文献1を参照)。しかし、この方法による場合は、架橋のない重合体が得られるのは、低濃度の単量体溶液を用いて重合を行なって、重合反応のごく初期(転化率25%以下)に限られ、重合反応が進行すると架橋・ゲル化が生ずる。そのため、ビニル(メタ)アクリレートやアリル(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリル化合物から溶媒に可溶性の架橋のない重合体を得る方法としては、生産性が悪く、実用的でない。しかも、反応の初期に得られる溶媒可溶性の重合体では、重合体主鎖に懸垂しているビニル基などの不飽和側鎖基間の反応による分子内環化率が50%以上と高い。
【0005】
さらに、ビニル(メタ)アクリレートまたはアリル(メタ)アクリレートをn−ブチルリチウムなどのアニオン重合触媒を用いてアニオン重合して、ビニル基またはアリル基を側鎖基として有する、溶媒可溶性の架橋のない重合体を製造したことが報告されている(非特許文献2および3を参照)。しかしながら、非特許文献2および3に記載されている方法では、そのアニオン重合を−78℃というような低温で行なう必要があり、しかも単量体の低濃度溶液を使用して行なう必要があるため、実用性が低い。
また、ビニルメタクリレートを、室温下でグループトランスファー重合して鎖状の溶媒可溶性の重合体を製造したことが報告されている(非特許文献4を参照)。しかしながら、この非特許文献4に記載されている方法では、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタールという特殊な触媒を使用する必要があるため、汎用性に欠けている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−3210号公報
【非特許文献1】「Journal of Polymer Science」,Polymer Chemistry Edition,1966年,第4巻,第5号,p.1191−1201
【非特許文献2】「Journal of Polymer Science」,Polymer Chemistry Edition,1972年,第10,第11号,p.237−250
【非特許文献3】「高分子論文集」、1978年、35巻、2号、p.95−102
【非特許文献4】「Polymer」,1997年,38巻,23号,p.5893−5895
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分子中に不飽和基を高い割合で有し、それにも拘わらず分子間架橋が生じていない熱可塑性の重合体を、円滑に且つ低コストで製造する方法を提供することである。
特に、本発明の目的は、分子中に不飽和基を高い割合で有しながら、分子間架橋が生じていないことによって、熱可塑性および熱溶融性で、加熱によって溶融粘度の低い溶融物にすることができ、しかも有機溶媒への溶解性に優れていて、成形加工、処理加工、後変性処理などを円滑に行なうことができて、成形材料、接着剤、塗料、各種処理剤、ハードコート剤などの広範な用途に有効に使用することのできる重合体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、アリル(メタ)アクリレートおよびビニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体を、ルイス酸の存在下でラジカル重合すると、前記2官能性(メタ)アクリレートを10質量%以上の高い割合で用いた場合にも、分子間架橋のない、熱可塑性の重合体が得られること、しかもその重合体は加熱して溶融すると粘度の低い溶融物となり、その上各種有機溶媒に容易に溶解することを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを10質量%以上の割合で含有する不飽和単量体を、ルイス酸の存在下でラジカル重合することを特徴とする重合体の製造方法である。
【0010】
そして、本発明は、
(2) ルイス酸が、下記の一般式(I);

(R1)a M (OR2)b(X)c (I)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R1は、1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、aが2以上の整数のときに2個以上の基R1は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R1が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R2は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、bが2以上の整数のときに2個以上の基R2は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R2が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、cが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、a、bおよびcはそれぞれ0〜pの整数(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)であって、aとbとcの合計がpと同じ数である。]
で表されるルイス酸、および下記の一般式(II);

(R3)d (M)2 (OR4)e(X)f (II)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R3は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、dが2以上の整数のときに2個以上の基R3は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R3が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R4は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、eが2以上の整数のときに2個以上の基R4は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R4が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、fが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、d、eおよびfはそれぞれ0〜(2p−2)(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)の整数であって、dとeとfの合計が(2p−2)と同じ数である。]
で表されるルイス酸から選ばれる少なくとも1種のルイス酸である前記(1)の重合体の製造方法である。
【0011】
さらに、本発明は、
(3) ルイス酸が、下記の一般式(III);

