説明

重症の又は持続型の喘息の評価及び治療のためのマーカー及び方法

TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1 B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1 B SNP rs590977(配列番号3)のSNPのうちの少なくとも1つと対応するヌクレオチド配列を構成する群からの少なくとも1つの構成要素の少なくとも一部からなる核酸断片を備えるパネルと接触する試料に対応する、1つ以上の遺伝子の発現の存在、不在及び/又は規模を評価する、患者の、例えば重症の又は持続型の喘息などのTNF媒介性疾患についての標的治療の適合性及び/又は有効性を評価するための方法であって、これは連鎖不平衡(LD)にある試料中の1つ以上のかかるSNPの判定をもたらす。本方法は、患者対してかかる治療の前又は後に標的となる治療法の有効性の同定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願番号第61/037,989号の利益を主張し、その内容の全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、重症の又は持続型の喘息などのTNF媒介性のの発現プロファイルの同定及びこの疾患の指標となる核酸に関し、並びに重症の又は持続型の喘息及び関連する疾病の診断についての、かかる発現プロファイル及び核酸の使用に関する。本発明は更に、候補剤及び/又は重症の又は持続型の喘息を制御する標的を、同定、使用、及び試験することを目的とする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物製剤での重症の又は持続型の喘息の治療には数多くの課題が存在している。調査のために患者集団を判定し、どの被験者が治療に対して応答し、かつどの被験者が続く治療に対しての応答を失うのかを予測することは、治療及び臨床研究の設計に大きな影響を持つ。バイオマーカーはこれらの疑問に答えるのに有用であり得る。
【0004】
バイオマーカーは、正常な生物学的過程、発病過程、又は治療介入に対する薬理学的な応答性の指標として客観的に測定され評価される特徴として定義される(Biomarkers Working Group,2001,infra)。バイオマーカーの定義は、発現の変化が、疾病若しくは進行のリスク増加に、又は所定の治療に対する疾病の応答性の予測に、関連付けられ得るタンパク質として最近更に定義された。
【0005】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、適応免疫系が活性化される前に、微生物の進入に対して即時的な宿主防御を提供する自然免疫応答において、重要なサイトカインである。TNFαは、タンパク質分解によるプロセシングを経て可溶性トリマーを形成する、膜貫通型前駆体として発現する。膜結合型及び可溶型形態のTNFはどちらも、その受容体であるTNFRSF1A及びTNFRSF1B(それぞれTNFR1及びTNFR2としても既知)へと結合して、いくつかの他の炎症性サイトカイン及び一般的な炎症マーカーの発現を開始する。TNFαは、多くの慢性の、免疫媒介性の炎症性疾患の既知のメディエーターである。
【0006】
3つの生物学的なTNFα拮抗剤である、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))、及びエタネルセプト(Enbrel(登録商標))が、患者のための使用について認可されてきた。第4の生物学的なTNFα拮抗剤(すなわちゴリムマブ)についての規制認可が現在懸案中である。米国特許番号第7,250,165号を参照されたい。これらの剤の主要なメカニズムは、血中のTNF濃度を低下させることにより、患者に全身性の免疫抑制を引き起こすことなく全身性の炎症を軽減し、疾患の臨床的徴候を寛解することである。これらの剤はリウマチ様関節炎(RA)、乾癬性関節炎(PsA)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、及び強直性脊椎炎の治療においては有効であることがこれまで示されてきた。
【0007】
これらの抗TNFα剤のいずれも喘息の治療をするためには認可されていないが、TNFαは喘息における気道病変、特にステロイド抵抗性喘息の数多くの態様に結び付けられる。予備的な抗TNFα治療研究は、中等症〜重症の喘息の患者において、増悪の頻度の低下とともに、肺機能、気道過敏及び喘息患者の生活の質における改善を実証してきた。
【0008】
しかしながら、抗TNF治療に対する応答性には個人差があり、一部の患者では治療効果が得られない。多発性の遺伝子変異が重要な役割を演じ得ると仮説が立てられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、重症の又は持続型の喘息などの免疫媒介性炎症性疾患と、同様に他の疾病及び状態とを、診断及び治療するための方法、並びに患者がどのように治療介入に応答し得るかを予測するための方法、を開発するのに有用な血清若しくは血漿から関連のある、新しい遺伝子マーカーを同定して特徴付ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、重症の又は持続型の喘息及び/又は関連する疾病又は疾患を診断及び/又は治療する方法に関し、並びに治療のための候補剤の適合性を予測する方法に関する。本発明は、治療に対して非応答性の患者又はプラセボ治療を行った患者と比較して、重症の又は持続型の喘息の治療に対して応答性の(重症の又は持続型の喘息の症状の低減において効果的である)患者において発現レベルが修正されている、対象とする特定の遺伝子の発見を含む。修正された発現レベルは、治療に対する患者の応答性を予測するバイオマーカープロファイルとして役立ち、及び/又は好ましい投薬経路を提供することができる、プロファイルを構成する。
【0011】
本発明は、重症、持続型の喘息を備える患者において、抗TNFα剤(例えば、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))及びゴリムマブ)に対して治療的な応答性を備える、TNFα受容体遺伝子多型−1つのTNFRSF1A SNP(rs4149581)及び2つのTNFRSF1B SNP(rs3766730及びrs590977)のうちの少なくとも1つ、例えば、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)の少なくとも1つのSNP−のセットの遺伝的な関連付けを開示する。そこには、2つのTNF受容体遺伝子におけるSNPにおいて共通の遺伝子型(主要対立遺伝子についてのホモ接合体)を有する患者で喘息増悪の低減を示す、薬理遺伝学的な効果についての証拠が存在する。これらのSNPは、一般的にこれらの2つの遺伝子内部で未だ特徴付けられていない他のSNPについて連鎖不平衡(LD)に存在することから、本発明は、被験者のTNF媒介性のに関して治療の適合性を予測する能力を提供し、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のSNPの少なくとも1つは、お互いに又は他のSNPと、連鎖不平衡(LD)の状態で見出される。一実施形態では、配列番号1〜3のSNPは、抗TNF治療に更に応答性の、重症の喘息である被験者の同定においてバイオマーカーとして有用である。好ましい実施形態においては、抗TNF治療は抗TNF抗体である。他の好ましい実施形態においては、抗TNF治療はエタネルセプトなどの抗TNF剤である。他の好ましい実施形態においては、抗TNF抗体はインフリキシマブ又はアダリムマブである。更に好ましい実施形態においては、抗TNF抗体はゴリムマブである。
【0012】
他の実施形態においては、本発明は、重症の若しくは持続型の喘息又は関連する疾患の治療のための候補剤の有効性を評価する方法において、例えば、治療の有効性が症状又は従来の疾病特徴では測定できない場合がある治療の初期の時点で、遺伝子パネルを用いる。
【0013】
提供されるSNP(配列番号1、2及び/又は3)は、被験者におけるTNF媒介性ののための治療の適合性を予測するために、以下の(a)〜(d)で使用することができる。
(a)患者から得られた標本から、核酸試料を調製することと、
(b)試料を、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のうちの少なくとも1つの少なくとも一部を有する核酸断片のパネルと接触させることと、
(c)試料からの核酸が、連鎖不平衡(LD)にある一塩基遺伝子多型(SNP)を示すかどうかを判定することと、
(d)工程(c)においてなされる判定に基づいて、TNF媒介性ののため治療の適合性を予測すること。
【0014】
特定の実施形態においては、本発明は、治療に対する被験者の応答性の指標となる1つ以上の遺伝子の遺伝子発現のパターンに基づいて、重症の又は持続型の喘息のための治療の適合性を、又はかかる遺伝子の特定の対立遺伝子の存在又は不在を予測する方法を含む。これらの遺伝子の1つ以上は、TNFα受容体遺伝子多型−TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)−のセットに関連する、遺伝子の分類に由来する。記載される方法で試験される被験者は、かかる試験を必要としていると考えられる任意の被験者であることができる。好ましい実施形態においては、被験者は、重症の又は持続型の喘息を有する疑いがある患者、及び重症の又は持続型の喘息であると診断されているが治療を受けていない患者からなる群から選択することができる。
【0015】
記載される方法に関しての使用を目的とする試料は、試験される被験者の血液又は組織から得ることができる。例えば、血液標本、又は血清、血漿、ヘマトクリット、白血球、又は血液中に存在している有形成分などの、血液標本又はその構成成分由来であり得る。組織標本はまた、例えば肺生検、気管支生検、口腔粘膜検体及び同様物などの試験試料を得るために使用し得る。パネル又は試験試料をなすポリヌクレオチドなどの遺伝的要素はまた、サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックスの再構築に関与するタンパク質、脈管形成に関連する増殖因子、細胞接着分子、ミエロペルオキシダーゼ、及び同様物などに関する、遺伝子由来であることができる。当業者は、パネル及び試験試料の両方の重要な構成要素として適切な標本を入手し得る数多くの供給源が、ほとんどのあらゆる組織又は体液から得ることができるDNA又はmRNAなどの遺伝物質であることを認識するであろう。
【0016】
加えて本発明は、特定の治療剤による治療の候補である、重症の若しくは持続型の喘息及び/又は関連する疾病若しくは疾患の患者を、パネルの1つ以上のこれらのTNF受容体SNPの発現プロファイルを評価することによって、同定する方法を含む。
【0017】
更なる実施形態においては、重症の又は持続型の喘息関連遺伝子プロファイルは、予後又は診断目的のためのアレイに基づく方法を作成するために使用され、かかる方法は以下の(a)〜(d)を含む。
(a)被験者から得られた標本から、核酸試料を調製することと、
