説明

量子ドット蛍光体およびその製造方法

【課題】発光ダイオードのパッケージングのためにペースト用樹脂と量子ドットとを混合して蛍光体ペーストに作って塗布する場合、量子ドットが凝集せずよく分散する、究極的に優れた発光効率を示す発光素子を提供する。
【解決手段】量子ドットおよび前記量子ドットを固定させる固体状態の担体を含む量子ドット蛍光体を提供することにより、前記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット蛍光体およびその製造方法に係り、より詳しくは、量子ドットおよび前記量子ドットを固定させる固体状態の担体(substrate)を含む発光ダイオード用量子ドット蛍光体(quantum dot phosphor)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、量子ドットは、ナノサイズの半導体物質として量子閉じ込め(quantum confinement)効果を示す物質である。このような量子ドットは、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに相当するエネルギーを放出する。したがって、量子ドットの大きさまたは物質組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができて様々な水準の波長帯のエネルギーを利用することができる。
【0003】
ナノ結晶を合成する方法としては、MOCVD(金属酸化物化学気相成長;metal organic chemical vapor deposition)またはMBE(分子線エピタキシー;molecular beam epitaxy)のようなCVD法で量子ドットを製造する方法が試みられてきた。また、有機溶媒に前駆体物質を入れて結晶を成長させる化学的湿式方法も急速に発展してきた。化学的湿式方法は、結晶が成長するときに有機溶媒が自然に量子ドットの結晶の表面に配位されて分散剤の役割を行うようにすることにより結晶の成長を調節する方法であって、MOCVDまたはMBEのようなCVD法よりさらに容易かつ低廉な工程によってナノ結晶の大きさと形状の均一度を調節することができるという利点を持つ。
【0004】
特許文献1は、量子ドットをペーストマトリックスに分散させて蛍光体として用いた発光ダイオードについて開示している。前記特許文献1には、発光ダイオードを製造するために量子ドットの表面に置換されている有機リガンドと親和性の高い単量体を少量の触媒の存在下で量子ドットと混合した後、塗布し、熱を加えることにより、量子ドットが分散した高分子を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,501,091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、既存の発光ダイオードの製作工程では量子ドットの有機リガンドと親和性の高い単量体物質が使用されず、使用された高分子の特性がダイオード用として適するかは解明されていない。すなわち、量子ドットを発光ダイオードに利用するためには、既存の蛍光体のペーストとして用いられるペースト用樹脂と量子ドットとを混合することが工程の安定性および信頼性の面で有利であるが、ペースト用樹脂と量子ドットとを混合する際に、量子ドットと樹脂の親和性が高くないため、量子ドットが樹脂の内部によく分散せず、図1に示すように、凝集(aggregation)して量子ドットの発光効率が減少するという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、発光ダイオードのパッケージングのためにペースト用樹脂と量子ドットとを混合して得られる蛍光体ペーストを塗布する場合、量子ドットが凝集せずよく分散するようにして、優れた発光効率を示す発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある実施形態によれば、量子ドットおよび前記量子ドットを固定させる固体状態の担体を含む量子ドット蛍光体(quantum dot phosphor)が提供される。
【0008】
また、本発明の他の実施形態によれば、分散溶媒に分散させて固体状態の担体と混合し、乾燥させて分散溶媒を除去する段階を含む量子ドット蛍光体の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記量子ドット蛍光体、前記量子ドット蛍光体と混合されて混合物を形成するペースト用樹脂、前記混合物を取り囲むランプモールディング用エポキシ樹脂および光源を含む発光ダイオードが提供される。
【0010】
また、本発明の別の形態によれば、前記量子ドット蛍光体をペースト用樹脂と混合して混合物を形成し、前記混合物をチップ上に塗布して硬化させる段階を含む発光ダイオードの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る量子ドット蛍光体は、量子ドットが固体状態の担体に固定されるため、発光ダイオードを製造するためにペースト用樹脂と量子ドットとを混合する場合、量子ドットが互いに凝集しないため発光効率に非常に優れる発光ダイオードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。
