説明

重合性化合物の中間体およびその製造方法

【課題】高発光効率で大面積化が可能であり、かつ量産可能な有機発光素子を得るための高分子系発光材料を提供すること。
【解決手段】ビス(2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル)イリジウム錯体部分と重合性官能基(例えばビニル基)とを有する重合性化合物の前駆体、重合性化合物およびその重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示パネルやこれに用いられるバックライト用の有機発光素子(OLED)に用いられる高分子系発光材料の前駆体である重合性化合物の中間体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、1987年にコダック社のC.W.Tangらにより高輝度の発光が示されて(Appl.Phys.Lett.,51巻,913頁,1987年)以来、材料開発、素子構造の改良が急速に進み、最近になってカーオーディオや携帯電話用のディスプレイなどから実用化が始まった。この有機ELの用途を更に拡大するために、発光効率向上、耐久性向上のための材料開発、フルカラー表示の開発などが現在活発に行われている。特に、中型パネルや大型パネル、あるいは照明用途への展開を考える上では発光効率の向上による更なる高輝度化と、大面積化に適した量産方法の確立が必要である。
【0003】
先ず、発光効率に関しては、現在の発光材料で利用されているのは励起一重項状態からの発光、すなわち蛍光であり、月刊ディスプレイ,1998年10月号別冊「有機ELディスプレイ」,58頁によれば、電気的励起における励起一重項状態と励起三重項状態の励起子の生成比が1:3であることから、有機EL(エレクトロルミネッッセンス)における発光の内部量子効率は25%が上限である。
【0004】
これに対し、M.A.Baldoらは励起三重項状態から燐光発光するイリジウム錯体を用いることにより外部量子効率7.5%を得、これは外部取り出し効率を20%と仮定すると内部量子効率37.5%に相当し、蛍光色素を利用した場合の上限値である25%という値を上回ることが可能なことを示した(Appl.Phys.Lett.,75巻,4頁,1999年、WO00/70655)。
【0005】
次に、パネルの量産方法に関しては、従来から真空蒸着法が用いられてきた。しかし、この方法は真空設備を必要とする点、大面積になるほど有機薄膜を均一の厚さに成膜することが困難になる点などの問題点を有しており、必ずしも大面積パネルの量産に適した方法とは言えない。
【0006】
これに対し、大面積化が容易な方法として高分子系発光材料を用いた製造方法、すなわちインクジェット法や印刷法が開発されている。特に、印刷法は連続して長尺の成膜が行え、大面積化と量産性に優れている。
【0007】
上記のように、発光効率が高くかつ大面積の有機発光素子を得るためには、燐光発光性の高分子材料が必要となる。このような燐光発光性の高分子材料としては、ルテニウム錯体を高分子の主鎖または側鎖に組み込んだものがある(Ng, P.K. et al., Polymer Preprints., 40(2), 1212 (1999))。しかし、これらはイオン性化合物であるため、電圧を印加した場合に電極での酸化還元反応による電気化学発光が起こる。これは応答速度が分オーダーと極めて遅く、通常のディスプレイパネルとしては使用できない。
【0008】
また、厳密な意味では高分子材料とは言えないが、ポリ(N−ビニルカルバゾール)に燐光発光性の低分子化合物であるイリジウム錯体を混合したものがある(P. J. Djurovich et al., Polymer Preprints, 41(1), 770 (2000))。しかし、これは均質な高分子材料に較べて熱安定性が劣り、相分離や偏析を起こす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、発光効率が高くかつ大面積の有機発光素子を量産するために必要とされる実用的な高分子系の燐光発光性材料は未だ存在しない。そこで、本発明は上記のような従来技術の問題点を解決し、高発光効率で大面積化が可能であり、かつ量産可能な有機発光素子を得るための高分子系発光材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、有機発光素子の発光材料として有用なイリジウム錯体部分を有する重合性化合物及びその中間体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[42]で示される新規化合物である重合性化合物とこれら重合性化合物の合成に必要な新規化合物である中間体、及びこれら重合性化合物の製造方法に関する。
【0012】
[1] 式(1)で示される重合性化合物。
【化5】


〔式中、X1、Y1、Z1の少なくとも1つは重合性官能基を有する置換基を表し、X1、Y1、Z1のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
[2] 前記式(1)におけるX1またはZ1のいずれか一方が重合性官能基を有する置換基である[1]に記載の重合性化合物。
【0013】
[3] 式(2)で示される重合性化合物。
【化6】


〔式中、X1は重合性官能基を有する置換基を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
[4] 重合性官能基が炭素−炭素二重結合である[1]〜[3]のいずれか一つに記載の重合性化合物。
【0014】
[5] 式(3)で示される重合性化合物。
【化7】


〔式中、nは0〜20の整数を表す。〕
[6] 重合性官能基がスチリル基である[1]〜[3]のいずれか一つに記載の重合性化合物。
【0015】
[7] 式(4)で示される重合性化合物。
【化8】


〔式中、nは0〜20の整数を表す。〕
【0016】
[8] 式(5)で示される重合性化合物。
【化9】


[9] 重合性官能基がアルケノイルオキシ基である[1]〜[3]のいずれか一つに記載の重合性化合物。
【0017】
[10] 式(6)で示される重合性化合物。
【化10】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Aはアクリロイル基もしくはメタクリロイル基またはアクリロイルオキシ基もしくはメタクリロイルオキシ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。〕
【0018】
[11] 式(7)で示される重合性化合物。
【化11】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
【0019】
[12] 式(8)で示される重合性化合物。
【化12】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
【0020】
[13] 式(9)で示される重合性化合物。
【化13】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Aはアクリロイル基もしくはメタクリロイル基またはアクリロイルオキシ基もしくはメタクリロイルオキシ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。〕
【0021】
[14] 式(10)で示される重合性化合物。
【化14】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
【0022】
[15] 式(11)で示される重合性化合物。
【化15】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
[16] 前記式(1)におけるY1が重合性官能基を有する置換基である請求項1に記載の重合性化合物。
【0023】
[17] 式(12)で示される重合性化合物。
【化16】


