説明

重合体粒子含有分散体及び重合体粒子含有樹脂組成物の製造方法

【課題】本発明の目的は、重合体粒子を凝析物として取り出すことなく、重合体粒子含有ラテックスから水分を金属イオンと共に効率よく除去する方法を提供することである。
【解決手段】本発明が、重合体粒子(A)に対する金属イオンの総含有量が30ppm以下である重合体粒子(A)含有ラテックスに有機媒体(B)を混合し、さらに該有機媒体(B)よりも水に対する溶解度が低い有機媒体(C)を混合し、前記重合体粒子(A)含有ラテックスに由来する水層を除去することにより、前記重合体粒子(A)、有機媒体(B)及び(C)からなる重合体粒子(A)含有分散体を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子を含有する分散体の製造方法に関する。また、本発明は、その重合体粒子含有分散体を用いた樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重合体粒子含有ラテックスから重合体粒子を得る場合、まず凝析物を得た後、該凝析物を脱水して乾燥する方法が実施されている。前記凝析物を得る方法としては、例えば、(1)無機電解質又は酸を凝析剤として添加する方法、(2)高分子凝集剤を添加する方法、(3)有機溶媒を直接ラテックスと接触させる方法、(4)ラテックスを加熱又は凍結させる方法、(5)機械的な剪断力を与える方法、(6)噴霧乾燥法、或いはこれらを適宜組み合わせた方法が提案されている。
【0003】
凝析物が含有する金属イオンとしては、重合体の重合時に用いた乳化剤や電解質、さらには凝析剤として用いた無機電解質に由来するものが挙げられるが、これらの金属イオンを除去する方法としては、凝析物を水と接触させる方法が広く行なわれている。
【0004】
しかしながら、この方法では、これらの金属イオンを除去するために大量の水を必要とするのみならず、充分に金属イオンを除去できないのが現状である。また、有機溶媒により洗浄する方法も行なわれているが、工程が複雑となり、工業的に不利なプロセスとなる。
【0005】
一方、重合性有機化合物の硬化物、例えばエポキシ樹脂硬化物は、寸法安定性、機械的強度、電気的絶縁特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の多くの点で優れている。しかしながら、エポキシ樹脂の硬化物は破壊靭性が小さく、非常に脆性的な性質を示すことがあり、広い範囲の用途においてこのような性質が問題となることが多い。
【0006】
これらの問題を解決するための手法の一つとして、エポキシ樹脂中にゴム成分を配合することが試みられている。ゴム成分の例としては、乳化重合に代表される水媒体中の重合方法によって粒子状に調製したゴム状重合体が挙げられる。
【0007】
ゴム状重合体を含有するエポキシ樹脂硬化物の製造方法として、例えば特許文献1では、ノニオン系乳化剤等を用いた乳化重合で調製した部分架橋ゴム状ランダム共重合体粒子を乳化剤の曇点以上に加熱して凝析させた後に、凝析物を水洗し、エポキシ樹脂と混合する方法が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法では、無機電解質を中心とした凝析剤の使用により凝析物を得る方法であるため、凝析剤に由来する金属イオンは凝析の際に重合体に付着するか又は凝析した重合体内部に閉じこめられてしまう。その結果、洗浄に大量の水を使用する割には金属イオンを充分に除去できていないのが現状である。さらに、加熱によってゴム状重合体粒子同士が強固に固着しているために、ゴム状重合体をエポキシ樹脂化合物に混合する際、相当の機械的剪断力による粉砕や分散操作を必要とする。また、多量のエネルギーを使用する割にはエポキシ樹脂化合物中にゴム状重合体粒子を均一に分散させることは困難であることが多い。
【0009】
特許文献2では、ゴム状重合体ラテックスとエポキシ樹脂化合物を混合した後、水分を留去して混合物を得る方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、重合体の重合時に用いた乳化剤や電解質に由来する金属イオンがそのまま残存する。また、エポキシ樹脂化合物が水に難溶性であるため、相当の機械的剪断力を駆使しても均一に混合するのは難しく、塊状物が発生する場合がある。
【0011】
特許文献3では、ゴム状重合体ラテックスを有機溶剤の存在下、エポキシ樹脂化合物に混合して混合物を得る方法が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、ゴム状重合体ラテックスとエポキシ樹脂化合物を混合するに当たり、有機溶剤と共に系中(混合物中)に存在する多量の水分(有機溶剤が溶解可能な水分量以上の水分)を分離あるいは留去する必要があるため、有機溶剤層と水層の分離に、例えば一昼夜等の多大な時間を要する場合がある。さらに、通常、ゴム状重合体ラテックスの製造に使用する乳化剤や副原料等が組成物中に残留してしまい、品質的に劣るものとなる場合がある。
【0013】
【特許文献1】特開平5−295237号公報
