説明

重合体組成物、該組成物からなる易剥離性フィルム、該組成物層を有する積層体

【課題】無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム層とほぼ同等な優れたシーラント属性、特に適正な易剥離性、ヒートシール特性、を具現でき、然も、押出積層成形可能な易剥離性シーラント材用重合体組成物、その組成物からなる易剥離性フィルム、そのシーラント層を有する積層体を提供する。
【解決手段】(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー(a2)及び共重合体(a1)とアイオノマー(a2)との混合物(a3)から選ばれる1種の重合体又は重合体組成物99〜90質量部と(B)メチルペンテン系重合体1〜10質量部(但し、(A)と(B)の合計量を100質量部とする)からなる押出積層成形が可能な重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物、該重合体組成物からなる易剥離性フィルム及び該組成物層を易剥離性熱シール材層(イージーピーラブルヒートシーラント層)として備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、無延伸フィルム(CPP)と二軸延伸フィルム(OPP)に大別され、無延伸フィルムは、しなやかで靭性に富み、光沢や透明性が良好なものを得ることができることから、食品をはじめとし、繊維、雑貨等各種の包装材や小型機械、電池等の器具類の保護用外装材等として広く使用されている。
【0003】
ポリプロピレン無延伸フィルム(CPP)は単体フィルムでも用いられるが、最近では、包装フィルムの高機能化、高級化にともない、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)やポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)などの基材フィルムに貼り合わせたヒートシール材として使用するラミネート用途が急増し、これが主流となって来ている。
CPPは、イージーピーラブルシーラント層として適度なヒートシール強度を有するため、例えば、スナック菓子や即席ラーメン包装材のシーラント材として多用され、特に、アルミニウムを蒸着積層した蒸着CPP等の積層フィルムは、スナック菓子等乾燥食品用包装材として必需品となっている。
従って、OPPやPET、ONy(延伸ナイロンフィルム)等の基材フィルムにポリプロピレン無延伸フィルム(CPP)を積層した態様の包装用積層フィルムはその改良、改質等を含め多数の発明、考案が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、CPPフィルムの一面にプラズマ化学気相成長法でケイ酸等の無機酸化物の蒸着薄膜からなるバリア層を設け、更に、該バリア層の面に、接着剤層を介して、OPP等の基材フィルムをドライラミネートして得られ、透明性と酸素、水蒸気に対するバリア性に優れたスナック食品の充填包装に有用な包装用積層体の発明が開示されている。
【0005】
又、特許文献2には、CPP最外層/Al中間層/CPP最内層からなるアルミ箔積層フィルムをヒートシールして作製した調理済み食品の長期保存用容器の発明が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、サンドイッチラミネーション法により形成され、延伸ナイロンフィルム基材層/ベーマイト処理アルミニウム箔層/イソシアネート化合物アンカーコート層/ホモ又はランダム共重合体ポリプロピレン樹脂接着剤層/CPPシーラント層の積層体からなるリチウムイオン電池用外装材の発明が開示されている。
【0007】
このようにCPPフィルム層をシーラント層とする積層体は、食品包装をはじめ各種の包装用材として極めて有用であるが、それを製造する際の生産性や製造コスト面に関しては重大なボトルネックを有していた。
即ち、上記CPPフィルム層をイージーピール層として有する積層体は、その殆ど全てが、所謂、サンドイッチラミネーション法やドライラミネーション法と称される、基材とCPPフィルムを例えば接着剤層を介して加圧接着する製法により製造され、このため生産性が悪く、コスト高になる欠点を有した。
一方積層体製造に、CPPフィルムを使用する代わりに、イージーピール性を有する重合体組成物のエクストルージョンコーティングやコエクストルージョン(共押出)等の押出積層法を採用した場合は、例えば、共押出ダイやTダイを備えた押出機、冷却ロール、圧着ロール及び巻取装置等からなる一連の機械類を組合せた押出積層装置による高速連続生産が容易で生産性が極めて高く、その分コストを低減できる。
【0008】
従って、この分野ではCPPフィルムに代わる押出積層が可能で、且つ、良品質の製品を得られる樹脂組成物の出現が強く求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−355069号公報
【特許文献2】特開2006−137494号公報
【特許文献3】特開2005−203294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等は上記要望を満たすべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のアイオノマー、或いは、前記共重合体と前記アイオノマーの混合物にポリメチルペンテン系樹脂を比較的少量で特定量配合した重合体組成物が上記目的に適合することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0011】
