説明

重合性液晶化合物、液晶組成物及び光学異方性材料

青色レーザー光に対する耐久性に優れ、屈折率および光の吸収が小さい重合性液晶化合物、該化合物を含む液晶組成物、該液晶組成物を用いた光学異方性材料を提供する。
下式(1)で表される重合性液晶化合物。式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Cyはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Xは1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Rは炭素数1〜8のアルキル基。上記の1,4−フェニレン基およびトランス−1,4−シクロヘキシレン基は、該基中の炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長300〜450nmのレーザー光に使用する回折素子または位相板などの光学素子に好適に用いられる重合性液晶化合物、該化合物を含む液晶組成物、該液晶組成物を用いた光学異方性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化を図るため、情報の書き込み、読み取りに使用されるレーザー光の短波長化が進んでいる。現在、CDでは波長660nm、DVDでは波長780nmのレーザー光が使用されているが、次世代光記録メディアでは、波長300〜450nmのレーザー光の使用が検討されている。これに伴い、波長300〜450nmのレーザー光(以下、青色レーザー光とも記す。)に使用する回折素子、位相板等の光学素子が必要となり、該波長帯のレーザー光に対応できる光学異方性材料が求められている。
【0003】
一方、重合性官能基を有する液晶(以下、重合性液晶化合物と記す。)は、重合性モノマーとしての性質と液晶としての性質とを併有する。したがって、重合性液晶化合物を配向させた後に重合反応を行うと、液晶の配向が固定された光学異方性材料が得られる。重合性液晶のなかでも、特に光重合性官能基を有する光重合性液晶は、光を照射して重合させることによって、簡便に光学異方性材料を作製できる優れた化合物である。
【0004】
前記光学異方性材料は、メソゲン骨格に由来する屈折率異方性等の光学異方性を有し、該性質を利用して回折素子、位相板等の光学素子に応用されている。このような光学異方性材料としては、たとえば、下式(4)で表される化合物(ただし、式中のQは、1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり、Zはアルキル基である。)を含む液晶組成物を重合させてなる高分子液晶が報告されている(特許文献1参照。)。
【0005】
【化1】

【0006】
また、一般に偏光ホログラム等の回折素子や位相板用の光学異方性材料に求められる特性としては、以下の特性が挙げられる。
(1)使用する光の吸収が少ないこと。
(2)面内光学特性(リタデーション値等)が均一なこと。
(3)素子を構成する他の材料と光学特性を合わせやすいこと。
(4)屈折率の波長分散が小さいこと。
(5)耐久性が良好なこと。
【特許文献1】特開平10−195138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開平10−195138号公報に記載された高分子液晶等の、従来から知られた材料は、青色レーザー光に対する耐久性が不充分である問題があった。
通常、素子の小型化、高効率化を達成するためには、高い屈折率異方性を有する材料が必要とされる。そして、高い屈折率異方性を有する材料は、高い屈折率を有する傾向がある。また、高屈折率材料は、一般に以下に示す性質を有する。
(A)屈折率の波長分散が大きい。
このことにより、光源の発振波長が初期設定からずれた場合、光の透過時には透過率の低下が生じ、光の回折時には高次回折光の発生による回折効率低下が生じる問題があった。
(B)光源の短波長化に伴い屈折率が大きくなる。
このことによって、前記要求特性(3)を満たすことが困難になる問題があった。
また、屈折率波長分散が大きい材料は、短波長の光に対する光の吸収が大きくなる(すなわち、材料のモル吸光係数が大きくなる。)傾向がある。
よって、従来から知られた高屈折率材料は、青色レーザー光のような短波長の光を吸収しやすく、耐光性が低い問題があった。
結果として、従来の材料では、青色レーザー光用の光学異方性材料に対する要求特性を満たすことができず、特に耐久性が不充分である問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記の問題を解決するためになされたものであり、光学異方性材料に要求される特性を満たし、特に波長300〜450nmのレーザー光に対する耐久性が高い新規な重合性液晶化合物、該化合物を含む液晶組成物、該液晶組成物を用いた光学異方性材料を提供する。すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
【0009】
<1>下式(1)で表されるアクリル酸誘導体であることを特徴とする重合性液晶化合物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
:炭素数1〜8のアルキル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。
:1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基。
ただし、上記の1,4−フェニレン基およびトランス−1,4−シクロヘキシレン基は、基中の水素原子がフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
【0010】
【化2】