【特許文献2】特開平6−107910号公報
【特許文献3】米国特許第4778851号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、重合体粒子を凝析物として取り出すことなく、重合体粒子含有ラテックスから水分を金属イオンと共に効率よく除去する方法を提供することである。また、水分や金属イオンを効率よく除去した重合体粒子含有分散体を重合性有機化合物と混合することにより、重合体の重合時に用いた乳化剤や電解質に由来する金属イオンを大幅に低減した樹脂組成物を、簡便かつ効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1]重合体粒子(A)に対する金属イオンの総含有量が30ppm以下である重合体粒子(A)含有ラテックスに有機媒体(B)を混合し、
さらに該有機媒体(B)よりも水に対する溶解度が低い有機媒体(C)を混合し、
前記重合体粒子(A)含有ラテックスに由来する水層を除去することにより、
前記重合体粒子(A)、有機媒体(B)及び(C)からなる重合体粒子(A)含有分散体を製造する方法。
[2]前記金属イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオンである[1]に記載の重合体粒子(A)含有分散体の製造方法。
[3]前記重合体粒子(A)含有ラテックスは、ノニオン系乳化剤又は金属イオンを含有しないアニオン系乳化剤を用いた乳化重合で得られたものである[1]又は[2]に記載の重合体粒子(A)含有分散体の製造方法。
[4][1]乃至[3]のいずれかの製造方法で得られた重合体粒子(A)含有分散体を重合性有機化合物と混合した後、前記有機媒体(B)及び(C)を含む揮発成分を除去する重合体粒子(A)含有樹脂組成物の製造方法。
[5]前記重合性有機化合物がエポキシ樹脂化合物である[4]に記載の重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物の製造方法。
[6][5]に記載の製造方法で得られた重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる成形物。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、重合体粒子を凝析物として取り出すことなく、重合体粒子含有ラテックスから水分を金属イオンと共に効率よく除去する方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で用いる重合体粒子(A)は、エポキシ樹脂硬化物の破壊靭性、脆性的な性質を改良する観点から、ゴム成分の存在下でビニル単量体を重合して得られるグラフト共重合体であることが好ましい。
ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、又はシリコーン/アクリル系複合ゴムが挙げられる。
【0018】
ジエン系ゴムは、1,3−ブタジエン、又は1,3−ブタジエンと他のビニル単量体を重合して得られるものであり、架橋構造を有する。
ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体が挙げられる。
【0019】
また、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;トリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート等のアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
【0020】
また、連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、α−メチルスチレン等を併用してもよい。
【0021】
アクリル系ゴムは、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートを重合して得られるものであり、架橋構造を有することが好ましい。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートが挙げられる。
【0023】
アルキル(メタ)アクリレートの重合には、架橋剤又はグラフト交叉剤を併用してもよい。
【0024】
架橋剤又はグラフト交叉剤は、アルキル(メタ)アクリレートと架橋剤又はグラフト交叉剤の合計(100質量%)に対して、20質量%以下の範囲で用いることが好ましく、0.1〜18質量%以下の範囲で用いることがより好ましい。
【0025】
架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0026】
グラフト交叉剤としては、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0027】
さらに、アルキル(メタ)アクリレートの重合には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル単量体を併用してもよい。