従って、本発明の目的は、前記CPP層とほぼ同等な優れたシーラント属性、特に適正易剥離ヒートシール特性、を具現でき、然も、押出積層成形可能な易剥離性シーラント材用重合体組成物を提供するにある。
又、本発明の他の目的は上記重合体組成物からなる易剥離性フィルムを提供するにある。
更に、本発明の別の目的は、基材に上記組成物を押出積層してなる易剥離性積層体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー(a2)及び共重合体(a1)とアイオノマー(a2)との混合物(a3)から選ばれる1種の重合体又は重合体組成物99〜90質量部と(B)メチルペンテン系重合体1〜10質量部(但し、(A)と(B)の合計量を100質量部とする)からなる押出積層成形が可能な重合体組成物が提供される。
【0013】
本発明の重合組成物では、前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)が(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として更に含むエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体であることが好ましい。
【0014】
又、前記アイオノマー(a2)を構成するベース樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として更に含むエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体であることが好ましい。
【0015】
更に、前記混合物(a3)がエチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体及び/又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体(i)とエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体アイオノマー(ii)との混合物であり、その配合組成が(i)60〜95質量%、(ii)5〜40質量%の範囲にあるものが特に好ましい。
【0016】
又、本発明の重合組成物に於いては、前記(B)メチルペンテン系重合体は4−メチル−1−ペンテン重合体であることが好ましい。
【0017】
更に、前記(A)がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)65〜85質量部及びエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー(a2)5〜34質量部からなり、前記(B)がメチルペンテン系重合体1〜10質量部(但し、(A)、(B)の合計量100質量部)からなる重合体組成物が特に好ましい。
【0018】
又、本発明によれば、前記重合体組成物を成形してなる易剥離性フィルムが提供される。
【0019】
更に、本発明によれば前記重合体組成物を基材に押出積層成形してなる易剥離性積層体が提供される。
【0020】
又、更に、本発明によれば前記重合体組成物を基材と共押出積層成形してなる易剥離性積層体が提供される。
【0021】
前記易剥離性積層体に用いられる基材はポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムから選ばれた1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の重合体組成物は、易剥離封止性(イージーピーラブルシール性)に優れヒートシーラント材として好適であると共に成形加工性に優れ、膜成形、積層成形が容易で、例えば、基材フィルムに対する高速連続押出積層や基材樹脂との共押出積層が可能であり、このため一般にサンドイッチラミネーション法、ドライラミネーション法等の非押出積層法で製造される無延伸ポリプロピレン(CPP)シーラント層からなる積層体に比べ極めて高い生産性を保有でき、従って、この点で製造コストを大きく低減できる。
然も、得られた積層体は無延伸ポリプロピレン(CPP)イージーピーラブルシーラント層よりなる積層体と同等以上の優れたヒートシール特性を示し、また、低温シール特性も優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施形態について詳細且つ具体的に説明する。
既に述べたとおり、本発明の重合体組成物は、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー(a2)或いは前記共重合体(a1)と前記アイオノマー(a2)の混合物の何れか60〜99重量部に(B)メチルペンテン系重合体1〜10重量部を配合してなる重合体組成物の発明である。
【0024】
本発明の重合体組成物に於いて、前記(A)成分の一つであるエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)には、エチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体のみならず、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体等のエチレンと(メタ)アクリル酸成分を必須重合成分として含有する三元系以上の共重合体も包含される。
【0025】
