説明

重合性樹脂組成物より得られる層を設けた高耐久性偏光板

【課題】湿熱耐久性試験および乾熱耐久性試験において、偏光特性の低下および色変化が大いに改良した液晶ディスプレイ用偏光板を提供する。
【解決手段】二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、特定の重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5μm乃至10μmである層を少なくとも1層以上を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性を向上させた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光素膜は一般に、二色性色素であるヨウ素又は二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させ製造されている。この偏光素膜の少なくとも片面に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して偏光板とされ、液晶表示装置などに用いられる。二色性色素としてヨウ素を用いた偏光板はヨウ素系偏光板と呼ばれ、一方、二色性色素として二色性染料を用いた偏光板は染料系偏光板と呼ばれる。これらのうち、ヨウ素系偏光板は、染料系偏光板に比べ、高透過率で高偏光度、すなわち高コントラストを示すことから、一般的な液晶モニター、液晶テレビ、携帯電話、PDAなどに広く用いられている。しかしながら、ヨウ素系偏光板は光学特性の面では染料系偏光板に勝っているものの、光学耐久性の面では染料系偏光板に大きく劣っており、例えば、ヨウ素系偏光板を高温多湿下に放置すると、大きく脱色し、偏光度が低下するなどの問題が生じていた。また、染料系偏光板であっても、湿熱試験において光学特性が全く変化しない訳ではなく、更なる高耐久性が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−5836
【特許文献2】特開2001−272534
【特許文献3】特開2004−12578
【特許文献4】特開2001−166139
【特許文献5】特開2003−185842
【特許文献6】特開2004−77579
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】紫外線硬化システム 総合技術センター発行, 加藤清視著, P259-303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透過率及び偏光度が高く、高コントラストで、かつ、耐湿熱性にも優れる偏光板が求められている。この要望に対する発明として、特許文献1、特許文献2に記載されているようにヨウ素系偏光板の保護フィルムによる改善方法や、また、特許文献3、特許文献4のようにトリアセチルセルロースの保護フィルムを接着する接着剤を改質する方法によって乾熱耐久性、湿熱耐久性を向上させることが記載されている。このように、保護フィルム又は接着剤によって偏光板の耐久性を向上させている技術がある。しかしながら、まだ充分ではなく、また、安価で簡易的な偏光板の湿熱耐久性の向上が切望されている。
【0006】
さらに、偏光板の耐久性を向上させる処方として特許文献5、特許文献6のように偏光子の片面にエネルギー線重合性化合物によって形成された保護層を有する偏光板が知られている。しかしながら、特許文献5または特許文献6の処方のように偏光子の片面にエネルギー線重合性化合物によって形成された保護層を有するだけでは湿熱耐久性が不十分であって、その保護層の膜厚によっては重合性化合物の未硬化モノマーが増えて、逆に湿熱耐久性および乾熱耐久性が低下し、かつ、密着性が不十分であるという問題点がある。また、公知の技術であるハードコート層などの樹脂硬化層を有する偏光板はあるが、ハードコート層などの樹脂層を設けるだけでは高度に湿熱耐久性が向上するとは限らず、かつ、乾熱耐久性試験で変色する等劣化が激しい偏光板になっていた。
【0007】
前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物で、膜厚5μmの硬化樹脂膜層とした場合の該樹脂膜層の透湿度が24時間で1500g/m以下となる少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部と、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部と、重合開始剤(C)0.1〜10重量部を含有する重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5〜10μmである層を少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする偏光板は、耐久性、主に湿熱耐久性が大きく向上し、かつ、乾熱耐久性においても色変化の起こらない偏光板が得られることを新規に見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
「(1)二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物であって、膜厚5μmの硬化樹脂膜層とした場合の該樹脂膜層の透湿度が24時間で1500g/m以下となる少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部と、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部と、重合開始剤(C)0.1〜10重量部を含有する重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5〜10μmであって、重合性樹脂組成物を硬化させた層を設けたときの偏光板の積層構成において、保護層/接着層/偏光素膜/接着層/保護層の構成における保護層と偏光素膜の間に少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする偏光板。
(2)重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、保護層(L)と偏光素膜の間に少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(3)重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、保護層(L)と接着層(L)との間に、少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする(1)または(2)のいずれか一項に記載の偏光板。
(4)保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)と接着層(L)との間と、保護層(M)と接着層(M)の間、それぞれの層の間に少なくとも1層以上づつ設けられていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の偏光板。」
に関します。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偏光板は、湿熱環境下、例えば温度65℃、相対湿度93%でヨウ素系偏光板であっても脱色が少なく透過率変化及び偏光度の低下が少ない偏光板となる。ディスプレイ用偏光板における高透過率、高コントラスト、かつ耐久性の高い偏光板が得られる。本発明の重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有する偏光板は、耐久性が大きく向上するだけでなく、密着性も良好であって、かつ、樹脂層が熱または湿度によって変色が起こらないという特徴を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明は、二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物で、膜厚5μmの硬化樹脂膜層とした場合の該樹脂膜層の透湿度が24時間で1500g/m以下となる少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部と、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部と、重合開始剤(C)0.1〜10重量部を含有する重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5〜10μmである層を少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする偏光板に関するものである。
