説明

重合体粒子、及びその製造方法、電子写真トナー用外添剤

【課題】 本発明は、湿度環境が変化しても安定な帯電量を有する平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子を提供することにある。
【解決手段】 重合性ビニル系モノマーを乳化重合させてなる重合体粒子であって、前記ビニル系重合性モノマーがスチレン系モノマー、又は、(メタ)アクリルエステル系モノマーであり、前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の炭素数が4〜8であり、

前記重合体粒子の相対湿度40%、及び80%におけるブローオフ帯電量Q40、及びQ80としたとき、
0 ≦ [(Q40−Q80)/Q40]×100 ≦ 10
を満たすことを特徴とする平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子、及び電子写真トナー用外添剤に関する。更に詳しくは、本発明は、界面活性剤存在下での乳化重合法によって得られ、湿度環境が変化しても安定な帯電量を有する平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子、及びその製造方法、さらには電子写真トナー用外添剤に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体粒子は、塗料添加剤、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として広く用いられている。このような重合体粒子の多くは、粒子自体に帯電を帯びているこが知られている。この重合体粒子の帯電現象を利用した応用例はいくつかあり、例えば静電荷像現像に利用される電子写真用トナーに添加(トナー外添剤)することで帯電性を付与する添加剤として使用できたり、粉体塗装用の粒子などが挙げられ、帯電現象を利用した重合体粒子の利用価値は高い。これらの応用例で使用される重合体粒子は、平均粒子径0.05〜1.0μm、かつ高湿度環境下でも高い帯電量を有することが望まれている。
【0003】
このような0.05〜1.0μmの重合体粒子を得る方法としては種々の方法が知られているが、その中の一つに乳化重合法が挙げられる。
【0004】
乳化重合は、水性媒体中、界面活性剤の存在下、水溶性の重合開始剤により重合させる方法であり、容易かつ安定的に0.05〜1.0μm、かつ帯電を有する重合体粒子が得られる。しかしながら、得られる粒子には界面活性剤が多く残存していることから、水分を吸着しやすくなってしまい、例えば低湿度環境下では高い帯電を有することができるものの、湿度が高くなると吸着された水分の影響で帯電量が低下してしまう問題があった。
【0005】
一方で、特許文献1、特許文献2などには界面活性剤(乳化剤)を使用せずにソープフリー乳化重合によって製造されスチレン系、あるいはアクリル系重合体粒子等からなるトナー外添剤が記載されている。しかしながら、このような重合体粒子は、その製造において、界面活性剤を使用しないために、重合時に凝集が発生しやすくなるばかりでなく、充分な帯電量を有することができないため、例えばトナー外添剤として使用すると、湿度環境が変化した場合に帯電量が安定しないため、トナーに充分な帯電性を付与させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−163985号公報
【特許文献2】特開2001−272821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、湿度環境が変化しても安定な帯電量を有する平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の重合性ビニル系モノマーを乳化重合させてなる重合体粒子が、湿度環境が変化しても安定な帯電量を有することを見出し、本発明に至った。
【0009】
かくして本発明によれば、重合性ビニル系モノマーを乳化重合させてなる重合体粒子であって、前記ビニル系重合性モノマーがスチレン系モノマー、又は、(メタ)アクリルエステル系モノマーであり、前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の炭素数が4〜8であり、
前記重合体粒子の相対湿度40%、及び80%におけるブローオフ帯電量Q40、及びQ80としたとき、
0 ≦[(Q40−Q80)/Q40]×100 ≦ 10
を満たすことを特徴とする平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体粒子は、低湿環境から高湿環境に変化しても重合体粒子の帯電減少がほとんどなく、非常に良好な帯電性を付与することが可能であることから、静電荷像現像に利用されるトナーやキャリア用の添加剤の他、粉体塗装用の添加剤、土木材料のトップコート、シーラー、インクジェット記録材料、電着塗料等の原料として適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合体粒子は、ビニル系重合性モノマーを乳化重合させることで得られる平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子であり、相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率が10%以下である。
【0012】
上記ビニル系重合性モノマーはスチレン系モノマー、又は、(メタ)アクリルエステル系モノマーである。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0013】
上記スチレン系モノマー、又は、(メタ)アクリルエステル系モノマーはそれぞれを単独で使用してもよく、また、二種類を併用しても良い。
【0014】
前記スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンが挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
【0015】
前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部置換基の炭素数が4〜8である。エステル部の置換基の炭素数3以下の場合、相対湿度80%の環境下での重合体粒子の帯電量が著しく低下してしまい、一方、エステル部の置換基の炭素数が9以上の場合は、乳化重合時の安定性が悪化し、粒子径が大きくなったり、凝集物が大量に発生してしまい、重合体粒子が安定して得られなくなる。(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部置換基の炭素数が4〜8、具体例として、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。特に、乳化重合での重合安定性に優れ、相対湿度40%と80%との間の帯電量変化率が低いという点で(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルがより好ましい。これら(メタ)アクリルエステル系モノマーは単独で使用してもよく、二種以上を併用しても良い。
【0016】
次に、本発明の重合体粒子を得るための乳化重合について詳細に説明する。
本発明での重合体粒子は、水性媒体中、ビニル系重合性モノマー、および界面活性剤の存在下、水溶性開始剤により乳化重合されることで得られる。
【0017】
ビニル系重合性モノマーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他のモノマーや添加剤が添加されていてもよい。
【0018】
他のモノマーとしては、例えば、二官能性重合性ビニル系モノマーが挙げられる。具体的には、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート(アルキレンは炭素数2〜4の範囲が好ましい)等が挙げられる。二官能性重合性ビニル系モノマーの混合割合は、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して30重量部以下であることが好ましく、0.1〜20重量部であることが好ましい。
【0019】