【0011】
<2>Rが水素原子である<1>に記載の重合性液晶化合物。
<3><1>または<2>に記載の重合性液晶化合物の2種以上を含有することを特徴とする液晶組成物。
<4><1>または<2>に記載の重合性液晶化合物と、下式(2)で表されるアクリル酸誘導体である重合性液晶化合物とを含有することを特徴とする液晶組成物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。ただし、該基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
:炭素数1〜8のアルキル基。
【0012】
【化3】

【0013】
<5><1>または<2>に記載の重合性液晶化合物と、下式(3)で表されるアクリル酸誘導体である重合性液晶化合物とを含有することを特徴とする液晶組成物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
CH=CR−COO−Cy−Cy−R (3)
:水素原子またはメチル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。ただし、該基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
:炭素数1〜8のアルキル基。
<6>重合性液晶化合物の合計の含有量が、液晶組成物全体に対して25〜100質量%である<3>〜<5>のいずれかに記載の液晶組成物。
<7><3>〜<6>のいずれかに記載の液晶組成物を配向させた状態で、紫外光または可視光を照射することにより重合させてなることを特徴とする光学異方性材料。
<8><7>に記載の光学異方性材料からなる光学素子。
<9>光学素子が回折素子である<8>に記載の光学素子。
<10>光学素子が位相板である<8>に記載の光学素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、波長300〜450nmのレーザー光に対して高度な耐久性を有する光学異方性材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例における化合物(1A−a3)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図2】実施例における化合物(1A−a5)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書においては、式(1)で表される重合性液晶化合物を化合物(1)とも記す。他の化合物についてもこれに準じて同様に記す。また、波長は、一点の値で記載されている場合でも、記載値±5nmの範囲を含むこととする。
【0017】
本発明の重合性液晶化合物は、下式(1)で表される化合物である。
【0018】
【化4】

【0019】
式(1)中のRは水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。Rが水素原子である場合、後述する化合物(1)を含む液晶組成物を光重合させて光学異方性材料を得る際に、重合反応が速やかに進行するので好ましい。また、光学異方性材料としての特性が温度等の外部環境の影響を受けにくく、リタデーションの面内分布が小さい利点もある。
は炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましい。
【0020】
化合物(1)において、R部分の炭素数が多すぎると、化合物(1)の結晶−ネマチック相転移点が高温になり、化合物(1)を含む液晶組成物の結晶−ネマチック相転移点も高温になる傾向がある。該液晶組成物の結晶−ネマチック相転移点を室温以下にするためには(つまり、該液晶組成物が室温過冷却状態でネマチック相を示すためには)、Rの炭素数は前記範囲にあることが好ましい。また、化合物(1)が液晶性を示す温度範囲を広くできることから、Rは直鎖構造であることが好ましい。
Cyはトランス−1,4−シクロヘキシレン基である。
は1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基である。Xが1,4−フェニレン基である場合、化合物(1)に含まれる3個の環基のうち、2個が1,4−フェニレン基となる。よって、3個の環基が全て1,4−フェニレン基である化合物に比べて青色レーザー光に対して安定であり、1,4−フェニレン基を1個のみ有する化合物に比べて屈折率異方性等の光学異方性が大きくなる。よって、特に大きなリタデーション値を必要とする回折素子用の液晶組成物を調製する際にも所望の光学異方性を得ることが容易になる。また、液晶組成物の調製の自由度も広かる。Xがトランス−1,4−シクロヘキシレン基である場合、化合物(1)の青色レーザー光に対する安定性をさらに改善でき、ネマチック相−等方相転移点を高くできる。
【0021】
化合物(1)における1,4−フェニレン基およびトランス−1,4−シクロヘキシレン基は、非置換の基であってもよく、該基中の炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。化合物(1)のネマチック相−等方相転移点を高くできる点からは非置換の基であることが好ましい。
【0022】
化合物(1)としては、Rが水素原子である、下記化合物(1A)が好ましい。
【0023】
【化5】