(R5)g Al (OR6)h(OR7)i (III)

(式中、R5は炭素数1〜10のアルキル基、R6は炭素数1〜5のアルキル基、R7はベンゼン核が1〜3個のアルキル基で置換されたフェニル基、または2個のR7が一緒になってアルキレン基を介して2個のアルキル置換フェニレン基が結合した2価の炭化水素基、gは0〜2の整数、hは0〜2の整数、iは1〜3の整数であって、gとhとiの合計が3である。)
で表されるルイス酸から選ばれる少なくとも1種のルイス酸である前記(1)または(2)の重合体の製造方法;および、
(4) 不飽和単量体の全質量に対して、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの使用割合が50〜100質量%である前記(1)〜(3)のいずれかの重合体の製造方;
である。
【0012】
そして、本発明は、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法で得られる重合体であって、分子間での架橋構造がなく、テトラヒドロフラン、トルエンおよびクロロホルムに溶解可能な重合体;
(6) ビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに基づく分子内環化率が5モル%以下である前記(5)の重合体;および、
(7) ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有割合が10質量%以上である前記(5)または(6)の重合体;
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法により、ビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに由来するビニルエステル基および/またはアリルエステル基からなる2官能性不飽和基を高い含有率で有し、それにも拘わらず分子間で架橋しておらず、良好な熱可塑性、熱溶融成形性を有し、種々の有機溶媒に易溶性の熱可塑性重合体を、円滑に且つ低コストで製造することができる。
本発明の方法により得られる重合体は、分子内環化率が低く、分子中にビニルエステル基および/またはアリルエステル基からなる2官能性不飽和基を高い割合で有しながら、分子間で架橋が生じていないことにより、加熱によって溶融粘度の低い溶融物にすることができ、しかも有機溶媒への溶解性に優れている。そのため、本発明で得られる重合体は、それらの特性を活かして、各種の成形加工、処理加工、後変性処理になどを円滑に行なうことができ、成形材料、接着剤、塗料、各種処理剤、ハードコート剤などの広範な用途に有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる2官能性(メタ)アクリレートの少なくとも1種を、不飽和単量体の全質量に基づいて、10質量%以上の割合で用いて重合体を製造する。
不飽和単量体における前記2官能性(メタ)アクリレートの割合が10質量%未満であると、重合体におけるビニルエステル基および/またはアリルエステル基の含有率が低くなって、高官能性の重合体が得られなくなる。
重合に使用する不飽和単量体の全質量に基づいて、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの割合を50質量%以上、特に50〜100質量%とすることによって、官能性のより高い重合体を得ることができる。
【0015】
本明細書において、「ビニル(メタ)アクリレート」とは、ビニルメタクリレートおよびビニルアクリレートの双方を意味し、「アリル(メタ)アクリレート」とは、アリルメタクリレートおよびアリルアクリレートの双方を意味する。
本発明では、2官能性(メタ)アクリレートとして、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレートおよびアリルアクリレートのうちの1種類のみを使用しても、2種類を使用しても、3種類を使用しても、または4種類を使用してもよい。
そのうちでも2官能性(メタ)アクリレートとしては、ビニルメタクリレートおよびアリルメタクリレートが汎用性の点から好ましく用いられる。
【0016】
重合体の製造に際して、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレート単量体と併用することのできる他の不飽和単量体としては、ラジカル重合可能で且つ前記2官能性(メタ)アクリレートと共重合可能な不飽和単量体であれば、いずれも使用できる。
そのうちでも、分子間架橋のない熱可塑性の重合体を得るために、他の不飽和単量体として、分子中に反応性(重合性)の不飽和基または不飽和結合を1個だけ有する多官能性の不飽和単量体を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で用い得るラジカル重合性の他の不飽和単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン等の芳香族化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、ノルボルネン等のオレフィン類;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、アリルアルコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明では、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体を、ルイス酸の存在下にラジカル重合する。
ルイス酸としては、「電子対受容体」(すなわちルイス酸)として機能する物質であればいずれも使用できる。
【0019】
そのうちでも、本発明で使用できるルイス酸の代表例としては、下記の一般式(I);