【0028】
アクリル系ゴムは、単層、又は2段以上の多層構造を有するものであってもよい。また、2種類以上の成分を含み、ガラス転移温度を2つ以上有する複合ゴムであってもよい。
【0029】
シリコーン系ゴムは、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンであることが好ましく、架橋構造を有することが好ましい。
【0030】
ビニル基を有するポリオルガノシロキサンは、ジメチルシロキサン、ビニル基を有するオルガノシロキサン、及びシロキサン系架橋剤を重合して得られる。
【0031】
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。
【0032】
ビニル基を有するオルガノシロキサンとしては、例えば、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシランが挙げられる。
【0033】
シロキサン系架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
【0034】
シリコーン/アクリル系複合ゴムは、シリコーン系ゴムとアクリル系ゴムを複合化させたものである。
【0035】
シリコーン/アクリル系複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンのラテックス中に、アルキル(メタ)アクリレートを添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製することができる。
【0036】
グラフト共重合体を得るために、上記のゴム成分の存在下で重合するビニル単量体(グラフト部を形成するもの)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体;ヒドロキシメタクリレート等のヒドロキシ基を有するビニル単量体が挙げられる。
【0037】
また、前述の架橋剤及び連鎖移動剤を併用することができる。
【0038】
これらのビニル単量体は、一段又は二段以上の多段でグラフト重合することができる。
【0039】
グラフト共重合体(100質量%)中の、ゴム成分とグラフト部の比率は、ゴム成分50〜95質量%、グラフト部5〜50質量%が好ましい。
【0040】
グラフト共重合体(100質量%)中の、グラフト部の比率が5質量%以上であれば、配合された樹脂中での分散性が向上し、50質量%以下であれば、靭性の向上効果が充分に発現する。
【0041】
重合体粒子(A)の粒子径は、製造が容易であるという観点から、平均粒子径0.03〜2μm程度が好ましく、0.05〜1μm程度がより好ましい。
【0042】
重合体粒子(A)含有ラテックスの製造にあたっては、周知の方法、例えば、乳化重合、微細懸濁重合を用いることができる。この中では、乳化重合が好ましい。
【0043】
重合体粒子(A)の重合に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;上記過硫酸化合物を一成分としたレドックス系開始剤;上記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤が挙げられる。
【0044】
この中では、重合体粒子(A)含有ラテックス中の金属イオンの総含有量を容易に少なく(具体的には重合体粒子(A)に対して30ppm以下)できることから、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレリックアシッド)、過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0045】
重合体粒子(A)の重合は、重合開始剤の種類にもよるが、40〜80℃程度の範囲で適宜行なうことができる。
【0046】
重合体粒子(A)の重合に用いる乳化剤としては、例えば、ノニオン系乳化剤又は金属イオンを含有しないアニオン系乳化剤が挙げられる。
【0047】
ノニオン系乳化剤としては、乳化安定性の点から、ポリオキシエチレンモノテトラデシルエーテルが好ましい。
【0048】
金属イオンを含有しないアニオン系乳化剤としては、アンモニウム塩型アニオン系乳化剤が好ましい。
【0049】
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が挙げられる。この中では、乳化安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
【0050】
これらの乳化剤は、本発明の好ましい実施形態の趣旨から言えば、重合体粒子(A)含有ラテックスの製造工程において、乳化安定性に支障のない範囲で、出来る限り少量で使用することが好ましい。
【0051】
また、本発明の製造方法の実施工程において、製造される樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物の物性に影響を及ぼさない程度の残存量まで、水層に抽出洗浄される性質を有していることが好ましい。
【0052】