【0013】
図2は本発明の一実施例によって量子ドットが固体状態の担体に固定された状態の断面を示す概略図である。図2によれば、量子ドットは、互いに凝集せず、担体に広く分布して固定された形態で存在する。
【0014】
一般に、ペースト用樹脂と量子ドットとを混合する場合、量子ドットと樹脂との親和性が高くないため、量子ドットが樹脂によく分散せず、互いに凝集して量子ドットの発光効率が減少するという問題点がある。
【0015】
本発明は、量子ドットが凝集せずよく分散するようにするため、量子ドットを図2に示すように固体状態の担体に固定させることを特徴とする。
【0016】
すなわち、数ナノメートルのサイズの量子ドットを合成して分散溶媒に分散させた後、固体状態の数ミクロンのサイズの担体とよく混じるように混練しながら、混合溶液を乾燥させると、量子ドットと担体の表面との引力により、量子ドットが凝集せず担体の表面に固定化されてよく分散するので、発光ダイオードを製造するためのペースト用樹脂と混合する場合の分散性が向上し、発光効率を保つことができる。
【0017】
本発明において、前記量子ドットは、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeのようなII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAsのようなIII−V族化合物半導体ナノ結晶、およびこれらの混合物よりなる群から選択されることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記混合物は、例えばCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeよりなる群から選択されるか、またはGaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAsおよびInAlPAsよりなる群から選択されることが好ましい。このような混合物の場合、結晶構造は、部分的に分けられて同一の粒子内に存在するか、または合金の形態で存在することができる。
【0019】
本発明の量子ドット蛍光体において、前記固体状態の担体は、量子ドットを固定させて発光効率を増加させることができるようにする役割を行う。このような固体状態の担体として、具体的にはi)金属酸化物、高分子もしくは金属塩、ii)無機蛍光体またはiii)材料i)と材料ii)との混合物を例として挙げることができる。すなわち、前記i)の物質は量子ドットの分散性を向上させて発光効率を保つことができ、前記ii)の物質は量子ドットの分散性を向上させるうえ、無機蛍光体自体の発光特性を利用するので、発光ダイオードの効率を全体的に増加させる。
【0020】
具体的に、前記i)の物質としては、特に制限されないが、SiO、TiO、Alおよびこれらの混合物よりなる群から選択される金属酸化物、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリカーボネートおよびポリイミダゾールよりなる群から選択される高分子、KBr、NaBr、KI、KClおよびNaClよりなる群から選択される金属塩を例示することができる。
【0021】
また、前記ii)の物質としては、特に制限されないが、ZnS:Ag、ZnS:Cu、ZnS:Mn、ZnS:(Cu、Al)、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:(Cu、Al)、ZnS:(Cu、Au、Al)、ZnS:(Ag、Cu、Ga、Cl)、YS:Eu、ZnS:(Ag、Al)、ZnO:Zn、BaMgAl1017:Eu2+、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu、Sr10(PO12:Eu、(Ba、Sr、Eu)(Mg、Mn)Al1017、(Ba、Eu)MgAl1017、YVO:Eu、およびこれらの混合物よりなる群から選択される無機系蛍光体を例示することができる。
【0022】
一方、前記のような本発明の量子ドット蛍光体は、様々な波長の光を放出することができる。具体的には、a)量子ドットが混合されてそれぞれの波長が混ぜられて様々な波長の光を放出する場合、b)無機蛍光体を担体として使用することにより、量子ドットの波長と無機蛍光体の波長とが混合されて様々な波長の光を放出する場合、c)それぞれ異なる種類の量子ドットを無機蛍光体に固定させることにより、量子ドットから混合された波長の光が放出され、さらに、無機蛍光体の波長とも混合された波長の光を放出する場合、d)量子ドットを様々な無機蛍光体に固定させることにより、量子ドットの波長と様々な無機蛍光体の波長とが混合される場合、e)様々な量子ドットと様々な無機蛍光体とが混合されて様々な波長が混合される場合を例として挙げることができる。
【0023】
本発明の他の形態は、量子ドットを分散溶媒に分散させて固体状態の担体と混合し、乾燥させて分散溶媒を除去する段階を含む量子ドット蛍光体の製造方法に関するものである。次に、これについて段階的に説明する。