(R1)a M (OR2)b(X)c (I)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R1は、1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、aが2以上の整数のときに2個以上の基R1は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R1が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R2は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、bが2以上の整数のときに2個以上の基R2は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R2が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、cが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、a、bおよびcはそれぞれ0〜pの整数(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)であって、aとbとcの合計がpと同じ数である。]
で表されるルイス酸を挙げることができる。
【0020】
上記一般式(I)で表されるルイス酸以外にも、下記の一般式(II);

(R3)d (M)2 (OR4)e(X)f (II)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R3は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、dが2以上の整数のときに2個以上の基R3は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R3が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R4は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、eが2以上の整数のときに2個以上の基R4は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R4が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、fが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、d、eおよびfはそれぞれ0〜(2p−2)(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)の整数であって、dとeとfの合計が(2p−2)と同じ数である。]
で表されるルイス酸を挙げることができる。
本発明では、前記した一般式(I)および(II)で表されるルイス酸のうちの1種類のみを使用してもよいし、または2種以上を使用してもよい。
【0021】
前記した一般式(I)および(II)において、R1、R2、R3およびR4の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができ、またR1が2個(a=2)の場合、R2が2個(b=2)の場合、R3が2個(d=2)の場合および/またはR4が2個(e=2)の場合には、2個のR1、2個のR2、2個のR3または2個のR4が互いに一緒になって2価の炭化水素基(アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、アルアリーレン基など)を形成していてもよい。
【0022】
そのうちでも、R1およびR3は、炭素数1〜10、特に2〜8のアルキル基であることが、ルイス酸の製造の容易性、本発明で用いた際の不飽和単量体の分子間架橋の防止性、ルイス酸の入手容易性などの点から好ましい。R1およびR3が炭素数1〜10のアルキル基である場合の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどを挙げることができる。
【0023】
また、R2およびR4は、炭素数1〜10、特に2〜8のアルキル基、フェニル基、ベンゼン核が1〜3個のアルキル基で置換されたフェニル基であるか、或いは2個のR2が一緒になるかまたは2個のR4が一緒になってメチレン基などのアルキレン基を介して2個のアルキル置換フェニレン基が結合した2価の炭化水素基を形成していることが、本発明に用いた際の不飽和単量体の分子間架橋の防止性などの点から好ましい。
【0024】
また、上記の一般式(I)および(II)において、Xとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素を挙げることができる。
【0025】
上記の一般式(I)および(II)で表されるルイス酸の具体例としては、BF3、BF3、BBr3、BBr3、AlCl3、AlBr3、AlI3、TiCl4、TiBr4、TiI4、FeCl3、FeCl2、SnCl2、SnCl4、WCl6、MoCl5、SbCl5、TeCl2などのハロゲン化物;Et3Al、Et2AlCl、EtAlCl2、Et3Al2Cl3、(i−Bu)3Al、Et2Al(OEt)、Me4Sn、Et4Sn、Bu4Sn、Bu3SnClなどのアルキル化合物を挙げることができる。
【0026】
本発明では、上記の一般式(I)および(II)で表されるルイス酸のうちでも、下記の一般式(III)で表される有機アルミニウム化合物よりなるルイス酸が、分子間架橋のない熱可塑性重合体を円滑に製造できる点から好ましく用いられる。

(R5)g Al (OR6)h(OR7)i (III)