【0024】
化合物(1)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。これらのうち、下記化合物(1A−a2)〜(1A−a6)、下記化合物(1A−b2)〜(1A−b6)が好ましい。ただし、以下において、Cyは前記と同じ意味を示す。Phは1,4−フェニレン基を意味し、該基中の水素原子は、塩素原子、フッ素原子、またはメチル基で置換されていてもよい。CyおよびPhは非置換の基であることが好ましい。また、下式中のアルキル基に構造異性の基が存在する場合はその全ての基を含み、直鎖アルキル基が好ましい。
【0025】
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−CH (1A−a1)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1A−a2)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1A−a3)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1A−a4)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C11 (1A−a5)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C13 (1A−a6)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C15 (1A−a7)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C17 (1A−a8)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−CH (1A−b1)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1A−b2)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1A−b3)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1A−b4)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C11 (1A−b5)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C13 (1A−b6)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C15 (1A−b7)
CH=CH−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C17 (1A−b8)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−CH (1B−a1)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1B−a2)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1B−a3)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C (1B−a4)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C11 (1B−a5)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C13 (1B−a6)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C15 (1B−a7)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Ph−C17 (1B−a8)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−CH (1B−b1)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1B−b2)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1B−b3)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C (1B−b4)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C11 (1B−b5)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C13 (1B−b6)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C15 (1B−b7)
CH=C(CH)−COO−Ph−OCO−Cy−Cy−C17 (1B−b8)
本発明の化合物(1)は、たとえば、以下に示す方法によって合成できる。
前記化合物(1A)の合成方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、下記化合物(a)とアクリル酸クロリド(b)とを反応させて、下記化合物(c)を得て、次に該化合物(c)と下記化合物(d)とを反応させて、化合物(1A)を得る方法が挙げられる(ただし、Cy、X、およびRは前記と同じ意味を示す。)。
【0026】
【化6】

【0027】
本発明の化合物(1)は3つの環基を有する構造に由来して、青色レーザー光に対する耐久性が良好である。また、−Ph−CO−構造を含まないこと、波長400nm以下の短波長領域においても光吸収のない環式飽和炭化水素基である−Cy−を有することにより、青色レーザー光の波長帯域での光の吸収が小さい。さらに、−Ph−構造(Phは1、4−フェニレン基を表す。)を持つことにより、比較的大きな屈折率異方性等の光学異方性を発現できる。しかも、屈折率異方性の値が大きい材料は、屈折率および屈折率波長分散が大きいことがしばしば見受けられるが、化合物(1)は青色レーザー光の波長帯域(300〜450nm)での屈折率上昇が抑えられ、屈折率波長分散も小さい利点がある。
したがって、化合物(1)を用いることにより、青色レーザー光に対しても充分な耐光性が得られ、位相差等の特性に優れる光学異方性材料を提供できる。
【0028】
つぎに、化合物(1)を含有する液晶組成物について説明する。化合物(1)は、それ自体で充分広い液晶温度範囲を示し、特に液晶相を示す温度範囲が高温側に広い特徴を有する。しかし、低温側においても液晶性を示すように、他の重合性液晶化合物と混合して、所望の特性を有する液晶組成物とすることが好ましい。複数の種類の重合性液晶化合物を併用することにより、液晶組成物の結晶−ネマチック相転移点の降下が生じるので、高温設備を用いることなく該組成物を液晶相または等方相の状態で取り扱うことができる。
【0029】
本発明の液晶組成物は、化合物(1)の2種以上を含有する組成物であってもよく、化合物(1)と、化合物(1)以外の他の重合性液晶化合物とを含有する組成物であってもよい。他の重合性液晶化合物としてはアクリル酸誘導体であることが好ましく、下記化合物(2)または下記化合物(3)が好ましい。
【0030】
【化7】