より具体的には、エチレン・アクリル酸二元共重合体、エチレン・メタクリル酸二元共重合体、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸三元共重合体、エチレン・アクリル酸・アクリル酸エステル三元共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル三元共重合体、エチレン・メタクリル酸・メタクリル酸エステル三元共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸、メタクリル酸エステル共重合体等を例示出来る。
これらの内では、エチレン・アクリル酸二元共重合体、エチレン・メタクリル酸二元共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル成分を更に含む三元系以上の共重合体の使用がより好ましく、特に、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル三元共重合体が好ましい。
【0026】
又、前記共重合体が(メタ)アクリル酸エステルを含有する場合、エステルとしては、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステルを好適例として挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。
これらの内ではメチル、エチル、イソブチルエステルが好ましい。
【0027】
前記共重合体(a1)中の(メタ)アクリル酸単位の含有率は2〜30質量%が好ましい。
又、エステル成分を含む共重合体では、該エステル単位の含有率が0〜30質量%のものが好ましい。
又、該共重合体のメルトフローレート(MFR)(JIS K−7210に準拠、190℃、2160g荷重で測定、)は、0.05〜500g/10分、特に0.2〜300g/10分であることが好ましい。
【0028】
本発明に於ける(A)成分の他の一つであるエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー(a2)には、前記(a1)で挙げたエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と同様の共重合体をベース樹脂とする金属イオンアイオノマーを例示できる。
又、ベース樹脂のMFRや(メタ)アクリル酸成分含有量、更には(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む共重合体の場合は、そのエステル含有量もほぼ前記と同範囲のものが好ましい。
金属イオン種としてはLi、Na、K等のアルカリ金属イオン、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属イオンの他、亜鉛イオン等を例示出来る。
これらの中ではZnイオンのアイオノマーが好ましい。
アイオノマーの中和度は1〜95%程度、特に4〜85%が好ましい。
又、本発明のアイオノマー(a2)には、アイオノマーとしてのMFR(JIS K−7210に準拠、190℃、2160g荷重で測定、)が0.01〜100g/10分の範囲にあるものを使用することが好ましい。
【0029】
本発明の(A)成分には、上記(a1)と(a2)とを混合して得られた混合物(a3)も用いられる。
この場合に於いて(a1)、(a2)の混合割合に特に制限はなく、任意の割合での配合が可能であるが、(A)成分が混合物(a3)態様の場合、エチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体或いは両者(i)とエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体アイオノマー(ii)とを、(i)60〜95質量%、(ii)5〜40質量%の割合で混合したものは、イージーピールシーラントとしてのシール強度−シール温度関係が広い範囲でCPPシーラントのそれと近似するため特に好ましい。
【0030】
本発明の重合体組成物に於いて、(B)成分を構成するメチルペンテン系重合体は、3−メチルー1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のメチルペンテンモノマー、若しくは、メチルペンテンモノマーを主成分とし、少量の他モノマー類を共重合して得られた重合体であり、例えば、メチルペンテンの単独重合体(3−メチル−1−ペンテンホモポリマー、4−メチル−1−ペンテンホモポリマー)の他、メチルペンテンとそれに共重合可能な他の化合物との共重合体をも包含し、典型的には、所謂、TPXと称される樹脂である。
【0031】
メチルペンテンと共重合可能な他の化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィンなどが挙げられる。
これらは1種又は2種以上が、メチルペンテン系重合体中に含まれていてもよい。
【0032】
メチルペンテン系重合体中のメチルペンテンの含有量は、通常、85モル%以上、好ましくは90モル%以上である。
このメチルペンテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常、0.05〜500g/10分(ASTM D1238、荷重:5Kg、温度:260℃で測定)、好ましくは0.1〜300g/10分である。
【0033】
本発明の重合体組成物は、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー(a2)及び共重合体(a1)とアイオノマー(a2)との混合物(a3)から選ばれる1種の重合体又は重合体組成物99〜90質量部、より好ましくは98〜92質量部、と(B)メチルペンテン系重合体1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部(但し、(A)と(B)の合計量を100質量部とする)からなる。