【0011】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、例えば非特許文献1に示されるような化合物である。しかし本発明では、非特許文献1に限定されるものではなく、公知の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが出来る。それら化合物と重合開始剤を用いて、重合性樹脂組成物とする。ただし、本発明では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であっても、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)においては、硬化した後の膜厚が5μmとなるように樹脂膜層を形成し、該樹脂膜層のJIS―Z0208に基づく透湿度が24時間で1500g/m以下となる化合物であることを特徴とする。透湿度は、より好ましくは24時間で1100g/m以下であることが良く、さらに好ましくは24時間で900g/m以下の樹脂、もっと好ましくは24時間で800g/m以下の樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
透湿度を評価する方法は、半晒クラフト紙(トーツヤ・エコー社より入手)に固形分濃度5重量%のポリビニルアルコールを1μmの厚みにアンカー塗工したものに(メタ)アクリロイル基を有する化合物を塗工する。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂10重量部、トルエン5重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ製イルガキュアー184)0.6重量部を混合し、組成物とした。その組成物を溶剤揮発後の樹脂固形分が5μmの厚みになるようにポリビニルアルコールをアンカー塗工した該半晒クラフト紙に塗工した。その紙をJIS―Z0208に基づき透湿度を測定した。
【0013】
前記方法で得られた(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる塗膜の透湿度を表1に示す。

表1 (メタ)アクリロイル基を有する化合物を塗膜にした時の透湿度

この結果から、ジエチレングリコールジアクリレート、ならびにポリエチレングリコール400ジアクリレートなどは透湿度が高い。
【0014】
表1に示す塗膜にした時の透湿度が低い化合物を使用することで、湿熱耐久性は向上する。しかしながら、硬化する化合物において、層を形成するだけで十分な硬度、密着性、および、偏光板の耐久性をより向上させることはできない。耐久性を向上させるには前記の塗膜にした時の透湿度が24時間で1500g/m以下となる(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)だけでなく、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)と、重合開始剤(C)とで構成される重合性樹脂組成物であることが良い。その含有量は、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部、(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部、重合開始剤(C)0.1〜10重量部を含有することが良い。
【0015】
25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)は、(メタ)アクリレート化合物の水への溶解度が低いほど好ましい。25℃の水に対して、(メタ)アクリレート化合物の溶解度を確認する方法としては、25℃の蒸留水100gに対する(メタ)アクリレート化合物を混合させた場合の溶解度を確認すれば良い。その水に対する溶解度が1重量%以下の(メタ)アクリレート化合物が本発明で用いられる(メタ)アクリレート化合物(B)に相当する。(メタ)アクリレート化合物の水への溶解度が高い場合、つまりは親水性が強い場合は、重合性樹脂組成物によって得られる層の吸水率が高く、密着性および光学耐久性を向上させるには至らない。また、この方法によれば、表1記載の透湿度を計測できない(メタ)アクリロイル基が1つだけの(メタ)アクリレート化合物であっても溶解度が計測でき、パラメーターとして有用である。
【0016】
25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である(メタ)アクリレート化合物(B)に該当しない化合物か否かは下記の表2より確認できる。

表2 (メタ)アクリロイル基を有する化合物の溶解度 (g/100ml水)

表2から分かるように、ブタンジオールモノアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ビニルアセテート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール400ジアクリレート又はポリエチレングリコール200ジアクリレートの25℃の水に対する溶解度は1重量%以上である。これらのような(メタ)アクリレート化合物を用いてしまうと、硬度、密着性、偏光板の耐久性を向上するには至らない。
【0017】
さらに(メタ)アクリレート化合物(B)において、さらに硬度、密着性、偏光板の耐久性を向上させるには、分子内に少なくとも水酸基を1つ以上有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物(a)、または、少なくとも1つ以上のジシクロペンタジエン基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物(b)を用いるのが良い。(メタ)アクリレート化合物(B)の(メタ)アクリロイル基は1つ以上有していれば良い。分子内に水酸基を有する化合物は、少なくとも1種類以上を重合性樹脂組成物100重量部中に1重量部以上含有してるだけでも耐久性は向上するが、10重量部以上が好ましく、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上含むことが良い。
【0018】
分子内に少なくとも水酸基を1つ以上有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物(a)としては、EHC変性ブチルアクリレート(長瀬産業社製 デナコールDA-151)、グリセロールメタクリレート(日本油脂社製ブレンマーGLM)、2−ヒドロキシー3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(日本油脂社製ブレンマーQA)、EO変性燐酸アクリレート(共栄社油脂社製 ライトエステルP-A)、EO変性フタール酸アクリレート(大阪有機社製ビスコート2308)、EO、PO変性フタル酸メタクリレート(共栄社油脂社製 ライトエステルHO)、アクリル化イソシアヌレート(東亞合成社製アロニックスM-215)、EO変性ヒ゛スフェノールAジアクリレート(日本化薬社製カヤラッド
R-115)、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー社製SR-399)、グリセロールジメタクリレート(長瀬産業社製
デナコールDM-811)、グリセロールアクリレート(日本油脂社製ブレンマーGAM)、グリセロールジメタクリレート(日本油脂社製
ブレンマーGMR)、ECH変性グリセロールトリアクリレート(長瀬産業社製デナコールDA-314)、ECH変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製カヤラッドR-167)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製カヤラッドPET-30)、ステアリン酸変性ペンタエルスリトールジアクリレート(東亞合成社製
アロニックスM-233)、ECH変性フタル酸ジアクリレート(長瀬産業社製 デナコールDA-721)、トリグリセロールジアクリレート(共栄社油脂社製エポキシエステル 80
