説明

重合性モノマーと非重合性担体溶媒/塩の混合物/溶液の共フラッシュ蒸発

本発明は、概して、1つ以上の蒸気を減圧下で環境に供給する方法に関する。蒸気は、少なくとも1つの重合性構成要素を含み得る。ある場合には、少なくとも2つの構成要素は、蒸気を形成するために組み合わせられ得る。構成要素は、組み合わせられ、均一化され得る別々の蒸気流として提供され得る。本発明の方法は、また、基板の表面上の材料の堆積において有用であり得る。ある場合には、材料は、基板の表面上に、ポリマー層等の層を形成し得る。本発明は、基板の表面上の均質膜の形成を必要とする用途において有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、仮出願第60/899,735号(2007年2月6日出願)の正規出願(米国特許法第119条(e))である。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、フラッシュ蒸発技術を使用して、重合性モノマーを含む蒸気を供給し、ある場合には、重合性モノマーを基板表面上に堆積するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの産業は、ポリマー材料の薄い被覆を、選択された基板に堆積するための確実なプロセスを必要とする。このプロセスを行うための一手段は、モノマー流体の真空フラッシュ蒸発による。モノマー流体の連続的な液体の流れは、液滴の連続流に霧化される。次に、液滴は、材料の沸点またはそれ以上の温度であるが、液滴が蒸発する前に分解および/または重合を受ける温度以下に維持される加熱表面と接触し、連続的に蒸発する。次に、蒸気は、基板上に堆積され、続いて重合され得る。このプロセスは、参照することによって本明細書に援用される、特許文献1に詳述される。
【0004】
また、イオンまたは塩を含有するポリマー複合層の関連する必要性も存在する。そのような層は、イオン伝導度の増加等、特定の用途に対して、それらを重合モノマーのみから成るポリマーより優れたものにし得る種々の特性を示し得る。少なくとも1つのポリマー層を有する積層構造も、また、Li−S電池等の電気化学セルにおける使用のためのアノードの構成体等の電子デバイス、パケージング材料、および太陽反射鏡を含むが、これに限定されない種々の用途において有用であることが示されている。
【0005】
当初は、当業者は、ポリマー複合層の形成のための真空フラッシュ蒸発法の使用を避けていた。従来の見識により、塩を蒸発させるために必要な温度は高すぎるため、フラッシュ蒸発方法によるモノマーの蒸発において、塩を含むことができないと決め付けられていた。しかし、真空フラッシュ蒸発方法の使用は、薄い、より均一なポリマー層を作成する能力、ポリマー層内および/または下に閉じ込められたガスの減少、ポリマー層内でのより高い密度、および平滑な仕上げ面を含むが、これらに限定されないポリマー層を形成するための他の方法を越える、ある利点を提供する。
【0006】
参照することによって本明細書に援用される、特許文献2の発明者らは、モノマー溶液に溶解された塩は、完全に溶媒和される場合、真空フラッシュ蒸発方法によってモノマーとともに蒸発し、真空下で複合ポリマー層を形成するために使用し得ることを後に予想外に発見した。しかしながら、場合によっては、対象の特定の塩または他の物質は、モノマーにおいて十分に可溶性ではないため、フラッシュ蒸発を可能としない。加えて、特許文献2の特許に開示される技術は、モノマーと塩の事前混合を必要とするため、ポリマー複合層の正確な組成を調整することを困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,954,371号明細書
【特許文献2】米国特許第5,681,615号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、対象の塩または他の物質が、十分に可溶性ではないために、米国特許第5,681,615号の特許に開示される技術の適用を可能にしない場合においても、フラッシュ蒸発プロセスによるポリマー複合層の作成を可能にする装置および方法の必要性が存在する。また、ポリマー複合層の組成をより正確に調整するための装置および方法の必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モノマーの連続流を、モノマーの分解温度および重合温度の両方より下の温度で、真空環境に供給するステップと、モノマー流を、連続した第1の液滴流に霧化するステップと、混合物を形成するために、化合物を非重合性担体流体と組み合わせるステップと、混合物の連続流を、混合物およびその構成要素の熱重合および/または分解温度より下の温度で、真空環境に供給するステップと、混合物流を、連続した第2の液滴流に霧化するステップと、第1の蒸気および第2の蒸気をそれぞれ形成するために、第1の液滴流および第2の液滴流を別々に蒸発させるステップと、モノマー、化合物、および非重合性担体流体を含む複合蒸気を形成するために、第1の蒸気および第2の蒸気を組み合わせるステップと、複合蒸気を、複合蒸気またはその一部の沸点またはそれ以上の温度であるが、組み合わされた蒸気またはその一部が、蒸発する前に、熱重合および/または分解を受ける温度より下の温度に維持される、加熱表面と接触させることによって、複合蒸気を連続的に蒸発させるステップとを含む、真空環境においてモノマーを含む蒸気を供給する方法を提供する。
【0010】
本発明は、また、真空チャンバにおいて蒸発チャンバを提供するステップであって、蒸発チャンバは、少なくとも第1の蒸気および第2の蒸気を含み、第1の蒸気は、モノマーを含む、ステップと、モノマーの熱重合が開始される温度より下で第1の蒸気および第2の蒸気を加熱しながら、複合蒸気を形成するために蒸気を均質化するステップと、複合蒸気が基板の表面へ流れることを可能にするステップであって、表面は、複合蒸気またはその一部の沸点より下の温度で維持される、ステップと、モノマーを含む層を形成するために基板の表面上で複合蒸気の少なくとも一部を凝結するステップと、被覆を形成するために層を重合させるステップとを含む、真空チャンバにおいて基板の表面上に被覆を形成する方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、モノマーの蒸気を形成するために、真空下で加熱表面との接触によってモノマーをフラッシュ蒸発させるステップと、混合物の蒸気を形成するために、真空下で加熱表面との接触によって化合物および担体流体の混合物をフラッシュ蒸発させるステップと、真空チャンバにおいて真空下で、モノマーの蒸気および混合物中の化合物の蒸気を基板上で凝結するステップとを含む、モノマーを含む層を、真空環境において基板上に堆積する方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、減圧環境において、連続した、重合性種を含む第1の液滴の第1の流