〔式中、Y1は重合性官能基を有する置換基を表し、Q2およびQ3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0024】
[18] 重合性官能基が炭素−炭素二重結合である[16]または[17]に記載の重合性化合物。
[19] 重合性官能基がスチリル基である[16]または[17]に記載の重合性化合物。
[20] 重合性官能基がアルケノイルオキシ基である[16]または[17]に記載の重合性化合物。
【0025】
[21] 式(13)で示される重合性化合物。
【化17】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
【0026】
[22] 式(14)で示される重合性化合物。
【化18】


〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
【0027】
[23] 式(15)で示されるイリジウム二核錯体と式(16)で示される重合性官能基を有する化合物を反応させることを特徴とする単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
【化19】


〔式中、R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【化20】


〔式中、X1、Y1、Z1の少なくとも1つは重合性官能基を有する置換基を表し、X1、Y1、Z1のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0028】
[24] 前記式(16)におけるX1またはZ1が重合性官能基を有する置換基である[23]に記載の単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
[25] 前記式(16)におけるY1が重合性官能基を有する置換基である[23]に記載の単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
【0029】
[26] 式(15)で示されるイリジウム二核錯体と式(17)で示される反応性置換基を有する化合物を反応させた後、得られた単核イリジウム錯体の反応性置換基と、重合性官能基および式(17)に由来する反応性置換基(X2、Y2、Z2の少なくとも一つ)と反応して結合しうる官能基を有する化合物とを反応させることを特徴とする単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
【化21】


〔式中、R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【化22】


〔式中、X2、Y2、Z2の少なくとも1つは反応性置換基、X2、Y2、Z2のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0030】
[27] 式(17)におけるX2またはY2またはZ2が活性水素を有する置換基である[26]に記載の単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
[28] 式(17)におけるX2またはZ2が水酸基を有する置換基である[26]に記載の単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
[29] 式(17)におけるY2が水酸基を有する置換基である[26]に記載の単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物の製造方法。
【0031】
[30] 式(18)で示される化合物。
【化23】


〔式中、X2、Y2、Z2の少なくとも1つは水酸基を有する置換基を表し、X2、Y2、Z2のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
[31] 式(18)におけるX2またはZ2が水酸基を有する置換基である[30]に記載の化合物。
【0032】
[32] 式(19)で示される化合物。
【化24】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0033】
[33] 式(20)で示される化合物。
【化25】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
[34] 式(18)におけるY2が水酸基を有する置換基である[30]に記載の化合物。
【0034】
[35] 式(21)で示される化合物。
【化26】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q2およびQ3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0035】
[36] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物の重合体。
[37] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物を1種以上含む組成物を重合してなる重合体。
[38] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物を1種以上含む組成物。
[39] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物を含むことを特徴とする発光材料。
[40] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物を重合してなる発光材料。
[41] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の重合性化合物を1種以上含む組成物を重合してなる発光材料。
[42] [39]〜[41]のいずれか一つに記載の発光材料を用いた有機発光素子。
【発明の効果】
【0036】
本発明の新規な重合性化合物はイリジウム錯体部分を含む新規な重合体を与え、これを有機発光素子の発光材料として使用することにより高効率で発光し、かつ大面積化が可能で量産に適した有機発光素子を提供することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明により式(1)
【化27】


〔式中、X1、Y1、Z1の少なくとも1つは重合性官能基を有する置換基を表し、X1、Y1、Z1のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕で表される重合性化合物が提供される。
式(1)におけるX1、Y1、Z1のうちの重合性官能基を有する置換基における重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、付加重合性、縮合重合性のいずれであってもよいが、ラジカル重合性の官能基が好ましい。この重合性官能基としては炭素−炭素二重結合を有する基がこのましく、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基等のアルケノイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアシド基及びその誘導体などを有する置換基を挙げることができる。これらの重合性官能基の中で、その重合性という観点から、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ウレタン(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0038】
本発明における「ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基」とは、本発明の主旨を損なわない限り制限はなく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などのヘテロ原子を有していてもよい。好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリル基、アリルオキシ基、アラルキル基もしくはアラルキルオキシ基またはそれらのハロゲン置換体などが挙げられる。
【0039】
各式におけるX1、Y1、Z1のうちの重合性官能基を有しない置換基、Q1〜Q3としては水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、アミル、ヘキシル等のアルキル基、アラルキル基、またメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、ターシャリーブトキシ等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロポキシカルボニル基などのエステル基、アリール基等の有機基を挙げることができる。これらの中では水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0040】
各式におけるR1〜R16としては前記の定義の範囲に入ることを条件に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸メチル等のスルホン酸エステル基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、アミル、ヘキシル等のアルキル基、アラルキル基、またメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、ターシャリーブトキシ等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロポキシカルボニル基などのエステル基、アリール基等の有機基を挙げることができる。また、これらの有機基は、更にハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。これらの中では水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0041】
式(6)および式(9)におけるAはアクリロイル基もしくはメタクリロイル基またはアクリロイルオキシ基もしくはメタクリロイルオキシ基を有する炭素数3〜20の有機基である。有機基には本発明の主旨を損なわない限り、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などのヘテロ原子を有していてもよい。ここでいう有機基としてはアルキル基、アリル基、アラルキル基が好ましい。更にはイソシアネート結合を含んでいてもよい。
【0042】
次に、本発明による重合性化合物の合成方法の例を以下に挙げるが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0043】
その第1の合成方法は、式(15)で示されるイリジウムの二核錯体と式(16)で示される重合性置換基を有する化合物を反応させることにより単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物を得る方法である。
【化28】