【0031】
式中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数2〜6の直鎖アルキル基であることが好ましい。Cyは前記と同じ意味を示し、非置換の基であることが好ましい。
【0032】
本発明の液晶組成物が化合物(1)の2種以上を含有する場合、メソゲン構造部分は同一で、Rの炭素数が異なる化合物の2種以上を含有することが好ましい。具体的には、Rが炭素数2〜4の直鎖アルキル基である化合物から選ばれる少なくとも1種と、Rが炭素数5〜8の直鎖アルキル基である化合物から選ばれる少なくとも1種とを含有することが好ましく、Rがn−プロピル基である化合物と、Rがn−ペンチル基である化合物とを含有することが特に好ましい。
【0033】
液晶組成物に含有される化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)の合計の割合は液晶組成物全体に対して25〜100質量%であり、40〜100質量%が好ましく、60〜100質量%が特に好ましい。前記割合が高くなると、屈折率の波長分散が小さく、また安定なリタデーション値が得られる。
【0034】
本発明の液晶組成物が化合物(1)以外に化合物(2)および/または化合物(3)を含有する場合、化合物(1)の含有量は全重合性液晶化合物に対して40〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることが好ましい。化合物(2)と化合物(3)の合計含有量は、全重合性液晶化合物に対して60モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが特に好ましい。また、化合物(2)単独では、青色レーザーに対する耐久性が充分でない場合があるので、化合物(2)を使用する場合は、全重合性液晶化合物中に含まれる化合物(2)の割合は50モル%以下にすることが好ましい。
【0035】
本発明の液晶組成物中には、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)以外の他の化合物を含んでいてもよい。他の化合物としては、用途、要求性能等により選択することが好ましい。たとえば、低温で液晶性を示す成分、低温用の低粘性成分、絶対屈折率や屈折率異方性を調整する成分、誘電率異方性を向上させる成分、コレステリック性を付与する成分、重合性または非重合性の光安定化剤、その他各種添加剤を適宜混合させることができる。
【0036】
光安定化剤のうち、重合性光安定化剤としては、下記化合物(A)(旭電化社製、商品番号:LA87)、下記化合物(B)(旭電化社製、商品番号:LA82)等が挙げられる。非重合性光安定化剤としては、下記化合物(C)(旭電化社製、商品番号:LA77)のほか、旭電化社製のLA62、LA67等が挙げられる。
【0037】
【化8】

【0038】
これらの光安定剤は、いずれも光学異方性材料の特性を低下させない程度の添加量で、青色レーザー光に対する耐久性を改善できる。光安定剤の添加量としては、液晶組成物全体に対し、0.2〜2質量%が好ましい。
【0039】
他の化合物は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)以外の重合性液晶化合物、重合性非液晶化合物、非重合性液晶化合物、非重合性非液晶化合物のいずれであってもよく、単独又は複数を組み合わせてもよい。他の化合物が化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)以外の青色レーザー光に対する耐久性の高い重合性液晶化合物である場合、その液晶組成物中の割合は、全重合性液晶化合物に対して60モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましい。また、重合性非液晶化合物、非重合性液晶化合物、非重合性非液晶化合物の合計の割合は、液晶組成物に対して10質量%以下、特に5質量%以下が好ましい。
【0040】
化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)以外の重合性液晶化合物としては、−Ph−CO−構造を含まない化合物が、青色レーザー光に対する耐久性が高いことより好ましく、具体的には以下の化合物が例示できる。ただし、式中のRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。該アルキル基に構造異性の基が存在する場合、該基は全ての構造異性の基を含み、直鎖構造の基が好ましい。CyおよびPhは前記と同じ意味を示し、ぞれぞれ非置換の基であることが好ましい。
【0041】
CH=CH−COO−Ph−Cy−R (5a)
CH=CH−COO−Ph−Ph−R (5b)
CH=CH−COO−CH−O−Ph−Cy−R (5c1)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c2)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c3)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c4)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c5)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c6)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c7)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Cy−R (5c8)
CH=CH−COO−CH−O−Ph−Ph−R (5d1)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d2)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d3)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d4)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d5)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d6)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d7)
CH=CH−COO−(CH−O−Ph−Ph−R (5d8)
CH=CH−COO−CH−O−Cy−Cy−R (5e1)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e2)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e3)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e4)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e5)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e6)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e7)
CH=CH−COO−(CH−O−Cy−Cy−R (5e8)
【0042】
これらの2環性の化合物は他の液晶材料との相溶性が良好である。さらに、化合物(5c1)〜(5c8)は屈折率異方性の値と、液晶相を示す温度範囲とのバランスが取れている。化合物(5d1)〜(5d8)は屈折率異方性の値が比較的大きい利点があり、化合物(5e1)〜(5e8)は液晶相を示す温度範囲が広い利点がある。
つぎに、本発明の光学異方性材料について説明する。
【0043】
本発明の光学異方性材料は、前記液晶組成物を重合させることにより得られる。重合方法としては、光重合方法、熱重合方法等が挙げられ、光重合方法が好ましい。光重合方法に用いる光としては、紫外線または可視光線が好ましい。光重合する場合には、光重合開始剤を用いると効率よく重合できる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、チオキサントン類などが好ましく使用できる。光重合開始剤は、1種類または2種類以上を使用できる。光重合開始剤の使用量は、液晶組成物全体に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜2質量%が特に好ましい。
【0044】
光重合方法等の重合方法においては、前記液晶組成物を配向させた状態で重合させることが好ましい。本明細書において「配向させた状態で重合させる」とは、前記液晶組成物を支持体間に挟持し、液晶組成物が液晶相を示す状態で、かつ、液晶が配向した状態で重合させることを意味する。
【0045】
重合性液晶組成物の支持体としては、ガラス製またはプラスチック製の基板に配向処理を施した支持体が好ましい。配向処理は、綿、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維等で基板表面を直接ラビングしてもよく、基板表面にポリイミド配向膜を積層した後、該配向膜表面を上記繊維等でラビングしてもよい。
【0046】
つぎに、支持体の配向処理が施された面にガラスビーズ等のスペーサを配置し、複数枚の支持体を所望の間隔に制御して対向させ、セルを作製する。つぎに、セルを構成する支持体間に前記液晶組成物を充填し、重合反応を行う。
【0047】
液晶組成物が液晶相を示す状態に保つためには、雰囲気温度を結晶−ネマチック相転移点以上でかつネマチック相−等方相転移温度(T)以下にすればよいが、Tに近い温度では、液晶組成物の屈折率異方性がきわめて小さいので、雰囲気温度の上限は(T−10)℃以下とすることが好ましい。
【0048】
前記方法によって作製された光学異方性材料は、支持体に挟んだまま用いてもよく、支持体から剥離して、他の基板に担持させて用いてもよい。
【0049】
本発明の光学異方性材料は、青色レーザー光に対して高度な耐久性を有するので、青色レーザー光用の回折素子(偏光ホログラム等)または位相板等の光学素子に好適に用いられる。偏光ホログラムとしては、レーザー光源からの出射光が光ディスクの情報記録面によって反射されて発生する信号光を分離し、受光素子へ導光する例が挙げられる。位相板としては、1/2波長板として使用し、レーザー光源からの出射光の位相差制御を行う例、1/4波長板として光路中に設置し、レーザー光源の出力を安定化する例が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。また、屈折率異方性をΔnと略記する。なお、以下の例において光重合開始剤はチバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュアー907を用いた。例1〜例7は実施例であり、例8は比較例である。
【0051】
[例1]化合物(1A−a3)の合成例
【0052】
【化9】