れを、種の分解温度および重合温度の両方より下の温度で提供するステップと、第1の蒸気を形成するために、第1の液滴流を、その熱重合および/または分解温度より下の温度で連続的に蒸発させるステップと、連続した、第2の種および担体流体の混合物を含む第2の液滴の第2の流れを、第2の種および流体の熱重合および/または分解温度より下の温度で提供するステップと、第2の蒸気を形成するために、第2の液滴流を、その熱重合および/または分解温度より下の温度で連続的に蒸発させるステップと、を含む、気圧に対する減圧下にて重合に好適なポリマー前駆体構成要素の混合物を供給する方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、減圧環境において、環境の異なる領域で、その一部が互いに対して異なる構成要素を含む少なくとも2つの別々の蒸気を提供するステップであって、蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含み、蒸気は、少なくとも均質化するステップの前に、前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下の温度に維持される、ステップと、複合蒸気を形成するために蒸気を均質化するステップと、その上にポリマー前駆体物質を形成するために、少なくとも複合蒸気の構成要素の一部を基板表面上で凝結するステップと、ポリマー材料を基板表面上で形成するために、ポリマー前駆体物質を重合させるステップとを含む、気圧に対する減圧下にてポリマー材料を基板の表面上で形成する方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、その一部が互いに対して異なる構成要素を含む、少なくとも2つの別々の蒸気を受容するように構成される蒸発チャンバであって、蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含む、チャンバと、第1の蒸気注入口および第2の蒸気注入口であって、各蒸気注入口は、蒸発チャンバに流動的に接続され、異なる蒸気を蒸発チャンバに導入するように構成される、蒸気注入口とを備え、蒸発チャンバは、蒸気が、前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度以下に維持されるように構築および構成される、気圧に対する減圧下にて重合に好適なポリマー前駆体構成要素の混合物を供給するためのデバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、モノマーと、非重合性担体流体、およびポリマー複合層への取り込みに対して所望の対象の塩または他の化合物の組み合わせとの、別々の流れを混合するために使用する装置を描く概略図である。
【図2A】図2Aは、材料を基板の表面に堆積するために使用する装置を描く概略図である。
【図2B】図2Bは、材料を基板の表面に堆積するために使用する装置を描く別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の他の局面、実施形態および特徴は、付随の図面と併せて考慮する場合、以下の発明を実施するための形態によって明らかとなる。付随の図は、概略的であり、正確な縮尺で描かれることを意図しない。明確性のために、当業者が本発明を理解できるようにするための説明が必要ない場合、すべての図においてすべての構成要素が表示されるわけではなく、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されるわけでもない。参照することによって本明細書に援用されるすべての特許出願および特許は、それらの全体として参照により援用される。対立がある場合、定義を含む本明細書が統制する。
【0017】
本発明は、概して、1つ以上の蒸気を減圧下で環境に供給するためのデバイスおよび方法に関する。蒸気は、少なくとも1つの重合性構成要素を含み得る。ある場合には、少なくとも2つの構成要素は、蒸気を形成するために組み合わせられ得る。構成要素は、別々に蒸発し、続いて組み合わせられ得る、液滴流として別々に提供され得る。本発明の方法は、また、基板の表面上の材料の堆積において有用であり得る。ある場合には、材料は、基板の表面上に、ポリマー層等の層を形成し得る。本発明は、基板の表面上の均質膜の形成を必要とする用途において有用であり得る。
【0018】
本発明は、互いに可溶性ではない材料が、蒸気等の均質の形態で提供され得るという点で、特に有利であり得る。例えば、いくつかの用途は、表面上に異なる材料の混合物の均一の堆積を必要とし得る。堆積は、均質の流体、例えば、構成要素材料の溶液の気化、その後の表面上の蒸気の凝結によって行い得る。しかしながら、ある場合には、均質の流体は、構成要素材料(例えば、異なる液体の非混和性または限定された混和性、溶液の1つ以上の構成要素の不溶性または限定された可溶性、または組み合わせ)の不適合性(例えば、不溶性)のため、得ることが困難であり得る。その結果、構成要素材料の不均質混合物のみが得られ、その気化により、混合物の各構成要素の均一の気化/堆積が生じないことがある。例えば、特定の温度での不均質混合物を蒸発させると、第1の構成要素の気化は得られるが、第2の構成要素の重合または分解は得られないことがある。不均質混合物は、例えば、2つの非混和液を含む混合物、または固体および液体を含む混合物を含んでもよく、固体は、液体に対して不溶性である。ある場合には、不均質混合物は、2つの材料が可溶性ではない、付加的溶媒をさらに含み得る。
【0019】
本発明の方法は、液体および/または固体形態において互いに対して略不溶性または非混合性である、少なくとも2つの構成要素を含む均質の蒸気の形成を可能にし得る。ある場合には、少なくとも2つの材料は、装置の2つの異なる領域で別々に蒸発させ得る。蒸発した材料は、均質の蒸気を形成するために続いて装置内で組み合わせられ得る。本明細書において使用され場合、互いに対して「略不溶性」である2つの材料とは、懸濁液等の不均質混合物を形成するために組み合わせられ得る、2つの非混合性材料である。例えば、第1の構成要素および第2の構成要素は、第1の構成要素と第2の構成要素の直接的組み合わせが、気化のための均質の混合物を生成しないことがあるような、互いに対して不溶性であり得る。しかしながら、本明細書に記載される方法を使用して、第1の構成要素および第2の構成要素を含む均質の蒸気は、第1の構成要素を含む第1の源と第2の構成要素を含む第2の源の組み合わせによって形成し得る。第1の構成要素は、第1の液滴流として提供され得、第2の構成要素は、第2の液滴流として提供され得る。第1の蒸気および第2の蒸気を形成するための第1および第2の液滴流のフラッシュ蒸発、およびその後の第1および第2の蒸気の組み合わせは、均質の蒸気を提供し得る。
【0020】
