説明

重合開始剤としてのN−置換イミド

本発明は、新規なN置換イミドおよびこれらのN置換イミドを含む重合性組成物に関する。本発明は、さらに、N置換イミドの重合開始剤としての使用に関する。イミドは、式(I)および(II)(式中、nは、1または2であり;mは、1または2であり;RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRおよびRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、50までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素(式III)を含有していてもよく;Rは、nが1のとき、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、OR10もしくはSR11、NR1213であり;Rは、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり、RおよびRは、RおよびRに対応し;Rは、nが1のとき、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、NR1415であり;Rは、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり;Rは、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;あるいはRおよびR14またはRおよびR15は、Rに結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成する)の化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な置換イミドおよびこれらの置換イミドを含む重合性組成物に関する。本発明は、さらに、重合開始剤としてのN−置換イミドの使用に関する。
【0002】
フリーラジカル重合は、比較的長い炭素鎖を構築する最も重要な方法に属するものである。それは、ポリスチレン、PVC、ポリ(メタ)アクリレート、PANおよび他のポリマーのような商業的に重要なポリマーを製造するための加工技術において使用される。技術的な詳細については、依然として適切な標準的な研究であるG. Odian, Principles of Polymerization, McGraw-Hill New York 1991を参照してもよい。
【0003】
フリーラジカル重合は開始剤を使用して開始される。加工技術において確立されている開始剤は、アゾ化合物、ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシド、ヒドロパーオキシド、熱不安定性C−Cダイマー、酸化還元系および光開始剤である。"Handbook of Free Radical Initiators", (E. T. Denisov, T. G. Denisova, T. S. Pokidova, J. Wiley & Sons, Inc. Hoboken, New Jersey, 2003)が参照される。
【0004】
それらの幅広い使用にもかかわらず、これら開始剤は種々の短所を有している。このように、例えばパーオキシドは、極端にたやすく着火しそして持続して燃焼する。他の種類の物質は、潜在的に爆発する危険性があるため、それらの使用、貯蔵および運搬には高コストな安全予防措置がとられなければならない。いくつかの開始剤は、例えばAIBNのように、毒性生成物を生じる。したがって、フリーラジカル重合方法のための十分に安全なプロフィールを有する加工技術において有用である有利な開始剤に対して、一般的な必要性がある。
【0005】
J. D. Drulinerは、J. Phys. Org. Chem. 8, 316-324 (1995)中で、N−アルコキシフタルイミドおよびスクシンイミドにより開始されるアクリレートおよびメタクリレートの重合が、ホモポリマーおよびブロックポリマーを生じることを記載している。
【0006】
US2,872,450には、環状オキシミドおよびチオまたはジチオカルボン酸エステルクロリドの反応によるチオまたはジチオカルボン酸エステルの製造ならびにそれらの殺菌剤としての使用が記載されている。
【0007】
US6,667,376には、リビング型フリーラジカル重合用の調節剤として使用される一般式R−S−C(=S)−O−NRの化合物が記載されている。
【0008】
ある種のジカルボン酸イミドが、チオアシルまたはイミノ基でエステル化された場合に、重合開始剤として特に好適であることが見出された。
【0009】
本発明は、式IおよびII:
【0010】
【化9】

【0011】
(式中、
nは、1または2であり;
mは、1または2であり;
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRおよびRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、50までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【0012】
【化10】

【0013】
を含有していてもよく;
は、nが1のとき、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRは、OR10もしくはSR11、NR1213であり;ここで、R10は、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;かつR11は、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
12およびR13は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C12アルケニレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり;ただし、殺菌剤としてUS2,872,450に開示された以下の化合物は除外され、
【0014】
【化11】

【0015】
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRおよびRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、50までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【0016】
【化12】

【0017】
を含有していてもよく;
は、nが1のとき、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRは、NR1415であり;ここで、R14およびR15は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはR14およびR15は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C12アルケニレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり;
は、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;あるいはRおよびR14またはRおよびR15は、Rに結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成する)
の化合物を提供する。
【0018】
定義
用語「C〜C18アルキル」は、例えば、C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルまたはn−、sec−もしくはtert−ブチルまたは直鎖状もしくは分岐状のペンチルもしくはヘキシル、あるいはC〜C18アルキル、例えば直鎖状もしくは分岐状のヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、tert−ノニル、デシルまたはウンデシル、あるいは直鎖状のC11〜C18アルキルは、−(C=O)−基と一緒になって、偶数のC原子を有するC14〜C20アルカノイル、例えば、ラウロイル(C12)、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)を形成する。
【0019】
用語「C〜C18アルケニル」は、ビニル基等の、1以上の炭素−炭素二重結合を有する、アルキルについて上で定義されたような、不飽和の、直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基を意味する。
【0020】
用語「C〜C12アルキレン」は、直鎖状もしくは分岐状の、1〜12個の炭素原子の炭化水素から誘導される二価基を意味する。アルキレン基の例として、エチレン、プロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレンまたはドデカメチレンが挙げられうる。
【0021】
用語「C〜C14アリール」は、場合により置換されているベンゼン環または、1以上の場合により置換されているベンゼン環に縮環した、場合により置換されているベンゼン環をいう。好ましいアリール基は、フェニル、2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、1−ナフチル、ビフェニル、インダニル、アントラシル、フェナントリル、ならびにこれらの置換誘導体である。置換基の例は、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノまたはジ−C〜C18アルキルアミノ、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である)である。
【0022】
用語「C〜C14アリーレン」は、場合により置換されているベンゼン環ジラジカルまたは1以上の場合により置換されているベンゼン環に縮環した場合により置換されているベンゼン環を含むベンゼン環系ジラジカルをいう。例は、上のアリール基に相当する。
【0023】
用語「アラルキル」として、基RaRbが挙げられ、Raは、アルキレン(二価のアルキル)基であり、Rbは、上で定義されたアリール基である。好ましいものは、C〜Cアラルキル基、例えば2−フェニルエチルまたはベンジルである。
【0024】
用語「C〜C12シクロアルキル」として、環を形成する、3以上の炭素原子を有する一価の、脂環式飽和炭化水素基が挙げられる。シクロアルキル化合物は12個までの炭素原子を有してもよいが、一般に、環中に、3〜7個の炭素原子が存在する。後者として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。
【0025】
用語「単環式の環」として、5〜9員環系、例えば、ジオキソピロリジン、ジオキソピペリジン、ジオキソモルホリン、ジオキソチオモルホリンまたはトリヒドロキシイソシアヌル酸から誘導される誘導体が挙げられる。単環式の環系は、好ましくは、式
【0026】
【化13】