【0053】
化合物(d−1)(4.4g、0.017モル)、ジクロロメタン(70mL)、およびトリエチルアミン(2.5g、0.025モル)の混合物に、反応液の温度が20℃を超えないように氷水で冷却しながら、化合物(c)(2.7g、0.017モル)を添加した。24時間撹拌した後、濃塩酸(2mL)、氷(20g)、および水(30mL)の混合物を反応液に添加した。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)を加えて分液した。再度有機層を分離して水洗し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、減圧濾過を行った。
【0054】
濾液をカラムクロマトグラフィー(展開液:ジクロロメタン/トルエン)により精製した。目的物を含む分画を濃縮し、粉末結晶を得た。この粉末結晶にジクロロメタンとエタノールとの混合溶媒(90mL)を加えて再結晶を行い、化合物(1A−a3)(3.4g)を得た。収率は52%であった。
【0055】
化合物(1A−a3)の結晶からネマチック相への転移温度は113℃、ネマチック相から等方相への転移温度は198℃(外挿値)であり、50℃における波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.18(外挿値)であった。
【0056】
化合物(1A−a3)の赤外吸収スペクトルを図1に示す。また、化合物(1A−a3)のHNMRスペクトルの測定結果を以下に示す。
HNMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)δ(ppm)0.9(triplet、3H)、1.4〜1.8(m、6H)、2.0〜2.7(Complex、m、8H)、5.9〜6.7(m、3H)、7.0〜7.2(s、8H)。
【0057】
[例2]化合物(1A−a5)の合成例
【0058】
【化10】

化合物(d−1)を下記化合物(d−2)に変更する以外は、例1−1と同様に反応を行い、化合物(1A−a5)(5.04g)を得た。収率は70.5%であった。
【0059】
【化11】