本明細書において使用され場合、「均質の蒸気」は、蒸気の状態で少なくとも2つの異なる構成要素を含む蒸気を指し、蒸気は、異なる構成要素の均一の混合物であり得る。均質の蒸気は、単に、別々の蒸気の同一エンクロージャへの同時導入(本明細書において「蒸気の混合」といわれる)によっては形成されないことがある。しかしながら、蒸気の十分な均質化(例えば、混合)により、均質の蒸気が形成され得る。蒸気の混合物の均質化は、例えば、混合物の各構成要素の沸点より上の温度であるが、蒸気の構成要素が分解または重合し得るより下の温度で、装置内での蒸気の混合物の連続的な気化、および/または蒸気の混合物を装置の閉鎖経路に流し、蒸気が衝突する表面積を増加させることによって生じ得る。閉鎖経路の表面は、混合物の各構成要素の沸点より上の温度であるが、蒸気の構成要素が分解または重合し得るより下の温度に維持され得る。
【0021】
一実施形態では、本発明の方法は、液体モノマー、および液体モノマーに対して不溶性であり得る材料を含む均質の蒸気を提供することが望ましい場合に有利であり得る。例えば、塩等の材料は、塩と液体モノマーの組み合わせが懸濁液または他の不均質混合物を生成するように、液体モノマーにおいて不溶性であり得る。ある場合には、塩および液体モノマーの不均質混合物の気化は、液体モノマーの望ましくない重合なくしては、単一温度で得ることは不可能である。本明細書に記載される方法を使用して、塩および液体モノマーの両方を含む均質の蒸気を得て、両材料の基板上の同時堆積が可能となる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、気圧に対する減圧下で1つ以上の蒸気を供給する方法を提供する。各蒸気は、別々の蒸気の混合物が装置に導入され得るように、装置内にある異なる領域で供給され得る。いくつかの実施形態では、本発明は、気圧に対する減圧下で液滴の個々のストリーム(例えば、流れ)を供給する方法を提供し、少なくとも1つの液滴流は、重合に好適な1つ以上のポリマー前駆体構成要素を含む。例えば、重合性種を含む第1の液滴の第1の連続流は、減圧環境において、該種の分解温度および重合温度の両方より下の温度で提供され得る。第2の液滴の第2の連続流も提供され得、第2の流れは、第2の種および担体液体の混合物を、該第2の種および液体の分解温度および重合温度の両方より下の温度で含む。
【0023】
例えば、方法は、モノマーの連続流を、該モノマーの分解温度および重合温度の両方以下の温度で、真空環境に供給し、そしてモノマー流を液滴の第1の連続流に霧化することとを含み得る。本明細書において使用され場合、「霧化」という用語には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、ガスの流れ等の流体の流れにおいて後に懸濁され得る液滴を作成するための材料に、機械的または音響エネルギー等の外部エネルギーを適用することを指す。方法は、また、化合物および担体流体を含む混合物の連続流を、該混合物およびその構成要素の分解および/または重合温度より下の温度で、真空環境に供給し、そして混合物流を液滴の第2の連続流に霧化することを含み得る。ある場合には、化合物は、モノマーに対して実質的に不溶性であり得る、塩等の材料であり得、担体流体は、非重合性担体流体であり得る。
【0024】
第1の液滴流および第2の液滴流は、次いで、別々に蒸発させてもよく、蒸気は、モノマー、化合物、および担体流体を含む複合蒸気を形成するために続いて組み合わせられ得る。複合蒸気は、該複合蒸気またはその一部の沸点より上であるが、該複合蒸気、または、その一部が、蒸発する前に分解および/または重合(例えば、熱重合)を受ける温度より下の温度に維持される、加熱表面に複合蒸気を接触させることによって連続的に蒸気にされ得る。本明細書において使用され場合、「蒸発する」という用語には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、典型的には熱の適用による、材料の液相から気または蒸気相への変換を指す。当業者は、例えば、材料の分子量および熱特性に基づいて、材料が分解および/または重合する温度を判断することができる。例えば、塩を含む溶液は、本質的に同一条件下において、塩が欠けている実質的に同一の溶液より高い分解および/または重合温度を有し得る。ある場合には、塩を含む混合物は、200〜300℃の範囲で分解および/または重合温度を有し得る。複合蒸気は、少なくとも1つの重合性構成要素を含み得、すなわち、重合性複合材料を含み得る。例えば、本明細書に記載される方法は、減圧下で少なくとも2つの蒸気を供給し組み合わせることによって、ポリマー材料の形成において有用であり得、得られた複合蒸気は、少なくとも1つの重合性構成要素を含む。ポリマー材料は、以下でさらに十分に説明するように、随意に、膜または層として基板の表面上に随意に堆積され得る。ある場合には、ポリマー材料は、塩含有ポリマー膜である。
【0025】
本発明は、また、材料を基板の表面上に、ある場合には、気圧に対する減圧下で堆積する方法を提供する。ある場合には、材料は、膜または被覆として堆積され得る。材料は、ポリマーまたは非ポリマー材料であり得る。ある場合には、材料は、ポリマー膜を形成するためにさらに処理され得る非ポリマー膜として堆積され得る。例えば、本明細書において記載される均質の蒸気は、提供され、均質の蒸気の少なくとも1つの構成要素の沸点より低い温度に維持され得る基板の表面に接触し得る。
【0026】
ある場合には、方法は、重合性モノマーを、モノマーの蒸気を形成するために、真空下での加熱表面との接触によってフラッシュ蒸発させること、および、同様に、化合物(例えば、塩)および担体流体の混合物を、該混合物の蒸気を形成するために真空下での加熱表面との接触によってフラッシュ蒸発させることを含み得る。モノマーの蒸気および混合物における化合物の蒸気は、別々または組み合わせるかのいずれかで、真空チャンバにおいて真空下で膜または層として基板上で凝結され得る。ある場合には、蒸気は、ポリマー被覆等の被覆を基板上で形成し得る。例えば、基板上で凝結される膜または層は、ポリマー前駆体を含んでもよく、膜または層は、基板表面上にポリマー材料を形成するために続いて重合され得る。
【0027】
ある場合には、方法は、その一部が互いに対して異なる構成要素を含む蒸気の混合物を、減圧圧力環境において提供することであって、蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含むことを含み得る。蒸気は、少なくとも均質化することの前、ある場合には、重合させることを通して、前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下の温度に維持され得る。蒸気は、次いで、複合蒸気を形成するために均質化され得、少なくとも複合蒸気の構成要素の一部は、基板表面上に膜または層を形成するために基板表面上で凝結され得る。
【0028】