(A)成分の配合量が上記下限より低いとシール強度が低すぎて極軽い衝撃等で剥離したり、極端な場合、自然に剥離する等のため好ましくない。
一方、(A)成分が上記上限より高いとシール強度が高すぎて易剥離適性が損なわれ好ましくない。
【0034】
又、本発明の重合体組成物に於いて、上記(A)成分に34質量部迄(全量に対する)のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー成分(a2)を配合した3樹脂配合態様((a3)態様)のものは、既に述べたとおり、シール強度−シール温度関係がCPPのそれとほぼ一致するため特に好ましい。
更に、前記アイオノマーがエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体のアイオノマーであることが特に好ましい
アイオノマー成分の配合量が34質量部を越えると上記関係曲線のCPPのそれからの乖離がやや大きくなる。
即ち、本発明に於いては、前記(A)を構成するエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)65〜85質量部、より好ましくは68〜82質量部、及びエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー(a2)5〜34質量部、より好ましくは10〜30質量部、と前記(B)を構成するメチルペンテン系重合体1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部、(但し、(A){(a1)+(a2)}、(B)の合計量100質量部)からなる重合体組成物を好適態様として挙げることができる。
【0035】
上記共重合体成分やアイオノマー成分は必ずしも1種類からなる必要はなく二種以上を混合して良く、むしろ、押出製膜の際の溶融粘弾性挙動等を容易に調整出来、シール強度を微調整してより適正化出来る等の観点から好ましい。
【0036】
本発明の重合体組成物に於いては、上記(A)、(B)必須樹脂成分の他に更に飽和又は不飽和の脂肪酸アミド、飽和又は不飽和の脂肪酸ビスアミド、ポリエチレングリコール、水添ひまし油及びシリカ等の添加剤を加えてもよい。
これら特定添加剤は本発明のシーラント用組成物をペレット化した時等にそのブロッキングを防止し、又、押出成形加工時及びコーティング加工時に於けるフィルム同士のブロッキング或いは金属ロールとのステイクを防止し、更には巻き戻し、スリット、製袋、打ち抜き、充填等の後工程が必要な場合にその作業性を改善する。
【0037】
上記飽和又は不飽和の脂肪酸アミドとしては、C8からC22までの飽和直鎖脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸のアミドが好ましく、具体的にはパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド及びこれらの混合物などが挙げられる。
更に、脂肪酸アミドとしてオレイルパルミトアミド、ステアリルエルカアミドのような2級アミドを用いることもできる。
又、飽和又は不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、C8からC22までのN,N’ーメチレンビスアミド又はN,N’ーエチレンビスアミドを主体とするもので、それらの中では、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸等のメチレンビスアミド及びステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸等のエチレンビスアミドが好適である。
【0038】
これらの添加剤の配合量は前記樹脂成分(A)、(B)の合計配合量100質量部に対し300ppm〜10質量部が適当で、特に飽和又は不飽和脂肪酸アミド、飽和又は不飽和脂肪酸ビスアミド、ポリエチレングリコール、水添ひまし油の場合は300〜10000ppm、シリカの場合は0.1〜3質量部が好ましい。また、本発明においては本発明の組成物の特性を損なわない範囲で前記樹脂成分(A)、(B)に必要に応じてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや公知の粘着付与剤を配合しても良い。
【0039】
本発明の重合体組成物を得るには上記(A)、(B)成分に、所望により前記脂肪酸アミドやその他の添加剤を配合し、同時又は逐次的に混合する。
混合方法としては単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーを用いて溶融混合する方法が好ましく、又、混合順序にも特に制限はない。
本発明の重合体組成物は、前記各成分を混合し、混練した後の組成物のメルトフローレート(MFR)が0.1〜500(g/10分)の範囲にあることが好ましい。
該組成物のMFRが0.1以下では粘度が高すぎて樹脂圧力が上がり、又、モーター負荷が大きくなって押出成形性、コーティング作業性に難を来たしいずれも好ましくない。
又、本発明の重合体組成物を押出コーティング成形する場合には、成形性の点から特にそのMFRが1〜300の範囲にあることが好ましく、特に、MFR(JIS K−7210に準拠、190℃、2160g荷重で測定、)が2〜50の範囲が好ましい。
【0040】
上記本発明の重合体組成物をフィルム状に成形にするには、CPPの単独フィルム製膜に通常用いられるTダイキャスト法と同様の方法を用いることが出来るだけでなく、インフレーション法でも、単層フィルム化できる。