(b)試料を、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のうちの少なくとも1つの少なくとも一部を有する核酸断片のパネルと接触させることと、
(c)試料からの核酸が、連鎖不平衡(LD)にある一塩基遺伝子多型(SNP)を示すかどうかを判定することと、
(d)工程(c)においてなされる判定に基づいて、喘息のための治療の適合性を予測すること。
【0018】
いくつかの実施形態においては、遺伝子プロファイルは、本明細書において提供される方法により得られる結果と、少なくとも1つの参照標準(reference standard)とを比較するのに有用であり得る。かかる比較は、最も効果的であろう治療の種類の判定、疾病の重症度又は疾病の進行度の判定、多様なSNP間の連鎖不平衡の程度の判定、被験者のゲノム中に存在する対象とする遺伝子の対立遺伝子の判定、多様な被験者間のそれぞれのパネルの構成要素についての平均強度値における変化の規模の判定、及び同等のこと、に有用であり得る。参照標準は、被験者からの肺生検、気管支生検、口腔粘膜検体、血清、血漿又は白血球細胞などの他の血液画分などの、任意の供給源由来の遺伝子プロファイルであってよい。参照標準試料を得る被験者は様々であることができ、例えば、疾病の治療を受けていない、中等症の、重症の若しくは持続性の喘息の一人以上の被験者、疾患の治療を受けている、中等症、重症若しくは持続性の喘息の一人以上の被験者、中等症、重症の一人以上の被験者、プラセボで疾患の治療を受けている中等症、重症若しくは持続性喘息の一人以上の被験者、又は疾患の治療を現在受けている持続性喘息の被験者、治療に応答性の被験者若しくは治療に応答性でない被験者、から試料を得ることができる。加えて、参照標準試料は、治療前に若しくは治療の初期の時点で参照標準として試験試料を得た被験者と同一の被験者、又は試験試料を得た異なる治療レジメンを受けている被験者と同一の被験者から得ることができる。参照標準はまたバイオバンク、又はかかる標本を有する若しくは蓄積する類似の団体から得られる標本由来であってもよい。当業者であれば、パネル及び試験試料の両方の重要な供給源として参照標準を調製するための適切な参照標準試料を入手し得る数多くの供給源が存在し、これらがほとんどのあらゆる組織又は体液から得ることができる、DNA又はmRNAなどの遺伝物質であることを認識するであろう。参照標準は異なる時点での同一の患者から得られた標本由来であってもよく、例えば、参照標準は治療の前又は間又は後、あるいは治療の前、間及び後の同一の患者から得た標本由来であり得る。
【0019】
所望により、これらの変化の有意性を評価し、どの構成要素がパネルの有意な構成要素であるのか同定するために、遺伝子SNP対応パネルの構成要素の変化の程度について統計解析が実施される。
【0020】
本明細書に提供される方法により評価されるヌクレオチドが、互いにLDにある、又は配列番号1、2及び/又は3のSNPとLDにある、SNPを有するか否かについての判定は、提供される方法から逸脱することなく、様々であることができる。例えばかかる判定は参照標準との比較を通してなされ得、ここで、試料と参照標準との間の強度読み出し情報における差異はLDの指標となり、試料と参照標準とにおける同一のSNPの存在はSNP間のLDを示すことができる。数多くのソフトウェアプログラム(いくつか例を挙げるならばHaploview、LdCompare、PyPop、及びHelixTree(登録商標))を、LD解析を実行するために利用することができる。
【0021】
記載された方法はまた、測定されるSNPを有するそれぞれのヌクレオチドについて平均強度値を判定するために、使用することもできる。一実施形態では、参照標準に関して観察された平均と等しいか又はそれよりも低い、試験されたSNPの少なくとも1つについての平均強度値は、被験者が治療に対して望ましく応答するであろうことを示し、及び参照標準に関して観察された平均よりも高い、パネルのそれぞれの構成要素についての平均強度値は、被験者が治療に対して不十分に応答するであろうことを示す。あるいは一実施形態では、参照標準に関して観察された平均と等しいか又はそれよりも高い、試験されたSNPの少なくとも1つについての平均強度値は、被験者が治療に対して望ましく応答するであろうことを示し、及び参照標準に関して観察された平均よりも低い、パネルのそれぞれの構成要素についての平均強度値は、被験者が治療に対して不十分に応答するであろうことを示す。いくつかの実施形態においては、試験される1つ以上のヌクレオチド配列は、更なる詳細を得るために、あるいはヌクレオチド配列の評価のために、配列解析で解析され得る。他の実施形態においては、試験される1つ以上のヌクレオチド配列を質量分析法により分析することができ、これは配列組成、メチル化状態、及び同等の状態のような状況を判定するのに役立ち得る。
【0022】
代替的な実施形態においては、本発明は、重症の若しくは持続型の喘息及び/あるいは遺伝子発現のパターンに基づく関連する疾病又は疾患を治療するための、候補剤の適合性を予測するためのキットを含む。いくつかの実施形態においては、このキットは以下の物を任意で、又は全て含むことができる。マーカー遺伝子のヌクレオチド配列又はその相補鎖と同一の又は相補的なオリゴヌクレオチド、マーカー遺伝子を発現している細胞(マーカー遺伝子は、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のSNPの少なくとも1つのヌクレオチド配列、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)の1つ以上を備える、LDにある既知のSNP、及びTNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)の少なくとも1つを有するヌクレオチドアレイパネル、からなる群から選択される)。
【0023】
本発明は、本明細書に記載する任意の発明を更に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
以下の定義は、本明細書で発明を記載するために用いる種々の用語の意味及び範囲を説明及び定義するために記載される。
【0025】
ポリペプチドの「活性」、生物活性及び機能活性は、標準的な技術により、生体内(in vivo)、原位置(in situ)又は体外(in vitro)で決定するとき、別のタンパク質又は分子との特異的相互作用に応答して重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子パネルの遺伝子により発揮される活性を指す。このような活性は、第2のタンパク質に関連する若しくはそれに対する酵素活性のような直接的活性、又はタンパク質と第2のタンパク質との相互作用により媒介される細胞プロセス、若しくは細胞内シグナル伝達若しくは凝固カスケードに見られるような一連の相互作用のような間接的活性であることができる。
【0026】
「抗体」には、H鎖若しくはL鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部、H鎖若しくはL鎖の可変領域、H鎖若しくはL鎖の定常領域、フレームワーク領域、又はその任意の部分、断片又は変異体の少なくとも1つなどであるが、これらに限定されない、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のポリペプチド又はペプチド含有分子が挙げられる。用語「抗体」は、更に、抗体、その消化断片、特定部分及び変異体を包含することを意図し、これには抗体模倣薬が挙げられ、あるいは抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体及びその断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片、及び単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL)が挙げられるが、これらに限定されない抗体断片が、本発明に包含される(例えば、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994〜2001年)、Colligan et al.,Current Protocols in Polypeptide Science,John Wiley & Sons,NY(1997〜2007年)を参照のこと)。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「アレイ」若しくは「マイクロアレイ」、又は「バイオチップ」若しくは「チップ」は、複数の不動化した標的要素(それぞれの標的要素は「クローン」、「フィーチャー」、「スポット」を含む)、あるいは複数の組成物(例えば以下に更に詳細に議論されるような、固体表面に不動化された核酸分子又はポリペプチドのような生体分子など)を含む画定された領域を含む、製品又はデバイス物品を指す。
【0028】
本発明の核酸配列の「相補体」又は本発明の核酸配列と「〜と相補的なもの」は、第1のポリヌクレオチドと比較したときに、相補的な塩基配列及び逆向きの配向を有するポリヌクレオチド分子を指す。
【0029】
当該技術分野において既知のように「同一性」は、配列を比較することにより判定される、2つ以上のポリペプチド配列間又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」はまた、かかる配列の文字列間の適合によって判定されるような、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列的な関連性の度合いを意味する。「同一性」及び「類似性」は、限定するものではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、及びCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されるものが挙げられる、既知の方法によって容易に算出することができる。加えて、同一性の割合に関する値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax,Frederick,MD)の構成要素であるAlignXのセッティングのデフォルトを用いて作成される、アミノ酸及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「〜に特異的なハイブリダイズ」、「〜に特異的にハイブリダイズする」、「特異的なハイブリダイゼーション」及び「〜に選択的にハイブリダイズする」は、核酸分子が、厳しい条件下で優先的に特定のヌクレオチド配列に結合すること、二本鎖形成すること、又はハイブリダイズすることを指す。用語「厳しい条件」は、プローブが優先的にその標的配列にハイブリダイズし、他の配列にはより低い程度でハイブリダイズするか又は全くハイブリダイズしない条件を指す。核酸ハイブリダイゼーション(例えばアレイ、サザン又はノーザンハイブリダイゼーションなど)の文脈における、「厳しいハイブリダイゼーション」及び「厳しいハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存性であり、異なる環境パラメータ下においては異なる。本発明を実行するために使用することができる代替的ハイブリダイゼーション(Alternative hybridization)の条件は、以下に詳細に記載する。選択的な態様においては、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄の条件は、以下に詳細に記載する中程度の条件(moderate conditions)、厳しい条件及び非常に厳しい条件下で実行される。代替的な洗浄条件(alternative wash condition)はまた、本明細書において更に詳細に記載されるように、異なる態様においても使用される。