【0060】
化合物(1A−a5)の結晶からネマチック相への転移温度は72.3℃、ネマチック液相から等方相への転移温度は210.9℃(外挿値)であった。化合物(1A−a5)の赤外吸収スペクトルを図2に示す。化合物(1A−a5)のHNMRスペクトルの測定結果を以下に示す。
HNMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)δ(ppm)0.9(triplet、3H)、1.4〜1.8(m、10H)、2.0〜2.7(Complex、m、8H)、6.0〜6.7(m、3H)、7.0〜7.2(s、8H)。
【0061】
[例3]
[例3−1]液晶組成物の調製例(その1)
例1で得た化合物(1A−a3)と、下記化合物(2−5)とを1:1(モル比)で混合し、液晶組成物Aを調製した。
CH=CHCOO−Ph−OCO−Cy−C11・・・(2−5)
液晶組成物Aは室温過冷却状態でネマチック相を示した。またネマチック相から等方相への相転移温度は154℃以上であった。
つぎに、液晶組成物Aに光重合開始剤を、液晶組成物Aに対し、それぞれ0.5質量%、1.0質量%添加し、液晶組成物A1、液晶組成物A2を得た。
【0062】
[例3−2]光学素子の作製例(その1)
5cm×5cm×0.5mmのガラス板を2枚用意し、配向剤であるポリイミド溶液をスピンコータで塗布して乾燥した後、ナイロンクロスで一定方向にラビング処理して支持体を作製した。配向処理した面が向かい合うように2枚の支持体を接着剤を用いて貼り合わせてセルを作製した。接着剤にはガラスビーズを添加し、支持体の間隔が4μmになるように調整した。
【0063】
つぎに、前記セル内に、例3−1で得た液晶組成物A1を100℃で注入した。80℃において、強度80mW/cmの紫外線を積算光量が5300mJ/cmとなるよう照射して光重合を行って光学異方性材料の層を形成し、光学素子A1を得た。光学異方性材料はラビング方向に沿って水平配向していた。光学素子A1は可視領域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.055であった。
【0064】
[例3−3]光学素子の評価例(その1)
例3−1で得た光学素子A1について、温度25℃で、積算曝露エネルギーが2000mW・hour/mmとなるようにKrレーザー(波長407nm、413nmのマルチモード)を照射し、青色レーザー光曝露加速試験を行った。試験後の曝露面の屈折率異方性の大きさを測定すると、試験前のΔnに対する試験後のΔnの低下は1%未満であり、光学素子A1は青色レーザー光に対する耐久性に優れることを確認した。
【0065】
[例3−4]光ヘッド用偏光ホログラムの作製例(その1)
ピッチ9μm、深さ3μmの矩形格子をもつガラス板上に、配向剤としてポリイミドをスピンコータで塗布し、熱処理した後、ナイロンクロスで格子と平行方向にラビング処理を行い、支持体を作製した。配向処理を同様に行ったガラス平板を、配向処理面が向かいあうように接着剤を用いて貼り合わせてセルを作製した。その際、配向方向が平行になるようにした。
【0066】
このセル内に、例3−1で得た液晶組成物A2を100℃で注入した。つぎに、90℃で40mW/cmの強度の紫外線を3分間照射して光重合を行った。このセルの片面に1/4波長板を積層し、偏光ホログラムビームスプリッタを作製した。この素子を光ヘッドに用いたところ、波長650nmのレーザー光に対して27%の光利用効率を得た。
【0067】
[例4]
[例4−1]液晶組成物の調製例(その2)
例1で得た化合物(1A−a3)と例2で得た化合物(1A−a5)とを1:1(モル比)で混合して液晶組成物Bを得た。液晶組成物Bは室温過冷却状態でネマチック相を示した。またネマチック相から等方相への相転移温度は200℃以上であった。
つぎに、液晶組成物Bに、光重合開始剤を液晶組成物Bに対して0.5質量%添加し、液晶組成物B1を得た。
【0068】
[例4−2]光学素子の作製例(その2)
支持体の間隔を3.2μmとする以外は例3−2と同様にセルを作製した。このセル内に、液晶組成物B1を100℃で注入した。つぎに、温度70℃において、60mW/cmの強度の紫外線を、積算光量が5000mJ/cmとなるよう照射して光重合を行って光学異方性材料の層を形成し、光学素子B1を得た。光学異方性材料は基板のラビング方向に水平配向していた。光学素子B1は可視域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.07であった。
【0069】
[例4−3]光学素子の評価例(その2)
例4−2で得た光学素子B1について、積算曝露エネルギーを26W・hour/mmとする以外は例3−3と同様に青色レーザー光曝露加速試験を行った。その結果、加速試験前のΔnに対する試験後のΔn低下は1%未満であり、光学素子B1は青色レーザー光に対する耐久性に優れることを確認した。
【0070】
[例4−4]偏光回折素子の作製例(その2)
ガラス板として青色光用の反射防止膜が積層されたガラス板を用い、支持体の間隔を1μmとする以外は、例3−2と同様にセルを作製した。セルに液晶組成物B1を注入し、光重合反応を行って光学異方性材料の層を形成した。つぎに支持体の一方を剥がし、フォトリソグラフィーおよびドライエッチングによって前記光学異方性材料にピッチ20μm、深さ1μmの矩形構造を形成した。この矩形の凹部分に、波長405nmのレーザー光に対する屈折率が1.57である透明樹脂(光学異方性材料の常光屈折率と同等の屈折率を有する透明樹脂)を充填した。つぎに、この光学異方性材料層の上部に青色光用の反射防止膜が積層されたガラス平板を重ね、周縁部を接着剤を用いて貼りあわせて光学素子B2を作製した。光学素子B2に波長405nmのレーザー光を、基板に対して垂直に入射させたところ、常光に対しては0次光が97%以上透過(1次光は約0.5%透過)し、異常光に対しては0次光/1次光の比が11となる偏向回折素子が得られた。
【0071】
[例5]
[例5−1]液晶組成物の調製例(その3)
例1で得た化合物(1A−a3)、例2で得た化合物(1A−a5)、下記化合物(3−A−3)、および下記化合物(3−A−5)を1:1:1:1の割合(モル比)で混合して液晶組成物Cを得た。液晶組成物Cは室温過冷却状態でネマチック相を示した。またネマチック相から等方相への相転移温度は140℃であった。
【0072】
【化12】