例えば、方法は、少なくとも第1の蒸気および第2の蒸気を含む蒸発チャンバの使用を含み得る。ある場合には、第1の蒸気は、モノマーを含んでもよく、第2の蒸気は、塩等の化合物、および非重合性担体流体を含み得る。第1および第2の蒸気は、次いで、モノマーの熱重合が開始される温度より下の温度で第1の蒸気および第2の蒸気を加熱しながら、複合蒸気を形成するために均質化され得る。複合蒸気は、次いで、複合蒸気またはその一部の沸点より下の温度に維持され得る基板の表面に流され得る。複合蒸気の少なくとも一部の基板の表面上での凝結は、被覆を形成するために続いて重合され得るモノマーを含む層を形成し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、非重合性担体流体を、ポリマー複合層への取り込みを所望される1つ以上の塩または他の物質と混合し、次いで、複合混合物を形成するために1つ以上の種類のモノマー蒸気流と後に組み合わせられ得る蒸気を形成するために混合物をフラッシュ蒸発する方法を提供する。次に、組み合わされた蒸気流は、少なくとも担体流体の大部分が蒸気の状態にある間に、非重合性担体流体から離れたモノマーおよび他の材料が基板上で凝結するように、フラッシュ蒸発チャンバより低い温度で該基板に向けられることができる。凝結された材料の層は、次いで、当技術分野で公知の多くの技術の1つにより重合することができる。例えば、重合は、電場、磁場、光場、音場、電磁場、または力学的な場等の外部エネルギー源への暴露を含み得る。ある場合には、外部エネルギー源は、電子ビームまたは「eビーム」であり得る。ある場合には、外部エネルギー源は、可視、紫外線、X線、および赤外線放射を含む、電磁放射線源であり得る。一実施形態では、外部エネルギー源は、紫外線放射を含む。
【0029】
本発明は、技術者がポリマー複合層への取り込みを望む1つ以上の塩および/または他の物質とともに行うモノマーのフラッシュ蒸発のためのシステムおよび方法に関する。ポリマー複合層への含有を所望される塩または他の物質は、非重合性担体流体と組み合わせられ得る。次に、混合物は、モノマーをチャンバへ向かわせる導管とは別の導管を介してフラッシュ蒸発チャンバへと向かう。モノマーおよび混合物流は、霧化されるか、そうでなければ、フラッシュ蒸発ユニットへ入る粒子の流れに変換され、蒸発する。蒸気は、次いで、担体流体が少なくとも主に蒸気相のままであるが、モノマーが、ポリマー複合層への取り込みを所望される他の物質とともに基板上に凝結されるような温度に維持された基板へ、フラッシュ蒸発ユニットから放出され得る。基板上に得られた膜は、所望のポリマー複合層を得るために重合され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスまたは装置は、本明細書において記載されるように、その一部が互いに対して異なる構成要素を含む少なくとも2つの別々の蒸気を受容するように構成される蒸発チャンバを含み得る。蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含み得る(例えば、モノマー)。デバイスは、また、第1の蒸気注入口および第2の蒸気注入口であって、それぞれが蒸発チャンバに流動的に接続され、異なる蒸気を蒸発チャンバに導入するように構成される注入口も含み得る。本明細書において記載されるように、蒸発チャンバは、蒸気が、前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下の温度に維持されるように、構成および配設され得る。
【0031】
図1は、重合性複合材料の蒸気を真空環境に供給するように構成および配設された装置に対する一構成を描く。真空チャンバ10は、フラッシュ蒸発チャンバ7を包含し、かつ噴霧器6aおよび6bに流動的に接続される。フィード1は、噴霧器6aに流動的に接続され得るが、個々のフィード2および3は、噴霧器6bに流動的に接続されるフィード4を形成するために組み合わされる。フィード1、2、3、および4の流速は、それぞれ、機構5a、5b、5c、および5dによって調節され得る。機構は、弁、調節可能な開口、または当技術分野で公知の任意の他の制御機構であり得る。制御機構5a、5d、5bおよび5cは、集中制御を可能にするコントローラユニットと連通され得る。当業者は、本発明との関連における使用に適切な従来の制御機構を選択および/または修正することが可能である。オペレータも、フラッシュ蒸発チャンバ7へ流れる材料の組成を調整するために、独立してそれぞれの流速を調節し得る。
【0032】
作動中、フィード1によって提供された第1の材料の流れは、フラッシュ蒸発チャンバ7へ流され得る。別に、フィード2によって提供された第2の材料の流れは、混合物を形成するためにフィード3によって提供された材料の連続流と組み合わされ得、混合物は、フィード4を介して、フラッシュ蒸発チャンバ7へ流される。混合物は、溶液、懸濁液、コロイド、または当技術分野で公知の固体および液体の他の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、混合物は、溶液である。フィード1からの流れは、フィード1にある材料が反応(例えば、重合)または分解し得る温度より下の温度で、減圧環境において第1の液滴流を形成するために噴霧器6aへ導入され得る。同様に、フィード4からの流れは、フィード4にある材料が反応または分解し得る温度より下の温度で、減圧環境において第2の液滴流を形成するために噴霧器6bへ導入され得る。第1の液滴流は、次いで、蒸発させられ、蒸気の状態でフラッシュ蒸発チャンバ7に供給され得る。別に、第2の液滴流は、同様に、蒸発させられ、蒸気の状態でフラッシュ蒸発チャンバ7に供給させられ得る。蒸気は、フラッシュ蒸発チャンバ7へ入ると組み合わせられ得る。液滴は、当技術分野において公知の技術を用いて蒸発させ得る。フラッシュ蒸発チャンバ7内において、蒸気は、蒸気の沸点より上であるが、それらを反応(例えば、重合)または分解させる温度より下の温度で加熱し得る、加熱表面8との接触によって連続的に蒸発させられ得る。
【0033】
説明に役立つ実施形態では、フィード1は、重合性液体モノマー等の重合性モノマーの連続流を提供し得る。フィード2は、重合性モノマーに対して不溶性である塩等の化合物を含む溶液を提供し得、フィード3は、非重合性担体流体3を提供し得る。化合物および非重合性担体を含む溶液は、次いで、フィード4を介して噴霧器6bに導入される混合物を形成するために組み合わされる。フィード1およびフィード4は、次いで、重合性モノマー、化合物、および担体流体を含む液滴の混合物を形成するために本明細書において記載されるように組み合わせられ得る。液滴は、形成され、材料の分解温度および重合性モノマーの重合温度より下の温度に維持され得る。混合物は、分解を引き起こすか、または熱重合を開始させる温度より下の温度で、フラッシュ蒸発チャンバ7に導入され得る。本明細書において使用され場合、「非重合性担体流体」という用語は、ポリマー複合層への含有を所望されるモノマーの重合を容易にする温度および他の環境条件に曝された場合、有意な程度に重合しない物質を指す。用語は、いかなる状況においても重合しない物質を含むが、これらに限定されない。