この場合、単層フィルムの厚みは5〜300μm、特に10〜100μmが好ましい。
又、本発明の重合体組成物の層はアルミ箔、セロファン、紙、ポリエステル樹脂(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂、延伸ナイロン樹脂(ONy)等の基材と積層して積層体として使用することができる。本発明の重合体組成物の層をこれらの基材に積層するには、CPPと同様にドライラミネーション、サンドイッチラミネーションやグラビアロールコート、キャストコート等高粘度コーターによる塗布積層化も勿論可能であるが、本発明の重合体組成物は、Tダイキャスト等によりエクストルージョン(押出)積層が可能な点が特徴で、これにより積層フィルムの生産効率を顕著に向上させることができる。
更に、本発明の重合体組成物はポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体やそのアイオノマー、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン等の適当な他の熱可塑性樹脂と共押出インフレーション成形又は共押出キャスト成形して共押出積層フィルムとすることもできる。
【0041】
そして、このようにして得られた単体フィルムはそのまま包装材や成形体の封止用材に用いることができ、又、押出積層フィルムや共押出積層フィルムでは本発明の重合体組成物層をヒートシール層として封止用積層体容器又は封止用蓋体として用いられる。
【0042】
上記積層体又は蓋体の積層構成例として、例えば、
紙、PET、ONy等の基材層/本発明組成物シーラント層、
基材層/ポリエチレン層(中間層)/本発明組成物シーラント層、
シーラント層/基材層/本発明組成物シーラント層、
シーラント層/中間層/基材層/ポリエチレン層(中間層)/本発明組成物シーラント層、
熱可塑性樹脂層/本発明の重合体組成物シーラント層
等を挙げることができる。
【0043】
上記層構成の積層体に於いて、基材層としては、紙や延伸ポリエステル樹脂フィルム(OPET)、延伸ナイロン樹脂フィルム(ONy)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等の延伸フィルム等を例示することが出来、中間層として用いられる素材として、例えば、アルミニウム、ポリエチレン、エチレン・αーオレフィン共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等を挙げることができる。
また上記層構成の積層体に於いて、熱可塑性樹脂層としては高、中、または低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて得られた線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体やそのアイオノマーなどのエチレン(共)重合体、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリスチレンなどをあげることができる。上記本発明の積層体においては基材層の厚みは5〜300μm特に10〜100μmが好ましく、本発明組成物シーラント層の厚みは、は3〜100μm特に5〜50μmが好ましく、中間層の厚みは3〜50μmが好ましい。また熱可塑性樹脂層の厚みは3〜100μm特に5〜50μmが好ましい。
既に述べたとおり、本発明の重合体組成物は、単体フィルムや積層フィルムに成形され、シーラント(ヒートシール)層として容器や容器蓋、袋等の各種包装形態で主として食品類、繊維品類、雑貨品類等の包装材として好適に使用され得る。
特に、スナック菓子や即席ラーメン、レトルト食品、パン等の包装材として好適である。
【実施例】
【0044】
「試料調製用原料(重合体、アイオノマー)」
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体:
NCL1=エチレン(E)・メタクリル酸(MAA)・アクリル酸イソブチル(IBA)3元共重合体;E単位含量:81.0質量%、MAA単位含量:11.0質量%、IBA単位含量:8.0質量%、MFR10.0g/10分
NCL2=エチレン(E)・メタクリル酸(MAA)・アクリル酸イソブチル(IBA)3元共重合体;E単位含量:80.0質量%、MAA単位含量:10.0質量%、IBA単位含量:10.0質量%、MFR36.0g/10分
NCL3=エチレン(E)・メタクリル酸(MAA)・アクリル酸イソブチル(IBA)3元共重合体;E単位含量:80.0質量%、MAA単位含量:10.0質量%、IBA単位含量:10.0質量%、MFR37g/10分
NCL4=エチレン(E)・メタクリル酸(MAA)2元共重合体;E単位含量:91.3質量%、MAA単位含量:8.7質量%、MFR10.5g/10分
アイオノマー:
HM1=NCL3をベース樹脂とする亜鉛(Zn)アイオノマー:中和度70%;MFR1.0g/10分
HM2=NCL4をベース樹脂とする亜鉛(Zn)アイオノマー:中和度17%;MFR5.0g/10分
メチルペンテン系重合体:
TPX1=4−メチルペンテン−1重合体;三井化学社製DX820;密度833kg/m、融点238℃、MFR180g/分
【0045】
「実施例1」
エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル三元共重合体(NCL1)97質量部とメチルペンテン樹脂(TPX1)3質量部とを混合し、二軸押出機を用いて下記コンパウンド条件下で溶融混練し重合体組成物(試料実−1)を得た。
この組成物のMFRは8.6g/10分であった。
