説明

重合体結合紫外線吸収剤

【課題】ノンブリード性の重合体結合紫外線吸収剤の提供。
【解決手段】2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系化合物の残基を、連結基(不飽和二重結合の残基を除く)を介して、重合体分子の側鎖または主鎖に有することを特徴とする重合体結合紫外線吸収剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体結合紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤についても数多くの化合物が市販されており、塗料、コーティング剤、インク、プラスチックの成型などに添加し、耐光性向上の目的で使用されている。
【0003】
しかしながら、これら市販の紫外線吸収剤は非反応性の低分子化合物であったため、塗料、コーティング剤など物品に使用した場合、塗膜からのブリードアウト現象があり、性能が維持できにくいこと、乾燥、加熱や成型時の熱によって昇華すること、また溶剤や薬品にさらされたとき、塗膜から溶出すること等があり、それらによって使用した量が物品中に含有、保持されなくなり、性能保持されにくい場合があった。
【0004】
またある種の紫外線吸収剤においては、塗料やインキなどの溶剤への溶解性やコーティング剤などの樹脂との相溶性が悪く、使用時の添加量が制限されるものがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究を進めた結果、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類に、一個以上のエポキシ基を含有する化合物又はアルコール性水酸基を持つハロゲン化アルキルを反応させて得られる、アルコール性水酸基、又はアルコール性水酸基及びエポキシ基の反応性基を含有する反応性紫外線吸収剤、及び該反応性紫外線吸収剤を原料として得られる重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が、ノンブリード性を示し、昇華せず、耐溶出性や耐熱性が良好であること、および合成方法においては、原料である2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と各種エポキシ化合物又はアルコール性水酸基含有ハロゲン化アルキルとの合成反応が非常に容易な反応によって得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系化合物の残基を、連結基(不飽和二重結合の残基を除く)を介して、重合体分子の側鎖または主鎖に有することを特徴とする重合体結合紫外線吸収剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノンブリード性の重合体結合紫外線吸収剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
始めに反応性紫外線吸収剤及びその製造方法と物品の処理方法について説明する。
【0009】
該反応性紫外線吸収剤は2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物又はアルコール性水酸基を持ち少なくとも1個のハロゲン基を含有する化合物を反応させることによって得られる。
【0010】
得られる分子中には2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ残基、およびアルコール性水酸基またはアルコール性水酸基及びエポキシ基を有することが特徴であり、その製造方法、及びその塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、医薬品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料に使用する媒体中に希釈して含有することを特徴とする反応性紫外線吸収剤組成物および物品に紫外線吸収処理をする方法、及び上記の紫外線吸収処理方法で紫外線吸収処理を施した物品についてである。
【0011】
本発明の2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とは、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ハロゲン原子が置換した5’−クロロ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5’−ブロモ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等、又はベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルキル基が1つまたは2つ置換した5’−メチル−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5’−t−ブチル−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5’,6’−ジメチル−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等、またはベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルコキシ基が置換した5’−メトキシ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5’−n−ブトキシ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールであり、それぞれ1種ないしそれ以上使用される。
【0012】
本発明の2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物との反応について説明する。
【0013】
エポキシ化合物として、1個のエポキシ基を含有する有機化合物としては、スチレンオキサイド、シクロヘキサンオキサイド、2,3−エポキシ−1−クロロプロパン(エピクロロヒドリン)、2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)、グリシジルアルキル(C1〜C30)エーテル、例えばメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ブチキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、フェニルポリエチレングリコールグリシジルエーテル等、更にグリシジルアルキルエステル(C1〜C30)エステル、例えばグリシジル酢酸エステル、グリシジル酪酸エステル、ラウリン酸グリシジルエステルなど、更に芳香族系グリシジルエーテル、例えばフェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。また不飽和結合含有のエポキシ化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、ヒドロキシスチレンのグリシジルエーテル等があげられる。
【0014】
更に2個のエポキシ基を含有する有機化合物としては、(ポリ)アルキレングリコールのジグリシジルエーテル、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(n>1)エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられ、またビスフェノールA類のエピクロロヒドリン付加物であるエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。またジカルボン酸のジグリシジルエステル、例えば琥珀酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0015】
更に3個以上のエポキシ基を含有する化合物としては、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテルや、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミンなどが使用される。また不飽和結合を含有するグリシジル基含有モノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、ヒドロキシスチレン等を単独、または他の不飽和結合含有化合物、例えばスチレン類、アクリレート類、メタクリレート類、アクリルアミド類、アルカン酸ビニルエステル類、アクリロニトリル類、ジカルボン酸不飽和結合化合物およびそのエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン及びその混合物などと共重合させたグリシジル基含有付加重合体があげられる。
【0016】
これら上記のエポキシ基含有化合物である原料を使用した2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と分子中に1個以上のエポキシ基を含有する有機化合物との反応は、従来公知の方法がとられる。
【0017】
溶媒としては、水酸基、カルボニル基、アミノ基等の活性水素を有しない不活性な溶剤で、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジメチルエチレングリコール等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル系の溶剤が1種ないしそれ以上使用される。
【0018】
また、触媒を添加せずとも徐々に反応は進行するが、触媒を添加したほうが反応は速く、例えばフッ化ホウ素エチルエーテル錯体、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドやテトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、2−メチル−4−エチルイミダゾールや2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、エチルトリフェニルホスホ二ウムブロマイド等の第4級有機リン塩等がグリシジル化合物に対して、0.001mol%〜10mol%使用され、好ましくは0.1mol%〜5mol%がよい。反応温度は室温から180℃で行なわれ、好ましくは50℃〜150℃が好ましい。
【0019】
また、不飽和結合を含有する化合物を使用した場合、熱によって重合する恐れがあるので、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノチアジン等の重合禁止剤を0.0001〜0.01%添加することが好ましい。
【0020】
このようにして得られた反応性紫外線吸収剤は濃縮されて得られる、または更に有機溶剤で抽出し、水、飽和食塩水又は希硫酸などで有機層を洗浄し、さらに有機層を濃縮し、有る適当な溶剤にて再結晶して精製されて得られる。得られた化合物は常法に従い、乾燥され得られる。
【0021】
このようにして反応して得られるアルコール性水酸基、又はアルコール性水酸基およびエポキシ基を含有する反応性紫外線吸収剤の構造について説明する。
【0022】
2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基を含有する化合物と反応させた場合は、アルコール性水酸基のみを含有する反応性紫外線吸収剤となる。
【0023】
また、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と2個以上のエポキシ基を含有した化合物との反応させた場合は、アルコール性水酸基、またはアルコール性水酸基及びエポキシ基を含有する紫外線吸収剤が得られる。これはエポキシ基と当量反応した場合は、アルコール性水酸基のみを含有する反応性紫外線吸収剤が得られ、またエポキシ基を過剰にして反応させエポキシ基を残存させた場合はアルコール性水酸基とエポキシ基を含有する反応性紫外線吸収剤となる。
【0024】