【0073】
つぎに、液晶組成物Cに、光重合開始剤を液晶組成物Cに対して0.5質量%添加し、液晶組成物C1を得た。
【0074】
[例5−2]光学素子の作製例(その3)
支持体の間隔を4.7μmとする以外は例3−2と同様にセルを作製した。このセル内に、例5−1で得た液晶組成物C1を70℃で注入した。つぎに、60℃において、50mW/cmの強度の紫外線を、積算光量が4500mJ/cmとなるよう照射して光重合を行って光学異方性材料の層を形成し、光学素子Cを得た。光学異方性材料は基板のラビング方向に水平配向していた。光学素子Cは可視域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.03であった。
【0075】
[例5−3]光学素子の評価例(その3)
例5−2で得た光学素子Cについて、積算曝露エネルギーを40W・hour/mmとする以外は例3−3と同様に青色レーザー光曝露加速試験を行った。その結果、加速試験前のΔnに対する試験後のΔnの低下は1%未満であり、光学素子Cは青色レーザー光に対する耐久性に優れることを確認した。
【0076】
[例6]
[例6−1]液晶組成物の調製例(その4)
例1で得た化合物(1A−a3)、例2で得た化合物(1A−a5)、前記化合物(3−A−3)、および前記化合物(3−A−5)を4:4:1:1の割合(モル比)で混合して液晶組成物Dを得た。液晶組成物Dは室温過冷却状態でネマチック相を示した。またネマチック相から等方相への相転移温度は148℃以上であった。
つぎに、液晶組成物Dに、光重合開始剤を液晶組成物Dに対して0.5質量%添加し、液晶組成物D1を得た。
【0077】
[例6−2]光学素子の作製例(その4)
支持体の間隔を4.7μmとする以外は例3−2と同様にセルを作製した。このセル内に、例6−1で得た液晶組成物D1を70℃で注入した。つぎに、70℃において、60mW/cmの強度の紫外線を、積算光量が4500mJ/cmとなるよう照射して光重合を行って光学異方性材料の層を形成し、光学素子Dを得た。光学異方性材料は基板のラビング方向に水平配向していた。光学素子Dは、可視域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.051であった。
【0078】
[例6−3]光学素子の評価例(その4)
例6−2で得た光学素子Dについて、積算曝露エネルギーを50W・hour/mmとする以外は例3−3と同様に青色レーザー光曝露加速試験を行った。その結果、加速試験前のΔnに対する試験後のΔnの低下は1%未満であり、光学素子Dは青色レーザー光に対する耐久性に優れることを確認した。
【0079】
[例7]
[例7−1]液晶組成物の調製例(その5)
例4−1で得た液晶組成物Bに対して、重合性光安定剤(旭電化製社製、商品番号:LA−82)を0.5質量%添加して液晶組成物Eを調製した。液晶組成物Eは、室温過冷却状態でネマチック相を示し、またネマチック相から等方相への相転移温度は200℃以上であった。
つぎに、液晶組成物Eに対して、光重合開始剤を0.5質量%添加し、液晶組成物E1を得た。
【0080】
[例7−2]光学素子の作製例(その5)
支持体の間隔を4.7μmとする以外は例3−2と同様にセルを作製した。このセル内に、例7−1で得た液晶組成物E1を70℃で注入した。つぎに、70℃において、60mW/cmの強度の紫外線を、積算光量が4500mJ/cmとなるよう照射して光重合を行って光学異方性材料の層を形成し、光学素子Eを得た。光学異方性材料は基板のラビング方向に水平配向していた。光学素子Eは可視域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.06であった。
【0081】
[例7−3]光学素子の評価例(その5)
例7−2で得た光学素子Eについて、積算曝露エネルギーを40W・hour/mmとする以外は、例3−3と同様に青色レーザー光曝露加速試験を行った。その結果、試験前のΔnに対する試験後のΔnの低下は1%未満であり、光学素子Eは青色レーザー光に対する耐久性に優れることを確認した。
【0082】
[例8]
[例8−1]液晶組成物の調製例(その6)
下記化合物(4a)、下記化合物(4b)、下記化合物(4c)、下記化合物(4d)を1:1:1:1(質量比)で混合し、液晶組成物Fを調製した。つぎに、液晶組成物Fに光重合開始剤を液晶組成物Fに対して0.5質量%添加し、液晶組成物F1を得た。
【0083】
【化13】