〔式中、R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【化29】


〔式中、X1、Y1、Z1の少なくとも1つは重合性官能基を有する置換基を表し、X1、Y1、Z1のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0044】
式(15)のイリジウムの二核錯体は公知の方法(S. Lamansky et al., Inorganic Chemistry, 40, 1704 (2001))により合成することができる。式(15)のR1〜R16としては水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸メチル等のスルホン酸エステル基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、アミル、ヘキシル等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、またメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、ターシャリーブトキシ等のアルコキシ基、更にはアセトキシ基、プロポキシカルボニル基などのエステル基等の有機基を挙げることができる。また、これらの有機基は、更にハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。これらの中では水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0045】
式(16)で示される化合物の置換基X1、Y1、Z1の少なくとも1つは重合性官能基を有する置換基であり、式(1)の説明と同じものを意味する。また、式(16)で示される化合物の置換基X1、Y1、Z1のうちの重合性官能基を有しない置換基も式(1)の場合と同様である。
【0046】
本発明による重合性化合物の第2の合成方法は、式(15)で示されるイリジウムの二核錯体と式(17)で示される反応性置換基を有する化合物を反応させることにより反応性置換基を有する単核のイリジウム錯体を中間体として得、この中間体の反応性置換基と重合性置換基を有する化合物を反応させることにより単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物を得る方法である。
【化30】


