説明

重合反応装置

【課題】ポリオレフィン等の粉状の重合体を製造する際に生じた塊化物を検知する振動センサを備え、塊化物による装置の損傷や運転停止を防止しうる重合反応装置を提供。
【解決手段】攪拌翼を備えた重合反応器に原料モノマーと重合触媒を供給して互いに接触させ、重合反応器内で生成する粉体を攪拌翼で攪拌しながら重合体を製造する重合反応装置において、前記重合反応器内で塊化物が発生した際、該塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を振動センサで検知し、該振動センサからの電気信号を検出手段に送信し、塊化物の発生量を検出する塊化物検知装置を備えることを特徴とする重合反応装置;振動センサは、0Hzを超え10000Hz以下の周波数における振動を検知するものであり、重合反応器の外表面、かつ攪拌翼に近接する位置に設置されることを特徴とする重合反応装置などによって提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌翼を備えた重合反応装置に関し、さらに詳しくは、例えばポリオレフィン等の粉状の重合体を製造する際に生じた塊化物を検知する振動センサを備え、塊化物による装置の損傷や緊急な運転停止を防止しうる重合反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重合反応器に原料モノマーと重合触媒を供給して互いに接触させ、ポリオレフィン等の粉状の重合体を製造する場合に、重合反応器内で粉体が塊化することがある。この塊化物の量が少ない場合は重合反応装置を継続的に運転できるが、塊化物が多くなると重合体の製造に支障をきたし、最終的には重合反応装置を停止させて塊化物を除去する必要が生じる。
【0003】
従来より、塊化物を検知する装置や方法はいくつか知られており、たとえば、ポリオレフィンの粉体を製造する縦型の重合反応装置から粉体を移送する配管に、振動センサを備えた配管用閉塞検知装置を設けることが提案されている(特許文献1参照)。これは、配管を流れる流体の振動を振動センサで測定し、この振動センサからの電気信号に基づき、配管の閉塞を検知しようとするものであり、直接塊化物を検知するものではない。
【0004】
また、重合反応装置自体における塊化物を検知するものとしては、例えば、粉体などが流動化している重合反応器の静電容量を測定することにより、内壁に付着した塊化物を検知することが提案されている(特許文献2,3参照)。これは、重合反応装置の内壁にこびりついた塊化物を検知するものである。また同様に重合反応装置の内壁に生じた塊化物を検知するものとして、放射線を用いて検知する装置も知られている(特許文献4参照)。これらの従来技術は、いずれも付着した塊、即ち、動かない塊を検知するものであるから、その検知は比較的容易である。
【0005】
ポリオレフィンの製造では、このような重合反応装置とは別に、重合反応器内に攪拌翼を有するタイプの重合反応装置も使用されている。このようなタイプの重合反応装置として、例えば、円筒状容器内に水平回転軸を有する攪拌機を備えた横型反応器が知られている(特許文献5参照)。この場合、横型反応器内で塊化物(以下、単に塊ともいう)が発生して、それが内壁に付着しても、攪拌翼が回転することによって削り取られるため、通常は一定以上の厚さに付着することはない。しかし、攪拌翼により塊が動かされるために、反射波や吸収波が常に変化することになるので、従来の検知手段では検知しにくかった。このような塊は、重合反応器内に留まっていると重合反応場を不均一にするため、安定的な重合体の製造が出来難くする虞を生じ、一方、反応器外へ塊が送り出されると、次の配管やガス分離装置(ブローケース)を閉塞させる虞がある。
【0006】
このようなことから、攪拌翼を有する重合反応器であっても、攪拌翼により動いている塊が容易に検知でき、重合反応場を不均一にすることなく、安定した性状の重合体を製造でき、たとえ反応器外へ塊が送り出されても、下流の配管やガス分離装置(ブローケース)を閉塞させることのない重合反応装置の出現が望まれていた。
【特許文献1】特開平6−174200号公報
【特許文献2】特開平4−361150号公報
【特許文献3】特開平5−86109号公報
【特許文献4】特開昭57−28110号公報