【0034】
化合物/担体流体の混合物の組成は、化合物および担体流体の相対量を調節することによって、調整することができる。図1に示されるように、これは、担体液体の流れ、およびそれに取り込まれた化合物の量を調節するために機構5bおよび5cを使用するインライン混合プロセスによって行い得る。例えば、フィード2は、非重合性担体における化合物の原液を提供し得、フィード3は、希釈剤として原液に添加され得る非重合性担体を提供し得る。代替として、化合物/担体流体の混合物は、別々に調製され、次いで、フラッシュ蒸発チャンバ7へ単一導管を介して流され得、混合物の流速は、同様の機構によって調節され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるように形成された、重合性モノマー、塩、および担体流体を含む蒸気は、基板上に層または被覆を形成するためにさらに使用され得る。蒸発チャンバ7の温度は、以下でさらに十分に説明するように、加熱表面8からの蒸気の蒸発を可能にするのに十分に高いが、蒸気が所望の表面上で凝結し得るように十分に低いように維持され得る。
【0036】
図2A−Bは、蒸気をフラッシュ蒸発ユニットから放出し、基板と接触させ得る装置の実施形態を描き、重合性モノマーは、薄膜を形成するために基板の表面上で凝結し得る。蒸気は、蒸気が複合薄膜として基板上で凝結するように、重合性モノマーおよび塩の混合物を含み得る。図2Aに示されるように、基板11は、供給用スプール15から提供され、基板11の温度を制御することが可能な温度制御ユニット12に接触させられ得る。温度制御ユニットの一実施例は、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第4,842,893号に開示される。基板は、例えば、温度制御ユニット12の回転により、フラッシュ蒸発ユニット7の開口13上を基板11を通過させることによって、蒸気に曝され得る。基板11の温度は、重合性モノマーが基板11上に複合薄膜を形成するために塩とともに凝結するが、担体流体の大部分が蒸気相に維持され得るように、制御され得る。複合薄膜は、次いで、ポリマー複合層を得るために真空下で重合され得る。本明細書において記載されるように、外部エネルギー源の提供による重合を含む種々の重合技術が使用され得る。外部エネルギー源は、源14によって提供され得る。ポリマーで被覆した基板は、次に、巻き取りスプール16に再び巻かれ得る。
【0037】
図2Bは、本明細書において記載される被覆装置の一実施形態の側面図を示す。フラッシュ蒸発チャンバ7は、真空チャンバ10内に位置し、噴霧器6aおよび6bに流動的に接続される。フラッシュ蒸発チャンバ7へ入ると、蒸気は、次いで、開口13へ向かって流れ得る。一連のバッフル15は、蒸気の経路の長さを増加させるためにチャンバ内に位置し、より均質の蒸気を生成するために、蒸気とバッフルの壁との間の多数の衝突を生成する。ガスバラスト入力14が、所望に応じて、付加的構成要素をフラッシュ蒸発チャンバ7へ流すために含まれ得る。
【0038】
フラッシュ蒸発チャンバの温度は、蒸気が基板11上のみで凝結するように維持され得、すなわち、チャンバの内面は、蒸気の沸点より上の特定の温度に維持され得、「冷点」を含まない。図2Bに示されるように、フラッシュ蒸発チャンバ7の温度は、ヒータ16、ヒータ17、ならびに噴霧器6aおよび6bを囲むヒータ18および19によって制御され得る。加熱ロッド20および21は、開口13内の温度を制御する。ヒータは、複合蒸気またはその一部の沸点より高い温度に維持され得る。
【0039】
本発明の方法は、単独または他の周知の気化および/または堆積方法と組み合わせて使用され得る。付加的処理ステップは、また、本明細書に記載される方法と組み合わせて使用され得る。例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物およびセラミック等の層を堆積するために使用され得る。
【0040】
本明細書において記載されるように、方法は、ポリマー膜の形成を含み得る。本明細書において使用されるポリマーは、「バックボーン」という用語がポリマーの最も長い連続的結合経路を指す、ペンダント側基を随意に含有するバックボーン(例えば、非共役バックボーン、共役バックボーン)を含む拡張分子構造(例えば、オリゴマー、ポリマー)を指す。ポリマーは、線形、分岐、架橋等であり得、ホモポリマーまたはランダムコポリマーまたはブロックコポリマー等のコポリマーである場合がある。一実施形態では、ポリマーは、ブロックコポリマーである。
【0041】
本発明における使用に好適な重合性構成要素(例えば、モノマー、ポリマー前駆体)は、例えば、高温度、電磁放射、または他の重合条件の適用時に、重合することが可能な任意の化学種を含む。モノマーは、オレフィン基、アクリレート基、またはラジカルを形成することが可能な他の基等の少なくとも1つの重合部位を有し得る。ある場合には、モノマーは、アクリレート基を含む。例えば、モノマーは、モノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、または他のポリアクリレートモノマーであり得る。概して、モノマーは、液体である。本発明の方法における使用に好適なモノマーの実施例としては、グリコールジアクリレート、ポリグリコールジアクリレート、ポリオールポリアクリレート、エトキシ化ポリオールポリアクリレート、プロポキシル化ポリオールポリアクリレート、フッ化炭素基を有するアクリレート、ポリグリコールビニルエーテル、ポリグリコールジビニルエーテル、それら置換誘導体、それらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない。好適なグリコールジアクリレートとしては、エチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールジアクリレートを含むが、これらに限定されない。好適なポリグリコールジアクリレートとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびポリプロピレングリコールアクリレートを含むが、これらに限定されない。好適なポリオールポリアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびペンタエリスリトールトリアクリレートを含むが、これらに限定されない。ある場合には、モノマーは、グリコールジアクリレート、ポリグリコールジアクリレート、ポリオールポリアクリレート、それらの組み合わせ等を含む液体モノマーであり得る。ある場合には、モノマーは、例えば、連鎖停止のための部位を提供するための、モノアクリレートで置換された種類の上記に掲載されたモノマーであり得る。
【0042】