〔式中、R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【化31】


〔式中、X2、Y2、Z2の少なくとも1つは反応性置換基、X2、Y2、Z2のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【0047】
式(17)のX2、Y2、Z2の少なくとも1つは反応性置換基であり、水酸基などの官能基を有する。官能基としては水酸基、メルカプト基、アミノ基などの活性水素を有する官能基、カルボキシル基などを例示することができるが、何らこれに限定されるものではない。これら官能基を有する反応性置換基としては水酸基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシフェニル基、メルカプト基、アミノ基などが挙げられる。
【0048】
また、この反応性置換基は保護基で保護されていてもよい。尚、この場合は保護基により保護されたまま反応を行って単核イリジウム錯体を得た後、脱保護により反応性置換基を有する単核イリジウム錯体を中間体として得る。その後、この中間体の反応性置換基と重合性官能基を有する化合物と反応させることにより、単核イリジウム錯体部分を含む重合性化合物を得る。なお、これら反応性置換基の官能基としては前述の重合性官能基は除かれる。
【0049】
式(19)で示される化合物の置換基X2、Y2、Z2のうちの反応性置換基でない置換基としては水素原子、ハロゲン原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、アミル、ヘキシル等のアルキル基、またメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、ターシャリーブトキシ等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロポキシカルボニル基などのエステル基、アリール基等の有機基を挙げることができる。また、これらの有機基は、更にハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0050】
イリジウム二核錯体と反応性置換基を有する式(17)で示される化合物との反応で得られる反応性置換基を有する単核イリジウム錯体と反応させる重合性官能基を有する化合物は重合性の基以外に式(17)の反応性置換基X2、Y2、Z2と反応する基を有する必要がある。そのような官能基としては、反応性置換基X2、Y2、Z2がヒドロキシメチル基、ヒドロキシル基など水酸基を含む場合はイソシアナト基やカルボキシル基を、X2、Y2、Z2がメルカプト基、アミノ基を含む場合はイソシアナト基や酸塩化物(R−COCl)基を、X2、Y2、Z2がカルボキシル基の場合は水酸基などを挙げることができる。
【0051】
本発明による重合性化合物の第2の合成法による場合には式(15)のR1〜R16は上記の単核イリジウム錯体と反応させる重合性官能基を有する化合物と反応しない基を選択しておく必要がある。
【0052】
上記単核イリジウム錯体と反応させる重合性官能基を有する化合物としては重合性酸塩化物や重合性イソシアネートを例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。これらの化合物における重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、付加重合性、縮合重合性のいずれであってもよいが、ラジカル重合性の官能基が好ましい。この重合性官能基としては炭素−炭素二重結合を有する基が好ましく、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基等のアルケノイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアシド基及びその誘導体など有するものを挙げることができる。これらの重合性官能基の中で、その重合性という観点から、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ウレタン(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。具体的には、重合性酸塩化物としてはアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられ、重合性イソシアネートとしてはメタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。なお、本発明の化合物を示す式(1)などの化学式は金属錯体構造を表し、O−C−C−C−Oは共鳴構造を表すが、化学的に許容される構造を含むことは言うまでもない。
【0053】
本発明による重合性化合物は2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド等の熱重合開始剤やベンゾフェノン等の紫外線重合開始剤を用いることにより容易に重合を行うことができ、イリジウム錯体部分を含む重合体を提供することができる。重合体は、本発明による重合性化合物のうち1種類によるホモ重合体、また、本発明の重合性化合物のうち2種類以上による共重合体、更には本発明の重合性化合物のうちの1種類以上と本発明の重合性化合物以外の重合性化合物の1種類以上との共重合体のいずれであってもよい。ここで、本発明の重合性化合物以外の重合性化合物としてはビニルカルバゾールなどの正孔輸送性化合物、重合性官能基を有するオキサジアゾール誘導体あるいはトリアゾール誘導体などの電子輸送性化合物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン及びその誘導体などのキャリア輸送性を有さない化合物を例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0054】
図1は本発明の有機発光素子構成の一例を示す断面図であり、透明基板上に設けた陽極と陰極の間にホール輸送層、発光層、電子輸送層を順次設けたものである。また、本発明の有機発光素子構成は図1の例のみに限定されず、陽極と陰極の間に順次、1)ホール輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層、のいずれかを設けたものでもよく、更には3)ホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料を含む層、4)ホール輸送材料、発光材料を含む層、5)発光材料、電子輸送材料を含む層、6)発光材料の単独層、のいずれかの層を一層設けるだけでもよい。また、図1に示した発光層は1層であるが、2つ以上の層が積層されていてもよい。
【0055】
本発明の重合性化合物を有機発光素子の発光層として形成する場合、本発明の重合性化合物を下層上に塗布後、重合してもよく、あらかじめ重合された重合物を塗布(コーティング)してもよい。塗布の場合、適切な溶媒に溶解したものを塗布し、その後、溶媒を乾燥することもできる。
【0056】
本発明の有機発光素子の発光層は発光材料として本発明の重合性化合物および/またはその重合物を含む層であるが、他の発光物質、ホール輸送物質、電子輸送物質などが含まれていてもよい。
【0057】
本発明に係る有機発光素子では発光層の両側または片側にホール輸送層、電子輸送層を形成させることにより、さらに発光効率及び/または耐久性の改善を達成できる。
【0058】
ホール輸送層を形成するホール輸送材料としてはTPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などのトリフェニルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などの既知のホール輸送材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。これらのホール輸送材料は単独でも用いられるが、異なるホール輸送材料と混合または積層して用いてもよい。ホール輸送層の厚さは、ホール輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが更に好ましい。
【0059】
電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、Alq3(トリスアルミニウムキノリノール)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体などの既知の電子輸送材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と混合または積層して用いてもよい。電子輸送層の厚さは、電子輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが更に好ましい。
【0060】
上記の各層に用いられる発光材料、ホール輸送材料および電子輸送材料はそれぞれ単独で各層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。これに使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0061】
上記の各層に用いられる発光材料、ホール輸送材料および電子輸送材料の成膜方法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、コーティング法、溶液塗布法などを用いることが可能で、これらに特に限定されることはないが、低分子化合物の場合は主として抵抗加熱蒸着および電子ビーム蒸着が用いられ、高分子材料の場合は主にコーティング法が用いられることが多い。
【0062】
本発明に係る有機発光素子の陽極材料としては、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子などの既知の透明導電材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。この透明導電材料による電極の表面抵抗は1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)であることが好ましい。これらの陽極材料の成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などを用いることができるが、これらに特に限定されることはない。陽極の厚さは50〜300nmが好ましい。
【0063】
また、陽極とホール輸送層または陽極に隣接して積層される有機層の間に、ホール注入に対する注入障壁を緩和する目的でバッファ層が挿入されていてもよい。これには銅フタロシアニンなどの既知の材料が用いられるが、特にこれに限定されることはない。
【0064】
本発明に係る有機発光素子の陰極材料としては、Al、MgAg合金、Caなどのアルカリ金属、AlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができるが、これらに特に限定されることはない。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmが更に好ましい。
【0065】
また、陰極と、電子輸送層または陰極に隣接して積層される有機層との間に、電子注入効率を向上させる目的で、厚さ0.1〜10nmの絶縁層が挿入されていてもよい。この絶縁層としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの既知の陰極材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。
【0066】
また、発光層の陰極側に隣接して、ホールが発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、ホール・ブロック層が設けられていてもよい。これにはトリアゾール誘導体やオキサジアゾール誘導体などの既知の材料が用いられるが、特にこれに限定されることはない。
【0067】
本発明に係る有機発光素子の基板としては、発光材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板が使用でき、ガラスのほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリカーボネートを始めとする透明プラスチックなどの既知の材料が使用できるが、特にこれらに限定されることはない。
【0068】
本発明の有機発光素子は、既知の方法でマトリックス方式またはセグメント方式による画素を構成することができ、また、画素を形成せずにバックライトとして用いることもできる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明について代表的な例を示し、更に具体的に説明する。尚、これらは説明のための単なる例示であって、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0070】
<測定装置等>1)1H−NMR日本電子(株)製
JNM EX270270MHz 溶媒:重クロロホルム2)元素分析装置RECO社製 CHNS−932型3)GPC測定(分子量測定)
カラム:Shodex KF−G+KF804L+KF802+KF801溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
温度 :40℃検出器:RI(Shodex RI−71)4)ICP元素分析島津製作所製 ICPS
8000
【0071】
<試薬類>特に断らない限り、市販品(特級)を精製することなく使用した。
【0072】
(実施例1)重合性化合物:[6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオナート]ビス[2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル]イリジウム(III){以下Ir(btp)2[1−(StMe)−acac]と略す}の合成スキーム(1A)に示すように、アセチルアセトンと4−ビニルベンジルクロライドを反応させて6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオンを合成した。即ち、水素化ナトリウム1.23g(60%
in oil)(31mmol)を窒素雰囲気下で秤量し、これに乾燥テトラヒドロフラン(以下THFと略す)60mlを加えて氷浴で0℃に冷却した。この懸濁液にアセチルアセトン2.5g(24mmol)とヘキサメチルホスホリックトリアミド(以下HMPAと略す)1mlの混合溶液を滴下すると無色の沈殿が生成した。0℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M)17.5ml(28mol)を滴下すると沈殿が溶解し、更に0℃で20分間撹拌した。得られた薄黄色の溶液に4−ビニルベンジルクロライド4.0g(26mmol)を滴下し、反応液を室温に戻して20分間撹拌後、希塩酸を加えて水層を酸性にした。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムに加えてヘキサン/ジクロロメタンの1:1(体積比)混合溶媒で展開し、主生成物を分取した。得られた溶液から減圧で溶媒を留去することにより、目的とする6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオン3.0g(14mmol)を褐色の液体として得た。収率56%。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0073】
1H NMR: enol; d 7.33 (d, J = 8.1 Hz, 2 H, aromatic), 7.14 (d, J = 8.4
Hz, 2 H, aromatic), 6.68 (dd, J = 8.1 Hz, 1 H, vinylic), 5.70 (d, J = 17.0Hz, 1
H, vinylic), 5.46 (s, 1 H, enol-methine), 5.20 (d, J = 11.1 Hz, 1H, vinylic),
2.91 (t, J = 5.7 Hz, 2 H, methylene), 2.58 (t, J = 7.3 Hz,2 H, methylene), 2.03
(s, 3 H, methyl). keto; d 7.33 (d, J = 8.1 Hz, 2H, aromatic), 7.14 (d, J = 8.4
Hz, 2 H, aromatic), 6.68 (dd, J = 8.1 Hz, 1 H, vinylic), 5.70 (d, J = 17.0 Hz,
1 H, vinylic), 5.20 (d, J = 11.1Hz, 1 H, vinylic), 3.53 (s, 2 H, C(=O)CH2C(=O)),
2.89 (m, 4 H, ethylene), 2.19 (s, 3 H, methyl). enol : keto = 6 : 1. E.A.:
Calcd for C14H9O2:C, 77.75; H, 7.46. Found: C,
77.49; H, 7.52.
【0074】
【化32】