MFA)などが挙げられる。
【0019】
前記(b)のジシクロペンタジエン骨格を有する化合物とは、例えば、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、アダマンタン骨格を有する樹脂を指す。その中で、より湿熱耐久性を向上させるには、ジシクロペンタニル骨格又はジシクロペンテニル骨格が好ましい。ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物は、少なくとも1種類以上を重合性樹脂組成物100重量部中に1重量部以上含有してるだけでも耐久性は向上するが、10重量部以上が好ましく、より好ましくは15重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上含むことが良い。
【0020】
前記ジシクロペンタニル化合物を有する化合物としては、例えば、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成社製FA-513A)、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成社製FA-513M)又はジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド
R-684)などが良い。ジシクロペンタニル骨格を有する樹脂が最も好ましい。
【0021】
前記ジシクロペンテニル骨格を有する化合物としては、例えば、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成社製FA-511A)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成社製 FA-512A)又はジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成
FA-512M)などが良い。
【0022】
前記アダマンタン骨格を有する化合物としては、例えば、2−メチルー2−アダマンチルメタクリレート(出光興産社製Adamantate
MM), 2−エチルー2アダマンチルメタクリレート(出光興産社製 Adamantate EM), 3−ヒドロキシー1−アダマンチルメタクリレート(出光興産社製 Adamantate HM), 3−ヒドロキシー1−アダマンチルアクリレート(出光興産社製 Adamantate HA), 2−メチルー2−アダマンチルアクリレート(出光興産社製 Adamantate MA)又は 2−エチルー2−アダマンチルアクリレート(出光興産社製 Adamantate EA)などが良い。
【0023】
(メタ)アクリレート化合物の中には、(メタ)アクリレート化合物(A)かつ(メタ)アクリレート化合物(B)となる樹脂が存在する。そういった両方の性質を満たす化合物は、他に配合する化合物の性質によって、(メタ)アクリレート化合物(A)として用いるか、または(メタ)アクリレート化合物(B)として用いるかを使い分けても構わない。そういった樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製
カヤラッド PET-30)、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド R-167)などが挙げられる。
【0024】
湿熱耐久性と、偏光板の層間密着性をより向上させるには、前記(メタ)アクリレート化合物(B)が、水酸基を1つ以上有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物(a)と、ジシクロペンタジエン骨格を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物(b)の2つの成分を共に有していることが、より好ましい。それらは1種類ずつでも良いが、複数種よりなる成分が混合しても良い。それら2成分の(メタ)アクリレート化合物(a)と(b)の含有重量比率は5:9乃至11:3である樹脂組成物が良く、該(メタ)アクリレート化合物(B)の比率よりなる樹脂組成物より得られる層を有する偏光板は、さらに耐久性が向上する。
【0025】
より十分に安定した硬度、および偏光板の耐久性を向上できる樹脂組成物を得るためには、(A)又は(B)で(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する化合物が、重合性樹脂組成物100重量部中に50重量部以上含有していることが好ましい。より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上含有することが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物(A)は、ジシクロペンタジエン骨格、ペンタエリスリトール骨格、ネオペンチルグリコール骨格、トリメチロールプロパン骨格又はジシクロペンタジエン骨格のいずれかが含まれる化合物が耐久性を向上さえるため、より好ましい。ペンタエリスリトール骨格、ネオペンチルグリコール骨格又はトリメチロールプロパン骨格のいずれかを有する化合物は、少なくとも1種類以上を重合性樹脂組成物100重量部中に30重量部以上、好ましくは5重量部、さらに好ましくは70重量部含むことが好ましい。
【0027】
前記ペンタエリスリトール骨格を有する化合物としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド PET-30)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド
PET-40)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(サートマー社製 SR-367)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製
カヤラッド DPHA)、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー社製 SR-399)、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド D-310)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド D-320)、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド D-330)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド DPCA-20、日本化薬社製 カヤラッド DPCA-60、日本化薬社製 カヤラッド DPCA-120)、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート(東亜合成社製 アロニックスM-233)などが良い。好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド PET-30)が最も好ましい。
【0028】
前記ネオペンチルグリコール骨格を有する化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(日立化成社製 FA-125M)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製カヤラット゛NPGDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(サートマー社製 SR-248)、ヒドロキピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製カヤラッド MANDA)、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製カヤラッド HXシリーズ)、脂環式変成ネオペンチルグリコールアクリレート(日本化薬社製 カヤラット゛R-629、日本化薬社製 カヤラッド R-644)又はビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート(日本化薬社製カヤラッド R-526)などがある。
【0029】