他の添加剤としては、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0020】
上記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中で乳化重合するに際して、重合性ビニル系モノマーの供給方法としては、重合性ビニル系モノマーを一括で反応系に投入する方法、あるいは滴下供給させる方法が挙げられるが、乳化重合時の重合安定が優れるという点で、重合性ビニル系モノマーを滴下供給することが好ましい。重合性ビニル系モノマーの滴下時間は、短すぎると、重合時に凝集が生じることがあり、長すぎると、重合開始剤が失活し、重合が完了しないことがあるため、15分〜4時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0021】
本発明の重合体粒子を得るための乳化重合で使用できる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤のいずれか一方が挙げられる。
【0022】
上記界面活性剤には、界面活性剤の添加が少量で良いことから相対湿度40%と80%との間の帯電量変化率が抑制されるという点でポリアルキレンオキサイド部位を有していることが好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等に由来する基が挙げられ、アルキレンオキサイド基の繰り返し数は、2〜200であることが好ましい。
【0023】
前記アニオン性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ニナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の具体例としては、第一工業製薬社製のアクアロンKH−10、KH−1025、花王社製のラテムルPD−104、旭電化工業社製のアデカリアソープSR−10、SR−20、SE−10、PP−70、日本乳化剤社製のアントックスMS−60などが挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩の具体例としては、第一工業製薬社製のアクアロンHS−10、HS−20、BC−10、HS−20などが挙げられ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの具体例としては、第一工業製薬社製のハイテノール227L、ハイテノール370L、花王社製のエマール20Cなどが挙げられ、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ニナトリウムの具体例としては、第一工業製薬社製のネオハイテノールL−30などが挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の具体例としては第一工業製薬社製のプライサーフA219B等が挙げられることができるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0024】
前記カチオン性界面活性剤としては例えば、N−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩である。N−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩の3つのアルキル基は、互いに同一又は異なっていてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、オクチル基、ステアリル基等が挙げられ、また、アルキル基は、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチルオキシ基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。また、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン、オキシプロピレン等に由来する基が挙げられる。N−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩の具体例としては、第一工業製薬社製カチオーゲンD2等が挙げられる。
【0025】
上記界面活性剤の使用量は、少なすぎると乳化重合時の分散安定性が悪いために重合後の重合体粒子の凝集物が多量に生じてしまう一方、多すぎると得られた重合体粒子が水分を吸着しやすくなり、相対湿度40%と80%との間の帯電量変化率が10%を超えてしまうので、ビニル系重合性モノマー100重量部に対して0.005〜0.1重量部使用され、0.01〜0.1重量部が特に好ましい。
【0026】
本発明の重合体粒子を得るための乳化重合では公知の水溶性重合開始剤が使用される。例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸二水和物、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素、2、2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2、2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩化水素、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2、2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩化水素、2、2−アゾビス{2−メチル−N−[1、1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2、2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)等の水溶性アゾ化合物類等が挙げられる。また、前記過硫酸塩類にはナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤なども挙げられる。
【0027】
重合開始剤は、その種類により相違するが重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0.3〜3重量部である。
【0028】
また、乳化重合に連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられ、重合性モノマー混合物100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0.3〜3重量部である。
【0029】
重合性モノマー混合物と水性媒体との使用割合は、1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。1:20より重合性モノマー混合物の割合が少なくなると、生産性が悪くなる場合があるので好ましくない。1:2より重合性モノマー混合物の割合が多くなると、重合中の粒子の安定性が悪くなり重合後の重合体粒子の凝集物が生じてしまう場合があるので好ましくない。より好ましい使用割合は1:15〜1:3である。
【0030】
重合系の攪拌回転数は、例えば、5リットル容量の反応器を使用した場合、100〜500rpmであることが好ましい。また、重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類により相違するが、30〜100℃であることが好ましく、重合時間は2〜10時間であることが好ましい。
【0031】
また、重合体粒子の水系媒体からの単離は公知の方法を用いることができ、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法、凍結乾燥法等により行うことができる。さらに乾燥させた重合体粒子は、粉砕機、解砕機等で凝集物を解すことが望ましい。
【0032】
上記方法で得られる重合体粒子は、0.05〜1.0μmの平均粒子径を有する。0.05μm未満の場合、得られる重合体粒子が凝集しやすくなるため、例えば電子写真トナー用外添剤として使用した場合に、トナーに充分な帯電性が付与できない一方、1.0μmより大きいと、トナーから脱離が起こりやすくなるために、トナーに充分な帯電性が付与できなくなる。なお、平均粒子径の測定方法は、実施例の欄に記載する。