【0075】
次いで、スキーム(1B)に示すように、この6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオンと常法(例えば S. Lamansky, et al., Inorganic Chemistry, 40, 1704 (2001) に記載)に従い合成したジ(μ−クロロ)テトラキス(2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル)ジイリジウム(以下、[Ir(btp)2Cl]2と略す。)を反応させてIr(btp)2[1−(StMe)−acac]を合成した。即ち、[Ir(btp)2Cl]2
253mg(0.20mmol)を10mlのN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)に懸濁させ、161mgの6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオン(0.74mmol)と64mgの炭酸ナトリウムおよび1.9mgの2,6−ジ−tert−ブチル−4−、メチルフェノール(以下BHTと略す)(0.0086mmol)を加えて80℃で1時間加熱撹拌した。得られた反応混合物に100mlの水と50mlのクロロホルムを加えてよく振とうし、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータで減圧乾固した。次にジクロロメタンを溶出液として、粗精製物をシリカゲルカラムで精製し、赤褐色の溶液を得た。この溶液を減圧下で濃縮し、ヘキサンを加えて−20℃で再結晶することによって目的とするIr(btp)2[1−(StMe)−acac]153mg(0.18mmol)を赤褐色の固体として得た(収率47%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0076】
1H NMR: d 8.40 (d, J = 5.4 Hz, 1 H, btp), 7.97 (d, J = 5.4 Hz, 1 H,
btp), 7.65 (m, 6 H, btp), 7.1 6.7 (m, 10 H, aromatic), 6.63 (dd, J = 17.8,11.1
Hz, 1 H, vinylic), 6.24 (d, J = 8.1 Hz, 1 H, btp), 6.16 (d, J = 7.8Hz, 1 H,
btp), 5.65 (d, J = 17.8 Hz, 1 H, vinylic), 5.22 (s, 1 H, diketonate-methine),
5.18 (d, J = 11.1 Hz, 1 H, vinylic), 2.56 (m, 2 H, ethylene), 2.37 (m, 2 H,
ethylene), 1.75 (s, 3 H, methyl). E.A.: Calcd for C40H31IrN2O2S2:
C, 58.02; H, 3.77; N, 3.38. Found: C, 57.79; H, 3.81; N,3.55.
【0077】
【化33】

【0078】
(実施例2)重合性化合物:[6−(4−メタクリロイルオキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオナート]ビス[2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル]イリジウム(III){以下Ir(btp)2[1−(MA−Ph−Me)−acac]と略す}の合成スキーム2Aに示すように、アセチルアセトンと、公知の方法(C. Cativiela,et al., J. Org. Chem., 60, 3074 (1995))により合成したヨウ化(4−ベンジルオキシ)ベンジルを反応させて6−(4−ベンジルオキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオンを合成した。即ち、水素化ナトリウム(60%
in oil)0.30g(7.5mmol)を窒素雰囲気下で秤量し、これにTHF20mlを加えて氷浴で0℃に冷却した。この懸濁液にアセチルアセトン0.75g(7.5mmol)とHMPA0.5mlの混合溶液を滴下すると無色の沈殿が生成した。0℃で10分間撹拌後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M)4.6ml(7.5mmol)を滴下し、更に0℃で20分間撹拌した。得られた薄黄色の透明な溶液に、ヨウ化(4−ベンジルオキシ)ベンジル2.28g(7.0mmol)をTHF10mlに溶かした溶液を滴下した。反応溶液を室温で1時間撹拌し、再び0℃に冷却した後、希塩酸を加えて中和した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムに通し(展開液:ジクロロメタン/ヘキサンの1:1(体積比)混合溶媒)、主生成物を分取して減圧乾固することにより、目的とする6−(4−ベンジルオキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオン1.31g(4.4mmol)を薄黄色の固体として得た(収率63%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0079】
1H NMR: enol; d 7.5 6.8 (m, 9 H, aromatic), 5.46 (s, 1 H,
enol-methine), 5.04 (s, 2 H, -O-CH2-), 2.88 (t, J = 7.6 Hz, 2 H,
ethylene), 2.55 (t,J = 8.4 Hz, 2 H, ethylene), 2.04 (s, 3 H, methyl). keto; d
7.5 6.8 (m,9 H, aromatic), 5.04 (s, 2 H, -O-CH2-), 3.53 (s, 2 H,
C(=O)CH2C(=O)), 2.84 (m, 4 H, ethylene), 2.19 (s, 3 H, methyl). enol
: keto = 5 : 1. E.A.: Calcd for C19H20O3: C,
77.00; H, 6.86. Found: C, 77.46; H, 6.77.
【0080】
【化34】