2個以上のエポキシ基を含有した化合物との反応について更に詳細に説明すると、前記した2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と前記した2個以上のエポキシ基を含有する有機化合物(多官能性エポキシ化合物)をとの反応であり、その多官能性エポキシ化合物がn個(n=2以上)のエポキシを含有し、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類の4位のフェノール性水酸基をm個とすると、フェノール性水酸機と多官能性エポキシ化合物のエポキシ基の反応モル比がm/nであり、m=nの場合、n個のエポキシ基にすべて2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類が反応し、1分子中に多数の紫外線吸収能を含有することとなる。このエポキシ基がすべて反応した紫外線吸収剤は、アルコール性水酸基のみを含有する反応性紫外線吸収剤で比較的大きい分子量となる。
【0025】
n>mの場合、m個の2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類が分子中に導入され、n−m個のエポキシ基が残され、反応性基としてはアルコール性水酸基とエポキシ基を含有する反応性紫外線吸収剤となる。この合成方法は前記したとおりであるが、更にエポキシ基が過剰の場合、自己縮合する可能性は否めず、合成時にその必要モル数以上の2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類を反応に仕込み、完全にエポキシ基が反応する前に、反応を止め、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液で、残存する2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類を洗い出してしまう方法も取れる。
【0026】
次に本発明の2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1個のハロゲン基を含有するアルコール性水酸基を持つ化合物との反応について説明する。
【0027】
本発明の使用される少なくとも1個のハロゲン基を含有するアルコール性水酸基を持つ化合物としては、例えばモノハロゲン化モノアルコール、モノハロゲン化ジアルコール、ジハロゲン化モノアルコール等であり、例えばエチレンクロロヒドリン、2−クロロ−プロパノール、3−クロロ−プロパノール、2−クロロ−ブタノール、3−クロロ−ブタノール、4−クロロ−ブタノール、2−クロロエトキシ−2−エタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、また不飽和結合を含有する化合物としては、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、(メタ)アクリル酸2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられ、さらにその塩素化物の変わりにフッ素化物、臭素化物及びヨウ素化物が用いられる。
【0028】
上記のハロゲン化物は2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と常法に従い反応させることができ、限定されるものではない。一例を挙げると、反応溶媒としては任意の各種有機溶剤が使用でき、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類とアルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等を添加し、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール類を金属フェノキシドにし、ハロゲン化物を添加し、置換反応を行なわせることによって得られる。反応温度は室温から150℃がよく、好ましくは80℃〜130℃である。ついで前記のようにして抽出、洗浄して得られ、再結晶などを行ない、精製される。
【0029】
このようにして得られた反応性紫外線吸収剤はそのまま又は更に不飽和結合を導入して使用される。
この不飽和結合を導入するには、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と前記不飽和結合含有したエポキシ化合物や不飽和結合を含有するアルコール性水酸基を含有するハロゲン化物との反応によって得られる。
【0030】
具体的には、例えば2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとグリシジルメタクリレートとの反応によって得られる化合物

であり、これはメタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルとの反応物と同構造である。
5−クロロ−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールとグリシジルアクリレートとの反応によって得られる化合物

であり、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルとの反応物と同構造である。
【0031】
更に、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基を含有した有機化合物と反応させることによって得られたアルコール性水酸基含有の2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を、アルコール性水酸基と反応する基をもつ不飽和結合を含有する化合物との反応によって不飽和結合含有の反応性紫外線吸収剤が得られる。
【0032】
これは2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と先に述べた1個のエポキシ基を含有した化合物と反応させると、アルコール性水酸基を含有する反応性紫外線吸収剤となり、このアルコール性水酸基と反応しうる基、例えばカルボキシル基またはその低級アルコールエステル、イソシアネート基、酸ハロゲン化物、酸無水物基、エポキシ基、クロルトリアジン基、イソシアネート基、アルキルメチロール基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等を持った不飽和結合を含有する化合物と反応させることによって得られる。
【0033】
このアルコール性水酸基と反応しうる基を持った不飽和結合含有する化合物としては、メタクリロイオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、メチルスチレン−p−ジメチルメチルイソシアネート等のイソシアネート類とウレタン結合、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等のカルボン酸由来の官能基からエステル結合、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基と反応させエーテル結合等が得られる。これらのアルコール性水酸基とその反応性基を有する不飽和含有化合物との反応は従来公知の方法によって得られ、得に限定されるものではない。
【0034】
このようにして得られた分子中に2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ残基、およびアルコール性水酸基又はアルコール性水酸基及びエポキシ基を有し、更に不飽和結合を含有する反応性紫外線吸収剤を、紫外線、電子線や可視光などのエネルギー線の作用、熱やラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用により硬化する塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料などの物品に添加し、紫外線、電子線や可視光などのエネルギー線の作用、熱やラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用により反応性紫外線吸収剤が付加重合反応または付加結合反応により添加された系中に組み込まれることによってノンブリードを達成する。
【0035】
個々に説明すると、本発明のアルコール性水酸基又はアルコール性水酸基及びエポキシ基を有する反応性紫外線吸収剤を、熱などによって硬化する塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料などの物品に添加した場合、その物品中にある樹脂、バインダーや架橋剤中のアルコール性水酸基と反応する基、例えばカルボキシル基またはその低級アルコールエステル、イソシアネート基、酸ハロゲン化物、酸無水物基、エポキシ基、クロルトリアジン基、イソシアネート基、メチロールアミノ基、アルキル化メチロールアミノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等、更にエポキシ基と反応しうる基、例えばカルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物、エポキシ基等と本発明のアルコール性水酸基又はアルコール性水酸基及びエポキシ基を有する反応性紫外線吸収剤が反応して、系中に紫外線吸収剤が保持結合され、ノンブリードを達成する。
【0036】
それらの反応性基を持つ樹脂、バインダー、架橋剤は従来公知の物が使用され、得に限定されるものではないが、一例を挙げると、樹脂やバインダーとしては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸エステルメタクリル酸共重合体、スチレンアクリル酸共重合体等があり、架橋剤としては、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類、ブロックイソシアネート系架橋剤、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、メチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。本発明の反応性紫外線吸収剤は0.001%から10%であり、好ましくは0.1〜3%である。
【0037】
次に紫外線、電子線や可視光などのエネルギー線の作用としては、本発明の不飽和結合を含有する反応性紫外線吸収剤を添加することによってなる。紫外線、電子線、可視光などの光による従来公知の硬化性塗料やインキであり、例えば不飽和結合を含有する化合物、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ネオペンチルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多官能性不飽和結合含有モノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤、例えばベンゾイル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、2−エチルチオキサントンなど、必要に応じて、溶剤、顔料、添加剤などと混合し、該不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤を添加し、紫外線、電子線及び可視光によって硬化させるものであり、その光のエネルギーによって本発明の不飽和結合含有した反応性紫外線吸収剤が、他の不飽和結合含有化合物と付加重合を起こし、系中に反応して保持される。本発明の不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤は0.001%から10%であり、好ましくは0.1〜3%である。
【0038】
さらに熱やラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用としては、本発明の不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤を添加することによってなる。例えば不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂やそれらの塗料、インキ、コーティング剤などであり、具体的にはマレイン酸を成分として含む不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート、前記の多官能性不飽和結合含有モノマーやオリゴマー、不飽和結合を含有する化合物、例えばスチレンやアクリル酸エステルなどと、更に必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤、さらに必要に応じて顔料、添加剤などと、本発明の不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤を添加混合し、80〜200度で加熱して硬化させるものであり、本発明の不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤が、熱重合やラジカル重合、イオン重合して硬化する際に不飽和結合が上記バインダー等の不飽和結合と付加重合して、系中に保持される。本発明の不飽和結合含有反応性紫外線吸収剤は0.001%から10%であり、好ましくは0.1〜3%である。