2つ以上の異なる種類のモノマーの混合物を使用する場合、モノマーは、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第7,112,351号に詳述される、同様の蒸気圧を有するように選択され得る。
【0043】
本明細書において記載されるように、重合性構成要素は、複合蒸気を形成するために付加的構成要素と組み合わせられ得る。構成要素は、担体流体と組み合わせられ、かつ蒸発させられることが可能な任意の材料であり得る。いくつかの実施形態では、構成要素は、塩を含む。本明細書において使用され場合、「塩」という用語には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、カチオンおよびアニオンを含む中性イオン化合物を指す。塩は、有機または無機であり得、二成分塩、錯塩等であり得る。ある場合には、2つ以上の塩が使用され得る。いくつかの実施形態では、構成要素は、有機分子、無機分子、有機金属分子、ポリマーまたはオリゴマー分子等であり得る。
【0044】
本発明の種々の構成要素は、担体流体と組み合わせられ得る。担体流体は、本明細書において記載されるように霧化および/または蒸発され得るように、比較的に高い蒸気圧を有する任意流体であり得る。担体流体は、また、担体流体が組み合わされる塩または他の構成要素と適合するように選択され得る。適合性は、必ずしも可溶性を必要とせず、塩または他の構成要素とともに、安定な懸濁液、コロイド、または当技術分野で公知の他の混合物を形成することが可能な担体流体は、本発明における使用に対して十分に適合し得る。種々の担体流体は、各担体流体がそれぞれの構成要素と十分に適合する限り、本発明との関連において使用され得る。担体流体は、モノマーが本明細書において記載されるように重合可能であるという条件下で、非重合可能であるように選択され得る。例えば、方法は、アクリレート含有モノマーのラジカル重合を含んでもよく、担体流体は、ラジカル重合の条件下で、重合されない、または、モノマー、もしくは他の構成要素と反応しないように選択され得る。説明に役立つ実施形態においては、担体流体は、方法がアクリレート含有モノマーのラジカル重合を含む場合、反応性オレフィン基を有さないことがある。
【0045】
ある場合には、塩等の化合物は、本発明の方法において使用され得る。塩は、無機塩および有機塩、またはそれらの組み合わせを含む、カチオンおよびアニオンを含む任意の中性化合物であり得る。塩の例としては、水酸化物、ハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、アンモニウム塩等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
担体流体は、また、本明細書において記載されるような基板上の膜の形成の間に、対象のモノマー、塩、または他の物質等の種々の構成要素が基板上に堆積されるが、実質的にすべての担体流体が蒸気相に残るように、選択され得る。例えば、非重合性担体流体は、複合蒸気の少なくとも一部の基板の表面上での凝結の間に、非重合性担体流体が実質的に基板の表面上で凝結しないような、蒸気圧を有するように選択され得る。担体流体の選択において考慮し得る要因としては、基板が膜の形成の間に維持される温度、およびモノマーと担体流体の対応する蒸気圧における差異を含み得る。ある場合には、前記差異を最大にすることが望ましいことがある。蒸気圧に基づく担体流体の選択は、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第7,112,351号にさらに記載される。
【0047】
担体流体(例えば、非重合性担体流体)は、任意の有機または非有機(例えば、水性)流体であり得る。ある場合には、担体流体は、極性溶媒および非極性溶媒を含む有機溶媒である。一部の有機溶媒の例としては、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、および他の炭化水素、エーテル類、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エチルメチルケトン、N−メチルピロリジノン等を含むが、これらに限定されない。ある場合には、担体流体は、水性溶媒、または水性溶媒と混和性である他の溶媒である。
【0048】
ある場合には、重合性モノマーおよび担体流体に対する潜在的候補は、冷却された基板上での凝結速度を計算することによって同定されることができる。これらの計算のための方法は、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第7,112,351号に詳述される。凝結速度は、選択された温度における候補物質の蒸気圧に依存し得る。蒸気圧対温度の集計は、文献において入手可能である(例えば、T.E.Jordan,Vapor Pressure of Organic Compound,Interscience Publishers Inc.,New Yorkを参照)。代替として、候補物質の蒸気圧は、当技術分野において公知の方法によって測定することができる。
【0049】
フラッシュ蒸発チャンバ7の容量は、所望の厚さを有する膜を基板に形成するためのモノマー蒸気の十分な量を供給するために十分な大きさであり得る。ある場合には、膜は、約0.005ミクロン〜約10ミクロン、または約0.01ミクロン〜約1ミクロンの厚さを有し得る。膜は、種々の速度で、膜全体の厚さにおいてわずかな変動で堆積され得る。
【0050】
いくつかの本発明の実施形態を本明細書において記載および説明したが、当業者は、機能を実行し、および/または結果および/または本明細書に記載される1つ以上の利点を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変化および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内にあると見なされる。概して、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的なものであることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途または複数の用途によることを容易に理解する。当業者は、日常の実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態との多くの同等物を認識するか、または確認することが可能である。したがって、当然のことながら、前述の実施形態は、一例のみとして提示され、添付の請求項およびその同等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載および主張された以外に実践され得る。本発明は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法が相互に不整合でない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