【0081】
次いで、スキーム(2B)に示すように、この6−(4−ベンジルオキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオンを水素化することにより6−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオンを合成した。即ち、窒素雰囲気下でPd−活性炭(10%)1.5gを秤量し、ジクロロメタン20mlと6−(4−ベンジルオキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオン1.31g(4.4mmol)を加えた。反応系内を1気圧の水素で置換し、室温で11時間撹拌した。得られた反応溶液を濾過して不溶物を除き、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムに加えてまずジクロロメタンで展開し、副生成物を除いた。続いてアセトン/ヘキサンの1:1(体積比)混合溶媒で溶出した化合物を含む溶液を減圧乾燥することにより、目的とする6−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオン0.70g(3.4mmol)を薄黄色の液体として得た(収率77%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0082】
1H NMR: enol; d 7.04 (d, J = 8.4 Hz, 2 H, aromatic), 6.65 (d, J = 8.4
Hz, 2 H, aromatic), 5.55 (br, 1 H, OH), 5.47 (s, 1 H, enol-methine), 2.86(t, J
= 7.3 Hz, 2 H, ethylene), 2.55 (t, J = 7.3 Hz, 2 H, ethylene), 2.04 (s, 3 H,
methyl). keto; d 7.04 (d, J = 8.4 Hz, 2 H, aromatic), 6.65 (d, J = 8.4 Hz, 2 H,
aromatic), 5.55 (br, 1 H, OH), 3.55 (s, 2 H, C(=O)CH2C(=O)), 2.83
(m, 4 H, ethylene), 2.19 (s, 3 H, methyl). enol : keto =5 : 1. E.A.: Calcd for
C12H14O3: C, 69.88; H, 6.84. Found: C, 69.67;
H, 6.79.
【0083】
【化35】

【0084】
次いでスキーム(2C)に示すように、この6−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオンと、常法に従い合成した[Ir(btp)2Cl]2を反応させて[6−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオナート]ビス[2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル]イリジウム(III){以下Ir(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]と略す}を合成した。即ち、[Ir(btp)2Cl]2245mg(0.19mmol)と111mgの炭酸ナトリウム(1.06mmol)を141mgの[6−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4−ヘキサンジオン](0.68mmol)の10mlDMF溶液中に溶解し、80℃で1.5時間加熱撹拌した。次に室温にまで冷却した反応混合物にクロロホルムと塩化アンモニウム水溶液を加えてよく振とうし、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータで溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン/ジクロロメタン/アセトン
= 5/10/1(体積比))に通し、分離した赤褐色の主生成物を含むバンドを分取して減圧乾固することにより、目的とするIr(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]215mg(0.26mmol)を赤褐色の固体として得た(収率70%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0085】
1H NMR: d 8.40 (d, J = 5.4 Hz, 1 H, btp), 8.06 (d, J = 5.4 Hz, 1 H,
btp), 7.63 (m, 6 H, btp), 7.04 (m, 3 H, btp), 6.81 (m, 3 H, btp), 6.66 (d, J=
8.4 Hz, 2 H, -C6H4-OH), 6.38 (d, J = 8.4 Hz, 2 H, -C6H4-OH),
5.22 (s,1 H, diketonate-methine), 5.20 (br, 1 H, OH), 2.48 (m, 2 H,
methylene),2.31 (m, 2 H, methylene), 1.75 (s, 3 H, methyl). E.A.: Calcd for C38H29IrN2O3S2:
C, 55.80; H, 3.57; N, 3.42. Found: C, 56.19; H, 3.57; N, 3.31.
【0086】
【化36】

【0087】
次いで、スキーム(2D)に示すように、このIr(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]とメタクリル酸クロライドを反応させることによりIr(btp)2[1−(MA−Ph−Me)−acac]を合成した。即ち、Ir(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]248mg(0.32mmol)を乾燥ジクロロメタン20mlに溶解し、トリエチルアミン0.25ml(1.8mmol)と0.20mlのメタクリル酸クロライド(2.0mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。次に反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジクロロメタン/アセトンの2:4:1(体積比)混合溶媒)で精製し、最初に溶出した赤褐色の溶液を分取して減圧で乾燥することにより、目的とするIr(btp)2[1−(MA−Ph−Me)−acac]180mg(0.20mmol)を赤褐色の固体として得た(収率64%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0088】
1H NMR: d 8.42 (d, J = 5.4 Hz, 1 H, btp), 8.10 (d, J = 5.4 Hz, 1 H,
btp), 7.65 (m, 6 H, btp), 7.1 6.7 (m, 10 H, aromatic), 6.40 (d, J = 8.1 Hz,1 H,
btp), 6.27 (d, J = 8.1 Hz, 1 H, btp), 6.12 (s, 1 H, olefinic), 5.71 (s, 1 H,
olefinic), 5.19 (s, 1 H, diketonate-methine), 2.51 (m, 2 H, C2H4),
2.39 (m, 2 H, C2H4), 1.89 (s, 3 H, methacryl-methyl),
1.80 (s, 3 H, diketonate-methyl). E.A.: Calcd for C42H33IrN2O4S2:
C, 56.93; H, 3.75; N, 3.16. Found: C, 57.09; H, 3.77; N, 4.18.
【0089】
【化37】