コンパウンド条件:30mmφ2軸押出機、スクリュー回転数200rpm、フィーダー吐出設定4.0%(マニュアル)、設定温度、C1=140℃、C2=220℃、C3−C7=260℃、C8−C9=200℃、AD−D=180℃
【0046】
次いで、上記重合体組成物(試料実−1)を下記条件下に押出ラミネートフィルム連続成形(単層)を実施し、そのドローダウン性能(D・Down;)を評価した(加工性評価)。
押出ラミネートフィルム成形加工条件:押出装置;65mmφラミネーター、スクリュー;3ステージタイプ、スクリュー冷却;ON、AG=110mm
評価項目、加工性(D・Down(Q=1))… 押出量(基準値;80m/分×20μmフィルム成形時押出量)一定にて評価した膜切れ時引取速度;m/分 (LipH(6Amp))
結果を表1に示した。
【0047】
更に、ポリエステル(PET)フィルム(12μm)にポリエチレン層(PE)(15μm)を積層した基材の該PE層上に上記重合体組成物(試料実−1)層(20μm)を押出積層した積層体試料(PET(12μm)/PE(15μm)/実−1組成物(20μm)を作製した(積層体実−1試料)。
そしてこの積層体試料(積層体実ー1試料)を100℃から210℃まで10℃毎の温度間隔で下記ヒートシール条件下にヒートシールし、そのシール強度を下記条件で測定した。
ヒートシール条件:積層体試料の組成物層面同士を重ね合わせたものをテフロンシートに挟んでヒートシーラーを用いシール圧力0.2MPa、シール時間0.5秒で100から210℃迄の10℃毎の各温度でヒートシールする(TD方向面々シール)。
強度測定条件:剥離試験試料幅15mm、剥離角度90°、引張速度300mm/分
結果を表2に示した。
【0048】
「実施例2」
実施例1と同じ共重合体試料(NCL1)95質量部とメチルペンテン樹脂(TPX1)5質量部とを混合した以外は、実施例1と同様にして重合体組成物(試料実−2)を得た。
この組成物のMFRは7.7g/10分であった。
次いで、上記重合体組成物(試料実−2)を実施例1と同様の条件下に押出フィルム連続成形し、そのドローダウン性能(D・Down;)を評価した。
結果を表1に示した。
【0049】
更に、実施例1と同じ層構成の積層体試料(PET(12μm)/PE(15μm)/実−2組成物(20μm)を作製した(積層体実−2試料)。
そしてこの積層試料(積層体実−2試料)を100℃から210℃まで10℃毎の温度間隔でヒートシールし(但し、ヒートシール時間を0.5秒及び1.0秒の2条件でそれぞれ実施)、そのヒートシール強度を実施例1と同じ条件下で測定した。
結果を表2に示した。
【0050】
「比較例1」
NCL1共重合体試料のみを用いて(以下これを試料比−1とする)層構成が(ONy(15μm)/PE(20μm)/比−1共重合体層(30μm)の積層体(積層体比ー1試料)を作製した。
そしてこの積層体(積層体比−1試料)を90℃から160℃まで10℃毎の温度間隔で実施例1と同様にヒートシールし、そのヒートシール強度を実施例1とほぼ同様に測定した(ヒートシール時間0.5秒)
結果を表2に示した。
【0051】
「実施例3」
2種類のエチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル三元共重合体(NCL1=25質量部、NCL2=50質量部)計75質量部とエチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル三元共重合体の亜鉛アイオノマー(HM1)20質量部とメチルペンテン樹脂(TPX1)5質量部とを混合し、単軸、2軸の2種類の押出機を用いて下記2種[i)、ii)]の異なるコンパウンド条件で溶融混練し2種類の重合体組成物(試料実−3A、i)2軸)、試料実−3B、ii)単軸)をそれぞれ得た。
この組成物のMFRは試料実−3Aが11.5g/10分、試料実−3Bが6.4g/10分であった。
コンパウンド条件:
i)(30mmφ2軸押出機) スクリュー回転数200rpm、フィーダー吐出設定4.0%(マニュアル)、設定温度、C1=140℃、C2=220℃、C3ーC7=260℃、C8−C9=200℃、ADーD=180℃
ii)(40mmφ単軸押出機) スクリュー回転数50rpm、スクリュー先端D、設定温度、C1=140℃、C2=240℃、C3ーC4=260℃、ADーD=180℃
【0052】
次いで、上記重合体組成物(試料実−3A、試料実−3B)を実施例1と同様の条件下に押出フィルム連続成形(単層)を実施し、そのドローダウン性能(D・Down;)を評価した。
結果を表1に示した。
【0053】
更に、実施例1と同様にして押出積層により積層体試料(PET(12μm)/PE(15μm)/実−3A又は3B組成物(20μm)を作製した(積層体実−3A、積層体実−3B試料)。
そしてこの積層体試料を100℃から210℃まで10℃毎の温度間隔で下記ヒートシール条件下にヒートシールし、そのヒートシール強度を下記条件で測定した。
ヒートシール条件:積層体試料の組成物層面同士を重ね合わせたものをテフロンシートに挟んでヒートシーラーを用いシール圧力0.2MPa、シール時間0.5秒又は1.0秒の2条件で100から210℃迄の10℃毎の各温度でヒートシールする(TD方向面々シール)。
強度測定条件:剥離試験試料幅15mm、剥離角度90°、引張速度300mm/分
結果を表3に示した。
【0054】
「比較例2」
アイオノマー(HM2)のみを用い(以下これを試料比−2とする)、層構成が(ONy(15μm)/PE(20μm)/共重合体層(比−2試料)(30μm)の積層体(積層体比−2試料)を作製した。