【特許文献5】特開昭63−223001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粉状の重合体を製造するための攪拌翼が備えられた重合反応装置において、重合体の製造過程で生じる可動な塊化物を検知することを目的とする。そして、装置内で塊が生じた場合に、あらかじめ設定した基準以上に塊の量が多くなりそうなときに、警報を発したり、装置をシャットダウンすることを可能にし、装置の破損を未然に防ぐことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、攪拌翼を備えた重合反応装置においては、重合反応装置内で生成する粉体と攪拌翼とが接触あるいは衝突して振動を生じるが、塊化物が発生すると、塊化物が攪拌翼と接触あるいは衝突して、前記とは異なる特定の周波数帯域にも振動が生じることから、この特定の周波数帯域の振動を振動センサによって検知することで塊の発生状況を的確に把握できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、攪拌翼を備えた重合反応器に原料モノマーと重合触媒を供給して互いに接触させ、重合反応器内で生成する粉体を攪拌翼で攪拌しながら重合体を製造する重合反応装置において、前記重合反応器内で塊化物が発生した際、該塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を振動センサで検知し、該振動センサからの電気信号を検出手段に送信し、塊化物の発生量を検出する塊化物検知装置を備えることを特徴とする重合反応装置が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、生成する粉体は、ポリプロピレン系重合体であることを特徴とする重合反応装置が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、重合反応器は、横型反応器であることを特徴とする重合反応装置が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、重合反応器は、粉体の移動を制限する堰を有する横型反応器であることを特徴とする重合反応装置が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、振動センサは、0Hzを超え10000Hz以下の周波数における振動を検知するものであることを特徴とする重合反応装置が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1又は5の発明において、振動センサは、重合反応器の外表面、かつ攪拌翼に近接する位置に設置されることを特徴とする重合反応装置が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、前記検出手段は、振動センサから送信される周波数帯の信号のうち、2000〜3000Hzの周波数帯、及び5000〜9500Hzの周波数帯の信号を塊化物に由来するものとして検出することを特徴とする重合反応装置が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、検出手段から塊化物の信号を受けて、その信号が攪拌翼に損傷を与えるか、あるいは重合装置を閉塞させる強度に近づいた場合に警報を発する警報手段を備えることを特徴とする重合反応装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重合反応装置は、攪拌翼が備えられた重合反応器で原料ガスと重合触媒を接触させ、生成する粉体を回転する攪拌翼で攪拌しながら重合体を製造する重合反応装置において、前記重合反応器内で発生する塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を検知する振動センサと、該振動センサからの電気信号に基づき塊化物の発生量を検出する検出手段とを備えることから、塊化物が攪拌翼と激しく衝突することにより生ずる攪拌翼の損傷や重合反応装置の運転停止を未然に防止しうる。
さらに、検出手段から塊化物の信号を受けて、その信号が攪拌翼に損傷を与え、あるいは重合反応装置の配管などを閉塞させる強度に近づいた場合に警報を発する警報手段を備えることで、その効果を一層確実なものとすることができる。また、重合反応器が複数個、直列に連結されている重合反応装置では、品質の良い重合体をより安定的かつ効率的に製造できるから、工業的価値が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の重合反応装置について、項目毎に詳細に説明する。
【0014】
本発明の重合反応装置は、攪拌翼を備えた重合反応器に原料モノマーと重合触媒を供給して互いに接触させ、重合反応器内で生成する粉体を攪拌翼で攪拌しながら重合体を製造する重合反応装置において、前記重合反応器内で塊化物が発生した際、該塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を振動センサで検知し、該振動センサからの電気信号を検出手段に送信し、塊化物の発生量を検出する塊化物検知装置を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に用いられる重合反応装置は、ポリオレフィンやポリスチレン等、粉状の重合体を製造するための装置であって、重合反応器に攪拌翼が備えられているものに好ましく適用される。