【0033】
上記方法で得られた重合体粒子は、相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tが10%以下となる。すなわち、前記重合体粒子の相対湿度40%、及び80%におけるブローオフ帯電量Q40、及びQ80としたとき、帯電量変化率T(%)=[(Q40−Q80)/Q40]×100(%)は、
0 ≦ T=[(Q40−Q80)/Q40]×100 ≦ 10
を満たす重合体粒子である。Tが10を超えてしまうと、相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量の変化が大きすぎるために、電子写真トナー用外添剤として使用した場合、低湿と高湿での環境下において、トナーの帯電性能が変化してしまうため、複写紙等に転写し定着させて複写物とした場合に、汚れが発生したり画質濃度が悪化してしまう問題がある。好ましくはTは7.0以下である。
【0034】
本発明の重合体粒子は電子写真トナー用外添剤として使用できる。すなわち、本発明の重合体粒子は、相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率が10%以下であることから、本発明の重合体粒子を電子写真トナー用バインダー樹脂に添加することで、低湿環境、高湿環境によらず、電子写真トナー用バインダー樹脂に安定した帯電を付与することが可能となる。
【0035】
したがって、本発明の重合体粒子からなる電子写真トナー用外添剤は、トナーに安定かつ良好な帯電性を付与することができることから、電子写真トナーをより高品質にすることができ、電子写真機用、複写機用、プリンター用等のトナーとして好適に用いられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の平均粒子径、及びゼータ電位の測定方法を下記する。
【0037】
(平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定した粒子径を意味する。すなわち、乳化重合で得られた重合体粒子の水系分散液をイオン交換水で希釈(例えば200倍に)することで0.1wt%に調製し、25℃においてレーザー光を照射し、重合体粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された重合体樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めた平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用している。上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析できる。
【0038】
(ブローオフ帯電量測定)
ここでいうブローオフ帯電量は、ブローオフ方式による接触帯電法により測定した帯電量を意味する。重合体粒子0.02gと標準キャリアN−02(日本画像学会製)9.98gを50ccのポリプロピレン製容器に投入し、容器を開封した状態で、温度23℃,相対湿度40%、あるいは80%の恒温恒湿下で5時間静置させた。その後、容器を密閉し、200回上下に振ることで混合することでブローオフ測定用サンプルを調整した。そのこのサンプル0.2gを秤量し、400メッシュの篩網が入った測定試料室に投入することでブローオフ帯電量を測定した。なお、この種のブローオフ帯電量は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例では京セラケミカル社製から市販されているTB−203を使用した。ブローには窒素ガスを使用し,ブロー圧10kPa,吸引圧は9kPaとして測定を実施した。
上記方法でブローオフ帯電量測定を行い、相対湿度40%、及び80%におけるブローオフ帯電量をそれぞれQ40、及びQ80とした。
また、下記式により、相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率(Tと表記)を算出した。
0 ≦ T=[(Q40−Q80)/Q40]×100 ≦ 10
【0039】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた1Lの3つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水400重量部、カチオン性界面活性剤としてポリオキシアルキレン部位を有するN−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウムパラトルエンスルフォン酸塩0.02重量部を溶解させた水溶液10重量部(第一工業製薬社製カチオーゲンD2;純分50%)を供給し、攪拌回転数250rpmで攪拌しつつ80℃に加熱した。この乳化液中に水溶性重合開始剤として2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素(和光純薬工業社製、V−50)を1重量部を添加した後、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部を2時間に亘って滴下供給した。滴下終了後、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素を0.1重量部を添加した後、80℃で1時間に亘って乳化重合を続けた。その後、乳化液を室温まで冷却することで重合体粒子を得た。
上記重合体粒子の水分散液をスプレードライヤによって水分を乾燥させ、得られた粉末を気流式粉砕機で処理することで、重合体粒子の粉末を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.18μmであった。
また、得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は870μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は845μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは2.9%であった。
【0040】
(実施例2)
カチオン性界面活性剤を0.08重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.14μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は843μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は796μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは5.9%であった。
【0041】
(実施例3)
界面活性剤をポリオキシアルキレン部位を有するアニオン性のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬社製アクアロンKH−10;純分25%)0.02重量部とし、かつ水溶性重合開始剤として過硫酸アンモニウムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.16μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は−430μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は−415μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは3.5%であった。
【0042】
(実施例4)
(実施例4)
界面活性剤をポリオキシアルキレン部位を有するアニオン性のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬社製アクアロンKH−10;純分25%)0.08重量部とし、かつ水溶性重合開始剤として過硫酸アンモニウムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.15μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は−441μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は−410μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは7.0%であった。