【0084】
[例8−2]光学素子の作製・評価例(その6)
例8−1で得た液晶組成物F1を用いる以外は例3−2と同様の方法によって光学素子Fを得た。光学異方性材料は基板のラビング方向に水平配向していた。光学素子Fは可視域で透明であり、散乱も認められなかった。また、波長589nmのレーザー光に対するΔnは0.046であった。
【0085】
つぎに、光学素子Fに対して積算曝露エネルギーを15W・hour/mmとする以外は例3−3と同様の方法で青色レーザー光曝露加速試験を行った。加速試験前のΔnに対する試験後のΔnの低下率は30%であった。また、試験後の波長405nmのレーザー光の透過率は試験前の60%に低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の化合物(1)を用いてなる光学異方性材料は、青色レーザー光に対する耐久性が高いことから、該波長帯のレーザー光に用いる回折素子または位相板として有用に用いうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表されるアクリル酸誘導体であることを特徴とする重合性液晶化合物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
:炭素数1〜8のアルキル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。
:1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基。
ただし、上記の1,4−フェニレン基およびトランス−1,4−シクロヘキシレン基は、基中の水素原子がフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
【化1】

【請求項2】
が水素原子である請求項1に記載の重合性液晶化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合性液晶化合物の2種以上を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の重合性液晶化合物と、下式(2)で表されるアクリル酸誘導体である重合性液晶化合物とを含有することを特徴とする液晶組成物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。ただし、該基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
:炭素数1〜8のアルキル基。
【化2】

【請求項5】
請求項1または2に記載の重合性液晶化合物と、下式(3)で表されるアクリル酸誘導体である重合性液晶化合物とを含有することを特徴とする液晶組成物。ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
CH=CR−COO−Cy−Cy−R (3)
:水素原子またはメチル基。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。ただし、該基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子またはメチル基に置換されていてもよい。
:炭素数1〜8のアルキル基。
【請求項6】
重合性液晶化合物の合計の含有量が、液晶組成物全体に対して25〜100質量%である請求項3〜5のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の液晶組成物を配向させた状態で、紫外光または可視光を照射することにより重合させてなることを特徴とする光学異方性材料。
【請求項8】
請求項7に記載の光学異方性材料からなる光学素子。
【請求項9】
光学素子が回折素子である請求項8に記載の光学素子。
【請求項10】
光学素子が位相板である請求項8に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/014522
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513011(P2005−513011)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011560
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】