【0031】
本明細書で使用するとき、語句「標識された生体分子」又は「検出可能な組成物で標識された」又は「検出可能な部分で標識された」は、以下で詳細に記載するように、検出可能な組成物、すなわち標識を含む、例えば核酸などの生体分子を指す。標識はまた、以下に記載するように、例えば「分子指標」のようなステムループ構造の形態の核酸などの核酸のような、別の生体分子であることもできる。これは、例えばニックトランスレーション、ランダムプライマー伸長法、変性したプライマーによる増幅などにより、標識された塩基(又は検出可能な標識に結合できる塩基)を核酸に組み込むことを含む。例えば、化学発光標識、放射標識、酵素標識などの任意の標識を用いることができる。標識は、例えば、視覚的、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、物理的、化学的及び/又は化学発光的検出などの任意の手段により検出可能である。本発明は、検出可能な標識を含む固定化核酸を含むアレイを用いることができる。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「核酸」は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかであるデオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)を指す。かかる用語は、天然のヌクレオチドの既知のアナログを含有している核酸を包含する。用語「核酸」は遺伝子、DNA、RNA、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドプライマー、プローブ及び増幅産物と互換的に使用される。かかる用語はまた、例えばリン酸ジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオレート、メチルホスホン酸、ホスホロアミド酸、アルキルホスホトリエステル(alkyl phosphotriester)、スルファミン酸、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、及びペプチド核酸(PNAs)などの、DNA骨格のアナログを包含する。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「試料」又は「核酸試料」は、DNA又はRNA、あるいは天然の供給源から単離されたDNA又はRNAの代表的な核酸、を含む試料を指す。「核酸試料」は、他の核酸(例えば、不動化されたプローブ)とのハイブリダイゼーションに適合する形態(例えば可溶な水溶液として)である。試料核酸は特定の細胞又は組織から単離、クローニング又は抽出することができる。核酸試料が調製される細胞又は組織試料は、典型的にはUC又は関連する疾病若しくは状態を有しているか又は有していると疑われる患者から採られる。細胞及び組織試料を単離する方法は当業者に周知であり、限定するものではないが、吸引法、組織切片法、針生検法、及び同様の方法などが挙げられる。しばしば試料は「臨床試料」であり得、凍結切片又はパラフィン切片などの、組織学的な目的のために採られた組織切片を含む、患者由来の試料である。試料はまた、(細胞の)上清又は患者若しくは細胞培養物から採られた細胞そのもの、又は組織培養からの細胞、又は候補剤に対する応答を検出するのに望ましいものであり得る他の培養液からの細胞由来であってもよい。場合によっては、核酸はハイブリダイゼーションに先立ちPCRなどの標準的な技術を用いて増幅してもよい。プローブは1つ以上の特定の(予選択された)部位からの核酸供給源(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物の収集物、実質的に染色体全体又は染色体断片、あるいは例えば、BACs、PACs、YACs、及び同様物(以下を参照のこと)などのクローンの収集物としての、実質的にゲノム全体)から調製することができ、総じてプローブはかかる核酸供給源の代表的な核酸であり得る。
【0034】
「核酸」はヌクレオチドのポリマーであり、ヌクレオチドは糖と結合している塩基を含む(糖は順にリン酸などの少なくとも2価の分子をとりなすことで互いに結合されている)。天然に生じる核酸では、糖は2’−デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)のいずれかである。非天然ポリ又はオリゴヌクレオチドは、修飾された塩基、糖、又は結合分子を含有するが、概して、かかるヌクレオチドは設計された後に、天然に生じる核酸の相補的な性質を模倣することが理解される。非天然のオリゴヌクレオチドの例は、ホスホロチオエート(phosphorothiorate)骨格鎖を有するアンチセンス分子組成物である。「オリゴヌクレオチド」は一般的に、30個未満のヌクレオチドを有する核酸分子を指す。
【0035】
用語「プロファイル」は、パターンを意味し、多数の特性の変化の規模及び方向に関する。プロファイルは、厳密に解釈してもよく、すなわち、特徴を示すプロファイル内のフィーチャーの規模及び/若しくは数の変化が実質的に参照プロファイルに類似し、あるいはフィーチャーの全て若しくは部分集合の絶対的な一致ではなく傾向を必要とすることにより、それ程厳密に解釈しなくてもよい。
【0036】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、上記で詳細に論じたように、変異体の由来するポリペプチドに実質的に一致する構造及び活性を有する「類似体」又は「保存された変異体」及び「模倣物質」若しくは「ペプチド模倣物質」を含む。
【0037】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合したアミノ酸残基のポリマーであり、ペプチドは一般に12個以下の残基のアミノ酸ポリマーを指す。ペプチド結合は、核酸テンプレートにより導かれるように天然に、又は当該技術分野で周知である方法により合成的に生成することができる。
【0038】
「タンパク質」は、1つ又はそれ以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパク質は更に、ペプチド結合の形成に関与しないアミノ酸の側基に結合した置換基を含んでもよい。典型的には、真核細胞の発現により形成されるタンパク質はまた、炭水化物を含有する。タンパク質は、本明細書では、既知であろうとなかろうと、そのアミノ酸配列又は骨格鎖及び置換基の観点で定義される。
【0039】
用語「受容体」は、特異的リガンド又は結合パートナーとの相互作用の結果として、例えば細胞内で、生物活性に影響を及ぼす能力を有する分子を指す。細胞膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、1つ又はそれ以上の膜貫通又はトランスメンブレンドメイン、及び典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを特徴とする。細胞膜受容体にリガンドが結合することにより、細胞膜を超えて連絡している細胞外ドメインに変化が生じ、1つ又はそれ以上の細胞内タンパク質と直接的に又は間接的に相互作用し、酵素活性、細胞形状又は遺伝子発現プロファイルのような細胞特性を変化させる。受容体はまた、細胞表面に係留されていなくてもよく、細胞質性、核性であってよく、又は一緒に細胞から放出されてもよい。非細胞関連受容体は、可溶性受容体又はリガンドと呼ばれる。
【0040】
用語「TNF媒介性」は広範に使用され、TNFに関連する(related)及びTNFに関連する(associated)などの代替的な程度の関連性を含み、またTNFによって直接的に又は間接的に媒介されるプロセスを包含する。
【0041】
【表1】

【0042】
本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、適宜明示されているかどうかによらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での当該技術分野の状態を示し、並びに/又は、本発明の説明及び使用可能性を提供する。発行物とは、任意の科学的又は特許公開、又は全ての記録、電子、又は印刷形式を含む任意のメディア形式で入手可能な任意の他の情報を意味する。以下の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1987〜2008年)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989年)、arlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989年)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994〜2007年)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY(1997〜2007年)。
【0043】
遺伝子パネルの同定及び検証
本発明は、重症の又は持続型の喘息の症状を制御する組成物のスクリーニングを行うための、新規の方法を提供する。本発明は、TNFα受容体遺伝子多型−1つのTNFRSF1A SNP(rs4149581(配列番号1))及び2つのTNFRSF1B SNP(rs3766730(配列番号2)及びrs590977(配列番号3))の少なくとも1つと、重症の、持続性の喘息を罹患している被験者における抗TNFα剤(例えばゴリムマブ)に対する治療応答性とのセットの、遺伝的な関連付けを開示する。2つのTNF受容体遺伝子のSNPに共通の遺伝子型(主要対立遺伝子についてのホモ接合体)を有する被験者で喘息増悪の低減を示す、薬理遺伝学的な効果についての証拠が存在する。これらのSNPは一般的に、これら2つの遺伝子内部の、他の特徴付けられていないSNPと連鎖不平衡(LD)にあることから、本発明は、より抗TNF治療に応答性の重症の喘息患者を同定するのにあたってバイオマーカーとして有用である、連鎖不平衡(LD)にあるTNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のSNPの1つ以上の、すなわちかかるSNPの少なくとも1つの存在を提供する。
【0044】