【0024】
本発明で適用される量子ドットの合成方法は、特に制限されず、従来の技術として公知になっている全ての技術を適用可能である。以下、化学的湿式合成法によって量子ドットを製造する方法について詳細に説明する。
【0025】
まず、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気の下で適切な溶媒に界面活性剤をその種類および濃度を調節しながら加えて結晶構造が成長し得る反応温度を維持し、量子ドットの前駆体物質を混合反応溶液に注入して、量子ドットの大きさを調節することができるように反応時間を維持した後、反応を終了し、温度を降下した後、溶液から分離することにより、ナノサイズの量子ドットを製造することができる。
【0026】
本発明の製造方法に使用される溶媒は、炭素数6〜22のアルキルホスフィン、炭素数6〜22のアルキルホスフィンオキサイド、炭素数6〜22のアルキルアミン、炭素数6〜22のアルカン、炭素数6〜22のアルケンまたはこれらの混合物を例として挙げることができる。
【0027】
本発明に係る製造方法において、結晶成長を容易にしながら溶媒の安定性を保障するための好適な反応温度範囲は、好ましくは25℃〜400℃であり、より好ましくは180〜360℃である。
【0028】
また、本発明に係る製造方法において、反応時間は、好ましくは1秒〜4時間であり、より好ましくは10秒〜3時間である。
【0029】
一方、化学的湿式合成法によって製造された量子ドットは、コロイド状態で溶媒内に分散しているので、遠心分離によって溶媒から量子ドットを分離することができる。このように分離した量子ドットを適切な分散溶媒に分散させて固体状態の担体と混合し、常温で分散溶媒を徐々に蒸発させながらよく混合すると、固体状態の担体に量子ドットが固定されうる。
【0030】
本発明に使用される前記分散溶媒は、特に制限されないが、具体的にクロロホルム、トルエン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、塩化ジメチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびこれらの混合物などを例として挙げることができる。
【0031】
量子ドットが担体に固定されると、これを例えば20℃〜200℃で30分〜8時間乾燥させて分散溶媒を除去することにより、量子ドット蛍光体を合成することができる。乾燥手段は特に制限されないが、例えばオーブンが用いられうる。
【0032】
本発明の別の形態は、前記量子ドット蛍光体を用いた発光ダイオードに関するものである。すなわち、本発明に係る発光ダイオードは、図3に示すように、量子ドット蛍光体、前記量子ドット蛍光体と混合されて混合物を形成するペースト用樹脂、前記混合物を取り囲むランプモールディング用エポキシ樹脂および光源を含んでなる。
【0033】
本発明において、前記ペースト用樹脂は、光源から放出される波長の光を吸収しない材料から構成されることが好ましい。具体的には、特に制限されないが、エポキシ、シリコーン、アクリル系高分子、ガラス、カーボネート系高分子またはこれらの混合物などから構成されうる。
【0034】
本発明において、前記ペースト用樹脂と混合された量子ドット蛍光体は、光源と密着して位置してもよく、あるいは光源から離れて位置してもよい。前記量子ドット蛍光体が光源と密着して位置すると、屈折率による光の損失が少ないが、熱による安定性が低下する場合がある。一方、前記量子ドット蛍光体が光源から離れて位置すると、屈折率による光の損失が発生する場合があるが、熱による安定性の低下は起こりにくい。
【0035】
本発明において、前記光源は300nm〜470nmの範囲の波長の光を放出することが好ましい。
【0036】
一方、前記のような本発明の発光ダイオードを製造するためには、量子ドット蛍光体をペースト用樹脂と混合した後、得られた混合物をUV光源を備えたチップ上に塗布(dispensing)し、120℃のオーブンで硬化させて1次塗布および硬化工程を行う。このように1次塗布されて硬化した混合物をランプの形にパッケージングするために、モールディング可能な型内にモールディング用エポキシ樹脂を注ぎ、1次塗布および硬化工程を経たチップを沈ませるようにしてさらに硬化させた後、オーブンから取り出す。最後に、型を取り除くと、量子ドット蛍光体を発光体として用いたランプ形の発光ダイオードを製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
【0038】
製造例:赤色発光ナノ結晶の合成