【0039】
次に該反応性紫外線吸収剤を原料として得られる重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びその製造方法と物品の処理方法について説明する。
【0040】
前記で得られたアルコール性水酸基又はアルコール性水酸基及びエポキシ基を有する反応性紫外線吸収剤、又は更に不飽和結合を有する反応性紫外線吸収剤を原料として、該紫外線吸収剤が2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に由来する2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ残基を重合体分子の主鎖に含有するかおよび/または側鎖に結合させて、重合体分子中に10〜90重量%含有して成る平均分子量1,000以上のポリオレフィン系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリビニル系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、ポリシリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素系重合体、エポキシ樹脂系、メラミン系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体あるいはそれらの共重合体分子内に結合させていることを特徴とする重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、その製造方法、及びその塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、医薬品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料に使用する媒体中に希釈して含有することを特徴とする重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤組成物および物品に紫外線吸収処理をする方法、及び上記の紫外線吸収処理方法で紫外線吸収処理を施した物品についてである。
【0041】
これらは次のようにして重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を得ることができる。前記したアルコール性水酸基、又はアルコール性水酸基およびエポキシ基を含有する反応性紫外線吸収剤及び、前記した更に不飽和結合を導入した反応性紫外線吸収剤を原料として、3つの形態の重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を得ることができる。
【0042】
(I)不飽和結合含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類と他の不飽和結合含有化合物とラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用によって付加重合した重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。これを添加することによって系中からのノンブリード性を達成する。
【0043】
(II)2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基又は1個のハロゲン基を含有するアルコール性水酸基を持つ化合物とを反応させることによって得られたアルコール性水酸基含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を、アルコール性水酸基と反応する基を有する重合体とを反応させることによって、2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類が側鎖に導入された重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。これを物品に添加することによってノンブリードを達成する。
【0044】
(III)2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基と1個のアルコール性水酸基を含有する有機化合物、又は2個のエポキシ基を含有した有機化合物との反応によって得られる2個のアルコール性水酸基を含有する2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を他の重合性原料と付加縮合反応あるいは縮重合反応によって得られる重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。これを物品にて添加することによってノンブリードを達成しうる。
【0045】
更に個々に説明する。
(I)不飽和結合含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類と他の不飽和結合含有化合物とラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用によって付加重合した重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の場合
【0046】
不飽和結合含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ系類と他の不飽和結合を含有する化合物、具体的にはスチレン類、アクリレート類、メタクリレート類、アクリルアミド類、アルカン酸ビニルエステル、アクリロニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン及びその混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種以上が使用され、付加重合した重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を得ることができる。
【0047】
更に詳しくは、他の不飽和結合を有する化合物としては、スチレン類として、スチレンモノマー、メチルスチレンモノマー、ビニルトルエン、ビニルエチルベンゼン、ビニルナフタレン等が挙げられ、アクリレート類及びメタクリレート類としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等の脂肪族(C1〜C30)のアルコールエステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキサン等の脂環族アルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのフタル酸エステル類、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0048】
またアクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。アルカン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。またアクリロニトリル類としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられ、またジカルボン酸不飽和結合化合物およびそのエステル類としては、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸など、及びその脂肪族アルコールのハーフまたはジエステルなどが挙げられる。
【0049】
さらに(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルなどを共重した場合、共重合した高分子鎖に本発明の紫外線吸収剤由来の官能基以外に、エポキシ基が導入され、塗料、コーティング剤等の紫外線吸収剤として使用した場合、該重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が架橋剤成分として、物品に使用されているバインダー成分と結合し、高分子量によるノンブリードだけでなく、網目構造を形成し、さらにノンブリードとなるものである。
【0050】
また(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合、樹脂中に水酸基が導入され、塗料、コーティング剤等の物品に使用される架橋剤、例えばイソシアネート類やメラミン系架橋剤と反応して、上記の如く高分子量によるブリードのみならず、更に網目構造を結成し、ノンブリートを達成しうる。
【0051】
また、不飽和結合含有化合物として(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボニル基含有モノマーを使用した場合、高分子鎖にカルボニル基が導入され、これをアルカリ性物質で中和することによって、水性の重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を得ることができる。このアルカリ性物質は揮発性のアルカリ物質を使用することによって、塗料、コーティング剤などに使用した場合、耐水性の向上が得られ、揮発性のアルカリ物質としては、アミン類が挙げられ、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノプロパノール等が使用できる。
【0052】
これらの不飽和結合含有化合物と本発明の不飽和結合含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ系紫外線吸収剤は従来公知の重合方法、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等によって得られ、得に限定されない。
【0053】
該高分子量の紫外線吸収剤は、不飽和結合含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ系紫外線吸収剤を10〜90重量%で含有し、さらに好ましくは、30〜90%が好ましい。
これを塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料などに添加して使用される。これはそれぞれに対して、0.001%から30%であり、好ましくは0.1〜10%である。
【0054】
(II)2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基又は1個のハロゲン基を含有するアルコール性水酸基を持つ化合物とを反応させることによって得られたアルコール性水酸基含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を、アルコール性水酸基と反応する基を有する重合体とを反応させることによって、2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類が側鎖に導入された重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の場合
【0055】
これは2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と前記した1個のエポキシ基を含有した有機化合物と反応させることによって得られたアルコール性水酸基含有2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ系類を、該反応性紫外線吸収剤のアルコール性水酸基と反応する基、例えばカルボキシル基またはその低級アルコールエステル、イソシアネート基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エポキシ基、クロルトリアジン基及び、アルキルメチロール基など公知の反応基等を持った重合体とを反応させることによって、側鎖に2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類が導入された重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がえられる。これを物品に添加することによってノンブリードを達成する。
【0056】