前記トリメチロールプロパン骨格を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製 SR-350)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製 SR-355)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬社製カヤラッド R-604)、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマー社製SR-450)、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製
カヤラッド TPA-シリーズ)又はECH変性トリメチロールプロパントリアクリレート(長瀬産業社製 デコナールDA-321)などがある。
【0030】
以上の化合物を少なくとも1種以上で混合する際には、(メタ)アクリレート化合物(A)は、溶媒を除く重合性樹脂組成物100重量部中に30重量部以上、より好ましくは50重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上含有していることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物(B)は、溶媒を除く重合性樹脂組成物100重量部中に10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上含有していることが好ましい。
【0031】
本発明で使用される化合物またはその重合性樹脂組成物が紫外線によって重合する場合には、紫外線重合開始剤(C)を用いることで重合反応をさせる。紫外線重合開始剤としては例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュアー907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製
イルガキュアー184)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュアー2959)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製ダロキュアー953)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製
ダロキュアー1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製
イルガキュアー651)等のベンゾイン系化合物、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬社製カヤキュアーMBP)等のベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン(日本化薬社製
カヤキュアーCTX)、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン(日本化薬社製カヤキュアーRTX)、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロオチオキサンソン(日本化薬社製
カヤキュアーCTX)、2,4−ジエチルチオキサンソン(日本化薬社製カヤキュアーDETX)、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン(日本化薬社製 カヤキュアーDITX)等のチオキサンソン系化合物等が挙げられる。より好ましくは、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュアー907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製
イルガキュアー184)又は2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュアー651)が良い。これらの紫外線重合開始剤(C)は1種類でも複数でも任意の配合割合で混合して使用することができる。
【0032】
ベンゾフェノン系化合物やチオキサンソン系化合物を用いる場合には、紫外線重合反応を促進させるために、助剤を併用することも可能である。そのような助剤としては例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4'―ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル又は4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物が挙げられる。
【0033】
前記紫外線重合開始剤および助剤の添加量は、偏光性能の低下が起こらない範囲で使用することが好ましく、紫外線重合開始剤の量は、重合性組成物中の(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上12重量部以下、より好ましくは2重量部以上10重量部以下程度がよい。また、助剤は紫外線重合開始剤に対して、0.5倍から2倍量程度がよい。
【0034】
本発明で使用される化合物またはその樹脂組成物が熱硬化型の場合には、重合開始剤、架橋剤及び/又は開始触媒を用いる。架橋剤の種類としては、イソシアネート系、ホウ素系、チタネート系等の種々の公知の化合物を用いることができ、重合を促進させるものであれば限定されない。その添加量は、重合性樹脂組成物100重量部中に0.1重量部以上20重量部以下、より好ましくは該組成物100重量部中に1重量部以上10重量部以下程度がよい。
【0035】
偏光板に重合性樹脂組成物層を形成させる方法としては、例えば、該組成物を直接または適当な溶剤を用いて希釈し、保護層または二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムに塗布する。その後加熱等により溶剤を除去し、加熱、または紫外線を照射することにより重合性樹脂組成物を硬化させた層を得ることができる。塗布する際に用いられる該組成物の溶液の溶剤としては、該組成物の溶解性、塗布時の基板上へのぬれ性に優れ表面性の低下を起こさないものであれば特に制限はない。そのような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン又は2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等のケトン類、n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール又はイソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、酢酸メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシエチル又はサクサンエトキシエチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトホルムアミドが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、トルエン、シクロペンタノン又は酢酸エチルが良い。また、溶剤は単一でも混合物でもよい。該組成物を溶解する際の該組成物の濃度は溶剤溶解性、基板上へのぬれ性、塗布後の厚みなどによって異なるが、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜80重量%程度がよい。
【0036】
また、基板上へ塗布する際、該基板上へのぬれ性が乏しい場合や、形成された該組成物層の表面性が悪い場合は、それらを改善するために該組成物中に種々のレベリング剤を添加することも可能である。レベリング剤の種類としては、シリコン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系又はチタネート系等の種々の化合物を用いることができる。その添加量は、重合性樹脂組成物100重量部中に0.0001重量部以上10重量部以下、より好ましくは該組成物100重量部中に0.1重量部以上5重量部以下程度がよい。
【0037】