本発明で用いる重合体粒子(A)含有ラテックスは、金属イオンを含有しない重合開始剤や乳化剤を使用して、乳化重合を行なうことにより得られ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び鉄イオンの含有量の合計(以下、「金属イオンの総含有量」という。)が30ppm以下であり、20ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、全く含まれないことが更に好ましい。
【0053】
本発明で用いる有機媒体(B)は、水に対して部分溶解性を示す有機溶媒であり、少なくとも1種の有機溶媒又はその混合溶媒である。
【0054】
25℃における水に対する有機媒体(B)の溶解度は9〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。さらに、有機媒体(B)が、有機媒体(C)と2成分系共沸混合物を形成しないことが好ましい。
【0055】
有機媒体(B)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0056】
これらは、水に対する溶解度が上記の範囲を満たすのであれば、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
有機媒体(B)の使用量は、重合体粒子(A)のラテックス100質量部に対して、好ましくは50〜350質量部、より好ましくは70〜250質量部である。
【0058】
重合体粒子(A)のラテックス100質量部に対して、有機媒体(B)の量が50質量部以上であれば、有機媒体層の取り扱いが容易となり、350質量部以下であれば、製造効率が低下するおそれがない。
【0059】
本発明で用いる有機媒体(C)は、有機媒体(B)よりも水に対する溶解度が低い有機媒体であり、少なくとも1種の有機媒体又はその混合媒体である。
【0060】
25℃における水に対する有機媒体(C)の溶解度は8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい。
【0061】
有機媒体(C)としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0062】
これらは、水の溶解度が上記の範囲を満たすのであれば、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
有機媒体(C)の使用量は、有機媒体(B)100質量部に対して、好ましくは20〜1000質量部、より好ましくは50〜400質量部、更に好ましくは50〜200質量部である。
【0064】
有機媒体(B)100質量部に対して、有機媒体(C)の量が20質量部以上であれば、有機層と水層の分離を促す効果が充分となり、1000質量部以下であれば、製造効率が低下するおそれがない。
【0065】
有機媒体(B)と有機媒体(C)の組合せとしては、例えば、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの組合せ、メチルエチルケトンと酢酸エチルの組合せが挙げられる。
【0066】
本発明で用いる重合性有機化合物としては、例えば、エポキシ樹脂化合物、フェノール樹脂化合物、ポリウレタン樹脂化合物、ビニルエステル樹脂化合物等の熱硬化性樹脂;芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸誘導体、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物等のラジカル重合性単量体;ジメチルテレフタレート、アルキレングリコール等の芳香族ポリエステル原料が挙げられる。
【0067】
この中では、通常、グラフト共重合体を配合することが比較的困難であるエポキシ樹脂化合物を代表とする熱硬化性樹脂に対して、本発明の方法は特に好適に用いることができる。
本発明で用いる重合性有機化合物は、エポキシ樹脂化合物であることが好ましい。
【0068】
本発明で用いるエポキシ樹脂化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂、3又は4官能のエポキシ樹脂、高分子量化したエポキシ樹脂、不飽和モノエポキシド(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル)をラジカル重合して得られる重合体である。
【0069】
本発明に用いるエポキシ樹脂化合物は前述のようなものであるが、一般的にはエポキシ当量として、80〜2000を有するものである。このようなエポキシ樹脂化合物は周知の方法で得ることができ、例えば、多価アルコールもしくは多価フェノール等に対して過剰量のエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることで得られる。
【0070】
また、エポキシ樹脂化合物としては、反応性希釈剤であるモノエポキシド、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテルを併用してもよい。