【0090】
(実施例3)重合性化合物:{6−[4−(2−メタクリロイルオキシ)カルバモイルオキシフェニル]−2,4−ヘキサンジオナート}ビス[2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル]イリジウム(III){以下Ir(btp)2[1−(MOI−Ph−Me)−acac]と略す}の合成スキーム(3A)に示すように、実施例2で得たIr(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]とメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:MOI、昭和電工製)を反応させることにより、Ir(btp)2[1−(MOI−Ph−Me)−acac]を合成した。即ち、Ir(btp)2[1−(OH−Ph−Me)−acac]215mg(0.26mmol)を10mlのTHFに溶解し、4.0mgのBHT(0.18mmol)と35mgのジブチルスズ(IV)ジラウレート(以下DBTLと略す)および401mgのMOI(2.58mmol)を加えて湯浴上で3時間加熱還流した。次に室温にまで冷却した反応溶液を減圧乾燥し、残渣をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン/ジクロロメタン/アセトンの5:10:1(体積比)混合溶媒)で精製した。最初に溶出した赤褐色の主生成物のバンドを分取して減圧乾固することによって、目的とするIr(btp)2[1−(MOI−Ph−Me)−acac]223mg(0.23mmol)を赤褐色の固体として得た(収率87%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0091】
1H NMR: d 8.40 (d, J = 5.7 Hz, 1 H, btp), 8.12 (d, J = 5.1 Hz, 1 H,
btp), 7.65 (m, 6 H, btp), 7.1 6.7 (m, 10 H, aromatic), 6.25 (d, J = 8.4 Hz,1 H,
btp), 6.20 (d, J = 8.1 Hz, 1 H, btp), 6.16 (s, 1 H, olefinic), 5.63 (s, 1 H,
olefinic), 5.26 (br-s, 1 H, NH), 5.21 (s, 1 H, diketonate-methine), 4.31 (t, J
= 5.4 Hz, 2 H, N-C2H4-O), 3.59 (t, J = 5.4 Hz, 2 H, N-C2H4-O),
2.55 (m, 2 H, C-C2H4-C), 2.34 (m, 2 H, C-C2H4-C),
1.98 (s, 3 H,methacryl-methyl), 1.76 (s, 3 H, diketonate-methyl). E.A.: Calcd
for C45H38IrN3O6S2: C,
55.54; H, 3.94; N, 4.32. Found: C, 55.13; H, 3.89; N,4.58.
【0092】
【化38】

【0093】
(実施例4)重合性化合物:[1−(2−メタクリロイルオキシ)カルバモイルオキシ−2,4−ペンタンジオナート]ビス[2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル]イリジウム(III){以下Ir(btp)2(1−MA−acac)と略す}の合成スキーム(4A)に示すように、常法に従い合成した[Ir(btp)2Cl]2と、公知の方法(欧州特許EP0514217)を参考に合成した1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,4−ペンタンジオン(1−TBDMSO−2,4−ペンタンジオン)を反応させてIr(btp)2(1−OH−acac)を合成した。即ち、[Ir(btp)2Cl]2449mg(0.35mmol)および137mgの炭酸ナトリウム(1.29mmol)を310mgの(1−TBDMSO−2,4−ペンタンジオン)(1.35mmol)の15mlDMF溶液に溶解し、80℃で1時間加熱撹拌した。得られた反応溶液を室温にまで冷却し、クロロホルムおよび希塩酸を加えてよく振とうした。続いて有機層を水で洗浄し、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン)で精製し、最初に溶出した赤褐色の化合物を分取して減圧乾燥した。得られた固体を10mlの乾燥THFに溶解してテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド(n−Bu4NF)の1.0M
THF溶液0.60ml(0.60mmol)を激しく撹拌しながら滴下した。この溶液を室温で0.5時間撹拌した後、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジクロロメタン/アセトンの5:10:2(体積比)混合溶媒)で精製し、赤褐色の主生成物を分取して減圧乾燥することによって、目的とするIr(btp)2(1−OH−acac)360mg(0.49mmol)を赤褐色の固体として得た(収率71%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0094】
1H NMR: d 8.40 (d, J = 5.4 Hz, 1 H, btp), 8.35 (d, J = 5.1 Hz, 1 H,
btp), 7.79 (m, 2 H, btp), 7.63 (m, 4 H, btp), 7.04 (m, 4 H, btp), 6.81 (t, J=
7.3 Hz, 2 H, btp), 6.20 (t, J = 6.8 Hz, 2 H, btp), 5.24 (s, 1 H,
diketonate-methine), 3.89 (dd, J = 8.1, 5.1 Hz, 1 H, -CHH-OH), 3.80 (dd, J
=8.1, 5.1 Hz, 1 H, -CHH-OH), 2.92 (t, J = 5.1 Hz, 1 H, OH), 1.83 (s, 3 H,
diketonate-methyl). E.A.: Calcd for C31H23IrN2O3S3:
C, 51.15; H, 3.18; N, 3.85. Found: C, 51.41; H, 3.36; N, 3.49.
【0095】
【化39】