[式中、R5は炭素数1〜10、特に炭素数2〜8のアルキル基、R6は炭素数1〜5のアルキル基、R7はベンゼン核が1〜3個のアルキル基(特にメチル基またはt−ブチル基)で置換されたフェニル基、または2個のR7が一緒になってメチレン基などのアルキレン基を介して2個のアルキル置換フェニレン基が結合した2価の炭化水素基、gは0〜2の整数、hは0〜2の整数、iは1〜3の整数であって、gとhとiの合計が3である。]
【0027】
前記した一般式(III)で表されるアルミニウム化合物の具体例としては、下記の(1)〜(37)のアルミニウム化合物、すなわち、
(1)エチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(2)エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(3)エチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(4)エチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(5)イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(6)イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(7)イソブチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(8)イソブチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(9)n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(10)n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(11)n−オクチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(12)n−オクチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(13)メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(14)メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(15)メトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(16)メトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(17)エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(18)エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(19)エトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(20)エトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(21)イソプロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(22)イソポロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(23)イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(24)イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(25)t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(26)t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(27)t−ブトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(28)t−ブトキシ〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、
(29)トリス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(30)トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(31)トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム、
(32)ジエチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(33)ジエチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(34)ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(35)ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
(36)ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、
(37)ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、
などを挙げることができる。
【0028】
上記で挙げた有機アルミニウム化合物のうちでも、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウムおよび/またはジエチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウムがルイス酸としてより好ましく用いられる。これらの有機アルミニウム化合物を用いた場合には、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体をラジカル重合することによって、分子間架橋のない熱可塑性の重合体を確実に且つ高収率で製造することができる。
【0029】
ルイス酸の使用量は、全不飽和単量体100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜50質量部であることがより好ましく、1〜30質量部であることが更に好ましい。ルイス酸の使用量が少なすぎると、重合時に分子間架橋が進行してゲルが生成し易くなり、一方あまり多く使用しても効果の向上はなく、不経済である。