そしてこの積層体(積層体比−2試料)を90℃から160℃まで10℃毎の温度間隔で実施例1と同様にヒートシールし、そのヒートシール強度を実施例1とほぼ同じ条件で測定した(ヒートシール時間0.5秒)
結果を表3に示した。
【0055】
「参考例」
市販CPPフィルム(トーセロCPコポリタイプ;標準GHC#25)の実圧0.2MPa、時間1.0秒の条件下に於ける130から180まで温度間隔10℃毎のヒートシール強度データを参考例として表2,3にそれぞれ示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
尚、参考のため、実施例1、2、比較例1、2のヒートシール実圧0.2MPa、時間0.5秒の条件下に於けるヒートシール温度とそのシール剥離強度の関係をCPP(但し時間1.0秒)のそれと対比して図1に線図として示した。
又、実施例3A,3B、実施例2のヒートシール実圧0.2MPa、時間1.0秒の条件下に於けるヒートシール温度とそのシール剥離強度との関係をCPP(時間1.0秒)のそれと対比して図2に示した。
【0060】
前記表1の結果から本発明の重合体組成物は製膜成形加工性が良好で、高速での連続押出積層が可能で、CPPに比べ生産性に顕著に優れることが判る。
又、本発明の重合体組成物から得られたシーラントフィルムはCPPに近似したヒートシール温度・シール剥離強度挙動を示し、特に、共重合体・アイオノマー・TPX3樹脂配合組成物からなるシーラントフィルム(積層体実−3A、積層体実−3B)はCPPと殆ど同じヒートシール温度・シール剥離強度挙動を示す。
従って、本発明の重合体はCPPシーラントの代替え品として極めて好適であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1、2、比較例1、2のヒートシール温度とシール剥離強度の関係を示した線図(実圧0.2MPa、時間0.5秒)。
【図2】実施例3A,B、実施例2に於けるヒートシール温度とシール剥離強度との関係を示した線図(実圧0.2MPa、時間1.0秒)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー(a2)及び共重合体(a1)とアイオノマー(a2)との混合物(a3)から選ばれる1種の重合体又は重合体組成物99〜90質量部と(B)メチルペンテン系重合体1〜10質量部(但し、(A)と(B)の合計量を100質量部とする)からなる押出積層成形が可能な重合体組成物。
【請求項2】
前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)が(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として更に含むエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体である請求項1記載の重合体組成物。
【請求項3】
前記アイオノマー(a2)を構成するベース樹脂が(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として更に含むエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体である請求項1又は2記載の重合体組成物。
【請求項4】
前記混合物(a3)がエチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体及び/又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体(i)とエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体アイオノマー(ii)との混合物であり、その配合組成が(i)60〜95質量%、(ii)5〜40質量%の範囲にある請求項1〜3の何れかに記載の重合体組成物。
【請求項5】
前記メチルペンテン系重合体が4−メチル−1−ペンテン重合体である請求項1〜4の何れかに記載の重合体組成物。
【請求項6】
前記(A)がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(a1)65〜85質量部及びエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー(a2)5〜34質量部からなり、前記(B)がメチルペンテン系重合体1〜10質量部(但し、(A)、(B)の合計量100質量部)からなる請求項1〜5の何れかに記載の重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の重合体組成物を成形してなる易剥離性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の重合体組成物を基材に押出積層成形してなる易剥離性積層体。
【請求項9】
請求項1〜6の何れかに記載の重合体組成物を熱可塑性樹脂と共押出積層成形してなる易剥離性積層体。
【請求項10】
前記基材がポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムから選ばれた1種である請求項8又は9記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−227790(P2009−227790A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73827(P2008−73827)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】