トリオクチルアミン(Trioctyl amine、以下「TOA」という)16g、オレイン酸(Oleic acid、以下「OA」という)0.5gおよび酸化カドミウム0.4mmolを125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、真空状態に維持しながら、反応温度を約150℃まで上昇させた。この際、混合物がよく混じるように700rpm以上で攪拌した。反応温度が150℃になると、真空雰囲気から窒素雰囲気に変え、温度を300℃まで上昇させた。これとは別に、窒素雰囲気中でSe粉末を純度97%のトリオクチルホスフィン(Trioctyl phosphine、以下「TOP」という)に溶解させてSe濃度0.2MのSe−TOP錯体溶液を作った。前記攪拌されている300℃の混合物にSe−TOP錯体溶液1mLを速い速度で注入し、約4分間反応させた。反応後、TOAに溶解させた0.2Mのn−オクタンチオール(n−octane thiol)溶液1mLを、反応混合物に速い速度で注入して30分間反応させた。反応中には攪拌速度と窒素雰囲気を保持した。
【0039】
反応が終結したら、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降温し、非溶媒(non solvent)のエタノールを添加して遠心分離した。遠心分離された沈殿物を除いた溶液の上澄み液は捨て、沈殿物はトルエンに分散させた。
【0040】
こうして得られたナノ結晶は、CdSeコアとCdSシェルの構造を有し、365nmのUVランプの下に赤色で発光した。こうして作られたCdSe/CdSナノ結晶を400nmのUVエネルギーで励起させた発光スペクトルを図4に示した。ローダミン6G(Rhodamine 6G、有機レーザ、量子効率100%)と比較した量子効率は約85%であった。
【0041】
比較例1:
(1)担体に固定されていない量子ドット蛍光体の製造
製造例で合成されたCdSe/CdSナノ結晶を1質量%でトルエンに分散させた溶液5mLに非溶媒のエタノールを加えてナノ結晶を沈殿させて常温で乾燥させることにより、担体に固定されていない量子ドット蛍光体を製造した。
【0042】
(2)発光素子の製作
前記(1)で製造した量子ドット蛍光体に、エポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を2g程度加えることにより、ナノ結晶とエポキシ樹脂との混合溶液を製造した。こうして作られた混合溶液を400nmのUV光源を備えたチップ上に塗布し、120℃のオーブンで1時間硬化させた。このように1次塗布されて硬化されたナノ結晶とエポキシ樹脂との混合物をランプの形にパッケージングするために、モールディング可能な型にエポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を注ぎ、1次塗布されたチップを沈ませるようにしてさらに120℃のオーブンで硬化させた。約2時間後、オーブンから取り出して型を取り除くことにより、CdSe/CdSナノ結晶を発光体として用いた発光素子を完成した。こうして製造されたダイオードに約20mA程度の電流が流れるようにすると、赤色の光を発光し、積分球に入れて発光効率を測定したところ、約2.6%の効率を示した。このときの発光スペクトルを図5に示した。
【0043】
実施例1:
(1)KBr担体に固定させた量子ドット蛍光体の製造
製造例で合成されたCdSe/CdSナノ結晶を1質量%でトルエンに分散させた溶液5mLを1gのKBr粉末に加えた後、トルエンを常温で徐々に蒸発させながら、粉末とよく混じるように混練した。溶液が乾燥すると、粉末を6時間程度80℃のオーブンの中に入れてトルエンを完全に蒸発させることにより、KBr担体に固定された量子ドット蛍光体を製造した。このように乾燥したKBr粉末は、CdSe/CdSナノ結晶の色を呈し、KBr担体の表面上にナノ結晶がよく分散した状態で存在した。
【0044】
(2)発光素子の製作
ナノ結晶が分散して固定化されたKBr粉末に、エポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を2g程度加えることにより、粉末とエポキシ樹脂との混合物を作った。こうして作られた混合物を400nmのUV光源を備えたチップ上に塗布し、120℃のオーブンで1時間硬化させた。このように1次塗布されて硬化された混合物をランプの形にパッケージングするために、モールディング可能な型にエポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を注ぎ、1次塗布されたチップを沈ませるようにしてさらに120℃のオーブンで硬化させた。約2時間後、オーブンから取り出して型を取り除くことにより、CdSe/CdSナノ結晶がKBr粉末に分散して固定化された発光体を用いた発光素子を製造した。こうして製造されたダイオードに約20mA程度の電流が流れるようにすると、赤色の光を発光し、積分球に入れて発光効率を測定したところ、約12%の効率を示した。このときの発光スペクトルを図6に示した。
【0045】
実施例2:
(1)PSビーズ担体に固定させた量子ドット蛍光体の製造
BANGS LABORATORYから購入した水溶液に分散した1質量%のPlain(Hydrophobic)polystyrene microspheres(以下、PSビーズという)10mLを遠心分離し、乾燥させ、乾燥した粉末をさらにトルエンに分散させた後、エタノールを加えて遠心分離し、その後再び乾燥させることにより、界面活性剤が除去されたPSビーズを作った。このように分離したPSビーズに、製造例で合成されたCdSe/CdSナノ結晶を1質量%でトルエンに分散させた溶液5mLを加えて、トルエンを常温で徐々に蒸発させながら、粉末とよく混じるように混練した。溶液が乾燥すると、粉末を6時間程度80℃のオーブンの中に入れてトルエンを完全に乾燥させることにより、PSビーズ担体に固定された量子ドット蛍光体を製造した。このように製造されたPSビーズは、CdSe/CdSナノ結晶の色を呈し、PSビーズの表面上または内部の孔にナノ結晶がよく分散した状態で存在した。