病変組織で異なる発現をするこれらのTNFR SNP配列(遺伝子、すなわち以降「重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子配列」)を同定することで、数多くの方法におけるこの発現情報の使用が可能になる。例えば、特定の治療レジメンについての評価を評価することができる。評価は、これらのTNFR SNP配列と相補的な配列のセットを含むバイオチップを製造することによりなすことができ、バイオチップは次いで生物学的な試料(例えば患者からの試料など)中のこれらの配列を同定するために使用できる。これらの方法はまた、タンパク質レベルで実施されてもよく、つまり重症の又は持続型の喘息に関連するTNFR SNP産物のタンパク質発現レベルを診断目的で評価することができ、すなわち抗TNF治療を選択するために、又は追加の治療上の候補を選別するために、発現レベルを評価することができる。加えて、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子プロファイルを含む核酸配列は、治療に先立ち、患者が治療に対して応答しやすいかどうかを測定するために使用できる。
【0045】
重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子配列には、核酸配列及びアミノ酸配列のいずれをも含むことができる。好ましい実施形態においては、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子配列は組み換え核酸である。本明細書において、用語「組み換え核酸」は、概してポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって、通常は天然には見出されない形態で、元来体外で形成される核酸を意味する。したがって、線状形態である単離された核酸、又は通常は繋がれていないDNA分子を連結することによって体外で形成された発現ベクターは、どちらも本発明の目的のための組み換え体として考慮される。一度組み換え核酸が作成され、宿主細胞又は微生物中に再導入されると、かかる核酸は組み換えられることなく(すなわち、体外操作によるよりも宿主細胞の生体内の細胞機構を用いて)複製されるであろうことが理解されるが、このような核酸は一度組み換え体として産生されると(続く複製は非組み換え的に行われるが)、引き続き本発明の目的のための組み換え体であるとみなす。
【0046】
本発明を実施する方法
本発明は、体外、原位置又はシリコン内(insilico)での、2つ以上の試料における結合分子(例えば核酸配列)の相対的な量に依る、核酸、タンパク質及び/又はアレイに基づく方法を提供する。同様に、2つ以上の試料において結合分子(例えば核酸配列)の相対的な量を判定し、判定された相対的な結合量を用いて、特定の治療に対する応答性を予測する、コンピューターにより実行される方法が提供され、提供される方法は治療を監視し効果を高める。
【0047】
本発明で実施される方法では、標識された生体分子(例えば核酸)の1つ以上の試料は、2つ以上のアッセイ又はアレイに適用され、アッセイ又はアレイは、不動化された結合分子(例えば標識された試料核酸にハイブリダイズする能力を有する、不動化された核酸)と実質的に同一である相補体を有する。典型的には2つ以上のアレイが、同一のアレイの複数のコピーである。しかしながら、核酸及び他のもののアレイに典型的である、アレイ上の各「スポット」、「クローン」又は「フィーチャー」は、類似の生体分子(例えば同じ配列の核酸)を有し、各スポット中の生体分子(例えば核酸)は既知であることから、本発明に用いられる複数のアレイでは配置が同じである必要はなく、基板上の各フィーチャーの位置のみが必要であることは既知であり、すなわちアレイはアドレスを有する。したがって、一態様では、試料中の複数の生体分子(例えば核酸)は競合的にアレイに結合し(例えば同時にハイブリダイズして)、集められた情報はコード化されるので、結果はフィーチャー(例えば核酸配列)の固有の特徴に基づき、その基板上の位置に基づくものではない。
【0048】
核酸の増幅
オリゴヌクレオチドプライマーを用いる周知の核酸増幅法を、本発明の組成物及び方法に使用される核酸を生成するために、アレイにハイブリダイズする試験又は対照試料のレベルを検出又は測定するために、及び例えば本発明のTNFR SNPの存在を検出するなどのために、使用することができる。当事者は、適切なオリゴヌクレオチド増幅プライマーを選択及び設計することができる。増幅方法はまた当該技術分野で周知であり、例えば以下のものが挙げられる;ポリメラーゼ連鎖反応、PCR(PCR PROTOCOLS,A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS,ed.Innis,Academic Press,N.Y.(1990)及びPCR STRATEGIES(1995),ed.Innis,Academic Press,Inc.,N.Y.)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えばWu(1989)Genomics 4:560;Landegren(1988)Science 241:1077、Barringer(1990)Gene 89:117を参照されたい)、転写増幅(例えば、Kwoh(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173を参照されたい)、並びに自家持続配列複製(self-sustainedsequencereplication)(例えば、Guatelli(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874を参照されたい)、Qβレプリカーゼによる増幅(例えば、Smith(1997)J.Clin.Microbiol.35:1477〜1491を参照されたい)、Qβレプリカーゼによる自動化された増幅アッセイ(例えば、Burg(1996)Mol.Cell.Probes 10:257〜271を参照されたい)及び他のRNAポリメラーゼ媒介性の技術(例えば、NASBA,Cangene,Mississauga,Ontario)、また、Berger(1987)Methods Enzymol.152:307〜316;Sambrook、Ausubel、米国特許番号第4,683,195号及び同第4,683,202号、Sooknanan(1995)Biotechnology 13:563〜564を参照されたい。
【0049】
核酸ハイブリダイズ
本発明の方法を実施するにあたり、核酸の試験及び対照試料を、不動化された核酸プローブ(例えばアレイ上の)とハイブリダイズさせる。代替的な態様においては、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件は、中程度の条件下で、厳しい条件下で、及び非常に厳しい条件下で実行される。核酸のハイブリダイゼーションのための広範な手引は、例えばSambrook Ausubel,Tijssenに見出される。一般的に、極めて厳しいハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、定義されたイオン強度及びpH下で、特異的な配列用に熱融解温度(Tm)よりも約5℃低く選択される。Tmは、(定義されたイオン強度及びpH下で)完全に適合するプローブに、標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。非常に厳しい条件が選択されると、特定のプローブについてのTmと等しいものになる。相補的な核酸(サザン又はノーザンブロットにおけるアレイ又はフィルタ上で100個以上の相補的な残基を有する)のハイブリダイゼーションのための、厳しいハイブリダイゼーション条件は、標準的なハイブリダイゼーション溶液を用いて42℃であり(例えばSambrookを参照されたい)、ハイブリダイゼーションは一晩実行される。極めて厳しい洗浄条件の例は、0.15MのNaClで、72℃下で約15分間にわたる。厳しい洗浄条件の例は、0.2×SSC洗浄液で、65℃下で15分間にわたる(例えば、Sambrookを参照されたい)。多くの場合、極めて厳しい洗浄は、バックグラウンドのプローブシグナルを除去するために溶媒すなわち厳しさの低い洗浄に先行する。二本鎖(例えば100ヌクレオチド以上)についての中程度に厳しい洗浄の例は、1×SSCで、45℃下で15分間にわたる。二本鎖(例えば100ヌクレオチド以上)についての厳しさの低い洗浄の例は、4〜6×SSCで、40℃下で15分間にわたる。
【0050】
本発明の組成物及び方法の代替的な態様(例えば、アレイを備える比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)などの、比較核酸ハイブリダイゼーションの実施における)では、蛍光色素Cy3(登録商標)及びCy5(登録商標)が、2つの試料からの異なる標識核酸断片(例えば、アレイ不動化核酸対試料核酸、又は対照から生成される核酸対試験細胞若しくは試験組織から生成される核酸)のために使用される。多くの市販の装置が、これらの2つの色素の検出を収容するよう設計されている。蛍光色素であるCy5(登録商標)、又は他の酸化感受性化合物の安定性を上昇させるために、抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーをハイブリダイゼーション混合液(ハイブリダイゼーション溶液及び/又は洗浄溶液)中に使用することができる。したがって、Cy5(登録商標)シグナルは劇的に上昇し、より長いハイブリダイゼーション時間が可能になる。国際公開第0194630 A2号及び米国特許第20020006622号を参照されたい。
【0051】
ハイブリダイゼーション感度の更なる上昇のために、ハイブリダイゼーションは制御された、湿度が不飽和な環境で実行することができ、したがってハイブリダイゼーション効率は、湿度が飽和でない場合に有意に改善される。国際公開第0194630 A2号及び米国特許第20020006622号を参照されたい。ハイブリダイゼーション効率は、湿度が動的に制御される場合に、すなわちハイブリダイゼーションの間に湿度が変化する場合に改善され得る。質量移動(Mass transfer)は動的に平衡化された湿度環境において促進されるであろう。ハイブリダイゼーション環境における湿度は、段階的に又は連続的に調節することができる。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄及び/又は検出段階の間に、操作者に湿度の制御を可能にさせるハウジング及びコントロールを含むアレイデバイスを使用することができる。デバイスは、湿度及び温度制御(それらは一定及び正確であるか又は変動する)、並びに全体の手順サイクル(プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄及び検出工程が含まれる)中の他のパラメータを予めプログラミングすることを可能にするために、検出、制御、及びメモリ要素を有することができる。国際公開第0194630 A2号及び米国特許第20020006622号を参照されたい。
【0052】
本発明の方法は、浸透圧の変動を含むハイブリダイゼーション条件を含むことができる。ハイブリダイゼーション効率(すなわち平衡までの時間)はまた、高/低浸透圧性(例えば溶質勾配)の変化を含む、ハイブリダイゼーション環境によって高めることもできる。溶質勾配はデバイス中に作り出す。例えば、低塩濃度ハイブリダイゼーション溶液をアレイハイブリダイゼーションチャンバの片面上に配置し、高塩濃度のバッファを他方の面上に配置することで、チャンバに溶液勾配を生成する。国際公開第0194630 A2号及び米国特許第20020006622号を参照されたい。