基板上へ形成された該組成物層を硬化した後、硬化した層と保護フィルムとの密着性が悪い場合は、それらを改善するために該組成物中に種々の架橋剤を添加することも可能である。架橋剤の種類としては、イソシアネート系、ホウ素系、チタネート系又はシリコン系等の種々の化合物を用いることができる。その添加量は、重合性樹脂組成物100重量部中に0.0001重量部以上20重量部以下、より好ましくは該組成物100重量部中に0.1重量部以上10重量部以下程度がよい。
【0038】
偏光板に重合性樹脂組成物の層を形成させる方法として、保護層へコーティングすることで樹脂層を設けても良いし、二色性色素およびホウ酸を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムに直接コーティングするなどの方法で層を設けても良い。または、保護層または二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムに塗布するだけではなく、あらかじめ別のフィルムに塗布し、硬化した層を保護層または二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムに転写、または積層させる方法でも良い。さらには、接着層を設けると同時に層を設ける方法も効率が良く、さらには接着層自体が重合性樹脂組成物であることが最も簡易的に偏光板を作製できる。塗布する方法は特に限定されず、例えば、スピンコート方式、ワイヤーバーコート方式、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、カレンダーコート方式、スプレーコート方式又はメニスカスコート方式等などによる方法が挙げられる。
【0039】
本発明で使用される重合性樹脂組成物よりなる硬化層は加熱または紫外線照射により十分に重合し、未反応分が極力少ないことが好ましい。その程度は、硬化後の樹脂組成物100重量部中の未反応の(メタ)アクリレート化合物が0重量部以上5重量部以下、より好ましくは0重量部以上3重量部以下、さらに好ましくは0重量部以上1重量部以下になるようにするのがよい。そのような層を得る方法としては、例えば塗布後の樹脂組成物の層の厚さを最適化する方法、添加する光重合開始剤の種類や量を最適化する方法、十分な加熱または紫外線を照射する方法、窒素等の不活性ガス中で行うなどの紫外線照射時の雰囲気を変えて硬化させる方法などが挙げられる。簡易的な方法は、樹脂層の厚さを最適化する方法が、樹脂濃度を変えたり、樹脂塗布量を変えるだけで最適化できるので、最も簡易的である。重合性樹脂組成物を硬化させた層の厚みは0.5μm乃至10μmが良く、より好ましくは1μm乃至8μm、さらに好ましくは2μm乃至6μmが良い。10μmより厚いと、残留未反応モノマーが増えて、湿熱耐久性が不十分であり、かつ、乾熱耐久性試験において偏光板が赤変するため不適である。0.5μmより薄い層では逆に湿熱耐久性の向上には至らない。紫外線の照射量は、(メタ)アクリレート化合物の種類、光重合開始剤の種類と添加量、膜厚によって異なるが、例えば100〜1500mJ/cm程度がよい。こうして重合性樹脂組成物によりなる層を偏光板に設けることによって湿熱耐久性が向上する。
【0040】
また、重合性樹脂組成物よりなる層は、アルカリ性溶液によって処理されても透明であることが好ましい。具体的にはpH11以上のアルカリ水溶液によって40℃で10分以上処理された後、白濁がないことが1つの指標となる。その基準としては、ポリエチレンテレフタレートに5μmの厚みに重合性樹脂組成物を塗工し、硬化した層を設けたフィルムを、pH11の水溶液で40℃、10分以上処理の処理の有無で、波長550nmにおける光線透過率の変化が5%以内であることが良く、好ましくは1%以内であることが好ましい。一方で、より好ましくは重合性樹脂組成物よりなる層をアルカリ水溶液で処理することによって、重合性樹脂組成物よりなる層がポリビニルアルコール系フィルムとの密着性が向上するため好ましい。その際の指標として、10μリットルの水を滴下した時の接触角が60°以下、より好ましくは、50°以下、さらに好ましくは40°以下であることが好ましい。偏光素膜へ貼り合わせる場合には、アルカリ水溶液で処理した後に、水もしくは酸性水溶液で中和処理を行い、その後、乾燥処理を適用したものを用いることが好ましい。
【0041】
偏光板を作製するための方法は、公知の方法を用いて良く、限定されない。具体的には、二色性色素を吸着し延伸された親水性高分子フィルム(以下、偏光素膜と記す)を、少なくとも1層以上の保護層を設けることで得られる。親水性高分子フィルムとは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂が挙げられ、それらの樹脂をキャスト等で製膜したものを用いる。偏光素膜の種類としては、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等によるポリエン系配向フィルムでも良い。これらのなかでもポリビニルアルコール系樹脂フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光素膜が好ましい。これら偏光素膜の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0042】
偏光素膜を構成するポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、公知の方法で作製することができ、特に限定されるものではない。製造方法として、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルに共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類又は不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、ポリビニルアルコール系フィルムとして用いられる。
【0043】
得られるポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などの二色性物質で染色し、一軸延伸して偏光素膜を作製する。作製方法としては例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の2〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬しても良い。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れや可塑剤を除去することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一性を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中でも延伸することができる。
【0044】
ポリビニルアルコール系フィルムは、二色性色素以外にも、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒド、ジアルデヒド澱粉などの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリン、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はグリセリンジグリシジルエーテル等少なくとも1種以上の架橋剤、または耐水化剤を含有しても良い。仮にホウ酸の含有濃度の適切な濃度を示すと、ポリビニルアルコール系フィルムの重量%に対して10〜33重量%が良く、好ましくは18〜30重量%、さらに好ましくは20〜26重量%であることが良い。
【0045】
また、ポリビニルアルコール系フィルムは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物または、無機金属を含有しても良い。処理される物質としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、塩化カリウム又は塩化ナトリウム、フッ化亜鉛4水和物、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化カリウムジルコニウム、フッ化カリウムチタン、フッ化カルシウム、フッ化クロム3水和物、フッ化ジルコニウムカリウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化水素カリウム、フッ化水素酸、フッ化錫、フッ化ストロンチウム、フッ化セシウム、フッ化鉛、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化ランタン塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。以上に示された物質に含む1種以上のハロゲンイオン、または無機金属イオンを含有していても良い。