【0027】
(式中、Aは、非置換エチレンもしくはプロピレン、またはC〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノまたはi−C〜C18アルキルアミノで置換されているエチレンもしくはプロピレン、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である);または−N(OH)−CO−N(OH)−である。
【0028】
トリヒドロキシイソシアヌル酸から誘導される単環式の環は、例えば、
【0029】
【化14】

【0030】
である。
用語「アシル」は、基RaC(O)−を意味し、ここで、Raは、本明細書中で定義されたC〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、またはヘテロシクリルである。「ヘテロ環状」部分の例は、例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロチオフェンが挙げられる。
【0031】
用語「二環式の環」は、5〜12員の縮環系を意味する。
【0032】
用語「縮環系」は、上で定義された単環の核となる環に加えて、1以上の芳香族環または1以上の脂肪族環を含む系に関する。芳香族環ならびに脂肪族環は、炭素原子のみを含んでいてもよいか、または炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄を含む1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。芳香族環は、好ましくは、ジオキソ−ジヒドロ−イソインドール環をもたらすベンゼン環またはジオキソ−ベンゾイソキノリン環をもたらすナフタレン環である。脂肪族環は、例えば、C〜Cシクロアルキレン環、オキシラン環、シクロヘキセニル環もしくはノルボルネン環またはビシクロ[2.2.2]オクタンもしくはビシクロ[3.2.1]オクタン、あるいは形態
【0033】
【化15】

【0034】
の基である。芳香族環は、場合により、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノまたはジ−C〜C18アルキルアミノ、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である)で置換されていてもよい。
【0035】
二環式の環系は、好ましくは、式
【0036】
【化16】

【0037】
(式中、Aは、フェニレン、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、1,8−ナフチレン、ピリジニレンであるか、またはAは、エチレンもしくはプロピレンまたはC〜Cアルキル置換エチレンもしくはプロピレンあるいはエテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキル置換エテニレンもしくはプロペニレンである)
の残基である。
【0038】
用語「多環式の環系」は、2より多い環状化合物が結合した環系をいう。本明細書中で使用される多環式の環系は、芳香族または非芳香族であってもよいか、別々の芳香族部分および非芳香族部分より構成されていてもよい。例は、アダマンタンまたは1,3,5,7−テトラアザアダマンタン(ウロトロピン)、キュバン、ツイスタンである。多環式の環系は、また、式I’およびII’
【0039】
【化17】

【0040】
(式中、R、RおよびRは上で定義されたとおりである)
の化合物である。
【0041】
多環式の残基のさらなる例は、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドから誘導される
【0042】
【化18】

【0043】
ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドから誘導される
【0044】
【化19】

【0045】
3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミドから誘導される
【0046】
【化20】

【0047】
ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジイミドから誘導される
【0048】
【化21】

【0049】
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミドから誘導される
【0050】
【化22】

【0051】
であってもよい。
【0052】
用語「非水素原子」は、C原子ならびに、N、S、OおよびP原子のようなヘテロ原子を包含する。
【0053】
12とR13またはR14とR15またはRとR14またはRとR15は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、さらに−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されてもよい、5員環もしくは6員環を形成し、環は、例えば、飽和または不飽和環、例えば、アジリジン、ピペラジン、ピロール、チオフェン、ピロリジン、オキサゾール、ピリジン、1,3−ジアジン、1,2−ジアジン、ピペリジンまたはモルホリンであり;モルホリニル、ピペリジルまたはピペラジニル環が、特に形成される。
【0054】
好ましいもの
好ましいものは、RとRおよびRとRが、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成して、式IaまたはIIa:
【0055】
【化23】

【0056】
(式中、
Aは、非置換エチレンもしくはプロピレン、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノもしくはジ−C〜C18アルキルアミノで置換されているエチレンもしくはプロピレンであるか;あるいはAは、エテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキルで置換されているエテニレンもしくはプロペニレンであるか;あるいはAは、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である);または−N(OH)−CO−N(OH)−であるか;あるいはAは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、20までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【0057】
【化24】

【0058】
を含有していてもよく;
12およびR13は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルであるか;あるいはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
A’は、非置換エチレンもしくはプロピレン、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノもしくはジ−C〜C18アルキルアミノで置換されているエチレンもしくはプロピレンであるか;あるいはA’は、エテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキルで置換されているエテニレンもしくはプロペニレンであるか;あるいはA’は、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である);または−N(OH)−CO−N(OH)−であるか;あるいはA’は、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、20までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【0059】
【化25】

【0060】
を含有していてもよく;
は、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、NR1415であり;ここで、R14およびR15は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニルであるか、あるいはR14およびR15は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニルであるか;あるいはRおよびR14またはRおよびR15は、Rに結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成する)の化合物をもたらす、式IおよびIIの化合物である。
【0061】
とRおよびRとRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式の環を形成して、式IbまたはIIb:
【0062】
【化26】

【0063】
(式中、
12およびR13は、それぞれ互いに独立して、水素もしくはC〜C18アルキルもしくはシクロヘキシルであるか;あるいはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、および/または−O−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
16およびR17は、それぞれ互いに独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜Cアルキルカルバモイル、ジ−C〜Cアルキルカルバモイル、C〜Cアシル、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノまたはジ−C〜Cアルキルアミノであり;
は、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルであり;
は、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルであり;
18およびR19は、それぞれ互いに独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜Cアルキルカルバモイル、ジ−C〜Cアルキルカルバモイル、C〜Cアシル、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノまたはジ−C〜Cアルキルアミノである)の化合物をもたらす、式IおよびIIの化合物。
【0064】
化合物の製造
式(I)および(II)の上記の化合物は、それ自体公知の方法により製造することができる。
式(I)の化合物は、US2,872,450に記載されたように、以下のスキーム:
【0065】
【化27】