得られる粉体(重合体)としては、同一または異なる炭素数4〜20のαオレフィンが重合したポリオレフィンが好ましく、αオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンのほかに、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン−1、1−オクテン−1、1−デセン等が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。特に好ましいのはポリプロピレン、プロピレン系ブロック共重合体等のプロピレン系重合体である。
【0016】
また、重合反応は粉状の重合体が生成する限りにおいて、気相法、スラリー法、バルク法のいずれも用いることができる。スラリー法、バルク法では、反応器の型式としてループ型反応器の様な二重管方式のものもあるが、本発明においては、竪型円筒状の攪拌槽型反応器に適用される。気相法は、スラリー法、バルク法とは異なり、重合反応器内に液体が存在しないか少ないので塊化物の振動を効果的に検知することが出来るため、本発明では気相法が好ましい。
【0017】
1.重合反応器
攪拌機を備えた重合反応器は、使用する原料、反応条件、反応形態、生成物等により、その反応に適する限りにおいて、形状、大きさ、材質等に特に限定されず、既存のものから、任意に選択し使用することが可能である。横型反応器でも縦型反応器でも良いが、本発明においては、塊化物と攪拌翼との接触または衝突によって生ずる振動を振動センサによって検知するように構成しているため、好ましいのは横型反応器、特に攪拌機を備えた横型反応器である。
【0018】
重合反応器の配列については、本発明の目的を阻害しない限り、任意の方法を用いることができる。重合反応器は、一つでも複数でも良い。槽数を増やすことなく、滞留時間分布を更に狭くする方法として、重合反応器の中にパウダーの移動を制限する堰を設けることもできる。堰の形態としては、重合反応器に固定された固定堰でも良いし、回転軸に固定された回転堰を用いても良い。重合反応器が複数の場合には、直列に繋いでも良いし、並列に繋いでも良い。特にプロピレンとその他のモノマーとのブロック共重合体を製造する場合には、少なくとも直列に繋がった2個の重合反応器を含む並び方にすることが望ましい。
【0019】
本発明において、攪拌翼は、モーターで駆動される回転軸に取り付けられ、回転軸は鉛直方向または水平方向に向いていても良い。攪拌翼の形状としては、パドル、ヘリカルなど任意のものを用いることができる。このうち、水平方向に向けた回転軸に多数のパドル翼が取り付けられたものを用いる方法が最も好ましい。
【0020】
重合方法としては、バッチ法と連続法のどちらを用いても良いが、生産性の観点から、
連続法を用いることが望ましい。特に好ましい例としては、2〜4個の重合反応器を直列に繋いだ重合反応装置を用いて連続法で重合する方法を例示することができる。
【0021】
重合触媒は、チーグラー系触媒や担持型のメタロセン系触媒などが用いられる。チーグラー系触媒は、固体触媒と有機アルミニウム化合物、および必要に応じて電子供与性化合物からなるものが挙げられる。固体触媒は、少量のオレフィン重合体がさらに担持された予備活性化処理したものが好ましい。また、メタロセン触媒は、共役五員環などを少なくとも一つ以上有する遷移金属化合物を使用した触媒であり、この触媒を担持型とすれば、得られるポリマーが粒子状となり、反応器への付着やポリマー同士での融着が無くなるとともに、重合後の気力移送を可能となるだけでなく、気相重合が可能となる。
【0022】
重合温度は、30〜120℃、好ましくは50〜90℃程度である。重合圧力は0.1〜6MPa、好ましくは0.1〜4MPaである。また、重合体の流動性が適当なものとなるように分子量(MFR)調整剤を使用することが好ましく、調整剤としては水素が好ましい。MFR(試験条件:230℃、2.16Kg荷重)は、最終重合体の用途によるが、好ましい範囲としては0.1〜3000g/10分、好ましくは0.1〜2000g/10分、さらに好ましくは0.1〜1000g/10分である。
【0023】
次に、図1に示したフローシートによって、本発明の重合反応装置を用いたポリプロピレン製造の具体例を説明する。本発明の重合反応装置は、攪拌翼7を有する横型攪拌重合反応器5、気液分離槽8、凝縮機9、圧縮機13、ブローケース14などから構成されている。配管1ならびに2から、予備活性化処理した固体触媒、有機アルミ化合物が連続的に供給され、配管11からプロピレンが供給される。プロピレンの供給方法は、反応器に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0024】