また、重合体の製造に用いるビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの量からみると、当該2官能性(メタ)アクリレート1モルに対して、ルイス酸を0.001〜10モル、そのうちでも0.05〜2モル、特に0.1〜1モルの割合で用いることが好ましい。
【0030】
ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体を、ルイス酸の存在下でラジカル重合する際のラジカル重合開始剤としては、不飽和単量体のラジカル重合に従来から用いられているラジカル重合開始剤のいずれもが使用できる。限定されるものではないが、本発明で用い得るラジカル重合開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンソイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイドなどのパーオキサイド類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドなどの酸化剤と、第3アミン、ナフテン酸塩、メルカプタン、その他の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。
そのうちでも、本発明では、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルおよび/またはアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いることが、分子間架橋がなく、多数のビニルエステル基および/またはアリルエスエル基を側鎖として有する熱可塑性の重合体を円滑に製造でき、しかも反応温度が温和である点から好ましい。
【0031】
ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.002〜0.2質量部であることがより好ましい。
【0032】
ラジカル重合に当たっては、目的とする分子量の重合体を得る目的で連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を用いることができる。限定されるものではないが、連鎖移動剤の具体例としては、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化合物、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、2−メチル−1−ブテン、2、4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタン、フェネチルメルカプタンなどの含イオウ化合物を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
前記したうちでも、連鎖移動剤としては、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタンおよびフェネチルメルカプタンのうちの1種または2種以上が好ましく用いられ、特にエタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィドおよび2−ヒドロキシエチルジスルフィドの1種または2種以上がより好ましく用いられる。
【0034】
連鎖移動剤の使用量は、製造しようとする重合体の分子量に応じて調整すればよい。連鎖移動剤を用いる場合は、一般に、不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部、特に0.002〜0.2質量部の割合で用いるのが好ましい。
【0035】
ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体のルイス酸の存在下でのラジカル重合は、溶液重合法またはバルク重合法で行なうとよく、特に溶液重合法を採用して行なうことが、分子間架橋のない熱可塑性の重合体を円滑に製造できる点から好ましい。
【0036】
溶液重合法により行なう場合は、不飽和単量体を有機溶媒に溶解して、不飽和単量体濃度が1〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは10〜50質量%の溶液を調製して重合を行なうとよい。不飽和単量体の濃度が低すぎると生産性が低下し、一方不飽和単量体の濃度が高すぎると重合熱の除去が困難になり、均一な重合が行なわれにくくなる。
【0037】
溶液重合に用いる有機溶媒としては、不飽和単量体を溶解する連鎖移動作用の少ない有機溶媒であれば特に限定されない。本発明で用い得る有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒などを挙げることができる。
そのうちでも、トルエン、テトラヒドロフランが、溶解性の点から好ましく用いられる。
【0038】
溶液重合時の反応温度は、通常−40℃〜200℃が好ましく、0℃〜150℃がより好ましく、20℃〜130℃が更に好ましい。
溶液重合の際の反応時間は特に限定されず、不飽和単量体におけるビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの割合、使用する他の不飽和単量体の種類、不飽和単量体の単量体組成、ラジカル重合開始剤の種類や量、反応温度などの条件に応じて、所望する性能の重合体が得られるように、反応時間を適宜決めればよい。一般的には、0.1〜100時間、好ましくは0.2〜20時間の反応時間が採用される。
【0039】
溶液重合法によって生成した重合体を、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)などのような、重合体を溶液から単離するのに従来から通常汎用されている操作を採用して、反応混合物から分離(単離)することによって、目的とする重合体を取得することができる。
【0040】
また、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを含む不飽和単量体をルイス酸の存在下でバルク重合して重合体を製造する場合は、不飽和単量体にルイス酸およびラジカル重合開始剤を均一に混合した後、その混合物を、重合容器中で、不飽和単量体や生成した重合体が熱分解しない温度で加熱してラジカル重合することにより、目的とする重合体を得ることができる。バルク重合時の温度としては、一般に300℃以下、特に250℃以下の温度が好ましく採用される。重合温度が低すぎると反応の進行が遅くなり、一方高すぎると反応の制御が困難になって再現性が得られにくくなる。