【0066】
に従って、環状オキシミドとチオカルボン酸エステルクロリドとの反応により製造することができる。
【0067】
さらなる製造経路は、以下のスキーム:
【0068】
【化28】

【0069】
に従って、チオカルボン酸クロリドを得て、それはさらにアミンまたはアルコールと反応する、チオホスゲンとN−ヒドロキシイミドとの反応である。
【0070】
式(II)の化合物は、以下のスキーム:
【0071】
【化29】

【0072】
に従って、N−ヒドロキシイミドまたはその塩をイミド塩化物と反応させて、製造してもよい。
【0073】
イミド塩化物は、J. C. S. Perkin II, 1318 (1980)に記載されたように製造してもよい。
【0074】
上記の好ましい製造経路は、単なる例示であって、他の経路が可能であってもよい。
【0075】
好適なジカルボン酸として、例えば、コハク酸、C〜C18アルキルコハク酸、C〜C18アルケニルコハク酸、マレイン酸、ジメチルマレイン酸、グルタル酸、チオグリコール酸、イミドジ酢酸、クエン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、フタル酸、置換フタル酸(ハロゲン、COOR、ニトロ等、上で定義されたとおり)ホモフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸が挙げられる。
【0076】
使用
N−置換イミドを、フリーラジカル重合により硬化されるコーティング用の硬化剤中で、重合開始剤として、特に、熱的ラジカル開始剤(TRI)として使用してもよい。コーティングは、熱硬化性コーティング組成物、ダブル(熱的およびUV放射)硬化性コーティング組成物または少なくとも第2の架橋性樹脂を含むデュアル(熱硬化性)コーティング組成物でありうる。熱硬化は、NIR硬化またはIR硬化または対流熱を用いて行われる。マイクロ波加熱を使用することも可能である。ダブル硬化組成物は、熱的開始剤に加えて、光開始剤を含む。ダブル硬化は、NIR硬化またはIR硬化と、引き続くUV硬化、あるいはその逆に、行われる。
【0077】
本発明は、さらに、
a)少なくともエチレン性不飽和化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
を含む、熱硬化性コーティング組成物に関する。
【0078】
本発明は、さらに、
a)少なくともエチレン性不飽和化合物および第2の熱架橋性化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
を含む、デュアル硬化性コーティング組成物に関する。
【0079】
本発明は、さらに、
a)少なくともエチレン性不飽和化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
c)エチレン性不飽和化合物のUV硬化性を可能にするのに有効な光開始剤、
を含む、ダブル(熱およびUV)硬化性コーティング組成物に関する。
【0080】
定義
熱硬化:
熱硬化は、混合物を基体に塗布した後、対流熱またはIR放射またはNIR放射またはマイクロ波放射または超音波への暴露の適用を意味する。粉体コーティングの場合、付着した粉体コーティングは、まず、好ましくは対流熱により、溶融して表面層を形成する。フリーラジカル重合を開始し、完結するための好適な温度は、60〜180℃である。
【0081】
NIR硬化
本発明に係る方法に使用されるNIR放射は、約750nm〜約1500nm、好ましくは750nm〜1200nmの波長範囲での短波長赤外線放射である。NIR放射用の放射源として、例えば、市販の慣用のNIR放射エミッタ(例えば、Adphos製)が挙げられる。
【0082】
IR硬化
本発明に係る方法に使用されるIR放射は、約1500nm〜約3000nmの波長範囲での中波長赤外線放射および/または3000nm超の波長範囲での長波長赤外線放射である。
この種のIR放射エミッタは市販されている(例えば、Heraeus製)。
【0083】
マイクロ波硬化:
本発明に係る方法に使用されるマイクロ波放射は、約1mm〜30cmの波長範囲での電磁放射である。
【0084】
超音波硬化:
本発明に係る方法に使用される超音波は、20kHz超の周波数の音波である。
【0085】
UV硬化
光化学的硬化工程は、通常、約200nm〜約600nm、特に200〜450nmの波長の光を用いて行われる。光源として、多数の最も多様な種類が使用される。点光源およびプラットフォームプロジェクター(ランプカーペット)の双方が好適である。例は:炭素アーク灯、キセノンアーク灯、場合により金属ハロゲン化物でドープされた(金属ハロゲン化物ランプ)、中圧、高圧および低圧水銀灯、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマーランプ、超化学線蛍光管、蛍光灯、アルゴンフィラメント灯、電子的フラッシュ灯、写真用フラッド光、電子線およびシンクロトロンまたはレーザープラズマにより発生されたX線である。
【0086】
ダブル硬化
ダブル硬化系は、UV放射により重合することができる、あるいはIRもしくはNIR放射またはマイクロ波放射または超音波暴露によりまたは対流熱により熱的に誘起して重合することができる、エチレン性不飽和モノマーを含む。ダブル硬化系では、熱硬化には、好ましくは、UV硬化が続く。しかしながら、UV硬化に熱硬化が続くことも可能である。
【0087】
デュアル硬化
デュアル硬化系は、IRもしくはNIR放射またはマイクロ波放射または超音波暴露によりまたは対流熱により熱的に誘起して重合することができる、エチレン性不飽和モノマーを含む。さらに、少なくとも1つの第2の熱架橋性化合物が存在する。第2の化合物は、好ましくは、ポリオール−イソシアネート反応を介して架橋して、ポリウレタンを形成する。
【0088】
エチレン性不飽和化合物の定義
オレフィン性二重結合を持つ好適な化合物は、二重結合のフリーラジカル重合により架橋することができるすべての化合物である。エチレン性不飽和化合物は、モノマー、オリゴマーもしくはプレポリマー、それらの混合物またはそれらのコポリマーでありうる。
【0089】
フリーラジカル重合に好適なモノマーは、例えば、(メタ)アクリレート、アルケン、共役ジエン、スチレン、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、無水マレイン酸、無水フマル酸、(メタ)アクリル酸、エステルおよびアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、ハロゲン化ビニルならびにハロゲン化ビニリデンからなる群より選択されるエチレン性不飽和重合性モノマーである。好ましいものは、(メタ)アクリロイル、ビニルおよび/またはマレイネート基を有する化合物である。特に好ましいものは、(メタ)アクリレートである。
【0090】
好ましい(メタ)アクリロイル基の形態でのフリーラジカル重合性二重結合を含む化合物を、従来方法に従って製造してもよい。これは、例えば、OH官能性樹脂、例えばOH官能性ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステルまたはエポキシ樹脂を、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルでエステル交換する;上記のOH官能性樹脂を、(メタ)アクリル酸でエステル化する;上記のOH官能性樹脂を、イソシアネート官能性(メタ)アクリレートと反応させる;酸官能性樹脂、例えばポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンを、エポキシ官能性(メタ)アクリレートと反応させる;エポキシ官能性樹脂、例えばポリエステル、ポリアクリレート、エポキシ樹脂を、(メタ)アクリル酸と反応させることにより進行してもよい。例示の目的で記載されたこれらの製造方法は、文献に記載されており、当業者に公知である。
【0091】
プレポリマーまたはオリゴマーの例として、例えば500〜10,000、好ましくは500〜5,000の数平均分子量を有する、(メタ)アクリロイル官能性(メタ)アクリルコポリマー、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートおよびエポキシ樹脂(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0092】
(メタ)アクリロイル官能性プレポリマーは、反応性希釈剤、すなわち、500g/mol未満の分子量を有するフリーラジカル重合性低分子量化合物と共に使用しうる。反応性希釈剤は、一不飽和性、二不飽和性または多不飽和性であることができる。一不飽和性反応性希釈剤の例は、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、マレイン酸およびそのエステル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、置換ビニル尿素、スチレン、ビニルトルエンである。二不飽和性反応性希釈剤の例は、ジ(メタ)アクリレート、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートである。多不飽和性反応性希釈剤の例は、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。反応性希釈剤は、単独でまたは混合して使用してもよい。
【0093】
アクリル酸またはメタクリル酸の好適な塩は、例えば、(C〜Cアルキル)アンモニウムまたは(C〜Cアルキル)NH塩、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウムまたはトリエチルアンモニウム塩、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムまたはトリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムまたはジエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩である。
【0094】
エチレン性不飽和化合物は、オレフィン性二重結合に加えて、1以上のさらに、同一または異なる官能基を含んでいてもよい。官能基の例として、ヒドロキシ、イソシアネート(場合によりブロックされている)、N−メチロール、N−メチロールエーテル、エステル、カーバメート、エポキシ、アミノ(場合によりブロックされている)、アセトアセチル、アルコキシシリルおよびカルボキシル基が挙げられる。例は、(メタ)アクリロイル基を持つポリウレタン樹脂ならびにグリセリンモノおよびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノおよびジ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
【0095】
添加物
上記の組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよく、添加剤は、代替法として、重合後に添加してもよい。そのような添加剤は少量で添加され、例えばUV吸収剤または光安定剤、例えばヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、オキサルアミドおよびヒドロキシフェニル−s−トリアジンからなる群より選択される化合物である。特に適した光安定剤は、N−アルコキシ−Hals化合物、例えばTinuvin 123または2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンまたは2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール型の立体障害性アミンHals化合物からなる群より選択されるものである。2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン型の光安定剤の例は、特許文献、例えばUS4,619,956、EP−A−434608、US5,198,498、US5,322,868、US5,369,140、US5,298,067、WO−94/18278、EP−A−704437、GB−A−2,297,091またはWO−96/28431から既知である。US6,140,326に記載のような、3,3,5,5多置換モルホリン−2−オン誘導体は、コーティング用に十分に確立された光安定剤である。
【0096】
組成物は、他の慣用の添加剤、例えばレベリング剤、レオロジー影響付与剤、例えば、微粒ケイ酸、層状シリケート、尿素化合物;増粘剤、例えば、部分的に架橋されたカルボキシ官能性ポリマーまたはポリウレタンに基づくもの;脱泡剤、湿潤剤、くぼみ防止剤、脱気剤、例えば、ベンゾイン、抗酸化剤をさらに含んでいてもよい。
【0097】
化合物は、さらに、保存安定性を改善する添化剤、例えばニトロキシルベースの重合防止剤、例えばIrgastab UV10および2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO);高度に立体障害性のニトロキシル基または2004年9月3日に出願された欧州特許出願EO04104248.2に記載のキノンメチドを含んでいてもよい。