具体的には、アルコール性水酸基と反応する基を有する重合体としては、前記した不飽和結合含有化合物の付加重合体であるポリマーや、従来公知の重合体鎖が使用され、例えば、ポリエチレン鎖、ポリプロピレン鎖、ポリ(エチレン−co−プロピレン)鎖、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−α−オレフィン)鎖などのポリオレフィン系重合体鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)鎖、(ポリエチレングリコール)−(ポリプロピレングリコール)ブロック共重合体鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などのポリエーテル系重合体鎖、ポリブチレンアジペート鎖、ポリエチレンセバケート鎖などの脂肪族ポリエステル鎖、ポリエチレンイソフターレート鎖、ポリブチレンテレフタレート鎖、ポリネオペンチルテレフタレート鎖などの芳香族ポリエステル鎖などのポリエステル系重合体鎖、6−ナイロン系鎖、6,6−ナイロン系鎖などのポリアミド系重合体鎖、ポリスチレン鎖、スチレン共重合体鎖、ポリビニルブチラール鎖などのポリビニル系重合体鎖、アクリル酸エステル(共)重合体鎖、メタクリル酸エステル(共)重合体鎖、アクリル−スチレン共重合体鎖などの(メタ)アクリル系(共)重合体鎖、ポリシリコーン系重合体鎖、ポリウレタン系重合体鎖、ポリ尿素系重合体鎖、エポキシ樹脂鎖、メラミン系樹脂鎖、セルロース系重合体鎖、キトサン系重合体鎖などから選ばれた単独重合体鎖あるいは上記の2種またはそれ以上の単量体あるいは重合体鎖の共重合体鎖であり、その重合体の有する反応性基としては、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、低級アルキル(C1〜C3)エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロルトリアジン基及びイソシアネート基など公知の反応基からなる群から縮合反応をさせる。
【0057】
例えば、ポリオレフィン系の反応性重合体としては、エチレン−co−アクリル酸共重合体、エチレン−co−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−co−メタアクリル酸共重合体、エチレン−co−メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン−co−ビニルアルコール−co−メタアクリル酸共重合体、エチレン−co−エチルアクリレート−co−無水マレイン酸共重合体、エチレン−co−ブチルアクリレート−co−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体、エチレン−co−グリシジルメタアクリレート共重合体、ポリエチレンモノカルボン酸などが挙げられる。ビニルポリマー系、(メタ)アクリルポリマー系等では反応性単量体を共重合するか、後反応処理を行うことによって反応基を導入できる。
【0058】
例えばカルボキシル基はアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類の共重合により、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、低級アルキル(C1〜C3)エステル基は不飽和カルボン酸のそれぞれの誘導体を共重合することにより、エポキシ基、クロルヒドリン基はグリシジル(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを共重合することにより、アミノ基はN−ビニル酢酸アミドの共重合体を鹸化することにより、クロルトリアジン基はクロルトリアジンを反応させることによって及びイソシアネート基はメタクリロイルオキシエチルイソシアネート、プロペニルフェニルイソシアネートを共重合させることで得られる。
【0059】
また、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素等の縮合系重合体については、合成に際して反応基を有する単量体原料の量比を変え、一方をやや過剰に使用するなどコントロールするか、反応後に反応性化合物を反応させるか、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸モノクロライド、トリレンジイソシアネート等反応速度の異なる多官能性化合物を使用して重合体に反応基を導入するなど公知の方法で達成される。
【0060】
これらを得る方法は従来公知の方法がとられ、更に詳細には、反応性紫外線吸収剤がアルコール性水酸基を含有する場合、重合体の反応性基としては、カルボキシル基及びその低級エステル、酸無水物基、イソシアネート基が挙げられ、従来公知の反応方法がとられる。反応はカルボキシル基又はその低級エステルの場合、脱水又は脱アルコール縮合反応によって得られ、重合体と反応性紫外線吸収剤、及び/又は有機溶剤、例えばキシレンなどの高沸点芳香族炭化水素、及び/又は触媒、例えばp−トルエンスルホン酸やテトラブチルチタネートのごときチタン系触媒、ジブチル錫オキシドのごとき有機錫化合物を使用して、反応温度80度〜250℃、好ましくは130℃〜220℃で、脱水又は脱アルコール反応を行ない、重合体に結合させる。
【0061】
酸無水物の場合は、反応性紫外線吸収剤と酸無水物を含む重合体を溶剤中、又は無溶剤中で反応させて開環縮合させる。イソシアネートの場合、重合体と溶剤、反応性紫外線吸収剤、及び/又は触媒としてジブチル錫ジラウレートの如き錫化合物やトリエチルアミンの如きアミン化合物を添加し、室温〜200℃で反応させる。
【0062】
アルコール性水酸基と結合する反応性重合体としては比較的高分子物ないし高分子物が使用される。重合体の平均分子量の範囲で示すとおよそ3、000〜200、000程度、好ましくはおよそ5、000〜100、000程度の重合物である。
【0063】
このようにして得られた重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの塗工剤、化粧品、食品、写真材料や繊維製品、プラスチック成型材料などに添加して使用され、その添加量は0.001%から30%であり、好ましくは0.1〜10%である。
【0064】
(III)2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基と1個のアルコール性水酸基を含有する有機化合物、又は2個のエポキシ基を含有した有機化合物との反応によって得られる2個のアルコール性水酸基を含有する2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を他の重合性原料と付加縮合反応あるいは縮合重合反応によって得られる重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の場合
【0065】
これは2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と1個のエポキシ基と1個のアルコール性水酸基を含有する有機化合物、又は2個のエポキシ基を含有した有機化合物、又は2個のアルコール性水酸基を含有する少なくとも1個以上のハロゲン基を含有する有機化合物との反応によって得られる2個のアルコール性水酸基を含有する(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類であり、2個のアルコール性水酸基を含有する2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ類を原料とし、これを他の重合性原料と付加共重合反応あるいは縮合共重合反応によって得られる重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0066】
1個のエポキシ基と1個のアルコール性水酸基を含有する化合物としては、前記したとおり2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)であり、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と反応させた場合、エポキシ環が開き、1個のアルコール性水酸基が生成し、計2個の水酸基を含有することとなる。
【0067】
また、2個のエポキシ基を含有する有機化合物及びエポキシ樹脂は前記したものを使用し、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と反応させ、2個のアルコール性水酸基を生成させる。
【0068】
また、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類と2個のアルコール性水酸基を含有する少なくとも1個以上のハロゲン基を含有する有機化合物、たとえば1−クロロ−2,3−プロパンジオール等を反応させ、2個のアルコール性水酸基を含有する。
【0069】
この反応は前記した通りであり、このようにして得られた2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類との反応物であるジオールを使用し、付加縮合や縮合重合を行なうことにより、紫外線吸収能を有する2−(ベンゾトリアゾーリル)−ヒドロキシフェノキシ類がポリマーに導入される。
【0070】
具体的にはジカルボン酸またはその低級エステルを酸成分とし、該紫外線吸収剤ジオール単独、または他のジオール成分を併用して、エステル縮合によるポリエステル樹脂、または有機ジイソシアネート成分と、該紫外線吸収剤ジオール単独、または他の低分子ジオールやポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールとのウレタン縮合によるウレタン樹脂である。
【0071】
始めに具体的にポリエステル樹脂の場合について詳細に説明する。上記で得られた紫外線吸収剤ジオールを単独または一部使用して、従来公知の酸成分とアルコール成分との重縮合反応によって得られ、これらの成分は特に限定されるものではないが、酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、フタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸、4,4’−メチレン二安息香酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタン酸、スベリン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,20−エイコサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、グルタコン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等およびそれらの低級アルコールエステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0072】
また、アルコール成分としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の脂環族グリコール;キシリレングリコール等の芳香族ジオール;グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル、1,1,1−トリメチロ−ルエタン、1,1,1−トリメチロ−ルプロパン等の脂肪族三価アルコール、トリス−(2ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等の環状三価アルコール等の多価アルコールが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0073】
また、得られたポリエステルを水性に使用させるため、自己乳化性とするために、トリメリト酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの多価カルボン酸またはその無水物を前記の酸成分と共縮合させ、残存する遊離のカルボン酸基を、必要により、従来公知の塩基性物質、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等のアミン類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ物質によって中和し、自己乳化可能とする。また、例えば、スルホイソフタル酸アルカリ金属塩及びその低級アルコールエステル化物等のスルホン酸基が置換した酸やアルコール成分を共縮合させ、上記同様にして自己乳化性を付与することもできる。