【0041】
バルク重合時の反応時間は特に限定されず、不飽和単量体におけるビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの割合、使用する他の不飽和単量体の種類、不飽和単量体の単量体組成、ラジカル重合開始剤の種類や量、反応温度などの条件に応じて、所望する性能の重合体が得られるように、反応時間を適宜決めればよい。一般的には、0.5〜1000時間、好ましくは2〜200時間の反応時間が採用される。
バルク重合により得られた反応生成物は、重合が完了する前に再沈殿などの処理を施すことによって、目的とする重合体を得ることができる。
【0042】
上記の重合反応によって、原料として用いたビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートに由来する多数のビニルエステル基および/またはアリルエステル基が、分子間架橋に関与することなく、その大半がそのまま不飽和側鎖基として重合体主鎖に懸垂している重合体が得られる。得られた重合体は、鎖状構造を有し且つ分子間架橋を生じていないために、加熱により可塑化、溶融し、溶融物は低粘度であり、しかもテトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルムなどの種々の有機溶媒にも良好に溶解する。
【0043】
本発明者らによる更なる調査の結果、本発明の製造方法で得られる上記重合体では、1つの重合体主鎖に懸垂しているビニルエステル基やアリルエステル基同士の間の反応によって形成される分子内環構造、並びに1つの重合体の主鎖に懸垂しているビニルエステル基および/またはアリルエステル基と(メタ)アクリロイル基との間の反応によって形成される分子内環構造の含有割合(すなわち分子内環化率)が、重合体の製造に用いたビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートの合計モル数に対して5モル%以下と極めて低いことが明らかになった。かかる点から、本発明により得られる重合体では、原料として用いたビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに由来するビニルエステル基および/またはアリルエステル基の全量またはほぼ全量が、反応性の不飽和基として重合体にそのまま保持されている。
なお、本明細書でいう重合体における分子内環化率は、重合体のNMRスペクトル、赤外吸収スペクトルなどからラクトン環含有量を算出することによって求めることができ、その詳細は以下の実施例に記載するとおりである。
【0044】
本発明により得られる重合体は、ビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに由来するビニルエステル基および/またはアリルエステル基よりなる反応性の不飽和基が重合体主鎖に多数懸垂していて、高い反応性、架橋特性、硬化性能を有しているので、当該不飽和基を反応させるための触媒を用いてまたは用いずに、加熱したり、光などの活性エネルギー線を照射することによって、反応、架橋、硬化させることができる。しかも、多数の反応性の不飽和基を有しているにも拘わらず、架橋、硬化する前の重合体は、熱可塑性で加熱による可塑化、溶融して低粘度の溶融物を形成し、更にはテトラヒドフラン、トルエン、クロロホルムなどの汎用の多くの有機溶媒に容易に溶解する。そのため、本発明により得られる重合体は、それらの特性を活かして、各種の成形加工、処理加工、後変性処理などを円滑に行なうことができ、成形材料、接着剤、塗料、各種処理剤、 などの広範な用途に有効に使用することができる。
【0045】
本発明により得られる重合体は、単独で使用することもできるし、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン系ブロック共重合体などの他の熱可塑性重合を配合した組成物として使用することもできる。
また、本発明により得られる重合体の使用に当たっては、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料などの各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、シリカ、木粉などの充填剤;各種カップリング剤などの任意成分を必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例などを挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されるものではない。
以下の例において、反応率、重合体の分子量および分子内環化率は、下記の方法により求めた。
【0047】
(1)反応率:
反応液中に残存している不飽和単量体の含有量をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製「GC−8A」)により測定し、不飽和単量体の消費率(減少率)を反応率とした。
【0048】
(2)重合体の分子量:
ポリメタクリル酸メチル換算で重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。その際に、GPC装置として、日本分光株式会社製の「PU−980ポンプ」(品番)および「930−RI示差屈折計」(品番)を用いて、カラムとして、Shodex製の「K−805L」を2本直列に繋いだものを使用した。
【0049】
(3)分子内環化率:
(i) 重水素化クロロホルム(溶媒)に、テトラメチルシランを溶解して濃度5質量%の溶液を調製し、この溶液について、NMR分析[NMR分析装置:Varian製「Gemini−2000」(品番)、400MHz]を室温で行なって、1H−NMRスペクトルを得て、テトラメチルシランの吸収スペクトルを0ppmとした。
(ii) 下記の実施例で得られた重合体を重水素化クロロホルムに溶解して濃度5質量%の溶液を調製し、その溶液について、上記(i)と同様にしてNMR分析を行なって、1H−NMRスペクトルを得た。
【0050】
(iii) 上記(ii)のNMR分析において、2官能性(メタ)アクリレートとしてビニルメタクリレートを用いて製造した重合体(実施例1〜5で得られた重合体)で得られた重合体では、ビニルメタクリレートに由来する環化していないビニルエステル基は4〜5ppmに吸収ピーク(a)を有し、一方重合体の主鎖部分は0〜3ppmに吸収ピーク(b)を有しているので、両方の吸収ピークのピーク面積を求めて、下記の数式(1)から、ビニルメタクリレートを用いて製造した重合体における分子内環化率を求めた。