【0098】
当分野で公知の任意の熱的開始剤を、N置換イミドに加えて使用してもよい。好ましくは、追加的な熱的開始剤は、パーオキシド、例えばジアルキルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、パーオキソカルボン酸等およびUS5922473に開示のアゾ開始剤である。
コーティング剤は、非着色コーティング剤、例えば透明クリヤコートまたは着色コーティング剤であってもよい。
コーティング剤は、充填剤および/または透明な、色付与顔料および/または特殊効果付与顔料および/または可溶性染料を含んでいてもよい。無機または有機色付与顔料の例として、二酸化チタン、微粉化二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドンまたはピロロピロール顔料が挙げられる。特殊効果付与顔料の例として、例えばアルミニウム、銅または他の金属の金属顔料;干渉顔料、例えば、金属酸化物でコートされた金属顔料、例えば、二酸化チタンでコートされたまたは混合酸化物でコートされたアルミニウム、コートされたマイカ、例えば、二酸化チタンでコートされたマイカおよび黒鉛特殊効果顔料が挙げられる。好適な充填剤の例として、シリカ、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよびタルクが挙げられる。
【0099】
ダブル硬化系では、熱的ラジカル開始剤に加えて、光開始剤が必要とされる。好適な光開始剤は、当業者に公知である。例えば、α−ヒドロキシケトンおよびα−アミノケトン、フェニルグリオキサレートまたはホスフィンオキシドが、グラフィックアートの用途に一般に使用される光開始剤である。
特に好ましいものは、例えば、以下の市販の光開始剤である:
Darocur 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(HMPP)およびオリゴマー状HMPP、
Irgacure 184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、
Irgacure 2959:2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、
Irgacure 369:2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、
Irgacure 1300:Irgacure 369+Irgacure 651(ベンジルジメチルケタール)、
Irgacure 379:2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、
Irgacure 127:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、
Irgacure 754:オキソ−フェニル酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシ)プロポキシ]エチルエステル、
Irgacure 819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
Irgacure 250:4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、
Darocur ITX:2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントン
Darocur EDB:エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、
Darocur EHA:2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート;または上の光開始剤の混合物。
光重合性組成物は、光開始剤を、有利には、組成物に対して、0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜8%の量で、含んでいる。
【0100】
デュアル硬化系では、少なくとも1つの第2の熱架橋性化合物は、
1.場合により硬化触媒を添加した、冷架橋性または高温架橋性アルキド、アクリレート、ポリエステル、エポキシまたはメラミン樹脂またはそれらの樹脂の混合物に基づく表面コーティング;
2.ヒドロキシ基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族または芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分ポリウレタン表面コーティング;
3.チオール基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族または芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分ポリウレタン表面コーティング;
4.亜硫酸ガス漂白(stoving)中に脱ブロック化されるブロック化されたイソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく1成分ポリウレタン表面コーティング;所望ならば、メラミン樹脂の添加も可能である;
5.脂肪族または芳香族ウレタンまたはポリウレタンおよびヒドロキシ基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂に基づく1成分ポリウレタン表面コーティング;
6.場合により硬化触媒を添加した、ウレタン構造中に遊離アミン基を有する脂肪族または芳香族ウレタンアクリレートまたはポリウレタンアクリレートおよびメラミン樹脂またはポリエーテル樹脂に基づく1成分ポリウレタン表面コーティング;
7.(ポリ)ケチミンおよび脂肪族または芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分表面コーティング;
8.(ポリ)ケチミンおよび不飽和アクリレート樹脂またはポリアセトアセテート樹脂またはメタクリルアミドグリコレートメチルエステルに基づく2成分表面コーティング;
9.カルボキシル基含有またはアミノ基含有ポリアクリレートおよびポリエポキシドに基づく2成分表面コーティング;
10.無水物基含有アクリレート樹脂およびポリヒドロキシまたはポリアミノ成分に基づく2成分表面コーティング;
11.アクリレート含有無水物およびポリエポキシドに基づく2成分表面コーティング;
12.(ポリ)オキサゾリンおよび無水物基含有アクリレート樹脂または不飽和アクリレート樹脂または脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートもしくはポリイソシアネートに基づく2成分表面コーティング;
13.不飽和(ポリ)アクリレートおよび(ポリ)マロネートに基づく2成分表面コーティング;
14.エーテル化メラミン樹脂と組み合わせた、熱可塑性アクリレート樹脂または外因的に架橋性のアクリレート樹脂に基づく熱可塑性ポリアクリレート表面コーティング;
15.架橋剤(酸触媒性)としてのメラミン樹脂(例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン)を有するマロネートでブロックされたイソシアネートに基づく表面コーティング系,特にクリヤコート;
16.場合により他のオリゴマーまたはモノマーを添加した、オリゴマー状ウレタンアクリレートおよび/またはアクリレートアクリレートに基づくUV硬化性の系;
17.UV光と光開始剤および/または電子線硬化により反応を引き起こすことができる二重結合を含む表面コーティング配合物の構成物が、最初に熱的に、次いでUVで、またはその逆で硬化される、デュアル硬化系;
から選択されて存在する。
【0101】
得られた本発明のコーティング材料は、有機溶媒を含有する慣用のコーティング材料、水性コーティング材料、実質的にもしくは完全に溶媒を含まずかつ水を含まない液体コーティング材料(100%系)、実質的にもしくは完全に溶媒を含まずかつ水を含まない固体コーティング材料(粉末コーティング材料)、または実質的にもしくは完全に溶媒を含まない粉末コーティング懸濁液(粉末スラリー)であってもよい。
【0102】
好適な基体の非限定的な例は、例えば、木、繊維、紙、セラミック、ガラス、ガラス繊維、プラスチック、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンまたは酢酸セルロース、特にフィルム状のもの、およびまた、金属、例えばAl、Cu、Ni、Fe、Zn、MgまたはCoおよびGaAs、SiまたはSiOである。
【0103】
コーティング組成物はまた、インク組成物であってもよい。したがって、基材は、インク組成物で印刷されて、基材上でインクフィルムを形成する。
【0104】
本発明の組成物は、種々の目的、例えば、印刷インク、例えばスクリーン印刷インク、フレキソ印刷インクまたはオフセット印刷インクとして、クリヤコートとして、カラーコートとしてのゲルコート、白色コートとして、例えば木もしくは金属用に、粉末コーティングとして、ペイント、特に紙、水、金属もしくはプラスチック用のペイントとして、建築物および道路の標識用、写真再現プロセス用、ホログラム記録材料用、画像記録プロセス用または、例えば有機溶媒もしくは水性アルカリ媒体を用いて現像できる印刷板の製造用、スクリーン印刷のマスクの製造用の、昼光硬化性コーティングとして、歯科用充填材料として、接着剤として、粘着剤として、ラミネート用樹脂として、ホトレジスト、例えばガルバノレジスト、液体フィルムおよびドライフィルムの双方の、エッチングもしくは永久レジストとして、光構築性誘電体として、および電子回路のハンダ停止用マスクとして、任意の種類のスクリーン用フィルターの製造用またはプラズマディスプレイおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法における構造形成用、光学スィッチ、光学格子(干渉格子)の製造用、例えばUS4,575,330に記載のような、全体硬化(透明な型中でのUV硬化)によるまたは立体リトグラフプロセスによる三次元物体の製造用、複合材料(例えば、ガラス繊維および/または他の繊維および他の補助剤を含み得るスチレン系ポリエステル)および他の厚層材料の製造用、ゲルコートの製造用、電子部品のコーティングまたは封止用のレジストとして、あるいは光学繊維のコーティングとして使用することができる。組成物は、また、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズおよびフレネルレンズの製造用に、ならびに医療機器、補助材、またはインプラントの製造用に好適である。
【0105】
組成物は、また、サーモトロピック性を有するゲルの製造に好適である。そのようなゲルは、例えば、DE19700064およびEP678534に記載されている。
【0106】
さらに、組成物は、例えば、Paint & Coatings Industry, April 1997, 72またはPlastics World, Volume 54, No. 7, page 48(5)に記載のような、ドライフィルムペイント中で使用することができる。
【0107】
コーティングの製造
配合物の成分および場合により、さらなる添加剤は、公知の技法を用いて、例えばスピンコーティング、浸漬、ナイフコーティング、カーテン注入、ブラシ塗布または噴霧により、特に、静電噴霧およびリバース・ロールコーティングにより、また、電気泳動析出により、基材に均一に塗布される。塗布量(コーティング厚)および基材の性質(層支持体)は、所望の用途分野に依存する。コート厚の範囲は、一般に、ゲルコートについては0.1μm〜1mmの値、複合体については1mm超の値よりなる。
【0108】
本発明は、さらに、式IまたはIIの化合物を熱的開始剤として含む熱硬化性組成物を、IR硬化またはNIR硬化または対流熱を用いて硬化する方法を提供する。
【0109】
本発明は、さらに、コーティング組成物の硬化方法であって、
a)コーティング層を基材に塗布し、ここでコーティング組成物は、少なくともエチレン性不飽和化合物および上で定義された式IまたはIIの開始剤のブレンドであり;
b)塗布されたコーティング層の熱硬化、
を含む方法に関する。
【0110】
本発明は、さらに、コーティング組成物のダブル硬化方法であって、
a)コーティング層を基材に塗布し、ここでコーティング組成物は、少なくともエチレン性不飽和化合物および上で定義された式IまたはIIの開始剤;および上で定義された光開始剤のブレンドであり;
b)塗布されたコーティング層の熱硬化およびUV硬化、
を含む方法に関する。
【0111】
本発明は、さらに、コーティング組成物のデュアル硬化方法であって、
a)コーティング層を基材に塗布し、ここでコーティング組成物は、少なくともエチレン性不飽和化合物および第2の熱架橋性化合物ならびに上で定義された式IまたはIIの開始剤のブレンドであり;
b)塗布されたコーティング層の熱硬化、
を含む方法に関する。
【0112】
実施例
実施例1
N−メチルベンズイミド酸1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルエステルの製造
【0113】
【化30】