【0071】
本発明による重合体粒子(A)含有分散体の製造方法においては、重合体粒子(A)含有ラテックスを、有機媒体(B)と混合させる。これにより、重合体粒子(A)が、ラテックス由来の水層から、主に有機媒体(B)からなる層に抽出された混合物(以下、「混合物(イ)」という。)が形成される。
【0072】
この際、重合体粒子(A)含有ラテックス由来の水分は、混合物(イ)中に乳化分散して混入し、長時間静置しても分離することが困難である。
【0073】
次に、このようにして得られた混合物(イ)に、疎水性の高い有機媒体(C)を接触させることにより、混合物(イ)中に乳化分散して混入した水分を分離することができる。
【0074】
即ち、混合物(イ)に有機媒体(C)を接触させることにより、混合物(イ)の疎水性が高められ、混合物(イ)中に乳化分散していた水分が水層に排除される。
【0075】
この際に、重合体粒子(A)含有ラテックスの製造に通常使用される、乳化剤等に由来する金属イオンは水層に移動するため、重合体粒子(A)含有分散体から金属イオンを除去することができる。
【0076】
上記の操作で、重合体粒子(A)含有分散体からの金属イオンの除去が充分ではない場合には、重合体粒子(A)含有分散体を脱イオン水で洗浄する操作を繰り返すことにより、金属イオンを除去することができる。
【0077】
本発明では、予め金属イオンの総含有量を低減した重合体粒子(A)含有ラテックスを使用することから、より効果的に、金属イオンが低減された重合体粒子(A)含有分散体を得ることができる。
【0078】
このようにして得られた、重合体粒子(A)、有機媒体(B)及び(C)からなる重合体粒子(A)含有分散体は、有機媒体(B)及び(C)の混合有機媒体中に重合体粒子(A)が安定に分散した状態で存在するものである。
【0079】
好ましい本発明の形態においては、重合体粒子(A)は、重合体粒子(A)含有分散体中に、一次粒子で分散している。
【0080】
尚、重合体粒子(A)含有ラテックスに対して、有機媒体(B)を混合させる前に、より疎水性の高い有機媒体(C)を混合させた場合、有機媒体(C)を主成分とする有機媒体中に重合体粒子(A)を抽出することはできない。
【0081】
これまでの操作における接触とは、重合体粒子(A)含有ラテックス、有機媒体(B)、混合物(イ)又は有機媒体(C)との界面間の接触のみでなく、緩やかな撹拌条件下での両者の混合も含んでもよく、特別な装置又は方法は必要ではなく、良好な混合状態が得られる装置又は方法であればよい。接触時の温度については、適宜決定される。
【0082】
本発明による重合体粒子(A)含有樹脂組成物の製造方法においては、上記の操作を実施して得られた重合体粒子(A)含有分散体を、重合性有機化合物、特に好ましくはエポキシ樹脂化合物に混合する。
【0083】
この混合は容易に達成でき、特別な装置又は方法を使用することなく、周知の方法で実施可能である。例えば、エポキシ樹脂化合物を有機溶剤に溶解する際に使用されるような方法や条件で実施可能である。しかも、これら一連の操作において、重合体粒子(A)は不可逆な凝集を起こさず、エポキシ樹脂化合物への混合の前後において、重合体粒子(A)は良好な分散状態を維持している。
【0084】
好ましい本発明の形態においては、重合体粒子(A)はエポキシ樹脂化合物への混合の前後で、一次粒子で分散した状態を維持している。以下、主にエポキシ樹脂化合物を用いた場合について説明する。
【0085】
重合体粒子(A)含有分散体及びエポキシ樹脂化合物からなる混合物(以下、「混合物(ロ)」という。)から、有機媒体(B)及び(C)を主体とする揮発成分を除去することによって、重合体粒子(A)がエポキシ樹脂化合物中で良好な分散状態を維持したまま、目的とする重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0086】
揮発成分の除去方法としては、周知の方法が適用できる。例えば、槽内に混合物(ロ)を仕込み、加熱して常圧又は減圧下に揮発成分を留去する回分式の方法、槽内で乾燥ガスと混合物(ロ)を接触させる方法、薄膜式蒸発機を用いる連続式の方法、脱揮装置を備えた押出機又は連続式攪拌槽を用いる方法が挙げられる。
【0087】
揮発成分を除去する際の温度や所要時間等の条件は、エポキシ樹脂化合物が反応したり、品質を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0088】
本発明で得られる重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物の最終使用形態によっては、有機媒体(B)及び(C)を完全に除去せず、多少の量を含んだままでも用いることが可能である。
【0089】
このような場合も同様に、重合体粒子(A)が凝集することなく、残存する有機媒体(B)及び(C)の混合有機媒体にエポキシ樹脂化合物が溶解した溶液に対して良好に分散した状態を得ることができる。該重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物に残存する有機媒体(B)及び(C)の量は、該エポキシ樹脂組成物の使用目的に応じて、問題のない範囲で適宜選択できる。