この時、重合反応器内の気相中の水素濃度を所定の水素/プロピレンモル比に維持するように、水素ガスを循環配管12より連続的に供給して、第1段重合体のMFRが調節される。横型攪拌重合反応器5の内部では、気体と粉体の混合相が形成され、重合反応器の下部配管12から循環ガスが、上部配管11からは、液化プロピレンのようなクエンチ液体が投入される。重合反応器5内のガスと蒸気は、蒸気スペースの全体にわたって自由に循環して相互に混合される。重合反応器5内で発生する反応熱は、この時、液化プロピレンの蒸発潜熱によって除去される。すなわち、重合反応器5の槽上口から注入され、攪拌翼7で撹拌されながらポリマー粒子や原料ガスと接触し、気化のための熱を吸収し重合反応熱を除去する。この場合に用いられる液化プロピレン量は、生成ポリマー量に比べ数倍必要であり、気化ガス量は非常に多量となる。横型攪拌重合反応器5内で製造されたポリプロピレンの粉体は、当該重合反応器5とブローケース14との重力差ならびに圧力差によって、必要により第2段重合反応装置へと輸送される。
【0025】
一般的に、重合反応により触媒粒子は、ポリマー粒子へと徐々に成長していく。上記のように攪拌翼を有する横型重合反応器でプロピレンの重合を行う場合、重合によるポリプロピレンの生成と機械的な撹拌の2つの力により、これらの粒子は、徐々に成長しながら重合反応器の回転軸に沿って進んでいく。そのため、重合反応器の上流から下流に向かって、成長速度すなわち滞留時間のそろった粒子が経時的に並ぶことになる。すなわち、堰をもつ横型重合反応器では、フローパターンがピストンフロー型となり、完全混合槽を数台直列に並べた場合と同程度に、滞留時間分布を狭くする効果がある。これは、攪拌翼をもたない重合反応器には見ることができない、優れた特徴であり、単一の重合反応器で2個、3個又はそれ以上の重合反応器と同等な固体混合度を容易に達成することができる点で、経済的に有利である。
【0026】
図2は、本発明が適用される横型攪拌重合反応器の内部構造を示している。横型攪拌重合反応器5の内部は、3つの固定堰20によって4つのセクションに区画され、回転軸21に対して上下左右方向に幅wの攪拌翼7がセクション毎に10〜12枚取り付けられている。幅wの攪拌翼7と厚さTの固定堰20の間には間隙S、攪拌翼7と重合反応器5の内壁との間には間隙Lがある。重合反応器内でポリマーが重合されると、上流(左側)から下流(右側)に向かって、成長速度すなわち滞留時間のそろった粒子が経時的に並んで製造されることになる。
【0027】
ところが、横型攪拌重合反応器5内で塊化物が発生し、その量が著しく増えると、ブローケース14が閉塞され、横型攪拌重合反応器5からポリマーの抜き出しが困難となる事態や、乾燥機や、貯蔵タンクのロータリーフィーダーを詰まらせる事態が生じる。
【0028】
2.塊化物検知装置
本発明の重合反応装置は、重合反応器内で塊化物が発生した際、該塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を振動センサで検知し、該振動センサからの電気信号を検出手段に送信し、塊化物の発生量を検出するものである。
【0029】
本発明に用いられる振動センサは、攪拌重合反応器内で生成した塊化物と攪拌翼との接触音や衝撃音を電気信号に変換するものである。電気信号は、衝撃音(振動エネルギー)が電力、電流、電圧などの電気エネルギーに変換されたものであり、このような機能を有する振動センサとして、例えば、振動エネルギー(応力)がかかると、応力の大きさに相当する電気的分極が生じる圧電素子(圧電変換器)などが挙げられる。
振動センサの種類は、特に制限されるわけではないが、塊化物と攪拌翼が接触または衝突することにより生じた振動は、広範なピークをもつため、0Hzを超え10000Hz以下の振動を検知可能なものが好ましい。
【0030】
振動センサは、重合反応器5の外部表面に設置され、当該重合反応器と一体的に配設された攪拌装置に近接して配置させる。振動センサは、塊が発生しやすい場所に1個配置すればよいが、2個以上配置するのが好ましい。間隔をあけて配置した複数の振動センサから振動を検知し対比することで、塊が存在する位置をより正確に把握することができる。図1では、横型攪拌反応器1の外表面(底部)に、3個取り付けている。例えば重合反応器5の右端に振動センサを1個だけ配置したとすると、重合反応器5の左端、すなわち触媒導入口付近で塊が発生したとしても、振動センサまで離れすぎているので検知が遅れるなど検出精度が低下してしまうことがある。
【0031】
なお、回転軸が鉛直方向である縦型重合反応器では、攪拌翼が上下に長く、邪魔板をもつものが多い。このようなスラリー法、バルク法の重合反応器では、重合反応器の液相が存在する部分の外側表面に振動センサを1個取り付ければ良い。ただし、重合反応器内部は溶媒を含むスラリーであるため、気相法の場合よりも振動の検出精度が低下する。そのため、より感度の高い振動センサを選択するか、重合反応器内部の攪拌翼、あるいは邪魔板に直接振動センサを取り付けることが好ましい。
【0032】
図1では、重合反応器5の外表面(底部)に、振動センサを3個取り付けているが、いずれか1つ又は2つを作動させることもできれば、3つ同時に作動させてもよい。振動センサ15からの電気信号は、変換器16で交流信号に変換され、信号処理回路17に入力される。信号処理回路17で入力された特定周波数帯の電気信号は、平均化処理され、コンピュータ18に出力される。