【0074】
ポリエステルの重縮合触媒としては、従来公知のものが使用され、特に制限されないが、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸化合物、テトライソプロピルチタネート、ジブチルスズオキシド等の金属化合物が、酸成分の重量に対して、通常、0.001〜1%程度の範囲で使用される。また重縮合反応は、従来公知の方法によって行なわれ、常圧及び/または減圧下、150〜260℃で脱水または脱アルコール縮合で得られ、水性にするために、上記の成分を用いて得られる自己乳化性のポリエステルは、それを水に加え、中和または加熱によって水分散体とすることができる。
【0075】
次に具体的にポリウレタン樹脂の場合について詳細に説明する。ポリウレタン樹脂の場合は、上記で得られた紫外線吸収剤ジオールを単独または一部使用して、従来公知のポリイシソアネート化合物、ポリオール、必要により鎖延長剤を用いて得ることができ、これらの成分は特に限定されない。
【0076】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、ジフェニルスルホンジイソシアネ−ト等が、またMDI、TDI、HDI、XDI、IPDI等を2価または3価の多価アルコールと反応させたアダクト体、HDIやIPDI等のビュレット体、TDI等のウレチジオン体、TDI、HDIやIPDIなどのイソシアヌレート体、カルボジイミド体などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0077】
ポリオールとしては、ポリエ−テルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールおよびその他のポリオールが使用される。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素含有基を2個以上有する化合物(例えば、低分子ポリオールやグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、あるいは、シュークローズ、グルコース、フラクトース等のシュガー系アルコール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等)を開始剤として、エチレンオキサイド(以下EOと称する)、プロピレンオキサイド(以下POと称する)、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、アミレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーの1種以上を公知の方法により付加重合することで得られる、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリエチレンプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0078】
ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールを縮重合させて得られるものである。
【0079】
多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸等のニ塩基酸またはそれらの無水物が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0080】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール等の芳香族グリコール、C1〜C18のアルキルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン等のグリコール類が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0081】
縮合系ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート等が挙げられる。
【0082】
ラクトン系ポリエステルポリオールは、前記ジオール類などを開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。
【0083】
ポリエーテルエステルポリマーは、エーテル基含有ジオールもしくは他のグリコールとの混合物を前記ジカルボン酸とまたはそれらの無水物とを反応させるか、またはポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもので、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。エーテル基含有ジオールは、前記の1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0084】
その他のポリオールとしては、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール、油脂変性ポリオール等が挙げられる。上記のポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0085】
また水性の紫外線吸収剤ポリマーを得るため、ポリウレタンを製造するに際しては、得られるポリウレタンに自己乳化性を付与するために、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)乳酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等のカルボン酸含有ジオールを共重合させ、次いで、必要により、そのカルボン酸を前記の塩基性物質で中和して自己乳化性とすることができる。また、他の方法としては、上記のカルボン酸含有ジオールを使用せずに末端イソシアネートウレタンプレポリマーを合成し、鎖延長剤として上記のカルボン酸含有ジオールあるいは2−カルボキシ−1,4−フェニレンジアミン等のカルボン酸含有ジアミンを用いて鎖延長させる方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0086】
ポリウレタン製造後、必要により、ポリウレタンの末端停止剤を使用することもできる。末端停止剤としては、例えば、モノアルコールやモノアミン等の単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネートに対して異なる反応性のもつ2種の官能基を有するような化合物、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等も使用可能である。なかでもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
【0087】
ポリウレタン重合の触媒としては、従来公知のものが使用され、特に制限されないが、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が、イソシアネート成分の重量に対して、通常、0.001〜1%程度の範囲で使用される。また重縮合反応は、従来公知の方法によって行なわれ、溶媒中又は無溶媒中で室温〜250℃、イソシアネートと水酸基やアミノ基とウレタン結合を生成させ、ポリウレタン樹脂を得る。
【0088】
このようにして得られた重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は比較的高分子物ないし高分子物が使用される。重合体の平均分子量の範囲で示すとおよそ3,000〜200,000程度、好ましくはおよそ5,000〜100,000程度の重合物である。
【0089】
これら3種の方法によって生成した重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は前記したように比較的高分子ないし高分子の領域の重合体であることから、通常の低分子量の機能剤に比べて、安全性、衛生性に優れ、物品の加工処理工程、保存時あるいは使用時において加熱しても揮散せず、ブルーミング現象も起こさず、相溶性に優れていることから必要量が添加出来、また、添加された物品の物性を阻害しないことが特長である。
【0090】
以上のようにして得られた本発明の反応性系紫外線吸収剤の処理方法及び物品について説明する。本発明の反応性系紫外線吸収剤は、合成樹脂、繊維材料、紙材料、不織布材料、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤、インクジェットインク、接着剤または化粧品などに添加され、従来公知のそれぞれの処理方法、例えば成型、紡糸、製紙、成膜、塗布、捺染、印刷、電子写真記録、インクジェットプリンティングあるいは接着されることによって、紫外線吸収機能によって物品の機能を改良しようとするものである。それによって、太陽光線特に紫外線等の作用による光暴露による脆化などによる弾性低下、引張り強度の低下、クラックの発生などの樹脂物性の低下、電気的性質の劣化、着色等、顔料、染料等の色素の変色、退色等の問題点を解決し、更に通常の低分子の機能剤の有する欠陥である蒸発、揮発や昇華などによる機能剤の揮散による機能の低下や相溶性の限界による添加量の制限、表面へのブルーミング現象による有効添加量の減少や他の物品への汚染や印刷性の阻害などを解決する物品の機能を改良する加工方法及びそれによって機能の改良された物品が得られ、また、化粧品の場合にはそれを用いて化粧することで人の皮膚が保護される。
【0091】
上記した合成樹脂としては従来公知の成型物、シート、フィルムなどに使用される熱可塑性成形材料が挙げられる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などの樹脂又は2種以上の樹脂のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイである。
【0092】
また、前記したナチュラル樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤などを含有させた熱可塑性成形材料も使用される。例えば、PET、PBT、LCP、POM、PA、PPS等のエンジニアリングプラスチックのガラス繊維入り複合材料あるいは難燃剤、発泡剤、杭菌剤、架橋剤等の各種添加剤を添加したものである。また、必要に応じて従来使用されている樹脂用の添加剤、例えば、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックス、金属石鹸等を単独であるいは併用して使用することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などであり、ナチュラル樹脂のほかガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤などを含有させた熱硬化性成形材料が挙げられる。
【0093】
本発明の反応性紫外線吸収剤は上記の合成樹脂に対して任意に添加する事が可能であるが、上記樹脂100部に対しておよそ0.05部〜20部、好ましくはおよそ0.1部〜10部添加するのがよい。また、反応性紫外線吸収剤として機能剤部分の有する機能と使用する目的とに応じて、本発明の反応性紫外線吸収剤のほかに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とトリアジン系紫外線吸収剤のような同種機能剤の組み合わせ、あるいは紫外線吸収剤と光安定剤のような異種機能剤の組み合わせを含め二種以上併用し、相乗効果をもたらすようにすることも好ましい実施態様である。
【0094】
本発明の反応性系紫外線吸収剤は合成樹脂用としては、単独あるいは上記の樹脂を加えてミキシングロール、バンバリーミキサーあるいはニーダーなどで混練され、シート状のマスターバッチに裁断されるか、ペレタ−ザーでマスターバッチのペレットとされ、使用される上記の樹脂と共に常法に従いヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーなどにて混合し、ミキシングロール、射出成型機、押出し成型機、インフレーション成型機などで成型される。
【0095】
繊維材料としては公知の繊維材料が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン系繊維、アクリロニトリル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維などである。加工方法もそれぞれ従来公知の紡糸方法に準じて行われる。本発明の反応性紫外線吸収剤の添加量としては、上記樹脂100部に対しておよそ0.1部〜5部添加するのが好ましい。