【0043】
(実施例5)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸イソブチル(IBMA)30重量部、およびメタクリル酸t−ブチル(TBMA)70重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.15μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は785μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は744μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは6.4%であった。
【0044】
(実施例6)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸t−ブチル(TBMA)100重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.16μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は854μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は811μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは5.0%であった。
【0045】
(実施例7)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸イソブチル(IBMA)30重量部、およびメタクリル酸ベンジル(BZMA)70重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.26μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は538μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は502μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは6.7%であった。
【0046】
(実施例8)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、スチレン(St)100重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.48μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は573μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は539μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは5.9%であった。
【0047】
(比較例1)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸メチル(MMA)100重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.14μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は581μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は89μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは85%であった。
【0048】
(比較例2)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)60重量部とし、かつメタクリル酸メチル(MMA)40重量部としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.15μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は620μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は345μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは44%であった。
【0049】
(比較例3)
カチオン性界面活性剤を0.2重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は0.12μmであった。
得られた重合体粒子の相対湿度40%、におけるブローオフ帯電量Q40は752μC/g、相対湿度80%におけるブローオフ帯電量Q80は623μC/g、さらに相対湿度40%と80%との間のブローオフ帯電量で測定した帯電量変化率Tは17%であった。
【0050】
(比較例4)
カチオン性界面活性剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしたが、重合中に分散が悪化し、目的の重合体粒子は得られなかった。
【0051】
(比較例5)
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)100重量部の代わりに、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)60重量部とし、かつメタクリル酸ステアリル(STMA)40重量部としたこと以外は実施例1と同様にしたが、重合中に分散が悪化し、目的の重合体粒子は得られなかった。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の重合体粒子は、低湿環境から高湿環境に変化しても重合体粒子の帯電減少がほとんどなく、非常に良好な帯電性を付与することが可能であることから、静電荷像現像に利用されるトナーやキャリア用の添加剤の他、粉体塗装用の添加剤、土木材料のトップコート、シーラー、インクジェット記録材料、電着塗料等の原料として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系重合性モノマーを乳化重合させてなる重合体粒子であって、前記ビニル系重合性モノマーがスチレン系モノマー、又は、(メタ)アクリルエステル系モノマーであり、前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の置換基の炭素数が4〜8であり、
前記重合体粒子の相対湿度40%、及び80%におけるブローオフ帯電量Q40、及びQ80としたとき、
0 ≦[(Q40−Q80)/Q40]×100 ≦ 10
を満たすことを特徴とする平均粒子径0.05〜1.0μmの重合体粒子。
【請求項2】
前記ビニル系重合性モノマーがスチレン、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルのいずれか一つ、もしくはいずれかを二つ以上組合わせてなることを特徴とする請求項1に記載の重合体粒子。
【請求項3】
水性媒体中、界面活性剤の存在下、ビニル系重合性モノマーを乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、前記界面活性剤が、ポリアルキレンオキサイド部位を有し、前記ビニル系重合性モノマー100重量部に対して0.005〜0.1重量部使用して得られることを特徴とする請求項1、又は2に記載の重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1、又は2に記載の重合体粒子、あるいは請求項3に記載の製造方法で得られた重合体粒子からなる電子写真トナー用外添剤。


【公開番号】特開2011−148860(P2011−148860A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9241(P2010−9241)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】