【0046】
得られる偏光素膜は、その少なくとも片面、又は両面に透明な保護層を設けることが好ましい。透明な保護層はポリマーによる塗布によって層を形成させるか、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの樹脂又はポリマー又はそのフィルムなどが挙げられる。液晶性を有する樹脂又はそのフィルムなどを設けても良い。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、もしくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製するのが良い。
【0047】
偏光素膜に透明保護層を設けるにあたり、その保護層がフィルムである場合、フィルムラミネートを行う必要がある。その際には、接着剤が必要となる。その接着剤として、好ましいのは、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、ペンタエリスリトール骨格、ネオペンチルグリコール骨格又はトリメチロールプロパン骨格のいずれかを有する樹脂を、少なくとも1種類以上を含む樹脂組成物を硬化させた層が良いが限定されず、公知の接着剤を用いることができる。接着層と接しない保護層の表面、保護層と接着層の間のいずれかに重合性樹脂組成物を硬化させた層を1層以上設ける場合、それぞれは保護層と偏光素膜、または重合性樹脂組成物を硬化させた層と偏光素膜が接着させるが、その場合の接着剤として、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることができる。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH-26(日本合成社製)、エクセバールRS-2117(クラレ社製)、ゴーセファイマー Z-200(日本合成社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。接着剤には、クリオキザール、グルタルアルデヒドなどの架橋剤及び/又は耐水化剤を添加しても良い。また、接着剤に硫酸、酢酸、塩酸、ギ酸、硫酸アルミニウム又は塩化アルミニウムなどの酸性を有する物質を0.0001〜20重量%の濃度で含有するのが好ましく、0.02〜5重量%を含有するのがより好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤には、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体のみ/かつ架橋剤を混合させた接着剤を用いることができる。無水マレイン酸-イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、イミド化イソバン#310(クラレ社製)などが挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX-521(ナガセケムテック社製)、テトラット-C(三井ガス化学社製)などが挙げられる。他の接着剤として、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系のものが多用されており公知の接着剤を用いることができるが、接着剤は限定されるものではない。また、接着剤の添加物として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等を同時に0.1〜10重量%程度の濃度で含有させることもできる。添加物についても限定されない。透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥もしくは熱処理することによって偏光板を得る。
【0048】
重合性樹脂組成物を硬化させた層を偏光板に設ける場合、保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板のいずれかの層の間、もしくは表面に1層以上設けることで耐久性を向上させることが出来る。具体的には、接着層と面していない保護層の表面、保護層と接着層の間、接着層と二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムの間、のいずれかに1層以上設けることで達成される。より湿熱耐久性を向上させるには、表示装置に貼り合わせ後に露出面となる表面側に重合性樹脂組成物を硬化させた層を設けることが効果的である。具体的には、保護層(L)の表面、保護層(L)と接着層(L)の間、接着層(L)と偏光素膜の間を示す。好ましくは保護層(L)と接着層(L)の間、接着層(L)と偏光素膜の間が良い。また、さらに湿熱耐久性向上効果を高めるには樹脂組成物を硬化させた層を、二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムを介して両面に、1層づつ、または2層以上設けることが、より好ましい。また、その際に偏光素膜に近い層に有していることが、より耐久性を向上させるには好ましい。具体的には、保護層(L)と偏光素膜との間および偏光素膜と保護層(M)の間の両面に有していることが好ましい。また、密着性の向上を目的として、又は、重合性樹脂組成物の未反応モノマーの移行を防ぐために、偏光素膜と重合性樹脂組成物を硬化させた層との間にアンカーコート層及び/又は接着層を設けても良い。
【0049】
保護層/接着層/二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルム/接着層/保護層により構成される偏光板の接着層が重合性樹脂組成物によって得られる層であっても同様に湿熱耐久性が向上する効果が得られる。
【0050】
より湿熱試験において高耐久性を有する偏光板を得ようとする場合には、重合性樹脂組成物を硬化させた層を1層だけでなく、2層以上の複数の層を多層構造にすることによって、より湿熱耐久性は向上する。
【0051】
以上の工程によって本発明で使用される重合性樹脂組成物を硬化した層を、少なくとも1層以上を設けたことを特徴とする偏光板が得られる。
【0052】
得られた偏光板の一方の表面、具体的には、表示装置に貼り合わせ後に非露出面となる保護層またはフィルムの表面に、各種機能層及び/又は粘着剤層を設けることもできる。粘着剤層を設けることによって、各種機能層、液晶または有機エレクトロルミネッセンスなどの表示装置に偏光板を貼り合わせることができる。各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムであっても良い。
【0053】
この偏光板は、重合性樹脂組成物を硬化させた層、保護層またはフィルムの露出面に、反射防止層や防眩層、ハードコート層、視野角改善及び/又はコントラスト改善のための液晶塗工層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せても良い。
【0054】
以上の方法で、紫外線硬化型樹脂組成物並びに、それを硬化させた層を有する本発明の偏光板を得ることが出来る。本発明によって得られる偏光板は湿熱環境下、例えば温度65℃、相対湿度93%RHにおいて透過率変化及び偏光度の低下が少ない偏光板となり、乾熱環境下、例えば95℃においても赤変が少ない偏光板となり、過酷な条件下でも信頼性の高い偏光板が得られる。ディスプレイ用偏光板、特に液晶ディスプレイにおける高透過率、高コントラスト、かつ湿熱耐久性の高い偏光板が得られる。これを用いたディスプレイは信頼性が高い、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有するディスプレイになる。
【0055】
重合性樹脂組成物を硬化させた層を設けた偏光板は、湿熱環境下、例えば温度65℃、相対湿度93%RHにおいて、偏光板の偏光度低下を抑えることが出来ると同時にホウ酸濃度の低下を抑えることが出来る。湿熱環境下でのホウ酸濃度の低下を抑えることで湿熱耐久性が向上する。ホウ酸濃度の低下は、65℃、相対湿度93%、1000時間後において、初期ホウ酸濃度よりも40重量%以上保持していることが良く、さらに好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上保持していることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に示す透過率、偏光度の評価は以下のようにして行った。