【0046】
(2)発光素子の製作
ナノ結晶が分散して固定化されたPSビーズに、エポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を2g程度加えることにより、PSビーズとエポキシ樹脂との混合物を作った。こうして作られた混合物を400nmのUV光源を備えたチップ上に塗布し、120℃のオーブンで1時間硬化させた。このように1次塗布されて硬化された混合物をランプの形にパッケージングするために、モールディング可能な型にエポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を注ぎ、1次塗布されたチップを沈ませるようにしてさらに120℃のオーブンで硬化させた。約2時間後、オーブンから取り出して型を取り除くことにより、CdSe/CdSナノ結晶がPSビーズに分散して固定化された発光体を用いた発光素子を製造した。このように製造されたダイオードに約20mA程度の電流が流れるようにすると、赤色の光を発光し、積分球に入れて発光効率を測定したところ、約8.5%の効率を示した。このときの発光スペクトルを図7に示した。
【0047】
実施例3:
(1)無機蛍光体に固定させた量子ドット蛍光体の製造
化成オプトニクス社から購入したLDP−R3無機蛍光体(化学式(Zn、Cd)S:Ag+In、以下「LDP−R3」という)1gに、製造例で合成されたCdSe/CdSナノ結晶を1質量%でトルエンに分散させた溶液5mLを加えた後、トルエンを常温で徐々に蒸発させながら、蛍光体とよく混じるように混練した。溶液が乾燥すると、蛍光体を6時間程度80℃のオーブンの中に入れてトルエンを完全に乾燥させた(試料1)。試料1の製造過程と同様に、ナノ結晶が分散して固定された蛍光体を製造した後ナノ結晶を塗布し乾燥させる過程をもう1回繰り返し行って試料2を製造した。
【0048】
(2)発光素子の製作
LDP−R3無機蛍光体、試料1、および試料2のそれぞれに、エポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を2g程度加えることにより、PSビーズとエポキシ樹脂との混合物を作った。こうして作られた混合物を400nmのUV光源を備えたチップ上に塗布し、120℃のオーブンで1時間硬化させた。このように1次塗布されて硬化された混合物をランプの形にパッケージングするために、モールディング可能な型にエポキシ樹脂と硬化剤とを1:1の質量比で混ぜた溶液を注ぎ、1次塗布されたチップを沈ませるようにしてさらに120℃のオーブンで硬化させた。約2時間後、オーブンから取り出して型を取り除くことにより、CdSe/CdSナノ結晶が存在しないLDP−R3蛍光体を使用したものと、ナノ結晶のローディング量が異なるように調節された蛍光体を使用した発光素子を製造した。このように製造されたダイオードに約20mA程度の電流が流れるようにすると、全てオレンジ色の光を発光し、積分球に入れて発光効率を測定したところ、LDP−R3は約3.5%、試料1は約4.0%、試料2は約4.5%の発光効率を示した。このときの発光スペクトルを図8に示した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来の技術によって量子ドットが凝集した状態を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例によって量子ドットが固体状態の担体に固定された状態を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施例によって製造された発光ダイオードの概略図である。
【図4】本発明の製造例で製造した量子ドットの発光スペクトルである。
【図5】本発明の比較例1で製造した量子ドットを使用した発光ダイオードの発光スペクトルである。
【図6】本発明の実施例1で製造した量子ドット蛍光体を使用した発光ダイオードの発光スペクトルである。
【図7】本発明の実施例2で製造した量子ドット蛍光体を使用した発光ダイオードの発光スペクトルである。
【図8】本発明の実施例3で製造した量子ドット蛍光体を使用した発光ダイオードの発光スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットおよび前記量子ドットを固定させる固体状態の担体を含む量子ドット蛍光体。
【請求項2】
前記量子ドットを構成する材料がII−VI族化合物半導体ナノ結晶であるCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、およびHgTe、III−V族化合物半導体ナノ結晶であるGaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、およびInAs、並びにこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項3】