【0053】
反復性核酸配列のハイブリッド形成する能力のブロッキング
本発明の方法は、不動化された核酸断片において、反復性核酸配列のハイブリッド形成する能力をブロッキングする(すなわち「ハイブリッド形成能」をブロッキングする)工程を含むことができる。試料核酸配列中の反復性核酸配列のハイブリッド形成能は、試料核酸配列と、非標識の又は代替的に標識された(alternatively labeled)反復性核酸配列とを混合することによってブロックすることができる。試料核酸配列は、アレイの不動化核酸断片と接触させる工程の前に反復性核酸配列と混合することができる。ブロッキング配列は、例えばCot−1 DNA、鮭精子DNA、又は特異的な反復性ゲノム配列である。反復性核酸配列は非標識であってもよい。反復配列のハイブリッド形成能を除去及び/又は不能にする(例えばCot−1を用いて)、数多くの方法が既知である、例えば、Craig(1997)Hum.Genet.100:472〜476、国際公開第93/18186号を参照されたい。反復性DNA配列は、ライブラリプローブから磁気精製及び親和性PCR(affinity PCR)の手法で除去することができる(例えばRauch(2000)J.Biochem.Biophys.Methods 44:59〜72を参照されたい)。
【0054】
アレイは一般的に、「スポット」若しくは「クラスタ」、又は「フィーチャー」として定義される、プレートの表面上に不動化された複数の標的要素であり、各標的要素は、試料中の分子に特異的に結合(例えばハイブリッド形成)するために、固体表面に対して不動化させた1つ以上の生体分子(例えば核酸又はポリペプチド)を含んでいる。不動化させた核酸は、具体的なメッセージ(例えば、cDNAライブラリなど)又はヒトゲノムを含む遺伝子(例えば、ゲノムライブラリ)からの配列を含有することができる。他の標的要素には、参照配列及び同等のものを含有することができる。アレイの生体分子は異なる大きさ及び異なる密度で固体表面上に配列してよい。アレイ上の、クラスタにおける生体分子の密度及びクラスタの数は、例えば標識の性質、固体支持体、基板表面の疎水性の程度、及び同等のものなどの、因子の数によって決められるだろう。各フィーチャーは、実質的に同一の生体分子(例えば核酸)、又は生体分子の混合物(例えば異なる長さ及び/又は配列の核酸)を含むことができる。したがって、例えば、フィーチャーはDNAの複製小片のコピーを1つ以上含有してもよく、各コピーは異なる長さの断片に切断することができる。
【0055】
生体分子(例えば核酸)が不動化されたアレイ基板表面には、ニトロセルロース、ガラス、石英、石英ガラス、プラスチック及び同様のものが挙げられ、以下に更に詳細に議論される。本発明の組成物及び方法は以下に記載されるもののような、アレイの全体又は一部の設計、並びに関連する構成要素及び方法を組み込むことができる、例えば米国特許番号第6,344,316号、同第6,197,503号、同第6,174,684号、同第6,159,685号、同第6,156,501号、同第6,093,370号、同第6,087,112号、同第6,087,103号、同第6,087,102号、同第6,083,697号、同第6,080,585号、同第6,054,270号、同第6,048,695号、同第6,045,996号、同第6,022,963号、同第6,013,440号、同第5,959,098号、同第5,856,174号、同第5,843,655号、同第5,837,832号、同第5,770,456号、同第5,723,320号、同第5,700,637号、同第5,695,940号、同第5,556,752号、同第5,143,854号、同様に例えば国際公開第99/51773号、同第99/09217号、同第97/46313号、同第96/17958号、同第89/10977号を参照されたい、同様に例えばJohnston(1998)Curr.Biol.8:R171〜174、Schummer(1997)Biotechniques 23:1087〜1092;Kern(1997)Biotechniques 23:120〜124、Solinas−Toldo(1997)Genes,Chromosomes & Cancer 20:399〜407、Bowtell(1999)Nature Genetics Supp.21:25〜32、Epstein(2000)Current Opinion in Biotech.11:36〜41、Mendoza(1999)Biotechniques 27:778〜788、Lueking(1999)Anal.Biochem.270:103〜111、Davies(1999)Biotechniques 27:1258〜1261を参照されたい。
【0056】
基板表面
本発明の組成物及び方法において使用できる基板表面には、例えばガラス(例えば米国特許番号第5,843,767号を参照されたい)、セラミックス、及び石英が挙げられる。アレイは、剛性の、半剛性の又は可撓性材料の基板表面を有することができる。基板表面は平らすなわち平面であってよく、あるいはウェル、隆起領域、エッチングした溝、孔、ビーズ、フィラメント、又は同様のものなどの形状であってもよい。基板表面はまた、例えばニトロセルロース、紙、結晶質基材(例えばガリウムヒ素)、金属、半金属、ポリアクリロイルモルホリド(polacryloylmorpholide)、様々なプラスチック及びプラスチックコポリマー、ナイロン(登録商標)、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ラテックス、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレン)、並びに酢酸セルロースなどの様々な材料を含むことができる。基板はコーティングすることができ、基板及びコーティングは官能化することができる(例えばアミンに対して共役可能であるように)。
【0057】
較正配列を含んでいるアレイ
本発明は、アレイに基づくハイブリダイゼーション反応の結果を標準化するために、不動化した較正配列を含んでいるアレイ、及び例えば較正配列のコピー数対「標準」すなわち「較正」比プロファイルを判定するために、これらの較正配列を用いるための方法、の使用を想到する。較正配列は、アレイ上の不動化された核酸配列中のユニークな配列として、実質的に同一のものであることができる。例えば、アレイ上の各「スポット」又は「生物部位(biosite)」からの「マーカー」配列(スポット上にのみ存在し、そのスポットについての「マーカー」にする配列)は、1つ以上の「対照」又は「較正」スポット上の対応する配列で表現される。
【0058】
「対照スポット」すなわち「較正スポット」は「標準化」のために用いられ、信頼性と再現性についての情報を提供する対照スポットはアレイに対してハイブリダイズした標識試料とは無関係に、一貫性のある結果を提供することができる(又は試料からの標識した結合分子)。対照スポットは「標準化」すなわち「較正」曲線を生成して、シリコン内での本発明のアレイに基づく方法において使用される、2つ(以上の)のアレイ間に生じ得る強度誤差をオフセットするために使用することができる。
【0059】
アレイ上の対照を生成する方法の1つが、アレイ上にスポットされた全ての生体分子(例えば核酸配列)の等モル混合物に使用され、単一のスポットを生成する。この単一のスポットは、アレイ上の全ての他のスポットと等量の生体分子(例えば核酸配列)を有し得る。複数の対照スポットは、等モル混合物の濃度を変化させることにより生成することができる。
【0060】
試料及び標本
特定の細胞、組織又は他の標本から、試料核酸を単離し、クローン化し、又は抽出することができる。核酸試料が調製される細胞又は組織試料は、典型的には重症の若しくは持続型の関連する状態を有している、又は有していると疑われる患者から採られる。細胞及び組織試料を単離する方法は当業者に周知であり、限定するものではないが、吸引法、組織切片法、針生検法、及び同様の方法などが挙げられる。しばしば試料は「臨床試料」であり得、全血、血清、血漿、又は例えば組織学的な目的のために採られた凍結切片若しくはパラフィン切片などの組織切片を含む、患者由来の試料である。試料はまた、(細胞の)上清又は患者若しくは細胞培養物から採られた細胞そのもの、又は組織培養からの細胞、又は候補剤に対する応答を検出するのに望ましいものであり得る他の培養液からの細胞由来であってもよい。場合によっては、核酸はハイブリダイゼーションに先立ちPCRなどの標準的な技術を用いて増幅してもよい。
【0061】
一実施形態では、本発明は疾病の退行又は回復を予測する、治療前の方法(pretreatment method)である。かかる方法は、(1)重症の若しくは持続型の喘息又は関連する疾病若しくは疾患であると診断された個人から、適切な組織生検又は他の標本を採ることと、(2)パネルのプロファイル遺伝子の発現レベルを測定することと、(3)治療応答者(treatment responders)から、遺伝子の治療前発現レベルと、治療前参照プロファイルとを比較することと、(4)遺伝子パネルの発現レベルを監視することによって治療応答性を予測することと、を含む。
【0062】
バイオマーカーの有用性を評価する方法
疾病の治療又は予後に対しての患者の応答性を評価することに関する、本発明のバイオマーカー遺伝子パネルの予後診断的な有用性は、患者の病状を評価するための他の手段を用いることによって確認することができる。例えば、限定するものではないが、写真、放射測定、又は磁気共鳴技術による、イメージングなどのいくつかイメージング法によって、肉眼での疾病の測定を評価しかつ記録することができる。健康又は疾病の一般的な指標には、更に血清又は血液組成物(タンパク質、肝臓酵素、pH、電解質、赤血球容積、ヘマトクリット、ヘモグロビン、又は特定のタンパク質)が挙げられる。しかしながら、一部の疾病では病因に対しての理解は未だに乏しい。重症の又は持続型の喘息はそのような疾病の1つの例である。
【0063】
患者の評価及び監視
治療過程にわたる遺伝子の発現パターンは、重症の又は持続型の喘息の治療においてはこれまで研究されてこず、かかる発現パターンを的中率を有するものとして同定した者はいない。本明細書で開示される遺伝子発現バイオマーカーのパネルは、迅速で信頼性のある予測のための方法、重症の又は持続型の喘息の治験の臨床的な結果を予測する診断ツール、又は重症の又は持続型の喘息治療の有効性を追跡するための予後診断ツールの作製を可能にする。これらの遺伝子を検出することに基づく予後診断法が提供される。例えばこれらの方法は、免疫媒介性炎症疾患、特にTNFと関連する領域の診断、予防及び治療と結びつけて使用することができる。
【0064】
治療薬
本明細書で使用するとき、用語「拮抗薬」は、重症の又は持続型の喘息に関する本発明の遺伝子パネルの遺伝子産物の生物活性を阻害又は中和する物質を指す。このような拮抗薬は、種々の方法でこの効果を実現する。ある部類の拮抗薬は、十分な親和性で遺伝子産物のタンパク質に結合し、タンパク質の生物学的効果を特異的に中和する。この部類の分子に含まれるのは、抗体及び抗体断片(例えば、F(ab)又はF(ab’)2分子など)である。別の部類の拮抗薬は、同種の結合パートナー又は遺伝子産物のリガンドに結合し、それにより遺伝子産物とその同種のリガンド又は受容体との特異的相互作用の生物活性を阻害する、遺伝子産物タンパク質、突然変異タンパク質、又は小有機分子、すなわちペプチド模倣薬の断片を含む。重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子拮抗薬は、遺伝子産物の少なくとも1つの生物活性を阻害する物質である限り、これらの部類のいずれであってもよい。