明細書および請求項において使用される「ある」および「1つの」という不定冠詞は、そうではないことを明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0052】
明細書および請求項において使用される「および/または」という句は、当然のことながら、非常に結合した要素、すなわち、ある場合には結合して存在し、他の場合には分離して存在する要素の「一方または両方」を意味する。そうではないことを明確に示されない限り、具体的に特定されるそれらの要素との関連性の有無に関わらず、「および/または」の句によって具体的に特性される要素以外に、随意に他の要素が存在し得る。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」へ言及は、「含む」等の制約がない言葉と併せて使用する場合、一実施形態では、Bを有さないA(随意に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aを有さないB(随意に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方等を指す場合がある。
【0053】
本明細書および請求項で使用されるように、当然のことながら、「または」は、上で定義したように「および/または」と同一の意味を有す。例えば、リストにおける項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的、すなわち、少なくとも1つの包含であるが、多くの要素または要素のリスト、および随意に、付加的な掲載されていない多くの項目または項目のリストのうちの1つ以上も含めているとして解釈されるものである。「〜の1つのみ」または「〜の正確に1つ」、または、請求項において使用する場合の「から成る」等の、そうではないと明確に示される用語のみが、多くの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用されるように、「または」という用語は、「いずれか」、「〜の1つ」、「〜の1つのみ」、または「〜の正確に1つ」等の排他性の用語に先行される場合、排他的代替(すなわち、「両方ではなくどちらか一方」)を示すものとして解釈されるのみとする。請求項において使用する場合、「本質的に〜から成る」は、特許法の分野において使用されるその一般的な意味を有する。
【0054】
本明細書および請求項で使用されるように、1つ以上の要素のリストを参照すると、「少なくとも1つ」という句は、当然のことながら、要素のリストにおける要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に掲載された各およびすべての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義により、また、具体的に特定されるそれらの要素との関連性の有無に関わらず、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリストに内で具体的に掲載された要素以外の要素を随意に提示され得る。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bを有さない1つ以上、Aを随意に含む、少なくとも1つ(および随意に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aを有さない1つ以上、Bを随意に含む、少なくとも1つ(および随意に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形では、1つ以上、Aを随意に含む、少なくとも1つおよび1つ以上、Bを随意に含む、少なくとも1つ(および随意に、他の要素を含む)を指す場合がある。
【0055】
請求項では、上記の明細書においても、「含む」、「含有する」、「持つ」、「有する」、「包含する」、「伴う」、「保有する」等のすべての移行句は、当然のことながら、制約がない、すなわち、含むが限定されないということを意味する。「から成る」および「本質的に〜から成る」という移行句のみが、米国特許局、米国特許審査便覧、第2111.03項に説明されるように、閉鎖または半閉鎖移行句とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空環境においてモノマーを含む蒸気を供給する方法であって、
モノマーの連続流を、該モノマーの分解温度および重合温度の両方より下の温度で、真空環境に供給するステップと、
該モノマー流を、連続した第1の液滴流に霧化するステップと、
混合物を形成するために化合物を非重合性担体流体と組み合わせるステップと、
該混合物の連続流を、該混合物およびその構成要素の熱重合および/または分解温度より下の温度で、真空環境に供給するステップと、
該混合物流を、連続した第2の液滴流に霧化するステップと、
第1の蒸気および第2の蒸気をそれぞれ形成するために該第1の液滴流および該第2の液滴流を別々に蒸発させるステップと、
該モノマー、該化合物、および該非重合性担体流体を含む複合蒸気を形成するために該第1の蒸気と該第2の蒸気とを組み合わせるステップと、
該複合蒸気を、該組み合わされた蒸気またはその一部の沸点以上の温度であるが、該組み合わされた蒸気またはその一部が蒸発する前に熱重合および/または分解を受ける温度より下の温度に維持される、加熱表面と接触させることによって、該複合蒸気を連続的に蒸発させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記化合物は、塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物は、溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物は、懸濁液である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物は、前記モノマーに対して実質的に不溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマーは、アクリレート基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非重合性担体は、有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非重合性担体は、水性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
真空チャンバにおいて基板の表面上に被覆を形成する方法であって、
該真空チャンバにおいて蒸発チャンバを提供するステップであって、該蒸発チャンバは、少なくとも第1の蒸気および第2の蒸気を含み、該第1の蒸気は、モノマーを含む、ステップと、
該モノマーの熱重合が開始される温度より下の温度で該第1の蒸気および該第2の蒸気を加熱しながら、複合蒸気を形成するために該蒸気を均質化するステップと、