【0114】
a)N−ヒドロキシフタルイミドナトリウム塩の製造
N−ヒドロキシフタルイミド118g(0.723mol)を無水エタノール700mlに懸濁した。この懸濁液に、無水エタノール400ml中のナトリウム16.65g(0.723mol)の溶液を撹拌下で滴下した。得られた赤色懸濁液を、室温で19時間撹拌した。そのように形成された赤色固体を吸引し、無水エタノール100mlで洗浄し、真空で乾燥して、赤色固体133gを得た。
【0115】
b)標題化合物の製造
N−ヒドロキシフタルイミドナトリウム塩(46.25g;0.25mol)を乾燥DMF(220ml)に溶解し、得られた懸濁液に、N−メチルベンズイミドイルクロリド(J. C. S. Perkin II, 1324, (1980)に従って製造)38.8g(0.25mol)を、室温で撹拌しながら、ゆっくり加えた。反応混合物を室温で19時間撹拌し、次いで、水1.5lに注いだ。そのように形成された析出物を吸引し、真空で乾燥して、粗生成物66.06gを得て、次いでそれをアセトニトリル250mlに入れた。濾過の後、N−メチルベンズイミド酸1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルエステル58.7gが、融点174〜176℃の無色結晶の形態で得られた。
1612(280.29)として、計算値/実測値(%):C68.56/68.54、H4.32/4.49、N9.99/10.00
【0116】
実施例2
N−エチルベンズイミド酸1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルエステルの製造
【0117】
【化31】