【0090】
重合体粒子(A)含有樹脂組成物(100質量%)中の、重合体粒子(A)の含有率は0.5〜80質量%が好ましく、1〜70質量%がより好ましく、3〜60質量%が更に好ましい。
【0091】
重合体粒子(A)含有樹脂組成物(100質量%)中の、重合体粒子(A)の含有率が0.5質量%以上であれば、重合体粒子(A)含有樹脂組成物が有する靱性改良効果が充分に発現し、80質量%以下であれば、重合体粒子(A)含有樹脂組成物の粘度が増大するおそれがない。
【0092】
本発明の重合体粒子(A)含有樹脂組成物は、いわゆるマスターバッチとして使用することも可能である。
例えば、重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物のマスターバッチの場合、マスターバッチに用いるエポキシ樹脂化合物と、マスターバッチの希釈に用いるエポキシ樹脂化合物とは、同一のものでも異なった種類のものでもよい。
【0093】
以上のような本発明の製造方法によって得られる重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物は、塗料、コーティング剤、航空機部品やスポーツ用品、構造材料等の繊維あるいはフィラー強化複合材料、接着剤、固着材料、半導体封止剤や電子回路基板等の電子材料等の、エポキシ樹脂が通常使用される各種の用途に対して、幅広く利用が可能である。エポキシ樹脂組成物中、さらに硬化物中での重合体粒子(A)の分散状態の安定性に優れ、金属イオンの少ない優れた成形物を得ることができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、以下において「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0095】
本実施例に記載の測定方法を、以下に説明する。
【0096】
[1]重合体粒子(A)の平均粒子径
レーザー回折散乱式粒度分布装置((株)堀場製作所製、LA−910(商品名))を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
【0097】
[2]硬化成形物中での重合体粒子(A)の分散状態
重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物の硬化成形物を切り出し、四酸化オスミウムで染色処理した後に薄片を作製し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1200EX(商品名))を用いて、硬化成形物中での重合体粒子(A)の分散状態を目視で確認した。
【0098】
[3]イオン含有量
重合体粒子(A)含有ラテックス、又は重合体粒子(A)含有分散体中のイオン量を下記の方法により測定し、重合体粒子(A)に対するイオン含有量を算出した。
【0099】
(1) 試料(重合体粒子(A)含有ラテックス、又は重合体粒子(A)含有分散体)1g(固形分換算)を白金皿に量り取り、溶剤類を蒸気乾燥機にて除去後、電熱器により乾式灰化させ塩酸水で溶解し、精水で50mlにメスアップし検液とした。
(2) (1)で得た検液を、ICP発光分析装置(Thermo社製、IRIS Intrepid II XSP)を用いて金属イオン量を測定した。尚、検量線は、0/0
.1/1/10ppmの4点、各金属イオンの測定波長は、Na:589.5nm、K:766.4nm、Ca:184.0nm、Mg:279.5nm、Al:396.1nm、Fe:259.9nmとした。
【0100】
(3) 硫酸イオンについては、試料(重合体粒子(A)含有ラテックス、又は重合体粒子(A)含有分散体)2g(固形分換算)をアセトン70mlに分散させた後、酢酸バリウム溶液にて滴定して測定した。
【0101】
(製造例1) 重合体粒子(A−1)含有ラテックスの製造
温度計、冷却管、窒素導入管、攪拌装置を備えたフラスコに、脱イオン水88部、n−ブチルアクリレート5部、アリルメタクリレート0.125部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで撹拌しながら80℃に昇温した。
【0102】
次いで、予め調製した過硫酸アンモニウム0.1部、脱イオン水5.2部の溶液を添加し、60分間保持して、第一段目のソープフリー重合を行なった。
【0103】
次に、n−ブチルアクリレート65部、アリルメタクリレート1.625部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.6部、脱イオン水34部の混合液を180分間で滴下し、60分間保持して、第二段目の乳化重合を行ない、アクリル系ゴム(R1)含有ラテックスを得た。
【0104】
得られたアクリル系ゴム(R1)含有ラテックスの存在下に、メチルメタクリレート29.4部、エチルアクリレート0.6部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.4部、脱イオン水15.6部の混合液を100分間で滴下し、60分間保持して、グラフト重合を行ない、グラフト共重合体含有ラテックスを得た。これを、重合体粒子(A−1)含有ラテックスとする。