該複合蒸気が該基板の該表面へ流れることを可能にするステップであって、該表面は、該複合蒸気またはその一部の沸点より下の温度で維持される、ステップと、
該モノマーを含む層を形成するために該基板の該表面上で該複合蒸気の少なくとも一部を凝結するステップと、
該被覆を形成するために該層を重合させるステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記被覆は、ポリマー被覆である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の蒸気は、化合物および非重合性担体流体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記非重合性担体流体は、前記基板の前記表面上での前記複合蒸気の少なくとも一部の凝結中に、該非重合性担体流体が、該基板の該表面上で実質的に凝結しないような、蒸気圧を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記非重合性担体流体は、前記モノマーが重合可能である条件下で重合可能ではない、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記重合させるステップは、外部エネルギー源への暴露を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記外部エネルギー源は、電場、磁場、光場、音場、電磁場、または力学的な場である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該外部エネルギー源は、電子ビームまたは電磁放射である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
モノマーを含む層を、真空環境において基板上に堆積する方法であって、
真空下で加熱表面との接触によってモノマーをフラッシュ蒸発させることによって、該モノマーの蒸気を形成するステップと、
真空下で加熱表面との接触によって化合物および担体流体の混合物をフラッシュ蒸発させることによって、該混合物の蒸気を形成するステップと、
真空チャンバにおいて真空下で、該モノマーの該蒸気と該混合物中の該化合物の該蒸気とを基板上で凝結するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
複合蒸気を形成するために、前記モノマーの前記蒸気と前記混合物の前記蒸気とを組み合わせるステップと、
該複合蒸気の少なくとも一部を前記基板上で凝結するステップと
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フラッシュ蒸発させるステップは、前記真空チャンバ内の蒸発器と流体連通している複数の注入口を使用して行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
気圧に対する減圧下にて重合に好適なポリマー前駆体構成要素の混合物を供給する方法であって、
減圧環境において、連続した、重合性種を含む第1の液滴の第1の流れを、該種の分解温度および重合温度の両方より下の温度で提供するステップと、
第1の蒸気を形成するために、該第1の液滴流を、その熱重合および/または分解温度より下の温度で連続的に蒸発させるステップと、
連続した、第2の種および担体流体の混合物を含む第2の液滴の第2の流れを、該第2の種および流体の熱重合および/または分解温度より下の温度で提供するステップと、
第2の蒸気を形成するために、該第2の液滴流を、その熱重合および/または分解温度より下の温度で連続的に蒸発させるステップと、
該重合性種および該第2の種を含む、組み合わされた蒸気を形成するために、該第1の蒸気および該第2の蒸気を組み合わせるステップと、
該組み合わされた液滴流を、それらの熱重合および/または分解温度より下の温度で連続的に蒸発させるステップと
を含む、方法。
【請求項21】
気圧に対する減圧下にてポリマー材料を基板の表面上で形成する方法であって、
減圧環境において、該環境の異なる領域で、少なくとも2つの別々の蒸気を提供するステップであって、該少なくとも2つの別々の蒸気の一部が互いに対して異なる構成要素を含み、該蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含み、該蒸気は、少なくとも該均質化するステップの前に、該前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下に維持される、ステップと、
複合蒸気を形成するために該蒸気を均質化するステップと、
該基板の上にポリマー前駆体物質を形成するために、少なくとも該複合蒸気の該構成要素の一部を該基板表面上で凝結するステップと、
該ポリマー材料を該基板表面上で形成するために、該ポリマー前駆体物質を重合させるステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記蒸気は、前記重合させるステップを通して、前記前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下に維持される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
気圧に対する減圧下にて重合に好適なポリマー前駆体構成要素の混合物を供給するためのデバイスであって、
少なくとも2つの別々の蒸気を受容するように構成される蒸発チャンバであって、該少なくとも2つの別々の蒸気の一部が互いに対して異なる構成要素を含み、該蒸気は、重合に好適なポリマー前駆体構成要素を集合的に含む、チャンバと、
第1の蒸気注入口および第2の蒸気注入口であって、各蒸気注入口は、該蒸発チャンバに流動的に接続され、かつ異なる蒸気を該蒸発チャンバに導入するように構成されている、第1の蒸気注入口および第2の蒸気注入口と
を備え、該蒸発チャンバは、該蒸気が、該前駆体構成要素の熱重合および/または分解が開始される温度より下に維持されるように構築および構成されている、
デバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−518224(P2010−518224A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549061(P2009−549061)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/024233
【国際公開番号】WO2008/097297
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(506225927)サイオン パワー コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】