【0118】
実施例1と同様
無色結晶;収率73%、融点124〜126℃。
1714(294.31)として、計算値/実測値(%):C69.38/69.10、H4.79/4.63、N9.52/9.44。
【0119】
実施例3
N−ブチルベンズイミド酸1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルエステルの製造
【0120】
【化32】

【0121】
実施例1と同様
無色結晶;収率83%、融点42〜45℃。
1818(322.37)として、計算値/実測値(%):C70.79/70.71、H5.63/5.64、N8.69/8.68。
【0122】
実施例4
N−メチルベンズイミド酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルの製造
【0123】
【化33】

【0124】
ナトリウムメチラート1.7g(0.03mol)を、メタノール25ml中のN−ヒドロキシコハク酸イミド3.45g(0.03mol)の溶液に加えた。反応混合物を1時間撹拌し、真空で濃縮し、残渣をDMF15mlに入れた。メチルベンズイミドイルクロリド4.6g(0.03mol)を撹拌しながら加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌し、次いで、水120mlに注いだ。そのように形成された析出物を吸引し、真空で乾燥して、粗生成物3.8gを得て、次いでそれをトルエン9mlに入れて、再結晶すると、N−メチルベンズイミド酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル3.05gが、無色結晶の形態で得られた;融点119〜120℃。
1212(232.24)として、計算値/実測値(%):C62.06/61.85、H5.21/5.22、N12.06/12.00
【0125】
実施例5
ジメチル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)エステルの製造
【0126】
【化34】