【0105】
重合体粒子(A−1)の平均粒子径は600nmであった。重合体粒子(A−1)含有ラテックスのイオン含有量を表2に示した。
【0106】
(製造例2) 重合体粒子(A’−1)含有ラテックスの製造
温度計、窒素導入管、攪拌装置を備えた耐圧オートクレーブに、下記の原料を投入し、窒素置換した後、250rpmで攪拌しながら60℃に昇温して、8時間保持し、ジエン系ゴム(R2)含有ラテックスを得た。
1,3ブタジエン 75部
スチレン 25部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.4部
ピロリン酸ナトリウム 1.5部
硫酸第一鉄 0.02部
牛脂脂肪酸カリウム 1.5部
脱イオン水 150部
【0107】
温度計、冷却管、窒素導入管、攪拌装置を備えたフラスコに、得られたジエン系ゴム(R2)含有ラテックス65部(固形分)を投入し、硫酸ナトリウム1部を添加して、ジエン系ゴム(R2)の肥大化を行なった。
【0108】
次いで、フラスコ内を窒素置換し、牛脂脂肪酸カリウム1.5部を7%水溶液として添加した後、ロンガリット(ナトリウム・ホルムアルデヒドスルフォキシレート)0.6部を添加した。
【0109】
内温を70℃に昇温した後、メチルメタクリレート12.6部、t−ブチルハイドロパーオキシド0.03部の混合物を、60分間で滴下した後、60分間保持した。
【0110】
次いで、スチレン18.9部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.04部の混合物を、60分間で滴下した後、60分間保持した。
【0111】
次いで、メチルメタクリレート3.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.01部の混合物を、60分間で滴下した後、60分間保持して、グラフト共重合体含有ラテックスを得た。これを、重合体粒子(A’−1)含有ラテックスとする。
【0112】
重合体粒子(A’−1)の平均粒子径は300nmであった。重合体粒子(A’−1)含有ラテックスのイオン含有量を表2に示した。
【0113】
(実施例1)
25℃の温度条件下で、製造例1で得られた重合体粒子(A−1)含有ラテックス100部と、有機媒体(B)としてメチルエチルケトン(25℃における水に対する溶解度:11%)130部を容器に投入して、攪拌した。
【0114】
上記の攪拌を継続しながら、有機媒体(C)としてメチルイソブチルケトン(25℃における水に対する溶解度:2%)160部を添加した。
【0115】
この際に、混合有機媒体層から水層の分離が観察された。攪拌を止めて30分間静置した後に水層を排出して、重合体粒子(A−1)含有分散体を得た。重合体粒子(A−1)含有分散体のイオン含有量を表2に示した。
【0116】
尚、排出した水層中に、重合体粒子(A−1)の存在は認められなかった。排出した水層は約50部であり、重合体粒子(A−1)含有分散体には約8部の水分が混入している。
【0117】
次いで、重合体粒子(A−1)含有分散体をエポキシ樹脂化合物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828(商品名))100部と混合した後、エバポレーターを用いて80℃×2時間で、揮発成分(混入した水分、有機媒体(B)及び(C))を減圧留去した。このようにして、重合体粒子(A−1)含有エポキシ樹脂組成物を得た。
【0118】
重合体粒子(A−1)含有分散体とエポキシ樹脂化合物の混合は、振盪混合で行なっており、強力な機械攪拌(高剪断下での攪拌)は必要としなかった。
【0119】
得られた重合体粒子(A−1)含有エポキシ樹脂組成物100部に対して、硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700(商品名))85部、硬化促進剤としてN−ベンジル−2−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)1.25部を混合した。
【0120】
この混合物を150mm×150mm×3mmの型に注型した後、ギアオーブンにて80℃×2時間保持して予備硬化させ、その後120℃×6時間保持して硬化させ、硬化成形物を得た。
【0121】
硬化成形物中の重合体粒子(A−1)の分散状態を観察した結果、重合体粒子(A−1)は凝集することなく均一に分散していることを確認した。
【0122】
(実施例2)
有機媒体(C)として酢酸エチル(25℃における水に対する溶解度:9%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0123】
混合有機媒体層から水層の分離が観察され、水層を排出して、重合体粒子(A−1)含有分散体を得た。排出した水層中に重合体粒子(A−1)の存在は認められなかった。排出した水層は約50部であった。
【0124】