【0096】
紙材料、不織布材料、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキまたは接着剤においても従来公知の方法に準じてなされる。加工方法としては従来公知のそれぞれの処理方法、例えば、製紙、成膜、塗布、捺染、印刷することでなされる。塗料としては従来公知のアクリルメラミン系、アルキッドメラミン系、ポリエステルメラミン系、アクリルイソシアネート系、二液ポリウレタン系などの油性溶剤型、アクリルメラミン系、アルキッドメラミン系などの水性溶液型、アクリル樹脂エマルジョン系、フッ素樹脂エマルジョン系などの水性ディスパージョン型、アクリルイソシアネート系、ポリエステルイソシアネート系、ポリエステルエポキシ系などの粉体塗料など、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの紫外線硬化、電子線硬化塗料などが挙げられる。用途では、金属板用、特に自動車用、コイルコーティング用、建材用、木工用などである。コーティング剤や接着剤も同様な乾式及び湿式のタイプが挙げられる。
【0097】
捺染剤としては従来公知のアクリル樹脂エマルジョン系、アクリルスチレン樹脂エマルジョン系、合成ゴム系のタイプが挙げられる。
【0098】
印刷インキとしては、従来公知の輪転、枚葉などのオフセットインキ、プラスチックフィルム・シート用、アルミ箔用、建材・化粧板用などのグラビヤインキ、金属板用インキ、フレキソインキなどのインキが挙げられる。
【0099】
電子写真現像剤及びインクジェットインクとしては、従来公知のフルカラー、モノカラー、モノクロの乾式現像剤、湿式現像剤、水性、油性、ソリッドタイプのインクジェットインクが挙げられる。特に広告、看板用、外装塗装用等のフルカラー画像の用途に使用される現像剤やインクが挙げられる。
【0100】
上記のそれぞれの材料への反応性紫外線吸収剤の添加量は使用される用途、目的によって変わるが、ひとつの基準として樹脂固形分100部に対する機能剤成分としての添加量としておよそ0.1部〜10部添加するのが好ましい。また、反応性紫外線吸収剤として前記したと同様に目的に応じて同種機能あるいは異種機能を含め二種以上併用し、相乗効果をもたらすことも好ましい。
【0101】
一般的に、製品がフィルムのような薄膜や糸のように細い場合や、材料が劣化し易いものだったり、使用される状況が屋外の塗料のように厳しい環境に曝され、且つ長期にわたる耐久性を期待される時などでは、添加量としては多い方の比率で使用することが望ましい。
【0102】
湿式の溶解加工方法としては、加熱攪拌反応槽、混合攪拌反応槽、ディゾルバー混合などが挙げられ、湿式分散による加工方法としてはミキシングロールミル、ニーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横形媒体分散機、縦形媒体分散機、連続横形媒体分散機、連続縦形媒体分散機などが使用される。乾式の溶解、分散加工方法は上記合成樹脂で挙げた方法及び加工機械が使用できる。
【0103】
合成樹脂着色、塗料、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤あるいはインクジェットインクなどの物品を着色する場合に使用される色素としては、通常使用されている有機顔料、無機顔料及び体質顔料、及び染料が使用される。具体的には、例えば溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン−ペリレン系顔料、アゾメチン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ピロロピロール系顔料、蛍光顔料などの有機顔料、カーボンブラック顔料、酸化チタン系顔料、黄色酸化鉄、弁柄、酸化クロム、群青、複合酸化物顔料、硫化亜鉛等の無機顔料、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウム等の体質顔料、更に分散染料、油溶性染料が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0104】
色素の変色、褪色などに対する耐久性を改良するために本発明の反応性紫外線吸収剤を併用する方法としては、合成樹脂用着色組成物、塗料、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤あるいはインクジェットインクなどの着色組成物の調製時に添加する方法や予め色素の製造工程中で色素に混合処理や被覆処理をし、色素の加工品として準備する方法などで行われる。目的によっては他の光安定剤などを併用、処理すること、被覆処理の場合に微小重合体ビーズ状に加工したり、架橋処理などにより固定化することも有効である。
【0105】
更に本発明の反応性紫外線吸収剤は薬用化粧品の日焼け止め製品に使用される。皮膚に対する安全性が高く、皮膚に有害なUV−A(320〜400nm)及びUV−B(290〜320nm)を効果的に吸収してくれる性能を有し、クリーム、乳液、油、ローション等の基剤に均一に配合出来、汗や水浴で流れ落ちにくく、更に安定性の良いことが求められる。配合量としては、皮膚の曝される状況、使用目的や使用する材料等により一概に決められるものでないが、紫外線吸収剤の材料換算でおよそ1〜20%位で使用される。
【実施例】
【0106】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、文中部又は%とあるのは重量基準である。
【0107】
<合成例1> 2−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−(4’−ヒドロキシブトキシ)−フェノール(反応性紫外線吸収剤−1)の合成
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、窒素導入管、滴下装置を取り付けた
反応装置に、ジメチルスルホキシド(DMSO)150部を仕込み、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール45.4部を溶解させた。別容器にメタノール50部、水酸化カリウム11.2部溶解させ、DMSO溶液に添加した。ついで、加熱し100℃にしメタノールを留去させ、4−クロロ−1−ブタノール21.7部を30分かけて滴下した。
【0108】
ついで120℃に昇温し、この温度で4時間反応させた。赤外吸収スペクトル(IR)にて、エーテル基が生成しているのを確認した。トルエン200部を加え、0.1%塩酸水300部、ついで飽和食塩水300部にて2回洗浄した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、トルエンを留去した。得られた褐色の液体をキシレンにて再結晶し、ろ過、乾燥して、目的生成物を得た。これを反応性紫外線吸収剤−1とする。

これは、機器分析によってこの構造を有していることが確認された。またHPLCにて純度を測定したところ、98.8%であった。又分光光度計にて測定したところ、極大吸収波長は340nmであった。
【0109】
<合成例2> 2−(5−クロロ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−〔2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ〕−フェノール(反応性紫外線吸収剤−2)の合成
実施例1と同様にして、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの代わりに5’−クロロ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−クロロ−1−ブタノールの代わりに(2−クロロエトキシ)エタノールを使用し合成した。これを反応性紫外線吸収剤−2とする。

これは、機器分析によってこの構造を有していることが確認された。またHPLCにて純度を測定したところ、99.2%であった。又分光光度計にて測定したところ、極大吸収波長は351nmであった。
【0110】
<合成例3> 2−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシ−プロポキシ)−フェノール(反応性紫外線吸収剤−3)の合成
実施例1と同様の反応装置を使用し、トルエン200部、2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールベンゾトリアゾール45.4部、グリシジルフェニルエーテル30部、エチルトリフェニルホスホ二ウムブロマイド2.2部を仕込み、110℃にて2時間反応した。液が褐色透明になった。得られた溶液を冷却すると、70℃付近で結晶が析出し、ついで10℃までさらに冷却し晶析させ、黄褐色の粉末を得た。これをろ過し、トルエンで洗浄後、乾燥し、さらにトルエン−エタノール混合溶剤で再結晶させた。得られた結晶をろ過、トルエンで洗浄し、乾燥させた。これを反応性紫外線吸収剤−3とする。

これを液クロにて純度を測定したところ、純度98.3%であった。機器分析によってこの構造を有していることが確認された。
【0111】
<合成例4〜9> 表1に示された化合物は合成例3と同様にして得ることができた。

【0112】
<合成例10> エチレン−co−アクリル酸エチル共重合体と紫外線吸収剤−1との脱アルコール縮合による重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の合成
反応容器に冷却管、温度計、水分分取装置、攪拌装置を設置し、エチレン−co−アクリル酸エチル共重合物(アクリル酸エチル含有量25%、MI値200)を100部、反応性紫外線吸収剤−1を70.8部、キシレン35部、ジブチル錫オキシド0.5部を添加し、窒素を流しながら150℃に溶融させた。徐々にキシレンを留去させ、210℃まで加熱した。この温度で4時間反応し、ついで減圧して1時間反応させた。ついで、キシレン200部を添加し、さらにIPA1000部にて析出させた。これを減圧乾燥機にて40℃、24時間乾燥し、淡黄色のゴム状不定形の樹脂が得られた。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1とする。
【0113】
これはGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ)によって測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量29000、重量平均分子量46000であった。また官能基として2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を30.1%(理論値31.84%)含有するものであった。
【0114】
<合成例11> エチレン−co−アクリル酸エチル共重合体と反応性紫外線吸収剤−2との縮合による重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−2の合成
合成例10と同様に行ない、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−2を得た。GPCによって測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量31000、重量平均分子量47500であった。これは軟化点が官能基として、2−(5’−クロロ−ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ基を28.2%(理論値29.8%)含有するものであった。
【0115】
<合成例12> 反応性紫外線吸収剤−5を使用したポリエステル樹脂の重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−3の合成
反応容器に冷却管、温度計、水分分取装置、攪拌装置を設置し、テレフタル酸ジメチルを110.6部、1,4−ブタンジオール16.2部、反応性紫外線吸収剤−5を90.3部、ジブチル錫オキシド0.1部仕込み、窒素を流しながら150℃に加熱し溶融させた。ついで、さらに加熱し165℃にしたところ、メタノールの留出が始まった。4時間かけて230℃にし、1時間縮合を行い、ついでその温度で徐々に減圧して5.5mHgまで減圧し、2時間重合を行なった。
【0116】