【0065】
拮抗薬には、遺伝子産物タンパク質又はその断片の1つ又はそれ以上の領域に対する抗体、同種のリガンド又は受容体に対する抗体、及び遺伝子産物の少なくとも1つの生物活性を阻害する遺伝子産物又はその同種のリガンドの部分ペプチドが挙げられる。当該技術分野で既知であるような遺伝子配列を標的とするsiRNA、shRNA、アンチセンス分子及びDNAザイムを含む別の部類の拮抗薬が、本明細書に開示されている。
【0066】
適切な抗体には、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物を結合するのにあたり、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の活性をブロックするか又は喘息に関連する遺伝子産物がその同族のリガンドに結合するのを阻むような、あるいは重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物シグナル伝達を阻むようなモノクローナル抗体と競合する抗体が含まれる。
【0067】
重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の誘発因子を治療のための標的にすることは、成功の可能性をより高くし得る。遺伝子発現は、siRNA、shRNA、アンチセンス分子及びDNAザイムの使用が挙げられる、いくつかの異なる方法で調節することができる。合成siRNAs、shRNAs、及びDNAザイムは1つ以上の標的遺伝子に特異的に設計することができ、体外でも体内でも、これらは容易に細胞に送達することができる。
【0068】
本発明はアンチセンス核酸分子、すなわち重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチド(例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖の相補体又はmRNA配列の相補体)をコードしている、センス鎖の核酸に相補的な分子を包含する。したがって、アンチセンス核酸はセンス鎖の核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は、コード鎖全体又はそのほんの一部、例えば、タンパク質コード領域(すなわち翻訳領域)の全て又は一部に相補的であり得る。アンチセンス核酸分子は、重症の又は持続型の喘息関連遺伝子産物ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の、非コード領域の全体又は一部に対してアンチセンスであってよい。非コード領域(「5’及び3’非翻訳領域」)は、コード領域に隣接する5’及び3’配列であり、アミノ酸に翻訳されない。
【0069】
本発明はまた、キメラタンパク質又は融合タンパク質を提供する。本明細書で使用するとき、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、同じUC関連遺伝子産物ポリペプチド以外のポリペプチド)に操作可能に結合する重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの全て又は一部(好ましくは生物学的に活性である)を含む。融合タンパク質内では、用語「操作可能に結合」は、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチド及び異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合することを示すことを意図する。異種ポリペプチドは、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に融合することができる。別の実施形態では、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチド又はそのドメイン若しくは活性断片は、異種タンパク質配列又はその断片に融合してキメラタンパク質を形成することができ、そこではポリペプチド、ドメイン又は断片が端と端とで融合しないが、異種タンパク質のフレームワーク内に介入する。
【0070】
更に別の実施形態では、融合タンパク質は、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの全て又は一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバー由来の配列に融合している、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、薬剤組成物に組み込むことができ、また被験者に投与してリガンド(可溶性又は膜結合)と細胞の表面上のタンパク質(受容体)との間の相互作用を阻害して、それにより体内でのシグナル伝達を抑制することができる。免疫グロブリン融合タンパク質は、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの同族リガンドの、バイオアベイラビリティに影響を与えるために使用することができる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、増殖性及び分化性疾患の治療並びに細胞生存の調節(例えば、促進又は阻害)の両方に対して、治療的に有用であり得る。更に、本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、免疫原として使用することで、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドに対する抗体を産生して、被験者においてはリガンドを精製することができ、スクリーニングアッセイにおいてはリガンドと受容体との相互作用を阻害する分子を同定することができる。
【0071】
組成物及びその使用
本発明に従う、本明細書に記載されるようなモノクローナル抗体などの、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の拮抗薬の中和を、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の活性を阻害するために使用することができる。更に、かかる拮抗薬を、このような治療を受け入れられる、重症の又は持続性の喘息の、及びリウマチ性疾患が挙げられるがこれに限定されない関連する炎症性疾患の、病原性を阻害するために使用することができる。治療されるべき個体は任意の哺乳類であってよく、好ましくは霊長類、哺乳類であるコンパニオンアニマルであり、最も好ましくはヒトの患者である。投与される拮抗薬の量は、使用の目的及び投与方法によって変動する。
【0072】
重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物拮抗薬は、病理活性を阻むこと又は停止することが所望される組織に効能をもたらす、任意の数の方法により投与することができる。更に、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の活性に基づいて効能を付与するためには、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物に対する拮抗薬を局所的に存在させる必要はなく、したがってそれらは、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物を含有している体の区画又は体液のどこであろうと、アクセスできるように投与することができる。炎症を起こした、悪性の又は別の方法で易感染性である組織の場合、これらの方法には、拮抗薬を含有する製剤を直接適用することを挙げてもよい。このような方法には、液体組成物の静脈投与、液体若しくは固体製剤の経皮投与、経口、局所性投与、又は間質性若しくは手術中投与(inter-operative)が挙げられる。投与は、その主な機能が薬物送達賦形剤としての機能ではない場合があるデバイスの移植により影響を受ける場合がある。
【0073】
抗体の場合、好ましい用量は約0.1mg/kg〜100mg/kg(体重)(一般に約10mg/kg〜20mg/kg)である。抗体が脳で作用する場合、約50mg/kg〜100mg/kgの用量が通常適切である。一般に、部分的ヒト抗体及び完全なヒト抗体は、他の抗体よりもヒトの体内で長い半減期を有する。したがって、より少ない用量かつより少ない頻度の投与での使用が可能であることが多い。脂質化のような修飾を用いて、抗体を安定化し、(例えば、脳への)取り込み及び組織透過性を高めることができる。抗体の脂質化の方法は、Cruikshank et al.((1997年)J.Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology14巻:193頁)に記載されている。
【0074】
重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物拮抗薬の核酸分子はベクターに挿入することができ、遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。遺伝子治療用ベクターは、例えば、静脈注射、局所性投与(米国特許第5,328,470号)又は、定位的注射(例えば、Chen et al.(1994年)Proc.USA91巻:3054〜3057頁)により被験者に送達することができる。遺伝子治療用ベクターの医薬品には、許容可能な希釈剤中の遺伝子治療用ベクターを挙げることができ、又はそれは遺伝子送達賦形剤が埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組み換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターからインタクトに産生できる場合、医薬品は遺伝子送達系を生成する1つ又はそれ以上の細胞を含むことができる。
【0075】
薬剤組成物は、投与の指示書とともに、容器、パック又はディスペンサに含むことができる。
【0076】
薬理ゲノミクス