分子内環化率(モル%)=[(2b−5a)/(2a+2b)]×100 (1)

[式中、aは吸収ピーク(a)の面積、bは吸収ピーク(b)の面積を示す。]
【0051】
(iv) 上記(ii)のNMR分析において、2官能性(メタ)アクリレートとしてアリルアクリレートを用いて製造した重合体(実施例6で得られた重合体)では、アリルアクリレートに由来する環化していないアリルエステル基は5〜5.5ppmに吸収ピーク(a)を有し、一方重合体の主鎖部分は0〜3ppmに吸収ピーク(b)を有しているので、両方の吸収ピークのピーク面積を求めて、下記の数式(2)から、アリルアクリレートを用いて製造した重合体における分子内環化率を求めた。

分子内環化率(モル%)=[(2b−3a)/(3a+2b)]×100 (2)

[式中、aは吸収ピーク(a)の面積、bは吸収ピーク(b)の面積を示す。]
【0052】
(v) 上記(ii)のNMR分析において、2官能性(メタ)アクリレートとしてアリルメタクリレートを用いて製造した重合体(実施例7で得られた重合体)では、アリルメタクリレートに由来する環化していないアリルエステル基は5〜5.5ppmに吸収ピーク(a)を有し、一方重合体の主鎖部分は0〜3ppmに吸収ピーク(b)を有しているので、両方の吸収ピークのピーク面積を求めて、下記の数式(3)から、アリルメタクリレートを用いて製造した重合体における分子内環化率を求めた。

分子内環化率(モル%)=[(2b−5a)/(3a+2b)]×100 (3)

[式中、aは吸収ピーク(a)の面積、bは吸収ピーク(b)の面積を示す。]
【0053】
《実施例1》
(1) 十分乾燥させたガラス製のコック付反応容器に、脱水したトルエン(和光純薬製)400g、蒸留精製したビニルメタクリレート(東京化成工業株式会社製)67g、ルイス酸としてエチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム56gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN:和光純薬製)(ラジカル重合開始剤)250mgを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した後、60℃に昇温させて重合を開始した。反応はゲル化することなく進行し、5時間反応後にビニルメタクリレートの反応率が83%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体55gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0054】
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)において、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウムの使用量を112gに変更した以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、2時間反応後にビニルメタクリレートの反応率が93%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール20gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体62gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、テトラヒドロフランに完全に溶解した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0055】
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)において、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム56gの代わりに、ジエチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム56gを使用した以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、140時間反応後にビニルメタクリレートの反応率が70%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体47gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0056】
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)において、ビニルメタクリレート67gの代わりに、ビニルメタクリレート34gおよびメチルメタクリレート30gの混合物を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、70時間反応後にビニルメタクリレートの反応率が88%およびメチルメタクリレートの反応率が67%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体50gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0057】
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)において、ビニルメタクリレート67gの代わりにビニルメタクリレート0.67gおよびメチルメタクリレート60gの混合物を用い、またエチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウムの使用量を28gに変えた以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、63時間反応後にビニルメタクリレートの反応率が77%およびメチルメタクリレートの反応率が66%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体91gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0058】
《実施例6》
(1) 実施例1の(1)において、ビニルメタクリレート67gの代わりに、アリルアクリレート67gを用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、18時間反応後にアリルアクリレートの反応率が89%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体59gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0059】
《実施例7》
(1) 実施例1の(1)において、ビニルメタクリレート67gの代わりに、アリルメタクリレート76gを用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして反応を行った。反応はゲル化することなく進行し、15時間反応後にアリルメタクリレートの反応率が72%に達したので、この段階で重合溶液にメタノール10gを加えて重合を停止させた後、重合溶液の全量をメタノール4000g中に投入して重合体を沈殿させ、濾過により沈殿した重合体を分離回収し、真空乾燥器を用いて十分に乾燥した。その結果、重合体55gを得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体は、温度25℃のテトラヒドロフランに完全に溶解し、また200℃に加熱すると溶融した。
また、上記(1)で得られた重合体の分子量[数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)]および分子内環化率を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0060】
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)において、ルイス酸を添加しなかった以外は、実施例1の(1)と同様にして重合を行ったところ、4時間で反応溶液はゲル状となり、重合体は有機溶媒に不溶となったので、重合を停止した。
【0061】
《比較例2》
(1) 実施例6の(1)において、ルイス酸を添加しなかった以外は、実施例6の(1)と同様にして重合を行ったところ、6時間で反応溶液はゲル状となり、重合体は有機溶媒に不溶となったので、重合を停止した。
【0062】
《比較例3》
(1) 実施例7の(1)において、ルイス酸を添加しなかった以外は、実施例7の(1)と同様にして重合を行ったところ、2時間で反応溶液はゲル状となり、重合体は有機溶媒に不溶となったので、重合を停止した。
【0063】
【表1】