ついで、冷却し取り出した。黄色で比較的もろい透明の樹脂が得られた。これをGPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量5700、重量平均分子量10030であった。また熱分析の結果、Tgは69℃であった。これは2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を27.4%含有するものであった。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−3とする。
【0117】
<合成例13> 反応性紫外線吸収剤−6を使用したポリエステル樹脂の重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−4の合成
合成例12と同様にして、反応性紫外線吸収剤−6を使用して、黄色で脆い透明樹脂である重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−4を得た。これをGPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量8000、重量平均分子量16000であった。また熱分析の結果、Tgは53℃であった。これは2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を25.2%含有するものであった。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−4とする。
【0118】
<合成例14> 反応性紫外線吸収剤−5を使用したポリウレタン樹脂の重合体結合紫外線吸収剤−5の合成
合成例12と同様の装置を使用し、イソホロンジイソシアネート83.1部、ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)50部、反応性紫外線吸収剤−5が15部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸20部、ジブチル錫ジラウレート0.02部、アセトン35部を仕込み、80℃に加熱して4時間反応させた。イソシアネート量が5.15%になったところで、激しく攪拌しながらイソホロンジアミン23部、アンモニア水(28%)9.1部、水417部を一度に添加して、鎖延長及び中和自己乳化させた。
【0119】
ついで減圧しながらアセトンを留去した。得られたポリウレタン分散液の平均粒子径を測定したところ、80nmであった。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5とする。2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ基を約5%含有するものであった。
【0120】
<合成例15> 反応性紫外線吸収剤−8を使用したアクリル樹脂系重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−6の合成
合成例12と同様の装置を使用し、トルエン80部、酢酸ブチル20部、スチレン40部、実施例で得られた反応性紫外線吸収剤−8を60部仕込み、さらにアゾビスイソブチロニトリル3部を仕込み、80度に加熱した。溶液が黄色透明になり、徐々に粘度が上がっていった。この温度で8時間重合し取り出した。GPCで分子量を測定したところ、数平均分子量10000、重量平均分子量16000が得られた。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−6と称する。これは2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を34%含有するものであった。
【0121】
<合成例16> 反応性紫外線吸収剤−9を使用したアクリル樹脂系重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−7の合成
合成例15と同様に操作し、溶剤組成トルエン/酢酸ブチル=8/2、メタクリル酸エチル/メタクリル酸ブチル部/メタクリル酸ヒドロキシエチル/反応性紫外線吸収剤−9=20/25/10/45の重量比で得られた。数平均分子量12000、重量平均分子量23500。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−7とする。これは2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を25%含有するものであった。
【0122】
<合成例17> 反応性紫外線吸収剤−8を使用したアクリル樹脂系重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−8の合成
合成例12と同様の装置を使用して、水150部、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルモノスルホン酸ナトリウム3部、過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、80℃に加熱した。ついで、別容器にメタクリル酸エチル20部、アクリル酸ブチル30部、メタクリル酸ヒドロキシエチル5部、反応性紫外線吸収剤−8を45部攪拌して溶解させモノマー混合物を2時間にわたって滴下した。その温度で6時間熟成し、ラッテクス型の重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を得た。これを重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−8とする。これは2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェニル基を25%含有するものであった。粒度分布計にて平均粒径を測定したところ、185nmであった。
【0123】
<応用例1> 塗料への応用
カルボキシル基含有熱硬化性アクリル樹脂(ワニスでの酸価:10、固形分:50%、溶媒:ソルベッソ100/n−ブタノール(85:15)混合溶媒)140部、メトキシメチルメラメン樹脂(固形分:60%、溶媒:メタノール/イソプロパノール/イソブタノール:50:35:15)50部、ソルベッソ100/n−ブタノール(85:15)混合溶媒40部、反応性紫外線吸収剤−3を6.5部混合、溶解し、鋼板用表面塗装樹脂溶液を調製した。
防錆処理及びアンダーコートをした鋼板に塗布し、乾燥後、硬化を140℃、30分の条件で行なった。サンシャイン型ウエザオメーターで塗膜の耐候性試験を行なった。長期間高い光沢保持率を示し、優れた効果を示した。
【0124】
反応性紫外線吸収剤−3の代りに、反応性紫外線吸収剤−5、6、7及び重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−7を使用した場合も同様の効果が得られた。これは紫外線吸収剤の水酸基が塗料中のメラミン系架橋剤と反応して、また重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は高分子量であることによって塗膜からの加熱乾燥による揮発、ブリードを抑えることによって長期性能を発揮したと考えられる。
【0125】
<応用例2> 水性塗料への応用
メチルメタクリレート−エチルアクリレート−アクリル酸(64:32:4)共重合体ラテックス(固形分40%)33部、酸化チタン白色顔料22部、マイカ3部、タルク7部、3%ヒドロキシエチルセルロース水溶液10部、顔料分散剤1部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1部、エチレングリコール2部、シリコーン消泡剤0.5部、防腐剤0.5部、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−8を0.5部及び水15部の配合処方の屋外用白色エマルジョン塗料を調製した。各種屋外建造物に白色の塗装を行った。ウェザーオーメーターにて耐候性試験を行ったところ、600時間後も、表面のクラックや黄変がなく、長期間性能を保持した。
【0126】
<応用例3> グラビヤインキへの応用
カルボキシル基含有塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体20部、反応性紫外線吸収剤−3を0.5部、を酢酸ブチル−メチルイソブチルケトン−キシレン混合溶媒(43:20:20)70部に溶解し、それに青色は銅フタロシアニンブルー顔料を9部、赤色はジメチルキナクリドン顔料を10部、黄色は黄色ポリアゾ顔料を11部、また黒色はカーボンブラック顔料8部をそれぞれ加えてボールミルに仕込み16時間分散させた。その97部にシリカを3部添加、混合し、更にビウレット結合を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートの75%溶液2.7部を加え、混合し、それぞれ青色、赤色、黄色及び黒色インキ組成物とした。
【0127】
半硬質塩化ビニルフィルムの表面にグラビア印刷方式で柄を印刷した。着色インキの乾燥は常温で行い、次いで30〜40℃の恒温室にてエージングし、4色印刷の模様のついた塩化ビニルシートが得られた。優れた耐候性を示した。反応性紫外線吸収剤−3の変わりに、反応性紫外線吸収剤−4、5、6、7及び重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−7を使用した場合も同様の効果が得られた。
【0128】
<応用例4> 電子写真乾式現像剤への応用
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とフマル酸からなるポリエステル樹脂(軟化点105℃、ガラス転移点53℃、数平均分子量6000)の微粉末67部に銅フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)30部、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5を3部添加して、攪拌混合して後、3本ロールミルにて顔料を微細に分散混練し、冷却、粗砕して青色顔料を30%で含有する高濃度着色組成物の粗砕品を得た。これをスライドガラスにのせて加熱溶融させて顕微鏡で観察したところ、顔料粒子はすべて微細に分散しており、粗大粒子は認められなかった。
【0129】
ついで、この青色顔料を含む高濃度着色組成物11部、クロム錯塩系負電荷制御剤を3部、上記で使用したポリエステル樹脂86部と常法によって混練し、冷却後粗砕した後、ジェットミルにて微粉砕し、紛糾して5〜20μmの微粉末を得た。流動化剤としてコロイダルシリカを添加し、キャリアの磁性鉄粉と混合し、シアン色電子写真乾式現像剤として、フルカラー電子写真複写機にて複写をし、鮮明なシアン色画像が得られた。
【0130】
同様にして、マゼンタ色として、ジメチルキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)及びフタルイミドカジメチルキナクリドンを使用してマゼンタ色電子写真乾式現像剤、黄色としてポリ縮合系黄色顔料(C.I.ピグメント128)を使用して黄色電子写真乾式現像剤、ブラック色としてカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)及びフタルイミドメチル化銅フタロシアニンブルーを使用してブラック色電子写真乾式現像剤を得た。これら4色を電子写真乾式現像剤として、フルカラー電子写真複写機にて複写をし、鮮明な色画像が得られた。
【0131】
このようにして得られた4色の電子写真乾式現像剤をフルカラー電子写真複写機にて複写をし、得られた画像をカーボンアーク型フェードメーターにて耐侯性試験を行ったところ、鮮明な画像が長期にわたって保持される結果であった。重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5の変わりに−6で行った場合も同様の性能を示した。
【0132】
<応用例5> UVインキへの応用
UV硬化性インキを次の如く調整した。ポリウレタンポリエステルジオール(テレフタル酸−セバシン酸−エチレングリコール−ネオペンチルグリコールの共縮合ポリエステルジオール、平均分子量:2、000)66.7部、ヒドロキシプロピルメタアクリレート19.2部、イソホロンジシソシアネート22.2部を反応させてえられた紫外線硬化性ウレタン系コーティング剤70部、トリメチロールプロパントリアクリレート15部、ネオペンチルグリコールジアクリレート5部、オリゴエステルアクリレートモノマー5部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン3部、2,2−ジエトキシアセトフェノン2部、イソプロパノール45部、トルエン45部、酢酸エチル60部、反応性紫外線吸収剤−80.3部を攪拌混合した。