【0057】
偏光素膜の両面に保護膜を貼合して得た2枚の偏光板を、その吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の透過率を平行位透過率Tp 、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ねた場合の透過率を直交位透過率Tc とした。
【0058】
透過率Tは、400〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに分光透過率τλを求め、下記式(1)により算出した。式中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
【0059】

【0060】
分光透過率τλは、分光光度計〔日立社製"U-4100"〕を用いて測定した。
【0061】
偏光度Py は、平行位透過率Tp 及び直交位透過率Tc から、下記式(2)により求めた。
【0062】
Py={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100 (2)
【0063】
さらに、偏光板の色相についてJIS Z8729(色の表示方法 L*、a*、b*表示系およびL*、u*、v*表色系)によりに示される表色系にて、直交色相のa*およびb*を測定した。ここでいう直交色相とは、2枚の偏光板をそれぞれ吸収軸が直交するように重ねた状態で測定されたことを意味する。L*、a*、b*表色系ではa*、b*のそれぞれがゼロに近いほど色相がニュートラル色を示すことを表している。
【0064】
実施例1
厚みが75μm、重合度2400、けん化度99%以上のポリビニルアルコール系フィルム(クラレ社製VF−XS)を40℃の温水で膨潤させた後、ヨウ素、ヨウ化カリウムおよびホウ酸を含有した水溶液で染色を行った。染色されたフィルムをホウ酸を3重量%含有している溶液中で5倍に延伸し、延伸後、ヨウ化カリウムを5重量%含有する水溶液に浸漬した。ヨウ化カリウム水溶液に15秒浸漬したフィルムを、70℃の乾燥機にて10分間乾燥し、偏光素膜とした。得られた偏光素膜は、保護層としてトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製
TD−80UF、以下TACと省略する)をPVA系接着剤を用いて両面にラミネートし、偏光板とした。
【0065】
次いで、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド DPHA)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製カヤラッド PET-30)50重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5重量部を撹拌混合し、本発明で用いる紫外線硬化型の重合性樹脂組成物を得た。この組成物をメチルエチルケトン(純正化学社製)にて希釈し、固形分濃度が50重量%の溶液を調製した。この溶液を、40mmx40mmにカットし粘着剤PTR−3000(日本化薬社製)を介して1mmのガラス板と貼り合わせた偏光板の表面にスピンコータを用いて塗布し、加熱により溶剤を除去後の膜厚が3μmとなるようにした。溶剤を50℃で3分乾燥後、空気中で高圧水銀灯(積算光量400mJ/cm2)を照射して、硬化させて重合性樹脂組成物によって得られる層を有する本発明の偏光板を得た。サンプルの層構成は、重合性樹脂組成物によって得られる層/TAC/接着剤層/偏光素膜/接着剤層/TAC/粘着層/ガラス層という構成である。
【0066】
作製したサンプルは湿熱試験および乾熱試験を確認した。湿熱試験は、温度65℃、相対湿度93%の雰囲気中で、1000時間放置する前と後での透過率、偏光度を測定した。乾熱試験は、温度95℃、1000時間放置する前と後での透過率、偏光度、直交における色相a*(以下、a*-cと省略)を測定した。
【0067】
実施例2
実施例1において重合性樹脂組成物をペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド PET-30)60重量部、ジシクロペンテニルエチルメタクリレート(日立化成社製 FA-512M)30重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5重量部に変えて、ジシクロペンテニル骨格を含む重合性樹脂組成物によって得られる層を有する本発明の偏光板を得た以外は、すべて同様にして偏光板を作製し、湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0068】
実施例3
実施例1において重合性樹脂組成物をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド DPHA)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製カヤラッド PET-30)30重量部、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成社製 FA-513A)20重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ製)5重量部に変えて、重合性樹脂組成物によって得られる層を有する本発明の偏光板を得た以外は、すべて同様にして偏光板を作製し、湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0069】
実施例4
トリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD−80UF)に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド DPHA)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 カヤラッド
PET-30)30重量部、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成社製 FA-513A)20重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5重量部を膜厚3μmになるように塗工し、空気中で紫外線を高圧水銀灯(積算光量400mJ/cm2)で照射し、重合性樹脂組成物によって得られる層を有する透明保護フィルムを作製した。その層表面にpH11のアルカリ水溶液を10分間接触させ、層表面の水との接触角は80°から57.2°へ低下させた。その重合性樹脂組成物を硬化させた層を、接着剤を用いて偏光素子と接着させ、構成がTAC/重合性樹脂組成物を硬化させた層/接着剤層/偏光素膜/接着剤層/TACとなる偏光板を得た。その偏光板を40mmx40mmにカットし粘着剤(日本化薬社製 PTR-3000)を介して1mmのガラス板と貼り合わせて、TAC/重合性樹脂組成物を硬化させた層/接着剤層/偏光素膜/接着剤層/TAC/粘着層/ガラスとなる構成で、湿熱試験および乾熱耐久性を確認した。
【0070】
実施例5
実施例4において、偏光素膜の両側に重合性樹脂組成物を硬化させた層を設け、TAC/重合性樹脂組成物を硬化させた層/接着剤層/偏光素膜/接着剤層/重合性樹脂組成物を硬化させた層/TACという構成の偏光板を得た以外は同様にサンプル作製を行い、湿熱試験および乾熱試験を確認した。
【0071】
実施例6
実施例3において、加熱により溶剤を除去後の膜厚が1μmとなるようにし、硬化させて本発明の重合性樹脂組成物によって得られる層を有する偏光板を得た以外は同様にサンプル作製を行い、湿熱試験および乾熱試験を確認した。
【0072】
実施例7
実施例3において、加熱により溶剤を除去後の膜厚が9μmとなるようにし、硬化させて本発明の重合性樹脂組成物によって得られる層を有する偏光板を得た以外は同様にサンプル作製を行い、湿熱試験および乾熱試験を確認した。
【0073】
比較例1
実施例1において、重合性樹脂組成物によって得られる層を設けない以外は同様にして、湿熱試験、および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0074】