【0127】
N−ヒドロキシフタルイミド97.9g(0.6mol)をピリジン400mlに加えた。次いで、ジメチルチオカルバモイルクロリド76g(0.615mol)を加えた。反応混合物を室温で21時間撹拌し、次いで、氷水4lに注いだ。そのように形成された析出物を吸引し、真空で乾燥して、粗生成物145gを得て、次いでそれをジクロロメタン−ヘキサンに入れて、再結晶すると、ジメチル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)127gが、計算値/実測値(%):C52.79/52.68、H4.03/4.14、N11.19/11.14で得られた。
【0128】
実施例6
ジメチル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−ベンゾイソキノリン−2−イル)エステルの製造
【0129】
【化35】

【0130】
N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミドを用いて実施例5と同様。
無色結晶;収率33%、融点185〜190℃。
【表1】

【0131】
実施例7
ジメチル−チオカルバミン酸O−(2,5−ピロリジン−1−イル)エステルの製造
【0132】
【化36】

【0133】
無色結晶;収率68.5%、融点148〜151℃。
計算値/実測値C10S(202.23)(%):C41.57/41.61、H4.98/4.91、N13.85/13.76。
【0134】
実施例8
ジメチル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−オクタヒドロ−イソインドール−2−イル)エステルの製造
【0135】
【化37】

【0136】
ピリジン100ml中のN−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド(Chem. Pharm. Bull., 16, (1968), 622に記載されたように製造)25.38g(0.15mol)および4−ジメチルアミノピリジン0.5gの溶液に、ジメチルチオカルバモイルクロリド18.54g(0.15mol)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで、氷水1000mlに注いだ。析出物を濾過し、エタノール120mlから再結晶すると、白色結晶28.38gが、融点124〜126℃で得られた。
注入MS、C1116S(256.33)として実測値[M+1]=257.1。
【0137】
実施例9
N−(N’,N’−ジメチル−チオノカルバモイル−オキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの製造
【0138】
【化38】

【0139】
この化合物は、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(Bull. Soc. Chem. Fr., (1976), 833に記載されたように製造)26.9g(0.15mol)から出発して、実施例8と同様にして製造した。ジクロロメタン−アセトンからの再結晶後の、無色結晶の収量36.3g。融点215〜218℃。
元素分析、C1214Sとして、計算値/実測値(%):C54.12/54.18;H5.30/5.37;N10.52/10.52。
【0140】
実施例10
ジメチル−チオカルバミン酸O−(3,4−ジメチル−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)エステルの製造
【0141】
【化39】

【0142】
この化合物は、N−ヒドロキシ−3,4−ジメチル−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール(J. Chem. Soc., (1955), 631に記載されたように製造)21.17g(0.15mol)から出発して、実施例8と同様にして製造した。エタノールからの再結晶後の収量23.50g。融点135〜138℃。
注入MS、C12S(228.27)として実測値[M+1]=229.1。
【0143】
実施例11
ジイソプロピル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)エステルの製造
【0144】
【化40】

【0145】
この化合物は、ジイソプロピル−チオカルバモイルクロリド(Chem. Ber., 101, (1968), 113に記載されたように製造)32.35g(0.18mol)およびN−ヒドロキシフタルイミドから出発して、実施例8と同様にして製造した。ヘキサンからの再結晶後の、白色結晶の収量21.44g。融点73〜75℃。
【表2】

【0146】
実施例12
ジシクロヘキシル−チオカルバミン酸O−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)エステルの製造
【0147】
【化41】

【0148】
この化合物は、ジシクロヘキシル−チオカルバモイルクロリド(Chem. Ber., 101, (1968), 113に記載されたように製造)24.94g(0.096mol)およびN−ヒドロキシフタルイミドから出発して、実施例8と同様にして製造した。ヘキサンからの再結晶後の、白色結晶の収量9.65g。融点148〜150℃。
AP−Cl(ブタン)MS,C2126S(386.51)として実測値[M+1]=386.87。
【0149】
応用例
NIR照射下の硬化:
【0150】
【表3】

【0151】
試験された試料
実施例5および実施例7の化合物
試験化合物1.00gを、スクリーニング配合物50.00g中に、歯型ホイール溶解機を用いて30分間で溶解した。
【0152】
応用および硬化条件:
コーティングを、スリットコーターを用いて、スチールパネル上に塗布した(WFT90μm)。
65%のパワー出力で、基材との距離3cm、ライン速度3m/分で、750〜1500nmの間の主発光で、NIRランプ下に硬化。
【0153】
試験方法:
DIN EN ISO 1522に従う振り子硬度(Koenig)
DIN 53 151に従うクロスハッチ試験
【0154】
【表4】

【0155】
【表5】

【0156】
実施例5、10、11または12の各化合物中の化合物0.4g(下表参照)を、スクリーニング配合物20.00g中に、磁気撹拌装置を用いて30分で溶解した。混合物を、白色コイルコーティングしたアルミニウムに塗布した。試料をオーブン中で、160℃で30分間焼成して、約25μmの厚さの非粘着性ドライフィルムを得た。硬化45分後、Koenig(DIN 53157)に従う振り子硬度を測定した。
【0157】
【表6】

【0158】
保存安定性:
【0159】
【表7】

【0160】
試験された試料:
実施例5、7、9、10および12の化合物1.00gを、スクリーニング配合物50.00g中に、磁気撹拌装置を用いて30分間で溶解した。
【0161】
試験方法:
ICIコーンプレート粘度計で、20℃での粘度の測定。
保存安定性:最初に、試料調製後に粘度を測定した。試料を分割し、密閉容器中で、40℃で保存した。4週間および12週間の期間の後、粘度を再び測定した。参考として、スクリーニング配合物を、そのように処理し、測定した。
【0162】
【表8】

【0163】
デュアル硬化
実施例5の化合物0.26gを、成分A13.4g中に、磁気撹拌装置を用いて30分で溶解した。続いて成分Bを加え、十分に均質化した。
【0164】
【表9】