【0133】
ついでポリカーボネート板に3g/m2、スプレー塗装し、高圧水銀灯160w/cm×3本、50m/minで硬化させた。比較として、実施例の代わりに市販の紫外線吸収剤を加えたもの、または紫外線吸収剤を添加していないものを作成し、同様に塗布、硬化させた。
【0134】
得られた塗装されたポリカーボネート板をアイスーパー、83℃にて所定時間紫外線を200時間、400時間、600時間照射し、ポリカーボネート板の黄変度を照射していない塗装板と比較したところ、200時間で、紫外線吸収剤を添加してないものは黄変したのに対し、市販品及び本発明の反応性紫外線吸収剤は変色していない。しかし400時間では、市販品も黄変色したのに対し、本発明の反応性紫外線吸収剤を組み込んだものは変色していなかった。さらに600時間では、市販品も紫外線吸収剤を添加していないブランクも同等の黄変をしめしたが、本発明の反応性紫外線吸収剤では殆ど変色していなかった。
【0135】
この結果、ブランクは黄変していくのに対して、実施例及び市販の紫外線吸収剤を添加したものは初期には効果がある。しかし時間がたつにつれて市販紫外線吸収剤は効果が維持されないが、実施例のものは効果が持続している。これは本発明の反応性紫外線吸収剤が不飽和結合を含有し、塗膜で硬化することによって塗膜中に保持され、効果が持続するに対して、市販の紫外線吸収剤は徐々にブリードして、空気の流れにより塗膜表面から消失することによって、効果が持続されないと考えられる。
【0136】
<応用例6> ポリプロピレン樹脂系成型物への応用
自動車用複合材料着色用マスターバッチを以下のようにして調製した。プロピレンブロック共重合体95部、LLDポリエチレン5部、タルク10部、酸化チタン20部、群青20部、酸化鉄4部、黄色酸化鉄3部、カーボンブラック8部、ポリエチレンワックス20部、ステアリン酸カルシウム5部、ステアリン酸マグネシウム5部、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1を10部高速混合機で均一に混合し、押出し成型機で180℃で押し出し、ペレット状の着色用マスターバッチを得た。次いで、自動車用成型部品用複合材料(樹脂成分はポリプロピレン/エチレン・プロピレンゴム/アイソタクチックポリプロピレンよりなり、タルクを20%含有する)100部、上記で得た顔料マスターバッチを3部、カルシウムステアレート0.1部をタンブラーで混合し、射出成型機により成型温度220℃、背圧15kg/cm2で成型した。
【0137】
得られたテストピースは引張り、曲げ、アイゾット衝撃強度、引張り伸度、曲げ弾性率などの物性試験で充分優れた結果を示し、着色剤も均一に着色されており、耐候性促進試験でのクラック発生や変色がなく優れたものであった。上記で使用した重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1に変えて、−2を使用し、同様に成型物の物性の向上が見られた。
【0138】
<応用例7> ポリエチレン樹脂系フィルムへの応用
低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR:12)44.4部に合成例10で得られた重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤55.6部をミキシングロール(ロール表面温度:120℃)で混練し、シートとして引き出し、ペレタイザーで約3×3×2mmの重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むマスターバッチを得た。このマスターバッチは2−(ヒドロキシフェニル)−2−ベンゾトリアゾール基を16.7%含有する。
【0139】
ついで同様の樹脂である低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR:12)を99.4部使用して、この上記で得たポリエチレンマスターバッチを0.6部(2−(ヒドロキシフェニル)−2−ベンゾトリアゾール基で0.1%)を混合機でブレンドし、30m/mのインフレーション押出し機でそれぞれ厚み50μのフィルムを得た。また、比較のために、2−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシ−フェニル)−2H−5−クロル−ベンゾトリアゾール(市販品)を0.1%になるように低密度ポリエチレンに添加し、混練し、インフレーション押出し機で厚み50μのフィルムを得た。
【0140】
得られた重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むポリエチレンフィルムの紫外線劣化防止能を見るために耐候性促進試験機(サンシャイン型ウエザオメーター、63℃、スプレイサイクル:12分/時)で耐候試験を行い、フィルムの紫外線劣化の程度をフィルムの伸び率の変化(引張速度:200mm/分)で判定し、市販品紫外線吸収剤のフィルムと比較した。未添加が特に破断点強度が経時的に大きな劣化が見られたのに対し、紫外線吸収剤成分を添加したものはいずれも変化は少なく、効果が認められた。特に重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むフィルムは破断点強度の残率が著しく少なく紫外線劣化防止の効果の長期間の持続性に優れていることを示している。公知の紫外線吸収剤では強度が低下し、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に劣る結果を示した。これは添加した公知の機能剤が低分子量であることからブルーミングないし揮散し、有効成分の含有量が減少したためと考えられる。
同様に重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−2も同様の効果を示した。
【0141】
<応用例8> 写真印画紙への応用
粉末の群青顔料(C.I.ピグメントブルー29)100部、粉末のアゾ系赤色顔料(C.I.ピグメントバイオレット247)2.5部及びポリエチレンワックス(平均分子量:2000;密度:0.93)100部、容量1.5リットルのテストニーダーを用いて混練し、得られた混練物を常温で粉砕した。この粉砕物6.0部と低密度ポリエチレン(MFR:3.0;密度:0.927)100部を30mmの同方向2軸押出機を用い、150±10℃で混練造粒してブルーイングマスターバッチを得た。このブルーイングマスターバッチ4.8部と白マスターバッチ(酸化チタン分50.0%、低密度ポリエチレン(MFR:4.5;密度:0.917))20部及び上記の低密度ポリエチレン100部、及び重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1を1部とを充分に混合し、30mmTダイラミネーターを用い、成形温度320℃で印画紙用支持体基紙(坪量150g/m2、針葉樹晒硫酸パルプ/広葉樹晒亜硫酸パルプ=2/8重量比)のパルプを使用)の表面に厚み20μmの被覆を形成した。良好な外観の紙被覆体がえられた。これをカーボンアーク型フェードメーターで耐光試験を行った。50時間と100時間照射し退色を見た。その結果100時間の照射では退色は見られなかった。
なお、本文中のMFRは、JISK7210に従って荷重2.16kg、測定温度190℃の条件で測定した値である。MFRの単位は(g/10min)、密度の単位は(g/cm3)である。
【0142】
<応用例9> 水性接着剤への応用
ポリテトラメチレングリコール(平均分子量約1000)−ジメチロールプロピオン酸−イソホロンジイソシアネート−ジエチレントリアミン(247:24:124:5)のアニオン性ウレタン尿素樹脂をトリエチルアミンで中和した水性分散液(固形分40%)100部に重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5を5部、カルボジイミド系架橋剤(大日精化社製、エマフィクスGT)を3部加えて水性接着剤組成物を調製した。
【0143】
厚さ20μのコロナ放電処理した濡れ指数40ダインのポリプロピレン(OPP)フィルムに上記の水性接着剤組成物コーターを使用し、固形分で2.5μの厚さになるように塗布し、乾燥後直ちに濡れ指数38ダインの厚さ60μのポリプロピレン(CPP)フィルムをラミネートロールを使用して約60℃にてドライラミネートした。ラミネートフィルムは40℃にて48時間熟成後、幅15mmの試験片を作成し、シッパー試験機を使用して引っ張り強度100mm/分、25〜26℃で接着強度を測定したところ、168g/15mmを示した。重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5を入れなかったものは184g/15mmを示した。
【0144】
これをカーボンアーク型のフェードメーターにて100時間、紫外線を照射し、その後、同様にシッパー試験機を使用して引っ張り強度100mm/分、25〜26℃で接着強度を測定したところ、重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−5を入れた物は135g/15mmを示した。紫外線吸収剤を入れなかったものは大幅に低下し、67g/15mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物又は少なくとも1個のハロゲン基含有するアルコール性水酸基を持つ化合物を反応させることによって、分子中に2−(ベンゾトリアゾーリル)ヒドロキシフェノキシ残基、およびアルコール性水酸基又はアルコール性水酸基及びエポキシ基を有する反応性紫外線吸収剤をそのまま使用するか、更に不飽和結合を導入した反応性紫外線吸収剤を使用することによって、紫外線、電子線や可視光などのエネルギー線の作用、熱やラジカル重合開始剤の作用および/またはイオン重合開始剤の作用により付加重合反応または付加結合反応により硬化することによって反応性紫外線吸収剤が物品中に保持され、ノンブリードによる長期性能保持、耐抽出性、耐熱性に優れた反応性紫外線吸収剤が得られ、さらに該反応性紫外線吸収剤と他の重合性を持った化合物と付加縮合、付加重合することによって、または付加重合性基を導入した反応性紫外線吸収剤と他の不飽和結合を有するモノマーと付加重合するによって得られる重合体分子の主鎖に含有するかおよび/または側鎖に結合させて成る重合体結合ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤も同様の効果を発揮することができ、物品の性能維持向上に効果を発揮するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール系化合物の残基を、連結基(不飽和二重結合の残基を除く)を介して、重合体分子の側鎖または主鎖に有することを特徴とする重合体結合紫外線吸収剤。
【請求項2】
重合体が、ポリオレフィン系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリビニル系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、ポリシリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素系重合体、エポキシ樹脂系及びメラミン系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の重合体結合紫外線吸収剤。
【請求項3】
連結基が、少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物の残基、またはアルコール性水酸基と少なくとも1個のハロゲン基を有する化合物の残基である請求項1に記載の重合体結合紫外線吸収剤。
【請求項4】
トリアゾール系化合物の残基の含有量が、10〜90重量%である請求項1に記載の重合体結合紫外線吸収剤。

【公開番号】特開2007−169660(P2007−169660A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67200(P2007−67200)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【分割の表示】特願2002−56283(P2002−56283)の分割
【原出願日】平成14年3月1日(2002.3.1)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】