【0096】
次いで、スキーム(4B)に示すように、このIr(btp)2(1−OH−acac)とMOIの付加反応を行うことによりIr(btp)2(1−MA−acac)を合成した。即ち、Ir(btp)2(1−OH−acac)177mgと3.0mgのBHT(0.0086mmol)および20mgのDBTL(0.032mmol)を10mlのTHFに溶解し、100mgのMOI(0.64mmol)を加えて油浴上で2時間加熱還流した。次に室温にまで冷却した反応溶液を減圧乾燥し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジクロロメタン/アセトンの10:20:3(体積比)混合溶媒)で精製した。二番目に溶出した赤褐色の主生成物を分取して減圧乾固し、ジクロロメタン/ヘキサン混合溶媒に溶解して−20℃で再結晶することにより、目的とするIr(btp)2(1−MA−acac)173mg(0.20mmol)を赤褐色の針状晶として得た(収率81%)。同定はCHN元素分析、1H−NMRで行った。
【0097】
1H NMR: d 8.49 (d, J = 5.7 Hz, 1 H, btp), 8.40 (d, J = 5.4 Hz, 1 H,
btp), 7.74 (m, 2 H, btp), 7.61 (m, 4 H, btp), 7.03 (m, 4 H, btp), 6.80 (m, 2H,
btp), 6.21 (m, 2 H, btp), 6.06 (s, 1 H, olefinic), 5.55 (s, 1 H, olefinic),
5.31 (s, 1 H, diketonate-methine), 4.92 (br-s, 1 H, NH), 4.25 (s, 2 H,
N-C(=O)-O-CH2-), 3.97 (m, 2 H, N-CH2-CH2-O),
3.16 (m, 2 H, N-CH2-CH2-O), 1.91 (s, 3 H, CH3C(=CH2)-),
1.81 (s, 3 H, diketonate-methyl). E.A.: Calcd for C38H32IrN3O6S2:
C, 51.69; H, 3.65; N, 4.76. Found: C, 51.88; H, 3.65; N, 4.51.
【0098】
【化40】

【0099】
(実施例5)N−ビニルカルバゾール−Ir(btp)2[1−(StMe)−acac]共重合体(以下、VCz−co−Ir(btp)2[1−(StMe)−acac]と略す。)の合成発光機能を有する単位としてIr(btp)2[1−(StMe)−acac]、ホール輸送機能を有する単位としてN−ビニルカルバゾールを含有する発光材料として上記共重合体を合成した。N−ビニルカルバゾール
1.55g(8.0mmol)、Ir(btp)2[1−(StMe)−acac] 33mg(0.04mmol)、AIBN13mg(0.08mmol)を脱水トルエン40mlに溶解させ、さらに1時間アルゴンを吹き込んだ。この溶液を80℃まで昇温し、重合反応を開始させ、そのまま8時間攪拌した。冷却後、反応液をメタノール 250ml中に滴下して重合物を沈殿させ、濾過により回収した。さらに、回収した重合物をクロロホルム25mlに溶解させ、この溶液をメタノール
250ml中に滴下して再沈殿させることにより精製した後、60℃で12時間真空乾燥させることにより目的物であるVCz−co−Ir(btp)2[1−(StMe)−acac]1.11gを得た。回収率、GPC測定結果、ICP元素分析によるIr錯体含有量を表1に示す。
【0100】
(実施例6〜8)Ir(btp)2[1−(StMe)−acac]に替えて、それぞれ実施例2〜4で作製した重合性化合物を用いること以外は実施例5と同様にして共重合体を合成した。回収率、GPC測定結果、ICP元素分析によるIr錯体含有量を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
(実施例9〜12)有機発光素子の作製、評価25mm角のガラス基板の一方の面に、陽極となる幅4mmの2本のITO電極がストライプ状に形成されたITO(酸化インジウム錫)付き基板(ニッポ電機、Nippo Electric Co., LTD.)を用いて有機発光素子を作製した。はじめに、上記ITO付き基板のITO(陽極)上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(バイエル社製、商品名「バイトロンP」)をスピンコート法により、回転数3500rpm、塗布時間40秒の条件で塗布した後、真空乾燥器で減圧下、60℃で2時間乾燥を行い、陽極バッファ層を形成した。得られた陽極バッファ層の膜厚は約50nmであった。次に、発光材料、電子輸送材料を含む層を形成するための塗布溶液を調製した。表2に示す発光材料を21.0mg、電子輸送材料として2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert―ブチルフェニ
ル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)(東京化成工業製)9.0mgをクロロホルム(和光純薬工業製、特級)2970mgに溶解し、得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して塗布溶液とした。次に、陽極バッファ層上に、調製した塗布溶液をスピンコート法により、回転数3000rpm、塗布時間30秒の条件で塗布し、室温(25℃)にて30分間乾燥することにより、発光材料、電子輸送材料を含む層を形成した。得られた発光材料、電子輸送材料を含む層の膜厚は約100nmであった。次に発光材料、電子輸送材料を含む層を形成した基板を蒸着装置内に載置し、銀、マグネシウムを重量比1:10の割合で共蒸着し、ストライプ状に配列された幅3mmの2本の陰極を陽極の延在方向に対して直交するように形成した。得られた陰極の膜厚は約50nmであった。最後に、アルゴン雰囲気中において、陽極と陰極とにリード線(配線)を取り付けて、縦4mm×横3mmの有機発光素子を4個作製した。(株)アドバンテスト社製
プログラマブル直流電圧/電流源 TR6143を用いて上記有機EL素子に電圧を印加し発光させ、その発光輝度を(株)トプコン社製 輝度計 BM−8を用いて測定した。その結果、発光開始電圧、20Vでの初期輝度は表2の如くなった(各発光材料を用いた素子4個の平均)。
【0103】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の有機発光素子の断面図の例である。
【符号の説明】
【0105】
1 ガラス基板
2 陽極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(18)で示される化合物。
【化1】


〔式中、X2、Y2、Z2の少なくとも1つは水酸基を有する置換基を表し、X2、Y2、Z2のうちの残りはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。R1〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【請求項2】
式(18)におけるX2またはZ2が水酸基を有する置換基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(19)で示される化合物。
【化2】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【請求項4】
式(20)で示される化合物。
【化3】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕
【請求項5】
式(18)におけるY2が水酸基を有する置換基である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(21)で示される化合物。
【化4】


〔式中、nは0〜20の整数を表し、Q2およびQ3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表す。〕


【図1】
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【公開番号】特開2007−99776(P2007−99776A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290648(P2006−290648)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【分割の表示】特願2001−350076(P2001−350076)の分割
【原出願日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】