薬剤、あるいは本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにより同定されるような、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの活性又は発現に影響を及ぼす、刺激又は阻害効果を有するモジュレーターを、ポリペプチドの異常な活性に関連する疾患を治療(予防的に又は治療的に)するために、個体に投与することができる。このような治療とともに、個々の薬理ゲノミクス(すなわち、個人の遺伝子型間の関連性及び外来化合物又は薬剤に対する個人の応答性の調査)を考察することができる。治療の代謝における差異は、薬理学的な活性剤の投与量と血中濃度との間の関係を変更することで、重度の毒性又は治療の不全を引き起こし得る。したがって、個人の薬理ゲノミクスは、個人の遺伝型に対する考慮に基づいた、予防治療又は治療のための効果的な剤(例えば薬剤)の選択を可能にする。このような薬理ゲノミクスは更に、適切な投与量と治療レジメンを判定するために使用することができる。したがって、個人における、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチド、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物核酸の発現、又は重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物遺伝子の変異内容を判定することで、個人に対する治療又は予防治療のために適切な剤を選択することができる。
【0077】
薬理ゲノミクスは、薬物の変更された体内動態及び罹患しているヒトの異常な機能に起因する、薬剤に対する応答性について臨床的に有意である遺伝変異を取り扱う。例えば、Linder(1997)Clin.Chem.43(2):254〜266を参照されたい。一般的に、2種類の薬理遺伝的な条件が差別化され得る。体に対する薬剤の作用の仕方を変更する1つの要因として伝達される遺伝的な条件は、「薬物作用の変更」として参照される。薬剤に対する体の作用の仕方を変更する1つの要因として伝達される遺伝的な条件は、「薬物代謝の変更」として参照される。これらの薬理遺伝学的な条件は、まれな欠損又は遺伝子多型のいずれかとして生じうる。例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)の欠損は一般的に遺伝される酵素病であり、酸化剤(抗マラリア剤、スルホンアミド、鎮痛剤、ニトロフラン)の摂取及びソラマメの摂取後の溶血が主な臨床の合併症である。
【0078】
例示的な実施形態としては、薬剤代謝酵素の活性は薬剤作用の強さ及び持続時間の両方の重要な決定因である。薬剤代謝酵素(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)、及びシトクロムP450酵素のCYP2D6及びCYP2C19)の遺伝的多型の発見は、何故一部の患者が予測される薬剤効果を獲得しないのか、又は標準的で安全な薬物の投与量を採った後で、過剰な薬物応答及び深刻な毒性を示すのかを説明するものとして提供される。これらの遺伝子多型は、集団において2つの表現型、高代謝群(EM)及び低代謝群(PM)として発現する。PMの羅患率は異なる集団の間で異なる。例えば、CYP2D6についての遺伝子コードは、非常に遺伝子多型的であり、いくつかの変異が全てCYP2D6の機能の欠損を導くものとしてPMにおいて同定されてきた。CYP2D6及びCYP2C19の低代謝群は、標準的な投与量を受け入れるときに、かなり頻繁に過剰な薬物応答及び副作用に悩まされる。例えば代謝産物が治療上の活性成分であるとき、PMは、CYP2D6により形成される代謝産物のモルヒネによって媒介される、コデインの鎮痛効果について示されるような、治療的な応答を示さないだろう。他の極端なものは標準的な投与量に対して応答しない、いわゆる超高速代謝群である。近年では、超高速代謝群の分子的機序はCYP2D6遺伝子増幅に起因するものであると同定されてきた。
【0079】
したがって、個人における重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの活性、ポリペプチドをコードしている核酸の発現、又はポリペプチドをコードしている遺伝子の変異内容を判定して、個人に対する治療又は予防治療について適切な剤を選択することができる。加えて、薬理遺伝学な研究は、薬物代謝酵素をコードしている対立遺伝子多型の遺伝子型を適用して、個人の薬物応答性の表現型を同定するために使用することができる。この知識は、投与又は薬物選択に適用されるときに副作用又は治療の不全を避けることができ、ひいては本明細書に記載される例示的なスクリーニングアッセイのうちの1つで同定されるモジュレーターのような、ポリペプチドの活性化又は発現のモジュレーターで患者を治療するとき、治療又は予防効率が高まる。
【0080】
治療方法
本発明は、疾患の危険性を有する(又は疾病になりやすい)、又は重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性に関連する及び/若しくは重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドが関与している疾患を有する被験者を治療する、予防及び治療方法をともに提供する。
【0081】
本発明は、当業者に既知であるか本明細書に記載されるような、細胞、組織、器官、動物又は患者における、少なくとも1つの重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物が関連する疾病又は状態を、少なくとも1つの重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物拮抗剤を用いて、調節又は治療する方法を提供する。重症の若しくは持続型の喘息に関連する遺伝子産物の拮抗剤の組成物は、重症の若しくは持続型の喘息、又は潰瘍性大腸炎若しくは他のTNF媒介性のなどの関連する状態の治療において治療用途を見出すことができる。
【0082】
本発明はまた、限定するものではないが、胃潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病の症状、及び同様の疾病などのうちの少なくとも1つが挙げられる、細胞、組織、器官、動物又は患者における、少なくとも1つの、TNF媒介性の、免疫に関連する疾患を調節又は治療する方法を提供する。例えば、Merck Manual,12th〜17th Editions,Merck & Company,Rahway,NJ(1972,1977,1982,1987,1992,1999),Pharmacotherapy Handbook,Wells et al.,eds.,Second Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(1998,2000)を参照されたい。それぞれ参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現又は活性を特徴とする疾患については、本開示の他の箇所で更に説明される。
【0084】
予防的方法
1つの態様では、本発明は、ポリペプチドの発現又は少なくとも1つの活性を調節する剤を被験者に投与することにより、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性に関連する疾病又は状態を、被験者において少なくとも実質的に予防する方法を提供する。重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子産物の異常な発現又は活性を原因とする又はそれに起因する疾病のリスクを有する被験者は、例えば、本明細書に記載するような診断若しくは予後アッセイのいずれか又は組み合わせにより同定することができる。予防薬の投与は、疾病又は疾患を予防する、あるいはその進行を遅らせるように、異常型の特徴を有する症状が顕在化する前に行うことができる。異常型の種類に応じて、例えば、作用薬又は拮抗薬を被験者の治療に用いることができる。適切な剤は、本明細書に記載するスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0085】
治療的方法
本発明の他の態様は、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を、治療目的で調節する方法に関する。本発明の調節方法は、ポリペプチドの1つ又はそれ以上の活性を調節する剤と、細胞を接触させることを含む。活性を調節する剤は、核酸若しくはタンパク質、ポリペプチドの天然由来の同種リガンド、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は他の小分子のような、本明細書に記載する剤であることができる。1つの実施形態では、剤は、ポリペプチドの生物活性の1つ又はそれ以上を刺激する。他の実施形態では、剤は、重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子又は遺伝子産物ポリペプチドの1つ以上の生物活性を阻害する。このような阻害剤の例には、アンチセンス核酸分子及び抗体、並びに本明細書に記載する他の方法が挙げられる。これらの調節方法は、in vitroで(例えば、剤とともに細胞を培養することにより)又は、あるいは、in vivoで(例えば、被験者に剤を投与することにより)実施することができる。このように、本発明は、重症の又は持続型の喘息の関連遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性を特徴とする疾病又は疾患に罹患している個体を治療する方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、発現若しくは活性を調節する(例えば、上方制御又は下方制御)、剤(例えば、本明細書に記載するスクリーニングアッセイにより同定された剤)又は剤の組み合わせを投与することを含む。活性の阻害は、活性若しくは発現が異常に高いか若しくは上方制御されている状況で、及び/又は、活性の低下が有益な効果を有する可能性がある状況で、望ましい。
【0086】
本発明は一般条件で記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
調査のデザイン及び実行
本薬理ゲノミクス調査の目的は、重症の持続型の喘息に罹患している患者における、ゴリムマブ(TNFα(抗TNF)モノクローナル抗体)による治療に対する治療応答性に影響を与えるTNFα経路遺伝子−TNFα、TNFRSF1A、TNFRSF1B、及びADAM17の遺伝的変異の有無を判定することである。多角的な、二重盲検の、プラセボで対照を採った投与範囲治験において、重症の喘息に罹患している治療を受けている144人の白色人患者のDNA試料を、TNFα、TNFRSF1A、TNFRSF1B及びADAM17中の53個のSNPについて解析した。ゴリムマブを異なる治療腕(treatmentarms)に異なる投与量で4週間毎に投与した。臨床の第一次エンドポイントは、予測されるFEV1%と、治療のベースラインから最初の24週目までの間の重症の増悪の数とにおいて、ベースラインから24週目までで変化した。
【0088】
DNA試料はMassARRAYにより遺伝子型を同定した。複数の遺伝子多型が極めて隣接して存在する場合、又はMassARRAY解析を不可能にするほど複雑な遺伝子多型が存在する場合には、DNA塩基配列決定法を使用した。全ての、遺伝子型の同定データは自動的にスコア化し、次いで精度について手動でチェックした。
【0089】
単一のSNP及びハプロタイプ解析のどちらもが、喘息重症度遺伝子と、基準値測定と、治療のベースラインから最初の24週目までの間の重症の増悪の数によって測定された治療応答と、の間の薬理遺伝学的な関連を評価するために実施された。近似的な一致のために、人種によるハーディ・ワインベルグ平衡割合について個人のSNP及び対立遺伝子の頻度を見積もり、試験した。遺伝子内部の複数のSNPについて連鎖不平衡の見積もりを得、ハプロタイプ解析をしやすくするためにこの情報を使用した。