前記混合物が、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeよりなる群から選択されるか、またはGaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAsおよびInAlPAsよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項4】
前記混合物が部分的に分けられて同一粒子内に存在するか、または合金の形態で存在することを特徴とする、請求項2または3に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項5】
前記量子ドットが化学的湿式合成法によって製造されるてなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項6】
前記担体を構成する材料がi)金属酸化物、高分子もしくは金属塩、ii)無機蛍光体、またはiii)材料i)と材料ii)との混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項7】
前記金属酸化物がSiO、TiO、Alおよびこれらの混合物よりなる群から選択され、前記高分子がポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミダゾールおよびこれらの混合物よりなる群から選択され、前記金属塩がKBr、NaBr、KI、KClおよびNaClよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項8】
前記無機蛍光体がZnS:Ag、ZnS:Cu、ZnS:Mn、ZnS:(Cu、Al)、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:(Cu、Al)、ZnS:(Cu、Au、Al)、ZnS:(Ag、Cu、Ga、Cl)、YS:Eu、ZnS:(Ag、Al)、ZnO:Zn、BaMgAl1017:Eu2+、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu、Sr10(PO12:Eu、(Ba、Sr、Eu)(Mg、Mn)Al1017、(Ba、Eu)MgAl1017、YVO:Euおよびこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項6または7に記載の量子ドット蛍光体。
【請求項9】
量子ドットを分散溶媒に分散させて固体状態の担体と混合し、乾燥させて分散溶媒を除去する段階を含むことを特徴とする、量子ドット蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記量子ドットが化学的湿式合成法によって25℃〜400℃で1秒〜4時間反応させて製造されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記分散溶媒がクロロホルム、トルエン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、塩化ジメチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥が20℃〜200℃で30分〜8時間行われることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の量子ドット蛍光体、前記量子ドット蛍光体と混合されて混合物を形成するペースト用樹脂、前記混合物を取り囲むランプモールディング用エポキシ樹脂および光源を含むことを特徴とする、発光ダイオード。
【請求項14】
前記ペースト用樹脂を構成する材料が、前記光源から放出される波長の光を吸収しない材料であることを特徴とする、請求項13に記載の発光ダイオード。
【請求項15】
前記ペースト用樹脂を構成する材料が、エポキシ、シリコーン、アクリル系高分子、ガラス、カーボネート系高分子およびこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の発光ダイオード。
【請求項16】
前記光源が300nm〜470nmの範囲の波長の光を放出することを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の量子ドット蛍光体をペースト用樹脂と混合して混合物を形成し、前記混合物をチップ上に塗布して硬化させる段階を含むことを特徴とする、発光ダイオードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−199963(P2006−199963A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10312(P2006−10312)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】