【0064】
上記の表1の結果にみるように、ルイス酸の存在下で、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートをラジカル重合することにより、分子間架橋がなく、テトラヒドロフランなどの溶媒に可溶性で、分子内環化率の低い、重合体が高収率で簡単に且つ円滑に得られた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の方法によって、ビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに由来するビニルエステル基および/またはアリルエステル基からなる2官能性不飽和基を高い含有率で有し、それにも拘わらず分子間架橋がなくて、良好な熱可塑性、熱溶融成形性を有し、種々の有機溶媒に易溶性の熱可塑性重合体を、円滑に且つ低コストで製造することができるので、本発明は実用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートを10質量%以上の割合で含有する不飽和単量体を、ルイス酸の存在下でラジカル重合することを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項2】
ルイス酸が、下記の一般式(I);

(R1)a M (OR2)b(X)c (I)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R1は、1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、aが2以上の整数のときに2個以上の基R1は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R1が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R2は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、bが2以上の整数のときに2個以上の基R2は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R2が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、cが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、a、bおよびcはそれぞれ0〜pの整数(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)であって、aとbとcの合計がpと同じ数である。]
で表されるルイス酸、および下記の一般式(II);

(R3)d (M)2 (OR4)e(X)f (II)

[式中、MはAl、B、Si、Ti、Zr、Sb、CdおよびFeから選ばれる原子であり、R3は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、dが2以上の整数のときに2個以上の基R3は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R3が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、R4は1価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、eが2以上の整数のときに2個以上の基R4は同じであってもまたは異なってもよく、或いは2個の基R4が一緒になって2価の炭化水素基を形成していてもよく、Xはハロゲン原子であって、fが2以上の整数のときに2個以上のXは同じであってもまたは異なってもよく、d、eおよびfはそれぞれ0〜(2p−2)(但しpはMの原子価と同じ整数、以下同じ)の整数であって、dとeとfの合計が(2p−2)と同じ数である。]
で表されるルイス酸から選ばれる少なくとも1種のルイス酸である請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
ルイス酸が、下記の一般式(III);

(R5)g Al (OR6)h(OR7)i (III)

(式中、R5は炭素数1〜10のアルキル基、R6は炭素数1〜5のアルキル基、R7はベンゼン核が1〜3個のアルキル基で置換されたフェニル基、または2個のR7が一緒になってアルキレン基を介して2個のアルキル置換フェニレン基が結合した2価の炭化水素基、gは0〜2の整数、hは0〜2の整数、iは1〜3の整数であって、gとhとiの合計が3である。)
で表されるルイス酸から選ばれる少なくとも1種のルイス酸である請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
不飽和単量体の全質量に対して、ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートの使用割合が50〜100質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの製造方法で得られる重合体であって、分子間での架橋構造がなく、テトラヒドロフラン、トルエンおよびクロロホルムに溶解可能な重合体。
【請求項6】
ビニル(メタ)アクリレートおよび/またはアリル(メタ)アクリレートに基づく分子内環化率が5モル%以下である請求項5に記載の重合体。
【請求項7】
ビニル(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の2官能性(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有割合が10質量%以上である請求項5または6に記載の重合体。

【公開番号】特開2007−297526(P2007−297526A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127268(P2006−127268)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】