塊化物と攪拌翼との衝突によって生ずる振動の振動数は、塊の大きさ、塊の個数によっても変化する。したがって、まず、塊化物の無い状態で振動センサによる測定を行い、これと塊化物を加えた状態で再度振動センサによる測定を行ってこれらを比較対照することにより、塊化物によって生ずる振動の振動数を、各々の重合反応器毎に予め設定することが必要である。
例えば、図3は、水平軸周りに回転する攪拌翼(パドル翼)を備えた横型重合反応器の胴体底部に振動センサを装着して、重合体の粉体のみで塊化物が無い状態で装置を運転し、その際に発生する振動を振動センサで測定したときのチャートである。0〜10000Hzの範囲を測定すると、1000〜2000Hzに振動が観測されており、これが、重合体の粉体と攪拌翼が接触または衝突することにより生じたことがわかる。
【0033】
一方、図4は、水平軸周りに回転する攪拌翼(パドル翼)を供えた横型重合反応器の胴体底部に振動センサを装着して、重合体粉体に対して重合体粉体の1/30の量の塊化物を存在させて装置を運転し、その際に発生する振動を振動センサで測定したときのチャートである。0〜10000Hzの範囲を測定すると、1000〜2000Hz、2600Hz、及び9200Hz付近に振動のピークが観測されている。図3と対比することにより、2600Hz、9200Hz付近のピークは、塊化物と攪拌翼が接触または衝突することにより生じたことがわかる。
塊化物と攪拌翼との衝突によって生ずる振動の振動数は、塊化物の堅さや攪拌翼の材質によっても変化する場合がある。重合反応器によっては、塊化物の堅さが同じでも攪拌翼の材質が脆いとか、攪拌翼の形状や寸法がダメージを受けやすいものであると、2600Hz、9200Hz付近のピークが小さくても装置の損傷につながる場合もある。
【0034】
本発明においては、これら塊化物に由来する振動を観測すると共に、その強度が一定以上に達したときは警報(アラーム)を発したり、あるいは装置を停止したりするプログラムを併用することができる。振動センサからの電気信号の振幅が所定の大きさであるか否かを判別し、この判別結果に応じて塊生成を検出する。該振幅が予め設定しておいたレベルを超えたときに後述する制御信号を警報手段に送る。この際に、電気信号の振幅が予め設定しておいたレベル(頻度)を超えたときにも、塊が多数発生したと判断して制御信号を警報手段に送る。この際に、前記電気信号を解析に適当な信号となるように、該電気信号に所定の処理、例えば波形整形などを施してもよい。
【0035】
前記警報手段は、振動センサから送信される周波数帯の信号のうち1000〜2000Hz、5000〜9500Hzの周波数帯の信号を継続的に検出して、2500〜3000Hz、9000〜9500Hzのいずれかの周波数帯の信号の強度が1000〜2000Hzの周波数帯の信号強度よりも大きくなったときに警報を発するように設定することが好ましい。すなわち、一例として、「1500Hz付近の振動強度に比べて2600Hz、9200Hz付近の振動強度が強くなった時点でアラームを発する」などのプログラムを設定することができる。前述したとおり、振動数や強度は、反応装置や攪拌翼の種類により異なる場合があるので、このようなプログラムは予め夫々の反応装置でモデル試験を行い、適切な周波数と強度を設定しておくことになる。
コンピュータ18は、これら運転によって得られたデータを蓄積し、警報を発した時の重合条件を出力し、随時参照できるようにプログラムしておくことができる。これにより、塊が発生しやすい運転条件を推測でき、一層安定的な操業が可能となる。
【実施例】
【0036】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
(重合反応器)
図1に示したステンレス鋼製の攪拌翼7(厚さ5mm)を有する横型攪拌重合反応器5(L/D=3.7、内容積100リットル)に、本発明に係る塊化物検知装置を取り付けた。なお、図示していないが、原料液化プロピレン補給配管11、原料混合ガス配給配管12のそれぞれ入り口付近には、堰が設けられている。塊化物検知装置は、振動センサ15を備えており、この振動センサ15は、重合反応器5の外表面(3箇所)に取り付けた。そして、予め塊がない場合と塊を存在させたときの振動を塊化物検知装置の振動センサで測定し、塊が粉体の1/30の重量存在すると図4のようになることを確認した。
【0038】
(重合工程)
配管1ならびに2より、予備活性化処理した固体触媒、有機アルミ化合物を連続的に供給し、反応温度65℃、反応圧力2.0MPa、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、ポリプロピレンの重合を行った。この時、重合反応器内の気相中の水素濃度を所定の水素/プロピレンモル比に維持するように、水素ガスを循環配管12より連続的に供給して、第1段重合体のMFRを調節した。