【0165】
混合物を、白色コイルコーティングしたアルミニウムに塗布し、室温で5分間空気乾燥し、オーブン中で、160℃で30分間加熱した。約40μmの厚さの非粘着性ドライフィルムを得た。硬化45分後、Koenig(DIN 53157)に従う振り子硬度を測定した。振り子硬度140s。
【0166】
ダブル硬化
実施例5の化合物0.4gおよびIrgacure 184 0.4gを、スクリーニング配合物20.00g中に、磁気撹拌装置を用いて30分で溶解した。
【0167】
【表10】

【0168】
混合物を、白色コイルコーティングしたアルミニウムに塗布した。ベルト速度5m/分で、UVプロセッサー(2X120W/cm)中圧水銀灯を用いて、照射を行った。試料を、オーブン中で、160℃で30分間焼成して、約25μmの厚さの非粘着性ドライフィルムを得た。
硬化45分後、Koenig(DIN 53157)に従う振り子硬度を測定した。振り子硬度146s。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IおよびII
【化1】


(式中、
nは、1または2であり;
mは、1または2であり;
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRおよびRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、50までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【化2】


を含有していてもよく;
は、nが1のとき、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRは、OR10もしくはSR11、NR1213であり;ここで、R10は、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;かつR11は、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
12およびR13は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C12アルケニレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり;ただし、殺菌剤としてUS2,872,450に開示された以下の化合物は除外され、
【化3】


およびRは、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRおよびRは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、50までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【化4】


を含有していてもよく;
は、nが1のとき、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはRは、NR1415であり;ここで、R14およびR15は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;またはR14およびR15は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、nが2のとき、C〜C12アルキレン、C〜C12アルケニレン、C〜C14アリーレン、キシリレンであり;
は、水素、C〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、ハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;あるいはRおよびR14またはRおよびR15は、Rに結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成する)の化合物。
【請求項2】
(R、R)および(R、R)が、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、単環式、二環式もしくは多環式の環を形成して、式IaまたはIIa:
【化5】


(式中、
Aは、非置換エチレンもしくはプロピレン、またはC〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノもしくはジ−C〜C18アルキルアミノで置換されているエチレンもしくはプロピレンであるか;あるいはAは、エテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキルで置換されているエテニレンもしくはプロペニレンであるか;あるいはAは、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である)または−N(OH)−CO−N(OH)−であるか;あるいはAは、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、20までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【化6】


を含有していてもよく;
12およびR13は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルであるか;あるいはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
A’は、非置換エチレンもしくはプロピレン、またはC〜C18アルキル、C〜C14アリール、アラルキル、C〜C12シクロアルキル、ハロゲン、OH、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、カルボキシ、C〜C18アルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜C18アルキルカルバモイル、ジ−C〜C18アルキルカルバモイル、アシル、ニトロ、アミノ、C〜C18アルキルアミノもしくはジ−C〜C18アルキルアミノで置換されているエチレンもしくはプロピレンであるか;あるいはA’は、エテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキルで置換されているエテニレンもしくはプロペニレンであるか;あるいはA’は、−CH−X−CH−(式中、Xは、O、NH、N(C〜C18アルキル)である)または−N(OH)−CO−N(OH)−であるか;あるいはA’は、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式もしくは多環式の環を形成してもよく、前記環は、20までの非水素原子を有し、前記環は、1個以上の構造要素
【化7】


を含有していてもよく;
は、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、NR1415であり;ここで、R14およびR15は、互いに独立して、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニルであるか、あるいはR14およびR15は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
は、水素、C〜C18アルキル、シクロヘキシル、フェニルであるか;あるいはRおよびR14またはRおよびR15は、Rに結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、−O−および/またはS−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成する)の化合物をもたらす、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(R、R)および(R、R)が、隣接する−CO−N−CO−基と一緒になって、二環式の環を形成して、式IbまたはIIb:
【化8】


(式中、
12およびR13は、それぞれ互いに独立して、水素もしくはC〜Cアルキルもしくはシクロヘキシルであるか;あるいはR12およびR13は、それらが結合しているN原子と一緒になって、場合により−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、および/または−O−原子で中断されている、5員環もしくは6員環を形成し、
16およびR17は、それぞれ互いに独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜Cアルキルカルバモイル、ジ−C〜Cアルキルカルバモイル、C〜Cアシル、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノまたはジ−C〜Cアルキルアミノであり;
は、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルであり;
は、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルであり;
18およびR19は、それぞれ互いに独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、カルバモイル(C(O)NH)、C〜Cアルキルカルバモイル、ジ−C〜Cアルキルカルバモイル、C〜Cアシル、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノまたはジ−C〜Cアルキルアミノである)の化合物をもたらす、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
AおよびA’が独立して、フェニレン、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、1,8−ナフチレンまたはピリジニレンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
AおよびA’が独立して、エチレンもしくはプロピレンまたはC〜Cアルキル置換エチレンもしくはプロピレンあるいはエテニレンもしくはプロペニレンまたはC〜Cアルキル置換エテニレンもしくはプロペニレンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
a)少なくともエチレン性不飽和化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、請求項1に記載の式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
を含む、熱硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
a)少なくともエチレン性不飽和化合物および第2の熱架橋性化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、請求項1に記載の式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
を含む、デュアル硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
a)少なくともエチレン性不飽和化合物;
b)エチレン性不飽和化合物の、IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするのに有効な、またはマイクロ波硬化を可能にするのに有効な、または超音波硬化を可能にするのに有効な、または対流熱硬化を可能にするのに有効な熱的開始剤であって、熱的開始剤が、請求項1に記載の式(I)および/または(II)のN−置換イミドであるもの、
c)エチレン性不飽和化合物のUV硬化を可能にするのに有効な光開始剤、
を含む、ダブル硬化性コーティング組成物。
【請求項9】
フリーラジカル重合により硬化されるコーティング用の硬化剤における、熱的ラジカル開始剤(TRI)としての、請求項1〜5に記載の重合開始剤の使用。

【公表番号】特表2008−519086(P2008−519086A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540627(P2007−540627)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055646
【国際公開番号】WO2006/051047
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】