比較例2
実施例1において、重合性樹脂組成物をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製カヤラッド DPHA)100重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5重量部を撹拌混合し、本発明の条件を満たしていない重合性型樹脂組成物よりなる層を偏光板に設けた以外は同様にして湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0075】
比較例3
実施例1において、重合性組成物をポリエチレングリコールジアクリレート(日本化薬社製 カヤラッドPEG-400DA)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製
カヤラッド PET-30)50重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5重量部を撹拌混合し、本発明の条件を満たしていない重合性樹脂組成物よりなる層を偏光板に設けた以外は同様にして湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0076】
比較例4
実施例1において、加熱により溶剤を除去後の膜厚が20μmとなるようにし、溶剤を乾燥後、空気中で高圧水銀灯(積算光量400mJ/cmを照射させて硬化させて、本発明の条件を満たしていない重合性樹脂組成物より得られる層の厚みを有する偏光板を得た以外は、すべて同様にして偏光板を作製し、湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0077】
比較例5
特開2003−185842 実施例1に従い、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素およびホウ酸を吸着し、5倍延伸された偏光素膜の表面にジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成社製 FA-512M)100重量部、D1173(メルク社製 重合開始剤)5重量部を重合性硬化物層の厚みが20μmになるように塗工し、メタルハライドランプにより紫外線を400mJ/m照射して硬化させて得られる偏光板を作製し、湿熱試験および乾熱試験での耐久性を確認した。
【0078】
比較例6
実施例3において、加熱により溶剤を除去後の膜厚が0.3μmとなるようにし、硬化させて本発明の重合性樹脂組成物によって得られる層を有する偏光板を得た以外は同様にサンプル作製を行い、湿熱試験および乾熱試験を確認した。
【0079】
実施例1乃至7、比較例1乃至6における湿熱試験65℃、相対湿度93%、1000時間後の透過率、偏光度変化の測定結果を表3に示す。表3のYs0は初期透過率、ρ0は初期偏光度、Ys−Wetは65℃x93%RHx1000時間後の透過率、ρ−Wetは65℃x93%RHx1000時間後の透過率、ΔYsは初期から65℃x93%RHx1000時間後での透過率変化量、Δρは初期から65℃x93%RHx1000時間後での偏光度変化量を示す。また、65℃x93%RHx1000時間経過後のそれぞれの層間の密着性を確認した結果を示す。密着性の結果は、○は互いの層は密着性良好、×は剥離する層間があることを示す。
【0080】
表3

【0081】
実施例1、2、比較例1から3における乾熱試験95℃、1000時間後の透過率、偏光度変化の測定結果を表4に示す。表4のYs0は初期透過率、ρ0は初期偏光度、a*-c0は初期 a*-c値、Ys1000は95℃x1000時間後の透過率、ρ1000は95℃x1000時間後の偏光度、a*-c1000は95℃x1000時間後のa*-cを示す。a*-c値は高いほど赤色を示している。
【0082】
表4

【0083】
以上の実施例、比較例から明らかなように、本発明の二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物で、膜厚5μmの硬化樹脂膜層とした場合の該樹脂膜層の透湿度が24時間で1500g/m以下となる少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部と、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部と、重合開始剤(C)2〜10重量部を含有する重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5〜10μmである層を少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする偏光板は、耐久性、主に湿熱耐久性が大きく向上し、かつ、乾熱耐久性においても色変化の起こらない偏光板が得られることが分かる。例えば65℃、相対湿度93%における耐久性を向上させ、透過率の変化、偏光度の低下が抑えられ、かつ、乾熱試験、例えば95℃において、偏光度の低下が少なく、赤変も少ない偏光板になることが示された。ただし、その重合性樹脂組成物の層の厚みが10μm以上設けられている場合には、乾熱耐久性、例えば、95℃において偏光度の低下が大きく、偏光板の赤変が大きく、耐久性も不十分であることが分かる。以上のことから、本発明によって得られる偏光板は、湿熱耐久性を大いに向上させ、乾熱試験においても色変化が起こらない偏光板になるに至った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素および架橋剤を吸着し延伸された親水性高分子より得られる偏光素膜を用いてなる偏光板に、溶剤を除く重合性樹脂組成物100重量部中、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物であって、膜厚5μmの硬化樹脂膜層とした場合の該樹脂膜層の透湿度が24時間で1500g/m以下となる少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)が30乃至98重量部と、25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が1乃至70重量部と、重合開始剤(C)0.1〜10重量部を含有する重合性樹脂組成物を硬化させて得られる層を有し、該層の厚みが0.5〜10μmであって、重合性樹脂組成物を硬化させた層を設けたときの偏光板の積層構成において、保護層/接着層/偏光素膜/接着層/保護層の構成における保護層と偏光素膜の間に少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、保護層(L)と偏光素膜の間に少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、保護層(L)と接着層(L)との間に、少なくとも1層以上設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項4】
保護層(L)/接着層(L)/偏光素膜/接着層(M)/保護層(M)/粘着層により構成される偏光板において、重合性樹脂組成物を硬化させた層が、保護層(L)と接着層(L)との間と、保護層(M)と接着層(M)の間、それぞれの層の間に少なくとも1層以上づつ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
25℃の水に対する溶解度が1重量%以下である少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレート化合物(B)が、ジシクロペンタジエン骨格を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項1乃至4の偏光板。


【公開番号】特開2011−145675(P2011−145675A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9343(P2011−9343)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2006−245269(P2006−245269)の分割
【原出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】