【0090】
TNFRSF1A及びTNFRSF1Bの多型
ヒトTNFRSF1A遺伝子は染色体の12p13上に存在し、コーディング領域及び3’非翻訳領域(3’UTR)は10以上のエキソンで約1kbにわたって分布している。かかる遺伝子は455個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしている(配列番号4)。ヒトTNFRSF1B遺伝子はおおよそ43kbにわたり染色体の1p36上に存在する。かかる遺伝子は10個のエキソンと9個のイントロンからなる。かかる遺伝子は461個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしている。
【0091】
両方の遺伝子について多数のSNPが見出されたが、それらの多くが連鎖不平衡であり、つまり一般的にかかるSNPには高い相関性が存在しており、これらがひとまとまりとして世代から世代へと伝達されることを意味している。簡略化された遺伝的スクリーニングのために、選択された「タグSNP」をこの調査で使用し、遺伝子内の多型の領域全体を最良に現した。タグSNPを、それらの潜在的な機能についてではなく、他のSNPとの密接な相関について選択した。以下は、例として白人母集団におけるTNFRSF1A遺伝子についてのタグSNPのLDプロットである。他の民族群は、異なる遺伝的な構成及び異なるLDプロットを有する可能性がある。
【0092】

【0093】
ヒトTNFRSF1A遺伝子中の9個のタグSNPのLDプロット。遺伝子配列全体を白いボックスとして上部に示し、それぞれのSNPを黒いバーで指す。SNP間のペアワイズな相関関係をそれぞれのブロットで表し、より暗いブロットほどよりよい相関関係を示し、より明るいブロットほど相関性は乏しい。
【0094】
薬理遺伝学的な関連性
以下の表は、第一次エンドポイントの重症の喘息増悪の数についてのゴリムバブの治療応答性に有意に関連する、2つのTNF受容体遺伝子中の3つの遺伝的な変異を示す。例えば、主要な対立遺伝子の54ホモ接合体である、TNFSF1A遺伝子中のSNP rs4149581(配列番号1)は、72ヘテロ接合体についての0.83の増悪と比較して0.37の重症な増悪の頻度平均値、及びマイナーな対立遺伝子の18ホモ接合体について1.06の増悪を有する。二乗検定は、TNFSF1A中のこのSNPが、治験対象母集団の、ゴリムマブに対する治療応答性に関連することを示す0.04のp値(p<0.05は有意であるとみなされる)をもたらした。すなわち主要な対立遺伝子はマイナーな対立遺伝子よりもゴリムマブに対してより良好な治療応答性を持つ。
【0095】
2つのTNFRSF1B SNPについて同様の結論を出すことができる。
【0096】
【表2】

【0097】
EXSEVP=重症の増悪の平均数(帰属(imputed))
上に説明された理由のために、これらの結果は3つの特定のタグSNPに限定されないが、任意のSNPがそれらとLDにある。したがって我々は、治験対象母集団において、TNFRSF1AとTNFRSF1Bとの間の一般的な遺伝的関連性、並びにゴリムバブに対する治療応答性が存在すると結論付けた。更なる遺伝及び機能解析は、何故それらが治療に対する個人の応答性に影響するのかを機構的に説明する、特定のSNP又はSNPのセットを正確に示すことを可能にし得る。
【0098】
利点
我々はゴリムマブで治療された重症の喘息集団においてこれらの遺伝的なバイオマーカーを同定したが、インフリキシマブ、アダリムマブ又はエタネルセプトなどの他の抗TNF治療剤についても、この薬剤群の作用機序が似ていることから、同様の関連性が存在し得ると考えられる。これらは全て2つのTNFα受容体を介して作用し、受容体多型は類似の様式で個人の応答性に影響を与える可能性がある。また、TNFαがリウマチ様関節炎(RA)、乾癬性関節炎(PsA)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、及び強直性脊椎炎などの疾患のメディエーターであることは既知であることから、かかる同様の関連性を、このような他の免疫媒介性疾患にまで拡大させることもできる。
【0099】
これらの遺伝的なバイオマーカーは、患者から口腔スワブ試料を採り、次いで標準的なDNA試験でアッセイすることにより、容易に評価することができる。この試験は、抗TNFα治療が考慮される見込みのある患者についてのスクリーニングツールとして使用できる可能性がある。この試験結果は、患者とその医師が、抗TNFα治療から効果の公算を評価することによって、洗練された決定をなすことを可能にする。
【0100】
参照を備えて、上記にいくつかの具体的な実施形態を例示し記載したが、本発明は示した詳細に限定されることを決して意図しない。むしろ、本発明は重症の又は持続型の喘息に関連する遺伝子及び遺伝子産物を目的とする。本明細書に開示されるポリヌクレオチド、抗体、装置及びキット、並びにそれらの使用、並びに治療に対する応答性を予測し重症の又は持続型の喘息に関連するバイオマーカー遺伝子のレベルを制御する方法、並びに様々な修正を、特許請求の範囲と同等の領域及び範囲内で、本発明の趣旨から逸脱することなく詳細になすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者におけるTNF媒介性疾患の治療の適合性を予測するための方法であって、
(a)被験者から得られた標本から、核酸試料を調製することと、
(b)前記試料と、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分からなる核酸断片を備えるパネルとを接触させることと、
(c)前記試料からの核酸が、連鎖不平衡(LD)にある一塩基遺伝子多型(SNP)を示すかどうかを判定することと、
(d)工程(c)の判定に基づいて、TNF媒介性疾患のため治療の適合性を予測することと、を含む方法。
【請求項2】
前記治療が抗TNF剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗TNF剤がゴリムマブである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗TNF剤がインフリキシマブ、アダリムマブ又はエタネルセプトである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記TNF媒介性疾患が重症の又は持続型の喘息である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記試料について観察される連鎖不平衡の程度が、少なくとも1つの参照標準と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記参照標準が、肺生検、口腔粘膜検体、あるいは未治療の重症の若しくは持続型の喘息被験者、治療に応答性の被験者、又は治療に応答性でない被験者の末梢血細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パネルが核酸断片のアレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標本が治療を受けている患者から得た末梢血細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標本が、治療の開始から1週後、4週後又は8週後に得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試料中に存在する少なくとも1つの核酸についての連鎖不平衡が、治療の適合性の指標となる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)が、参照標準に対して前記試料を評価して、前記試料中に存在する核酸の連鎖不平衡の程度を判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記参照標準が、治療に関する投与より前の患者由来のもの、プラセボ治療したTNF媒介性の患者のもの、又はバイオバンクからの試料である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記パネルからの少なくとも1つの構成要素が、サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックスの再構築に関与するタンパク質、脈管形成に関連する増殖因子、細胞接着分子及びミエロペルオキシダーゼについての遺伝子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標本が前記被験者の抹消血細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記標本が、重症の又は持続型の喘息を有することが疑われる患者の、又は重症の又は持続型の喘息であると診断され、未だ治療を受けていない患者の組織生検である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記標本が、治療に関する投与よりも前の患者のもの、プラセボで治療された、類似の疾病又は状態を有する患者のもの、又はバイオバンクからの試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)が、中程度の条件、厳しい条件又は非常に厳しい条件下で、前記核酸断片を備えるパネルに前記試料を曝露することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)が、前記試料からの核酸が、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)のうちの少なくとも1つと連鎖不平衡(LD)にある一塩基遺伝子多型(SNP)を示すかどうかを判定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
マーカー遺伝子又はそれらの相補鎖の核酸配列と同一であるか又は相補的なオリゴヌクレオチドと、前記マーカー遺伝子を発現している細胞とを含むキットであって、前記マーカー遺伝子が、TNFRSF1A SNP rs4149581(配列番号1)、TNFRSF1B SNP rs3766730(配列番号2)又はTNFRSF1B SNP rs590977(配列番号3)の少なくとも1つである、予後又は診断使用のためのキット。
【請求項21】
前記キットが重症の又は持続型の喘息のための治療薬の適合性をスクリーニングするために適応される、請求項20に記載のキット。

【公表番号】特表2011−517406(P2011−517406A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500947(P2011−500947)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037611
【国際公開番号】WO2009/117547
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】