重合体粒子(A−1)含有分散体と、エポキシ樹脂化合物の混合は、強力な機械攪拌を必要としなかった。また、硬化成形物中での重合体粒子(A−1)の分散状態は良好であった。
【0125】
(比較例1)
有機媒体(C)としてアセトン(25℃における水に対する溶解度:∞)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0126】
攪拌を止めて12時間静置したが、水層は殆ど形成されなかった。混合有機媒体層は乳化状態となり、多量の水分を含んでいる様子が観察され、水層の分離性に劣る結果であった。
【0127】
(比較例2)
有機媒体(C)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0128】
撹拌を止めて12時間静置したが、重合体粒子(A−1)は凝集して、混合有機媒体層に分散しなかった。
【0129】
(比較例3)
有機媒体(B)としてメチルイソブチルケトンを用い、有機媒体(C)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0130】
攪拌を止めて12時間静置したが、水層は殆ど形成されなかった。混合有機媒体層は乳化状態となり、多量の水分を含んでいる様子が観察された。
【0131】
(比較例4)
重合体粒子(A−1)含有ラテックスを、重合体粒子(A’−1)含有ラテックスに替えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0132】
重合体粒子(A’−1)含有ラテックスは、重合体粒子(A−1)含有ラテックスに比較して乳化剤を多く用いているため、水層の分離性が悪く、水層の分離には12時間の静置を要した。
【0133】
水層を排出して、重合体粒子(A’−1)含有分散体(0)を得た。重合体粒子(A’−1)含有分散体(0)のイオン含有量を表2に示した。
【0134】
尚、排出した水層中に、重合体粒子(A’−1)の存在は認められなかった。
【0135】
(比較例5)
比較例4で得た、重合体粒子(A’−1)含有分散体(0)に、脱イオン水100部を添加し、攪拌した。
【0136】
この際に、混合有機媒体層から水層の分離が観察された。攪拌を止めて30分間静置した後に水層を排出して、重合体粒子(A’−1)含有分散体(1)を得た。重合体粒子(A’−1)含有分散体(1)のイオン含有量を表2に示した。
【0137】
尚、排出した水層中に、重合体粒子(A’−1)の存在は認められなかった。
【0138】
(比較例6)
比較例5で得た、重合体粒子(A’−1)含有分散体(1)に、脱イオン水100部を添加し、攪拌した。
【0139】
この際に、混合有機媒体層から水層の分離が観察された。攪拌を止めて30分間静置した後に水層を排出して、重合体粒子(A’−1)含有分散体(2)を得た。重合体粒子(A’−1)含有分散体(2)のイオン含有量を表2に示した。
【0140】
尚、排出した水層中に、重合体粒子(A’−1)の存在は認められなかった。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子(A)に対する金属イオンの総含有量が30ppm以下である重合体粒子(A)含有ラテックスに有機媒体(B)を混合し、
さらに該有機媒体(B)よりも水に対する溶解度が低い有機媒体(C)を混合し、
前記重合体粒子(A)含有ラテックスに由来する水層を除去することにより、
前記重合体粒子(A)、有機媒体(B)及び(C)からなる重合体粒子(A)含有分散体を製造する方法。
【請求項2】
前記金属イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオンである請求項1に記載の重合体粒子(A)含有分散体の製造方法。
【請求項3】
前記重合体粒子(A)含有ラテックスは、ノニオン系乳化剤又は金属イオンを含有しないアニオン系乳化剤を用いた乳化重合で得られたものである請求項1又は2に記載の重合体粒子(A)含有分散体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの製造方法で得られた重合体粒子(A)含有分散体を重合性有機化合物と混合した後、前記有機媒体(B)及び(C)を含む揮発成分を除去する重合体粒子(A)含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記重合性有機化合物がエポキシ樹脂化合物である請求項4に記載の重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法で得られた重合体粒子(A)含有エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる成形物。

【公開番号】特開2010−18667(P2010−18667A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178970(P2008−178970)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】