横型攪拌重合反応器5の内部では、気体と粉体の混合相が形成され、重合反応器の下部から循環ガスが、上部からは、液化プロピレンを投入した。横型攪拌重合反応器5内で製造されたポリプロピレンは、当該重合反応器5とブローケース14との重力差ならびに圧力差により輸送した。
【0039】
(塊の検知)
本発明に係る振動センサ15は、横型攪拌重合反応器5内で生成した塊化物と攪拌翼との衝撃音を電気信号に変換するものである。振動センサ15からの電気信号は、変換器16で交流信号に変換され、信号処理回路17に入力される。信号処理回路17で入力された特定周波数帯の電気信号は、平均化処理され、コンピュータ(PC)18に出力された。1000〜2000Hzの領域と、2600Hz、9200Hz付近に振動のピークが観測された。そして、2600Hzの振動ピーク強度は、1000〜2000Hzの強度に匹敵する強いものであった。
そこで、重合反応装置の運転を停止して、横型攪拌重合反応器5内を点検したところ、反応過程において粉体重量の1/27の重量に相当する量の塊化物が生成していた。
このようにして多量に発生した塊化物によりブローケース14が閉塞し、重合反応器5からポリマーの抜き出しが困難となる事態や、乾燥機・貯蔵タンクのロータリーフィーダーを詰まらせる事態を回避することができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の攪拌機を備える重合反応装置に塊化物検知装置を取り付けた構造を示す説明図である。
【図2】本発明が適用される横型攪拌重合反応器の内部構造を示す説明図である。
【図3】本発明の攪拌重合反応装置を塊化物が無い状態で運転した場合、発生する振動を振動センサで検出したときのチャートである。
【図4】本発明の攪拌重合反応装置を粉体と塊化物が存在する状態で運転した場合、発生する振動を振動センサで検出したときのチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1および2:触媒成分供給配管
3:原料プロピレン補給配管
4:原料補給配管(水素など)
5:重合反応器
6:攪拌モーター
7:攪拌翼
8:気液分離槽
9:凝縮機
10:未反応ガス抜き出し配管
11:原料液化プロピレン補給配管
12:原料混合ガス配給配管
13:圧縮機
14:ブローケース
15:振動センサ
16:変換機
17:信号処理回路
18:コンピュータ(PC)
20:固定堰
21:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌翼を備えた重合反応器に原料モノマーと重合触媒を供給して互いに接触させ、重合反応器内で生成する粉体を攪拌翼で攪拌しながら重合体を製造する重合反応装置において、
前記重合反応器内で塊化物が発生した際、該塊化物が攪拌翼と接触または衝突することにより生ずる振動を振動センサで検知し、該振動センサからの電気信号を検出手段に送信し、塊化物の発生量を検出する塊化物検知装置を備えることを特徴とする重合反応装置。
【請求項2】
生成する粉体は、ポリプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1に記載の重合反応装置。
【請求項3】
重合反応器は、横型反応器であることを特徴とする請求項1に記載の重合反応装置。
【請求項4】
重合反応器は、粉体の移動を制限する堰を有する横型反応器であることを特徴とする請求項3に記載の重合反応装置。
【請求項5】
振動センサは、0Hzを超え10000Hz以下の周波数における振動を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の重合反応装置。
【請求項6】
振動センサは、重合反応器の外表面、かつ攪拌翼に近接する位置に設置されることを特徴とする、請求項1又は5に記載の重合反応装置。
【請求項7】
前記検出手段は、振動センサから送信される周波数帯の信号のうち、2000〜3000Hzの周波数帯、及び5000〜9500Hzの周波数帯の信号を塊化物に由来するものとして検出することを特徴とする請求項1に記載の重合反応装置。
【請求項8】
さらに、検出手段から塊化物の信号を受けて、その信号が攪拌翼に損傷を与えるか、あるいは重合反応装置下流の配管を閉塞させる強度に近づいた場合に警報を発する警報手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の重合反応装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−126908(P2009−126908A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301814(P2007−301814)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】